キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【真・東洋の】キャプテン森崎36【守護神】

1 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/02/27(土) 12:17:08 ID:thPpn4g/
キャプテン森崎は、高橋陽一氏作のサッカー漫画「キャプテン翼」の二次創作です。
大空翼に代わって主人公になった森崎有三を読者の投票によって操作していき、
他のキャラクター達と交流を深めながらサッカー選手として大成するのが目的の
読者参加型企画です。いわゆるゲームブックを想像して頂ければ分かり易いかも。

基本は毎回出る選択肢の中から読者が投票によってどれかひとつを選ぶ事によって
森崎の各数値が上下したり結果が分岐し、その結果によって森崎が活躍したり
しなかったりして物語が進んでいく…といった展開です。例えば敵にシュートを撃たれたら、
森崎の能力値+ある程度のランダム要素によってゴールを守れたり守れなかったりします。

投票や判定では2ch式(注:似ているだけで2chとは別サーバー)の掲示板で
ID付の投票書き込みを行ったりスクリプトでカードやダイスを引いてもらったりします。

過去スレのログはこちらのまとめページで見られます↓
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/11.html

ミス指摘、質問以外の雑談は下のURLの雑談スレでお願いします。
本スレでも更新毎に30レス程度までの反応レスなら問題無しとしています。
尚、30レスを超え雑談スレへの誘導が始まったら速やかに誘導に従って下さい。それがルールです。
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1266421492/l50
2ちゃんねるとは別の場所の板なので、ブラウザによっては外部板登録が必要です。
なんらかの理由で雑談スレが落ちている時は、本スレでも遠慮なく雑談をどうぞ。

【前スレまでの簡単なあらすじ】
第一回フランス国際Jrユース大会でMVPとなった若き日本サッカー界の星、森崎有三!
サッカー王国ブラジルのプロへの登竜門と言われる大会、リオカップへ挑んだ彼は
宿敵大空翼率いるサンパウロFCに1−4と言う大敗を喫してしまった。森崎はリベンジの為に
全日本ユースに合流しジャパンカップで強敵ウルグアイユースを撃破し決勝戦に駒を進める。
しかし決勝戦の相手は翼とサンパウロFCではなく、彼らを倒したハンブルガーSV!
森崎の怨敵若林源三が守るゴールを破れず、全日本ユースは前半30分0−1で苦戦中。
…こんな感じで話は進んでいます。

269 :創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 21:49:48 ID:K4oTmGad
>琴音「(あー流石森崎くんねー。はーもーどうでもいーわー)」だらだら

なんというデジャヴ

270 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 09:12:14 ID:pfL6302H
ピッ、ピッ、ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

放送「試合終了〜〜〜!!4分間もあったロスタイムも何事もなく終わり
全日本ユースが3−1でハンブルガーSVを下しました!3年半前のフランス国際Jrユース大会で
まさかの優勝を成し遂げ世界を驚かせた黄金世代は今尚も健在です!
ウルグアイユース、サンパウロFC、ハンブルガーSVと言った堂々たる強豪チームを抑えて
優勝したこの結果は日本の初のワールドユース出場に向けた大きな自信となるでしょう!」

ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

観客「やった!勝った!」「黄金世代は本物だ!」「こいつらなら本当にアジアの壁を乗り越えてくれる!」
「日本サッカーの曙だ!」「森崎が率いる全日本ユースは絶対強い!」「ここに翼が加わればもう無敵だぜ!」
『ニッポン!ニッポン!ニッポン!ニッポン!ニッポン!ニッポン!ニッポン!ニッポン!ニッポン!ニッポン!』

賀茂「翼が森崎に勝って、若林が翼に勝って、森崎が若林に勝った。俺達にとっては理想の展開だな」

片桐「そして他の選手達も驕る事無く力の差を埋めようと努力してくれるでしょう。有難い事です」

早苗「(ホッ…とりあえず勝ててよかった。今頃翼くんはどうしているのかな)」

長野「前半は本気で負けるかと思ったが、後半になって一気に波が変わったな」

岩見「PKやカルツの枠外と言うとんでもないラッキーがあったからな」

小田「いや、皆が頑張った結果だよ!そうでなきゃ逆転なんて出来ないさ!」

弥生「(ご主人様…おめでとうございます…)」

美子「岬さまァ〜ん♪」

あずみ「(あーウザい。だけど今は賭け金の回収回収っと)」

琴音「(山森くんチョッピリしか出てこなかったな〜…がっかり…)」

271 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 09:12:45 ID:pfL6302H
激戦続きの大会でファンの期待に応える結果を出した全日本ユースとそのメンバーに惜しみない賞賛が降り注ぐ。
疲れと痛みを飲み込んで戦い続けた森崎にとって嫌な光景の筈が無い。

シュゥウウウ…
ズキッ!

森崎「(ぐっ、まだ時々痛むな…だがもう終わったんだ。次の試合までに治せば良い。
さ〜て、これで俺の全日本ユース正GKとキャプテンの座はほぼ安泰だ。負け犬さんでもからかってやるとするかね)」

だが森崎には観客の賞賛以上に楽しみな光景があった。憎い敵の悔しがる様子である。
万歳を繰り返し喜ぶ味方たちを横目で見ながらフィールドの中央に向かって歩いていると、
まず最初に目があったのはこの試合の終始に渡って彼に身に覚えの無い敵意を向けてきたポブルセンだった。

森崎「(おっ、良いねえその悔しそうな表情…ってあれ?)」

ポブルセン「………」ギリッ

ザッザッザッザッ…

森崎「(なんだ逃げるのかよ、つまらないな。あいつは結局何がしたかったんだ?)」

ところがポブルセンは彼を歯軋りしながら睨みつけただけで、すぐに背を向けて離れて行った。
傷口に塩をなすりこんでやろうと考えていた森崎としては残念な事だが、
すぐにもっと大きな魚が二種類かかってきた為気にならなくなった。

カルツ「いやあ…負けた負けた。まいったわい」

若林「何故だ…」

疲れているが何処か気楽そうに見えるカルツと、まるで末期ガンを宣告された様な表情の若林である。

272 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 09:13:05 ID:pfL6302H
森崎「よう、お疲れさん」

若林「…何故だ」

森崎「何がだ?」

若林「何故俺はお前に勝てん!何故お前が俺に負けんのだ!」

若林の声は喉の奥から搾り出してきた様な重く低い声であり、
その瞳はこの世の全てを拒絶せんばかりに暗い暗い色になっていた。

若林も分かっていた。彼の呪詛は森崎への勝利のファンファーレであり、
彼の怨念は森崎にとって勝利の美酒にしかなり得ない。
この試合の結果が逆だったら若林が森崎の敗北に酔いしれる事が出来たのだから。

それが分かっていても尚森崎に恨みをぶつけずには居られない。
これが若林源三の今の精神状態だった。

森崎「フッ…」

A 「ナイスゲーム。PKが無ければ危ない所だったぜ」思いっきり皮肉を込めて爽やかに微笑む。
B 「おい、ここを見てみろよ。それからお前の腕を見てみろ」自分のキャプテンマークを誇示する。
C 「敵が親切に敗因を指摘してくれると思うか?だからお前は甘いんだよ」突き放す。
D 「まあそう言うな。俺が出られない試合は頼むぜ?サブキーパーさん」挑発する。
E 「これで決着はつけたぜ。全日本はハンブルガーSVを超えた!」無視してカルツに話しかける。
F 「……………」敗者にかける言葉は無い。腕組みをしてひたすら睨み倒す。

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1267790375/l50にて
            ☆2010/3/20 10:00:00☆ から投票期間を設けます。
    そこから  20  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。どれか一つに確定した場合はその時点で投票を
         止めて下さい。尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

273 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 17:32:40 ID:pfL6302H
>B 「おい、ここを見てみろよ。それからお前の腕を見てみろ」自分のキャプテンマークを誇示する。

森崎「おい、ここを見てみろよ」

若林「………?」

森崎「それからお前の腕を見てみろ」

森崎は自分の右腕に巻かれた腕章を指差し、それから訝しむ若林の腕を指差した。
無論そこにカルツの腕に巻かれているキャプテンマークなどある筈が無い。
だが若林には森崎の意図が伝わらなかったらしく彼の顔は苛立ちと混乱に覆われる。

若林「何が言いたい…」

森崎「これだけ言っても分かんないのか?それとも調査不足か?
俺はパルメイラスでもキャプテンをやってたんだよ。お前はそうじゃないだろうが」

若林「うっ…!?」

カルツ「そういえばそうだったのう。外国人でキャプテンに選ばれるのは難しかったろうに」

若林「う…う…!」

ならばと森崎が言葉を足すと、ようやく若林は雷に打たれた様な顔になって硬直した。
追い討ちをかける様にカルツが顎を撫で森崎に賛同すると若林は更に衝撃を受けて仰け反る。

森崎「キャプテンってのはなるべく奴が自動的になるんじゃない、なるべく奴が努力してなるんだよ。
俺はそれが分かっていた。お前はそれが分かっていなかった。最初から勝負になっていなかったんだよ」

カルツ「ま、そう言う事だな。GKとしてはともかく、お前さんがキャプテンシーでモリサキを超える事はあるまいよ」

若林「……………」

274 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 17:33:48 ID:pfL6302H
ザッザッザッザッ…

やがて若林は帽子を目が隠れる程深く被り直し無言で去っていった。
その大柄な筈の後姿は森崎にはやけに小さく見えた。

森崎「フン…あいつと言いポブルセンと言い、負けた途端に尻尾を巻いて逃げるのかよ。
もっとみっともなく負け犬の遠吠えでもしてみせろってんだ」

カルツ「…お前さんも大概だのう」

森崎「ほっとけ。お前こそ自分のチームのGKをわざと落ち込ませる様な事言って良いのか?」

カルツ「なあに、あいつはああやって突き落としておいた方が伸びる性格だからのう。
もうしばらくは同じチームで付き合う羽目になりそうだし、また面倒を見てやるさ」

森崎「フン。最初こそ引き分けだったが、これからは何回やっても同じだぜ」

カルツ「やだやだ、ワシはもうお前らとはやり合いたくないぜよ。言い訳がましいのは覚悟の上で言うが、
全日本とやると何かツキが無くなるみたいだからのう。もう3回もやったんだし、4回目は勘弁だ」

森崎「違うぜカルツ。俺達が相手だと運が悪くなるんじゃない、運が悪いから俺達が相手になるんだ」

カルツ「どっちでも良いっての。それじゃ、達者でな。お互いプロとして頑張ろうぜ」

そしてカルツも短い砕けた会話の後にベンチに向かって歩き去った。
そのあまりに屈託の無い気楽な態度には森崎も矛を収めざるを得なかった。

森崎「ふぅ、もうちょっと誰かからかいたかったモンだが…疲れたからもう良いか。
後は表彰式を終えて…あ、記者会見もあるかな?面倒臭いけどやらなきゃな」

275 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 17:34:05 ID:pfL6302H
森崎がカルツ、若林、ポブルセンと言ったハンブルグの主力たちを相手にしている時
彼らとは少し離れた場所でカペロマンは独自に全日本の選手達数人と交流していた。

