※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ 現行スレ 投票 最新20

1- レス

異邦人モリサキ


[275]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 02:57:04 ID:???
A 「どうした、爺さん」 介抱してやる。


声をかけたのは、果たして純粋な義侠心や親切心からだったのか、
森崎自身にもそれはわからない。
先ほどの幻想の余韻が、訓練漬けの殺伐とした心を和らげていたのかもしれない。
或いはあの食堂で見た光景やその後の砂のような食事の味や、そういう森崎の中に燻っていたものたちが
今になって背中を押したのかもしれなかった。

(―――この国は、俺の調子を狂わせる)

蹲る人影に向けて踏み出しながら、そんなことを考える。
二歩目、そんな自分も悪くないと思えて、苦笑し、小さく首を振る。
悪いも悪くないも、ない。
いつであれ、どこであれ、見る景色、聞く言葉、それによって紡がれる感情や衝動や、
湧き上がる気持ちや発する声や、そういうものが自分だ。
そういう小さなもの、見えないもの、或いは大きなものや目を逸らせないものの集合が
森崎有三という男なのだと、森崎は考えている。
そうして三歩目を踏み出す前には、そんな風に考えていたことも、綺麗に忘れてしまっていた。

「おい、具合でも悪いのか?」

駆け寄った森崎が声をかけると、老爺は微かに顔を上げた。
白髪に長い白鬚を蓄えた老爺は、見れば身なりも整っている。
シャツの仕立てを間近で見れば、浮浪者や酔漢の類ではないことはすぐに分かった。


名前

E-mail



0ch BBS 2007-01-24