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【SSです】幻想でない軽業師
[199]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:58:19 ID:??? 一旦ここまで。
[200]森崎名無しさん:2018/02/09(金) 02:18:11 ID:??? 乙でした 佐野くんすっかり大人しくなっちゃってまあ 復活の軌跡楽しみに待ってます
[201]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:24:30 ID:??? となると結局、誰も留学に行かせる者がいなくなるという結論になってしまう。 その後も一同は喧々囂々と議論を重ねるのだが……。 魅魔「ちょいと邪魔するよ」 白蓮「あら?」 星「ああっ、魅魔さん! お久しぶりです!」 不意に聞こえてきたのは、件の佐野の師匠――魅魔の声であった。 佐野の師匠として普段から命蓮寺で過ごしていた彼女であったが、Jrユース大会が終わってからというもの、姿を見せない。 一体どうしているのだろうかと思っていた所にようやく姿を見せ、白蓮や星は喜ぶのだが。 ナズーリン「一体今までどこをほっつき歩いていたんだい? 先代の博麗の巫女殿は……今は神社にいるらしいが」 魅魔「いやなに、魔界の連中についてあたしゃあっちに戻ってたんだよ、色々と話もあったからね。 幻想郷に戻ってきたのはつい昨日の事さ」 ムラサ「それならもっと早く顔を出してくれればよかったのに……」 魅魔「そうしようとも思ったんだけど、ちょいと野暮用があってね……ほれ」 言いながら、魅魔が身を翻すとその背後から人影が現れる。 決して大柄という訳ではない彼女の背中に隠れる程の小柄、しかしながらこの場にいる全員がよく知る顔。
[202]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:25:53 ID:??? 魔理沙「よう」 小町「あれっ、魔理沙じゃないか?」 普通の魔法使い――霧雨魔理沙の姿が、そこにあった。 魔理沙「しかし……改めて見るとどういう集まりだこりゃ? 寺の連中はともかく、死神に人食い妖怪に白狼天狗。 とんと共通点が見当たらんぜ」 椛「まあ、話せば色々長いッスよ」 魔理沙「じゃあいいや。 そこまで興味はない」 魅魔「バカタレ、興味が無かろうが話くらいは聞いとけ。 少なくとも、あたしがそこそこ長い間滞在したチームの事だ」 パコッ 魔理沙「いてて」 相変わらずの憎まれ口を叩く魔理沙の頭を引っぱたきながら注意をする魅魔。 いつまでも師匠面されて嫌になる、と肩を竦める魔理沙だったが――その表情が実に楽しげに見えたのは錯覚ではないだろう。 魅魔と魔理沙の関係性について、命蓮寺に所属をする一同は既にあらかた説明されており、 なるほど、幻想郷へと戻ってきた彼女が魔理沙の元へと向かうというのもわかる話であった。 白蓮「昨夜は魔理沙さんの所にお泊りになられたんですか?」 魅魔「ああそうさ。 しかし酷いもんだったよ、そこら中に物が散乱してて寝るスペースすら取れやしない」 魔理沙「普通だぜ」 呆れた様子の魅魔も、しかし嬉しげであり……そんな中、視線を彷徨わせて縁側で佇む、もう1人の弟子に目をつける。
[203]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:27:08 ID:??? 魅魔「……あいつはまだあの調子かい」 大会後、魅魔が一旦命蓮寺のメンバーから離れ魔界へと向かった際、彼女の気がかりとなったのが佐野の事である。 試合中、点差が決定的となった時から糸が切れた人形のように脱力し、試合が終わってからも立ち直る素振りすら見せなかった。 果たしてそんな彼を置いていって大丈夫か――と、後ろ髪を引かれながらも、 しかし、今後を考えて神綺たちと共に魔界へと戻った。 その期間中に、佐野ならば地力で立ち上がってくれるだろうと考えてはいたのだが……。 生憎と、魅魔の期待通りにはならなかったのは、一目見ればわかってしまう。 魔理沙「……魅魔様」 魅魔「ん……」 それは魔理沙から見ても明らかなものだったのだろう。 殆ど言葉を交わした事が無いと言えど、魔理沙にとって佐野は弟弟子である。 今、佐野に何が必要なのか――姉弟子である彼女は誰よりも理解しており、視線で魅魔に訴えかけた。 それに魅魔はただ頷くだけで了承し、ふよふよと佐野の傍まで移動をする。 魅魔「どうした、しょぼくれて」 佐野「…………なんだ、師匠か」 魅魔「なんだとはなんだ、久しぶりに会った師匠に対して」
