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1- レス

異邦人モリサキ


[137]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/03(日) 13:38:49 ID:???
それも先ほどまでの、痛みに泣きながらのた打つ倒れ方ではなかった。
言葉もなく、ただ奇妙に力の抜けた、人体が肉と脂の塊になりつつある段階に特有の、それは倒れ方である。
苦しげに胸を押さえたビリーの喉からは、ひう、ひう、と奇妙に震える呼吸音が響いていた。
足先は痙攣するように震え、蒼白な顔色は森崎に殴られた腫れだけを不気味に浮き上がらせている。

「発作か……こんな時に! ……おいビリー、薬はどうした!?」
「……ぃ、いえ……、に……」
「馬鹿野郎! いつも持ち歩いてろと、あれほど言ったろうに!」

絞り出すようなビリーの声音と、憤りよりも焦燥の色が濃いサムの怒号。

『……何がどうしたの?』
「……俺に聞くなよ」

対峙している森崎のことなど一切忘れたようなその挙動に毒気を抜かれた森崎が肩をすくめ、
手にした刃をぷらぷらと揺らしながら口を開く。

「あー……その、続きはもういいのか?」
「チッ……! 久々に楽しめそうな喧嘩だったが、今はそれどころじゃねえ……!」
「あ、そう……」

ぎろりと睨め付けるサムの細い目には既に戦意がない。
言葉通り、それどころではないようだった。
その様子を見てとった森崎が、ゆっくりと距離を取りながら剣を鞘に収める。

「……覚えときな、東洋人。次はこうはいかねえぞ」

スキンヘッドのサムはビリーを抱えると、それだけを言い残して倉庫街から消えていった。


***


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