カペロマン「やれやれ…まさかここまで試合から消されるとはな。
サッカー後進国と侮っていたが、お前らやるじゃないか」

中山「俺も人の事は言えん出来だったが、随分態度がでかいじゃないか」

早田「フン。シュートだけの奴なんか撃たせなければ良いだけの話だ」

次藤「その肝心のシュートも大してごつくなかっちゃおとろしくなかとね」

カペロマン「もっともだ。だから次があればお前達が何も出来なくなる様に
全面的にパワーアップしておいてやろう。ドリブルも、パスも、勿論シュートもな」

メッツァ「カペロマン〜、負けたんだからさっさと帰ろうよ〜」

ただカペロマンの態度は友好的ながら不敵と言う器用な物で、
中山らDF達も喧嘩腰に対応していた。お互いが挑発しあいながら
談笑する変わった光景に頭痛を覚えたメッツァが引き上げを促す。

カペロマン「お前こそ少しは闘争心を見せたらどうだメッツァ。
言っておくが、この試合の敗因はお前にだってあるんだぞ」

メッツァ「分かってるからもう帰ろうって。これ以上負けた相手にケンカ売る必要ないでしょ」

カペロマン「全く…チームメイトが腰抜けだから暇させてもらうぜ。さらば、全日本」

メッツァの嘆願は程なく功を成し、カペロマンは尊大でマイペースなまま離れて行った。
後に残された全日本ユースの選手達は顔を見合わせ肩をすくめて呆れ返るしかない。

276 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 17:34:26 ID:pfL6302H
中里「彼奴め、敗者の態度ではなかったのう」

岬「まあ、チームメイトが彼を活かせていなかったのも事実だけどね」

石崎「それにしてもあいつと言いポブルセンと言い、ハンブルグって変な奴ばっかだな!」

松山「確かに。あのチームでキャプテンをやっているカルツは苦労しているだろうなあ」



フィールドの更に別所では山森が新田から労われていた。
二人の表情はお世辞にも明るい物ではなかった。

新田「ほら、タオルだ」

山森「サンキュー。汗らしい汗をかく機会も無かったけどな」

新田「…会心のジャンピングボレーだったのに、あっさり止められたな」

山森「…そういう事なんだろ。俺達の出番の少なさが全てを物語っている」

新田「確かに…今日俺が出ていてもなんの役にも立たなかっただろうな…」

山森「世界は広い。よーく分かったよ」

二人は先日の合宿とこの大会を通じて思い知らされた事があった。
それは即ち、今の自分達は世界レベルでは有象無象に過ぎない事である。
このままではこの先全日本ユースがどんな栄光を掴もうとも、
自分達はそれを見ているだけの側に回ってしまうだろうと気付かされていた。

277 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 17:34:40 ID:pfL6302H
葵「山森く〜ん!お疲れ様!」

赤井「おい待て!俺用のタオルだろうがそれ!」

葵「あ、ゴメンゴメン。赤井もお疲れ様」

赤井「ついでみたいに言いやがって…」

そこに彼らにとって眩しく羨ましい存在である同年代の二人、葵と赤井がやってくる。
二人ともこの大会の主役とは言えないまでも今後のスタメンが高確率で期待出来るプレイを見せていた。
期待の年下組と言う立ち位置を奪われた山森と新田は心中穏やかでは居られない。

新田「なんだかんだ言って仲良いなお前ら」

赤井「いや、俺は好きでこいつとつるんでるんじゃないぞ!?」

葵「うえっ、ひっどい!なんでそんな事言うんだよ赤井!」

山森「騒がしいって所でそっくりだよ。気が合うんだろ」

葵「え?そうかな、えへへ…」

赤井「褒められてねえよ!どっちかっつうとバカにされたんだ!」

新田「(ノリが良くて憎めない連中だけど、俺達にだってこの年代だったら誰にも負けないって言うプライドがある)」

山森「(このままで終わるつもりは無いぞ。今に見ていろよ、葵、赤井)」

片桐達の思惑通りこの大会は多くの選手達に更なる成長を促していた。

278 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 17:34:52 ID:pfL6302H
だが成長を促す事は出来ても、それが原因で計算外の行動に出ようとしている者も居た。
他者との輪に入らず一人でベンチに戻ろうとしていた日向である。

日向「………ダメだ」

日向は万感の思いを込め小さく呟いた。彼は今、人生で初めて誰にも促される事無く自らを否定していた。

日向「(どうやら俺も甘かったらしい。このままじゃ世界なんか絶対に獲れやしねえ…
もっと力が必要だ。どんなGKも捻じ伏せられるシュートが。世界を俺の前に屈服させる力が!)」

今まで彼が自分を脅かす危険性があると認めたストライカーは西ドイツのカール・ハインツ・シュナイダーだけだった。
だがこの大会に現れたラモン・ビクトリーノ、火野竜馬、クリストフ・ポブルセン、チェザーレ・ストラットらは
間違いなく彼と同等以上のストライカーだった。日向小次郎は世界一のストライカーではなかったのだ。

この大会は日向に自らを鍛え直す必要を切実に感じさせある決意を固めさせた。
そしてその決意に基づき彼は周りの存在を無視しロッカールームへ向かいだした。

見上「むっ。どうした日向、何処へ行く」

日向「憂さ晴らしをしてきます。どうせ俺が居ない方がマスコミ受けは良いでしょう?
問題児日向小次郎、また身勝手な独断行動。高まるファンの顰蹙、とか言ってさ」

見上「同時に私の管理能力も問われるのだがな…まあいい、この大会の閉会セレモニーは
ささやかな物で後はキャプテンがトロフィーを掲げる表彰式だけだ。みつからない様に帰れよ」

日向「寛大な処置どうも」

若島津「(何か企んでいるな、あの目は)」

沢田「(日向さん…)」

反町「(やれやれ。今度は何をしでかすんだか)」

279 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 17:37:44 ID:pfL6302H
いったんここまで。
ここからは判定・選択無しのシーンが多くなります。

280 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 18:26:30 ID:pfL6302H
十数分後、森崎は表彰台の上に立っていた。
満員の観客の前で優勝トロフィーを受け取り、それを観客席に向かって掲げ上げる。
実に森崎好みのシチュエーションである。

観客「カッコ良いぞ森崎ー!」「この調子でアジア予選なんかか〜るく突破しちゃってくれよ!」
「お前が活躍すればする程日本サッカーが盛り上がるんだ!」「森崎くん素敵ー!こっち向いてー!」
『もっりさき!もっりさき!もっりさき!もっりさき!もっりさき!もっりさき!もっりさき!』

森崎母「本当に立派になって…ううう、日本一どころか世界一なんて!」

森崎父「母さん気が早いぞ。あの子の世界挑戦はまだまだこれからさ」

放送「間も無く大会運営委員会会長の卯蔵武曽氏から優勝カップが森崎くんの手に渡されます!
誇らしい笑みと共に堂々と歩む森崎くん!彼の未来には一体どんな栄光が待ち受けているのでしょうか?
森崎有三の伝説はまだまだ始まったばかりです!彼と全日本ユースの更なる躍進が待ち遠しい!」

観客席に密かに座る両親が涙を流し、かつての学友達が狂喜乱舞し、
程度の差はあれどチームメイト達も祝福を送ってくれる。
更にライバル達も熱い視線を注ぎ、マスコミ関係者達が先を争う様に記録を残し、
実況と観客が我が事の様に言葉を惜しまず賞賛の雨を降らせてくれる。

誰にも咎められる事無く有頂天になりながら優勝カップを見せ付けられる。スポーツマン冥利に尽きる瞬間である。

森崎「(ふっふっふ、翼にリベンジできなかったのは残念だが…終わりよければ全て良しだ。
もう若林が俺の地位を脅かす事は無い。日向はとっくに捻じ伏せた。そして翼も今ここには居ない。
リオカップで負けた分はしっかり取り返した。この優勝カップがその証だ!見ろ!これは俺のもんだ!)」

ガシッ!
グイッ!

森崎の腰が弾けたのはその瞬間だった。

281 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 18:26:52 ID:pfL6302H



                      グッギィイイイイイイイイイイン………



                  森崎「(あれ…なんだ今の音。なんか腰が凄く痛えぞ…

              でもなんか変だな。ズキズキするんじゃなくて燃えて溶けていくみたいだ…

             あれ?なんだか周りまでおかしくなってるぞ。なんか…世界が回っていないか?

              クラクラする…脚…俺の脚はどうなってるんだ。脚までおかしくなったのか?

                  あ、地面だ。まさか俺、表彰台から落ちているのか?

                おいおいヤバイぞ、折角の優勝カップが割れちまうじゃないか!

                 もっと高く持ち上げて…あいたっ!デコ!俺のデコがいてえ!

               ったく、地面にぶつけちまったのか?カッコわりーな、こんな大舞台で…

                  あれ?暗いな。もう夜なのか?何も見えないじゃないか。

                  何も見えない…何も聞こえない…何も…考え…ら…れ…)」

282 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 18:41:51 ID:pfL6302H
〜静岡県南葛市、大空家〜

その時翼は一人で何も映っていないテレビとそのリモコンを交互にぼんやりと眺めていた。
彼の母と弟は買い物に行っておりここには居ない。父は何時もの様に何処かの海の上なのだろう。

翼「…そろそろ終わったかな…」

やがて衝動に耐え切れなくなった翼はのろのろとリモコンに手を伸ばしテレビの電源を入れた。
ちょうどスポーツ番組のチャンネルに合わせてあったテレビはすぐに表彰式の様子を映し出した。

テレビ「間も無く大会運営委員会会長の卯蔵武曽氏から優勝カップが森崎くんの手に渡されます!
誇らしい笑みと共に堂々と歩む森崎くん!彼の未来には一体どんな栄光が待ち受けているのでしょうか?
森崎有三の伝説はまだまだ始まったばかりです!彼と全日本ユースの更なる躍進が待ち遠しい!」

翼「そうか…森崎が勝ったんだ…」

自分でも判別出来ない程複雑な感情と共に力無く呟く翼。
しかし彼が無気力で居られたのはそこまでだった。

アップで映っていた森崎が突如激痛に顔を歪め、優勝カップを手に持ったまま前に倒れたのだ。

翼「…えっ!?」

テレビ「こ、これはどうした事でしょうか!?森崎くんが、森崎くんが表彰台から倒れ落ちました!
そしてそのままピクリとも動きません!周囲に人が集まっていますが何の反応も無い様です!
ああっ、ただいまタンカが運ばれてきました!場内は大パニックで凄まじい騒音です!
え?何?ちょ、そりゃ無いでしょ!こんなタイミングで時間切れだなんて!このままじゃお茶の間の皆さんが…」

テレビ越しでも聞こえるとてつもない騒音。職務を忘れる程興奮した実況の叫び声。
それらは放送時間と言う制限によってすぐに消えてなくなり、大空家の居間には静寂が帰ってきた。

そして翼は無意識に呟いた。自分でも聞き取れない程小さな声で。

翼「なんだよこれ…」

283 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/20(土) 18:46:04 ID:pfL6302H
急展開を盛大にぶちかました所で今日はここまで。また明日お会いしましょう。

あらかじめ宣言しておきますが、森崎の引退も能力の強制ダウンもありません。
また不可避イベントだったので「あの選択肢を選んでいれば」等と悔やむ必要はありません。
あくまで物語のアップ&ダウンの為のイベントであって、
プレイヤーのやる気を削ぐ危険性があるシステム処理では無いのでご安心を。

284 :創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 18:50:08 ID:4RXusC97
ついにか

285 :創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 03:07:20 ID:aLocYVeZ
>>283
2ねぃさんが抱きしめてくれれば安心します

286 :創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 14:49:56 ID:2Udy6cT1
おねいさんブリーカー!死ねぇ!

