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【反撃の】ファイアーモリブレム40【狼煙】
[696]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:34:21 ID:??? マッハー「もっと腕を振って、足をあげて!そんなんじゃ何時まで経っても俺様には追いつけないぞ―!」 イスラス「…う、うるさい!いつか、いつかぜったいに追いついてやる…!」 彼の指導は時折頭にくることもあり、取っ組み合いの喧嘩に発展することもあったのだが イスラスの足の速さは日を追うごとにさらに洗練された物へと成長していった。 実況「さぁ、こぼれ球を拾ったマッハーくん、右サイドを一気に駆け上がる! そのあまりの速さに誰も追いつけない!そしてここで中央に折り返したァ!」 マッハー「オラッ、こいつで決めやがれ!」 イスラス「これだ!」 バシィッ!ズシャアッ! 実況「決まった〜!これで5試合連続ハットトリック達成〜! 欧州jrチームの得点王であるシュナイダーくんに勝るとも劣らないこの得点力は見事です!」 マッハー「ナイスシュート、イスラス!」 イスラス「ナイスアシスト、マッハー!」 常人の倍速で走るドリブラーがいる。それだけでアヤックスjrチームの攻撃力は飛躍的に高まった。 ツートップの片割れであったイスラスも、彼のアシストのお陰で一躍名ストライカーの仲間入りを果たす。 だが、この夢の様な時間はそう長くは続かなかった。楽しい時間がすぎるのがあっという間なように、 まるで彼の光の早さのようなスピードであの運命の日はイスラスの前に訪れる。 イスラス「……ぷはっ!よーし、タイム0.3秒も縮まった!」 マッハー「うげげ、また随分速くなりやがって〜」
[697]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:35:31 ID:??? イスラス「お前に追いつき追い越すのが俺の目標だからな」 マッハー「言ってくれちゃって。お前が進んでいる間、俺だって前に進んでることを忘れるなよ〜」 白い歯をむき出しにしたサルのような小憎らしい笑顔で突き出してくる時計の数値を見てイスラスは肩を落とす。 イスラス「お前も0.3秒縮めてんのかよ。まだ速くなるってのか…?」 マッハー「世の中は広いぜ。中には100mを5秒で走るって噂のあるやつだっているらしいんだ。 俺の目標はとりあえずソイツさ。お前も目標はもっと高く持つべきだぜ」 イスラス「漫画の世界じゃあるまいし。そうじゃなかったらきっとソイツはサイボーグかピーターパンってところだろ」 練習場の帰り道。午前中で練習が終わった今日は、寮ではなく実家に帰る予定だった。 マッハーの妹がスクールの運動会で一番になり、そのお祝いでホームパーティーを開くという。 我が両親ながら実に親ばかであり、けれども血のつながりなど無くとも 別け隔てなく愛を注いでくれることが分かる嬉しいことでもあった。 マッハー「よーし、そんじゃあ家まで競争だぜ!ヨーイドン!」 イスラス「ま、待てよ!いっつもお前は勝手に走り出しやがる。少しは周りに合わせろよ」 マッハー「お前がその口を言うか!ウシャシャシャ」 イスラス「(相変わらずムカツク笑い方しやがって。今回こそぜってぇ負けねぇ)」 この競争も、結局イスラスは一度もマッハーに勝つことは出来なかった。 それでも、彼との僅かな時間の息を呑むデッドヒートは常日頃の楽しみの一つだった。
[698]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:36:34 ID:??? 公園を抜け、路地を飛び越え、倉庫を通り過ぎる。 驚き後ずさる通行人をすり抜けつつ、二人は風のように走り抜ける。 そろそろ家が見えてくる。見通しもよく、車通りも少ない、 子供の落書き帳のようなアスファルトの地面の斜向かいがゴール地点だ。 ???「にーちゃーん!イーくーん!早く早く!」 マッハー「おおー我が可愛い妹よ。兄ちゃんが今抱きしめて頬ずりして……あ、危ない!」 マッハーの妹が二人を迎えにと飛び出した道路の先に、 トラックのせり出したフロント部分がマッハーの視界に写った。 マッハー「あの馬鹿!俺達の事ばかり見てて横の車に気づいちゃいない!このままじゃ…いや、まだ間に合う!」 イスラス「マッハー!」 彼の蹴った足から巻き上がる風に引っ張られるようにイスラスも後を追う。 腕を振り、足を上げ、そうして初めてマッハーの隣に並んだ。 マッハー「シャルーーーーーッ!」 シャル「きゃあーーっ!?」 イスラス「あああああああああーーーーーっ!!!」 ズダダダダダダダダッ!キキーーーッ!!ドガシャーーーーーン!
