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【早苗】鈴仙奮闘記28【サッカー好きか?】
[374]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/04(月) 19:54:30 ID:??? *** ピエール「……本当に良いのか、それで」 早苗「えっ? ……これはまた、おかしな事を仰りますね、ピエールさん」 ミーティング終了後、守矢みらくるずの面々は一旦解散する事となった。 そして、神奈子と諏訪子がスタジアムの修理業者と打ち合わせに行った隙を見計らい、 ピエールは早苗と二人きりで会話をする機会を得、そう口火を切った。 ピエール「俺は考えていた。……世の中に蔓延る矛盾や建前、あらゆる欺瞞について」 早苗「政治経済の話ですか? 良く分かんないけど、アメリカが悪いんですよ」 ピエール「いや。そういう話で無くてだな……」 きょとんとした早苗の表情を見ると、ピエールは何となく躊躇ってしまう。 しかし、彼は葛藤の中、結論を――自らがすべき事を既に見出していた。 ピエール「……俺の母国で、とあるサッカー大会があった。 その大会は本当に大規模で、世界中から様々な国の選りすぐりが集まっていた」 早苗「世界中の! うわあ、すっごいなぁ。私なんて、国内大会でもヒイヒイ言ってたのに」 ピエール「……少なくとも今の君は、充分世界に通用する水準に達していると思うよ。 ――まあ、論点はそこでは無くて。俺はその時、大人には大人の理屈があるとハッキリと知った。 美辞麗句で理想郷の如く世界を賛美していた俺の回りの大人達は、 その実、自身の利得にがめつく強欲で、その為には他者を利用する事こそ厭わないと」
[375]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/04(月) 19:55:53 ID:??? 先のフランス国際Jr.ユース大会の時、ピエールは今の早苗と同じような立場に立たされていた。 自分自身は、フランスが誇るフィールドのアーティストとしての過大な期待を受け、 周囲の大人は、その期待(による利益)を守る為、審判の買収行為を平然と行う。 それはまさに、この大会で神奈子達が早苗に押し付け、また信仰の名の元にやって来た行為と一緒では無いのか。 ピエールはそう感じ、そして先程の神奈子と早苗とのやりとりを見て確信した。 早苗「ピエールさん。……結局何を言いたいんですか? 今の世の中、結論を先に言ってのけるプレゼン能力が無いと、社会でやってけませんよ?」 対する早苗はピエールの言外の意図に何も気づいていないのか、訝しげにピエールの結論を促している。 ピエール「(ええい、神への恩義など知った事か!)……すまない。つまり。俺が言いたいのは――」 ――そして、応じるがままに、ピエールは自身の知る全てを話した。 つまり、早苗が今まで劣等感を覚え落ち込み、そしてチームから……ヘタをすれば幻想郷の秩序からも 追い出そうとしたのは、全て神奈子と諏訪子が仕組んだ、大がかりな誘導作戦であった事を。 早苗は自らの意志で行動しているように見えて、その実全ては神奈子達に管理されていたのである事を。 神は早苗の苦悩について何も考えておらず、ただただ自分への信仰が尽きぬよう、狡猾に立ち回っているだけである事を。 ピエール「……神は君の事を愛していない。ただ自分の都合で利用しているだけだ。 ――神だって、俺の周囲にも居たような程度の低い大人と一緒、いや、それ以下だ! ……だから。本当に良いのか、サナエ。彼女達の意図したとおりに動く事になっても。 今回はまだ良いにしろ、これからもこうして、神の意図に翻弄されて生きるのか? それは自分自身をカラッポにしてまで、する価値のある事なのか?」 早苗「……………」
[376]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/04(月) 19:57:00 ID:??? ピエールは心底、この眼前の神に翻弄され続ける哀れな少女を想って、最後にそう言い切った。 それは金持ちの家の息子として、フランス一のサッカー選手として、 周囲の遠大な損得感情に翻弄される自分自身への問いかけにも近かった。 早苗はポカンとして、ピエールが暴露した内容を全て聞いていて、暫く黙っていた。 ピエール「……この事を君に話したのは、完全に俺のエゴだ。 君はこの事を知らなかった方が、きっと幸せだったに違いない。 