287 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/21(日) 16:03:25 ID:kymYUcZl
能力値公開スレにハンブルガーSVのデータを公開しました。

>>285
私だと十分に抱擁出来そうにないので、ロシアのレッド竜巻(仮名)さんにお願いしておきますね♪

288 :創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 17:57:57 ID:aLocYVeZ
>>287
              r,''ヘ_  
              _,,,,_⊂-くノ`ヽ,
          _  〆_゙'ir''⌒"  )
         ξ⊂!  っ》`   く ∠___
         .\ノ''‐`` i、 ,ノ  │,-ヽ7=、、 ,,rー'"`-、
           \_゙l、,,,_,/i゙、 ,ノ 〈 ゛  `ヌ⌒ )/=i、 l
                 `゙゙'"`'ミ--/-,_  ´ /"  `
                        \ .,,、`lニン-゛
                      \__ノ
      ___
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   ,r_,ノ''こ!、,,┴.
   |  ‘''く′ ,/ │
  .r'ヘ,、  `'イ゙>'"
  .厂|,`'-,,  .|'ヽ、


289 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 00:36:47 ID:ShjjSqVH
森崎有三、腰の負傷で入院
2月19日 共同新報

 サッカー全日本ユースキャプテンであるGK森崎有三が今月15日〜18日にかけて開催されたジャパンカップの
決勝戦で腰を痛め緊急入院した。詳しい容態は不明。
 同チームの見上監督に寄ると「森崎は大会前から腰に時々痛みが走るのを自覚していたが、本人が気にせず
プレイにも支障が見られなかった事から出場させていた」との事。氏の選手管理が問われるのは避けられない。
 森崎有三の腰の状態次第では確実視されていた全日本ユースのワールドユースアジア予選突破に黄信号が点きそうだ。



森崎有三再起不能!?
2月21日 東都スポーツ

 今月中旬に開催されたジャパンカップにおいて負傷したサッカー全日本ユースキャプテンのGK森崎有三の
腰は重傷と判明した。数ヶ月絶対安静が必要で、更に数ヶ月リハビリを経なければ復帰できない。
 全日本ユースは今年10月にワールドユースアジア予選に挑む。この予選に同選手が間に合うかは微妙で、
間に合った場合も即戦力として機能する可能性は絶望的と見られる。全日本ユース監督の見上氏は
「現段階ではどうとも言えない。回復具合を見て検討していく」とコメントした。



全日本ユースアジア予選現地入り。チーム内の秩序は大丈夫か?
10月3日 月刊サッカーファイト

 サッカー全日本ユースが今朝ワールドユースアジア予選の開催地、インドネシア首都ジャカルタに到着した。
彼らはこれより合宿を経た後アジア予選に挑む。
 実力的にはかつてない程強いと言われる今回の全日本ユースだが、不安材料もかなりある。
最大の懸念はやはり前キャプテンの森崎有三のリタイヤである。リハビリの甲斐無く今予選に参加できなかった
彼の代わりにキャプテンを勤めるのはMF大空翼だが、前任者とのやり方の差を支持する選手と反目する選手に
チームが分裂している雰囲気があり窮地に陥った場合致命的な事態になりかねない。

290 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 00:37:36 ID:ShjjSqVH
森崎「フザけんな!全日本ユースのキャプテンは俺だァアアア!!」



ガバッ!



森崎「ハアッ…ハアッ…ん?」

ジャパンカップ決勝の翌日、森崎が目を覚ましたのは病室のベッドの上だった。
腰にはこれでもかと言う程堅苦しいコルセットが着けられており、
不自然につるつるで着心地が悪い患者服が今彼が置かれている現状を否応無く確認させてくれた。

森崎「くそっ、夢か…」

そしてベッドの側の机には悪夢の原因となった「森崎有三、腰の負傷で入院」の見だし付きの
共同新報の新聞が置かれていた。今朝院内の売店で買った物である。

森崎「今のが正夢になったら…うう、想像したくもない。おちおち二度寝も出来ねえや」

291 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 00:39:02 ID:ShjjSqVH
短いですが今日はここまで。
また明日お会いしましょう。

292 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 07:20:40 ID:ShjjSqVH
発表し忘れていましたが、試合終了直後の両チームのガッツはこうなっていました。

残り/最大
430/700 三杉 なおりかけ
700/850 山森
285/900 日向
725/750 中里
850/850 岬
615/700 石崎 軽傷LV1未治療
715/800 次藤
630/700 赤井 軽傷LV2未治療
740/750 中山
785/800 早田
695/835 森崎

900 葵(交代済&軽傷LV2治療済)
850 松山(交代済&軽傷LV1治療済)
800 政夫、和夫、若島津
750 新田、沢田
700 反町、井沢
650 滝、高杉
600 来生



残り/最大
700/700 ヤラ
505/850 ポブルセン
700/700 クラウス
640/750 メッツァ
800/800 カペロマン
325/800 カルツ
700/700 マイヤー
650/650 ゴンゲルス
650/650 リンツ
835/900 若林

650 ハーネス(退場済)

293 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 07:28:46 ID:ShjjSqVH
次のシーンはもうちょっと後で。

294 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 09:11:36 ID:ShjjSqVH
〜静岡県掛川市、ヤマハリゾートつま恋〜

同時刻、ジャパンカップを終え合宿場に戻っていた全日本ユースは二つの事件のせいで大騒ぎになっていた。
一つは森崎の入院、そしてもう一つは…



全日本メンバー『なにィ〜〜〜!!?日向が居ないだとォ〜〜〜!!』



日向の失踪である。

見上「何を考えているんだあいつは!」

会議室に集まった選手達の前で見上が不機嫌そうに叫び、次に視線を日向と関わりのある3人に向ける。
それに釣られて選手達の目も沢田反町若島津の3人に集まった。沢田は居心地が悪そうに縮こまり、
反町は目を閉じて黙ったまま首を振り、最後に若島津が淡々と喋りだす。

若島津「本社に問い合わせてみましたが、緘口令が敷かれていて俺の権限では聞きだせませんでした」

見上「そうか…」

若島津「ですが規律面以外の問題は無いでしょう?もう合宿は今日で終わりなのだから」

見上「いや…この合宿は後1週間続く」

全日本メンバー「えっ?ジャパンカップは終わったのに?」「なんでですか?」「もう試合は無いんでしょ?」

295 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 09:11:49 ID:ShjjSqVH
見上「いや…試合はもう一つあるのだ。我々は一週間後にオランダユースと戦う」

全日本メンバー「ええっ!?オランダ?」「オランダユース…なんでまた」

事情を聞いた見上が深々とため息をつき、それを訝しむ様に若島津が日向の弁護を試みる。
だが次に見上が口を開き説明をすると皆焦りを持ち始めた。

岬「後たったの1週間?なんでそんなに急なんですか?(多分ナメられているんだろうけど)」

見上「…ゴネられたんだよ。申し込んだのはこっちだが、交渉を始めてから散々色んな理由で
返答を引き伸ばしてきてな。だが昨日、ジャパンカップの優勝が決まった直後に
日本サッカー協会にOKの電話をしてきた。お陰で片桐くんは今徹夜で走り回っている」

中山「それはまた…随分身勝手な対応ですね。なんでそんな横柄な態度を取ってきたんでしょうか?」

見上「仕方が無い。日本はサッカー弱小国だ。実績でも、FIFA内の政治力でもな」

早田「なんですかそりゃ!要はナメられたって事じゃないですか!」

石崎「そうですよ!大体オランダなんてJrユース大会に出ていなかったじゃないですか!」

次藤「西ドイツを倒したワシ等相手にそがん自信満々っちゃ、どぎゃしこ自惚れちょる奴らへ?」

更に不審に思った岬が問いかけ、それに対する見上の説明を聞くと今度は怒りが全日本ユースの面々を満たす。

赤井「あの〜…それが、オランダって…」

葵「どうしたんだ赤井?」

赤井「お前知らないのかよ!?オランダユースは二ヶ月前、西ドイツユースを4−1で倒しているんだよ!」

全日本メンバー『な…なにィイイイイイイ!!?』

しかしオランダユースの強さが明らかになるとそれは怒りから焦りに変わった。

296 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 09:12:36 ID:ShjjSqVH
松山「監督!今赤井が言った事は本当なんですか!」

見上「本当だ。オランダユースは練習試合で西ドイツユースを4−1と圧倒した。
西ドイツ側はデューター・ミューラーを連絡がつかず召集出来なかったと言う事情もあったらしいが、
それでもオランダユースの強さには疑問の余地は無い」

政夫「あ、あのシュナイダーが1点しか取れない様なチーム…?」

和夫「冗談じゃないぜ、とんでもない強敵じゃんか!」

山森「そんな強敵が相手なのに、森崎さんも日向さんも居ないなんて…」

石崎「こ、こりゃ〜翼と若林頼みになっちゃうかな、アハハ…」

見上「…凶報ばかりで嫌になるだろうが、翼と若林はこの試合加われん」

高杉「えええええええっ!?な、なんでですか!」

見上「オランダユースにゴネられた影響でサンパウロFCとハンブルガーSVとの交渉が失敗した。
若林は今頃機上だろうし、翼の休暇も明日で終わりだ。つまりここに居る戦力だけで戦わねばならない」

沢田「そ、そんなァ…」

反町「こう言っては何ですが…勝ち目はかなり薄そうですね」

シ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン………

過去全日本を散々苦しませたカール・ハインツ・シュナイダー率いる西ドイツが
1−4と言う大差で負けたと言うのは並大抵のショックではなかった。
そして一縷の望みを見出そうとした石崎の発言まで否定されると、いよいよ選手達は顔を青くし静まり返った。

三杉「…予選リーグ第三試合目だ」

ここで三杉がリーダーシップを発揮した。

297 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 09:12:53 ID:ShjjSqVH
来生「へ?何の予選だ?」

