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【SSです】幻想でない軽業師
[329]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:53:10 ID:??? 誰もかれもが個性的ではあるが、それでもサッカーに対して真摯だったのは指導者だった佐野もわかっている。 幻想郷においては珍しい、他者を思いやる心がある者たちばかりだという事も知っている(一名例外はいたが)。 召喚されはしたものの、衣食住――人が最低限生活するのに必要なものを持っていなかった佐野としては、 そんな自分を必要としてくれ、保護してくれた一同に感謝する気持ちが無い筈もない。 佐野「(つってもなんつっていいもんか……こういうのはこっぱずかしくていけねぇな) あー……まぁ、なんだ。 イチさんと同じく、俺も外で頑張ってくっからよ!! 皆もその間、幻想郷で頑張ってくれよな! 俺っていうスーパーエースがいなくなって、イチさんっていう正ゴールキーパーがいなくなって苦労するとは思うけど」 それでも思春期特有の、感謝を口にするのが恥ずかしいと思ってしまう性分故か。 佐野はどこか斜に構えたようにそう宣言するのが精いっぱいだった。 精一杯だったのだが……。 ぬえ「誰がスーパーエースって? ねぇ、誰が?」 ムラサ「(佐野くんには申し訳ないけど……正直、『超人化』した白蓮なら佐野くんの代わりにはなるけど、 GKの不在の方が痛手だから……ぶっちゃけ、佐野くんより一輪の離脱の方が辛いのよねぇ)」 佐野「なにィ!?」 案外佐野の評価自体は大した事なかった。 無論、彼の能力が低いという訳でもなければ、命蓮寺メンバーから嫌われていた訳でもない(一部例外を除く)。 ただ、実際問題佐野という1人のドリブラーの離脱よりは、ゴールを守る一輪の離脱の方が痛手であったというだけの話である。 しかしながら、この反応には流石の佐野も凹む。 口に出して指摘をするのはぬえだけだが、他の者たちもなんとも言えない表情で佐野を見守っているのだから。 佐野「なんだよ!? 俺がいなくなったら誰がボール持って突破すんだよ!? ヒールリフトを誰がするんだよ!?」 ぬえ「ヒールリフトを超必殺技みたいな言い方する男の人って……」 星「ま、まぁまぁ佐野くん。 佐野くんがいなくなって寂しいのは私達もなんですよ。 ……外の世界でも、留学、頑張ってきてくださいね」 佐野「お、おう?」
[330]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:54:18 ID:??? 思わず自分の得意技の有用性について言及してしまう佐野だったが、それすらも一笑に伏される。 実際の所、今更ヒールリフトの有無程度で自慢げにされた所で……という話ではあるのだが。 佐野に対してやけに突っかかるぬえを制しながら、温厚な者たちで占められる命蓮寺の中で人一倍温厚である星が仲介に入る。 思いがけず優しい言葉をかけられて佐野はいつもの流れとはちょっと違うなと感じながら周囲を見やり……。 小町「短い間だったけど同じ釜の飯を食ったんだ。 ま、達者でやりなよ」 ルーミア「お土産はいきのいい人肉がいいな〜」 まずは外様である小町とルーミアが、別れの言葉を告げる。 小町の言う通り、短い間とはいえ共に過ごした仲だ。 そこに情が沸くのはまた人情というものであり、ひらひらと軽く手を振りながら別れを惜しみ。 逆にルーミアは平常運転といった様子で呑気に、いつも通りの対応を見せた。 ナズーリン「……まぁ、幻想郷にいる私達が、元々外の世界にいた君を心配するというのは非常に滑稽なのだろうが。 くれぐれも気を付けてね」 ムラサ「強くなって帰ってくる一輪と佐野くんの事、楽しみにはしてるんだからね」 命蓮寺のメンバーであり、当初から佐野と付き合いのあるナズーリンとムラサは佐野の行く末を心配しつつ期待もしていた。 彼女たちにとって、今は然程能力的に大きな差異が無くなったとはいえ――。 佐野が初めて来訪した時は、佐野は彼女たちにサッカーのイロハを教える指導者だったのだ。 そこに感謝の気持ちと尊敬の気持ちは当然ながらある。……後者に関しては、最近薄れてはいたものの。 ともかく、彼女たちにとって佐野はヒーロー……とは到底言えないが、 それでも相応には特別な立場の選手であった事は変わり無かった。 白蓮「佐渡くん」 佐野「……あの、佐野です」
