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【SSです】幻想でない軽業師
[113]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:23:52 ID:??? 選択肢を出され、迷い、項垂れていた少年は――女神の後押しを受け、一歩踏み出す事を決意した。 目の前の女神は、いつもの快活な笑みを浮かべている。 穣子「いつか言ったでしょ? あんたには感謝してるって。 何があっても、私は絶対あんたにご利益を与えてあげるって」 それはいつの事だったか。 ヒューイやリグルを始めとして伸びていく選手たち、新たに加入をした戦力。 それらに押しつぶされそうになった時期が、穣子には確かにあった。 その際、助けてくれたのは誰か。見捨てなかったのは誰か。 穣子は確かに記憶をしている。 穣子「八坂様達には及ばないけど、これでも神様なんだからね! 信仰してくれた人間には、とーぜん! その分の見返りを与えないと!」 反町「………………」 穣子「皆が反対するなら、私が話つけてやるわ。 あんたはあんたの事だけ考えなさい」 反町「……うん」 穣子「勿論、あんたが守矢に移ろうが何しようが、私達だって負ける気はないけどね! 私達にほえ面かかされて、間抜けな顔しないようにあんたも頑張りなさいよ!」 反町「ああ……ありがとう、穣子。俺……」 穣子「………………」 反町「俺、守矢フルーツズに移籍するよ」 穣子「…………ん、それでよし!」 ……… …… …
[114]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:25:36 ID:??? それから一言、二言、2人は会話を交わし……穣子は反町の部屋を出た。 穣子「ふぅ……」 部屋を出るなり溜息一つ――それでも、パンパン、と、顔を張ると自分の部屋に戻ろうとして……。 静葉「……一樹くんとは話が出来た?」 穣子「姉さん……」 廊下で、静葉と顔を合わせる。 ぎこちなく首を縦に振る穣子に対し、静葉は無言で自身の部屋を指さし穣子を招き入れ……。 穣子はそれに素直に従い、2人は静葉の部屋で対面をする。 静葉「…………それで?」 穣子「ん……やっぱ、姉さんの言う通り、八坂様に勧誘されたってさ」 静葉「そう……(やっぱり、そうなるわよね……)」 今日、反町が守矢神社へ挨拶に行くと言っていた際――否、もっと前。 即ち、あの祝勝会で度胆を抜かれる大告白があった際から、静葉はそうなる事を予感していた。 愛する者と戦うよりは、チームを共にして支えとなるという選択肢。 ついでに言えば守矢のFWはポストプレイヤーである諏訪子――純粋なストライカーである反町は、喉から手が出る程欲しい筈だ。 感情論で言っても、理屈で言っても、早苗と反町が互いに愛し合っており、 そしてその早苗があの2柱に信仰を捧げている以上は自然な流れである。 静葉「それで……一樹くんは?」 穣子「迷ったって。 愛着のあるオータムスカイズに残るか、それとも家族のいる外の世界に戻るか、それに守矢に移籍するか。 でも……聞いたの。 あいつ、世界一のストライカーになりたいって」 静葉「……うん」 穣子「だったらね……どこに行くのが1番いいか、わかるんじゃない?って……私言ったの」 静葉「…………そう(早苗を支える訳でもなし、ね)」
[115]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:27:31 ID:??? 穣子の言葉を聞きながら、静葉はそう考える。 無論、そういう気持ちも多分にはあるのかもしれない――ただ、揺れ動いていた1番の要因となったのは、 そういった感情ではなく、実利の面だった……というのは、静葉の脳裏にしっかりと刻まれている。 目の前にいる妹は、自分がそう背中を押したのだからかは知らないが、そんな事を考えている由は無いが。 穣子「そしたら……反町は、守矢に行きたいみたいでさ」 静葉「ええ……」 穣子「ハッパかけてやったわ! ならうじうじ迷ってないで、とっとと行きなさいって! これまでこのチームを支えてきたんだもん、そんくらいの我儘、皆許してくれるわよって」 静葉「……そう」 それは静葉にとっては予想の範疇で――しかし、当たって欲しくは無かった事である。 許す許さないで言えば、静葉としても……許さざるを得ない。 そもそも幻想郷サッカー界では選手の移籍自体、頻繁に起こっている。 反町が――例えキャプテンだとしても、オータムスカイズを離れるという事に、誰も文句を言う道理はない。 道理はないが……あまりにも、痛すぎる損失だ。 静葉「(穣子なら……そうね、穣子なら、そういうわよね……)」 今日、穣子が反町の部屋を訪れ、今後の事について話し合うという事も静葉は知っていた。 或いは穣子の言葉なら、反町が思い直し、オータムスカイズに残る選択肢を選ぶのではないかとも思って。 ――神奈子に誘われた際、反町の気持ちがそちらに傾くというのは、静葉にはわかりきっていた事である。 ここよりも、外の世界よりも、優れた環境である守矢フルーツズ。 ただ『強くなる』という一点だけを見れば、その選択肢を選ばない筈が無い。 それでも、静葉は反町がオータムスカイズにかける愛着にかけたかった。 穣子に対する感情にかけたかった。 しかしながら、それは敵わなかった――と、知った。 それを伝えた穣子の後押しがあったからなのか、純粋に実利だけを見ての選択だったのか、反町ではない彼女にはわからなかったが。
