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【SSです】幻想でない軽業師
[144]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:22:20 ID:??? サンタナに関してはリリーたちの考えよりも更に単純。 サンタナ「(人間がいるなら私も移りたいけど……チルノが行くチームになんか意地でも行ってやるもんか! へへーんだ、むしろいなくなってくれてありがたいくらいだわ!!)」 チルノを嫌う妖精トリオの中で、1番にチルノの事を敵対視しているのがサンタナである。 妖精トリオの中で反町に1番懐いているのも彼女とはいえ、 それ以上にチルノに対する悪感情が強かった彼女が残留を表明するのは自明の理と言えた。 或いは、彼女たちも、静葉たちが幻想郷Jrユースとして活動する傍ら、 オータムスカイズの一員として数多のチームと野良試合を繰り広げた事で、このチームへの愛着を人一倍持ったのかもしれない。 サンタナ「(大妖精がいなくなってもキーパーはいるし! ね、ボナンザ!!)」 ボナンザ「…………」シャンシャンシャーン 静葉「(チルノちゃんとサンタナちゃんは両天秤だった。 大ちゃんやレティの事を考えればチルノちゃんに残って貰った方がありがたかったわね……。 とはいえ、その両天秤も絶対とは言えなかった。 チルノちゃんへの敵意より、サンタナちゃんの一樹くんへの信頼が上回っていればそれまで。 ……正直言って、全員が守矢へと移籍する可能性だってあった)」 そういう意味では、反町がそこまで全員と親交を深めあっていなかった事に安堵をする静葉。 ただ、それでも依然として戦力が不足しているというのは事実である。 何せ残留を表明した中でリグルはともかく、サンタナ、リリーW、リリーBは何れも一線級とは到底呼べない選手たち。 もう一言、ここで欲しいと静葉は考え……。 静葉「……妹紅は、どうかしら?」 妹紅「…………ああ」 視線を横へと向け、考え事をしていた少女――藤原妹紅へと問いかけた。
[145]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:23:38 ID:??? 妹紅は考えていた。 そもそも――彼女自身も、オータムスカイズには途中加入をした選手である。 当初はコーチとして、未熟な選手たちが多い中で得意とするタックルや競り合い、シュートを教えてきた。 その切っ掛けとなったのは、やはり反町である。 元来、蓬莱人――不死の体を持つが故に、人との関わりを避けようとしてきた妹紅。 そんな彼女が再び人妖と交わろうとするようになったのは、反町のお蔭であった。 彼と出会い、交流を深め、時には草サッカーの助っ人として呼ばれ、 そして世捨て人のような、達観したようなそぶりを見せながらも、その実、人に焦がれ寂しがっていた妹紅。 その外殻を捨て去り、素直に1つのチームの一員としてチームスポーツを楽しむ事を教えてくれたのは反町なのだ。 妹紅「(感謝してる……感謝してるんだ。 でも……)」 ただ、それと同時に妹紅を助けたのは静葉でもある。 妹紅「(あの時、私の庵に反町と静葉が来てくれて……2人が揃って私を誘ってくれたんだ。 そのおかげで私はオータムスカイズにいる)」 妹紅にとってオータムスカイズで過ごす日々は楽しいものだった。 久方ぶりに多くの者たちとの共同生活を行い、サッカーを通じて友情を育んだ。 長年の宿敵であった輝夜とも打ち解けるようになり、妖精1とにとりの猛特訓に付き合った思い出もある。 日数で言えば、今まで妹紅が過ごしてきた日々に比べれば本当に極僅か。 それでも、妹紅にとっては掛け替えのない時間だった。 本音を言うならば、誰も移籍する事なく、同じチームでずっとサッカーをしていたい。 妹紅「(でも……駄目なんだよね)」 それは永遠を生きる妹紅がいつも繰り返してきた事。 永遠に、ずっとこの"今"が続いて欲しいと願う妹紅とは対照的に、"生きる"者たちは変化をしていく。
[146]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:24:47 ID:??? 妹紅「(昔はそれが嫌だったんだ……今は続かない。永遠なんてものは本来無い筈なんだ。 こういう思いがしたくないから、人と関わり合うのだって嫌だった……けど)」 それを受け入れて、人の中で生き続けると妹紅は決めたのだ。 他ならぬ反町と、静葉の言葉によって。 だからこそ、今の状況を受け入れなければならない。 妹紅「(そう、わかっていた事なんだ。 変わっていく事は。 まさかキャプテンの反町が……っていうのは驚いたけど、幽香だっていなくなってるし……。 それを受けて大妖精たちも移籍に傾いてる。 そういう流れが来たって、別におかしくはない。 