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【優勝】キャプテン森崎48【エンディング】
[115]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 09:14:30 ID:CYeeWqvU いったんここまで。
[116]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:41:31 ID:CYeeWqvU 〜大空 翼、ファン・ディアス〜 ディアス「あれっ?」 翼「君は…!」 その年、バルセロナFCは現存するサイクロンの使い手二人を同時に獲得した。 ディアス「なんだ、お前もここにスカウトされていたのかよ。ちぇっ、俺と技が被っちゃうのに」 翼「…お互い様だろう。それにプロの世界では同じ技の使い手なんていくらでも居るさ」 世界的タイトルには恵まれないものの底知れないセンスを持つと評されるアルゼンチンの天才ディアス。 本人にしか分からない苦悩があるものの客観的には栄光の街道をひた走り続けている日本の天才翼。 共に地球の反対側から生まれた多くの同じ技と全く違う過去を持つ二人の天才が今ここに揃った。 ディアス「………」 翼「…良い目をする様になったじゃねーか、とか考えているのかい?」 ディアス「お、やるじゃん。正確には少しはマシな目、だがな」 翼「全く…お眼鏡に適ってなによりだよ」 ディアス「この程度で不機嫌になるから少しはマシ程度なんだよ。満面の笑顔で相手を堂々と見下そうぜ?」 翼「あいにく、そういうのは俺のやり方じゃない。俺は俺でやるさ」 ディアス「ふーん…ジュニアユースの頃の甘ちゃんじゃなくなったな。リオカップの時はガラス細工か?と思ったもんだが」
[117]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:43:15 ID:CYeeWqvU 二人の出会いは友好的なのか喧嘩腰なのか非常に判断が難しい物だったが、そこにはお互いを認め合う雰囲気があった。 ディアスはもとより、様々な苦難を経た翼もプロのサッカー選手らしく振る舞う事が出来ていた。 翼「色々あってね…これ以上メンタル面の隙で失敗するつもりはないよ。そこは安心していい」 ディアス「いまいち信用できねーな。ま、いいや。何がお前を変えたんだ?」 翼「別に…プライベートが安定した、とだけ言っておくよ」 ディアス「なんだ女か。月並みな奴」 翼「(やれやれ、森崎とは別の方向で付き合い辛いな…今夜、早苗に愚痴らせてもらうか)」 翼は今、心の支えを取り戻しかつてない程に安定していた。 翼は誰にも語る事はないだろう。ワールドユース大会後、日本で早苗と交わした二人きりの会話を。 早苗「翼くん…来てくれたのね…」 翼「あ、ああ…」 翼は早苗に呼び出されていた。去年ジャパンカップ終了後に二人に破局が訪れ、 彼が彼女から逃げ出した南葛市を見下ろせる小山に。 死刑囚の様な心境で現れた彼は早苗があの日と全く同じ服装をしていたのを見、 心臓を削り取る様な思いで今すぐ後ろを向いて逃げ出したくなる足を前に進めた。 早苗「何から話せば良いか分からないから…まずはこれ。あの時返し損ねた物だよ…」 翼「これは…サッカーボール?」
[118]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:44:52 ID:CYeeWqvU 早苗「ええ…あの時、貴方が置き去りにしたボール…」 翼「(…そうか。これは俺が彼女にした仕打ちの象徴なんだ…)」 彼女の姿そのものが彼の心を罪悪感と自己嫌悪で震え上がらせる。 ましてや彼女からあの時の悪夢の証のボールを差し出されると腕も足も震えてしまう。 自分がサッカーの重みを彼女に押し付け、逃げ出した事をまざまざと思い出させられる。 受け取りたくない。こんな重い罪を背負おうとしたらまた潰れてしまう。 受け取りたくない。これを返されたら彼女との絆が完全に消えてしまう。 翼の心が悲鳴を上げ、逃げろ逃げろと絶叫する。 翼「(…ならば受け取らなくちゃいけない。彼女を自由にする為に…)」 早苗「…まだ、サッカーは嫌い…?」 翼「いや。今はもう嫌いじゃない…」 早苗「そう…良かった。私のせいでずっと嫌いなままだったらどうしようかと…」 翼「君は何も悪くないよ…俺が、自分の弱さを君のせいにしたんだ…」 それでも彼の腕は動き、信じられない程重く感じるボールを受け取ってくれた。 翼の心が悲鳴を上げる。これでもう彼女と会える事がなくなってしまうと。 翼の魂が涙の川を流す。これでやっと彼女を自分から解放出来たのだと。 早苗「…そうだよね。翼くんは、弱かったんだよね…」 翼「(来た!…目を逸らすな!汚い涙を流すな!一歩も動くな!俺が押し付けた 醜いモノを全部受け止めるんだ!それが俺の男として取れる最後の責任だ!)」
