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屁理屈推理合戦withキャプ森2
[19]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/09/14(木) 00:28:53 ID:??? ミアータ「何よ……ベアトリーチェ、ベアトリーチェって。私こそがストラットの恋人だった筈なのに。 妬ましい。……空想の魔女が妬ましい……!!」 七日七晩を魔女への嫉妬に費やしたミアータは、ある日とうとう体調を崩して倒れてしまう。 そして目を覚ました時――彼は不在だった。知り合いのツテを辿って聞いたところ、 ストラットは、山奥のサナトリウムで暫くの療養が決まったらしい。 本来ならばほっと胸を撫で下ろすべき事態であったが、ストラットの介護に明け暮れた結果、 共依存的な関係に堕してしまった、また魔女への嫉妬に取り付かれたミアータにとっては、 それは決して許されない事だった。 ミアータ「駄目よ……山奥だなんて。ベアトリーチェに……ベアトリーチェに、私のストラットが奪われてしまう……!」 ストラットとミアータの両者ともに親交を温めて来たその知り合いは、 半狂乱でミアータを気遣ったが、彼女は聞き入れる事なく、嫉妬に駆られたままに街を飛び出していった。 そして――驚くべき事に、彼女は徒歩で、遥かイタリアとスイスの国境、モンテローザの秘境までやって来たのだった。 * * * ヘルナンデス「さて……皆も判ると思うが、今回の『合宿』は、本来の意味での合宿ではない。 全ては、ストラットを説き伏せ、この地に連れて来る為の方便だ」 ジェンティーレ「それで、たかがヤツの精神病のため、俺達は貴重な時間を奪われたという訳か?」 ランピオン「身内の不祥事と恥を隠したいのは分かるけど、幾らなんでもやりすぎだろ! しかも、あくまで合宿だと対外的に言い張る為に、わざわざ日本の選手まで呼んだんだって? 逆に不自然だ!」 ヘルナンデス「気持ちは分かる。だが、堪えてくれ……」 ストラットは一人でサナトリウムにやって来た訳ではなかった。 彼はイタリアJr.ユース代表の強化合宿という名目で、この山奥まで連れて来られたのだ。 他の同世代の仲間達と一緒に。……スキャンダルを兎に角隠蔽したい一心で、イタリアサッカー協会は、 こうした大掛かりな隠れ蓑を身に纏わせる事を決議したのだ。と、ヘルナンデスは聞いている。
[20]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/09/14(木) 00:30:32 ID:??? ジェンティーレ「……で? 早速ヤツには、俺達がこれだけしてやった効果が表れているのか?」 ヘルナンデス「そ、それは……」 事情を理解しても到底納得できない現状を前に キャプテンのヘルナンデスは、常に針の筵に立たされている気分だった。 それは、……療養所の医師――マスター・カスティリオーニの腕を持ってしても、 ストラットの奇妙な精神分裂を治癒できなかった事が大きかった。 カスティリオーニ「始めは統合失調症を疑いましたが、陰性症状が全く現れない事も、 あらゆる向精神薬も全く功を奏さない事も、これまでにありませんでした。 次に、脳血管障害の可能性もあると思い、高精度の撮影装置で検査をしましたが、 こちらにも全く異常がない。まさしく、悪魔憑き。そうとしか考えられませんよ」 しかし、サロ共和国時代からこの療養所――昔は実験場とも呼ばれた――で 最先端の医学から異端なるオカルトまでを学んだ彼は、その病因を特定する事に成功する。 カスティリオーニ「……分かりました。寄生虫が原因です。極東の一地域特有の寄生虫が、 何故かこのストラット少年の体内に宿り、その毒素が脳神経を傷つけているようです。 ――が、私に分かったのはここまでだ。なんせ、こんな種類の寄生虫、現実に見た事ない。 どのような薬が効き、どのような治療法が有効なのか、今から数年かけて研究しないと、 全く見えて来ませんよ。……そして……ああ、これからが全く困った事なのですが」 その中で、彼は別のファイルを何枚か並べて、キャプテンであるヘルナンデスに見せた。 彼は大きく溜息をついて、こう絶望的な言葉を並べた。