問題はそれを受けて、私がどうするか……)」 空返事をしてから考え込むようにしていた妹紅を、静葉は不安げに見やる。 静葉だけではない――多くの者たちは、極端な熱血漢へと変貌した妹紅の物珍しい大人しい姿に呆気を取られていた。 そんな視線を知ってか知らずか、迷いに迷った妹紅は、1つの決断を下した。 妹紅「私は……残る。 オータムスカイズに残るよ」 静葉「! そう……ええ、歓迎するわ妹紅」 妹紅「こっちこそ、これからもよろしくね!」 喜びを隠さずに声を上ずらせる静葉に対して、妹紅は笑みを浮かべながら返答する。 その笑みの裏側で、妹紅は考えていた。 反町にも静葉にも感謝はしている、恩がある。ならばどちらを取るのか。 妹紅はどちらも取らなかった。というより、個人を対象とする事を止めた。 妹紅「(反町にも静葉も、本当に感謝してる。 でも……私が一番感謝してるのはこのチームに対してなんだ。 みんながバラバラになるなら――いや、なっても。 このチームの皆が私にしてくれた事を忘れない為に。 私はこのチームの存在が無くなるまでここにいる。 仮になくなったとしても――ずっと忘れない)」 人ではなく、チームへの感謝。自身を変えてくれた、受け入れてくれた多くの仲間たち。 短い間だったとはいえ、共にいた事を忘れないように。藤原妹紅は残留の意志を表明した
[147]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:25:52 ID:??? にとり「(妹紅は残る事を選ぶかぁ、そっかぁ……あー、私はどうしよう!)」 この妹紅の残留宣言を聞いて、更に悩んでいたのはにとりであった。 彼女もまた妹紅と同じく、反町・静葉共に親しい。 しかもそれだけではなく、よりにもよって守矢フルーツズ――即ち、妖怪の山に本拠を置くチームが関わっているというおまけつき。 妖怪の山は幻想郷でも珍しい程の縦社会が形成された地域である。 河童であるにとりは、その中でもあまり地位が高い方とは言えない。 守矢神社の二柱である神奈子と諏訪子に対しても、別段直属の上司といった訳ではないが、 それでもご近所のとっても偉い人という関係性だ。 にとり「(本来なら戻る方が自然なんだろうけど……でもここでのびのびやりたいんだよね……。 やっぱ睨みきかされるとやりづらいし)」 割と小心者な一面も持つにとりとしては、現状、オータムスカイズの方がやりやすくはある。 とはいえ、だからといってそう簡単に残留を示せるものではなかった。 にとり「(チルノとレティが向こう行っちゃうとはいえ、DFの数自体はまだまだ不足してそうだしなぁ、あっち。 ……反町を通して八坂様とかに勧誘されたらなんて断ればいいんだか。 うーん……)」 何度も言うように、幻想郷サッカー界では移籍というのは日常茶飯事である。 だからこそ、にとりとしてはそういった心配事があった。 残留を表明しながら、勧誘されたらホイホイついていく――などという事があれば、 そちらの方が余程静葉らに対して残酷である。 故に今のにとりに必要なのは、覚悟であった。 勧誘をされたとしても突っぱねられるくらいの、大きな覚悟。 にとり「(静葉を取るか反町を取るか……じゃ、覚悟は出来ない。 問題はそうじゃないんだ。 勿論私がサッカーをのびのび出来るかどうかって話でもない)」
[148]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:27:00 ID:??? そう考えながら、にとりはそっと視線を斜め向かいへと向けた。 妖精1「………………」 にとり「………………」 そこでは少しだけ不安そうに、しかし話し合いが始まってからじっとこちらに視線を向ける愛弟子の姿がある。 かつて才能があると見出し、師弟関係を結びながら、 しかし放任主義から大きく他の妖精たちと実力差をつけられてしまった妖精1。 彼女の訴えを聞き、初めてにとりは己の過ちを理解し、彼女の為に全てを捧げた。 自分の練習時間を削り、妖精1を鍛え上げた。幻想郷Jrユースの合宿でも、常に共に過ごしてきた。 それでもまだ足りない。 にとり「(私が思っていた妖精1は、思慮深くて大人びていて、こっちの考えをしっかりわかってくれてる奴だった。 ところが、話し合ってみればなんてことない。あいつもやっぱり妖精なんだ)」 それは悪い意味ではない。 にとり「(思慮深いんじゃなくて臆病なんだ。 大人びているんじゃなくて諦めているんだ。 こっちの考えをわかってくれて黙ってるんじゃない、自分を出すのが苦手なんだ)」 なんてことはない、1番理知的に思えた妖精1も……やはり、ただの子供に近い精神構造をしているだけである。 それを知らなかったにとりは、かつて傷つけてしまった。 だからこそ周囲に対して劣等感を抱き、自分に自信を持てない妖精1をなんとかしてやりたかった。 にとり「(だから私が1番に考えるべきは妖精1の事だ。 どうするのが妖精1の為になるか、妖精1の成長に繋がるのか。 ……妖精1が自信を持てるようになるのか。 考えるんだ)」