でも、……俺は見てみたかった。純真な君が、神の残酷さを知ってどう感じ、どう行動するのかを」 早苗はどうするだろうか。これまで信じていた神に裏切られたと知り、復讐を決意するだろうか。 そうで無くとも、これまでの自身の行為の無価値さを知り、改めて自立に向かうだろうか。 結果から言うと、早苗の反応はピエールが考えていたどの反応とも違っていた。 彼女はあっけらかんとした口調と表情で、少年に対してこう言ってのけた。 早苗「……実は。何となくそうなんじゃないかって、思ってました。その時は余裕が無かったですけど。 でも、関係無いです。私は神奈子様がたの意志がそんな残酷だったとしても。 ――私は、やっぱりあの方々に、信仰を注ぎ続けます」 ピエール「えっ……?」 次に驚いた表情を魅せるのはピエールだった。 彼にとって早苗の言ってのけた言葉――神奈子達の黒い意図を知っても尚、自分は神を信じ続ける――が、俄かに信じがたかった。 ピエール「な、何故だ! あの女性たちは、君に対して間接的にとはいえ、むごい仕打ちをしたじゃないか! 家族としての情愛を大事にしたいという、君の気持ちも分かる。 だが、それは良く無い事だ! 君には君としての人生がある筈なんだ! 君は、自分自身を大事にすべきだ!」 早苗「……ねぇ、ピエールさん。こんな話、知ってますか」 自分自身を疎んずるような早苗の言葉に、ピエールは思わず感情的になってしまう。 しかしそんなピエールを遮るように、早苗は人差し指をピンと上に突き出して話を始める。
[377]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/04(月) 19:59:04 ID:??? 早苗「昔々、あるところに一人の男が居ました。 彼は神を信望し愛していましたが、それなのに神は彼に試練を与えたので、とても可哀想な目に遭っていました。 彼の友人は、『神が正しき者を罰する筈が無い、君は本当は何か罪を犯したのではないか』と言って彼を詰りました。 彼は始めそんな友人ばかりでなく、何も語らぬ神にさえ反発していました。 しかし色々あって最後には、彼は神のもたらす理不尽な不幸を受け入れ、愛する決意をしました。 するとどうでしょう、神は彼の真なる信仰を称え、彼の不幸を埋め合わせしたばかりか、長寿を与えましたとさ。 めでたしめでたし」 ピエール「――その話は……旧約聖書のヨブ記の事か? 信仰に殉ずる者は、最後には必ず救われると。君はそう言いたいのか?」 早苗「えっ? これって神奈子様が起源じゃなかったんですか? ……まあいいや。 ――ううん。私は逆です。私はこの話のラストがどーしようも無く気に食わないんですよ!」 早苗は自然と熱の入った口調となる。普段信仰を押し売りしている時のムードに近くなった。 早苗「私は小さい時、神奈子様からこのお話を聞いたんですが。当時から気に入らなかったんですよ! なんか、ずっこいなぁ……って。思いません!?」 ピエール「いや。俺は別に思わなかったが……。精々が、宗教話らしい因果応報だなぁ、という位だった」 早苗「それ! まさにそれですよ! 私はこの因果応報が気に入らないんです! だってこの話の男の人、途中まで報酬が無くても不幸でも神を信じるって言ってたのに、 結局最後には不幸を埋め合わせられちゃうじゃないですか! それって結局信仰で幸せになりたいだけかよ、って興ざめしちゃって……。 ――あ、いや。割と最近の私もそんな感じになっちゃってましたが」 早苗は生き生きと目を輝かせて、旧約聖書に対する苦情を申し立てている。 それは信仰による奇跡に頼り切っていた、最近の自分への自戒かもしれなかった。
[378]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/04(月) 20:01:44 ID:??? 早苗「でも、私はやっぱり思ったんです。 たとえ神が私を愛しておらずとも、神が神であるというだけで、それは奇跡なんです。愛すべき対象なのです。 人間は、見返りの為に信仰を行うものでは無いと思います。 ただ神が、神としてこの世界に目に見えず横たわっている。ただそれだけで、信仰を行う充分な理由になりませんか。 私が信仰に囚われて頭がカラッポとか、神奈子様達が暗躍しているとか。 そういった事は関係ない事です。 それは、私自身が解決すべき問題であり、信仰には何一つ関係の無い事です。 ……違いますか?」 早苗が語った理屈は、ピエールにとってはすぐには理解しがたいものだった。 