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【道は】鈴仙奮闘記41【違えど】
[766]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/05(金) 00:04:51 ID:??? コーチ「実感が湧かぬのも仕方あるまいて。……いや。むしろ、実感が湧かぬからこそ、救われる事もあるのかもしれぬ。 ある医師は、『老人の痴呆は、死の恐怖を和らげる為の神からの贈り物である』と話していたが、 今はある意味、それと同じなのかもしれぬな……」 そんな鈴仙の様子を見て、コーチは小さく独り言ちると、星はハッと息を呑む。 ……そんな風に扱われると、暢気な鈴仙も不安だ。鼻や耳をつねるのを止めて、鈴仙は改めて二人に向き直る。 鈴仙「……あの。この包帯、なんですけど」 手で、自分の目を覆う分厚い包帯を触りながら、問いかける。 コーチ「負傷自体は、案外大した事は無いゾイ。もう一、二週間程すれば傷も癒える。 妖怪、とやらであればもっと早いじゃろうて。問題は――」 見えはしないが、続きに窮する老人の顔は、曇っているように思えた。 星なんかは何も喋っても居ないのに、息遣いだけで不安を感じているのが良く分かる。 コーチ「――鈴仙よ。心して聞きなさい」 鈴仙「……はい」 コーチがここまで落ち着き払って、理性ある話し方をしているのは珍しかった。 珍しいだけに、鈴仙は彼が次にどれだけ重大な事を話そうとしているのかが良く分かる。 ……果たして、彼は鈴仙に対して率直に述べた。 コーチ「問題は、眼球だった。銃撃の当たり所が悪く、両目共に粉々に砕けていた。 眼球だけじゃない。その根元の神経が、完全に焼け焦げていた。 ……君も医学を志しているならば、それが何を意味するのか、分かるだろう?」
[767]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/05(金) 00:06:14 ID:??? 鈴仙「……はい」 不思議に、恐怖や悲しみは感じなかった。未だ尚、あらゆる事に実感が持てていないからかもしれない。 コーチ「鈴仙。……君は視力を失った。少なくともここブラジルの、いや、この世界のあらゆる医学の粋を尽くしても、 君が再び元の光を戻す事は……無い、だろう」 コーチの発言も、何となく予想出来ていた。しかし、それは自分自身に対して宣告された物ではないと、 さしたる重要な事象では無いのだと、鈴仙は何故かそう思っていた。 妖力を使っての気配察知を応用すれば、不便さこそあれども生活には困らないだとか、実用的な側面もあったが。 現実からの浮遊感。まるで夢であるかのような違和感。そんなものが、鈴仙を支配し続けていた為だった。 ガチャッ。 ??「お邪魔するよ」 ……そうなるのは、視力を失った事よりも重大で、かつ、差し迫った辛い現実があったからかもしれない。 そう無骨に、しかし底知れぬ気配を纏い部屋に入って来た女性の声は、鈴仙にその事を思い出させてくれた。 星「あ、貴女は……!」 ??「ああ、寅丸……お前さんも、何とかここまでやって来れたんだね。しかし残念だ。 あんたの努力や苦労は、このままじゃあ水の泡になっちまうかもしれない」 コーチ「……言っておくが、患者は今、絶対安静じゃぞ?」 ??「言うねぇ。あたしがここに来るまでは、アトラスの見方すら忘れていた耄碌ジジイが、立派になったモンさ」 かくも竹を割ったような語り口をする鈴仙の知り合いは、そう多くない。 とりわけ、視力を失っている影響か、聴覚と記憶力が高まっている鈴仙は、自信を持って彼女の名を呼んだ。 鈴仙「あなたは……魅魔さん、ですね」
[768]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/05(金) 00:11:09 ID:??? ……と、言ったところで今日はここまでです。 明日か明後日には文章パートを終えて、本格的に新章に突入したいです。 >>762 実は北斗の拳って読んだことないです(汗) 鈴仙の失明については、最近3DSでやった某RPGの展開から着想を得ました。