[331]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:55:20 ID:??? そして、この命蓮寺の代表――聖白蓮がそっと歩み寄りながら口を開く。 ……案の定、佐野の名前を間違えていた事に、佐野自身は丁寧に訂正を入れるのだが、 白蓮は聞いていないのかそれとも気にしていないのか、ふわりとやわらかな笑みを浮かべたままだ。 白蓮「貴方がこの命蓮寺に来てからの数か月……我々が、まるで知らなかったサッカーというものを教えて貰い、本当に感謝しています。 終ぞ、幻想郷での大会には参加が出来ませんでしたが……。 全幻想郷との練習試合、思えばあれが、私達の――初めて、表舞台に立てた試合でしたね」 佐野「………………」 言われて、佐野の胸にはチクリと痛みが走る。 命蓮寺メンバーと修練に励み、更には魔界へと向かい幻想郷以上に優れた環境の中で練習をした。 白蓮の言うように幻想郷での大会には出場出来なかったが……。 しかし、ようやく彼ら――反町達を相手に表舞台での試合を慣行する事が出来た。 かつては雲の上の存在であった反町、そしてその他の幻想郷メンバーを相手に。 佐野達、命蓮寺のメンバーは懸命に努力をしてその前に立ちふさがろうとしたのだが……。 ……佐野達は敗北をした、あまりにも呆気なく、あまりにもあっさりと。 佐野「(折角強くなったと思ったのに、反町さん達ときたらそれ以上に強くなってんだもんな……。 ……そーいや、あん時は魔理沙さんも敵だったか)」 魔理沙「………………」 どうにも相性の悪い佐野と魔理沙であるが、そんな佐野とて魔理沙の実力の高さについては知っている。 豪快なシュートに突破力。おまけに守備意識の高さと、その守備力についても文句無し。 幻想郷どころか、世界中で見てもトップクラスのFW。 いや、FWとしてだけでなく――1人の選手として見た場合でも、名選手と言える程の実力を有していた。 そんな魔理沙ですら、霞む程の――当時の全幻想郷Jrユースの選手層の厚さ。 そして、そんな魔理沙をもってしても、第二FWの地位を掴むのが精々という反町という存在。 今更ながらに、佐野は一体どうしてそこまで反町が強くなったのか――反町だけではない、 何故自分たちと反町の周囲にいる者たちとで、ここまで大きな差があるのかと疑問に思ってしまう。
[332]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:57:22 ID:??? 佐野「(不公平だぜ……俺だって、俺達だって頑張ってきたのによ……。 畜生……)」 白蓮「佐古くん」 佐野「……だから佐野だって」 少しばかりネガティブになってしまう佐野であったが、再び白蓮に呼ばれ、現実に引き戻される。 再三に渡って名前を間違える白蓮に、やはり佐野は訂正するのだが……。 白蓮はやっぱり気にする素振りは見せず、慈愛に満ちた表情で口を開く。 白蓮「貴方が私達に教えてくれた事、口では色々と言いながらも努力をし、鳥町さん達に勝とうとしていた事。 私達もそれに感化され、サッカーというものに情熱を傾ける事が出来ました。 ……結果は残念でしたが、それは御仏もご覧になられている事でしょう」 佐野「(鳥町じゃなくて反町さんなんだけどなぁ……)」 白蓮「一切皆苦――思うが儘にならぬのが、人の生。 どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、結果が出せぬという事に苛立ち、悲嘆にくれる事もあるでしょう。 