三杉「例え話さ。次のシチュエーションを想像して欲しい。来年のワールドユース本大会の予選リーグで…
そうだな、パラグアイ、エジプト、オランダと同組に入ったとしよう。対戦順もその順番で」

井沢「…それから?」

三杉「第一試合、僕らはパラグアイに引き分け、第二試合ではエジプトに勝った。しかしその2チームのラフプレイで
森崎、翼くん、日向、若林の4名は負傷し第三試合のオランダ戦に出られなくなった」

滝「他のチームの結果は?」

三杉「パラグアイとオランダも引き分け、更にエジプトは全敗したとしよう。
この時点で日本、オランダ、パラグアイの3チームがそれぞれ勝ち点4で並ぶ。
そうするとこのリーグの行方は最後の日本対オランダの結果に委ねられる事になる」

新田「えっと…そうなると勝った方は無条件で決勝トーナメント進出で、負けた方はパラグアイと
得失点差の比べあいになりますよね。あ、でも引き分けなら日本とオランダ両方が勝ち点5で勝ちあがれるんじゃ?」

三杉「そうなるね。ただ、この組み合わせならオランダの世論は恐らく1位突破以外は恥とするだろう。
よってオランダは主力数人が負傷して出られず弱っている日本を全力で倒しに来る。
そして僕達は得失点差の関係上2点差以上で負けると予選敗退になる…想像できたかい?」

岬「うん。つまり、今回の練習試合はそう言った”ベストメンバーが揃っていない時に
格上に当たってしまった”場合の絶好の予行練習になると言う事だね」

三杉「そうさ。それともう一つ…主力が居なくなればそれだけで諦めてしまう敗北主義者を炙り出すチャンスでもあるね」

早田「なんだと!」

次藤「三杉、んは何時も何時も人ばせびらかせんば気が済まんっちゃ!?」

298 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 09:13:26 ID:ShjjSqVH
三杉「おや、気の強い君達が怒るとは意外だね。てっきり僕と一緒に臆病者を
奮い立たせる側に回ってくれると思っていたんだが、ひょっとして逆の側だったのかい?」

次藤「んが!?…こ、この…!」

早田「性根腐った言葉遊びしてんじゃねえ!」

松山「三杉、お前な〜…途中までは良い話だったのに…」

葵「(うう〜、うちってなんでこうもギスギスしているんだろう)」

中山「…だけど言っている事は正しいな。森崎達が居ないから勝てません、なんて口が裂けても言えない」

三杉「そういう事さ。皆、やる気が出てきた良い顔になったじゃないか」

若島津「…なるほどな。森崎とウマが合う訳だよ、お前」

三杉「どう致しまして」

全日本メンバー「褒めてねえ!」「いや、今のセリフもわざとだろ」「全くムカつくぜ!やりゃあいいんだろやりゃ!」

仮定のシナリオを描写し、それに基づいた意義と目的を説く。
しかもそれをわざと上からの目線でやる事で反骨心を煽り、格上に挑戦する気力を湧き上がらせる。
この態度は見事功を成し、選手達は怒り混じりの勇気を取り戻した。

見上「…やる気はある様だな。ではオランダユース戦に向けて合宿を続ける。三杉、代理キャプテンはお前にする。
その悪知恵と度胸をオランダユースにぶつけて日本の為に役立ててくれ(さて、3点差以内で負けられれば御の字だが)」

三杉「お褒めに預かり光栄です。任せて下さい」

その功績を認め、見上は真新しいキャプテンマークを三杉に渡した。密かな諦めと共に。

全日本ユース対オランダユースまで後1週間…

299 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 09:13:49 ID:ShjjSqVH
いったんここまで。

300 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 10:27:46 ID:tAyEHimT
オランダユース戦も判定・選択なしになるのかな?


301 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 11:57:43 ID:ShjjSqVH
うわっ…雑談スレで指摘されて気付きましたが、三杉の考えた
シチュエーションではパラグアイは三試合で勝ち点5ですね。
なんと恥ずかしいエラー…穴があったら入りたい(赤)

>>297


三杉「パラグアイとオランダも引き分け、更にエジプトは全敗したとしよう。
この時点で日本、オランダ、パラグアイの3チームがそれぞれ勝ち点4で並ぶ。
そうするとこのリーグの行方は最後の日本対オランダの結果に委ねられる事になる」



三杉「パラグアイはオランダに負けたがエジプトに勝ち、更にエジプトはオランダに引き分けたとしよう。
この時点で日本、オランダ、パラグアイの3チームがそれぞれ勝ち点4で並ぶ。
そうするとこのリーグの行方は最後の日本対オランダの結果に委ねられる事になる」

に脳内変換して下さい。書き直しが出来ないのが2ちゃんねるの怖さ…!

302 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 11:59:19 ID:ShjjSqVH
>>300
はい。森崎が全く参加できないので完全に判定・選択なしです。

303 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 13:25:56 ID:F2bPm3s9
だがそれがいい

304 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 13:31:29 ID:ShjjSqVH
〜静岡県南葛市、南葛中学〜

森崎の入院、日向の失踪、若林の敗走。
全日本ユースのキャプテン候補者達が次々と苦難に道を閉ざされる中、
最後のキャプテン候補も一つの試練を迎えようとしていた。

この日の昼翼は母校の門前に立っていた。高校に進学せず中卒でブラジルに渡った翼にとって南葛高校は馴染みが無く、
小学生時代は何回か引越ししていた為3年間通い続け思い入れが出来た学校はここだけである。
帰国して以来何故か自分の部屋で落ち着けなかった翼は気晴らしになればと思ってここに散歩に来ていた。

翼「(俺の居た頃よりサッカーの設備は立派になっている…のかな?
でもサンパウロFCに慣れちゃうと凄く貧相な環境に見えるや。あ、部室のドアに何か貼り付けてあるな…
”目標全国制覇!取り戻せ南葛中最強伝説!”…そうか、もう日本一じゃないんだ)」

塀越しに見た母校の様子は何処か見覚えがあるものの記憶の中の物とは明らかに違っており、
翼は少しの懐かしさとその倍程の寂しさを感じずには居られない。
そんな彼にためらいがちに近づく者が居た。

早苗「あのう…翼くんだよね?」

翼「えっ…?さ、早苗ちゃん!」

翼と浅からぬ縁である少女、中沢早苗だ。

早苗「やっぱり…良かった、人違いかと思っちゃった」

翼「どうしてここに…?」

早苗「昔が懐かしくなったの(本当はおばさまが電話で教えてくれたんだけど)」

305 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 13:31:52 ID:ShjjSqVH
翼「そうか、アッハハハ。凄い偶然だね(早苗ちゃん綺麗になったなァ)」

思わぬ嬉しいサプライズに翼は朗らかに笑うが、早苗は後ろめたい事もあって僅かに苦笑しただけだった。
サッカー以外ではお世辞にも鋭いとは言えない翼はそれに気付く事も無く会話を続ける。

翼「でも人違いだなんて…そんなに変わったかな?顔も体格もほとんど変わらないと思うんだけど」

早苗「うん、顔と体格は昔とほとんど同じだったから分かったんだけど…その格好、何?」

ちなみに今の二人の格好は以下の通りである。

早苗はカーディガン、ワンピース、ストッキング、パンプスと言うカジュアルな私服だが
どれもさりげなくお洒落な代物であり、入り過ぎない程度に気合が入った格好である。

対する翼はシャツと長ズボンとスニーカーまでは良かったが、それに加えてロングコート、サングラス、キャスケットを
装着している為何処か不審な印象を与えかねないいでたちだった。
しかも足下には当たり前の様にサッカーボールがある為ますます悪い意味での注目を集めやすい。

翼「これ?顔出してるとしょっちゅうサインを求められたから着ているんだけど…何処か変?」

早苗「う〜ん…普通で居るならともかく、中学校を塀越しに覗き込む時はちょっと…その…」



少し離れた女子生徒達「誰あの怪しい男?」「まさか露出狂!?」「先生を呼んできた方が良いんじゃ…」



翼「ば、場所変えようか…(俺この学校のヒーローの筈なのに…)」

早苗「そ、そうね!私良い場所知っているわ!」

306 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 13:33:18 ID:ShjjSqVH
いったんここまで。

307 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 14:29:15 ID:F2bPm3s9
変質者フラグwwwwwwwwwwwwwww

308 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 15:03:28 ID:4+eV3PfU
初登場時のロベルトファッションじゃないのかこれw

309 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 15:13:33 ID:ShjjSqVH
>>308
いいえ、WY編の若島津ファッションです。

310 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 15:32:10 ID:J85nDBvQ
その一方では
琴音「念願の山森君ユニホームを手に入れたわ!」

311 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 15:34:18 ID:k2fTkON3
>>310 ふっとばしてでも うばいとる

312 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 15:46:09 ID:4+eV3PfU
>>309
ああ、あのどう見ても不審者の…… 納得しましたw

313 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 15:53:52 ID:Sas6fB79
若島津は昔からなんだかおかしなセンスしてるからなあ
Jrユース終了後、静岡県の新人戦を見に来た時もかなりひどいものだったw

314 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 16:59:09 ID:PTIHz2fJ
あのサスペンダーのついたアレかw

315 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:10:06 ID:ShjjSqVH
約二十分後、翼は早苗に連れられ南葛市を見下ろせる小山に来ていた。
ここは翼が南葛市に引っ越してきた直後に石崎に案内された場所で、
若林邸に挑戦状代わりのサッカーボールを蹴り込んだのもここからである。

翼「うわあ、懐かしいなこの場所も!やっぱり良い眺めだ」

早苗「あら、知ってたの?ランニングで来た事があるとか?」

翼「ううん、ここは南葛市に引っ越してきた日に石崎くんに連れられてきた場所なんだ。
懐かしいなあ…あの後若林くんと勝負して、その後修哲少との対抗戦があって…」

思い出の場所とその光景に翼は頬を緩ませ見るからに機嫌が良くなった。
分かりやすい反応に早苗もクスクスと笑う。

早苗「小学校の頃なのに良く覚えているのね」

翼「そりゃあ、楽しかったし…早苗ちゃんは覚えていないの?」

早苗「いいえ、私もはっきりと覚えているわ。ある日突然転校してきたサッカーの
天才少年が当時全国ナンバー1の修哲少に挑戦状を叩きつけたんだもの。それに…」

翼「それに?」

早苗「それに…その対抗戦が翼くんと出会ったキッカケだし…」

翼「…そ、そうだね。俺も覚えているよ、俺の名前が描かれた手作りの大きな旗を
振り回す女の子が観客席に現れた時は凄くビックリしたし…」

早苗「うっ…と、当時の私って今から考えてみると凄く恥ずかしい事していたのね…」

翼「いや、その…俺も、恥ずかしかったけど嬉しかったよ?」

早苗「そ、そう?それならやった甲斐があったわ」

316 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:10:20 ID:ShjjSqVH
そのまま二人は甘酸っぱい会話に勤しみ、時に笑いを交わし時に顔を赤らめ
三年ぶりの二人きりの時間を楽しむ。今ここに居るのは翼と早苗とサッカーボールだけだった。