[119]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:47:15 ID:CYeeWqvU そして翼はいよいよ“死刑”を受ける覚悟を決め… 早苗「私、そんな事思いもしなかった。翼くんが好きなのに、気付こうともしなかった…」 翼「………??」 早苗の泣き笑いの様な表情と声に驚愕し固まった。 早苗「翼くんだって人間で、神様じゃないのに。絶対に挫ける事なんかない、無敵のヒーローだって思っていた。 辛い事、悲しい事、いっぱいいっぱいあった筈なのに。もう嫌になって何でもかんでも投げ出したくなる 時だってあった筈だったのに。私は翼くんを一人の人間じゃなくて、翼くんって言う神様扱いしていた…」 早苗の声には怒りも憎しみも恨みも無かった。 早苗「私、翼くんをずっと応援するなんて言ってて。ただ他の女の子達みたいにキャーキャー言ってるだけだった…」 翼「…違う!違うよ!君がどれだけ俺の助けになった事か!それなのに、俺は、あんな馬鹿な事を…!」 早苗の声にあったのは後悔と労わり。 早苗「…あの時、最初は凄く悲しくて怖かった。私のせいだ、私のせいで翼くんがサッカーを嫌いに…って」 翼「違うよ!君は何も悪くないんだ!」 早苗「…しばらくしたら、私もそう怒ったわ。良く考えたら、なんで私のせいにされなくちゃいけないのって。だけど…」 翼「………」
[120]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:49:12 ID:CYeeWqvU 早苗「だけど、しばらくしたらまた悲しくなった。翼くんの弱い所、翼くんの醜い所…全然想像していなかった。 そんなのあるとも思っていなかった。私も翼くんを完璧な人だと思い込んで、押し付けていただけなんだって気付いて…」 翼「………」 早苗「それから…ちょっとだけ嬉しくなった。あの時やっと本当の翼くんを全部見せてくれたんだって気付いて。 凄いだけじゃない、弱い所も醜い所もある翼くんをやっと見せてくれる位、私の事を特別に思っていたんだって…」 そして、愛情があった。以前よりも深く厚い愛情が彼女に宿っていた。 翼「………そう、だよ。俺は…弱い。大事な相手に自分の重荷を押し付けてしまう位に…」 早苗「…だから、これからは押し付けないで。押し付けるんじゃなくて…一緒に、背負わせて」 翼は信じられなかった。最後の決着をつけ、最後の責任を取りに来た筈の場所で。 早苗「健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も。 愛し合いたい。敬い合いたい。慰め合いたい。助け合いたい。命ある限り、真心を尽くしたい…あなたと」 自分が捨てた筈の天使がもう一度戻ってきてくれたのだ。 翼「………………………………………」 早苗「…あの。流石に何か言ってくれないと…何度も練習したセリフなんだから…」 翼「…ご、ごめん。頭の中が固まっていた…」 早苗「…ふふっ」 翼「ははっ…」
[121]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:51:46 ID:CYeeWqvU そして翼はやっと微笑む事が出来た。涙を零しながら微笑んだ。 仲間とも宿敵ともつかぬ男達とぶつけあう強気な笑いではなく、愛する者とのみ分かち合える穏やかな笑顔。 翼「…俺は…まだ、君の苦しみや悩みや、見せたくない所を見せて貰っていないよ」 早苗「一緒に居れば、嫌でも見る事になると思うわ。それでも一緒に居続けたい…と思うのが愛じゃないかしら」 翼「そうか………」 早苗「……………」 翼「…今から家に行って良いかい?スペインに連れて行かせて下さい、ってお願いしなくちゃ」 早苗「ええ…!」 醜い部分も含め、相手の全てを支え合う。大空夫妻の目指す愛はそれだった。 翼「(帰る相手が居る場所があるって、良い物だなあ…)」 ディアス「おーい、そろそろ色ボケは止めろよ。折角だから少し練習しようぜ。まだ誰も来ていないんだから貸切だ」 翼「うん?良いけど、何かしたい事でもあるのか?」 ディアス「ああ。お前、三軸の回転をかけたサイクロン撃っていたじゃないか」 翼「ブーストサイクロンか。あれをやりたいのか?」
[122]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:53:42 ID:CYeeWqvU ディアス「いいや、あれよりもっと面白いモノだ。三軸の回転をかけるんならもっと良い方法があるだろ?」 翼「…ああ、なるほど。分かったけど、それは流石にかなり練習しないと無理そうだぞ」 ディアス「今日一日で十分だろ?サイクロンなんてブッツケ本番で出来るモンだしな」 翼「………ニヤニヤしながら言うなよ。俺はコントロール出来る様になるまで二週間かかったよ…」 ディアス「おーおー、凡人にしちゃ早いじゃないか。上出来上出来」 翼「君、森崎と良い勝負だよ…全く」 ディアス「そこで俺の足が壊れた事件を持ち出せないのがお前の甘い所だなー」 翼「甘くていいよ。君みたいになるつもりはないし、それで負けるつもりもないからね」 ディアス「ちぇっ、相棒としちゃつまらないタイプだなお前(パスカル…早く上がってこいよ、このステージまで)」 翼「(森崎と言いストラットと言い、そしてこのディアスと言い…なんで強いけど厄介なタイプと ばっかり組む事になるんだろう、俺。そういうのを引き寄せやすい体質なのかな…)」 大空翼とファン・ディアス。この二人がスペイン発祥の竜巻で欧州全土を脅かすのはそう遠くない未来の事である。