ですがサモくんは今一度――いえ、これまで幾度となくあった敗北を前にしても、 何度も立ち上がり……このたびも、魅魔さんが持ってきた留学話を快諾しました」 佐野「あの……俺、佐野……」 白蓮「御仏のみならず、不肖ながらこの私も――そして、他の者たちも遠く離れた幻想郷にて応援をします。 どうかこの旅路が、サミュエルくんにとってより良きものとなりますように」ペカー 佐野「もはや日本人じゃねーじゃん……ってうおっ、まぶしっ!!」 いい加減訂正するのにも疲れてきた佐野であったが、 白蓮が真摯に佐野の事を心配し、想い、彼の成功を祈ってくれている事だけはわかった。 実際、瞳を閉じて祈るように手を合わせる彼女の背後からは目に見えて後光が刺している。 あまりにも強烈過ぎる仏パワーに、佐野は目がチカチカするのだが……。 それならばそれでしっかりと名前くらいは覚えておいて欲しいと思わないでもない。
[333]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:58:56 ID:??? 佐野「ま、まあ……さっきも言ったけど俺も頑張ってくっから! 白蓮さん達も頑張ってな! レベル不足で前までは幻想郷での大会にも出られなかったけど、今なら全然出れるだろうし!」 ぬえ「へーんだ、アンタに言われなくたってそのつもりだよっ! アンタがいなくたってこの私の力で優勝させてやるんだから!」 佐野「にゃにおう!? この俺のローリングオーバーヘッドが無くても優勝が出来ると言うのか!?」 ぬえ「浮き球補正も特に高くない上にシュート力も低いのにローリングオーバーヘッドが得意技な男の人って……」 逆に素直に佐野を応援していない者もいる。 封獣ぬえ――彼女はとにかく、佐野と折り合いが悪かった。 当初この命蓮寺がチームを結成し、メンバーがそもそも11人にも満たなかった頃の事である。 ムラサ、一輪と古馴染であったぬえは、彼女たちの助けになるならばと加入しようとしていた。 しかしながら、生来天邪鬼な性格なのがこのぬえである。 素直にチームに入れて欲しいと言う事も出来ず、おまけに命蓮寺のメンバーの多くはドがつく程の天然が多い。 幸いにして、その時、その場にいた佐野はぬえの真意について察知したのだが……。 素直でないぬえの態度からからかい半分で追い返した事より、2人の関係は決して良いものとは言えないものになっていた。 ……その後、紆余曲折を経てぬえがチームに加入をしてからも、互いに反目する間柄である。 もっとも、周囲からはケンカ友達としてほのぼのとした視線で見られる事が多いのだが。 ムラサ「ほらほら、ぬえも佐野くんも喧嘩しない。 ……佐野くんもあんまり気を悪くしないでね。 ぬえもこれで寂しがってるのよ」 ぬえ「か、勝手な事言わぬぇでくれるムラサ!? 逆にコイツがいなくなってくれてせーせーするくらいだわ!」 べー、と舌を出して威嚇するぬえに苦笑しながらムラサが突っ込みを入れ……。 とりあえずはこの場も丸く収まるのだった。
[334]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:00:16 ID:??? 佐野「(……ま、こいつが生意気なのは今に始まったこっちゃねーしなぁ。 それに、サッカーに関しちゃ真面目なのはわかりきった事だし。 白蓮さん始め、命蓮寺のメンバーはお人よしばっかだ。 1人くらいこういう底意地の悪いのがいた方が安心……か?)」 素直になれないのは佐野もまた同じ。 なんのかんのと言いながらも、ぬえがこのチームの中で締める役割というものが大きいのは知っている。 特に白蓮や星といった、超がつく程の善人達がいる中、 こういった――いい意味であくどい者もまた、サッカーをしていく上では必要な人材であった。 椛「キャプテン……」 佐野「おっ、椛」 そして最後に佐野に声をかけてきたのは椛であった。 