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【新天地は】鈴仙奮闘記35【魔境】
[171]森崎名無しさん:2016/03/02(水) 01:40:46 ID:??? 乙です カワイコちゃんに甘いとはいえ、結構ネイは協力的で良かった リオカップ前に会えたのは中々の幸運ですね、逆に運が人脈に片寄り過ぎてますけど
[172]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 00:53:42 ID:??? すみません、時間が足りず文章だけですが、更新再開します。 >>170 これで多分、リオカップは充分に戦えるようになったと思います。 >>171 乙ありがとうございます。 人脈については今後のストーリー面は勿論、ゲーム面でも活かせるようにしたいですね。
[173]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 00:54:45 ID:??? ★ネイの回答→ JOKER ★ JOKER→エベルトン「おい貴様ァ! 練習サボってナンパとは良い度胸だな!」ネイ「か、監督!」 ネイ「――ねぇ、君。最近サンパウロに出来た美味いコーヒー屋の事、知ってるかい?」 鈴仙「……はぁ?」 そして鈴仙の期待に反し、ネイは暫く何も語らなかった。 いや、正確には彼はロビーに並んだソファに座り、 延々と鈴仙にサンパウロ市内のお洒落な喫茶店や雑貨店、洋服屋などの案内をしていた。 それは多くの女子ならば垂涎ものだったのかもしれないが、少なくとも鈴仙には良く分からなかった。 鈴仙「――私は、そんな事を聞きに来たんじゃないって。さっきも言ったでしょう!」 いかにも女性をナンパする事しか考えていない彼の発言に、 鈴仙はいよいよ我慢の限界と机をバンと叩いて立ち上がる。 それには流石のネイも慌てたらしく、優男然とした表情を崩して、 ネイ「ああ……いや、すまない。君があんまりにも可愛いから。ついつい何時もの癖が出ちゃって」 鈴仙「か、可愛いですって」 そんな単語、中山さんやパスカル君は一言たりとも言ってくれなかったなぁ… とか思って、内心満更でも無くないのを隠しつつ、鈴仙はもう一度繰り返した。 鈴仙「私はね。真実を知りたいのよ。謎の凋落を遂げた名門チーム・コリンチャンス。 その全盛期を支えたヒーロー・ドトール監督に隠された過去! 私は決して、あんたの女になるために態々高い電車賃払ってここまで来てないの!」
[174]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 00:56:40 ID:??? ネイ「……………」 鈴仙の真摯な言葉に、ネイは言葉を詰まらせた。 てっきり別のナンパ文句なり弁解なりがひょいと出てくると思ったのに、 まるで年相応の少年らしく、彼は鈴仙の目をじっと見つめて呆けている。 鈴仙「ど、どうしたのよ。なんかそんな風になったら、私が悪い奴みたいじゃん」 今度は罪悪感を覚えた鈴仙が慌てる番だった。 ネイ「……素敵だ」 しかしそんな鈴仙を尻目に、ネイはますます症状を悪化させていた。 そしてそれは、鈴仙をますます慌てさせる羽目になった。 ネイ「――正直、この前のビーチで会った時から、君は何か違う。 ……そう思っていたし。それで今日もこうして話す機会を設けたかったのだけれど。 俺はどうも、君に本気で惚れちまったみたいだ」 鈴仙「……ど、どうせそれも含めてナンパの定番フレーズなんでしょ。 遊びっぽいポーズから、急に真面目ぶっても遅いんだからね」 ネイ「そんな事ない。俺はマジだ。……故郷に彼氏とかは居るのかい?」 鈴仙「ど、どーせいないわよ。私、男の人とそういうのって何かイヤだし」 ネイ「それなら、俺が教えてあげるよ。ああ、絶対に君を楽しませてあげるさ」 ネイは鈴仙の手を取った。鈴仙は背筋がぞわっとした。 ネイに対して嫌悪感を覚えているというよりは、自分が異性とこうなる事について、慣れていないし嫌だった。
