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【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】
[456]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/07(金) 00:37:04 ID:??? 皆様、ご回答ありがとうございます。 更新期間が開いてしまい申し訳ありません。 次の選択まで、と考えていたらテキスト量が膨れ上がりまして……などという言い訳はこの辺りで。 それでは早速、>>449の選択については…… >>454 さら ◆KYCgbi9lqI様の選択を採用させていただきます! はい、集めた情報をどう判断し、どう動いていくのかはこの先の話ですが、 それが森崎とトニーニョにとって最善の方法になればいいですね。 CP3を進呈いたします。 >>451 それも一つの解決法ですね。 是非の問題ではありませんが、今回はこういった選択を採用させていただきました。 今後の立場によっては、明確な正解のない選択も増えていくかもしれません。 すべては皆様のご回答の説得力次第、というところでもあります。 >>455 はい、ネイは日常的な場面では色々と察してくれますね。 とはいえ、そう簡単に事情のすべてを話してくれるわけではありませんが。
[457]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/07(金) 00:38:04 ID:??? *** B それとなく聞くに留める。 (……搦め手からいくか) トニーニョの様子がおかしいのは明らかだった。 しかし同時にまた彼自身の言葉から分かるのは、それが精神的な部分に根ざした ひどくデリケートな問題であるということでもあった。 情報の少ない現時点で彼と親しいネイに事情を明け透けにするのは、親しい人物であるからこそ 躊躇われるようにも、森崎には思えた。 「そういや……最近のトニーニョ、どうしたんだ?」 「あ? なんかやらかしたのか?」 遠まわしな訊ね方に、直球の返答が戻ってくる。 どうしたものかと思いながら、森崎は言葉を選ぶ。 「いや、そうじゃねえけどよ……ここんとこ、どうもボーっとしてるっつーか、な。 アイツにゃ集中してもらわねえと困るわけよ、こっちも」 「ま、いい加減な隊長サマにはきっちりした女房役が必要だしな」 「うるせえ!」 「つってもなあ……あ」 と、何かに気付いたようなネイが、しかし眉根を寄せて手綱を引き、馬の歩みを止める。 珍しく考え込むような表情に、森崎があまり良い予感を覚えないままやはり馬を止め、重ねて訊いた。
[458]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/07(金) 00:39:05 ID:??? 「何か、あったのか?」 「もしかして、『また』……か」 「……?」 ぽそり、と口にしたネイの声音は苦々しい。 目を閉じて大きなため息をつく、そんなネイの表情を森崎は見たことがない。 「ったく……いい加減、慣れろっての……」 「何だよ、それ」 口の中だけで呟くような言い方に焦れた森崎が言うのへ、ネイが小さく首を振る。 「いや……まあ、なんつーか……トニーニョのヤツは、『ご主人様』を亡くすのが……。 昔のコトで、ちょっとな」 「……」 あからさまに言葉を濁したネイの様子は、話せるのはここまで、と口以外の部分で雄弁に語っている。 今はまだこれ以上踏み込めないと判断した森崎が、口を真一文字に引き結んで天を仰ぐ。 しばしの沈黙の後、軽く頷いたネイがぽん、と森崎の肩を叩いて馬の腹を蹴る。 「まあ、俺の方でも気をつけとくよ。ヤバそうなら早めに報告、入れるからさ」 「お、おう。……よろしくな」 片手を上げて遠ざかるネイの後ろ姿を、森崎は見る。 鞍上の長い黒髪は、まるでその背にこびりついた過去という黒雲のように、ゆらゆらと揺れていた。
[459]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/07(金) 00:40:06 ID:??? ※ガッツ20減少。 馬術が30上がりました。 現在のガッツ:135 剣術:68 馬術:66 体術:62 魅力:78 評価:69 ATK:134 DEF:140 SPD:128 ini:25 ※ネイとの関係が上がりました。 スキルLvの上昇確率は現在-30%のため判定は行われません。 ****** ※称号が『気のいい見習い騎兵』になりました。 スキル『チャージ』を獲得しました。 種別:部隊パッシブ 消費ガッツ:- 効果:指揮下の騎兵の兵種打撃力を+5する。 ******
