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1- レス

異邦人モリサキ


[263]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 23:26:59 ID:???
「っ、と……」

慌てて姿勢を立て直す森崎。
その眼前には、花々の海を舞う小さな影がある。
透き通った翅は陽光を反射して時折きらりと煌めき、或いは咲く花の黄や紅や紫を映して
水面のようにゆらゆらと輝いている。
それは誇張なく神話の一幕、夢物語の中を舞う幻想に他ならなかった。
手を伸ばせば崩れて消えてしまいそうな儚さに、森崎は声をかけることもなく小さな相棒の姿を
その視線だけで追っていた。

「―――」

やがて、花々の間を遊ぶ小さな影が次第にこちらへと近づいてきて、
幻想の時間の終わりを告げる。

「もう……いいのか?」
『うん。充分だよ』

訊いた森崎の方が、その終幕を惜しむような顔をしている。
言ったピコは、目を閉じていた。
小さな手は胸の前で組まれ、空の一点に留まっている。
いま見た景色を、抱きしめるように。
刻むように。

『すごく……すごく、楽しかった。……ありがとね』

そっと呟いた顔は、いままでに見たどんな表情とも違っているように、森崎には思えた。
目を開けば、ひとたび翅が羽ばたけば、そこにいるのはきっと、いつもの相棒だろう。
しかし、いまこの時だけは、それはひどく異質で、特別で、そして何より貴いものであるように、思えた。


***


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