しかし同時に、彼女の信仰に対する持論は、何か人間の精神活動全ての核心を突いていると感じた。 ピエール「いや、違わない。……確かに、それこそが本来あるべき信仰なのかもしれない。 原始の人間が抱いた、世界への憧憬。――まさしく原初の信仰《ネイティブ・フェイス》。 サナエ。君はあくまで、それを目指そうとするのか」 早苗「はい。確かに神奈子様達の行為や私のこれまでの生き方は、良き物では無いのかもしれません。 でも、それと私が信仰を捨てるかどうかとは、全く別ですから」 ニコリと満面の笑みで、気丈にそう頷いてみせる早苗。 ピエールはこの時になって漸く、彼女が自分の想像していたような弱い女性でない事を知った。 早苗「――てなワケで。武者修行の計画を練るので私はこれでっ!! いやー、でも武者修行って何をするのかな? やっぱりここは常識に囚われず、沖縄に行って波に向かってボールを蹴りまくるとか。 あるいは山奥に行って、大木を縦に真っ二つにするようなシュートの練習をするとか……どうですかね!」 ピエール「ハハ……(――周囲が何であろうと、自分の信ずる神を愛する……か。 言ってみるのは簡単だが、それはある意味で非常に勇気ある行為だ。……凄いな、彼女は)」 常識に囚われないようで、割ともうすでに誰かが考えているような発想の早苗を、 ピエールはどこかホッとしたような、尊敬するようなまなざしで見つめる。
[379]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/04(月) 20:03:36 ID:??? 早苗「あっ、そうだ! アフリカです! 部族の少年達と仲良くなって、 ブーメランのような軌道を描く、常識に囚われないシュートを撃てるようにするってのは……って、きゃっ!?」 ズルッ! そんな中、早苗は立ち話をしていたスタジアムの廊下にて僅かに転び掛ける。 山肌を整地して突貫工事で作った為、スタジアムの内部には段差がある場所が多い。 ――スッ、ガシッ。 ピエール「……大丈夫かい」 ピエールはそんな早苗の細い上半身をゆっくりと抱き留める。 早苗は驚いたような表情を一瞬見せていたが――。 早苗「ピエールさん。そういや私、試合前もこうして倒れかけて、助けて貰っちゃってましたね。 なんか、その時は私もカリカリしてて、ピエールさんに辛く当たっちゃった気がします」 抱き留めた格好のまま、早苗はくしゃっと表情を崩して、上目づかいにピエールを見る。 ピエールはそんな早苗の瞳に僅かにどぎまぎしながらも、 ピエール「……俺こそ済まない。偉そうな物言いだった」 ――無理はするな。貴女には貴女の生き方がある。 ピエールはそんな過去の自身の発言を恥じた。 早苗がその時辛辣に返した通り、彼女は彼女なりの生き方と信念を持っていたし。 早苗「ま、今回は大目に見てあげます。私は信者には寛容な現人神ですからね!」 そして、今の早苗を支えられる者は――確かに、そこに居たのだから。 ピエールはゆっくりと早苗の上体を元に戻して、そのまま、並んで帰路に就く事にした。
[380]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/04(月) 20:06:38 ID:??? ――と、言ったところで一旦ここまでです。 これから深夜に掛けて、妖怪の山FC対紅魔スカーレットムーンズ戦の描写をしたいと思います。 この試合では、最近案外大した出番の無かったあの天狗について中心に書いていこうと思っています。 それでは、一旦失礼いたします。
[381]森崎名無しさん:2015/05/04(月) 20:50:47 ID:??? 背番号11 射命丸 文!!乙です
[382]森崎名無しさん:2015/05/05(火) 00:40:48 ID:??? 鉄製のガラクタ(若島津)「………」 にとり「良質のジャンクパーツGET!」 華扇「なっ! 何をするだァーッ ゆるさんッ!」 にとり、マジで炎上する試合前
[383]森崎名無しさん:2015/05/05(火) 00:57:22 ID:??? 物語上の都合とはいえ出てくるたび炎上してるしなあ>にとり 能力は決して低いわけじゃないんだけど(高いとも言っていない)
[384]森崎名無しさん:2015/05/05(火) 00:59:55 ID:??? 出てくるたびに炎上。よし、にとりも姫様応援団に入れちゃおう(提案)
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0ch BBS 2007-01-24