[460]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/07(金) 00:41:07 ID:??? *D26.8月 「気のいい見習い騎兵」森崎有三 メインイベント 『overreach yourself』 「オウ、そこを行くのはモリサキさんではありませんカ!」 「げっ……」 石造りの白い町並みは、照り返しで道行く者をじりじりと焼く。 夏も盛りの昼下がり、汗を流しながらキャラウェイ通りを歩く森崎の耳に飛び込んできたのは陽気な声である。 ここ一週間ですっかり聞き慣れた感のあるその声の主を瞬間的に脳裏に浮かべて、思わず顔をしかめる森崎。 振り返れば、果たしてそこに立っていたのはバウミール・ルーカス。 軍部と傭兵大隊を繋ぐ役職にある男である。 「ちょうど良かったデス。これからそちらに伺うところでシタ」 「ルーカス大佐……今日は休みのはずだぜ」 『相変わらずヘンなカッコだね、このオジサン』 露骨に嫌な顔をする森崎の肩を親しげにバンバンと叩く男の服は、どこから調達したものか、 炎天下にもかかわらず長くぞろりとしたガウンのような上着を羽織っている。 大きく前の開いた上着の下には、どうやら軍服を着込んでいるように見えた。 ピコの漏らす通り、目にする度に頭を抱えたくなるような珍奇な服装のセンスは 今日も存分に発揮されているようだった。 「HAHAHA、管理職に休日なんてあってないようなモノですネ。それと、モリサキさん」 「……何だよ」 おそろしいことをさらりと言ってのけたルーカスが、森崎が身構えるのへ、ずいと迫る。
[461]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/07(金) 00:42:10 ID:??? 「ルーカス!」 「……?」 『うわあ……顔、濃いなあ』 唐突に自らの名を呼んだその意図がわからず、森崎が目を瞬かせる。 暑苦しいほどに近づいてきたルーカスが、続けた。 「ワタシのことはルーカスと呼び捨てにしてくだサイ、お願いしたはずデス!」 「……いや、そういうわけにもいかねえだろ」 そのことか、と半ば安堵しながら言う森崎。 「一応、俺らの雇い主なんだからさ。大体アンタだって俺のこと、さん付けじゃねえか」 「当然デス! 言ってみれば皆さんは大事なビジネスパートナーですからネ。呼び捨てなんてできまセン」 『……』 「……はは」 「オウ、オリエンタルスマイル! 東洋の奥義ですネ!」 もはや苦笑するしかない森崎に、屈託のない笑顔を向けるルーカス。 どこまでが本気なのか、皆目検討がつかない。 「……で、何の用だって?」 掴みどころのない親父だ、と辟易しながら、森崎が尋ねる。 「ハイ、そうでシタ。今日はモリサキさんに、もう一人のビジネスパートナーを紹介したかったのデス!」 「もう一人の……?」 首を捻る森崎に、 「―――もう、いいかしら?」
[462]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/07(金) 00:43:11 ID:??? かけられる声があった。 ルーカスの背後、その大柄な身体に隠れるようにしていた影が、すっと歩み出てくる。 妙齢の女性である。 一目で東洋系であると分かる、服装と化粧であった。 襟とおくみのついた裾の長い帯留めの上着は夏らしく若草色と浅葱色でまとめられ、 足首までをゆったりと覆う空色のスカートには美しい刺繍が施されている。 『襦裙……? 珍しいね、中華のお客さんかな?』 ピコが言う中華、正しい国号を中華皇国というその国は、東洋圏に覇を唱える一大帝国である。 極東から欧州にまで流れてきた森崎としても、その文化様式程度は当然知っている。 襦裙とはその中華皇国の女性が纏う服のことであった。 『ていうかそうすると、ルーカスさんのヘンなカッコって、漢服なのかな……前、開いちゃってるけど』 (……まあ、あの上着にボタンはないからな。オビっつーベルトを締めるんだぜ、ルーカスさん) ピコの呆れたような声に内心だけで返答した森崎が、改めて女性を見やる。 細面の整った顔立ちの、しかしその頂点に君臨するのは鋭い眼差しである。 アーモンド型の黒い瞳を彩るのは中華独特の鮮やかな紅。 燃えるような化粧に、決して負けぬ煌めきを放つ瞳であった。 己というものを世に誇れる者たちの持つ、特有の煌めき。 その自信は経験によるものか、あるいは実績に裏打ちされたものであったか。 『びっじ〜ん。キミ、気をつけてよね』 (確かに、一筋縄じゃいきません、って顔だぜ……) 肩に垂らした長い黒髪が、黄金色の繊細な耳飾りと共にさらりと揺れる。 甘く漂う香気は麝香だろうか。 ラインの出ないゆったりとした服装の下について思わず妄想逞しくしそうになる白く細い首が 微かに傾げられ、艶やかに紅をさした唇は上弦の月の形で笑んでいる。 美しく、そしてまた自分の価値を熟知しているであろう女性であった。
