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【SSです】幻想でない軽業師
[256]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:29:55 ID:??? シェスター「ヨーム、どうしたんだい?」 妖夢「あ、ごめん。 考え事を……」 シェスター「ヘタの考え、釈迦寝に似たりだよ!」 妖夢「……思いっきり寛いでますねそれは」 微妙に惜しいシェスターの間違いに苦笑いをしつつ、妖夢はもう一度相談をしてみるのもいいかと考え、 シェスターに対してぽつりぽつりと悩みを打ち明けだした。 シェスター「うーん、前も聞いたけど留学かぁ……ヨームはどうしたいんだい?」 妖夢「それが私にもさっぱり。 ……強くなりたいという気持ちは確かにある。 その為には、留学が1番だとも思う。 でも……不本意ながら、私もこのチームからはやっぱり離れたくない」 強くはなりたい、だがチームは離れたくない。 離れなければここで練習をして強くなるしかないが、それでは周囲と成長速度もほぼ同じになるだろう。 二律背反、どちらも取れず、だからこそ妖夢は悩んでいる。 妖夢「白玉楼を離れてサッカーをするのは、本当に楽しかった。 ……いや、幽々子様とサッカーをするのが嫌だという訳じゃないけど。 ただ、藍さんやアリス。 ヤマメやキスメ、シェスターと一緒に過ごすのが楽しかった」 シェスター「俺も!」 妖夢「うん……だから、離れたくない。 でも……留学に行けば、チャンスが広がる。 もしかしたら、反町や魔理沙にだって追いつけるかもしれない」
[257]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:31:03 ID:??? そこまで言ってから、妖夢は「どう思う?」と、視線でシェスターに問いかけた。 シェスターはその意図に気づき、しばらく無言で腕を組み、唸っていたが……。 シェスター「ヨームがしたい道を選ぶのが1番。 1番だけど……」 妖夢「だけど?」 シェスター「……ヨームはここでするサッカーが楽しいって言ったよね?」 妖夢「? うん」 シェスター「……楽しくないサッカーっていうのも、知るべきかもしれない」 次に口を開いて出た言葉に、妖夢は思わずすぐ反応出来なかった。 妖夢「……楽しくないサッカー?」 そして、反応がようやく出来ても――それはただの鸚鵡返しとなってしまう。 だが、シェスターはそんな妖夢の反応にも真剣にコクリと頷き返した。 ――無論、妖夢もサッカーをしていて楽しい以外の感情を抱いた事はある。何度もある。 例えばそれはドリブルやシュートが失敗をした時。 例えばそれは試合に負けてしまった時。 例えばそれは他の強者に居場所を奪われ、ベンチから試合を見つめるしかなかった時。 しかし、シェスターは妖夢がそんな気持ちを抱いた事があるのも知っている筈だ。 ならばきっと、楽しくないサッカーというのは、そういったものとはまた違うものなのだろう。 では、何故そんなものを『知るべき』だというのか。 シェスター「ヨームはパルパルズでのサッカーが楽しいって言ったよね? でも……外のサッカーは、楽しいだけじゃ出来ない」 妖夢「? 楽しいだけじゃ出来ない?」 シェスター「少なくとも、楽しむと強くなるを両立するのは難しい。 俺はそう思う」
[258]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:33:36 ID:??? 基本的に、幻想郷のサッカーというのは、趣味の延長線上のようなものである。 競技に準じる者たちも、本職を持っている場合が多く、 だからこそ草サッカー的な楽しみを第一とした主義主張といったものが色濃く出る。 しかし、外界のサッカーはそのような甘いものではない。 シェスター「外の世界の……少なくとも、俺がいた世界でのサッカーは、金を稼ぐ為のサッカーだよ」 妖夢「お金を?」 シェスター「うん。 サッカーをすることで、お金を――お給料を貰う。 俺がいたのは、そういうチームの更に下部組織。 将来的には、外の世界にもし戻っていれば、そこを目指していただろうからね」 それは幻想郷サッカーではありえない話であった。 例えば、大会の副賞として現金などが貰える事はある。あるが――しかし、サッカーをしていて恒常的に給料を貰える事などはない。 