[769]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/06(土) 15:24:00 ID:??? 魅魔「ああ、そうさ。大変な事に巻き込まれたみたいだね、鈴仙」 ……彼女の名は魅魔。『プロジェクト・カウンターハクレイ』の監督役にして、 鈴仙や仲間達を海外へと派遣した張本人でもある彼女は、中性的な低い声でそう答えた。 魅魔「『ハイパーカンピオーネ』は、勝利の為には何でもやる集団だ。 だけど、妖夢にせよ、鈴仙にせよ。あそこまで明け透けに、邪魔者を潰しにかかるとは思わなかった。 あのやり口は豊聡耳神子というよりは、邪仙の霍青娥っぽい。彼奴が勝手に手を回したのかもしれないな。 まあ……どっちみち、あたし達の立場じゃあ、推測する事しか出来ないんだが」 鈴仙が伏すベッドの脇にあるパイプ椅子をひったくると、彼女はどっかりと座り、一通り話した後、大きく溜息を吐く。 盲目の鈴仙にはその表情は見えないが、魅魔は大分参っているようだった。 そしてその原因は、鈴仙の負傷や『ハイパーカンピオーネ』の暗躍ではなく、もっと根本的な所にあった。 魅魔「……しかし、それにしてもだ。あたしらにとって最大の予想外は、あんた達の――コリンチャンスの敗北だよ」 鈴仙「……すみません。折角、期待して頂いたのに」 魅魔はやれやれと肩を竦め、夜の帳のようなローブから煙管を取り出し、指で弄んでいる。 魅魔「修行を始める前に言った通り。あんたに課せられたミッションは、コリンチャンスの立て直しと、リオカップの優勝だった。 前者については、あの無気力老人だったコーチが、こうもシャンとしている以上、まあ成功だと言える。 しかし後者についてはどうだい? あんた達の実力は、サンパウロと拮抗していた――一部ではサンパウロより優れていたし、 実際、前半戦はリードを得る事が出来ていた。しかし、後半になると、翼やストラットと言った一流の選手を前に太刀打ちできず、 チャンスを何度も何度も棒に振り、同点。そして逆転負けを喫した」 鈴仙には返す言葉も無い。自分達は全力でやって、しかし、それでも勝てなかった。その事実は何が起きても覆りようがない。
[770]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/06(土) 15:25:37 ID:??? 魅魔「……ハッキリ言って、『プロジェクト・カウンターハクレイ』の首脳陣は、あんた達に失望している。 実力だけは向上したようだが、肝心の精神力が追いついていない。 このままでは、全幻想郷選抜代表はおろか、下手な海外の代表チームにも負けてしまうのではないか……ってね。 実際のところ、リオカップ優勝は序の口の筈だった。今後のあんた達が破らなくてはならない相手と比べては、 充分低いハードルである事は間違いないんだ」 鈴仙「(魅魔さんの言いたい事は分かる。だって、次の大会では確実に、ブラジル代表や日本代表とも戦う事になる。 それはつまり、これまでリオカップで戦って来た有力選手が、1つのチームに勢ぞろいしているって事だもの。 ……対する私達は、既にほぼ最大戦力でサンパウロと戦って、そして負けた。 これから大会までの短い時間で、能力の大幅アップは望めない)」 鈴仙が永遠亭ルナティックスの一員として、全幻想郷選抜大会を戦ったのが昨年の10月。 ブラジルに渡ったのが11月で、リオカップは翌年の1月――今月だ――に開催された。 そして、紫によると、『幻想スーパーJr.ユース大会』は4月に、幻想郷にて開催されるという。 つまり、鈴仙達に遺された猶予は僅か3か月しか残されていないのだ。 魅魔「何度も言うが、『プロジェクト・カウンターハクレイ』は、 一部の強豪妖怪や博麗の巫女による支配を至上とする、幻想郷の現状を打破したいという理念があり。 あたしやあんた達のように物好きな妖怪や、幻想郷での利権を得たい人間や、 更に意味不明な目論見によって手を貸す神々が共同戦線を張っている」 魔法で煙管に火を灯し、魅魔はゆっくりと煙草の煙を吸った。 生真面目な星が「ちょっと! 病院内は禁煙ですよっ!?」と悲鳴交じりに非難するも、 物好きな悪霊は全く意に介さない。 魅魔「そして、その共同戦線が出した、現状打破の方法というのが、サッカーだったという訳さ。 幻想郷でも人妖問わず人気があり、かつ、実力差がハッキリと分かるスポーツで、 被支配者側である人間、あるいは無名妖怪の連合軍が、支配者側である強豪妖怪及び博麗の巫女の連合軍に勝利すること。 それをきっかけに、幻想郷に蔓延る価値観を一新させること。……これが、我々の目的である」
