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【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】
[83]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:15:11 ID:??? 「……へえ」 「あ? どうかしたか」 「いや、なんでもねえよ」 「変な奴だな。……出すぞ、落ちんなよ」 右の一頭、アトレと呼ばれた方はそんな目線を知ってか知らずか、耳をくるりと動かして歯を剥いた。 左のスオウは我関せずとばかりに鼻を鳴らしている。 ジーンが手綱を軽く揺らすと、そんな二頭がぴたりと揃って歩を進めるのだった。 *** がたごとと、車輪が石畳を噛むたびに体が揺れる。 高級な馬車の面目躍如というべきか、乗合馬車とは比べ物にならないほど微かな揺れではあったが、 それでもまったくの静謐というわけにはいかない。 直接乗馬するときのように縦に揺られる感覚ではなく、微妙に一定でない加速が体を前後に揺らす。 睡魔を誘うようなリズムである。 「……」 訓練による披露が泥のようにこびりついた身体には、まさに甘美な毒であった。 こくりと、つい船を漕ぎそうになる森崎。 「うわ、おいばか寄っかかんな」 「……ああ、すまん」 御者台は本来、一人用の仕事場である。 見栄のためか、それとも他に何か実用性があるのか、比較的大きなスペースを取ってあるこの馬車のこと、 ひどく狭苦しいということはないものの、二人が並んで座ればどうしても互いの体温を感じるような 距離にならざるを得ない。 微かな温もりがまた森崎を微睡みへと誘おうとしたとき、ジーンが口を開いた。
[84]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:16:12 ID:??? 「この間は済まなかったな」 「……この間?」 僅かな間を置いたのは、小さな欠伸を噛み殺したせいである。 「ああ、どっかの男装美人が出会い頭に因縁つけてきたことか」 「うちのお嬢がいきなり突拍子もないこと言い出して、だ。ぶっ飛ばされてえのかこの野郎」 ぶっきらぼうに言い放ちながらも、ジーンの口元は上がっている。 どうやら今日は機嫌がいいようだった。 「というかお前、朝弱い方のヤツか?」 「あァ?」 唐突な言葉に、ジーンが怪訝な顔をする。 先ほどの意趣返しだと気づかれる前に、森崎が先を促した。 「で、こないだがどうしたって」 「ああ。や、悪気はねえんだ、お嬢には」 「だろうな」 適当な相槌。 しかし半ばまではその通りであろうとも思っている。 リンダという少女の瞳や言葉に、悪意や嘲弄の響きはなかった。 「ただ、まあ……どうにも言葉が足りねえ。それでよく相手を怒らせちまってな」 「はは」 思わず失笑する。 直截すぎる物言いは、森崎自身が経験したことである。
[85]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:17:23 ID:??? 「なまじ頭が回りすぎるんだな。だから二手、三手先だけ見て話をしちまう。 次の手を選ぶ余地がねえなら、口にする意味もねえとか考えてんだ」 「……」 がたん、と車体が揺れた。 前を行く馬、アトレとスオウはぶるりと尻を振るのみで、特に気にした風もない。 「あのお嬢さん、困ったことに相手もそれができて当たり前だと思っててな」 「難しいだろうな」 「難しいよ。だが前置きも説明も斟酌もねえ。先回りして次の選択肢だけ相手に放り投げる悪い癖が、 いくら言っても治らねえ。お嬢にとっちゃチェスか何かと同じ括りなんだ、相手と話すってのは」 「……そりゃもう、会話じゃねーだろ」 「じゃねえな、実際」 苦い笑みが、声音にまで滲んでいる。 「お前もこの間、無茶な頼みごとを押し付けられたと思っただろ。勝手なこと言いやがって、とか」 「まあな」 「お嬢としちゃな、ありゃ交渉のテーブルを用意したつもりなんだ」 「……はァ?」 さすがに看過できず、疑念を漏らす森崎。 先日の一件は指示や命令、強要の類ではあっても交渉と呼べるものではないと、記憶が告げていた。 ジーンがちらりと森崎を見て、薄い唇を歪める。 「まあ、言いたいことはわかるぜ。……つーか、いつものことだからな」 「……」 「お嬢……いや、ザクロイドの人間が生きてるのは、打算と腹芸と算盤勘定が服着て歩いて、 年がら年中互いの足を引っ張り合ってるような世界でよ」 冷たい風は、歩くよりも強く森崎の顔に吹き付ける。 肩に伝わる微かな温もりだけが、救いだった。
[86]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:18:24 ID:??? 「ま、そんな連中の常識じゃ、無理も無茶もまず単に様子見でふっかけてるだけ、 鵜呑みにする奴が馬鹿ってなもんでよ。袖にするフリされるフリ、段々と見返りをチラつかせて、 ようやくそこから話が始まるってわけだ」 「……」 ふん、と息をつく森崎。 言葉を返すことはない。 「あん時、お前があっさり話を蹴ったのも……蹴ったんだよな? まあ当然だとは言ってたぜ。 今の時点で、しかもあの要求でザクロイドが用意できる対価は、お前の立場じゃ大した益がねえ。 実は交渉の材料がありませんでしたの、なんて笑ってやがったよ」 「……何だそりゃ」 「ま、そんな顔すんなって」 森崎の渋い顔に、ジーンが破顔する。 「直感だか計算だか知らねえが、あれで顔繋ぎの印象は悪くなかったってことみたいだぜ。 俺としちゃ、単に面倒を避けただけって札に銀貨一枚だがよ」 悪戯っぽく言うジーンに、森崎は―――
