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【新天地は】鈴仙奮闘記35【魔境】
[178]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 01:02:16 ID:??? ベルトン「……俺達のチームにはキャプテンが居た。 日本人で、クソ生意気な野郎だったが、強い力を持っていた。 ――力と言っても、腕っぷしじゃねぇ。影響力だ。ヤツはあの小せえ身体で、 ふぬけたパルメイラスの連中を無理矢理変えやがった。 ……そして、ある日突然、消えた」 鈴仙「……(森崎はブラジルでも猛威を振るっていたと中山さんから聞いたけど。 この監督にそこまで言わせるなんて、本当に凄い奴だったのね。……今、どうしてるんだろ)」 ……それから、暫くもしない内に、鈴仙とエベルトンはスラム街のド真ん中にある、 ボロボロに古びたバーの玄関へとやって来た。 エベルトンはスラム街のどの荒くれよりも乱暴にドアを開け、乱暴に周囲を見渡して。 エベルトン「……消えたと思ったら、そんな所にいやがったか」 コーチ「……グヒ?」 虫食いだらけのソファに座って煙草をふかしている老人に対し、そう忌々しげに声を掛けた。 エベルトン「……説明してやるよ。コイツは確かに、若き日は選手として、後年は監督として、 コリンチャンスの栄光時代を築き上げた」 コーチ「……………」 エベルトンは勝手に店の奥から上等そうなピンガを持って来て呷り始めた。 鈴仙は突っ立ったまま、彼の独白を聞き始める。 エベルトン「俺もまた、コリンチャンスの選手で、かつては同年代のFWとして何度もゴールを競い合った。 もっとも、俺は純粋な点取り屋で、奴は前線でゲームメイクもこなすタイプだったから、 単純な比較はできなかったが――兎に角、奴は俺の最大の友にして、最大のライバルだったのさ」
[179]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 01:03:22 ID:??? コーチ「誰じゃ? お前さんは……ワシはそんないかつい顔なんて、覚えとらんゾイ」 それに対するコーチの反論はあまりに弱弱しい。エベルトンは無視して続けた。 エベルトン「そして、俺の奴に対する羨望は、選手引退後にいよいよ大きくなった。 サッカー以外は艦船いじり位しか取り得の無かった俺と違い、 アイツは医師免許を持っていた。その上、高い技術と高潔な精神を持っていた。 ――俺が落ちぶれて、奴が医師兼監督として輝いたのは、ごく当然の帰結だったな」 エベルトンは既に二本目のピンガに手を着けていた。 エベルトン「しかし、奴には巨大すぎる欠点があったのさ。……そう、欠点だ。 ――要するにアイツは、あまりに高潔すぎて、理想が高すぎたから。 コリンチャンスとサンパウロの患者を救うだけじゃ、足りなかったんだ。 奴が医師とサッカー監督に加え、政治活動にのめり込むのは時間の問題だった」 コーチ「グヒ、グヒヒ……。ぱ、ぱぱぱ、パイオツのカイデーのチャンネーじゃゾイ……グヒヒ……」 エベルトンを尻目に、コーチはお気に入りの雑誌を逆さに開いていた。 エベルトン「『サッカーで世界を変える、私はサッカーで世界を平和にするんだ』 ……それは、奴の口癖だった。俺は、そんな事をのたまうアイツを笑って見ていた。 しかし、コリンチャンスが勝ち続け、サンパウロ市の平均寿命が有意に伸び、 政治活動への賛同者が次第に集まり出してから、多くの者は奴の言葉を信じた。 『ドトール監督を次の大統領に!』……真顔でそう言うサンパウロ市民は、当時はとても多かった」
