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1- レス

異邦人モリサキ


[508]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:56:12 ID:???

「……」
『……あ、あれ……? ねえ、ちょっと、キミ!』
「……? ここ……どこだ……」

ピコの声で、気がついた。
慌てて見回せば、そこは元通りの会場である。
ぐったりと、力を使い果たしたように椅子に沈む男たちが目に入る。
森崎自身もひどい脱力感に襲われていたが、全身に鞭を入れるようにして身を起こした。

「……あの人、は……!?」

視線を向ける先には、しかし既に誰もいない。
がらんとした舞台は、まるで何事もなかったかのように変わらず存在している。
叩きに叩いた両手の赤さと痛み、質の悪い風邪でも引き込んだかのようにじんじんと痛む喉、
思う様に踏み鳴らしたせいで時折鈍痛を走らせる足、そういった肉体の感覚だけが、
先ほどまでの高揚感に浮かされたような光景が白昼夢でないことを森崎に教えていた。

「今の……何だったんだ?」
『わかんないけど……。チャンピオンって、すごいんだね……』
「そう……、だな……」

ぼそりと呟きあった森崎の目に、原色の黄色が映る。
舞台の端からよろよろと進み出る、司会の男であった。
どうやらこの男も王者の光に巻き込まれたらしい。
後退した生え際に浮かぶ脂が、午後の日差しにてらてらと輝いていた。


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