※人気投票開催中※
01/17(日)00:00-01/30(土)23:59
第二回鈴仙奮闘記キャラ人気投票
※新板できました※
ダイス創作物語板
ブログ
現行スレ
投票
最新20
板
1-
前
次
新
レス
【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】
[109]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/11/19(月) 19:18:49 ID:???
ひとが走る姿を美しいと感じたのは、森崎有三の人生で初めてのことである。
その足で大地を踏みしめ駆け行く、それはヒトという生物の極みの体現であると、
少女の疾走は雄弁に物語っていた。
全身、ただそれを成すためだけに神の手によって配されたような骨格が、筋肉が、腱が、
精緻に制御され厳密に駆動し、質量を大気の中に振り捨てるように加速していく。
(これ、は……)
ジーンが、無理やりにでもこれを見せようとした気持ちが、今なら理解できる。
そこにあるのは打算や計算ではない。
その本質は、彼女自身の言葉通り、子供じみた自慢なのだ。
こんなにも綺麗な宝物を私は持っていると、秘めやかに、しかし誇らしく語るときの、
あの高揚を味わいたかったのだ。
むべなるかな、と森崎は思う。
いま薄闇の中、夜に融けるように走る少女は、至宝だ。
遠ざかっていく、赤土にまみれながらなお白い背を、大きな弧を描いて戻ってくる躍動する肉体を、
たとえば自分だけが目にしてしまったとして、堪えることができようか。
「……遠いな、ハンナ」
ぽつりと口をついたのは、真白き背を追う少女の名である。
彼女の前を往く者は、掛け値なしの才気だ。
差は歴然、このままでは勝負にならぬと豪語されたその言は、何の誇張もなく正しい。
走れば走るほどに差の開く、終わりのない競争のようにすら、思える。
前
次
写
名前
E-mail
0ch BBS 2007-01-24