[204]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:29:14 ID:??? 軽く声をかけてみても、返ってくるのは上の空の返事。 一目魅魔を見て、しかしすぐに視線を虚空へと向けて溜息を吐く佐野を見て、いよいよもって重症だと魅魔は悟る。 魅魔「(落ち込む事こそあれど……こいつはそこまで引きずるタイプには思わなかったがねぇ。 ……まぁ、こういう事もあろうさ)」 体育座りこそしていないものの、ジメジメとした佐野の態度に眉を潜めながら、 それでも魅魔は佐野の隣へと腰かけた。 魅魔「……ちゃんと飯は食ってるかい?」 佐野「…………」 ムラサ「あ、今日の昼食はちゃんと2回おかわりしてたわよ」 魅魔「(……落ち込んでる割にはしっかり食ってるね)」 返事をしない佐野に代わってムラサが答える。 色々と言いたい事はあるが、ともかく、食欲があるのはいい事だとして魅魔は続ける。 魅魔「……そんなにショックだったかい、あの反町くんの事が」 佐野「………………」 無言ではあったが、反町の名を出した瞬間、佐野の体がピクリと震えるのを魅魔は見逃さなかった。 やはりあの大敗――そして、反町と己との格差というものが、彼の中では大きくのしかかっているのだろう。 佐野「………………」 魅魔「……お前さん、言ってたね。 自分と反町くんとやらは、元いたチームじゃ似たような立ち位置だったって」 反町一樹と佐野満。 両者は共に、全日本Jrユースへと召集をされたFWであった。 反町一樹は全国中学生サッカー大会の得点王。 そして、佐野満は初出場ながらもベスト8まで駒を進め、優勝チームである南葛を苦しめた比良戸の2年生FW。 大会でも両者ともに活躍をしたが、しかし、代表での扱いは決していいものではなかった。
[205]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:31:20 ID:??? 単純な力量不足ではあるものの、反町も佐野も十把一絡げの一員でしかなかった。 反町は単純に、雑魚チームを相手に得点を荒稼ぎしてなんとか得点王を取っただけの凡夫。 そして佐野はキープ力に関してはある程度目を見張るものがあるものの、FWとしては得点力の低さが目立ち、 おまけにそのキープ力についてもチーム内にはもっと上手いものがゴロゴロいるという有様だった。 圧倒的なシュート力を持ち、FWの中でも頭一つ抜けている日向小次郎の相方を任せるに足るサブFW。 その競争の中でも下位に位置をしていたのが両者である。 だが、この幻想郷へとやってきて両者は大きく変化を遂げた。 佐野はドリブルの精度を上げて更にキープ力を増し、不安だった得点力も(椛の力を借りてであるが)ある程度解消。 MFとしても十分通用をするだけのパス精度まで身に着けた。 ……守備については、まるで手つかずであったが。 少なくとも、今、全日本へと戻ればレギュラーが確約されるであろう程の実力は得た。 ただ、それ以上に劇的な変化を遂げたのが反町だった。 元々は帯に短し襷に長し……総合的な能力で言えば日向、来生に次ぐ実力者でありながらも、 尖った部分が無い――長所が無い故に目立たない選手であった反町。 そんな彼はこの幻想郷で、爆発的なシュート力を身に着けた。 必殺シュートを編み出そうとしてたまたま見つけた、ドライブ回転をかけたシュートへの適性。 地道にコツコツと、努力を重ねて身に付いたシュートの威力。 そして、それらを最大限に生かせるだけの精密過ぎるシュートコントロール。 天才とは及ばないまでも秀才とも言える頭脳も武器とし、彼は大きな進化を遂げた。 佐野がレギュラー確定とするならば、反町はまずエースストライカーとしてチームの中心となれる程。 それ程までに互いに力をつけ――そして、その差は開いていた。
