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【SSです】幻想でない軽業師
[194]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:49:21 ID:??? 小町「(とはいっても、映姫様の持つ方の留学権とやらで飛ばされるのもやだな〜……。 外界にわざわざ行くって事は毎日サッカー漬けになるんだろうし。 嫌いじゃないけど、そこまで必死こくのはねぇ……)」 もっとも、当人は例え映姫の言葉があっても外界へ留学するというのは断るつもりであったが。 ナズーリン「(そして……まあ、ルーミアもまずアウトだな)」 ルーミア「?」 この命蓮寺に身を寄せている間は大人しくしているとはいえ、ルーミアの根本は人食い妖怪である。 命蓮寺を離れ、人々が暮らす外界へと1人放り出すというのは、餓えた獣を放つというのと同義であった。 よって、こちらも話が出る前に、多くの者たちにとって『無し』となる。 星「……では、私が参りましょう! 不肖、この寅丸星! この命蓮寺の為ならば!」 ナズーリン「……いや、流石に本尊であるご主人がいなくなっちゃ駄目だろう」 星「……そういえばそうですね」 椛「(そういえばって……)」 では結局命蓮寺に住まう者たちから出さなければならないのか、とここで一番に名乗りを上げたのは寅丸星である。 本人もやる気は満々であったが、生憎と彼女はこの命蓮寺の本尊であった。 当然ながらそんな立場の者が3年間も命蓮寺を離れる訳にはいかない、と、即座に却下される。 そして、星が残るというのならば、その星の監視役でもあるナズーリンが離れる訳にもいかない。 ムラサ「私も船の修理とか色々あるしなぁ……」 次に口を開いたのはムラサであったが、こちらも問題があって留学には行けないというものだった。 現在彼女たちが住居兼寺として使っている命蓮寺は、元々は彼女が扱う船である。 魔界Jrユースへ合流する際、船へと変形させて使用し、また戻ってきてからは寺として使った為、 この命蓮寺のあちこちは色々と不具合が発生してしまっている。 現在、河童などの力も借りて修復中ではあるが、陣頭指揮を執るムラサがいなくなるというのは問題だ。
[195]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:51:11 ID:??? ムラサ「ぬえはどうなの? あんたなら身軽でいいでしょ」 ぬえ「ん……」 そして話を振られたのは、この命蓮寺に居候をしているぬえである。 ムラサの言う通り、彼女はこの命蓮寺において大きな役割というものは持っていない。 住んではいるが、お勤めを手伝う訳でもなく。日がな一日ぶらぶらしている。 一番身軽であり、一番暇を持て余しているのがぬえだった。 ならば留学に行って貰っても問題無いのではないか、というムラサの意見は至極まっとうなものだったが……。 ぬえ「……留学ってさ、要は強くなりに行くって事だぬぇ?」 小町「そりゃそうだろう。 交流だなんだってのも目的としちゃあるだろうが、強くなるのが1番の主目的さ」 ぬえ「(強くなる、強くなるぬぇ……)」 ぬえ本人としても、今以上にサッカーの実力をつけたいとは思っている。 そういった意味では、このサッカー留学というものも悪くは無いと考えていた。 ただ、例えば――この留学をしてぬえがレベルアップをして帰還をした所で、 果たしてそれが命蓮寺を一気に強豪クラスのチームに押し上げるかというと疑問に思う。 ぬえ「(永遠亭は今でもなんとかなるとは思うけど……紅魔館はうちよりも強いだろうし。 他にも橋姫のチームや地霊殿とかは……うん、厳しそう。 何より守矢にはまず勝てぬぇよね)」 意地が悪くて天邪鬼であるぬえであったが、その根本は仲間への思いやりで溢れていた。 普段の生意気な口の利き方なども、要はその裏返しである。 故に、この時も彼女は全体として――俯瞰的にチームの事を見て、自身に出来る事を探していた。 確かに留学をしてぬえ自身が強くなる事も一つの手である。だが、それは他の者にも出来る。 ぬえ「(……うちの強みって、オータムスカイズみたいに全員を名有りで固められてるって事だぬぇ。 戦争は数だよって偉い人も言ってたし、うん……)私もやりたい事があるからパスだぬぇ!!」 ムラサ「えー……」 よって、ぬえまでもこの留学の件を断った。