[180]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 01:04:37 ID:??? コーチ「……おーい、鈴仙。そろそろ晩御飯を作ってくれい。この男を摘みだしての」 鈴仙「…………ごめんなさい。私は、真実を知りたいんです……」 鈴仙は悲痛な声を上げる老人の頼みを黙殺した。 エベルトン「……そして、それを良く思わない者も多く居た。開発独裁、軍事拡張政策をとる現政権だった。 彼らは、平等論者、軍縮論者のクソ医師を潰す為に、あらゆる手段を執った。 ――例えば、病院でのどうしようも無い死亡事例を『医療事故』と仕立て上げ、 警察権力にそれを取り締まらせる方法とかな」 コーチ「………ゴホッ、ゴホッ!」 そして、とうとうコーチは立ち上がった。咳をしながら彼は立ち上がる。 エベルトンは軽蔑した目線で老人を見る。彼は先程自分をこの老人と同年代と言ったが、 やや不摂生ではあるが健康的な中年であるエベルトンと、生きる気力を失った抜け殻のような老人であるコーチが 並んで立つと、鈴仙はそれを到底信じられなかった。 コーチ「……急患での前置胎盤と癒着胎盤の混合ケース。起きる確率と助かる確率は、コンマ1%以下。 私は手を尽くした。……だが、母子ともに……救えなかった。それは事実だ……」 そして更に信じられない事に、コーチの瞳に理性の光が灯った。 彼はゼイゼイとした声で。しかし、普段のような呆けた印象は全く無い整然とした風にこう言った。 鈴仙が驚き目を見開いていると、彼の口からは更に驚くべき言葉が飛び出した。
[181]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 01:06:52 ID:??? コーチ「……君の妻だ。そして……娘だ。……許してくれ、エンリケ」 エベルトンは何も言わなかった。代わりにもう何本目か分からないピンガを飲み干した。 エベルトン「そんな話じゃねぇよ。馬鹿が。……兎に角政府は、不幸な一家の不幸な事故を、 何とかボンクラ医師のボンクラ医療ミスに仕立てあげ、そして信頼を地の底に叩き落とした。 ――この辺りが政府の賢い所だ。単に国家反逆罪とかで捕まえても、世間や国際社会の反発を買うからな。 素人が分かりにくい医療分野の事件にする事で、 ……兎に角。これでコリンチャンスの栄光は途絶え、政府にとって目障りなコブは消えた。……筈だった」 鈴仙「筈……と、言いますと?」 エベルトン「――コイツの医師としての評判があまりに高すぎた。 市民は医療ミスを犯したやぶ医者であっても、コイツの診療を受けたいと願ったのさ。 だから、市民運動に負けた政権は、殺人罪で収監したコイツを死刑や終身刑に出来なかった。 やがて、コイツは釈放されて戻って来る。……だから、政府は第二の矢を放った。 つまり、コイツの帰り場所を――コリンチャンスを無理やり潰した。 資産の九割を没収し、国内大企業にプレゼントした。 ついでに、根強い支持者・支援者達の多くを、コイツの釈放に合わせて収監するという念の入れっぷりだ。 そのせいで、サトルステギとかリベ……何とかのような主力選手はチームを離れ、役員もチームを手放し。 ……最後に残ったのは、この全てを失われた元医師のジジイと、残り資産で建てた場末のバーと、 そして、僅かなサッカー好きの荒くれだけになった」 コーチ「……ゴホッ。ゴホッ!」 エベルトンは黙り、コーチの咳払いだけが場末のバーに響いた。 鈴仙は立ち尽くすしかできなかった。
[182]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/03(木) 01:10:46 ID:??? ――と、言ったところで今日はここまでです。 コーチはオリキャラですが、前でスレに紹介のあったソクラテス選手の逸話を元に、 ロベルトやエベルトンと同年代のキャラクターとして書かせて頂きました。 あと、ネイに聞くと言いつつエベルトンが活躍してますが、 JOKERの副作用でネイの鈴仙への親密度がかなり上がっています。 それでは、本日もお疲れ様でした。
[183]森崎名無しさん:2016/03/03(木) 01:27:56 ID:??? 乙でした。 そう言えばコーチもエベルトンもロベルトも激動の時代を生きてきた選手 いや人間だという事に今更ながら気づかされました。 ペレ、カカ、ババ、ガリンシャなど実在のカナリアスターズ達が伝説になったのも こうした背景による人格的・社会的影響が背景にあるのだろうと、 人物描写について大いに参考となる話と思えました。
