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【赤と8ビットの】キャプテン岬【物語《ロマン》】
[60]キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI
:2017/12/10(日) 17:13:22 ID:???
黒猫「にゃあ」
つまらんと言いたげにあくびを放つ。太ってはいないが生活の余裕を感じさせる
体の丸みを備えた猫であり、パリ街なかの大道芸人を見物するような面持ちで僕を見ている。
思わぬ珍客に気が削がれたが、この飄々としたふてぶてしさに僕はかえって関心を抱き、
腰を下ろしてもっと猫を眺めようとした。すると猫はムッとした表情になり、後ろを向いてスタスタと歩き出してしまった。
せっかくなので猫を追ってみる。走りだして猫が裏路地にでも逃げ込むと厄介なので、
並木道の樹木間の距離半分程の間隔を維持しながら、そっと追いかけてみた。
この猫は気まぐれにあれこれと歩く。路地裏に向かったと思ったらすぐ大通りに戻り、
交差点があるたびに横断歩道を歩く。アパルトマン境界の柵に昇って尾を垂らしながら
歩き下の飼い犬を挑発する器用な技も見せてくれ、思わずフフッと顔がほころんだ。
そうやってトコトコと猫に連れられて行き、気が付くとパリのどこかの袋小路に入り込んでしまった。
袋小路とは言ったが、別に何か危なそうには見えない。
車1台分の広さの道はさっぱりとした石畳が敷きつめられ、
両側には青々としたプラタナスと白塗りのアパルトマンが出迎えてくれている。
どういう訳か大通りの喧騒もここではほとんど聞こえず、耳を澄まして
ようやくかすかにこの通りに入ってくる程度になっている。
ここに来てから猫は歩きがゆるやかになり、ぽてぽてと道を進んでいく。ついていくと
行き止まりにたどり着いた。
行き止まりの道は車のUターンを容易にするために、マロニエの木を中心とした輪道と
なっている。隆々としたマロニエの横を通り抜けると、風が吹き、一軒家がちょこんと
現れていた。
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0ch BBS 2007-01-24