基本的に、先にも述べたように幻想郷サッカーは道楽なのである。 そこに金銭や何かという、野暮なものが介入する余地は無い。 シェスター「ただ、外の世界は違う。 ……俺はまだマシな方だよ。 でも、もっと生活が苦しい者は、サッカーで一山当てようとする。 そうすればどうなるか……」 妖夢「…………どう、なるの?」 含ませるようなシェスターの言葉に、しかし、妖夢は首を傾げるだけで……。 それに苦笑いをしながら、やはり妖夢は外の世界に行くべきだ、とシェスターは思う。 シェスター「強くなりたい。 単純に強くなるだけなら、信念さえあればなれるかもしれない。 楽しみたい。 単純に楽しむだけなら、このチームにいれば草サッカーの延長が出来るかもしれない」 妖夢「………………」 シェスター「でも……更にその先を目指すなら、やっぱりヨームは外の世界に行くべきだと思う」 妖夢「…………うん」 シェスター「俺も強くなりたい、楽しみたいっていう気持ちがあった。 でも、それでもここを選んだ。 ヨームも、楽しくないけど強くなれるかもしれない――他に得るものがあるだろうサッカーか。 それともただ楽しいというだけのサッカーか。 どちらも知った上で、選んだ方がいいんじゃないかな?」
[259]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:35:42 ID:??? それはシェスターが、パルパルズでする楽しいサッカーと、外の世界の楽しいとは言えない事もあるサッカーを通して下した決断。 敗北を受けてからは人一倍熱心に練習に繰り出し、反町達へのリベンジに燃えながらも――。 それでも、より成長出来るような環境を選ばなかったシェスターの言う、『楽しくないサッカー』。 妖夢「(一層、行きたくはなくなった……けど……)」 厳しい環境に置いてこそ、己は磨かれる。 少なくとも妖夢はそう師匠に教えられたし、そう信じていた。 今の言葉を聞いて、尚一層、外の世界の環境は厳しいものなのだと感じた――ならば。 妖夢「ありがとう、シェスター」 シェスター「ん?」 妖夢「ようやく迷いが晴れた」 思えば、迷いを断ち切る刀を持つ自身が、迷いを見せるなど言語道断。 それでも迷いを見せていたが、しかし、今の問答でようやく妖夢は答えを導き出した。 妖夢「私は……留学に行く」 シェスター「……そっか。 うん、なら応援するよサムラーイ!!」
[260]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:37:45 ID:??? 強くなる。 厳しい環境に身を置いて、一層の修行を持って強くなる。 楽しくないサッカーというものがどういうものなのか、それは未だに妖夢にはわからない。 ただ、それでも、恐らくは幻想郷の中で一番(反町は秀才ではあるがあくまで日本出身、西尾?はそもそも本国の事情を喋りたがらない)、 外の世界のサッカーに精通をしている者の助言である。 妖夢「それまで、パルパルズの事はお願い」 シェスター「もっちろん! 任せてよ、打倒オータムスカイズ!ってね」 迷いを持っていた少女は、井の中――の外を知る少年の言葉を受け、空へと飛び立った。 厳しい環境に身を置き、知らない事を知り、そして今いるチームの助けとなる事を信じて。 彼女がはばたくか、それとも地に堕ち、幻想郷界隈ではその他大勢も多くいるFWの一員と成り下がってしまうのか。 それはまだ、誰も知らない。
[261]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:39:00 ID:??? 反町、魔理沙、リグルにポジションを独占されてはしまったものの――それでも、彼女の実力が低い訳ではない。 スピードを生かしたダイレクトシュートと、半霊も使った特有のドリブル能力。 得点を取るのは妖夢に任せるかパルスィのドリブルゴールかの二択というのがパルパルズの方針。 その内の1つが無くなる――というのは、あまりにも痛い損失ではある。 痛い損失ではある、のだが――。 かといって、いなくなったからといってまるで点が取れない可能性が無い、という訳でもない。 藍もアリスも、ダイレクトシュートならば妖夢にも負けない程のシュートを打てる。 自己を過大評価をする妖夢に対して、周囲の評価と言えばその程度である。残念ながら。 ただ――かといって、彼女が不要だからと言って留学に向かわせた訳ではなかった。 