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【挑戦者】キャプテン岬U【岬】
[67]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/03(日) 16:49:14 ID:Wqomk6Bc リブタ「(これは……詩ですね。大切な人を…)」 ????「…カレン」 スッと澄んだ声が、フッと隣人から発せられる。そしてようやく リブタの視線に気づいたらしく、ピクリとまばたきしてから向き直った。 ????「これは失礼、考え事をしていたもので。何かご用事でも?」 リブタ「いえいえこちらこそ勝手にのぞき見を。えっと、あなたも私と同じく、 西欧メンバーの一員ですよね?」 ????「はい」 リブタ「よければもう一度、お名前を教えてもらえないかと。物覚えが悪いもので… 私はオランダから来た、アルフレット・リブタです」 レヴィン「私はステファン・レヴィン、スウェーデン代表です。よろしく」 握手を交わした後、改めてレヴィンという少年の顔を見る。よく整った顔立ち、 自信を宿した顔つき、そして右目まで届かんばかりに大きく円弧を描いた髪が 特徴として目に入る。 リブタ「(まるで死神の鎌のような…ええい縁起でもない)も、もしよければ 今お書きの詩について、うかがっても」 レヴィン「詩…ああ、カレンに宛てる手紙の下書きのことですか」 リブタ「カレン…ご姉妹ですか」 レヴィン「いえ、僕の……大切な人です。何と、いいますか」 レヴィンは再び遠い目をして、再び窓を向いて空の彼方へと目線を投じた。
[68]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/03(日) 16:52:01 ID:Wqomk6Bc レヴィン「不思議なものです。恋をするまでは、恋をするとその人のことしか目に入らなくなると思っていたのですが…… いざそうなると目に映る全ての景色、世界が輝くというか、あざやかになるというのか。 その不思議と喜びを思うままに、つらつらと」 リブタ「そうでしたか……どうかカレンさんと、共に過ごすお時間を大切になさってください。 後悔することが無いように、一瞬一瞬、全力で」 ありがとうございます。ほほえみを添えてチームメイトにそう返事した後、再び窓に広がる青空を眺める。 どこまでも空は青い。 どれほど見渡しても一筋の暗雲も、湧き上がってきそうになかった。
[69]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/03(日) 17:00:08 ID:Wqomk6Bc 短いですが残り3人のチームメイト1人が、レヴィンくんと分かったところで今日はここまでといたします。 なおレヴィンくんが作中で記していた詩は、以下の動画(5:30あたり)からお借りしております。 https://www.nicovideo.jp/watch/sm29525809 物語での利用許可をくださりました、ねこ号さんにこの場を借りて御礼申し上げます。 ねこ号さんX(Twitter)アドレス ⇒https://twitter.com/nekogoing
[70]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:41:19 ID:ZxMHRW6U 第5話 西ベルリン、そして最後の2人 リチャード「お前らが西ヨーロッパ代表かい。 ワシがリバプールのリチャード・デンバーじゃ。 よろしくたのむぞ」 西ベルリンのテーゲル空港に到着すると、これから僕達のチームメイトになるはずの男、 炎に石炭をまぶしたような黒みがかった赤毛の長髪イングランド人が待ち構えていた。 ギャロス「よ、よろしくっ」 リチャード「よろしくのう」 一番近くにいたギャロスは彼を見て、明らかにひるんで見えた。ギャロスには悪いが 他人には恐れおののいたチンピラが、組の頭と応対しているといった光景にしか見えない。 丸太に筋肉を覆ったような隆々とした両腕を組み、遠慮など欠片も感じさせない 不敵な表情は、一目で強者だと感じずにはいられない。 平静を保っているのは大男のリブタや拳法家のアルゴス、あとはレヴィンと監督くらいか。 後の面々は大人も含めて、硬い表情を浮かべてしまっている。 もっともみんなが赤毛のイングランド人を恐れ、警戒しているのは傲然とした風貌ばかりではなかった。 「先例」がある。
