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【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】
[721]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:16:53 ID:??? >>720 はい、レズリーの性格付けに若干の影響はしますが、展開に大きく関わるわけではありませんね。 *** ハート・ダイヤ・クラブ→ 「も、もう一回だ!」 負けて熱くなっている……。 「―――クラブの10。……バーストですね」 最終ゲーム、ラストコールである。 残った全額を賭けての勝負が失敗に終わったことを告げる、破滅の鐘であった。 「そんな……」 「まあ、負けるときはこんなもんだ。気が済んだろ」 羅紗の引かれた緑色の卓の上、呆然とカードを見つめるレズリーに肩をすくめる森崎。 しかし、レズリーは立ち上がろうとしない。 ふるふると震えたかと思うと、決然と顔を上げ、叫ぶように言う。 「……も、もう一回! もう一回、勝負だ!」 「おい、レズリー!」 念を押したはずの約束をあっさりと破られ、思わず声を荒げる森崎を抑えたのは、 卓を挟んだクレアがちらりと向けた視線である。 口を噤んだ森崎に代わるようにレズリーを見つめるクレア。 真正面からの目に怯みながら、しかしレズリーが縋るように口を開いた。 「な、なあ……頼むよ、負けっぱなしじゃ悔しいんだ。もう一度だけ、」 「ふふ、いけません」 優しい口調の、しかしレズリーの懇願を断ち切るような、きっぱりとした即答。
[722]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:17:54 ID:??? 「……」 「……ですよね」 不満気に口を尖らせたレズリーだったが、しかしそれ以上は食い下がろうとしない。 子供の駄々をどう片付けたものかと思案していた森崎が、ほっと胸を撫で下ろす。 森崎一人の説得であれば強い反発が返ってきたかもしれなかったが、クレアという人物には こういうとき、ある種の強制力とでもいうべきものが備わっているようだった。 「つーか、もうすぐ日が暮れちまうぜ」 「え……そんな時間?」 この機を逃してなるかとばかりに帰り支度を促す森崎に、レズリーが目を丸くする。 窓のない半地下の店内では外の明るさが分からず、定期的に刻限を知らせる鐘の音も聞こえない。 自然、時間間隔も曖昧になってくるのだった。 「そうね。そろそろ、夜の仕込みが終わる頃じゃないかしら」 「だってよ……って、」 クレアが頷くのに振り返る森崎を迎えたのは、少女の上目遣いである。 「……もう、帰んなきゃダメか?」 一瞬、森崎が息を呑む。 僅かに頬を染めて眦を下げ、哀願するように言うその姿態は、おそらくは無意識のうちに 行なっているものであったろうが、驚くほど効果的に女というものを使いこなしている。 「お前なあ……」 媚態、と言い表されるであろう少女の表情に、盛大なため息を漏らす森崎。
[723]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:18:54 ID:??? 「今、俺がどんな風にその台詞を受け取ったか知ったら、きっと激怒するんだろうな」 「……?」 言われたレズリーはといえば、やはり意味を取りかねているらしい。 怪訝そうな顔をするばかりであった。 「―――モリサキさん」 そんな二人の間にすう、と滲むような声は、クレアである。 心臓を爪の先で引っかかれるような悪寒に、森崎が飛び上がって返事をする。 「は、はいっ!?」 「きちんと、お家まで送ってあげて下さいね」 肯定をのみ要求する、それは絶対者の微笑である。 森崎の背筋を、冷や汗が垂れ落ちる。 「は、はは……はい、勿論ですって」 「お願いね」 引きつった顔で何度も頷く森崎に、クレアから無言の威圧感が引いていく。 「……また、改めてご挨拶にでも伺いますんで」 「そんな、気にしないでいいのよ。お仕事、頑張って下さいね」 「はい」 迷いなく、頷く。 それは取りも直さず、ヤング・マジョラムの後継者として隊を率いていくということである。 一縷の躊躇も許されない問いと、答えであった。
[724]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:19:55 ID:??? 「それじゃ……。ほら、帰るぞ」 頭を下げた森崎が、レズリーを促すと少し離れたカウンターの向こうに声をかける。 「勘定、頼むわ」 「かしこまりました。……こちらになります」 間髪を入れず歩み寄ってきた店主が、森崎に伝票を渡す。 その末尾に記された数字を見た森崎が、 「げ」 一瞬、絶句した。 その様子に、森崎の手元を覗き込もうとするレズリー。 「……いくらだったんだい?」 「いや、まあ……気にすんな」 咄嗟に紙片を裏返す森崎に、レズリーが口を尖らせる。 「隠すことないじゃないか」 「痩せ我慢したがってる男には、させておいてやるもんだぜ」 「何だい、それ」 眉根を寄せるレズリーに、森崎が一度首を振ると、改めて退店を促す。 「いいから。ほら、先に出てな」 「あ、こら、押すなって! もう、分かったから!」 「……ふぅ」 どうにかレズリーを扉の外に追いやると、森崎が疲れきったように肩を落として店主へと向き直った。
[725]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:20:56 ID:??? 「これで、足りるかい」 腰に下げた、財布代わりの革袋から十数枚の銀貨を取り出すと、 店主の恭しく掲げる皿へと並べてみせる森崎。 「……はい、承ります。ありがとうございました」 「さっきの勝ち分がすっ飛んで、まだこれかよ。とほほ……」 銀貨の種類と枚数を瞬時に見分け、深々と頭を下げる店主に背を向けると、森崎が力なく 片手を振って扉の方へと歩み出す。 「またご贔屓に」 背にかけられる店主の声は、軽くなった財布を安々と突き抜けて森崎の精神に突き刺さる。 押し出されるように、ため息が漏れた。 (……けど、まあ) しかし、と。 重厚な扉を押し開けて、隙間から流れ込んでくる夏の夜の匂いを感じながら、 森崎は階上できっと不機嫌そうな顔をしているであろう少女を思い浮かべる。 今日という一日。 これまでとは違う、様々な表情を見せたレズリーという少女。 その代価としては、この出費も決して高くはないのかもしれない。 そんな風に、森崎は思うのだった。 『overreach yourself』(了) .
