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【追う蜃気楼は】鈴仙奮闘記39【誰が背か】
[333]森崎名無しさん:2017/07/01(土) 18:10:37 ID:??? コインブラもそういえばオールスターもブラジル戦も思ったほど大した活躍をしていなかったような・・・
[334]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/02(日) 01:31:06 ID:??? 更新再開します。 >>333 言われて読み返しましたが、ブラジル戦はまだボールキープ成功してたり、 若林相手にゴール決めたりしてましたがそれでも意外と勝ってなく、オールスター戦は更に活躍が無かったですね… (特にオールスター戦は)周囲のレベルも高すぎたので仕方ないかもしれませんが。 そしてリーサルツイン前の回想シーンで、コインブラ君とカルロスの練習シーンが描かれてましたが、 それと比べて随分カルロスを幼く描写してしまったかもしれません(汗) この辺りについては、同年代の男子では無く、年上の綺麗なお姉さんに声を掛けられて緊張した等、 脳内保管して頂ければと思います。キャプ森本スレは読みこんでるつもりでしたが、まだまだ読み込みが足りませんね…
[335]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/02(日) 01:32:51 ID:??? 〜回想シーン〜 ビュンッ! シュンシュンッ、シュパァッ! アルツール「へへっ、すげーだろ姉ちゃん! 俺の『高速ドリブル』! これさえあれば、次の試合も俺がMVPだよな!」 アヤソフィア「あややっ、そりゃあ勿論。とはいえ、何時だって弟くんがお姉ちゃん的にはナンバーワンですがね!」 アルツール「や、やめろよー。照れるじゃねーか。あはははっ! ようし、次はシュートの練習だ! ちゃんと見ててくれよな、アヤお姉ちゃん。この俺の『マッハシュート』!」 アヤソフィア「マッハシュート……ああ、例の新技でしたな。期待してますよ!」 貧富の差が拡大しているブラジル・サンパウロ市内の中でもとりわけ薄汚れた貧民街の一角。 忙しそうな労働者達が疎まし気な視線を送る中、アヤソフィアは少年とのサッカーに興じ、ニコニコとした笑顔を送り続ける。 その笑顔の中――彼女は内心で溜息をついた。 アヤソフィア「(はぁ……半分以上は自業自得とは言え。私、何してるんだろ)」 アヤソフィア――射命丸文は、千年を生きた幻想郷の鴉天狗であるが、 その年齢に反して、少なくとも組織内では順風満帆とは言えなかった。 アヤソフィア「(はぁーあ。ブラジルで政変があった。日本。ひいては幻想郷の経済にも影響を及ぼす可能性がある、よ。 そんなモン、影響あるわけないじゃない! 上の方々は、とりあえず『何かやった感』を出して、 アリバイを作っておく事に必死なんだろうけどさ……)」
[336]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/02(日) 01:34:28 ID:??? 根は生真面目で融通が利かず、組織の和に従ってはいるが上には決して媚びを売らない。 天狗にしては珍しいタイプの彼女は、『特命任務』と称し、必要なのかどうか分からない業務に従事させられる事が多かった。 彼女が今こうして、11歳の少年と戯れているのも、その業務の一環だった。 アヤソフィア「(『アヤソフィア・アントゥーナ・コインブラ。18歳。病気がちの養父と、 未だ幼い弟の生活費を稼ぐために新聞配達とバーのアルバイトをこなす傍ら、 ジャーナリストを目指して写真と記事を編集社に寄稿しては落選している。』 ……何なのよ、この設定)」 幻想郷を離れた外の世界には当然、天狗など存在しない。 万一存在したとしても、幻想が科学によって否定されたこの世界において、 幻想郷の内部と同じような神通力を発揮できる訳がない。 このブラジルの地において、誇り高き天狗である射命丸は、その設定通り、 ただの18歳の人間の小娘として、情報を仕入れ大天狗達に報告せざるを得なかった。 アルツール「くらえ、『マッハシュート』!」 グワァァッ! バギュウウウンンッ! キラキラキラッ……シュンッ! アヤソフィア「なにィ!? ボールがきえた!?」デデデデデン!←2の初マッハシュートの時の演出SE ……そのため、彼女は『設定』に準じる必要がある。そうでなくては怪しまれ、 怪しまれれば自らを守る術はなく、自らを守る術がなくては、他に守ってくれる者もいないからだ。 アヤソフィアは弟思いの姉という設定に忠実に、楽しげに笑いながら弟のサッカー遊びを見守っていた。