[699]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:37:40 ID:??? 三杉「……じゃあ、その足の事故っていうのは今の話のことだったのか」 イスラス「俺が目を覚ましたのは病院だった。程度の差はあれ、3人とも事故からは逃れられなかった。 それでもマッハーの妹……シャルは頭を軽く打っただけで済んだし、 マッハー自身も打ち身と左足の骨折と、命にかかわる程の怪我じゃなかった。 だが、俺の右足は車に乗られてひしゃげ、皮膚の組織は完全に壊れちまっていたらしい」 ジャージの裾をめくると、今でも痛々しい手術の後と、皮膚の色が全く違う脚部が顕になる。 イスラス「この皮膚を提供してくれたのはマッハーだ。馬鹿だよな。勝手に追いかけて 車に自分から突っ込んで大怪我した俺のためによ」 森崎「(イスラスの『星のかけら』を握った時の情景……。間違いない。この事だったのか)」 シェスター「事故のことも驚いたが、あのマネージャーの子がお前の義理の妹だったとはね」 マーガス「でも、今お前がここにいるってことは無事に回復したってことだよな」 イスラス「ああ。驚くほどの回復の速さだと医者も驚いていた。 ……だが、それとは逆に、マッハーの治りは異常なほどに遅かった。 俺が松葉杖を手放した次の日、その松葉杖をアイツが使い出したのには不思議に思った」 レンセンブリンク「……おかしいですね。君がチームに復帰した時期とほぼ同時に マッハー君も復帰していると過去の資料には書かれていたのですが」 イスラス「ああ、そのことか。この話には続きがあってな――」
[700]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:38:57 ID:??? 二人のスピードスターの帰還に、コーチもチームメイトも喜んでくれた。 だが、イスラスは痛々しい姿でリハビリを続けているマッハーの姿を間近で見ていた。 本来、彼がここにいるはずがない。それなのに何故――。 シャル「ぶえっくしょん!ううー、誰かが噂でもしてるのかなぁ。 ……えーっと、アルバムアルバム。どこにしまったっけ」 中里から没収したイスラスの写真をしまうために、シャルは自室の荷物入れを片っ端からひっくり返していた。 シャル「あ!あったあった。うう〜ん、いつ見てもこの頃の自分は無茶しすぎてたよね」 今自分が着ているマネージャー用のジャージではなく、選手用のユニフォームに身を包む自分の姿がそこにはあった。 お団子状にして頭上にまとめられるくらいの長さの鮮やかな金髪は、この頃には跡形も無い。 綺麗に丸刈りにし、兄の生き写しのようなサルのように歯をむき出しにしながら笑う子供の頃の自分を見て、思わず吹き出してしまう。
[701]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:40:07 ID:??? シャル「にーちゃんの足、まだ治らないの?」 林檎の皮を慣れた手つきで剥きながら、シャルはベッドに足を投げ出して唇を尖らせる兄のマッハーを呼ぶ。 マッハー「いや、もう治ってるさ。普通に歩いたり飛んだり、走ったりするなら問題ない。 でも、前みたいに風のように走ってボールを蹴ることは難しいってだけさ」 シャル「でも、にーちゃんよりひどい怪我だったいーくんはもうピンピンしてるよ。 にーちゃんからもらった皮膚のおかげだって、すっごい喜んでた」 マッハー「ハハッ、なんでだろうねぇ」 シャル「兄さんの足、まだ治らないの?」 ギブスカバーを慣れた手つきで縫いながら、シャルはリハビリ室で玉のような汗を流す兄のマッハーを呼ぶ。 マッハー「まだだ。まだ。クソッ!ボールを蹴りながら走ることが……こんなに難しいことだったなんてな」 シャル「イスラスは、明日からクラブチームに復帰するんだって。 リブタも、コーチも皆が喜んでくれてる。私も嬉しいよ。だから兄さんも……」 マッハー「……なぁ、シャル」 シャル「ん?」 マッハー「俺を一発ぶん殴ってくれ。できるだけ強く」 シャル「あ、あはは……兄さん、いつのまにそんな変態趣味に目覚めちゃったの?」