[184]森崎名無しさん:2016/03/03(木) 01:34:23 ID:??? そう言えば、コリンチャンスからサトルステギとリベリオが抜けている という事は、鈴仙が加わってもスタメンは後1人足りない…… という訳で新選手はこの人でしょうか? ★最後のメンバー→!card★ と!後のスペースを埋めて書き込んでください。マークで分岐します。 JOKER→???「君とはどこかで会ったような気がする……」 鈴仙「(なんだろう、この懐かしくて温かくて愛おしい感じ……)」 ダイヤ→ マーガス 「よろしく」 ハート→ 一条 「よろしく」 スペード→ ドールマン 「よろしく」 クラブ→アリス「や、やっぱりサッカーはフランスよりもブラジルね!」鈴仙「(あっ、ハブられたんだな……)」 クラブA→謎の向日葵仮面「良かれと思って出てきたわ!少し忘れていたかしら?」鈴仙「」
[185]森崎名無しさん:2016/03/03(木) 01:53:37 ID:??? ★最後のメンバー→ ダイヤA ★ 乙なのです
[186]森崎名無しさん:2016/03/03(木) 22:12:40 ID:??? >かつては同年代のFWとして何度もゴールを競い合った。 確か元ネタはパルメイラスのGKだったはず……つまりエベルトンも森崎みたいなキチガイGKだった…?
[187]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/04(金) 00:30:56 ID:??? >>183 乙ありがとうございます。 実はそこまで考えずノリと妄想で作ってました(爆) >>184-185 マーガス君は結構心強いですね… >>185さんは乙ありがとうございます。 >>186 南米版吉良監督というイメージでFWと思いこんでましたが、 元ネタってGKだったんですね…>エベルトン
[188]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/04(金) 00:32:16 ID:??? 鈴仙「(――コーチはかつて、世界平和という大きな夢を見ていた。 しかし、その夢は実現を目前として、当時の政治に潰された。 それどころか、政治は彼の居場所を悉く奪った。 ……そして、今この人は、呆けた浮浪者を装って、このスラム街でひとりぼっちだ)」 コーチ「……私は、思い上がっていた。自惚れていた。自分なら世界を変える事が出来ると。 ――だが、その結果が、このクラブチームだ。 私の理想は叶わぬどころか、逆に私を応援してくれた人達を滅ぼしたのだ。 ……じゃから。私は――ワシは、もう嫌じゃ。何も考えず、女の子のケツを揉んで生きるんじゃぁ……」 コーチはその言葉を最後に崩れ落ちた。残った右手で鈴仙の尻を揉み続けていなければ、 それはあまりに哀れで悲しい結末だった。 だがしかし、残されたエベルトンはそれを良しとしなかった。 エベルトン「……テメー、まさか諦めてこんな所に居たのか? 俺はてっきり、今後の復活を狙って潜伏してると信じてたんだがな」 彼はユラリとコーチに近づき、そして、 ガシッ、グッ……! エベルトン「ふざけるな! そうして逃げられちゃあ、テメエをピッチ上でボコボコにするという、 この俺様の夢が叶わなくなるじゃねぇか!」 襟を掴んで顔を赤らめ、唾を目いっぱい吐きかけながら、コーチに対してそう激昂してみせた。 エベルトン「俺はあの時、親友のテメエと死んだ妻子を政府に売った! その時の金で、俺はスポーツ政界とのコネを作って、お前と同じ監督になった! 俺はそんな悪魔だから、テメエはそんな俺に倒されるべき聖人であるべきなんだ!」 コーチ「……」
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0ch BBS 2007-01-24