※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ
現行スレ
投票
最新20
板
1-
前
次
新
レス
【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】
[129]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:53:08 ID:??? 森崎の軽口には無言を貫いた賢明なカイルが、はらりと書類をめくると 次の話題に移ろうとする。 「それと、もう一点―――」 と言いかけた、そのとき。 「―――邪魔するぞ」 静かな、しかし有無を言わせぬ圧力を持った声音と共に、無造作に扉が開かれた。 執務机に座る森崎の正面である。 「……何だ、お前ら。誰の許しがあってここまで入ってきた」 そこに立っていたのは、男が三人。 外套に脚絆、どちらかと言えば旅支度に近い軽装ではあるものの、剣を帯びた男たちである。 油断なく男たちを睨みながら、森崎は机の下に隠れた手で愛剣の柄を探ろうとする。 一瞬の緊張感を引き裂いたのは、カイルの高い声であった。 「あなた方は……! そんな、着任は来月という話で伺って、」 「……?」 それを聞いた森崎が、険しい顔の表面に疑念の色を浮かべる。 言葉通りに聞けば、カイルは闖入者たちを知っているらしい。 カイルにちらりと目をやって一歩進み出たのは、中央にいた男である。 「先乗りだ。部隊を預かる者として、現地の状況を確認しておくのは当然だからな」
[130]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:55:53 ID:??? 低く落ち着いた、しかし聞く者に奇妙に違和感を抱かせるような声音。 そしてまた穏やかという印象からは程遠い、それは男である。 浅黒い肌に、焼け焦げた薪のような巻き髪は西洋圏出身の特色だ。 精悍、と呼ぶに相応しい顔つきの中、異質なのは瞳である。 薄い灰色の瞳には、およそ揺らぎというものがない。 感情、衝動、意思、欲求、そういった人というものを構成する一切が、そこには存在しないように見えた。 精巧な硝子細工が眼窩に嵌っているような、そんな印象を与える目を正面から見据えながら 森崎が身振りでカイルに話を促す。 はっとしたように背筋を伸ばし、カイルが口を開いた。 どこまでも職務に忠実な青年である。 「……先ほど申し上げようとしていたのは、彼らの件です」 「……」 「ドルファン陸軍編成部はこの度、外国人傭兵大隊の増設を決定しました」 カイルの選んだその単語に、森崎が片眉をぴくりと上げる。 「増設……? 増員、じゃなくてか」 「申し遅れた」 カイルが何かを答えようとするより早く、正面の男が言う。 その声に、森崎はようやく違和感の正体を感じ取る。 眼前の男の言葉には、人としてあるべき感情が篭っていないのだ。 瞳と同じ、細工物から発せられる音の塊。 嵐の夜に風の鳴る、あるいは瀑布の落ちゆく怒涛のような、声ではなく音としか言えぬ、 そんな音がどうしてか意味を持ったが如き、それは言葉なのだった。 「ドルファン陸軍、外国人傭兵『第二』大隊長、カルロス・サンターナだ。 我が傭兵団三百名、十二月一日付の着任となる」 「第二、大隊……」 森崎の呟きを引き取るように、カイルが続ける。
[131]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:57:10 ID:??? 「はい、隊長。我々、第一次徴募による旧大隊は第一大隊と呼称が変更されます。 編成その他に変更はありません。詳しくは後ほど書面に目を通していただくつもりでしたが……」 「一足早くご挨拶に来ていただいたってわけか」 「……あァ?」 森崎の言葉に含まれた棘にいち早く反応したのは、正面の男ではない。 その向かって右後方、赤銅色の肌を持つ偉丈夫であった。 正面の男の瞳が硝子細工だとすれば、この男の目は飢えた獣のそれである。 混血なのか、薄い金色の髪を無造作に伸ばしたその下から睨みつける表情たるや 気の弱い者であればその場で卒倒しかねない、凶悪な代物であった。 そんな男が筋骨隆々たる肩を怒らせ、ずいと進み出て森崎を睨めつける。 「おう、東洋人。隊長だか何だか知らねえが、あんまりナメた口を利くんじゃあねえぞ」 「……」 「名高いヴァルファの将を討ち取ったとかいう面ァ、一応見に来てやったがよ……」 唸り声を上げる獣のような男が、牙を剥いた獣のような顔で笑った。 「ハン、何かの間違いだったんじゃねえのか?」 あからさまな侮蔑混じりの言葉に、森崎は―――
[132]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 20:01:08 ID:8a1flvAQ *選択 A 「上等切んなら名ァ名乗れ、赤犬野郎」 言い値で喧嘩を買う。(必要CP:2) B 「なあ第二大隊長さん、躾はきちんとしておいてくれよ」 こちらのペースで喧嘩を買う。 C 「さて、俺だけの力で成し遂げたことではないからな」 事を荒立てないようにする。 D 「……それで、その第二大隊が今日は何の用件だ」 完全に無視する。 森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。 その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。 期限は『11/23 1:00』です。 ****** 訓練所パートの主要人物もこれで概ね揃い踏み、といったところで 本日の更新はこれまでとさせていただきます。 お付き合い、ありがとうございました。 それではまた、次回更新にて。