事実、先に書いた通り、彼女たちの多くは今回の件に関して、妖夢に一任をするつもりだったのだから。 パルスィ「……いいえ、これでいい。 妖夢は、これでいいのよ」 しかし、それを鶴の一声で妖夢を外界へと向かわせるよう仕向けたのがパルスィである。 妖夢とシェスターが語り合う後方、藍達と共に茂みの中から顔だけを覗かせてそう呟くパルスィの姿は、 滑稽を通り越して非常にシュールであったが……彼女が妖夢を想う気持ちは本物である。 パルスィ「我がネオ妬ましパルパルズ。 打倒オータムスカイズを目指し、ここまでやってきた」 弱小から這い上がり、ついには幻想郷有数のチームへとなったパルパルズ。 藍、アリス、妖夢、シェスター……といった数多くの実力者を備えてここまでの地位に上り詰めたチームでもあったが、 しかし、その基本形は前身である妬ましパルパルズ時代からのものである。 即ち、ヤマメ・キスメという最終ラインが守り、パルスィが攻める。 ドリブル・ブロック・一対一。いずれにも精通をした強者がいたからこそ、彼女たちはここまで這い上がってきた。 弱者が強者を食い破る、才能の無い者が才能のある者を圧倒する、ただ一つの道筋を信じて。
[262]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:40:40 ID:??? ……… …… … アリス「なんとかうまくいったけど……これでよかったの?」 そして、この妖夢とシェスターのやり取りを生暖かい目で見守っていたのはその他のネオ妬ましパルパルズの面々である。 本日は午後からの練習、にも関わらずここにはアリスをはじめとして、 チームを構成する全員が揃っていた。 ……それもこれも、キャプテンであるパルスィが、 シェスターになんとしても妖夢を外の世界に留学に行かせるように説得せよと命令し、その様子を見守っていたが為である。 ヤマメ「妖夢は確かにいい子だよ。 才能だってある。 でも、このままじゃそれも腐っちまうってパルスィの判断だね」 妖夢は、基本的に常識的な人物である。 一時的に見た人を定期的に斬り殺そうとしていた時期もあるが、それはそれ。 温厚で真面目で、力をつける事に対して貪欲でありながら――しかし、幼稚であった。 力をつけたいが愛着のあるチームも捨てがたい。 彼女が迷っていたのは、そんな彼女の性格も多分に影響をしているだろう。 藍「いいか悪いかで言えば、パルパルズにとっては大きな損失だ。 現時点でも、妖夢の得点力はパルパルズにとって必要不可欠だからな」
[263]>>261は無視してください ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:42:50 ID:??? 反町、魔理沙、リグルにポジションを独占されてはしまったものの――それでも、彼女の実力が低い訳ではない。 スピードを生かしたダイレクトシュートと、半霊も使った特有のドリブル能力。 得点を取るのは妖夢に任せるかパルスィのドリブルゴールかの二択というのがパルパルズの方針。 その内の1つが無くなる――というのは、あまりにも痛い損失ではある。 痛い損失ではある、のだが――。 かといって、いなくなったからといってまるで点が取れない可能性が無い、という訳でもない。 藍もアリスも、ダイレクトシュートならば妖夢にも負けない程のシュートを打てる。 自己を過大評価をする妖夢に対して、周囲の評価と言えばその程度である。残念ながら。 ただ――かといって、彼女が不要だからと言って留学に向かわせた訳ではなかった。 事実、先に書いた通り、彼女たちの多くは今回の件に関して、妖夢に一任をするつもりだったのだから。 パルスィ「……いいえ、これでいい。 妖夢は、これでいいのよ」 しかし、それを鶴の一声で妖夢を外界へと向かわせるよう仕向けたのがパルスィである。 妖夢とシェスターが語り合う後方、藍達と共に茂みの中から顔だけを覗かせてそう呟くパルスィの姿は、 滑稽を通り越して非常にシュールであったが……彼女が妖夢を想う気持ちは本物である。 パルスィ「我がネオ妬ましパルパルズ。 打倒オータムスカイズを目指し、ここまでやってきた」 弱小から這い上がり、ついには幻想郷有数のチームへとなったパルパルズ。 藍、アリス、妖夢、シェスター……といった数多くの実力者を備えてここまでの地位に上り詰めたチームでもあったが、 しかし、その基本形は前身である妬ましパルパルズ時代からのものである。 即ち、ヤマメ・キスメという最終ラインが守り、パルスィが攻める。 ドリブル・ブロック・一対一。いずれにも精通をした強者がいたからこそ、彼女たちはここまで這い上がってきた。 弱者が強者を食い破る、才能の無い者が才能のある者を圧倒する、ただ一つの道筋を信じて。