[702]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:41:07 ID:??? マッハー「いいから頼む!……俺、アイツのこと一瞬でも恨めしく思っちまった。 皮膚なんか提供しなきゃよかった、そうすれば今頃俺がアイツのように走れてたのにって。 最悪だよ。最低だよ。……なぁ、だから頼む。この馬鹿兄のふざけた頭を叩き起こしてやってくれ」 シャル「……兄さん……あ、イスラス!こ、これは違うの!その、そのね……」 間の悪いことに、お見舞いに来たイスラスに今の会話を聞かれてしまっていた。 イスラス「………」 翌日、マッハーは専門医の勧めもありポーランドの病院へと移されることになった。 イスラスと同じく、他人の皮膚を移植されたとある名医がいるという。 マッハー「…結局見送りには来てくれなかったか」 シャル「復帰戦でスタメンを任されたからって。でも、ホントは兄さんと顔を合わせづらいんだと思う」 マッハー「……一つ頼みごとをしてもいいか?」 シャル「なに?」 マッハー「俺の代わりに、傷ついちまったアイツを助けてやってくれ。 お前なりの方法で構わないから。俺がこの怪我を治して戻ってくるまででいいから」 シャル「……うん。任せてよ。兄さん」
[703]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:42:19 ID:??? シャル「あれからもうすぐ10年かぁ。時が経つのは速いよね。兄さんの足の速さといい勝負かも」 その日からシャルは長い金髪を狩り落とし『マッハー』と名乗った。 ジュニアクラスと言えどもやはり男女の実力の壁は厚く、なかなか兄のような結果は残せない。 幸いなことに、周囲からは怪我の後遺症だろうと思われ、実力不足のカモフラージュになっていた。 それでも足の速さだけは兄ゆずりであったため、ウインガーとしての働きはしっかりとこなせていた。 シャル「兄さんのようになりたくて。イスラスの隣に立ちたくて。 ただそれだけのために頑張ったなぁ。フフッ」 寮生活で自分がマッハーではなくシャルだとバレないように生活するのには苦労した。 まず男子トイレに一緒に入るのが怖い。練習後のシャワーも決まって最後に入ることを心がける。 小さい頃から兄の背中を見ていただけに姿格好の真似は楽だったが、これは大きな誤算だった シャル「結局数週間でバレちゃったんだっけ。それも、大会を控えた最悪な時期に……」 欧州jr大会の試合前。大会規定で男児のみのチームでアヤックスjrは決勝戦まで勝ち進んできた。 皇帝シュナイダーと黒狼イスラスの初対決に記者や観客が騒ぐ中でのことだった。 イスラス「よくもまぁ、あれだけの間男だけの生活を切り抜けられたものだ。 自分がチームに入れば失格になる。そう言って走り去るアイツを俺は追いかけた」
[704]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:43:37 ID:??? 逃げるシャルはマッハー譲りの俊足だったが、今の自分は常人の倍速以上に走れる自身があった。 徐々に差を詰めていき、入院生活のせいで痩せたのだと思い込んでいた細い体を抱きしめる。 イスラス「……逃げんなよ」 シャル「だって……逃げなくちゃ、みんなに迷惑かかっちゃう!」 イスラス「お前がどうして今までマッハーのフリをしていたのかはこの際関係ねぇ。 だが、俺達が決勝まで勝ち上がってこれたのは間違いなく『お前』がいたからだ」 シャル「そんなことないよ。点を決めたイスラスやブロックで頑張ってるリブタのおかげだよ」 イスラス「俺にサイドからのセンタリングを上げたのは誰だ? リブタが弾いたこぼれ球を懸命に拾い続けたのは誰だ? 全部お前が…マッハーじゃなくシャル。お前がやり続けたことだろうが」 シャル「それじゃダメなんだよ!わたしは兄さんに……兄さんが傷つけたイスラスを励ましてくれって言われて…… いつも兄さんと一緒に楽しそうに走るイスラスに戻って欲しかったから……だから……」 イスラス「アイツ……そんなこと気にしてたのか。 あの時何も言わずに立ち去ったのは、別にアイツの妬みにショックを受けたとかじゃなくてだな」 シャル「へ?そ、そうなの…?」 イスラス「普通ドン引きするだろ。思い切り俺を殴ってくれと自分の妹に追いすがっている姿を見たら」 シャル「……あ、あはは……そ、そうだったんだ。なんだ……イスラスは兄さんのこと嫌いになったりなんかしてなかったんだ…」 イスラス「アイツは俺の目標だからな。ポーランドで必ず怪我を治して俺の所に戻ってくると信じている。 だからお前もこんな無茶してんじゃねぇよ」 シャル「……うん!」
