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異邦人モリサキ


[364]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 01:57:37 ID:???
「それで、母は……どうしても、その、弟にかかりっきりで……。
 仕方ないんです、弟は手のかかる子ですから、それは」
「……」
「母はそれで、いつも疲れてて、だから……家のことや、父の世話は、私が」

ぽろぽろと漏れる言葉は、しかし奇妙に歯切れが悪い。
何か一つの原因に帰結する問題ではないのだろうと、森崎は思う。
様々な要因が絡み合い、もつれ合って、家族という狭い関係の中で行き詰まっている。
それはきっと、湖の底に溜まる泥や、古い家のきいきいと立て付けの悪い扉と似たようなものなのだ。
軋んだ歯車を、それでも回し続けなければならいことなど、世にはありふれている。
だがありふれているからといって、澱んだ泥水を飲み干せるわけでも、開かない扉に耐えられるわけではない。
どこかで油を注さなければ、人という歯車は壊れてしまうのだ。

「いいんです。父のことも、家のこと、ご飯を作るのも、お買い物やお掃除や繕い物やお洗濯、
 好きなんです。好きでやってるって、思ってます。
 だけど、だから、どうしても学校は、お休みしなければならないときもあって……」

人によって、それは酒であり、快楽であり、あるいは愛情や、友情や、職務や目標であったり、
果ては空想や幻想にその役割を求めることもあるだろう。
少女にとっての油は、きっと今、この時間。
誰とも知らぬ男にぶつける、このとりとめのない愚痴なのだ。
そんな風に考えて、森崎は話を回すつもりで口を開く。

「世話……って、親父さんも、どっか悪いのか」
「……父は、戦場で足を傷めました」

しかし、それはどうやら少女にとってはナイーブな問題であったらしい。
そう言ったきり、今度こそ口を噤んでしまう。


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0ch BBS 2007-01-24