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1- レス

異邦人モリサキ


[367]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/15(金) 02:00:43 ID:???
底冷えのするような声音を紡いだのは、男である。
深紫のシルクシャツに、漆黒のベストとスラックス。
腰から提げているのは細身の長剣、レイピアだった。
精緻な細工を施された金の柄が、ベルトの黒に映えて静かな威圧感を放っている。
一目で最高級の仕立てと分かる装束を身に纏う、その容姿は端正にして怜悧。
永久凍土の氷を砕いて嵌め込んだような薄青色の瞳が、射貫くようにソフィアを見つめている。
長い金髪が、ゆらりと闇を掻き混ぜるように揺れた。
夜を率いて歩くような、それは男であった。

「……ジョアン」

射竦められたソフィアの漏らした、それが男の名であるようだった。
ジョアンと呼ばれた男が、口の端だけを上げた微笑を浮かべる。

「言っただろう、僕の目の届かないところに行かないでおくれと。
 外出するならきちんと家族に報告すべきではないかな、ソフィア」
「……」

俯き、唇を噛み締めて黙り込むソフィア。
吹き抜ける嵐をじっと耐えるような、姿だった。

「父上も心配しておられた。……さあ、言うべきことはあるかな」
「……」
「……」
「……めん、……さい」

暫しの沈黙の後、掠れた声が薄闇の通りを僅かに揺らす。
その声に、ジョアンが一歩を踏み出した。
革靴の底が立てる、かつりという音に、ソフィアがびくりと肩を震わせる。


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