[264]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:44:30 ID:??? パルスィ「だからこそ私は妬ましい。 才覚ある妖夢がこのまま腐ってしまうのは。 あいつは……私を差し置いて、このチームのエースになれる才能を持ってる。 それだけで妬ましいのに、それを腐らせるなんて……ああ……妬ましい、パルパル……」 ヤマメ「……心配ないと思うけどねぇ、妖夢って真面目だし。 練習をサボるような奴じゃないだろ。 反町達に負けてるって言ったって、それで腐るようなタマじゃないだろうさ」 パルスィ「いいえ、腐る。 ……何せ、妖夢は綺麗過ぎる」 ヤマメ「うん?」 パルスィの言ってる意味がわからない、と思わず首を捻るヤマメであったが――。 しかし、藍やアリスなどは理解出来たのか、納得をしたように首を縦に振る。 パルスィ「藍やアリスはまだ……私の思想に共感を抱いて、このチームにいてくれる。 シェスターもそう。 ただ……妖夢は、あくまでも『楽しいから』というただそれだけでいる。 ……それでは駄目」 藍「……言わんとする事はわかる」 何をするにも、信念――折れない根本が必要である。 ここにいる腐れ縁であるヤマメやキスメだけではなく、 アリス、藍といった者たちも――パルスィの掲げる、たった1つの題目に引き寄せられた。 当初は成行き任せだったとはいえど、今では彼女たちも心から信頼出来る仲間である。 そして、それはシェスターもまた同じであった。 パルスィ「あいつは尚更そう。 外の世界とこちらを知っていながらも、私達を選んだ。 確固たる信念で」
[265]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:46:11 ID:??? パルパルズに残留する事を決め、この幻想郷に残ったシェスター。 外の世界とパルパルズとを知る彼だからこそ、パルスィは彼に妖夢の説得役を任せた。 彼女の言う、妖夢の綺麗さを――汚すように、と。 当初、シェスターはこれに対し、妖夢の自由にさせるべきではないかと考えていたが――それもパルスィに説得され、了承する。 彼としても、妖夢の有り余る才覚を腐らせてしまうのはあまりにも勿体ないと考えたのだろう。 パルスィ「ああ、妬ましい……穢れも知らぬまま、のうのうとサッカーをしようとする妖夢が妬ましい……」 ヤマメ「あちゃ……また始まっちゃったよ」 アリス「ま、今回ばかりはいいんじゃないの?」 爪を噛み、呪詛を呟き始めるパルスィを見て溜息を吐くヤマメに対し、 アリスは肩を竦めながらそう言い放った。 彼女の視線の先には――妖夢とシェスターがいる。 妖夢「私は3年間で、必ずこのチームに不可欠な選手として帰ってくる」 シェスター「ヨームなら出来るさ! っていういか、今でも不可欠だよ!」 妖夢「…………ありがとう。 ごめんね。 みんなに迷惑をかける事になるけど」 シェスター「大丈夫さ。 みんなも言ってただろ、ヨームの好きにしたらいいって!」 いる。いるのだ。パルスィが大好きで大嫌いな、年頃の男女(しかも美形)が。がっつりと将来の事を話し合っているのだ。 無論、彼女たちに他意はない。互いに好意こそ持っているものの、恋愛的なあれそれではない。 無いが、それを見てパルスィがどういう反応をするのかはまた、別問題である。 それを考えれば、パルスィが勝手に妖夢の才覚に嫉妬をしてくれている方が遥かにマシというものだろう。 松岡監督「身体も心も熱くなってきた!!」 しっとマスク「ムハハ! どれ、ここは私がシェスターと同じく妖夢を後押ししてくるとするか!!」 ヤマメ「よしなしっとマスク! あとついでに監督!! それ以上、いけない」 キスメ「…………」←><という顔をしてる こうして将来を語り合う男女と、それを見守る仲間たちと、あと賑やかし要員。 てんやわんやもありながらも、こうして未完の大器と言われた少女――。 魂魄妖夢は己の殻を破る事を胸に、世界へ羽ばたく事を決断したのだった。
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0ch BBS 2007-01-24