[337]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/02(日) 01:36:59 ID:??? アルツール「……なあ、アヤお姉ちゃん。俺、スーパーストライカーになれるかな。親父が昔そうだったみたいにさ」 アヤソフィア「ええ。勿論できますとも。私が仕込んだ『高速ドリブル』も、『スピードタックル』も。 弟くんはあっという間にモノにしてしまいました。……この年齢で、です。 きっと、10年後……ううん、それよりもっと早くには、間違いなくプロ入りしてるでしょう」 アルツール「あたり前だっての! その位じゃねーと、むしろプロじゃやってけないぜ!」 アヤソフィア「おやおや頼もしい。ですがそれも、きちんとした日々の努力あってこそ、ですよ。 そうでなければ、折角の才能も台無しですから」 アルツール「それも分かってるってば! んもー、お姉ちゃんまで親父と同じ事ばかり言うんだからな!」 幻術をもって、ごく平凡な貧しい家庭に紛れ込んだアヤソフィアだったが、 偶然にも、この家庭が特別なものであった事を悟ったのは暫くしてからだった。 アヤソフィア「(伝説のスーパーストライカー・ジャイロ……そして、その養子アルツール。 彼らのサッカーに関する素養は間違いなく最高であり、天才的。 それこそ、人間の身でありながら鬼や天狗の域にまで達し得る程に)」 アヤソフィアの養父という設定の壮年男性は、現在こそは体調を崩しがちではあるが、 かつては国内きってのストライカーであり。そして、その養子もまた、彼の教えの元で高い基礎能力を有していた。 天狗としての能力の殆どを失いつつも、足の速さには自信のあったアヤソフィアだったが、 それを自慢した数日後、アルツールはその足の速さを活かしたプレーを全て自分の物にしていた。
[338]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/02(日) 01:38:13 ID:??? アルツール「――俺。アヤお姉ちゃんにはホントに感謝してるんだ」 アヤソフィア「……あや?」 ――ある日、強気な彼が珍しくそう漏らした事がある。 この奇妙な姉弟関係が始まってから、恐らく数か月程が経った頃だろうか。 その日は確か、フラメンゴのデンチ・デレイチ部門の入団テストを翌日に控えた日 ――つまり、アルツールがフラメンゴのデンチ・デレイチに入団してから、1年が経とうとしていた時だった。 アルツール「……俺、チームに入ってばかりは、全然サッカーが楽しくなかったんだ。 皆、俺がうますぎるからって、化け物を見るような目で見てさ。 友達も一人も出来なかったし、それに、上手くできても誰も褒めてくれなかった。 親父は居たけど、体調を崩しがちだったからグラウンドまでは来てくれなかったし」 アヤソフィア「(そう……でしたね)」 アヤソフィアは良く知っている。この家の養女として彼と初めて出会った時の寂しい瞳を。 望まないにも関わらず他者から疎んじまれ、友人を失い続けて来た、人を信じる事のできない孤独な光を。 そんな彼と、上司から疎まれ閑職を強いられる自分とに、都合の良い共感を覚えただけだったのかもしれないが。 ――彼女は、何時の間にか、設定ではなく心から、アルツールを弟として案じるようになっていた。 アルツール「だけど。アヤお姉ちゃんが来てからは変わった。相変わらずチームの皆とは上手くいかないけれど。 でも、サッカーで上手く行ったら、誰よりも喜んでくれたし、上手くいかなかったら一緒になって悲しんでくれた」 アヤソフィア「上手くいかなかったとき……ああ、先月の試合でしたか。確かにあの時は、失敗が多かったですねぇ」
[339]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/02(日) 01:39:54 ID:??? アルツール「アイツら、その時はもっと酷かった! 普段は俺が上手くて文句を言うくせに、いざ失敗したら馬鹿にしやがる! 『アルツールって案外大したことなくね?』って笑って来やがるんだ! 本当に殴ってやろうかと思った!」 アヤソフィア「でも、それで殴らなかった弟くんは立派でしたよ? 私は腹が立って『やめろォ!』って連呼してましたけど」 アルツール「ハハハ……。でも、俺が殴らなかったのは、そうやってアヤお姉ちゃんが代わりに怒ってくれたからだよ。 自分は一人じゃない。誰かが自分の傍に居てくれるんだって。 ……そう思うだけで、サッカーが楽しいって思えるようになれた。本当だよ。 あと、お姉ちゃんが親父の面倒を見てくれるお蔭で、体調も良くなったって言ってたし。 今度の試合があれば、自分も俺の活躍を見に行きたいって言ってくれた!」 アヤソフィア「(本来、この少年と私は関わりあう事は無い。彼は現実に生き、私は幻想に生きる身だから。 もしも、私という幻想が無ければ、彼はきっと潰れていたかもしれない。いや、彼だけじゃない、彼の養父も……。 ――だから、これはきっと、良かった事なのよね)」 そして、アルツールもまた、アヤソフィアの影響を受け、本来の真っ直ぐで素直な少年へと戻りつつあった。 