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【レイセンガ】鈴仙奮闘記29【タダシイヨ】


[955]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/06/29(月) 00:23:54 ID:wP/RU7UA
ポツリと呟いた風の言葉は、何時の間にか演説のようになっていた。
聖徳ホウリューズの神子を信望する者達は彼女の凛とした言葉に陶然と聞き入っていた。
最後に神子は、メンバー全員の瞳をじっと見つめながらこう締める。

神子「……その大いなる大義の為には、如何なる行為も許容されなくてはならない。
たとえ外道や下衆の道に走ったとしても、私は。私達は真実のため、戦う必要がある!
我こそが天道なり! 我こそが唯一、妖怪による迷妄の闇から人間を救える唯一の者なり!」

パチパチパチパチ……と、要求もしていないのに、聖徳ホウリューズのメンバーから拍手が漏れた。
布都は流行りの歌手を見つけた町娘のような熱っぽい視線を神子に向けつつ、大きく両手を叩いている。
屠自古は感情が見られない冷徹な表情で、事務的な拍手を送っている。
岬はそんな中……素直に神子へと拍手をする気にはなれなかった。

岬「(豊聡耳神子。貴女は僕が辛うじて自分に及ばぬと高く評価してくださっているようだけど。
どうせここでお別れなのだとしたら。本当に僕が貴女に及ばないか。
――折角の記念として、知恵比べを挑んでも、別に恨みはしないでしょうね?)」

何故なら岬はこの時必死にその聡明な頭を巡らせていたからだ。
策謀を巡らせるとしても自分から自発的に他者を貶める事はしなかった岬太郎。
そんな彼が今、必死に思考していた。――豊聡耳神子を貶める策は、どこかにありはしないか……と。

――それは今まで利用されて来た事に対する「怒り」の感情によるものか。
それとも、知恵でも武勇でも問わず、戦いを挑む際に覚える「楽しみ」の感情によるものか。
残念なことに、そのどちらの感情ともこれまで無縁だった岬には、自身の発想の元が何であるか分からなかった。

岬「(損得とか周囲の評価は関係ない。僕は、僕の出来る限界を探ってみせる……)」

ただし、少なくとも岬はこの時、図らずも変化しつつあった。
豊聡耳神子という、岬よりも賢く、黒く、より大きい理想を抱く同業者に出会った事で、
彼は自身の知能の高さと限界を知り。
……そしてその上で、より賢くなりたいという、これまでとは別種類の、純粋な欲望を抱くようになっていた。


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0ch BBS 2007-01-24