[771]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/06(土) 15:26:51 ID:??? ――魅魔の説明を補足すると、具体的な目的を掲げる勢力は『プロジェクト・カウンターハクレイ』だけではない。 八雲紫を首謀とする全幻想郷代表チームは、『プロジェクト・カウンターハクレイ』に真正面から勝利する事で、 逆に人間に対する、妖怪や博麗の巫女の優越性を証明したいと思っている。 また、豊聡耳神子は、『ハイパーカンピオーネ』計画を立ち上げ、自らによる幻想郷の統治体制を築く事を目的に、 紫と『プロジェクト・カウンターハクレイ』との対立軸の間で暗躍し、その力を蓄え続けている。 ……とにかく。魅魔はもう一度煙管に口を付け。そして、言葉を選びながら再度話し始めた。 魅魔「話が長くなったね。つまり、何故私が一々こんな事を話しているかと言うとだね。 『あたし達の目的を達成する手段は、必ずしも、あんた達に頼らなくても良い』って事を……ああ、いや。 もっと単刀直入に言おうか」 しかし、余計な配慮や気配りは自分の得意とする事ではないと気づいた魅魔は、やっぱりいいや、と思い直して。 魅魔「鈴仙・優曇華院・イナバとその仲間達。あんた達を育てた、あたしらの判断は間違っていた。 リオカップすら勝ち抜けない、『プロジェクト・カウンターハクレイ』の新チーム・リトルウイングズは――これで解散だ」 ――と、冷静かつ残酷に。彼女達の想いをバッサリと切り捨てるように、そう断言した。
[772]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/06(土) 15:28:06 ID:??? 鈴仙「……!」 星「ど……どういう事ですか? だって、魅魔さんは仰いましたよね? プロジェクト・カウンターハクレイの目的は、 被支配者側である人間、あるいは無名妖怪の連合軍が、支配者側である強豪妖怪及び博麗の巫女の連合軍に勝利すること。 それをきっかけに、幻想郷に蔓延る価値観を一新させること、ですって。 それで、だから私達のような、主流から外れる人妖達を募って、新チームを立ち上げたんですよね? だったら、何故……どうして、新チームは解散だなんて事が言えるのですか? 矛盾していますよ!」 ここで星が、鈴仙に代わり口を挟んだ。彼女も佳歩のようにやや直情的すぎ、少し抜けている箇所もあるが、 所属する聖白蓮の一番弟子にして、最も優秀な部下と評されるだけあって、頭の回転は速い。 元々の生真面目さもあってか、奔放な魅魔に対する反感もにじませながら、星は魅魔を睨み付けた。 魅魔「ああ。そうだね。確かにその通りだ。だからこそ、あたし達は、あんた達のチームを出したかった。 でも、それで大会で負けちゃあ、八雲紫の思うがままだ」 この程度の反感は想定内だったのだろう。魅魔はたじろぐ事なく続ける。 魅魔「――だったら、少々理念から外れたとしても、 『支配者側である強豪妖怪及び博麗の巫女の連合軍に勝利する』。 ――この、一番大事な部分を果たし得るチームを出すって事も、次善策として存在し得ないかい?」 星「そ、それは……」 自分よりも背の高い星の威圧すらも意に介さず、魅魔は淡々と理屈に理屈で返す。 しかし星も負けてはいない。 星「ですが。そんな都合の良いチームなんて、そうそう作れませんよ! 私達だって、あなた達の計画に沿って修行をしたから、なんとかここまで辿り着けた。 他にも、私達と同じような修行を施した、バックアップのチームを用意していたとでも仰るのですか! もしも鈴仙がリオカップで優勝していたら、全てが無駄になっていたかもしれないのに!!」
