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【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】


[829]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/17(水) 18:39:53 ID:???

「速くなりたい」

その言葉は、だから結晶だ。
混じりけのない思いの、形になって透き通った音を立てる、そういうものだ。

「もっと、もっと。速く走りたいんだ。誰よりも」
「……」

走る、と。
そのことを告げるとき、ハンナの瞳はより一層の輝きを帯びる。
何を指して言うのか、詳しいことは森崎にはわからない。
わからないが、ハンナにとってそれがこの世で最も尊ぶべきものであるとは、理解できた。

「学校で机に向かってると、わーって。胸のところ、ぐしゃぐしゃにしたくなって。
 こんなことしてるときじゃないって。走らなきゃって思えて、走らなきゃ置いてかれるから」

ハンナの手が、握り締めた制服に皺を作る。
たん、たん、と。感触を確かめるような足踏みが、平らに均された芝生を叩く。

「負けたくない。追いつきたい。勝ちたい。だけど」
「……」
「何していいのかわかんなくって、ただがむしゃらに走るしかできなくって。
 だったら、ボクの時間ぜんぶ、それに使わなきゃって思ったら、もう我慢できなくて」
「……それで学校、抜けだしたか」

森崎の問いかけに、こくりと頷くハンナ。
ため息をついた森崎が、その潤んだ瞳を見返して、言った。

「あのな、ハンナ―――」


0ch BBS 2007-01-24