翼「南葛少と言えば、あの頃の皆は今どうしている?学とか」

早苗「皆受験したり就職活動をしたり様々だわ。小田くんみたいに実家の稼業を継いだ人も居るし」

翼「そうか…もうサッカーしていないのかな?」

早苗「大学でもやるって言っているのは南葛高に進んだ長野くんと岩見くんだけね。
大川くんも高校ではサッカーをやっていなかったし、4月からは普通のサラリーマンよ」

翼「ううん、長野と岩見だけなのか…日本にプロリーグがあれば皆も
プロ選手になれたかも知れないのに(世界には通用しないだろうけど)」

早苗「そうね。今の所は翼くんみたいに海外でプロになるしかないみたい」

翼「…そうだね。日本にプロリーグが出来るにはまだ数年かかるらしいよ。
日本サッカー協会の人に聞いた話では水面下で色々進めているらしいけど…」

早苗「(………あら?)」

翼「…?どうかしたの、早苗ちゃん?」

早苗「え?い、いえ、なんでもないわ(翼くんだったらブラジルのプロリーグがどれだけ素晴らしいか
凄い勢いで話し始めると思ったのに…なんだか顔が曇っている?)」

だが二人の青春丸出しの語らいは徐々に明るくなくなっていった。
話題が現実的になってきたせいもあるが、それ以上に何故か
翼の顔から微笑みが徐々に消え早苗がそれに違和感を感じ始めたのだ。

317 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:10:54 ID:ShjjSqVH
早苗「…ねえ。ブラジルのプロって、やっぱり凄い?」

翼「うん、それは勿論。中学卒業前に実業団のチームの練習に混ぜてもらっていた事があったけど
ブラジルに渡ってから実際にプロの試合を見てみたら、実業団の人たちには悪いけど
日本のレベルの低さが恥ずかしくなる位だったよ。これじゃ日本がサッカー後進国なのも当然だってね」

早苗「…そこまで?(昔から実力主義だったけど、そこまでハッキリ言うなんて…)」

翼「うん。日本人って言うだけでバカにされる環境だったよ。だから努力し続けたんだ。
練習は辛くて苦しくて嫌だったけど、バカにされるのはもっと嫌だったから…」

早苗「(れ、練習が辛くて苦しくて…嫌だった?翼くんが…大好きなサッカーの練習が嫌だった!?)」

話題が翼自身のサッカーに移ると、いよいよ早苗は驚きを隠せなくなった。
彼女が一度も見た事も無い程鋭く固い表情の翼から、翼の口から出たとは思えない言葉が出てくる。

翼「その甲斐あって俺をバカにする奴は居なくなったよ。日本人はサッカーが出来ない、
なんて言う奴らも居なくなった。まあ、これは同じ時期に森崎も活躍していたのもあるんだろうけど…」

早苗「(何か相槌、相槌…)森崎くんが…そう言えばリオカップって言う大会で森崎くんに勝ったのよね?」

翼「…うん。ブラジルの強豪チームを複数倒して勝ちあがってきた森崎を大差で倒し、
俺は名実共にブラジルリーグの若手ナンバー1として認められたんだ。マスコミもファンも大騒ぎしてくれた」

早苗「(な…なんで…楽しい話題の筈なのになんで…)」

翼「クラブも手放しで褒めて凄い高額のプロ契約をしてくれたんだ。俺は来月からプロとして戦う。
引退するまでの長い長い戦いの舞台に立てるんだ…なのに」

早苗「(子供の頃の夢が叶ったんでしょう?思う存分サッカーが出来るんでしょう!?
なのに…なのになんでそんなに怖い顔をしているのよ、翼くん!)」

318 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:11:53 ID:ShjjSqVH
話が進む毎に翼の顔と声は固く重くなっていき、それは最早叶い始めた夢を追う若者ではなく
終わりが見えない戦争に徴兵された若者の様な姿だった。三年間思い描いてきた前向きで凛々しい翼とは
あまりにも違うその様子に早苗は恐怖で竦み上がり声が出せなくなってしまう。

翼「なのに…(なのに、なんだか不愉快で堪らないんだ。森崎に勝ってプロ選手になれたのに、念願をいくつも叶えたのに)」

早苗「(つばさ、くん、よね…?私が好きな翼くんなのよね?)」

翼「(…ってこんな事早苗ちゃんに言えないよ!何考えているんだ俺!…あれ?)早苗ちゃん?どうしたの?」

ようやく翼が我に返った時、早苗は自分を抱きしめながらガタガタ震えていた。
慌てた翼が普段の顔と声に無意識に戻り、それを見た早苗も怯えが収まる。



だが二人の破滅はここからだった。



翼「ゴ、ゴメン!俺、何か傷つける様な事言ったの!?」

早苗「う、ううん。そうじゃないの。ちょっと怖かっただけ…」

それは、早苗にとってはなんでもない一言だった。



翼「怖かった?お、俺が?」

早苗「うん…さっきの翼くん、なんだか凄く張り詰めた表情と声で…」

目の前の恐怖から解放されて深く考えずに出した素直な一言だった。

319 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:12:14 ID:ShjjSqVH
翼「そんなに?確かにサンパウロでもそんな事を言われた事はあったけど…」

早苗「きっと私の知らなかった翼くんなんだわ。でも当然よね、私達二人とも大人になったんだもの」

だがそれは翼にとって呪いの一言となる。



翼「そうなのかな…俺、そんなに変わった?」

早苗「うん。そういえば、ジャパンカップでプレイを見た時も、あれ?って思っていたわ」

サッカーと共に育ち、サッカーを愛し、サッカーに人生を捧げるのが当たり前だった翼に。



                     早苗「今の翼くんって、まるでサッカーが好きじゃないみたい」

                          彼女はその一言を言ってしまった。



翼「………え?」

傍目には翼は驚きで固まった様にしか見えなかっただろう。
早苗もそう判断し、慌てて弁解を試みた。だがそれが翼の心に届く事は無かった。

早苗「あ、ごめんなさい!私バカな事言ったわね」

翼「(サッカーが…好きじゃない…?)」

320 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 17:12:46 ID:ShjjSqVH
いったんここまで。

321 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:28:40 ID:ShjjSqVH
その概念は今まで翼の意識下に眠っていた。

早苗「自分からサッカーバカって認めちゃう翼くんがサッカーを楽しんでいないなんて事、有り得ないのに…クスッ」

翼「(俺は…サッカーが好きじゃない…?)」

翼の心の中に何時の間にか根付き、宿主に気付かれる事無く成長し続け奥底から心を少しずつ蝕んでいた。

早苗「一生貴方を応援し続けるって決めたのに、こんな事を言うなんて…私もまだまだね」

翼「(そんな筈無い。俺はずっとサッカーをやってきたんだ)」

翼はひょっとしたら気付いていたかも知れない。自分の心に走る痛みとその原因に。

早苗「…翼くん?どうしたの?」

翼「(俺がサッカーを嫌っているって?馬鹿げている!)」

だがその概念の存在を認めるのが怖くて翼はそれを放置し続けた。

早苗「つばさくん…?」

翼「俺がサッカーが好きじゃないなんて…そんなの…」

早苗の言葉が水となった今、その概念は一気に芽を出した。



             翼「 そ ん な の ウ ソ だ ぁ あ あ あ あ ー ー ー っ ! ! 」




322 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:28:59 ID:ShjjSqVH
翼は叫んでいた。何時の間にか立ち上がって叫んでいた。

早苗「きゃあっ!?」

早苗がショックで仰け反り倒れ、弾みで側にあったサッカーボールを転がしてしまう。

翼「………!!」

この時翼は早苗より傾斜の下の位置に居た為、ボールは翼の方にゆっくりと転がり始めた。

自分に近づいてくるボールとその向こうから自分を見つめてくる早苗を見た時、翼は走り出していた。

気がついたらまるで殺人鬼に追われている様に走っていた。

鍛えに鍛えた脚と肺が彼の望み通り速度を提供し続け、目に映る光景が
次々と絵の具の様に流れて消えていく。後ろの方で彼の名を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、
翼は振り返らなかった。振り返られなかった。もっともっと速く走っていた。

ぜいぜいと息を吐く音が聞こえる。それが自分の息だと理解した時、
翼は実家の玄関に辿りついていた。笑う膝と破裂しそうな肺を叱咤し鍵をかけ、
ようやく翼は一息をつき僅かながら落ち着きを取り戻した。

ただ、その僅かな落ち着きも長持ちしなかった。

翼「な、何を…やっているんだ俺は…早苗ちゃん、置いてきちゃったな…
後で電話をかけて、謝らなきゃ…でもその前に、横になろう…」

翼は安息を求め自室に向かった。

そしてまた絶叫を上げそうになった。

323 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:30:01 ID:ShjjSqVH
翼「あ…ああ…あ…!」

壁と窓ガラスにはマラドーナなど名選手のポスターに様々のサイズのサッカーボールやクラブロゴのシール。
柱には中学生時代に刻んだ「おれたちの夢全国制覇V3!」の文字。
本の類はサッカーに無関係な物など殆ど見当たらず、子供の頃遊んだおもちゃもサッカー関連の物ばかり。
勿論サッカーボールは部屋中にいくつも転がっており、ユニフォームや運動着が大半を占める
衣装箪笥の底にも使えなくなったサッカーボールの残骸がどっさり。
安息を求めに来た筈のベッドのかけ布団まで水玉模様ならぬサッカーボール模様である。

大空翼と言う一人の人間のこれまでの生き様が凝縮された部屋。
数え切れない程の思い出を積み上げてこうしてきた自室。

それは今の翼には恐怖しかもたらさなかった。

翼「か…帰ろう…じゃなくて、戻ろう…」

這う様に自室から遠ざかりながら翼は自分に言い聞かせる様に呟いていた。
だが今の彼に自分を安心させられる言葉は何も思いつかなかった。

翼「ブラジルへ戻ろう…寮の部屋はあんなになっていないから…ブラジルに戻って…戻って…
何をするんだ…トップチームに混ざって、サッカーを…サッカーをしに、戻る…」

彼は今、怯えていた。サッカーが好きではないと言う概念に。その概念を否定できない事に。

翼「嫌だ…嫌だ…サッカーが嫌いだなんて…嫌だ。そんなの、嫌だ…」



ピンポーン。




324 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:30:19 ID:ShjjSqVH
大空家のインターホンが鳴ったのはその時だった。
そしてそれを押したのは勿論今翼がもっとも会いたくない人物だった。