彼女はこの騒がしい一同の中においては、あまり目立つようなタイプではない。 おずおずと、苦笑をしながら前に歩み出てきた椛を見て――しかし佐野は嬉しそうに笑みを見せる。 佐野「ケケケ、今のキャプテンは俺じゃなくて椛だろ」 椛「わふ……いや、まぁ、そうッスけど……」 この命蓮寺ナムサンズのキャプテンは――一応は、佐野満という事になっている。 ただ、その佐野が外の世界へと留学に行く以上、佐野がいない間――3年間、キャプテンを代理として勤める選手が必要だった。 当初は実力的にも、そして体面的にもこの命蓮寺の代表でもある白蓮に一任されるのではという話もあったが、 佐野が指名し、またその当人である白蓮も推薦をしたのが犬走椛であった。 彼女もまた、この命蓮寺というサッカー未開の地で佐野と共に一同を鍛え上げた一員の1人である。 無論、小町やルーミアといった経験者もある程度はいるものの、彼女たちはそもそもあまり指導力というものがない。 結果として、佐野と椛――更には佐野が特別に師事を受けていた魅魔らが命蓮寺メンバーの成長に一役買っていた。 こうした点や、試合においてもディフェンス陣のリーダーとして振る舞っている点。 更には生真面目な性格などから椛はキャプテンへと推薦され……周囲の者たちも、特に問題は無いだろうと賛同をしていたのだった。
[335]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:01:29 ID:??? 椛「本当に自分で良かったんスか? やっぱ白蓮さんとかの方が……」 佐野「もう決まった事だろ、似合ってんぜキャプテンマーク?」 椛「わ、わふ……」 ぬえ「(っていうか別に試合じゃないのにつけてるあたり、なんだかんだでこの天狗もキャプテンになれてうれしいんじゃない?)」 その腕に締めた腕章を見て、佐野が言うと椛は照れたように頭をかき……。 しかし、小さくだが溜息を吐いた。 椛「(嬉しいのは嬉しいんスけど……本当に、いいんスかねぇ……。 自分はやっぱりあの試合でも勝てなかったどころか、ろくすっぽ活躍すら出来なかったッス。 ……キャプテン。 いや、佐野くんはもう立ち直って次の道を見据えてるッスけど……)」 出番を求めて命蓮寺へとやってきて、かつてオータムスカイズにいた時よりは大きく成長をして。 更には魔界へまで行って、そこでも大きく成長をして。 ――それでも尚、敵わない。いや、敵わないどころか――勝負にすらなっていなかった、反町一樹との対決。 今、こうして佐野はすっかり立ち直り、前向きに留学に行くことに思いを馳せていた。 今よりも更に強くなり、今度こそ勝って見せるという強い気持ちを持っていた。 それはきっと彼の心が強く、そして実際に反町と相対する事が少なかったが為なのだろう。 ただ椛の場合は違う。彼女はDFであり、反町はFW――次に戦う時も、直接相対する関係だ。 その時自分は勝てるのか。この命蓮寺として大会に出て――本当に彼がいるチームに、勝てるのか。 椛も決してネガティブな性格をしている訳ではない。 だが、ここまで積み重なった敗北。練習をし、努力をしてもそれ以上のスピードで離れていく強者たちの背中。 何よりも一切満足のいく結果を出せていないにも関わらず、キャプテンに就任した焦りと、それでも感じてしまう歓び。 努力だけは認められたが、果たして今の自分にそれに見合う実力はあるのか。生真面目であるが故に、椛の悩みは尽きなかった。 椛「(自分にも佐野くん程の強い心か……反町さんみたいな他者を圧倒出来る才能でもありゃいいんスけどね……)」 佐野「ま、後は頼むぜ椛!」 椛「わふ……はいッス」 それでも辛うじて、そういった悩み――苦しみを周囲に出さなかったのは椛なりの意地だった。