[133]傍観者 ◆YtAW.M29KM :2012/11/22(木) 20:34:54 ID:??? B 森崎は臆病者ではないけど、バカでもない、ということで。 ある意味では向こうの隊長の器を問う、ということでもあるかなー。
[134]ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/22(木) 22:50:39 ID:??? D ただのバカ犬に喧嘩を買うのは宜しくない 相手は隊長でもないし、無視して話を進めれば大人しくなるはず カルロスが隊長なら信用もできるし
[135]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/22(木) 23:25:19 ID:??? C実際森崎一人で倒した訳ではないですから。 それにどんな形であれ喧嘩を買えばカルロス隊長の面子を潰すのではないかと思います。
[136]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:42:59 ID:??? 皆様、ご回答ありがとうございます。 それでは早速、>>132の選択については…… >>135 さら ◆KYCgbi9lqI様のご回答を採用させていただきます! なるほど、相手の面子を考慮するというのは想定の外でした。 言われてみれば確かに、ということで内部的に礼法値が上がりつつCP3を進呈いたします。 >>133 はい、お互い小手調べといった意味も含めての初顔合わせになっていますね。 ちなみに人物称号によってはCのような選択肢がCP必須、もしくは出現しなくなってきます。 >>134 そうですね。大人しくなるか…はともかく、同じレベルでやりあう必要はない場面でしょう。 サンターナについては訓練所パートでは重要な位置づけになってきますので、今後をお楽しみに、 といったところです。
[137]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:43:59 ID:??? *** C 「さて、俺だけの力で成し遂げたことではないからな」 森崎がそう告げたのは、紛れもない事実であった。 ヴァルファ八騎将、『疾風』ネクセラリアを打倒し得たのはヤングの負わせた傷ありきであることなど、 森崎自身が一番よく分かっていた。 それ以前に一騎討ちに持ち込めたのは部隊全体が最後の最後まで恐慌も来さず戦い抜いたゆえである。 そういった諸々を無視して一人の手柄であると吹聴する狭量、貪欲、あるいは鈍磨を森崎有三という男は 持ちあわせていなかったし、また同時に眼前の狂犬じみた男の安い挑発を買い支えるつもりもない。 どういう意図かは分からなかったが、不用意に騒ぎを起こせばわざわざこちらを訪ねてきたという 第二大隊長となる予定のサンターナという男の顔を潰すことにもなろう。 「……っだと、テメエ」 しかし、あくまで冷静に返答した、その態度の意味するところが相手に伝わることはなかった。 淡々とした回答が小馬鹿にしているようにでも映ったのだろうか。 むしろ勘に障ったらしい男の顔から、侮蔑の笑みが消えた。 赤銅色の肌はほとんど熱した鉄の色に近いところまで赤く染まっている。 視線が、その凶悪さを増して森崎を睨みつけた。 「……」 森崎とて、怯懦から男の挑発を受け流したわけではない。 殺気の籠もった視線の一つや二つで慄いていては戦場に立つことも、数百の荒くれどもを まとめ上げることもできはしなかった。 無言で、しかし殺気を押し返すが如く力を込めて、男の目を見返す。 一触即発の空気が、漂った。 「……ま、まあまあ! 二人とも!」
[138]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:45:00 ID:??? 割って入ったのは、それまで後ろに控えていた三人目の男である。 高い、少年のような声だった。 サンターナと名乗った中央の男や、詰め寄っている屈強な男に比べればやや小柄な体格。 白い肌に小麦色の長い髪、そして声音に相応しい少年のような顔は、いかにも女性受けの良さそうな 柔和で整った目鼻立ちである。 「ちょっとザガロさん、何やってんですか! やめてくださいよ、もう」 ザガロと呼ばれたのは赤銅色の肌の男だった。 吹けば飛ぶような体格差、近づくことすら危うく感じるような殺気を物ともせず、 少年が男の視線を塞ぐように立つ。 「邪魔だ、どけバビントン!」 「どきません! 団長も黙ってないで止めて下さいってば! 喧嘩しに来たんじゃないでしょう」 バビントンと呼ばれた少年が中央の男、サンターナに助けを求めるように声をかける。 サンターナはといえば、先刻森崎への事務的な報告を終えた瞬間と一切変わらぬ姿勢、 一切動かさぬ表情のまま事の推移をただ見つめていただけである。 沈思する哲学者のようにも、芝居倉庫に置き去りにされた人形のようにも見える男が、 バビントンの声にちらりと目線だけを動かした。 「……そこまでにしておけ、ザガロ」 やはり何の感情も浮かべぬ声で、それだけを告げる。 しかし効果は絶大であった。 「……チッ」 渋々、といった体ではあったが、名を呼ばれた男は森崎から目を逸らし、一歩を引いたのである。 これには森崎も内心、瞠目を禁じ得なかった。
前
次
写
名前
E-mail
0ch BBS 2007-01-24