早苗「ハァ…ハァ…つ、翼くん、居る…?居るよね…靴が外に脱ぎ捨ててあるし…ハァ…ハァ…」

インターホン越しの早苗の息は荒かった。翼の脚についてこようと相当無理をしたのは明らかだった。

早苗「フゥフゥ…スゥ…ごめんなさい!私、プロデビューを控えた翼くんの心を乱す様な事を…」



翼「帰ってくれ!」



気が付いたら翼はまた叫んでいた。気が付いても止まらなかった。

翼「(えっ、今俺はなんて…)」

早苗「え?つ、翼く…」

翼「帰ってくれよ!どうしてあんな事を俺に言えるんだ!(違う!早苗ちゃんは悪くない!)」

早苗「つば、さ…く、ん…」

翼「(止めろ!止めるんだ大空翼!)酷いじゃないか!君のせいでサッカーが嫌いになったんだよ!」

早苗「つ………」

翼「(頼むから誰か止めてくれーーーっ!!)頼むから帰ってくれーーーっ!!」

325 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:30:42 ID:ShjjSqVH
早苗「……………」

翼「ゲホッ!ゲホゲホゲホッ…」

あまりに甲高く叫びすぎて翼は咳き込みそれ以上声を出す事が出来なくなった。
しばらく痛々しく咳き込む音だけが響いた後、早苗の涙ぐんだか細い声が翼の耳に届いた。

早苗「ごめん、なさい…わたしが、よけいな、こと…」

翼「(違う、違うんだ!君は悪くなんかない、全部俺のせいなんだ!)」

早苗「きょうは、かえるね…あした、ううん、あさってまたくる…」

翼「(明後日?それじゃダメなんだ、俺は明日の便でブラジルに戻るから…)」

早苗「かえさないと、いけないものが、あるから…」

翼「(返さないといけない物…?俺があげたプレゼントとか?)」



早苗「さよ、うなら…」



翼「(立て!何をやっているんだ翼、今すぐ追いかけて謝るんだ!お前は今とても
大切な物を失おうとしているんだぞ!早く立て!頼むから立ってくれーーーっ!!)」



翌日翼はブラジル行きの飛行機に乗っていた。壮絶な疲れを堪えている表情で。

その次の日早苗が大空家を訪れた時、翼は当然そこには居なかった。

326 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/22(月) 18:33:26 ID:ShjjSqVH
今日はここまで。

たまには厨二っぽい展開も良いかなと思いました。
なんだか厨二の解釈を間違えている気もしますが。

327 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 18:41:40 ID:x5c9QXVQ
乙です

ていうかお前早苗に何かプレゼントしたことあんのかいw

なんて野暮なツッコミは置いといて
厨二展開ごちそうさまでした
これもまた青春
しかし2ねいさんは早苗の影が薄いとか言ってたから
油断してたらまさかこんな役回りにw

328 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 18:45:49 ID:F2bPm3s9
なんだろう、翼ざまぁとしか思えない俺は病んでいるな

329 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 18:58:46 ID:J85nDBvQ
なんかこの翼の方が好感持てるんだが・・・
まぁ翼ざまあは変わらないけど

330 :創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 19:22:55 ID:WuvepcBd
翼ざまぁよりあねご可哀想のが強い

331 :創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 17:05:46 ID:+aFuhJ9Q
なんというサッカーサイボーグ

332 :創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 18:15:15 ID:23D2B1tB
さすがに翼に同情するぜ
森崎みたいに最初からひねくれていたらある意味楽だったろうに…

333 :創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 23:15:21 ID:EkC7NTxb
あねごの傷心はかなり酷そうだな
普通に彼氏に言われただけでも相当ショックな言葉なのに
日本期待のエースの立場にある選手から
お前のせいでこの競技嫌いになったとか言われたら
個人の感情越えた責任感つか罪悪感みたいなものまで芽生えそうだ

334 :創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 23:21:54 ID:jxYpGtnX
これで翼に再会する前にアネゴが事故に遭ったら韓流ドラマだなw

335 :創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 23:48:58 ID:dk0AZ2xn
これ乗り越えて元のサッカー好きに戻ったら
キャプテン争いとか執着しなくなりそうだなー

336 :創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 00:01:44 ID:0lDzQtTZ
いや、逆に「森崎くん、勝負だ!(キラッ」みたいなテンションになりそう

337 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 00:13:12 ID:kMe4/qku
〜東京都のとある病院〜

入院三日目、森崎は申し訳なさそうな顔の医者の前で口を開けて呆然としていた。
更に彼の周りには見上と賀茂も居り、二人もまた顔を顰めていた。

曰く、森崎の腰はかなりのダメージが溜まっている。

曰く、今の痛みは1週間もコルセットをつけていれば消えるが運動をすればその日の内にぶり返す。

曰く、腰の筋と骨を半年は休ませないと再び痛み無しに運動出来る状態にはならない。

曰く、その半年後もリハビリと腰の補強に費やさないと今後の腰の負傷は予防できない。

医者「…と、言う訳でだ。私が薦めるのは自宅で安静にして療養する事なんだ」

森崎「冗談じゃないですよ…俺、日本代表なんですよ?後ちょっとでプロにもなれるんですよ?
それが半年も安静にしていたら腕が錆びるなんてモンじゃないです!
来年の春にワールドユースがあるってのに、それに出られなかったら俺の将来お先真っ暗ですよ…」

医者「うむ。いやあ実は私もサッカーファンでね、なんとかならないかと知り合いの
スポーツドクターに片っ端から連絡を取っているんだが…皆言う事は一緒だ。
大きな施設で専門の医者をつけ、毎日診断を繰り返しながら腰を痛めない
リハビリプログラムを早期から組めばなんとかなる見込みはあるってね」

森崎「…えっと、それ、どんだけの金がかかるんですか?」

医者「…どれだけ低く見積もっても、千万以下では済まないだろうね…」

森崎「いっせんまんえん…」

338 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 00:13:34 ID:kMe4/qku
見上「森崎。お前の親御さんは千万円を出せるか?」

森崎「…日本サッカー協会の負担でパルメイラス行きが決まった時、親父もお袋もお前はなんて孝行息子なんだって
泣いて喜びましたよ。俺の高校進学の為に溜めておいたお金をローンの返済に使えるって…」

見上「そうか…」

絶望しかもたらさない医者の説明に焦れた見上が口を挟んでも事態は好転しなかった。
森崎は決して金持ちの家の子ではなく、千万円を用意しろと言われてもはいそうですかと出せる訳が無い。

見上「賀茂、協会の方でなんとかならんか?」

賀茂「今朝片桐が会議に出ている筈だが…望み薄だろうな」

森崎「………そうですか………」

医者「あの、私もなんとかならないか知り合いにかけあってきますので。それではまた後程」

流石の森崎もこの状況では空元気も出せず、見かねた見上も珍しく親身になって賀茂に
相談するが色よい返事は返ってこない。居心地が悪くなった医者が部屋から出て行き、
それと入れ替わる様に片桐が入ってくると3人の視線は彼に集まった。

片桐はサングラス越しでも分かる程濃いクマを目の下に作っており、何時もはビシッと決まっている服装も
今はまるで徹夜の飲み会帰りの中年サラリーマンの様にヨレヨレになっていた。

賀茂「…ダメだったか」

片桐「無理でした。協会内には”せっかくブラジルに行かせてやったのに結果はこれか!”と
森崎を責める声もありまして…更に見上さんの責任論まで出ていました」

339 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 00:13:55 ID:kMe4/qku
見上「フン。日本のユース代表監督なぞ大して儲かる仕事でもないのに身勝手な責任論だ」

片桐「今回はそれが逆に作用して見上さんの立場は守れましたよ。
ただ、やはり森崎にそこまでの金は出せないと言う結論は覆せませんでした」

賀茂「まーそりゃーしょうがないわな。どんな事情があったにせよ、森崎にもっと金をかけなきゃいけなくなるってのは
協会としちゃ無理難題だ。プロリーグの設立構想、W杯招致活動、アジア予選の準備…
金がいくらあっても足りゃあしねえ。この状況で更に一選手に金をかけるのは大問題だろうよ」

見上「しかも若林が居るからな。贔屓だと非難されてまで森崎を救済する必要は無い。合理的だ」

森崎が側で聞いているのもお構いなしに裏事情を語り合う大人3人。
最初は大人として扱っていてくれているのかな、などと現実逃避していた森崎も
話が進むに連れ黙ってはいられなくなった。

森崎「…するってえとなんですか?俺は日向に泣きつく位しか選択肢が無いって事ですか?」

見上「その選択肢すら無いぞ。一昨日から日向は行方不明だ」

森崎「は!?なんですかそりゃ!もうすぐオランダユースとやるんでしょ?」

見上「それを伝えられる前に居なくなってしまったのだ。若島津達でも何処に居るかは分からん」

森崎「マジですか…こうなったら若林…つってもあいつん家は日向ほどの金持ちじゃないし、
あいつは半ば勘当気味な三男坊らしいし…例えあいつが協力的でも無理っぽいな。
じゃあ翼は確か親父が船の船長で…滅多に家に帰ってこないから話もできそうにないか。
それ以前に若林も翼ももう日本に居ないじゃねーか!ああもう八方塞かよ!」

ガシガシガシッ!

340 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 00:14:11 ID:kMe4/qku
事態は最早森崎がプライドを投げ捨ててもどうにかなる状態ではなく、
世知辛すぎる問題に彼は髪をかきむしらずには居られなかった。
必要ならどんな事でもすると言う方針でここまで辿りついた森崎にとって
何も出来る事が無いと言う状況はあまりにも過酷な物だった。

賀茂「こうなったら募金でもしてみるかあ?確か三杉もそれで心臓病の手術費を稼いだんだろ?」

森崎「…上手く行ったとしても、何ヶ月かかるんですかねそれ」

賀茂「さあなあ…あいつは小学生時代から女子ファンクラブがあって、その会員達が
芸能人に金をつぎ込む勢いで貢ぎまくっても半年以上かかったそうだからなあ…
テレビでさらし者になったとしても、1ヶ月2ヶ月で足りるかどうか」

森崎「意味無いじゃないですかそれじゃ!俺はまとまった金が今すぐ必要なんですよ!」

片桐「落ち着け森崎。気持ちは分かるが賀茂さんに食って掛かっても問題は解決しないぞ」

森崎「…畜生!ここまで来たってのに…」

見上「………」

本音を隠さず荒れて嘆く森崎の姿に大人たち3人もかける言葉がみつからなくなる。
彼らも皆志半ばのまま現役を退いた元サッカー選手であり、今の森崎の境遇に共感せずには居られないが
金ばかりはそう簡単に都合がつけられる物ではない。地獄の沙汰も金次第なのである。

だが捨てる神あれば拾う神あり。森崎の運はまだ尽きていなかった。

ガチャッ。

陽子「失礼します!森崎くん、とびっきりの救世主を連れてきたわよ!」

森崎「へ?陽子さん…と…な、なにィ!貴方は!」

341 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 00:15:38 ID:kMe4/qku
いったんここまで。今夜中にもう一回更新出来るかな?