[705]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:44:57 ID:??? イスラス「その後、俺はシャルを引き戻して監督や仲間を説得した。 こいつをマッハーではなくシャルとして、 今までアヤックスを支えてくれた同じ仲間として試合に参加させて欲しいと」 三杉「……けれども、現実はそう簡単には甘くなかった。 目の前に優勝が見えているのに、下手をすれば失格を言い渡される原因を わざわざ試合に持ち込むわけにはいかなかった」 レンセンブリンク「……シャルさんには酷な話ですけど、それが普通の監督が取れる判断ですね。 それ以来、君は最後まで賛同してくれたリブタを除き、 チームメイトとの必要以上の交流を絶ったと。そういうことですね」 イスラス「結局その試合は俺もリブタも出なかった。子供の我儘だと馬鹿にされたとしても――。 俺はアイツの思いを無駄にはしたくなかったし、大事にしてやりたかった。 その後アイツは選手を止め、マネージャー業に専念することで今回の騒動の責任を取り…… 俺は周囲から厄介がられる問題児として扱われるようになった。……まぁ、こんなところだな」 シェスター「んだよー結局最終的にはただのノロケかよー。ヒューヒューウラヤマシイコッテー」 三杉「ボクが研修生としてチームに合流するのはそれから数年後のことだね。 思い返してみれば、君がリブタとシャル以外に心を開いていなかったことにも納得だよ」 マーガス「なるほどなぁ。あのマネージャーの俊足にはなにか秘密があるかと思ってたけど、 彼女の兄貴、そんなにすごいスピードの持ち主だったのか」 レンセンブリンク「北欧リーグでごく僅かな期間ですが、試合記録が残されていますよ。 18歳の時に怪我の再発で選手生命を失ったと聞きますが、 噂ではあのジョアンコーチの指導を受けて復帰が待たれているとかいないとか」 イスラス「なにィ!それは本当なのか?」
[706]モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/12(金) 07:46:49 ID:??? ビクトリーノ「あ、その噂話は俺も聞いたことがある。ルーベンさんっていう俺の先輩から教えてもらった。 様々な国の素質のある選手を集めて、コーチングしている人がいる。その名を『ジョアン』と」 森崎「ジョアンコーチ?その人ってそんなにスゴイ指導者なのか?」 三杉「君に説明するのならジョアンコーチはあの元セレソンでもあるロベルト本郷の恩師と言えば分かりやすいかな?」 森崎「うげぇ!あの変態の恩師だってー!?きっとあの人以上に異質な存在なんだろうなぁ」 三杉「……分かっていてもそう言わない。確かにあまり関わりあいになりたくはないかもしれないが」 イスラス「(マッハーは必ず戻ってくる。そのジョアンという人の指導を受けて。 そしていつかまた、あの日のように。アムステルダムの街を一緒に風のように走り抜けたいものだ)」 レンセンブリンク「…ふぅ。さて、僕たちの用事は済みましたけど、貴方方も彼に何か用があったのではないですか?」 森崎「あ、そうだそうだ。ビクトリーノ、例のブツを出してくれよ」 ビクトリーノ「おう」 ビクトリーノは昨日の泥棒騒ぎの件で、自分の鞄に異物が混入されたことを皆に話す。 ビクトリーノ「森崎の話だと、こいつは偽装された麻薬の可能性もあるってことだ。 そんな不気味なもの手元に置いておきたくないし、 かといって気軽に捨てるわけにもいかねぇ。誰かに拾われでもしたら大変だし」 森崎「というわけなんだ。偽装の話をしてくれたお前ならなにかいい提案があると思って相談したいんだが……」 イスラス「(こいつは……!)」 懐かしい箱詰めのお菓子。それは大好きだったグミキャンディーとひどく似ていた。 思わず食べたくなる衝動を抑えつつ、イスラスが取った行動は……
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0ch BBS 2007-01-24