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1- レス

異邦人モリサキ


[642]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/07/10(火) 01:25:50 ID:???
沈黙が、重かった。
特にその重みを感じていたのは、レズリーであっただろう。
多少の憤りはあったが、徒に少女を虐める趣味はない。
肩をすくめた森崎が、状況を打ち切るべく口を開いた。

「俺、もう行っていいかな」
「あ、え、あの、えーっと……」

大人の対応に、咄嗟に適応できず言葉を失うレズリー。
と。
困ったように中空へと目を走らせ、必死に何かを言おうとするその背に、新たな声がかけられた。

「―――どうかしましたか、ロピカーナさん、コールウェルさん」

低く落ち着いた、しかし明晰な意志の響きを持つ声音と共に拡がったのは、淡い花の香りである。
鼻孔をくすぐる茉莉花の、甘く爽やかな芳香に誘われるように視線をやった森崎が、香りの主を見る。
少女たちの背後、朝陽の下にも白く匂い立つ、それは女性である。
年の頃は三十に満たぬほどであろうか。
麗人であった。
銀白色の波打つ髪を頭の後ろできっちりとひっつめた、そのともすれば冷たくも映る端正な顔立ちの中、
特に目を引くのは銀縁の眼鏡である。
薄緑色の、理知の光を湛えた瞳を守護するように煌めく、それはさながら硝子の城壁。
その壁の向こうに垣間見える顔は化粧気が薄く、淡い桃色の口紅と、森崎の肺の奥を撫でるような
茉莉香の香水だけが美しく整った目鼻立ちを彩っていた。
身に着けているのは純白の襟付きブラウスである。
上半身のラインを隠すような、ふわりと柔らかい仕立ては一目で絹であると分かる。
腰から下を覆うのは濃紺の、尻から腿にかけてぴったりと張りつくような膝丈のタイトスカート。
足元はモンクストラップの黒い革靴である。
全体に清楚で、品良く、そして窮屈な服装だと、森崎は思う。
まるで成熟した女という要素を構成する何もかもを、その服という檻の内側に無理やりに
押し込めようとしてでもいるような、そんな印象であった。


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0ch BBS 2007-01-24