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【花の都の】キャプテン岬2【色物達】
[440]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/14(日) 22:46:19 ID:m9q3xldo 千早「フランスに来る少し前、朝早く起きてみると優が自分の部屋で絵を描いていたの。 尋ねてみると夜から一眠りもせずに描き続けていたって。叱ろうとしたら表情も変えずにこう言ったわ。 『だってぼく、明日死ぬかもしれないんだよ?1枚でも多く描いて生きてたんだっていうしょうこを残したいんだ』」 岬「明日、死ぬかあ」 あまりの言葉に、ため息と共にうめきに似たつぶやきが出てしまった。 岬「(『雨の予報が出てたから傘持っていくよ』 そんなレベルで自分の短命を確信してしまっているなんて。これからの事をどうやって伝えれば)」 生還の代償は大きく、僕が背負うべき責任は途方もなく大きいものとなった。だが僕には頭を抱える事すらできなかった。 千早「岬君に優を助けてもらってから、段々怖くなってきたの。 自分の命なんて長くないからいいやと思って、道路に飛び出したんじゃないかって。 優にきいたら本当にそう言いそうな気がする。岬君、わたし、どうしよう!怖い、怖い……」 愁声を越えて悲哀極まり、頭を伏し顔を手で覆い震えだす。 そんな千早に対しかける言葉も見つからず、ただ黙って背中をさする事しかできなかった。
[441]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/14(日) 22:48:03 ID:m9q3xldo そうしてしばらく一緒にいて千早の震えも止まった頃に、コホンと1つ、小さな咳が横から聞こえる。 ギョッとして振り向くと、聖薇とあずみが数歩分横に立っていた。 聖薇の顔は憂色深く、あずみは申し訳なさげに顔をそらしている。 聖薇「岬さん、如月さん。料理ができたと母から言伝がありました。一緒に行きましょう」 千早「早乙女さん、早川さん、聞いてたの?」 赤くなった目を2人に向けて、分かり切った事を尋ねる。 聖薇は眼鏡の縁を押さえたまま押し黙る。何と言っていいのか分からないのだ。 呼びかけに答えたのは、あずみだった。 あずみ「あたし達、確かに全部聞いちゃった。でも信じて、あたしは千早の事友達だと思ってる。 だから私にできる事は何でもするし、悪い事言う奴がいたらブン殴ってやる。 コイツだってあたしにとってはいけ好かない奴だけど、困っている人がいたら その人のためだけに一生懸命頑張ってくれる。だから大丈夫。そうでしょ、聖薇?」 聖薇「はい。私は非力ですが、力があろうがなかろうが苦しむ人悲しむ人を助けるのは 風紀委員長、いえただの人間としての聖薇として当然のつとめ。痛苦を取り除くのに力を尽くします。 ですからどうか、私達を信じて、頼ってください」 私心の無いまっすぐな言葉に、千早は目頭を押さえながら体を起こし、ありがとうと小さな声で答え、 2人に連れられてル・エストへと向かって行ったのだった。
[442]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/14(日) 22:52:09 ID:m9q3xldo 話が長くなり、選択肢もありませんが、本日はここまでにいたします。 なお、優君の設定については、鈴木貫太郎P様の動画 『【超NovelsM@ster】 ありえたかも知れない未来』の「そのなな」と「そのはち」 での設定を参考にしております。設定利用の許可をくださいました 鈴木貫太郎P様、誠にありがとうございました。 『【超NovelsM@ster】 ありえたかも知れない未来 そのなな』 https://www.nicovideo.jp/watch/sm17543021 『【超NovelsM@ster】 ありえたかも知れない未来 そのはち』 https://www.nicovideo.jp/watch/sm17559429
[443]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/21(日) 22:16:28 ID:HA8Joy+M すみません、私事で本日は投稿を休ませてください。 文章自体は書き上がっていますので、こちらの都合により明日か明後日の午後か夜に 投稿いたしますので、何卒もう少しお待ちください。
[444]森崎名無しさん:2019/04/21(日) 23:14:28 ID:HA8Joy+M すみません、私事で本日は投稿を休ませてください。 文章自体は書き上がっていますので、こちらの都合により明日か明後日の午後か夜に 投稿いたしますので、何卒もう少しお待ちください。
[445]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:31:54 ID:4xvP23YM 第25話『Sub rosa』 洗面所にて身なりを整え食卓に向かいドアを開けると、シャンデリアに赤いバラが爛々と掲げられていた。 あずみ「あっ、バラだ。キレイねー」 千早「いい香り。バラの香りに包まれながらおもちを食べるのも、おいしそう」 あずみちゃんは昼食時に見られなかった、濃いワイン色をたたえた花の色合いに感心している。 千早の方はすっかり元気になったらしく、バラの下で食べる餅の味を思い浮かべているようだ。 聖薇「母さん、これは」 最後の1人は他の2人とは異なり、困惑した顔つきで母親に尋ねる。その母親はくすりとした笑みで問いを受け流し、 早乙女「さあ、皆さんどうぞ」 と、僕達に着席を促していた。あまりにさらりと流され発言の機会を失った聖薇は、 何となく落ち着かない様子で椅子に座らざるを得なくなった。