[196]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:53:04 ID:??? となれば他に行けそうな人物など、そう多くは残っていない。 この命蓮寺の代表である白蓮を除けば、自然と絞られてくる。 一同は一度、視線を椛へと集中させ――これを受けた椛は、やや俯きながら、苦笑しつつ口を開く。 椛「……申し訳ないッスけど、自分も妖怪の山の仕事がありますから。 3年なんてとてもとても……」 ナズーリン「ああ……まあ、そうなるだろうね」 元々彼女も妖怪の山に所属をしており、手に職を持つ妖怪であった。 哨戒天狗として組織においても下っ端に位置される彼女が、3年間もの長い間……。 仮に守矢神社などからの指令でならばともかく、命蓮寺の為にと仕事を休むという事が出来よう筈もない。 椛「(それに……サッカー留学をしても、ねぇ)」 ただ、それ以上に椛がこの話を受け入れられない理由もあった。 Jrユース大会から既に数日が過ぎていく中、多くの者たちはあの敗戦から立ち直り始めていたが、 椛の中では未だに尾を引いている。 かつてオータムスカイズに在籍をしながら周囲の成長に後れを取り、チームを立ち上げ始めたばかりだった命蓮寺へと移籍。 当初から今まで、得意とするブロックと数少ないサッカー経験者として主にディフェンス陣を引っ張ってきた。 練習などによる成果が芳しくない時もあったが、それでも努力を重ね、 魔界Jrユースではレギュラーとして起用される程には成長をした。 それでも負けた。完膚無きまでに。 椛「(反町さんどころか……魔理沙やリグルのシュートすら止められなかったッス……。 今更、自分がサッカー留学した所で……この差が埋まるんスかねぇ……)」 強くなっても強くなっても、差は縮まるどころか逆に広がるばかり。 自信を喪失しつつあった彼女が乗り気になれないのも、無理からぬ事だった。
[197]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:54:05 ID:??? ならば――と、一同は視線を縁側へと向けた。 ここまで話し合いに一度として参加をしていない……この命蓮寺のキャプテン。 白蓮「佐渡くんは……どうでしょうか?」 佐野「………………」 いつものように名前を間違える白蓮に、もはやツッコミを入れる事なく。 佐野満――椛同様、ボッコボコのケチョンケチョンにしてやられてしまった男は、縁側で静かに黄昏ていた。 ナズーリン「……やめておいた方がいい、聖。 今の彼には心の休養が必要だろう。 それと、彼の名前は佐野だ」 小町「元気だけが取り柄って感じだったのにねぇ……」 椛「(無理無いッスよね……)」 幻想郷へと戻ってきてからというもの、佐野はいつもこうであった。 命蓮寺で生活するようになって規則正しい生活が身についた為に朝は早朝に起床をし、 食事もしっかりと取り、手伝いなどもするものの、暇があればいつも縁側で黄昏るばかり。 無暗やたらとやかましく、根本的にアホで、割と一同からは呆れられる事も多かったかつての姿は潜めていた。
[198]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:56:07 ID:??? その原因といえば、やはりあの大敗が原因なのだろう――と、一同は考える。 反町より後に幻想郷へと呼び出され、命蓮寺へと所属をし、これまで切磋琢磨をしてきた。 幻想郷内の大会で栄光を掴み、かつてからは想像も出来ない程の力をつけた反町に対し、 羨望と嫉妬とを混ぜたような複雑な感情を持ち合わせていた佐野。 そんな彼が初めて反町と対峙をしたのは、命蓮寺としての練習試合。 全幻想郷以上の猛特訓を繰り返して挑んだその試合に――しかし、佐野達はボッコボコにやられた。あまりにもあっさりと。 そこまでならばまだ佐野も立ち上がれた。頼れる仲間と師匠と共に、リベンジの機会を伺った。 だが、そのリベンジの機会がどういう結果になったのかは――先述の通りである。 得意のキープもある程度成功しようと、相手はその上を行く超火力で蹂躙する。 ダブルスコアをつけての大敗。 椛「(普段明るい人程、落ち込んだ時に立ち直るのが遅いって言うッスけど……)」 ぬえ「……バッカみたいだぬぇ。 いつまでもメソメソしててもしょうがないのにさ」 いつものぬえの悪態が鈍る程度には、佐野の気落ちは目に余るものだった。
[199]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:58:19 ID:??? 一旦ここまで。
