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1- レス

キャプテン森崎外伝スレ10


[280]超短編投稿者 ◆KvvS7KSt.A :2012/06/12(火) 12:34:05 ID:???

「……なぜ……」いつのまにか翼を抱き締めていながら、尋ねた。
「なぜ、そんなに、私のことで悲しんでくれているの?私は翼くんのデータを取るために、
様々な実験に立ち会って、顔を合わせていただけ。際立って多く話をした訳でもない、
一緒にいた時間も、お母さんはおろか他の人と比べても多くはないのに……」
「……分かんない……」相変わらず閉じる瞼から涙をこぼしながら、翼は答える。
「どうしてか、博士の声を聞くと、胸から『なつかしさ』が出てくるんだ。目覚める前に
一緒にいたような気がするんだ」
「以前に一緒にいた…」思い当たることがあった。まだ翼が意識を覚醒させ起き上がる前は、
私がこの研究の第一人者であることから、眠る翼の前で反応を測定したりその結果をまとめていた。
その時の発していたつぶやきが翼の耳を通じて脳に届いていたのだろう。その頃の私は一生の成果を
具現化する機会と対象を得て、心血を注いで長年の夢の結晶を磨いていたのだ。
(話の内容は覚えてなくとも、意思が相手の心の中で漂っている…)そこまで思いを巡らせた時、
ふっと私の心に希望の光が差し込んだ。まだ私が、翼くんのためにできることがある、と。
「もう泣かないで、翼くんのために話したいことがあるから、落ち着いてくれないと何もできないわ」
ハンカチを取り出して翼の頬を拭き、乱れた髪を撫でて整えながら、決心した。
(意思が残るならば意志も残るはず、この子の歩む道をきちんと話して、せめて覚悟だけでも
残してみよう)


0ch BBS 2007-01-24