[71]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:42:27 ID:ZxMHRW6U あれは今から2か月前、1985年5月29日のことだ。 僕はテレビで父さんと一緒に、サッカーの試合を見ていた。 それもただの試合じゃない。ヨーロッパナンバーワンのクラブチームを 決める大会の決勝戦だ。イングランドの強豪リバプールFCと、 イタリアの帝王ユベントスFCとの試合。フランスでも多くの注目を集めていた。 僕達の学校も例外ではない。学校でも連日話題のタネとなっていて、 サッカー部の練習は昨日見た名プレーの真似事に費やされていた。 僕だって、日本にいた頃には夢でも見られないようなプレーが見れるとあって、 父さんに頼み込んでテレビを借り受け、試合が始まると釘付けになって テレビに見入っていた。 そうして待ちに待った決勝戦。僕はその前座としてはじまっている、スタジアムの 地元ベルギーの少年サッカーチームの試合を観戦していた。今日のような大試合を 時間まで黙って待ち続けることができず、少しでも血を抑えようと僕よりも幼い 子供たちの試合を眺め続けることにしていた。 その試合が後半戦に入ってしばらくした後、「それ」が起こった。
[72]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:43:55 ID:ZxMHRW6U 子供たちの試合が後半戦に入った頃、リバプール側のサポーター達が 金網のフェンスを破壊し、ユベントスのサポーターへ襲いかかってきた! 振るわれる鉄パイプ、飛び交うレンガ。テレビカメラごしの荒い画面から、 怒号と悲鳴が鳴り響く。 壁が崩れる。暴徒に襲われたサポーターたちが壁に寄り固まりすぎ、 重量に壁が耐え切れなくなったためだ。 崩壊と圧迫の勢いで後ろの観客が雪崩を打ち、前の人間を飲み込み押しつぶしていく。 将棋倒しとなったユベントス側を目の当たりにして、リバプール側は更に勢いづき、 かけつけた大勢の警官隊にまで突撃して、フィールドを血にまみれされた。 これまでのサッカーで、いや人生で想像さえしなかった展開だった。 何が起こっているか目で見ても頭が感じず、あれだけ待ち望んでいたはずの 決勝戦が(こんな状況下で)はじまっても上の空、試合結果まで後から テレビで目にするまで思い出せなかったくらいだった。
[73]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:45:19 ID:ZxMHRW6U 岬「(『ヘイゼルの悲劇』と呼ばれるようになったあの事件。30人以上が死んで、 400人以上の重軽傷者を出した大惨事。 イギリスの車が破壊された、イギリス人が襲われた、 そんなニュースがよく流れていたっけ。結局、リバプールだけでなく イングランド中の全サッカークラブが、国際試合無期限禁止となった……)」」 悲劇からたったの2か月。他のチームメイト達にも色濃く記憶が残っているはず。 そうした周囲の空気などどこ吹く風というばかりに、リバプール人は監督へと近づき、尋ねる。 リチャード「人数は揃うたか」 メラン「人数、とは」 リチャード「決まっとる、このチームのメンバーのことじゃ」 メラン「ああ、まだ西ベルリン代表が一名、合流していない。 現地の合宿所で合流すると、向こうから」 リチャード「なんじゃ、ノフウド(※)なヤツじゃの。まあええ、 他の顔ぶれにアイサツさせるとするかの」 ※:生意気な。大きな態度。 そう言って返事も待たずに、クルリと踵を返して外へ向かっていく。 監督の制止も聞かず、走って前を遮る勇気のあるスタッフもいない。 やむなく全員でリチャードの後を追いかけ、空港の外にまで出る。その瞬間。 PAPPAPAPAPAPAPAPPPAPPPPAAAAPPPAPAPAPAPAAAAAAAAAAAAAA!!!!!! 天をつんざくクラクションが、テーゲル空港へまき散らされた。