[773]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/06(土) 15:32:35 ID:??? 魅魔「……あははっ」 星「なっ……! 何がおかしいのですか!? きちんと説明してください!!」 星が声を荒げれば荒げる程、魅魔は余裕綽綽に笑って受け流す。 果てや一触即発の雰囲気にもなりかねないところで、魅魔は漸く口を開いた。 魅魔「……いや、悪いね。別に意地悪しようと思った訳じゃあないんだ。 ただ、”そこ”なんだよ。寅丸星よ。そこが、あたしが今日ここに来た一番の理由にして、 あんた達に与えられた最後のチャンスにもなり得る部分なんだからさ。だから、どう話そうか、悩んでた」 鈴仙「最後の……チャンス?」 星「? ……ますます分かりません。勿体ぶるのはやめて、きちんと話して貰えませんか!?」 星は興奮冷めやらぬ様子で、もう一度魅魔を睨み付けている。 一方の鈴仙は、未だこの場に流され続けるのみだったが――『最後のチャンス』と魅魔が話した時、 確かに流れは変わったと、そう直観が告げていた。――敗北。失明。そしてチーム解散。 このどん底の状況に陥った鈴仙達を救うかもしれない、最後の蜘蛛の糸が垂れるのを感じた。 魅魔「分かった、分かった。元々こっちだって、どっかの隙間妖怪と違って、勿体ぶるのは得意じゃないんだ。 ――それじゃあ、言うよ」 ……果たして、そんな鈴仙の直観は半分的中していた。 確かにそれは、魅魔が言うとおり最後のチャンスであり、蜘蛛の糸だった。 ただし、その糸は鈴仙の想像よりも遥かに脆く。そして、登り詰めるに困難が予測されたからだ。 魅魔は間髪入れず、高らかにこう宣言した。
[774]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/06(土) 15:33:38 ID:??? 魅魔「鈴仙・優曇華院・イナバとその仲間達よ。我々『全魔界ユース』は、 1か月後に我らの主催で行われる、【魔界カップ】の出場チームとして――お前達を招待する!」
[775]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/06(土) 15:41:39 ID:??? 三行まとめ 魅魔「あれ?リトルウイングズ(鈴仙)弱くね? サンパウロに負けるとかないわー解散ね」 星「いやいや解散とかおかしいでしょ。『プロジェクト・カウンターハクレイ』とかどーすんの? 私らの代わりいるの?」 魅魔「代わりに別のチーム出すし無問題。あ、最後のチャンスとして、あんたらは魔界カップに招待してやるわ」 というわけで、リオカップ編の次はジャp……魔界カップ編だ! ……と、なったところで一旦ここまでです。 続きは出来れば本日中にやりたいですが、また明日になるかもしれません(汗)
[776]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/08(月) 02:20:54 ID:??? 鈴仙「ぜ、全魔界ユース……?」 星「ま、魔界カップ……?」 唐突に表れた単語に、鈴仙と星は揃って目を丸くする中、魅魔は補足する。 魅魔「ああ。そしてそれが、先の寅丸の質問に対する答えだ。 『お前達リトルウイングズの代わりのチームなど、存在するのか?』――する。 それが、このチーム。『全魔界ユース』である!」 星「え、ええ……? 魔界でしたら、私もかつて来た事があるので知っていますが。 確かあの世界は、この世界――私達の住む世界と比べて、サッカーは流行していなかった筈です。 一体、どんな選手が、その全魔界ユースとやらに……?」 星の呈する尤もな疑問に対し、魅魔は口を歪めて答えた。 魅魔「流石は詳しいねぇ。――その通り、確かに魔界には、この世界程発達したプロサッカー組織も無ければ、 群を抜いて優れた選手は、そう多く存在しない。だから、助っ人として出場するのさ。 このあたしを始めとする、プロジェクト・カウンターハクレイを取り仕切る首脳陣が直々にね!」 鈴仙「……! 魅魔さんが、選手として……!?」 鈴仙はサッカー選手としての魅魔の活躍を知らない。しかし、噂や与太話レベルでは聞いた事がある。 幻想郷屈指のストライカーとして名を馳せた霧雨魔理沙には、かつて、彼女を遥かに超える実力を持つ『師匠』が居た事を。 そして、その『師匠』は、今の幻想郷には姿を見せず、どこかに姿を隠している悪霊であり。その名を――魅魔と言う事を。
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0ch BBS 2007-01-24