342 :創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 00:21:26 ID:thQkbHHv
クッ!なんて気になるヒキをしてくれるんだ…

343 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 01:02:18 ID:kMe4/qku
流石に間に合いませんでした。今日はここまで。



今日のキャプ森に関係無い事。
モスクワの本田、凄いですね。中田、中村、小野以上の
選手として大成して欲しいものです。
平山みたいなオチは勘弁…

344 :創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 01:18:07 ID:urOt/C29
世紀末救世主乙でしたー

345 :創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 03:45:12 ID:kvKqfp0W
乙です!
平山にも期待してあげて下さいw
出戻りしたとはいえ代表クラスのFW、学年も本田と一つしか違わないんだから…

346 :創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 05:07:36 ID:4esORPPI
平山というとどうしてもダメギが(

347 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:53:20 ID:kMe4/qku
>>345
平山はホームシックで帰っちゃったと言うメンタルの弱さが…
勝てば官軍負ければ賊軍のストライカーがそんなんでやっていけるか!と
当時リアルタイムで相当ガッカリした思い出があるんですよ。
実力と才能は疑い様が無いぶん余計ガッカリで…
それでも活躍してくれれば良いんですが、果たしてどうなるやら。

348 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:55:14 ID:kMe4/qku
ルーカス「HI!久しぶりですね、モリサキ!」

森崎「ルーカスさん!」

バウミール・ルーカス。3年前森崎をスカウトしたパルメイラスのスカウトである。

ルーカス「ジャパンカップ優勝おめでとうございます。そして今大変な事になっている様ですね」

森崎「ええ、そりゃもう…ってそれを知った上で日本に来たって事はまさか!」

ルーカス「YES! THAT’S RIGHT!」

ここでルーカスは深呼吸をしてから朗々とした声で宣言した。



ルーカス「ユーゾー・モリサキ!SEパルメイラスは貴方に2年契約をオファーします!」



森崎「…おいくら程で?(こういう時、真っ先に値段を聞くのは失礼じゃないよな。多分)」

ルーカス「はい、それはこちらの書類に」

降って湧いた様な話に森崎は興奮を必死に抑えながらルーカスの差し出した書類を確認する。
そこにあった額は森崎の治療とリハビリ代を差し引いても尚余りある物だった。

賀茂「ほう!これだけありゃ余裕じゃねえか!」

森崎「…有難うございますルーカスさん。これが無ければ俺はどうなっていたか…」

陽子「良かったわね森崎くん!」

349 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:55:43 ID:kMe4/qku
こうして森崎の金銭的問題は予想していなかった方向からあっさり解決した。
天の助けとばかりに喜ぶ森崎だったがルーカスは釘を刺す様な話を続けた。

ルーカス「HAHAHA、お礼は必要ありませんよ。私はあくまでパルメイラスの為にビジネスをしているのです。
君を見捨てるよりも君に投資した方が将来のリターンが大きいと判断した為オファーしたんですよ。
実際に上層部は満場一致で決めた訳ではなく、本来なら4年契約を結び後で移籍金を
ガッポリ稼ぐつもりだったんですが君がリハビリの甲斐無く腕を落としてしまった場合も考えて
2年契約に変えたんです。その場合君は本当にゴミの様に捨てられ見向きもされなくなりますよ?」

森崎「そりゃそうでしょうね(エベルトン監督も上手い事を言ったもんだぜ。
俺達サッカー選手はより良い牧場に買われる為に日夜努力する家畜か…ヘッ、上等だ)」

見上「(これでなんとかなるか…ここに来て森崎がキャプテンから降りていたらどんな混乱が
発生していた事か。後に復帰した場合は更にややこしい事になっていただろうしな)」

ルーカス「それともう二つ。これは契約条件ではありませんが、私から二つリクエストを」

森崎「はい?」



ルーカス「まず一つ。必ず来年のワールドユースで活躍して下さい。出るだけじゃダメですよ」



森崎「…任せて下さいよ。例えダメって言われてもMVPを掴んでやりますよ」

見上「あまり大口を叩くな。GKがMVPを取るとなると大会通算失点率をかなり低くしないといけないぞ?」

賀茂「まあ意気込みとしてはブルってるより良いんじゃねえか?Jrユース大会では実際にMVPだったんだしな」

350 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:55:58 ID:kMe4/qku
悩み事が解決された森崎が立ち直るのは速かった。出世払いの様な物だと促されても
平気で巨大な目標をぶち上げ、周りが苦笑しても全く悪びれようともしない。

ルーカス「良いメンタルです。何時までも勇敢なキーパーのままで居て下さいよ」

森崎「当然!で、もう一つのリクエストはなんです?」

ルーカス「ええ、こちらの方がより大事なリクエストなのですが…」

それも束の間の事で、ルーカスがより真剣な表情になると森崎も笑顔を引っ込めた。
ただならぬ様子に見上、賀茂、片桐兄妹までも沈黙したのを見計らい、ルーカスは口を開き…



ルーカス「ギロッポンのGEISHAガールと遊びたいので良いお店を紹介してください」



ニマーっとお世辞にも上品ではない笑みを浮かべた。

森崎「ぎ…ぎろっぽん?何ですかそれ?」

ルーカス「おや?トーキョーのミナトクと言う地域にそういう名前の繁華街があると聞いていたのですが…」

陽子「東京の港区…六本木の事ですか?」

ルーカス「OH!ロッポンギと言うのですか。間違えて覚えていた様ですね、HAHAHAHA!」

陽子「(どうやったら間違えられるのかしら…)」

大真面目な話をしていた筈なのに突然下卑た話題になり、日本人5人は目が点になった。

351 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:56:17 ID:kMe4/qku
森崎「…えーっと、要はエッチな事が出来る飲み屋に行きたいって事で良いんですか…?」

ルーカス「YES, YES!」

陽子「(なんてワクワクした顔…子供みたいに瞳を輝かせてるし…)」

森崎「(そういや旅先での浮気が趣味だったなこの人…)ルーカスさん、
日本の飲酒年齢は20歳からなんですよ。俺今18歳なんで、そういう店には行けません」

ルーカス「WHAT?それは残念ですね。ではどなたか別の人に案内を…」

年齢の都合で森崎が頼みを断るとルーカスは後ろの4人に視線を向けた。
たちまち同じく未成年でありそれ以前に女である陽子が顔を背け、残りの3人が醜い押し付け合いを始める。

片桐「私はオランダユース戦の準備で忙しいので、見上さんお願いします」

見上「私だって合宿を監督せねばならん!賀茂、ここは頼んだぞ」

賀茂「待て、俺はお前らと違って貧乏人なんだ!金持ちの片桐が行けよ!」

片桐「無理です!私はそんな店に行ったら…私の家庭の事情はご存知でしょう!」

見上「私なんか妻子持ちだ!家庭を崩壊させろと言うのか!」

賀茂「汚えぞてめえら!いくら裏方だからって汚れ役を全部引き受けて堪るか!」

ルーカス「ホッホッホ、遠慮せずに4人で行きましょうよ。皆で楽しく命の洗濯をしましょう」

片桐・見上・賀茂『そういう訳にはいかないんですよ!』

352 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:56:31 ID:kMe4/qku
陽子「キャバクラの案内を押し付けあう日本サッカー協会の役員達…な、情けないわ」

森崎「つーかルーカスさん、俺がワールドユースのMVPを取るよりも女遊びが大事なのかよ…」

呆れて見ていられなくなった森崎と陽子は廊下に退散し、そのまま病院の庭に出た。
冬を超えて春に備えている桜の木を見ると恥ずかしい気持ちも無くなり二人に笑顔が戻る。

陽子「なにはともあれ、お金の工面がついて良かったわね森崎くん」

森崎「全くだぜ。世の中金だって思い知った。この大事な時期を逃していたらと思うとゾッとするぜ」

A 「ところでさっき片桐さんが言ってた家庭の事情って何なんだ?」
B 「とは言っても、リハビリもしっかりやらないと腕が落ちちまうな」
C 「有難う陽子さん。マジで救世主だったよ、助かった」
D 「ここで一句詠むか。枝折れど 尚も華咲く 森の先」
E 「元気になったらまた海にでも行こうぜ、陽子さん」

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1267790375/l50にて
            ☆2010/3/24 11:00:00☆ から投票期間を設けます。
    そこから  15  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。どれか一つに確定した場合はその時点で投票を
         止めて下さい。尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

353 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 08:58:07 ID:kMe4/qku
投票期間を☆2010/3/24 10:00:00☆からに訂正します。


354 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 12:27:34 ID:kMe4/qku
>C 「有難う陽子さん。マジで救世主だったよ、助かった」

陽子「どういたしまして。でも実際に助けに来てくれたのはルーカスさんとパルメイラスよ。
私はただの連絡員だからあんまり胸を張れた事でも無いわ」

森崎「まあ、そうなんだけどさ。連絡が遅れていたらそれだけで俺どんどん嫌な気持ちになっていただろうよ。
それに上司…じゃないけど敬わないといけないおっさん4人に囲まれていたらそれだけで気がめいるし」

早苗「あら、森崎くんはまだ良いわよ。私なんかそういうおじさん達と日常的に顔を会わせているんだから。
いやらしい目で見られる事も珍しくないんだから、ホントいやんなっちゃう」

森崎「そりゃあ、陽子さんのナイスバディじゃなあ…」

陽子「あら、硬派な学生時代を過ごした森崎くんとは思えないセリフね」

森崎「俺だって女に興味はあるさ。っていうか俺の学生時代まで調べているのか?
(まさか俺が覗き好きだって言うのまではバレていないよな…)」

陽子「あくまで学校側の報告を聞いた程度よ。浮ついた話が無く、更にかなり腕白だったらしいわね?
パルメイラス時代もGK達と殴り合いをした事があったって聞いているわよ」

森崎「ちぇっ。有名税って奴かよ」

森崎と陽子はしばし散歩しながら他愛の無い会話に花を咲かせた。
しかし病院の庭は狭く、見られる物も少ない。

森崎「そろそろ中に戻るか?」

陽子「う〜ん…兄さん達がまだまだケンカしていそうでちょっとイヤね…」

355 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 12:27:50 ID:kMe4/qku
森崎「確かに…って言うか片桐さんこんな所でノンビリしていて良いのか?
オランダユース戦が急に決まったから不眠不休で走り回っているって聞いたけど」

陽子「それは今朝までの事よ。もう60時間くらい寝ていないそうだけど、それだけ
頑張った甲斐あって急ピッチで手続きが進んだんだって。今日の午後からは明日の朝まで休みよ」

森崎「そうか。しかしこんだけ迷惑をかけるなんてオランダユースもふてえ奴らだな」

陽子「全くね。ただ、彼らはそれだけ自惚れる資格のある強さを持っているかも知れないわよ」

森崎「西ドイツユースを4−1で倒したってアレか?一体どうすればそんな事が出来るんだか…」

陽子「私もビデオを見た事が無いから詳しい事は分からないんだけれど…
どうやら彼らはトータルフットボールと言う戦術を使い、試合の主導権を握ったそうよ」

森崎「トータルフットボール…?」

陽子「私はその単語を聞く事自体初めてでどんな戦術か知らないんだけど…森崎くんは知ってる?」

森崎「なんか何時かのオランダ代表がワールドカップで使っていた戦術…だったと思うが詳しい事は知らん」

陽子「そう…試合で実物を拝むしかなさそうね」

二人の会話は自然とサッカー関係の物に移り数日後に行われる全日本対オランダの話題になる。
例え森崎が参加出来ない試合であっても、二人が安息を得られる時ではなかった。