[87]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:21:19 ID:/ZNkLYhM *選択 A「……さてね」 煙に巻く。 B「俺の勘も捨てたもんじゃねえな」 勘だという。 C「ま、そんなとこだろうとは思ってたよ」 計算だと主張する。 D「大当たりだ。ほれ、持ってけ」 銀貨を取り出す。 森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。 その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。 期限は『11/10 24:00』です。 ****** こんな感じで10月はあっさり目に過ぎていきます、といったところで まだ早い時間ではありますが、本日の更新はこれまでとさせていただきます。 お付き合い、ありがとうございました。 それではまた、次回更新にて。
[88]◆W1prVEUMOs :2012/11/10(土) 15:20:27 ID:x6/rndoU B 勘ピューターのスキルがゲット出来れば有利かもと思い
[89]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/10(土) 21:14:57 ID:??? B傭兵が最後に頼るのは勘と言うか嗅覚ですからね。
[90]◆9OlIjdgJmY :2012/11/10(土) 23:59:09 ID:??? A まあ実際、勘でも計算でもなく、正直な心情喋っただけですし。
[91]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:26:17 ID:??? 皆様、ご回答ありがとうございます。 それでは早速、>>87の選択については…… >>90 ◆9OlIjdgJmY様のご回答を採用させていただきます! ですよねー、ということでズバッと斬っていただきましたw CP3を進呈いたします。 >>88 スキル名:勘ピューター Lv1 種別:パッシブ 消費ガッツ:- 効果:行動判定の際に!numnumダイスを振り80以上が出れば結果が一段階良くなる。 69以下の場合は結果が一段階悪化する。この判定にはCP/EPによる数値加減ができない。 成功時に経験値が加算され、一定値が貯まるとLvアップする。 イベントで『ミスター』と呼ばれる偉大な人物に会うことができれば更なる強化も……!? ……勘をスキルにするのは、やってみると難しいものですねw しかしながら面白いご提案ありがとうございます。 CP1を進呈いたします。 >>89 はい、危機察知能力は経験に裏付けされた勘、とでもいうべきものですしね。 実際のプレイ上においても、難しい局面で最後にモノを言うのはプレイヤーの皆様の 冴え渡る勘働き、という部分はあります。
[92]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:27:43 ID:??? *** A「……さてね」 煙に巻く。 言った森崎の、しかしそれは偽らざる本音である。 結果的にどう評されているにせよ、あの時点で相手方の事情を汲み取って話をしていたわけではない。 さりとて直感と呼べるような閃きに従ったわけでもなく、ただ当然と思える対応をしただけである。 あさっての方を向きながら空惚ける森崎に、今度はジーンが渋い顔をする番だった。 「何だそりゃ」 「はは」 笑った森崎が、ぐ、と背を伸ばす。 凝り固まった筋が伸びていく感覚を楽しみながら、だしぬけに口を開く。 「で、俺はどこに連れてかれてるんだ?」 「お、気づいてたのか」 「当たり前だ」 がたごとと、馬車が揺れる。 「わざわざ城の北側を回りやがって、キャラウェイ通りなんざとうに通り過ぎてるだろ。 もうマリーゴールド近くまで来てるじゃねえか」 「お前、この春にドルファンに来たんだろ? よく分かるな」 「そりゃな……」 と、辺りを見渡した森崎の目に映るのは、閑静な、というよりは独特の静謐に包まれた邸宅街である。 道の両脇にはどこまでも高く続く塀、点在する緑は手入れの行き届いた生垣だった。 猥雑なシーエアーや庶民の家々が立ち並ぶフェンネル、牧歌的なカミツレではありえない光景であり、 かといって城央近くの喧騒や人通りもないとなれば、いかに新参者の森崎といえど迷う余地がない。
[93]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:29:03 ID:??? 「そもそも、お前が俺なんかを送ってくれる理由、ないだろ」 「まあな」 長い銀髪を夕陽の朱に染めながら、ジーンはどこまでも悪びれない。 口笛すら吹き始めたその横顔に、森崎が小さくため息をついた。 肩から伝わる体温は、それでも秋の夕暮れどきには心地いい。 *** 純白の馬車がようやくその足を止めたのは、とある広大な敷地の片隅である。 国立公園の一角のような光景に、森崎がジーンに尋ねる。 「……ここは?」 一体どれほどの広さを持つのだろうか。 面積では森崎たちが日々の鍛錬を行なっている訓練所に勝るとも劣らないように見える。 決定的に違うのは、その質である。 荒れ放題の訓練所とは違い、この敷地には小石一つ見当たらない。 一面に広がった芝生は丁寧に刈り込まれ、整然とその背を揃えていた。 「ここか? ま、ザクロイドが持ってる運動場だ」 「なにィ!?」 愕然とジーンを見やる森崎。 嘘や冗談を言っている顔ではなかった。 「デカいことはいいことだ、ってのがお館様の信条でな」 「それにしたって……」
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0ch BBS 2007-01-24