[74]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:46:32 ID:ZxMHRW6U リッタークラスはありそうなゴテゴテとした何十両もの大型バイクと、 モヒカン入れ墨肩パット、どう見ても堅気には見えない荒くれ達が、 二列に整然と並びながら、口々に親分へと「挨拶」した。 モヒカンA「ヒャアアアアアアアッハアアアアアアアーーーーッ!!!」 モヒカンB「やってきましたぜええええリチャードのアニキイイイイイイイ!!」 モヒカンC「どんな手を使ってでも、必ずモスクワで応援しますぜェーーーーッ!!」 リチャード「オウ来たなスピーディ、左目のビリー、マッド・ドナルド! ここにいるのが、これからワシと同じメシを食うファーマー(※) じゃけえの、仲ような」 ※:ここでは仲間、ただし応援団という意味が強いスラング。 獣のような喚声が湧き上がる。話の内容などどうでもよく、ただリチャードから 声をかけられただけで、歓喜を爆発させているようだった。 モヒカンD「どうぞあちらへ!迎えのバスは来ております!」 モヒカンE「おいお前ら!リチャード様がご出立なさるぞ、合唱しろ!」 モヒカンF・G・H……「アイアイサー!!!KOP!KOP!KOP!KOP!KOP!KOP!」 合唱とは名ばかりの轟音に包まれながら、バスへ流されるように歩む僕達。 このままどこかのマフィアへと、鉄砲玉にさせられるのではないかと 今更にして不安を感じ始めたときだった。
[75]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:49:23 ID:ZxMHRW6U モヒカンA「うえ?」 モヒカンの肩に、1つのボールが飛び跳ねる。そしてそのまま、 モヒカンの頭や肩を介して、行列の方向へと進んでいく。 モヒカンB「うおっ?」 モヒカンD「こ、これぼっ」 モヒカンG「ボールだわべっ!」 モヒカンK「どんどん速く…どわ!」 進むたびにスピードが増し、最前列のリチャードに向かう頃には矢のような速さだ。 リチャードはそれを振り向きもせずに、後ろ手で受け止める。 何者かとリチャードで振り向くと、穴あきのジーパンに継ぎはぎのジャンパーをきた、 1人の少年がおどけた様子で、告げた。 メッツァ「ようこそ自由な西ベルリンへ、または 壁とヘロインとスリルの街、西ベルリンへ!」 彼こそ西欧同志連合最後のメンバーにして西ベルリン代表、 ヒュー・メッツァだった。
[76]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/24(日) 17:52:32 ID:ZxMHRW6U という訳で最後のメンバー2人、 リチャードくんとメッツァくんが加入したところで、 今日のキャプテン岬はここまでといたします。 ようやくにして全員出揃いました。 メンバー紹介だけで何か月もかかるとはとお思いでしょうが、 何とか次回こそダイズを振る展開に持っていきたいと思います。
[77]キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2024/03/31(日) 16:40:33 ID:DI0H60Ug 第6話 めざせモスクワ テーゲル空港でチームメイト全員がそろった翌日。 西ベルリンのとある場所に位置する合宿所。ウォーミングアップを終えた僕達を 監督が呼び寄せ、話をはじめる。 メラン「皆、準備はできたようだな。ではまず今後の予定について、もう一度おさらいしておく。 地図を見るがいい」 監督の後ろにはヨーロッパ全土を記した、広々とした地図が貼られている。 その中でも右端、ヨーロッパ大陸の東部奥深くには、ひときわ大きい赤い五稜星が君臨し、 そこまでに向かう経路には矢印と3つの小さな赤い星が記されている。 メラン「スパルタキアーダが開催されるモスクワまではバスで向かう。それまでの3か所、 東ドイツの東ベルリン、ポーランドのワルシャワ、ソビエトのキエフに一時滞在する。 そこでは休憩とトレーニング、全体練習を済ませた後、他のスパルタキアーダ 参加チームと練習試合をしてもらう」 ほとんどのメンバーは熱心に、監督の話に聞き入っている。僕だけでなく他のヨーロッパの 仲間達も、壁の向こうの別ヨーロッパ世界で試合をしたことはないのだろう。 メラン「東ベルリンでは東ドイツジュニアユース、ワルシャワではポーランドジュニアユース、 キエフではハンガリージュニアユース代表と試合する。 どのチームも今回の大会で優勝候補に挙げられている強豪だ。油断するなよ」
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0ch BBS 2007-01-24