[206]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:32:50 ID:??? 佐野「……俺と反町さんの何が違うってんだ」 魅魔「………………」 魅魔の言葉を聞き、そして、それが彼の何かに触れたのか。 ぽつりと、小さく――しかし、隣にいる魅魔が聞こえる程度の声量でそう呟く。 佐野と反町の何が違う――かつては、立場はそう変わらなかった。 ユース世代になれば共に切り捨てられるような、そんな不安定な立ち位置だった筈だ。お互いに。 佐野「俺だってこの命蓮寺にやってきて、自分なりに必死こいてやってきた。 師匠もいてくれて、チームメイトもどんどん増えて、キャプテンとして引っ張ってきたじゃねぇか」 魅魔「……ああ、そうだね」 それは事実だった。 佐野は確かに、このサッカーのど素人集団であった命蓮寺のメンバーを、キャプテンとして引っ張ってきた。 ともすれば少しばかり――いや、かなり頼りない所はあったが、 それでも持前の明るさと懸命さでチームを盛り立て、魅魔らに助けられながらも努力を重ねてきた。 その甲斐あって命蓮寺のメンバーも……今や、中堅から強豪と言える程の実力者が揃っている。 白蓮などに至っては、名門の選手とも遜色が無いレベルだ。 佐野「反町さんが華々しく大会で活躍してる時だって、大会に出るのは我慢して、練習に練習を重ねた!」 結局、佐野達が幻想郷のサッカー界でデビューを果たす事は無かった。 華々しい舞台を蹴ってでも、実力を上げる事を選択した。 それもこれも、最後には必ず笑う事が出来ると信じての選択である。 だが、結果はご存知の通りだった。
[207]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:34:32 ID:??? 佐野「俺と反町さんの何が違う……!」 魔理沙「………………」 いつしか大声となっていた佐野の言葉に、命蓮寺のメンバーは胸を締め付けられ、 そして、姉弟子である魔理沙もまた奥歯をギリとかみしめる。 彼女もわかっていた――立場が違えど、反町に苦しめられた者として……佐野の気持ちが痛い程わかる――。 佐野「なんで……なんで……!!」 魅魔「佐野……」 佐野「なんで反町さんに彼女が出来て!! 俺に出来ねぇんだよォォォオオオオ!!!」 ――筈だった。
[208]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:35:56 ID:??? 「「「………………」」」 ルーミア「かのじょ?」 佐野の絶叫を受けて、唯一、言葉を発する事が出来たのはルーミアだった。 基本的に能天気であり、性質としてはオータムスカイズのリグルなどに近いのが彼女である。 あまりにも予想外過ぎる佐野の言葉に、純粋に疑問を持てたのが彼女だけだった。 魔理沙「………………」 逆に他の者たちはといえば、絶句である。 二の句を継げないどころか、一の句すら発する事が出来ない。 あれ?さっきまで反町との格差についてあれほど悲痛に語ってたんじゃなかったっけ? 一同の脳内は混乱を極め、しかし、佐野は更に続ける。 佐野「そうだよ彼女だよ、俺もさぁ、聞いてたよ! 噂に聞いてたよ、反町さんに彼女出来たって!! でもなんだよこれさぁ! 見ろよホラ!!」 言いながら佐野は立ち上がると、ナズーリンが読んでいた新聞を広げた。 ナズーリンが言っていたように、一面には反町と早苗の記事。 当然その記事にはデカデカと、それはそれはお似合いのカップルの写真が写っている。 照れた様子の反町と、同じく早苗。その背後ではややムッとした表情の神奈子と、嬉しげな表情の諏訪子の姿も見える。 佐野「なんっっっでこんな可愛い彼女出来てんの!? ビックリするわ!!」 そう、早苗は可愛かった。 無論、佐野もフィールドで相対し、その顔を見た事もある。 だが写真に写る彼女の姿は正に恋する乙女。はにかむ姿はなんとも麗しく、 フィールドで奇跡のGKとしてゴールは絶対許早苗とか言う姿からはまるで想像できない。
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0ch BBS 2007-01-24