[175]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 00:57:56 ID:??? 鈴仙「(ど、どどど……どうすればいいの、私!?)」 少女マンガのヒロインみたいに目をチカチカさせながら、 生理的嫌悪感の中に入り混じる、そこはかとないロマンチックに混乱していると――。 ??「おいコラァ! 練習の時間はまだ終わっていねぇぞ、そこのエロ猿ゥ!」 ネイ「――ヤベっ」 ……助け船は、ロビーの玄関から怒声と共にやって来た。 ??「ネイ、テメー。そんなに交尾の練習がしたけりゃ、俺がサンパウロ一の発展場を教えてやるよ。 病気になるまでやり放題だぜ。どうだ、良いだろう」 下品な声、下品な台詞、いかつい顔立ちにゴツゴツとした身体。 およそ地上の穢れを体現したような男が、そう大声でがなり立てると、 流石のネイも鈴仙へのアプローチを諦め、軍人の如くびしっと男の前に立ち、 ネイ「……申し訳ないです、サー」 しょんぼりとそう溜息を吐きながら言った。 しかし、その男は依然その語気を弱めない。 ??「家畜風情が、今更謝っても遅い事を学習しやがれェッ! 人間モドキが粋がるんじゃねぇぞ! どうしても申し訳ないと思うなら、今からでも練習に戻れ!」 ネイ「――イエス、サー」 ネイはやれやれと肩を竦めながら、鈴仙の方を未練ありげに一瞥して退場していった。 ??「……チッ。アイツらの根性はこんなモンか。たったクソ猿一匹が消えたくらいで、 いつまで経ってもくすぶり続けやがってよォ……」
[176]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 00:59:15 ID:??? ネイが去った後、下品な男は鈴仙の事も無視して、恨みがましくブツブツと呟いている。 突然の急接近から鈴仙を救ったという意味では、確かにこの下品な男は救世主だったが、 よくよく考えると、ネイ以上にヤバい人物が現れたような気もして来た。 鈴仙「あ、あのー。貴方は……?」 しかし、そのまま黙って帰るのも気が引けたので、鈴仙はおずおずと男に対してそう声を掛けるが。 ??「――あぁん!? ここは神聖なクラブハウスだ。 テメェみたいな売女は、存在する事自体烏滸がましいんだよ! スラム街のド真ん中で服でも脱いで、ブヒブヒ喘いでろ! メス豚が!」 ――男は鈴仙に対して何の配慮も無い罵声を投げつけるのみである。 これならグヒグヒ尻を揉んでくるだけのコーチの方が断然紳士だ。 鈴仙「――私は売女じゃありません。サッカー選手です」 あまりに無配慮な言い方に少しだけカチンと来た鈴仙は、彼に対してこう言い返してやった。 ??「あーーん? 誰もテメェの男のタマ転がしの腕なんて聞いちゃいねぇよ。 貴様みたいな不潔な女は、金輪際二度と『サッカー』の単語を口にするな。豚臭が移る」 下品な男の口は減らないが、鈴仙も毅然とこう返す。 鈴仙「――そっちこそ。女だからと決めつけて、勝手に娼婦扱いするのは、 紳士としてのマナーに反するんじゃ無いですか? 私はれっきとした、サッカー選手です。コリンチャンスに所属してます。 嘘だと思うなら、ブラジルサッカー協会にでも確認してみたらどうですか!」 ここまで言って、男の反撃が不意に怖くなって鈴仙は一旦言葉を止める。 しかし、鈴仙の予想に反して男は、