[116]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:29:07 ID:??? 静葉「……寂しくなるわね(そしてそれ以上に、チームとしては戦力の大幅ダウンが逃れられない。 一樹くんだけじゃなく……他の事を考えると)」 穣子「まあね……でもさ、仕方ないじゃない」 静葉「穣子……」 穣子を励ましながらこの先を考えていた静葉は……しかし、視界に映った穣子の顔を見て声を失くす。 彼女は笑っていた。笑いながら――大粒の水滴を、ポロポロとその瞳から流していた。 穣子「あいつは……強くなりたいって、言ってるんだもん。 もっともっと、だってさ。 大会で得点王取っても、MVP取っても、まだまだ満足してないのよ」 静葉「………………」 穣子「私だってさ、もっとあいつと同じチームで一緒にいたかった。 けどさ、もう、邪魔だもん」 静葉はゆっくりと静葉に近づき、その背中を摩る。 静葉「………………」 いつだか、フランス国際Jrユース大会の際――試合中、体力を使い果たして倒れこんだ穣子。 医療室へと担ぎ込まれ、大事には至らなかったものの気絶をして眠り……。 その際、見舞いへとやってきた静葉との問答を思い出す。 穣子は確かに、反町に対して親愛の感情を抱いていた。 それが男女のそれだったのか、或いは家族としてだったのかはわからない。 少なくとも、その時は、弟みたいなものだから、放っておけないから、と穣子は言っていた筈だ。 そう、放っておけなかった。 放っておきたくなかった。 ずっとそばで、彼の成長を見守り――彼と共にありたかった。
[117]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:30:54 ID:??? 穣子「だけど、あいつは早苗が好きだって言うし、早苗もあいつが好きだし! 強くなれて、思い人のいる所にいれるなら、それが1番じゃない!」 静葉「……そうね」 しかし、それは叶わない。 いつかの時に静葉が言ったように、少年は成長をする。いつまでも見守るという事は出来ない。 そして、どれだけ絆を結んでも、それは男女の愛にはきっと敵わないのだろう。 穣子「私は、あいつに言ったわ。 いつかあいつに受けた恩は、信仰は、必ず返してやるって」 静葉「………………」 穣子「それが女神である私の誇りだって。 でも、でもね……私、あいつにまだ何も出来てない……」 それは違う、と静葉は言いたかった。 確かにサッカーではずっと反町の世話になっていた、反町がここまで引っ張ってきた――それは疑いようの余地も無いだろう。 だが、日常生活でも――そして、繋がりとしても、誰よりも支え続けていたのは穣子だ。 いきなり幻想郷へとやってきて、右も左もわからない反町を助けていたのは、穣子だ。 ……それを言っても、彼女は納得しないのだろうから、静葉はじっと口を噤んでいたが。 穣子「私だって、別れたくない……」 静葉「………………」 それがきっと、穣子の本音なのだろう。 それでも、彼女は、自身の誇りや、何よりも反町の事を思って、身を引く事を決断した。 静葉「(一樹くんを……引き留めたい、所なのだけど)」 誰よりも近くにいた穣子がそう言うのだ。一体、どうして静葉が引き留める事が出来るだろう。 それは静葉だけではなく、このオータムスカイズにいる――他の誰にも言える事だ。 穣子がそう決断をした、ならば、それに口を挟める者など――空気を読まない何人かはいるだろうが、それもまた、静葉が許さない。
[118]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:32:35 ID:??? 穣子「反町と離れるなんて……やだよぉ……」 静葉「………………」 いつしか静葉のやや寂しい胸に顔を埋めながら、嗚咽し、穣子は呟いた。 静葉はやはり、黙ってその頭を撫でてやる。 静葉「よく頑張ったわね、穣子。 本当に……よく頑張ったわ」 穣子「うぅぅ……」 静葉「(ただ……穣子と一樹くんは、神と人としては、あまりにも近すぎた。 ……結果的には、これが良かったのかもしれない。 ……穣子には、残酷な事かもしれないけれど)」 穣子を慰めながら、そうも思う静葉。 確かに穣子と反町の関係は、近かった――近すぎた。 それを考えれば、反町がオータムスカイズから離れる事も、決して悪い事ばかりではないと。 彼女はまだ知らない、白熱した幻想郷サッカーブームが、これから更なる盛り上がりを見せていく事を。 静葉「(……後は、私が頑張る番ね。 穣子の為にも……このチームの為にも)」 彼女は知っていた、反町が守矢フルーツズに移籍する上で、何名かの選手が反町に続き移籍をする可能性を。 静葉「(このチームが得てきた名声を……失墜させる訳にはいかない)」 誰もまだ知らない、稔りに稔った秋の空に……静かに終焉の日が近づいていた事を。 反町一樹が守矢フルーツズへの移籍をチームメイトに発表したのは、その翌日の事である。
[119]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:36:13 ID:??? 早苗「(ヒロインレースに)勝ったッ!第3部完!!」 という事で早苗さん大勝利で一旦ここまで。 ここまでの流れは賛否両論あると思いますが、多分、あの時あのまま続いていたとしても、仮にJrユース大会後の進路は、 反町は守矢移籍ルートになっていたかなと思います。 次回は、反町移籍を受けてのオータムスカイズチームメイトの動向などを書けたらと思います。 それでは。
[120]森崎名無しさん:2018/01/28(日) 23:33:03 ID:??? 乙です 穣子さんが良い女すぎる…妻として反町を支えてやってほしい
[121]森崎名無しさん:2018/01/29(月) 01:29:16 ID:??? 移籍の理由の一部としてシュート練習したいからってのがなんともシュート魔王らしいというか とはいえ、穣子が行かないでって言ったら残ったんだろうなぁ 穣子もそれが分かってて移籍しろって言ってるんだろうな
[122]森崎名無しさん:2018/01/29(月) 06:29:58 ID:??? 早苗さんルートだと移籍しか道がなかったんやなって…… 穣子ルートも見たかった
[123]森崎名無しさん:2018/01/29(月) 08:47:43 ID:??? メタ的に大妖精が練習に付き合ってくれないって結構影響あったんですか? これがプロチームの話しだったら大妖精が批判される案件だとは思うが
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0ch BBS 2007-01-24