[21]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/09/14(木) 00:32:21 ID:??? カスティリオーニ「……この寄生虫は、空気を媒介して感染するようです。 すなわち、彼と濃厚に接触していた、イタリアJr.ユースの皆さん。 ……この全員が、ストラット君と同じ寄生虫に感染してしまったようですよ」 ヘルナンデス「……!!」 ――そして、この医師の言葉を持ってようやく、ヘルナンデスは理解した。 何故イタリアサッカー協会が、たかが一少年の不祥事に、ここまでの労力を割いたのかを。 何故彼らが、スキャンダルが明るみにでるリスクを抱えてでも、日本から少年達を招致したのかを。 ヘルナンデス「(上層部は、ストラットだけじゃない。俺達全員を危険因子と見ている。 いずれ精神失調をきたし、選手として使い物にならなくなる可能性が高い……と。 だから、この施設に隔離しようとしたんだ。……他の選手に、寄生虫が移らぬように……!)」 カスティリオーニ「その表情。気付かれてしまいましたな。……ですが安心ください。 君たちの将来的な凋落は、君たちのせいにはならない。 ”極東発祥の”寄生虫の集団感染など、”極東の国”から合宿に来た少年達と 接触でもしない限り、決して起こる筈がないのですから。ほっほっほ……」 ヘルナンデス「……う、うわぁあああぁぁぁああああぁぁぁぁあああああああああああッッ!」 途端に、彼は誰かに見られているような妄想に陥った。 その妄想はすぐに、魔女による魔法の仕業であるという確信へと変わった。 ミアータ「……魔女コロスコロスコロスコロスコロス」 そして、彼らのやりとりを窓から覗いていた少女は、こうした確信はとうの昔に持ち続けていた。 病んだストラットを介護する日々は、彼女の体内に無数の病原菌を運ぶに充分すぎた。
[22]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/09/14(木) 00:33:35 ID:??? * * * ストラット「ベアトリーチェ! 助けてくれッ! この俺を黄金郷に誘ってくれええぇぇええぇぇぇッ!」 ミアータ「何を言っているのストラット! この私こそがベアトリーチェ。領主から黄金を引き継ぎ、 このイタリア全土を支配する魔女こそが、この私なのよッ!!」 ――こうなった以上、彼らに悲劇が待ち構えているのは必然だった。 錯乱が進み自らこそがベアトリーチェであると信じて疑わなくなったミアータと、 黄金郷での救いを求め狂うストラット。彼らの間には、もはや当初の愛情すら存在しない。 ミアータはストラットが離れの祠という名の背の高い尖塔に潜む事を見越して隠れていた。 雪かき用の梯子は、吹き抜けの天井まで届くようにするために極めて高い。 この梯子に上っていれば、後は暗闇が彼女を隠してくれた。 そして、後はストラットがドアを開けて室内に入って来たら、杭を投げつけるだけ。 ずんっ。重力によって速度の増した杭は、ストラットの心臓に突き刺さって大きな穴を開けた。 そこから暫くびくびくと震えているようだったが、ストラットはすぐに動かなくなった。 こうなったら、後にやる事は決まっている。 ミアータ「ストラット。愛してたわ……」 フラリ……。梯子から手を放す。 古代のロストテクノロジーで建てられた高さ800メートルの尖塔の屋上付近から、 地面へと落ちていくミアータ。
[23]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/09/14(木) 00:34:59 ID:??? ガチャリ……。 森崎「お、おい……一体何があったんだ!? って、し、死んでる……!」 騒ぎを聞きつけてやってきた、この物語のエキストラがドアを開けた瞬間、 その目には心臓を刺されて一人息絶えるストラットの姿が見えるだろう。 そして、その次の瞬間には。 ヒュンッ、グチャアアッ!!! ……真っ白になったストラットを彩るように、真っ赤な血と肉が祠中に飛び散るのだろう。 初めて一つに交じり合った私達を祝福するのは、傍観者による悲鳴か嘔吐か。 ミアータは、最期の瞬間……心底ストラットに申し訳ないと思っていた。 ミアータ「ごめんね。……こんな不器用な愛し方しか、できなくって……」 ミアータは最後までストラットを愛し続けた。 しかし、魔女の呪いが、彼女を嫉妬と愛憎の鬼へと変えてしまった。 故に……彼女はもう、正常に彼を愛する事ができない。 今の彼女に出来る事は、彼の無残な死に顔が分からないよう、 自らの血肉でそれを隠す事位しか、できなかった。 愛があっても、愛していても、……今の彼女には、どうしても、愛する人を見る事ができなかった。 ************************************