ちなみにルーカスの案内は結局マスコミに見られてもスキャンダルの心配が無い賀茂が
金は見上と片桐が半分づつ出すと言う条件付で押し付けられる事になった。
「クノイチは何処ですか?」などと日本文化誤解を繰り返すルーカスにさぞや手を焼いたとの事である。

356 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 12:28:28 ID:kMe4/qku
いったんここまで。

357 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 15:52:16 ID:kMe4/qku
そして試合の三日前、オランダユースは来日した。
彼らは試合前の二日間を都内の練習場で調整に費やした後試合前日の夕方に記者会見を開いた。
ただでさえジャパンカップの成功でサッカー熱が高まっている時期に
間違いなく強豪国と言えるオランダがやってきた為マスコミの注目度は高く、
記者会見にはスポーツ関係に限定されない大手新聞やテレビの記者が詰め掛けた。

記者会見に出席したのはデニス・クラマー監督とキャプテンのブライアン・クライフォート。
全日本ユースも見上と暫定キャプテンの三杉が出席した。

まずはオランダユース側へのインタビューが行われた。

記者A「クラマー監督、日本の印象はどうでしょうか?」

クラマー「実はわしは以前何度か日本に来た事がありまして、これが一度目では無いんですよ。
日本は過ごしやすくて良いですね。ラッシュアワーの電車だけは疲れますが」

記者A「ではクライフォートくん、君は日本は初めてかな?」

クライフォート「ええ。感想を言うと…ハシが使いにくくてしょうがありませんね。テンプラは気に入りましたが」

記者B「来年のワールドユースに向けて、ヨーロッパ予選を突破出来る自信はありますか?」

クラマー「それは勿論。予選にも強いチームは沢山出てきますが、我々は一位突破を目指します。
皆さんが来年の4月ブラジルに赴けば、そこで凄く強いオランダユースを見られると思いますよ」

最初は当たり障りの無い質問から始まり、クラマーとクライフォートもニコニコと友好的に答える。
だが質問が明日の試合に関係する様になると途端に二人の態度は豹変した。

358 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 15:52:30 ID:kMe4/qku
記者C「お二人両方に答えて頂きたいのですが、全日本ユースの選手で特に注目している選手は居ますか?」

クラマー「そうですね。やはりツバサ・オオゾラ、ユーゾー・モリサキ、ゲンゾー・ワカバヤシの3人でしょうか。
この3人がいずれもそれぞれの事情で今回の試合に出れないと知って大変残念に感じました」

クライフォート「正直言ってこの3人の内誰も居ないんじゃ負ける気はしませんね」

三杉「!」

ォオオオオオオオオオ…

記者D「で、では他には脅威に感じる選手は全く居ないと…?」

クラマー「前述の3人には劣りますが、コジロー・ヒューガ、シンゴ・アオイ、トメヤ・アカイの3人も中々ですね。
ただヒューガも出場しないそうですし、アオイとアカイはジャパンカップの怪我から回復したてだと聞いております」

クライフォート「そしてそこに居るジュン・ミスギもテクニックは素晴らしい物がありますが…それだけです。
所詮はプロサッカーに縁の無い日本育ちの選手。既にアヤックスの一軍でプレイしている俺の敵ではありません」

三杉「………」

いきなり慇懃無礼になった二人の発言に記者達はどよめき、同席している三杉は目を冷たく光らせる。
更にクライフォートは立ち上がって腕を広げ、黙り込んでしまった記者達にスピーチをする様に堂々と宣言をした。

クライフォート「今のやり取りを聞いて皆さんはどんな感想を抱いたでしょうか?自信過剰、大言壮語、無礼千万…
そう言った単語で集約できる感想でしょう。3年前フランス国際Jrユース大会を制した日本を侮ったら後悔するぞ…と。
しかし明日その思いは裏切られ、今我々が言った事はただのシンプルな事実であったと理解出来るでしょう。
我々オランダユースは全日本ユースを敬意を持って大差で倒しますので、一方的な虐殺ゲームをぜひぜひお楽しみ下さい」

359 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 15:52:43 ID:kMe4/qku
ザワザワザワ…

記者達「(な、なんて傲慢な…)」「(いくら自信があってもそこまで言うか?)」「(監督もニコニコしてて咎めようともしないなんて!)」

スタッフ「で、ではオランダユースへの質問を終わりにします!続きまして全日本ユースへの質問をどうぞ!」

親善試合に来たとは思えない態度での大勝宣言に場内に不穏な空気が流れ始める。
それを敏感に察したスタッフによってオランダ側への質問時間は打ち切られ、日本側への質問が始まった。
だがスタッフの配慮も空しく記者達はオランダ側の態度に関した質問を我先にと飛ばす。

記者C「見上監督!今のオランダ側の発言をどう思いますか!」

見上「自信があると言う事でしょう。こちらにも自信はあります。自信の無いチーム同士で戦っても意味がありませんから」

記者D「しかし、実際に主力選手が何人も欠けているこの状態では勝利は難しいのでは…」

見上「戦力と勝率が落ちたのは事実です。それをなんとかするのが私の仕事です」

記者E「具体的にはどうするんですか?」

見上「それを今ここで言っては敵に塩を送ってしまうでしょう。明日まで秘密ですよ」

幸い見上は模範的な対応で上手く煙に巻き、自分やチームの立場を危うくする失言を一切しなかった。
それでも特ダネが欲しい記者達は今度は矛先を三杉に向ける。

記者A「三杉くん!クライフォートくんは君の事を格下だと思っている様だけど?」

三杉「その様ですね。実際に実績とコンディションから見れば
僕達全日本ユースはオランダユースにとってかませ犬にちょうど良いでしょう」

クライフォート「(ほう…)」

360 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 15:52:57 ID:kMe4/qku
記者B「そ、それは最初から勝利を諦めているって事!?」

三杉「全然違います。かませ犬にはかませ犬なりの戦い方があります。そして明日の試合に勝つ為に
まず必要な事は相手が格上だと認めておく事。次に格下らしく大物食いを狙いに行く事ですよ」

記者達「れ、冷静だ…」「流石貴公子、三杉淳」「こりゃあ良い記事になるぞ!」

クライフォート「(この程度の挑発には乗らないか。頭は良い様だな)」

三杉「ブライアン・クライフォート」

スクッ。

三杉もまた見上同様失言を避けたが、同時にマスコミ受けが良くなる味付けをしたコメントをした。
更に三杉はドラマ性を求めて先ほどのクライフォートに対抗する様に立ち上がりオランダ側を向く。

スクッ。

クライフォート「何かな?」

三杉「明日は良い試合にしよう」

クライフォート「…フフフ、それは勿論。我々サッカー選手はスポーツマンであると同時にエンターテイナーでもある。
明日はお客さん達を退屈させない試合にしよう…それがどんな結果であってもな」

ガシッ。

見上「(似た者同士だな)」

クラマー「(同類嫌悪で絶対に仲良くできない二人だな)」

冷笑に満ちた記者会見は両チームのキャプテンの握手で幕を閉じた。

361 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/24(水) 15:55:57 ID:kMe4/qku
いったんここまで。

362 :創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 01:23:31 ID:RMYY27zW
>>354
あねご・・・いつの間に
流石にキャプ翼2の2Pキャラといえようw

363 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/25(木) 22:15:17 ID:5aKhpk8M
〜東京都新宿区、国立霞ヶ丘陸上競技場〜

観客「頑張れ全日本ー!」「今度も勝てよー!」「傲慢なオランダの目に物を見せてやれ!」
「森崎と日向が居ないからって負けるなよ!」「三杉ー!クライフォートなんかに負けんな!」

放送「ジャパンカップに続き今日も超満員のここ国立霞ヶ丘陸上競技場からお茶の間の皆様にお届けします!
今日の相手は前日の記者会見で大胆極まる大勝宣言をぶち上げたオランダユース!
森崎くんと日向くんを欠いている全日本ユースもここまで言われては負けられません!」

試合当日の会場は雨が降りそうな曇り具合だったにも関わらず盛況だった。
世界への夢を見せてくれたこの世代の日本代表がバカにされた事でオランダユースに対する敵意は高く、
森崎と(マスコミはヒューガーに関わろうとしないので勝手な推測が飛び交っている)日向が
居なくても全日本ユースの勝利を期待していた。

だが現場レベルではそう楽観的にはなれなかった。
全日本ユースのミーティングの空気は真剣そのもので、誰もがピリピリした表情になっていた。

見上「作戦は以上だ。苦しく不利な戦いになるだろうが、そういう時こそ本当の強さが問われるぞ」

全日本メンバー『はいっ!!』

若島津「(こんな形でスタメンが回ってくるとはな…だが、作戦通りやればきっと無失点に抑えきれる!)」

中山「(森崎が負傷したのは俺が何の役にも立っていなかったせいもある。今日こそは…!)」

葵「(ハンブルグ戦では完全にチームに迷惑をかけちゃった。ここで挽回だ!)」

三杉「(オランダユースの戦力はしっかりと分析した。逆に彼らは僕らを侮って油断している。そこに勝機はある)」

主力抜きで強豪相手に何処まで出来るのか。その答えが間も無く出ようとしている。

364 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/25(木) 22:15:35 ID:5aKhpk8M
全日本ユース 5−3−2
−−−−−
−J−H− J政夫 H和夫
−−−−−
F−I−G F中里 I三杉 G葵
−−−−−
−E−D− E早田 D赤井
−ACB− A石崎 C次藤 B中山
−−@−− @若島津

オランダユース 4−3−3
J−H−F Jカイザー Hイスラス Fレンセンブリンク
−−−−−
−−−−−
G−I−E Gクリスマン Iクライフォート Eスルバラン
−−−−−
A−−−B Aオーゴ Bキクサリ
−C−D− Cリブタ Dディック
−−@−− @ドールマン

365 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/25(木) 22:16:36 ID:5aKhpk8M
いったんここまで。
さて、試合展開の詳細を決めなくては…

366 :創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 23:20:52 ID:DCfswkJk
ここからが本当の地獄だ……

367 :2 ◆vD5srW.8hU :2010/03/25(木) 23:52:48 ID:5aKhpk8M
中途半端に書くよりも今夜はここまでとします。
また明日お会いしましょう。



今日のキャプ森に関係ない事。
初めて闘神伝をプレイした時の様な胸のドキドキをもう一度味わいたい…

368 :創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 00:00:13 ID:yc86iG4C
闘神伝2を二晩ぶっ通しで対戦し続けたあの若かりし日よ…

369 :創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 02:32:08 ID:R6266FAs
エリス「2ねいさんのバカー!」

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