[149]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:28:11 ID:??? にとりは思考する。オータムスカイズの中でも割と頭脳派に分類される頭を使って。 にとり「(守矢に移籍した場合――メリットはなんといっても反町が味方にいるって事だろ。 反町が相手なら、DFとしてはこれ以上無い環境で練習出来るって事になる)」 奇しくもそれは反町が守矢に移籍を表明した一因である、練習環境。 幻想郷どころか世界レベルで見てもまず間違いないストライカーである反町。 彼を相手に練習ができ、尚且つ、設備の方も守矢の方が優れている。 にとり「(新しい環境に身を置くことになるし、妖精1が嫌ってるチルノも移籍するからそこはアレだけど……。 まあ、メリットに比べれば些細な事だね。 逆にオータムスカイズに残留すれば? ……多分、妖精トリオが残る事になるだろうなぁ)」 既に残留を表明しているサンタナに加え、妖精1も残るとなれば、まず間違いなくヒューイも残留するだろう。 劣等感を抱いているとはいえ、3人は親友である。 妖精1が彼女たちと共にサッカーを出来る環境は、やはり妖精1自身が望むだろう。 にとり「(とはいえ、それはメリットとするには本当に微々たるものだ。 成長を考えれば、1番はやっぱり守矢に移籍する事になるんだろうけど……)」 そこまで考え、にとりはもう一度妖精1を見やる。 妖精1「………………」 にとり「(それは『ブロッカーとしての成長』を考えれば、だ。 ……お前はそうじゃない、なぁ妖精1)」
[150]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:29:46 ID:??? にとりが妖精1に見出した才能――それは群を抜いたマンマーカーとしての才覚である。 特別鋭いタックルが出来る訳ではない、パスカットが得意という訳でもない、ブロック出来るのは三流ストライカーのシュートくらい。 ただ、彼女は類まれなる反射神経と、マンマークについた際に発揮する粘り強さを持っていた。 即ち、ストライカーが打ってから止めるのではない。 打たれる前に止めるのである。 にとり「(勿論そういった面でも反町は格好の練習相手になるだろうさ。 でも違う、私はこいつに自信をつけさせてやりたいんだ)」 自信をつけるにはどうするか。成功体験をさせるのが1番である。 それも、出来れば大きな事で成功させてやるのが1番いい。 にとり「(それなら……『反町が敵に回った方』が、よっぽどやりやすい筈だ)」 現状でも、妖精1のマンマーク技術ならば反町がボールをキープ出来る確率もそこまで高くない。 無論、守矢に移籍してからも反町が練習を積み重ね、ドリブル技術を向上させる可能性もあるが、 そこはそれ。にとりも信頼と実績の鬼コーチング(河童だが)で更に上をいけばいいだけの話である。 にとり「(実際、妖精1の才能はまだまだこんなもんじゃない。 反町が相手なら、高い確率でボールを奪えるようにだってなる筈だ。 反町は……ストライカーとしては一流だけど魔理沙みたいになんでも器用にってタイプじゃないしね。 だからこそ、敵に回す方がいい。 世界トップだろうストライカーを止められれば、何よりの自信になる! よし……!) 妖精1、いいかい?」 妖精1「……うん」 1つ断りを入れてから、にとりは大きく頷くとその口を開いた。 にとり「私と妖精1も残留するよ。 ……いいね?」 妖精1「ん……(河童がそう判断するなら、私は信じるだけよ)」 かつて崩壊しかけ、しかし何よりも強固となった師弟の絆を確認しながら、 こうしてにとりと妖精1は残留を表明した。
[151]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:30:49 ID:??? 一旦ここまで。次でこのパートは終わると思います。 中々進まず申し訳ないです。 それでは。
[152]森崎名無しさん:2018/02/01(木) 23:32:15 ID:??? 乙です かつては忘れることを怖れていたもこたんのそれでも忘れないという決意が涙腺に来た…… 友として末長く秋姉妹を支えてやってほしいな
[153]森崎名無しさん:2018/02/02(金) 00:30:26 ID:??? 乙でした もこたん空気読んでくれた良かった 今のところ残ったメンツで中堅より上くらい?FWとGKが弱いかなー 反町が加わった守矢相手だと勝てるビジョンが見えない
[154]森崎名無しさん:2018/02/02(金) 00:31:35 ID:??? 別スレでも守矢は超巨大戦力になってたな
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0ch BBS 2007-01-24