[24]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/09/14(木) 00:36:08 ID:??? ……と、言ったところで今日はここまでです。
[25]森崎名無しさん:2017/09/14(木) 23:46:57 ID:??? Oh……nice boat
[26]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/09/15(金) 00:17:00 ID:??? 今日は仕事が忙しかったので更新をお休みします。 >>25 そういえば、ナイスなボート要素入れるの忘れてました(爆
[27]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/09/24(日) 23:15:10 ID:??? 森崎「なんだよこれ……なんだよこれッ!!」 ……【目の前に起きた事は、森崎にとって紛れもない真実】だった。 つまり、ミアータは狂気に囚われたストラットを救う内に、自らも同じ狂気に取り込まれ、 そして最後には無理心中の如き死を選び、その時の、肉片が、血液が、体液が、脳梁が……! 身体中に付着したそれを拭いながら、嘔吐するのをこらえて、森崎は叫ぶ。 森崎「これも、お前の望んだ事なのかよ。……出て来いよ、ベアトリーチェッ! お前はかつて、不必要に残虐な仕打ちはしないと約束した。 あれは全部、嘘だったのかよおおおおっ!!」 深夜にトイレに起き、『閂の扉』が空いている事に気付いた森崎は、 好奇心で『離れの祠』へと向かい、そこで死体を目撃したのだった。 すなわち、今の祠の中には、森崎を除いて生きている人間はどこにもいない。 パァァァッ、フワァァァッ。 ベアト「……嘘ではない。妾はもう、無駄な殺戮をしないと決めた」 ――故に、ベアトリーチェは容易に祠に姿を現す事が出来た。 暗闇と死体が支配する密閉した空間の中には、反魔法の毒素も侵入し辛い。 黄金の蝶を纏いながら、彼女は苦々しげな表情でその死体―― 今やもう肉片と呼ぶのが正確だ――を直視してから、 ベアト「だがしかし、これは元はと言えば、妾が蒔いた種であるとも言える」 森崎「どういう事だよ。前のソリマチ卿みたいなパターンってか? 遊びでニンゲンを魔女にしたけど、制御不可能でしたーってか? ……流石に、二度目は笑えないぞ?」 ベアト「……大まかに言えばそうかもしれぬ。しかし正確には正しくない。 何故なら、この状況を招いているのは――」
[28]吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/09/24(日) 23:16:12 ID:??? ……途中で、会話が途切れる。 代わりに、祠に二度目の黄金が満ちる。一度目はベアトリーチェがここに現れた時。 では二度目は? その答えを知るのに、時間はかからなかった。 パァァァッ、フワァァァァッ。 ???「あぁぁら。誰かと思えばクソババ……先代様じゃあありませんこと? 私のオンボロ家具の活躍っぷりでも見に来て下さったのかしらぁ?」 森崎「あん? 誰だ……コイツ」 森崎の知らない少女だった。年齢は自分やベアトリーチェよりも年下に見える――十代前半だろうか。 紫のドレスは可愛らしいリボン装飾がなされており、、まるで御伽噺に出て来るお姫様のように愛らしい。 帽子とケープについた大きな薔薇のコサージュが、彼女の幼さと無垢さを同時に表しているようだ。 ベアト「噂をするより先に来たか。エヴァ・ベアトリーチェ、……”黒き魔女”よ」 エヴァ「なぁにその呼び方ぁ? 折角だからもっと可愛い名前にして欲しいのに。 ほんっと気が利かない行き遅れの賞味期限切れ総菜ババア、ヘソ噛んで死んじゃえばぁ?」 しかし、その可愛らしい服装や整った顔立ちに反して、 エヴァと呼ばれた新たなる魔女は、醜く顔を歪めて意地汚くベアトを罵倒している。 ただし、それは悪意というよりもむしろ純粋。 善悪の区別がつかずに虫を殺して楽しむ子供のような印象を森崎は受けた。 森崎「てめぇか。てめぇが……ミアータとストラットの頭をおかしくしちまったんだな」 エヴァ「人聞きの悪い事を言わないで。私はちょっと背中を押しただけで、なーんにもしてないもの。 私はニンゲンの悪意を代弁してあげてるだけだもの。くすくすっ……ねぇ、レヴィアタン。そうでしょぉッ!?」
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0ch BBS 2007-01-24