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1- レス

異邦人モリサキ


[603]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/05(木) 12:13:57 ID:???

毎朝そうしているように訓練所への道を行く森崎の耳に、毎朝のそれとは違う音が飛び込んできたのは、
朝の陽射しもうららかな初夏のある日のことである。

「ぃや……ぁ……!」

甲高い、ほとんど音と呼べるような悲鳴。
そして、それを掻き消すような猛烈な吠え声であった。

「何だァ!?」
『犬と……女のコ?』

慌てて角を曲がった森崎が見たのは、ピコの言葉通りの組み合わせ。
まだ幼いとすら言える年頃の、学園のものらしき制服を着た少女と、痩せ細り毛並みも乱れた野良犬である。
野良犬は何が気に障ったのか、明らかな敵意を剥き出しに吠え続けている。
吠え声とともに涎を撒き散らしながら少女を睨むその黄色く濁った眼光は凶悪で、
年端もいかぬ幼い少女を恐怖の底に叩きこむには十分な迫力を有していた。

「やぁ……い、やぁ……」

そんな野良犬に嵐のような咆哮を浴びせられる少女の顔色は蒼白である。
目にいっぱいの涙を溜め、すっかり怯えきった声を漏らすその様子はどこまでもか弱気で、
今にもへたり込んでしまいそうだった。
蜂蜜色のふわふわとした巻き毛が、ふるふると首が振られるのに合わせて、力なく揺れた。

「あー、こりゃあ……」
『ちょっと興奮しちゃってるねえ……あのコ、急に倒れたりしたらガブッといかれるんじゃないかな』
「他人事みたいに言うな……」
『他人事だからね。ま、どうするかはキミが決めることだよ』


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