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1- レス

異邦人モリサキ


[4]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:36:25 ID:???


「本船は、只今ドルファン港に到着致しました。下船の際には―――」

案内人の声を背に、傍らに置いた頭陀袋を背負って歩き出したのは、薄汚れた外套を纏った男である。
埃にまみれた頭巾を目深に被ったその男、歳の頃は三十路のいくらか手前だろうか。
細身にも見えるが、外套の下から覗く日に焼けた腕はまるで鋼線を束ねたようで、実のところは
一切の無駄なく鍛え上げられた身体つきであることがわかる。
旅路を往く者に特有の履き込まれた武骨な革のブーツと、何よりベルトから下げられた
飾り気のない長剣の柄が、男が何者であるのかを雄弁に語っている。
いくさ場を流れ歩き、人の生き血を啜り生業を立てる、それは流浪の戦士であった。

「……」

真一文字に口を引き結んだまま、はしけに歩を進めようとした男の背に、もぞりと動くものがあった。

『もごもご……』
「……」
『もがもが……ぷはーっ!!』

外套の下から勢い良く飛び出してきたのは、奇妙な影である。
人の姿に、似てはいた。
似てはいたがしかし、それは決して人ではあり得なかった。

『やっとドルファンに着いたね!』

何となれば、人は空を飛ばぬ。
人は掌に乗るほどの背丈で立ち、笑わぬ。
それは伝承に現れる、妖精を思わせる何かであった。


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