[200]森崎名無しさん:2018/02/09(金) 02:18:11 ID:??? 乙でした 佐野くんすっかり大人しくなっちゃってまあ 復活の軌跡楽しみに待ってます
[201]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:24:30 ID:??? となると結局、誰も留学に行かせる者がいなくなるという結論になってしまう。 その後も一同は喧々囂々と議論を重ねるのだが……。 魅魔「ちょいと邪魔するよ」 白蓮「あら?」 星「ああっ、魅魔さん! お久しぶりです!」 不意に聞こえてきたのは、件の佐野の師匠――魅魔の声であった。 佐野の師匠として普段から命蓮寺で過ごしていた彼女であったが、Jrユース大会が終わってからというもの、姿を見せない。 一体どうしているのだろうかと思っていた所にようやく姿を見せ、白蓮や星は喜ぶのだが。 ナズーリン「一体今までどこをほっつき歩いていたんだい? 先代の博麗の巫女殿は……今は神社にいるらしいが」 魅魔「いやなに、魔界の連中についてあたしゃあっちに戻ってたんだよ、色々と話もあったからね。 幻想郷に戻ってきたのはつい昨日の事さ」 ムラサ「それならもっと早く顔を出してくれればよかったのに……」 魅魔「そうしようとも思ったんだけど、ちょいと野暮用があってね……ほれ」 言いながら、魅魔が身を翻すとその背後から人影が現れる。 決して大柄という訳ではない彼女の背中に隠れる程の小柄、しかしながらこの場にいる全員がよく知る顔。
[202]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:25:53 ID:??? 魔理沙「よう」 小町「あれっ、魔理沙じゃないか?」 普通の魔法使い――霧雨魔理沙の姿が、そこにあった。 魔理沙「しかし……改めて見るとどういう集まりだこりゃ? 寺の連中はともかく、死神に人食い妖怪に白狼天狗。 とんと共通点が見当たらんぜ」 椛「まあ、話せば色々長いッスよ」 魔理沙「じゃあいいや。 そこまで興味はない」 魅魔「バカタレ、興味が無かろうが話くらいは聞いとけ。 少なくとも、あたしがそこそこ長い間滞在したチームの事だ」 パコッ 魔理沙「いてて」 相変わらずの憎まれ口を叩く魔理沙の頭を引っぱたきながら注意をする魅魔。 いつまでも師匠面されて嫌になる、と肩を竦める魔理沙だったが――その表情が実に楽しげに見えたのは錯覚ではないだろう。 魅魔と魔理沙の関係性について、命蓮寺に所属をする一同は既にあらかた説明されており、 なるほど、幻想郷へと戻ってきた彼女が魔理沙の元へと向かうというのもわかる話であった。 白蓮「昨夜は魔理沙さんの所にお泊りになられたんですか?」 魅魔「ああそうさ。 しかし酷いもんだったよ、そこら中に物が散乱してて寝るスペースすら取れやしない」 魔理沙「普通だぜ」 呆れた様子の魅魔も、しかし嬉しげであり……そんな中、視線を彷徨わせて縁側で佇む、もう1人の弟子に目をつける。
[203]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:27:08 ID:??? 魅魔「……あいつはまだあの調子かい」 大会後、魅魔が一旦命蓮寺のメンバーから離れ魔界へと向かった際、彼女の気がかりとなったのが佐野の事である。 試合中、点差が決定的となった時から糸が切れた人形のように脱力し、試合が終わってからも立ち直る素振りすら見せなかった。 果たしてそんな彼を置いていって大丈夫か――と、後ろ髪を引かれながらも、 しかし、今後を考えて神綺たちと共に魔界へと戻った。 その期間中に、佐野ならば地力で立ち上がってくれるだろうと考えてはいたのだが……。 生憎と、魅魔の期待通りにはならなかったのは、一目見ればわかってしまう。 魔理沙「……魅魔様」 魅魔「ん……」 それは魔理沙から見ても明らかなものだったのだろう。 殆ど言葉を交わした事が無いと言えど、魔理沙にとって佐野は弟弟子である。 今、佐野に何が必要なのか――姉弟子である彼女は誰よりも理解しており、視線で魅魔に訴えかけた。 それに魅魔はただ頷くだけで了承し、ふよふよと佐野の傍まで移動をする。 魅魔「どうした、しょぼくれて」 佐野「…………なんだ、師匠か」 魅魔「なんだとはなんだ、久しぶりに会った師匠に対して」
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0ch BBS 2007-01-24