[123]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/06(土) 12:55:47 ID:CYeeWqvU いったんここまで。
[124]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/07(日) 11:26:50 ID:j1NDR9eE 〜カルロス・サンターナ、アルツール・アンチネス・コインブラ〜 カルロス「ほう、ツバサとディアスがバルセロナに…中々厄介なコンビが誕生しそうだな」 開催国のワールドユース大会で準優勝と言う結果はブラジル国内では散々に叩かれた物だが、 ブラジルユースの選手達を獲得したいクラブにとってはむしろ相場が下がって有難い出来事だった。 だが選手達当人はそんな外野の思惑など気遣って居られず、取り逃がした栄光を埋め合わせ 自分を更に高める為のクラブを選ぶのが最優先だと言う事に変わりはない。 ガチャッ… カルロス「あ、戻ってきたか。どうだった?先輩達の練習光景は」 コインブラ「…大した物だ。下手と思える奴が居なかった」 カルロス「そうだろう。あれが世界でトップクラスのサッカーだ」 カルロスはスペインの超強豪レアル・マドリードにスカウトされていた。 ワールドユース大会でキャプテンを務めながら10ゴール4アシストと言う結果は 誰がどう見ても腐せる物ではない。最優秀FWの呼び名もMVP認定もチームが 優勝さえしていれば受け取れていただろうと言う評論家も少なくなかった。 コインブラ「…親父も、こういう世界に辿り着きたかったのかな…」 カルロス「…そうかもな。当時のサッカー事情は今とは大きく違うが… そういえば、一つ聞いていいか?お前はサイクロンを使えないのか?それとも使わないのか?」 コインブラ「…やれば出来るかも知れんが、使おうとした事はない。親父が生きている頃に教えて欲しいと ねだった事はあったが、親父は“ただのおとぎ話だよ、そんな技は存在しない”と笑うだけだった。 結局、親父は実物を見せてくれた事も原理を説明してくれた事もない。本当のサイクロンは…俺も知らない」
[125]2 ◆vD5srW.8hU :2015/06/07(日) 11:28:16 ID:j1NDR9eE カルロス「なるほど…勝手な推測だが、ジャイロにとってサイクロンは己の誇りではなく、 己の敗北の象徴だったのかも知れない。きっとお前にサイクロンに頼らず強くなって欲しかったんじゃないか?」 コインブラ「…そうかも知れない。親父は俺に何も要求しなかった。クラブやブラジル代表に入れとも。 今になってようやく分かる気がするんだ。親父がサッカーを嫌いにならなかった理由を…」 一方長らくサッカークラブに所属していなかったコインブラはどうか? 南米で“勝利請負人A”として活動していたなどと言う都市伝説は詳しく知らない者には 胡散臭い事この上ない。それが事実だと知っても今度は“格下いびりをしていただけ”と見なされかねない。 なによりの悪材料はワールドユースの決勝戦後半からしか登場していないと言う客観的に見て 不可解過ぎる実績である。あれ程のパフォーマンスがマグレだったと言うのは流石にないだろうが、 それなら何故もっと早くから出さなかったのか?10番を与えられていながらチーム内で孤立していたのか? それともコンディションに問題がありごく短時間しか出場できないのか?まさかもしやのドーピングか? “そもそもコインブラが最初から出場していたらブラジルが勝っていただろう”と言う否定し難い声が 世界中から湧いていた事もあってコインブラは厄介な意味での話題性に尽きなかった。 もしカルロスが居なかったらコインブラのプロデビューは難航していただろう。 レアルから誘いを受けたのは当初はカルロス一人だけだった。カルロスは“もう一人お薦めの選手が居る”と 渋るスカウトを説き伏せ、フラメンゴの練習場を借りてコインブラの実力を披露したのだった。 当然スカウトは目を見開き何故これ程の選手が埋もれていたのだとコインブラを質問攻めにしたが、 ここでもカルロスが“クラブチームの年少部に入る金が無かった為ストリートサッカーの賭け試合に没頭していた” “ブラジルユースにスカウトされたはいいもののクラブ経験の無さ故に連携に不安があった為一か八かの切り札扱いだった” と事実の一部だけを明かす事で言いたくない部分を隠し、見事コインブラに都合の良い形のプロデビューをセッティングした。
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0ch BBS 2007-01-24