[726]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:25:02 ID:??? *D26.9月 フレーバーテキスト選択 *ドロー 今月の巻頭特集は → !card スペード→ 情報「ダナン造反疑惑」 ハート→ 日常「燐光石と悪代官」 ダイヤ→ 情報「ヴァン=トルキア継承戦争」 クラブ→ 歴史「ハンガリア革命」 JOKER→ 視点「老婦人の憂鬱」 ※ !と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。 このドローでの分岐は順不同です。JOKERを除いてカード序列による有利・不利は特にありません。 ****** といったところで、一旦ここまでの更新とさせていただきます。 9月の訓練所イベントでは兵数補充と、そして皆様から案を頂いた追加ネームドキャラが登場します。 それではまた、次回更新にて。
[727]傍観者 ◆YtAW.M29KM :2012/09/21(金) 14:53:48 ID:??? 今月の巻頭特集は → クラブ3 久しぶりに選択肢JOKERを拝みたいのう
[728]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/24(月) 18:03:32 ID:??? >>727 せっかく用意したものですし、いつか陽の目を見てほしいですねw ****** ◎ハンガリア革命 ハンガリア共和国は新興国家である。 革命によって王政を打破し、議会共和制を敷いた。 旧国名をボルキア王国という。 このボルキア王国、人口で多数を占めていたのはハンガリア人であったが、 支配階層にあったのはボルキア人であった。 ボルキア人とはハンガリア人と祖を一にしながら、かつて北西熱帯圏に覇を唱えた アマーズィーグ人の血脈を受け継ぐ人種である。 彼らは血統による貴族主義を貫き、長らく多数派のハンガリア人を支配した。 しかし近年、同じ南欧のゲルタニアで成功した市民革命を目の当たりにすることにより、 不遇をかこっていたハンガリア人には革命への火種が燻っていた。 きっかけとなったのは、テロリズムである。 ボルキア王都ナオネトで起きた、政府施設連続爆破事件。 犯行声明はなく、動機も犯人もいまだ杳として知れぬその事件で、一人の男が死んだ。 フェルナンド・E・ルシタン。 ボルキア王国皇太子、次期国王となるはずであった青年である。 国王を筆頭とするボルキア人支配層はこれを当然の如くハンガリア人によるものと断定した。 報復は、苛烈であった。 国内で左派とされていた組織の関係者、ハンガリア系の文化人、知識層が軒並み検挙され、 相次いで壮絶な獄死を遂げた。 そうしてこれが、結果的にボルキア王国の致命傷となる。 ハンガリア人の怒りに火がついたのである。 革命戦争が、始まった。
[729]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/24(月) 18:04:34 ID:??? 国軍士官の四分の一、下士官の半数強、兵卒に至っては八割を占めるハンガリア人が 雪崩をうって革命軍に参加した。 膨大な兵力差に焦りを覚えた王権派は隣国に救援を要請したものの、先のゲルタニア革命戦争への 介入失敗で手痛い打撃を受けたプロキアはこれを無視。 同じく介入に失敗し、加えてボルキアとは西洋圏−マルタギニア交易の中継点として 鎬を削っていたドルファンもまた、国内安定を優先するとの名目で出兵を拒絶する。 このとき港の実権を握っていた富裕商人層の多くはボルキア系であり、ハンガリア系商人は その傘下に過ぎなかった。 ドルファンの介入を操作したのは、このハンガリア系商人である。 彼らは、革命政権が成立した暁には銀の輸入に高率の関税を設定するとドルファンに打診した。 事実上、西洋圏航路からの全面撤退宣言である。 これにドルファン海運局交易顧問、ベイラム・オーリマンが呼応。 王室会議に強く働きかけ、遂に出兵拒否に漕ぎ着けたのであった。 王権派は残る隣国ヴァン=トルキアに望みを託すものの、地域領主による自治意識の強い ヴァン=トルキアの足並みは一向に揃わなかった。 西部諸侯は旧来よりボルキア王国との地縁・血縁による関係が深く、救援要請に対して 即時の出兵を主張したが、財政上の問題から軍事行動を倦厭する東部諸侯は対応を留保。 ようやく連合議会での採決に持ち込まれたのが王都ナオネト陥落の前日という有様であった。 ナオネト陥落の翌週、革命軍の拠点ボルドーを新たな首都としてハンガリア暫定政府が発足。 国王以下、王位継承権十七位までの男子は処刑台の露と消えた。 暫定政府は亡命に成功した一部貴族の引渡しを周辺諸国へ求めたものの、これは悉く拒絶される。 南欧の慣習法上、血縁関係にある貴族を見捨てることは領有地の所有権を放棄するに等しいと 一般的に考えられており、引渡しの拒絶は無理からぬことであった。
[730]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/24(月) 18:05:47 ID:??? またこのとき、爵位を持たぬ中流ボルキア人の多くが迫害を恐れ、難民として大量に ドルファンやヴァン=トルキアへ流入したため、無数の摩擦を引き起こしている。 このボルキア難民による混乱は南欧諸国、特にドルファン王室会議においては アレルギーとなって尾を引き、後に新たな、そして大きな社会問題の引き金となった。 (※歴史『ハンガリア革命戦争』がオープンされました) ******
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0ch BBS 2007-01-24