[177]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 01:00:32 ID:??? ??「……コリンチャンス、だと……!?」 これまでの横柄な態度を金繰りしてて、突然明らかな動揺を見せた。 ??「――おい、女! 貴様、本当にあのチームから来たのか!」 鈴仙「そ、そうですよ!」 鈴仙の肩に掴みかからん勢いで、男は大声でそう訊き返す。 鈴仙もつられて大声で応えるが、そこから先、男は暫く押し黙った。 そして、重苦しく、鈴仙に対してこんな依頼を持ちかけて来た。 ??「……頼む。お前が本当にコリンチャンスから来たというのなら。 ――俺を、そのクラブハウスがある場所へと案内してくれ。いますぐだ!」 鈴仙「……え。えぇ……は、はいっ!」 態度を急変させた男に対し、鈴仙は頷かざるを得なかった。 ***** 〜サンパウロ・スラム街〜 ――そこから、男は鈴仙に自身の身分とその周辺の事を洗いざらい話してくれた。 男の名はエベルトンと言い、パルメイラスのユース部門の監督をしていること、 現在チームが低迷し、自身の進退もかかっており、機嫌が悪いということ、 そして、ネイやトニーニョ、サトルステギのような中核選手に加え、今は居ない「モリサキ」という男について……。
[178]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 01:02:16 ID:??? ベルトン「……俺達のチームにはキャプテンが居た。 日本人で、クソ生意気な野郎だったが、強い力を持っていた。 ――力と言っても、腕っぷしじゃねぇ。影響力だ。ヤツはあの小せえ身体で、 ふぬけたパルメイラスの連中を無理矢理変えやがった。 ……そして、ある日突然、消えた」 鈴仙「……(森崎はブラジルでも猛威を振るっていたと中山さんから聞いたけど。 この監督にそこまで言わせるなんて、本当に凄い奴だったのね。……今、どうしてるんだろ)」 ……それから、暫くもしない内に、鈴仙とエベルトンはスラム街のド真ん中にある、 ボロボロに古びたバーの玄関へとやって来た。 エベルトンはスラム街のどの荒くれよりも乱暴にドアを開け、乱暴に周囲を見渡して。 エベルトン「……消えたと思ったら、そんな所にいやがったか」 コーチ「……グヒ?」 虫食いだらけのソファに座って煙草をふかしている老人に対し、そう忌々しげに声を掛けた。 エベルトン「……説明してやるよ。コイツは確かに、若き日は選手として、後年は監督として、 コリンチャンスの栄光時代を築き上げた」 コーチ「……………」 エベルトンは勝手に店の奥から上等そうなピンガを持って来て呷り始めた。 鈴仙は突っ立ったまま、彼の独白を聞き始める。 エベルトン「俺もまた、コリンチャンスの選手で、かつては同年代のFWとして何度もゴールを競い合った。 もっとも、俺は純粋な点取り屋で、奴は前線でゲームメイクもこなすタイプだったから、 単純な比較はできなかったが――兎に角、奴は俺の最大の友にして、最大のライバルだったのさ」
[179]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 01:03:22 ID:??? コーチ「誰じゃ? お前さんは……ワシはそんないかつい顔なんて、覚えとらんゾイ」 それに対するコーチの反論はあまりに弱弱しい。エベルトンは無視して続けた。 エベルトン「そして、俺の奴に対する羨望は、選手引退後にいよいよ大きくなった。 サッカー以外は艦船いじり位しか取り得の無かった俺と違い、 アイツは医師免許を持っていた。その上、高い技術と高潔な精神を持っていた。 ――俺が落ちぶれて、奴が医師兼監督として輝いたのは、ごく当然の帰結だったな」 エベルトンは既に二本目のピンガに手を着けていた。 エベルトン「しかし、奴には巨大すぎる欠点があったのさ。……そう、欠点だ。 ――要するにアイツは、あまりに高潔すぎて、理想が高すぎたから。 コリンチャンスとサンパウロの患者を救うだけじゃ、足りなかったんだ。 奴が医師とサッカー監督に加え、政治活動にのめり込むのは時間の問題だった」 コーチ「グヒ、グヒヒ……。ぱ、ぱぱぱ、パイオツのカイデーのチャンネーじゃゾイ……グヒヒ……」 エベルトンを尻目に、コーチはお気に入りの雑誌を逆さに開いていた。 エベルトン「『サッカーで世界を変える、私はサッカーで世界を平和にするんだ』 ……それは、奴の口癖だった。俺は、そんな事をのたまうアイツを笑って見ていた。 しかし、コリンチャンスが勝ち続け、サンパウロ市の平均寿命が有意に伸び、 政治活動への賛同者が次第に集まり出してから、多くの者は奴の言葉を信じた。 『ドトール監督を次の大統領に!』……真顔でそう言うサンパウロ市民は、当時はとても多かった」