彼の才能への妬みからくる陰湿な虐めは続いていたが、それを理由をサッカーを嫌いになり、 力を得る事に対し虚無感を抱くような事態にはならないでいた。 アルツール「明日、入団テストなんだ。……俺と同い年や年下、ひょっとしたら年上の奴が、 新しくチームに入ってくると思う」 アヤソフィア「入団テスト、ですか。弟くんは、去年のテストで合格したから……後輩ができるんですね?」 アルツール「後輩とか、そんなんは関係ないって。実力があるヤツが無いヤツよりも上ってだけで、 年齢は、デンチ・デレイチとかジュベニールとかを分けるだけでしかないし」 アヤソフィア「うーむ。そんなもんなんですねぇ」 アルツール「そんなもんだって。シロートは口突っ込むんじゃねえよ。 そもそもデンチ・デレイチって言っても一言では言えなくてだな……」
[340]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/02(日) 01:41:10 ID:??? 年頃の少年らしい生意気な口調で、アルツールはアヤソフィアにブラジルサッカー界について 講釈を垂れようとしている。本当はアヤソフィアも事前知識として仕入れている情報が多かったのだが、 寡黙だった彼が、熱っぽく好きな事を話している横顔を見ていると、止める気がしなくなっていた。 アルツール「……って事だから、プロって言っても大多数は上手くいかないんだ。 勿論、俺はその中でスーパーストライカーになってみせるけどな」 アヤソフィア「ふふ。……そうですか。期待していますよ (流石にその頃には、私も任務完了で幻想郷に戻っていると思うけどね……)」 アルツール「お、おう……」 アヤソフィアは少しだけ寂しそうに微笑むが、アルツールは気にしていないようだった。 いや……正確に言えば、これまで色々と話しているのも、気にしている別の『何か』を、意識して隠しているようだった。 そして、これまでの短い姉弟関係からでも、アヤソフィアはそれが何であるかを理解していた。 アヤソフィア「……トモダチ、出来ると良いですね」 アルツール「……んなっ! そ、そんなの何も思ってねーし!!」 ――純粋な悪戯心から、その内容を呟いてみる。明らかに顔を真っ赤にした事から、図星のようだった。
[341]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/02(日) 01:42:43 ID:??? アヤソフィア「あやや、そんなに恥ずかしがる事じゃあないですよ。トモダチってのは大事なモノですから。 共に同じ道を行き、途中で道を違えても互いを尊重し合い。例えぶつかり合う事があろうとも。 最後にはきっと、必ず同じ頂を仰ぎ見る事ができるような。 ……そんなトモダチが、弟くんにも出来ればいいなって、お姉ちゃん思いますよ?」 アルツール「できねーよ、そんなモン……」 アヤソフィア「あれあれ? 何を根拠にそう『できない』って決めつけてるんです? 『できない』って決めつけるのはザコの特徴って言ってたのは、どこのどなただったかしら? ねぇねぇ、未来のスーパーストライカー様はご存じですかー?」 アルツール「……う、うるさいうるさい! 当たり前だ! トモダチの一人や二人くらい、作ってやらぁ!」 大人ぶる事が多いアルツールだったが、やはりこの辺りは年相応の子どもだ。 アヤソフィアは噴き出すのを堪えながら、よしよしとアルツールの頭をくしゃりと撫でてあげて。 アヤソフィア「それなら安心ですな。明日は迎えに来ますから、是非とも紹介してくださいね? 弟くんの、はじめてのオトモダチ」 アルツール「お、おう! そんなの楽勝だっての、いちいち頭撫でんじゃねー!」 強がる弟の幸せを純粋に願いながら、明日の入団テストの会場へと向かうのだった。 新しいオトモダチと一緒に使える、新品のサッカーボールを鞄に詰め込んで。 この日からすぐに、アヤソフィアは知る事になる。彼に初めてのオトモダチが出来た事を。 彼が真に心からサッカーを愛する少年へと生まれ変わった事を。
[342]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/02(日) 01:43:56 ID:??? そしてアヤソフィアは知らずして、勅命により幻想郷へと戻る事となり。 ――奇しくも再び訪れたブラジルの地にて遅れて知る事となった。 彼が、その愛するサッカーにより、奪われてしまったという残酷な事実を。 上司の勅命により、アヤソフィアがブラジルから幻想郷に戻ってから2年後。 政争鳴り止まぬ国内においては日常茶飯事であるため、小さくではあったが、 新聞各社はこのような見出しの記事を書いていた。 「フラメンゴの天才サッカー少年、暴徒に押され交通事故! 重体となり意識回復は絶望的」
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0ch BBS 2007-01-24