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異邦人モリサキ
[317]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/06/13(水) 03:12:54 ID:???
『……』
そこには、小さな幻想の精がいた。
はたり、はたりと、籠った空気を撹拌するように羽ばたく、透明な翅。
その翅が、飾り窓の隙間から射す薄明かりを反射していたのだった。
「……いや、待て。ちょっと待て。よく考えろ、俺」
くらくらと甘い香りに満たされていた頭の中に、目から入った光が差し込む。
清水が泥を落とすように、光の欠片は森崎の脳髄を洗い流していく。
「俺……何やってんだ? ここ、どこだ? 何でこんなことになってる?」
流行。若者文化。明るい街並み。道行く笑顔。きらびやかな店。
モード。アヴァンギャルド。ファッションリーダー。
それは何かと、問う。
答えは返らぬ。
返らぬのも、当然であった。
森崎の中に、つい今しがたまでそんなものは存在しなかった。
得体の知れぬ言葉たちが、蠱惑的な女の口を借りて森崎をぐるぐると縛っているに過ぎなかった。
「そうだ……! 俺は、俺はただ、下着の替えを買いに来たんだよ!
それがどうして、こんな格好しなきゃなんねえんだ……っ!」
己を縛る鎖の束を引き剥がすように、叫ぶ。
立ち上がった森崎の目には、既に極彩色の服は映っていない。
それは単に奇天烈な布地の塊、糸で縫い合わされた得体の知れぬ言葉たちの集合体でしかなかった。
『……ていうかキミ、そんな冒険するほど若くないからね』
「なにィ!?」
ぼそりと呟いたピコの言葉が、トドメだった。
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