[446]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:32:56 ID:4xvP23YM 席についた僕は、色とりどりに彩られた様々なマロニエ料理を見つめていた。 正面に折り目正しく並ぶ箸を共にして、お椀に餡子が入ったぜんざいが鎮座し、そのぜんざいを要とした扇状に、 焼いてきつね色がかった草焼餅、クルミやジャガイモが入っているまぜ餅、 餅の傍らに醤油、すりおろしたゴマにきな粉が添えられたものが、それぞれ小皿により分けられていた。 これだけの説明だと単に雑然とした、洋式空間にそぐわぬ不調和な配膳というだけで終わる。 けれども、この早乙女の母親が食卓を整えると、まるで清潔な前衛芸術とも言うべきものをそっと用意したような、 さり気なくも目が覚める清新な空間が生み出されていた。 千早「はむ、あむ、はむ」 すっかり和やかな雰囲気の中、心底幸せそうな顔をして、箸に2つも餅をつまみながら頬張っている。 あずみ「アクが強いっていうからどんだけ苦いかと思ったけど、結構イケるわ。そう思うでしょ岬君も」 口にゴマときな粉をまぶしたあずみちゃんが、僕に同意を求めてくる。 栗のような実をつぶし、もち米とこね合わせてできたこの餅、 ほのかに青臭みを感じる他は苦みも渋みも無く、かえって単調なもち米餅にクセを与えてくれている。 岬「うん。いくらでも食べられそうだよ」 早乙女「ふふ、よかった」
[447]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:34:45 ID:4xvP23YM マロニエ餅の味に満足した僕達を見て、母親は満足げだ。その満ち足りた表情で母親は、娘へと話しかける。 早乙女「おもちね、ふふ、懐かしいわ。聖薇は覚えているかしら」 聖薇「覚えている、とは」 早乙女「あら、忘れた?まだ小さかった頃に、初めて聖薇がおもちを口に入れた時の事。 食べようとしたはいいけど、いつまでたっても噛み切れなくて、泣いちゃったでしょう」 えっ、と聖薇が軽く声を上げた後、ギクリとした顔つきになる。 案の定、僕の隣にいるきな粉まみれの少女は、仇敵の過去の失態を知ってニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべていた。 とうの母親はそんな事は気づいてもいないという風に話を続ける。 早乙女「昔の事を思い出すわ。母さんもその時の聖薇ぐらいの頃は、 やっぱりおもちを噛んでも噛んでも噛み切れなくて、泣きそうになったの。 そんな時におばあ様、聖薇にとってはひいおばあ様が、私を膝に乗せて昔話をしてくれたものね」 心なしか語調がうっとりとしたような気がする。聖薇の方はというと こちらも初耳だったらしく、興味津々といった顔で母に尋ねていた。 聖薇「ひいおばあ様が。どんな話をしてくださったのですか?」
[448]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:36:07 ID:4xvP23YM 早乙女「うちの、早乙女家のご先祖様についての話よ。 昔々、安芸の国、早乙女家が広島の大名だった毛利家に仕えるお侍様だった頃の話。 関が原で敗者となった毛利家は領地を減らされたうえ、広島から山口へと移るよう命令されたのは知っているわね。 家来である早乙女家もついていかなければいけなくなった訳だけれども、 その頃の家中は身分が低く貧しかったから、更に狭くなった見知らぬ領地への移住、 それ以前にそこまで行くまでの食べ物すらなくて、みんな途方に暮れていたそうね。 調達の目途もつかず困り果てた一族の当主は、 早乙女家代々の守り神を祀る鏡山に向かって、これからどうすべきかを伺おうとしたの」 何やら聞き覚えのある地名が耳に入る。既に母親は聖薇だけではなく、僕達全員を見据えるように視点を移していた。 早乙女「巫女の体を借りて現れた神様は当主に、2つの授け物を渡しました。 1つ目は鎮守の森になる実から作られたトチ餅よ。 神力のこもった餅を噛み続ける間空腹を感じず、力尽きる事無く歩き続けられると告げられたの。 お告げに従い一族皆神様の餅を移動中ずっと噛みながら向かったら、 他の食べ物を一口も入れず1人も欠ける事無く、領地に無事たどり着けたというわ」 聖薇「広島から山口まで。大変だったでしょう」 千早「お餅にそんな力が」 あずみ「あんたのところ、昔は結構苦労してたんだねえ。で、もう1つの授け物って?」 早乙女「ふふふ、それはね」
[449]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:37:22 ID:4xvP23YM 友達の家の昔話に、皆すっかり関心が向かっている。母親はニコニコとしながら、再び語り継ぎ始めた。 早乙女「もう1つはこれから一族に試練が訪れる前に、事前に察知し覚悟を固められるようにと渡されたわ。 玉のように高貴な光沢を放ち、神社の祭具にして生命の象徴、 そして危機を感ずるや持ち主を照らし出し、覚悟の時を告げる、勾玉をね」 勾玉。 その言葉で僕も皆もハッとした。和気あいあいの空気がピシリと締まる。母親だけは微笑を崩していないが、 その顔から体から、神託時の沙織さんと同じ底知れぬ威圧が発せられていた。 早乙女「岬君」 岬「は、はい」 早乙女「あなたが持っている勾玉について、詳しく教えてください。 どうしてあなたがこれを持っていたのか、何を告げられたのか、 そしてあなたがどう行動していきたいかについて」
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0ch BBS 2007-01-24