[180]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 01:04:37 ID:??? コーチ「……おーい、鈴仙。そろそろ晩御飯を作ってくれい。この男を摘みだしての」 鈴仙「…………ごめんなさい。私は、真実を知りたいんです……」 鈴仙は悲痛な声を上げる老人の頼みを黙殺した。 エベルトン「……そして、それを良く思わない者も多く居た。開発独裁、軍事拡張政策をとる現政権だった。 彼らは、平等論者、軍縮論者のクソ医師を潰す為に、あらゆる手段を執った。 ――例えば、病院でのどうしようも無い死亡事例を『医療事故』と仕立て上げ、 警察権力にそれを取り締まらせる方法とかな」 コーチ「………ゴホッ、ゴホッ!」 そして、とうとうコーチは立ち上がった。咳をしながら彼は立ち上がる。 エベルトンは軽蔑した目線で老人を見る。彼は先程自分をこの老人と同年代と言ったが、 やや不摂生ではあるが健康的な中年であるエベルトンと、生きる気力を失った抜け殻のような老人であるコーチが 並んで立つと、鈴仙はそれを到底信じられなかった。 コーチ「……急患での前置胎盤と癒着胎盤の混合ケース。起きる確率と助かる確率は、コンマ1%以下。 私は手を尽くした。……だが、母子ともに……救えなかった。それは事実だ……」 そして更に信じられない事に、コーチの瞳に理性の光が灯った。 彼はゼイゼイとした声で。しかし、普段のような呆けた印象は全く無い整然とした風にこう言った。 鈴仙が驚き目を見開いていると、彼の口からは更に驚くべき言葉が飛び出した。
[181]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 01:06:52 ID:??? コーチ「……君の妻だ。そして……娘だ。……許してくれ、エンリケ」 エベルトンは何も言わなかった。代わりにもう何本目か分からないピンガを飲み干した。 エベルトン「そんな話じゃねぇよ。馬鹿が。……兎に角政府は、不幸な一家の不幸な事故を、 何とかボンクラ医師のボンクラ医療ミスに仕立てあげ、そして信頼を地の底に叩き落とした。 ――この辺りが政府の賢い所だ。単に国家反逆罪とかで捕まえても、世間や国際社会の反発を買うからな。 素人が分かりにくい医療分野の事件にする事で、 ……兎に角。これでコリンチャンスの栄光は途絶え、政府にとって目障りなコブは消えた。……筈だった」 鈴仙「筈……と、言いますと?」 エベルトン「――コイツの医師としての評判があまりに高すぎた。 市民は医療ミスを犯したやぶ医者であっても、コイツの診療を受けたいと願ったのさ。 だから、市民運動に負けた政権は、殺人罪で収監したコイツを死刑や終身刑に出来なかった。 やがて、コイツは釈放されて戻って来る。……だから、政府は第二の矢を放った。 つまり、コイツの帰り場所を――コリンチャンスを無理やり潰した。 資産の九割を没収し、国内大企業にプレゼントした。 ついでに、根強い支持者・支援者達の多くを、コイツの釈放に合わせて収監するという念の入れっぷりだ。 そのせいで、サトルステギとかリベ……何とかのような主力選手はチームを離れ、役員もチームを手放し。 ……最後に残ったのは、この全てを失われた元医師のジジイと、残り資産で建てた場末のバーと、 そして、僅かなサッカー好きの荒くれだけになった」 コーチ「……ゴホッ。ゴホッ!」 エベルトンは黙り、コーチの咳払いだけが場末のバーに響いた。 鈴仙は立ち尽くすしかできなかった。
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0ch BBS 2007-01-24