[463]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/07(金) 00:44:15 ID:??? 「この人、は……?」 「傭兵大隊の酒保商人、許商会の代表さんデス」 『酒保……って、いつも売店開いてる、あれ?』 知らず生唾を飲み込んで聞いた森崎に、ルーカスがあっさりと答える。 酒保商人とは、軍を相手取って総合的な商売を行う商人である。 行軍に随伴してその名の通りの酒や食料の販売、武器弾薬の補充や補修のみならず 芸人、詩人、娼婦といった娯楽の提供から炊事洗濯などの日常サービスまで およそありとあらゆるものを取り扱う、いわば戦場における生命線であった。 「酒保……? 先月まではニコラ爺さんがやってただろ」 「彼は地元で雇った小売商よ。実際にドルファンの傭兵大隊で酒保を担当してるのは私たち許商会」 短い期間ではあったが何度か世話になった、人の良さ気な老爺の顔を思い浮かべる森崎に、 直接答えたのは女性である。 「ニコラさんが引退して田舎の娘夫婦と同居するっていうんで、これからは私が直接、 貴方たちの面倒見ようってわけ。 ようやく本格的な戦争が始まって、仕事もこれまでとは比べ物にならないほど大口になりそうだしね」 そう言って、白くたおやかな手を差し出す女性。 「徽商・許商会、許子先の娘、許陽子(スー・ヤンズゥ)よ。よろしくね」 「森崎有三だ。こちらこそよろしく頼む」 「期待してるわよ、八騎将討伐の隊長さん?」 握り返した手を離さずに言う女性に小さく肩をすくめて、森崎が話題を変える。 「で、徽商……てーと、やっぱ中華の商人か」 「見ての通りね」 微笑むと手を離し、長い袂を夏の風に揺らして、優雅に中華風の礼をしてみせる女性。
[464]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/07(金) 00:45:16 ID:??? 「父の商会は塩が本業。でも最近は本国の情勢が荒れ気味で、貿易のうまみが大きくなってきててね。 色々手広く扱ってるんだけど、娘の私がドルファンでの名代ってわけ」 へえ、と頷いた森崎を、陽子と名乗った女性がじっと見つめる。 悪戯っぽく細められた目にどぎまぎとする森崎に、陽子がそっと耳打ちするように、言う。 「って言っても、子先は養父でね。……私、本当は貴方と同じ国の生まれなのよ」 「そう、なのか?」 驚いたように訊く森崎に、陽子が笑って頷く。 「ええ。ヤンズゥは中華の読み方。元の名前はヨーコ……っていうの」 「陽子……さん?」 何気ない一言である。 森崎としては、ただ相槌を打っただけのつもりであった。 しかし、陽子の反応は激烈だった。 「んー……! その発音、素敵っ!」 「ちょ、陽子さ……!?」 ぱあっ、と花の開くような満面の笑みを浮かべるやいなや、何と森崎に抱きついてきたのである。 絹の滑るような肌触りとその向こう側のやわらかく温かい感触、そして麝香の甘い香りが、 同時に森崎の顔を包む。 「ぐ、ぐむむ……!」 「オウ、許小姐は情熱的ですネー」 突然のことに、思わず唸ることしかできずにいる森崎。 他人事のように言うルーカスの声が、ひどく遠い。
[465]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/07(金) 00:46:16 ID:??? 「あ、ごめん、つい!」 ぎゅう、と胸に抱えていた森崎の頭を慌てて解放した陽子が、小さく舌を出す。 茶目っ気のある仕草が意外と似合っている。 「ほら、ちゃんと名前呼んでもらえるのってすっごく久しぶりだし、……やっぱり嬉しいから。 お姉さん、調子に乗っちゃった」 もしかすると、それほど歳は離れていないのかもしれない。 そんなことを考える森崎の前で居住まいを正した陽子が、改めて礼をする。 「貴方の隊の酒保を任されたのも、素敵な縁ね。今後とも許商会をご贔屓に、森崎くん!」 「ああ……こっちからも頼むぜ、陽子さん」 答礼を返す森崎の前に、 「で、早速だけど」 どこから出したものか。 ぴらり、と陽子が差し出したのは紙の束である。 「え……?」 「はい、じゃまずこれ、目を通してみて?」 「あの」 「ちゃんとした数字は後で出すから、今はこんなざっくりした書面でごめんね」 「いや、その」 ざっくりした、というわりには異様に分厚い紙束を押し付けられ、目を白黒させる森崎。 「これがこっちでざっと出した、不足してると思われる物資のリスト。でこっちが見積り、 ここからここまでが去年の納入実績で、こっちは大隊の予算と突き合わせた今後の提案書……」 「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ!」
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0ch BBS 2007-01-24