[336]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:02:54 ID:??? 魅魔「……さて、そろそろいいかい?」 佐野「お? おう」 そして全員との挨拶を終えた所で、魅魔は改めて佐野に声をかけた。 名残惜しい思いはあれど、それに縛られてはいけない。 佐野は大きく頷くと、よいしょとオッサン臭い声を上げながらスポーツバッグを肩にかける。 佐野「……って、あれ? どうやって外の世界まで行けばいいんだ?」 魅魔「私の魔法で飛ばす。 ちょいと時間がかかるが……じっとしときな」 佐野「はぇー……師匠ってそんな事も出来んだな」 魔理沙「魅魔様は攻撃魔法だけじゃなく補助も回復も出来るからな。 転送魔法も使えるし……いざって時は2つの魔法を同時に唱える事だって出来る」 佐野「ふーん……。 ……それって凄いの?」 魔理沙「めちゃめちゃすげーよ。 お前は少しは師匠の事を知る努力をするべきだぜ」 魅魔「ま、佐野はサッカーについての弟子だからね。 知らんでも問題無いさ。 それと魔理沙、あんまり人を煽てるもんじゃないよ」 そういえばこの人って魔法使いだったな、と魅魔の持つステッキに目をやりながら佐野は思う。 ともかく、ここは言いつけ通りに佐野はじっと大人しくその場に立ち尽くし……。 しかし、今更ながら聞いていなかった1つの疑問が浮かび上がり、思わず口に出す。
[337]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:04:08 ID:??? 佐野「今更だけどさ、俺が行く留学先ってどこなんだ?」 魅魔「そいつはついてからのお楽しみさ……だが、悪いようにゃせんよ。 しっかりと調べて選んだからね。 ま、環境についてはお前も文句言わんだろうさ」 佐野「ほへー」 明確な答えは貰えなかったものの、魅魔がここまで言うのならばきっとそうなのだろう。 今よりずっといい環境、というとやはりサッカー先進国――ヨーロッパ諸国か南米か。 佐野が新天地に想いを馳せる中で、魅魔は魔力をステッキへと込めると詠唱をし……。 魅魔「トゥエエエエエエエエエエエエエイイァアアッ!!」 佐野「掛け声かっこわるっ!? ってうおおおっ!?」 ステッキを一振りすると同時、佐野は綺麗さっぱりその場から姿を消すのだった。
[338]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:05:22 ID:??? ムラサ「おお、本当にいなくなっちゃってる。 これって送れたって事でいいんだよね? ちょっと動きがあまりに地味すぎてちゃんと送れたのか単純に佐野くんがただ消えちゃったのか判別しにくいんだけど」 魅魔「人里で流行ってるような貸本屋の漫画とかならいわゆる『えふぇくと』とかいうのが出るんだろうが、 本当の魔法ってもんはこういう地味なもんさ。 地面に魔方陣だかを書いて魔力を増幅するのだって、私からいわせりゃ自分の持前の魔力じゃあ不足してるから、 魔方陣を書く事によってその補助とする――。 つまりは自分の力量不足を周囲に見せてるだけの、三流以下のやり方だね」 言いながら、魅魔はステッキを手元で弄びつつその場に腰掛ける。 その場にいる者が魔法に関してはあまり関心が無いか詳しくない――。 もしくは、魔法使いでありながらもこういった転送魔法などについてはまるで専門外であった為に突っ込みは無く。 しかし、唯一――魔理沙だけはそんな魅魔の隣に腰掛け、疑問を口にする。 魔理沙「しかし良かったのか魅魔様? あんな事言って」 魅魔「おや、どうした魔理沙? 何か変な事でも言ってたかねぇ?」 魔理沙「……環境には文句も言わんだろう、って言ってたじゃねーか」 魔理沙が気にかかったのは、先ほど魅魔が佐野に告げた言葉についてだった。 ……本来、そこまで佐野達と仲がいい訳ではない魔理沙。 そんな彼女が、何故わざわざ佐野を見送るような場所にやってきたのか。 魅魔の魔法をこの目で見ておきたいという理由もあったが、それ以外にも理由がある。
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0ch BBS 2007-01-24