キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【マラカナンで】キャプテン森崎46【釈迦寝ポーズ】

1 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/02/12(水) 00:30:09 ID:Js/5v1fo
キャプテン森崎は、高橋陽一氏作のサッカー漫画「キャプテン翼」の二次創作です。
大空翼に代わって主人公になった森崎有三を読者の投票によって操作していき、
他のキャラクター達と交流を深めながらサッカー選手として大成するのが目的の
読者参加型企画です。いわゆるゲームブックを想像して頂ければ分かり易いかも。

基本は毎回出る選択肢の中から読者が投票によってどれかひとつを選ぶ事によって
森崎の各数値が上下したり結果が分岐し、その結果によって森崎が活躍したり
しなかったりして物語が進んでいく…といった展開です。例えば敵にシュートを撃たれたら、
森崎の能力値+ある程度のランダム要素によってゴールを守れたり守れなかったりします。

投票や判定では2ch式(注:似ているだけで2chとは別サーバー)の掲示板で
ID付の投票書き込みを行ったりスクリプトでカードやダイスを引いてもらったりします。

過去スレのログはこちらのまとめページで見られます↓
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/11.html

ミス指摘、質問以外の雑談は下のURLの雑談スレでお願いします。
本スレでも更新毎に30レス程度までの反応レスなら問題無しとしています。
尚、30レスを超え雑談スレへの誘導が始まったら速やかに誘導に従って下さい。それがルールです。
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1391137269/
2ちゃんねるとは別の場所の板なので、ブラウザによっては外部板登録が必要です。
なんらかの理由で雑談スレが落ちている時は、本スレでも遠慮なく雑談をどうぞ。

37 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/05(水) 00:48:16 ID:6H9bjZ/Q
フライハイト「今こそ雨の力を借りる時だ!水よ!風よ!ドイツに勝利を〜〜〜っ!!」

グワァアアアアアアアアアアアアアアッ!!

放送「ドトールくんタックルに行く…しかしかわされた!そしてフライハイトくんが足を振り上げたァアア!!」

ゲルティス「(ウォッシャードライブ…雨による摩擦と下方向へのベクトルを
計算し尽くし落下力に上乗せした強化版ドライブシュート)」

バッギュルゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!!

直後に放たれたフライハイトのウォッシャードライブ。

放送「撃ったァアアアアアアアアアアアアアア!!フライハイトくんのウォッシャードライブ!」

ドイツメンバー「いけェエエエエエ!!」「決まれーーーっ!」

ブラジルメンバー「ゲ、ゲルティス!」「なんとかしてくれー!!」

ゲルティス「(このシュートのデータは日本戦から取ってある。コース予測…成功!)」

バッ!バシィイイイイッ!!
ズルッ…ポンポンポン…

フライハイト「な、なにィイイ!?」

ゲルティス「(…!?雨のせいでグリップ難度が上がっている!)」

ピィイイイッ!

これはゲルティスはキャッチは出来なかったものの、ゴールバーの上に弾く事には成功した。
無論、ドイツ相手にコーナーキックを与えるのは命拾いではなく次なるピンチである。

38 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/06(木) 01:04:41 ID:MIGFJ3z+
観客「や、やったァ!弾いた!」「コーナーか…命拾いしたぜ」「バカ野郎!何が命拾いだ!」
「忘れたのか、ドイツにはコーナーキックのスペシャリストが居るんだぞ!」「げっ!ヤバい!?」

ルディ「(くっ、ウォッシャードライブも防がれたか!だがコーナーなら…!)」

ロベルト「(あれ?あれ?なんかヤバい?滅茶苦茶撃たれまくってるぞ?)」

放送「ゲルティスくん弾いたァ!ボールはゴールバーを超えた!コーナーキックです!
通常なら命拾いした、と一息つける所ですがドイツユース相手にはそうはならない!それは…」

ダダダッ!

カペロマン「来たな!とうとう俺の本領発揮だぜ!」

放送「ドイツにはこの人、テオドール・カペロマンくんが居るからです!
サイドからのスナイパーたる彼はコーナーキックをもっとも得意とし、
彼のトレードマークのサイドワインダーはコーナーキックから真価を発揮するのです!
試合は間もなく約3分間と表示されたロスタイムに突入しようとしています!
ブラジル、耐えきれるか!?怒涛のシュートラッシュを凌ぎきれるのか〜っ!!」

ブラジルメンバー「くそっ!」「配置を急げ!」「こんな土壇場でやられて堪るか!」

この試合初めてコーナーキックと言う大チャンスをドイツに与えてしまったブラジルは
大急ぎでサイドワインダーに備えようとしていたが、その際守備の要である
ディウセウは同じく守護神たるゲルティスの傍に駆け寄り小声で問いていた。

ディウセウ「ゲルティス。おめえ、まだやれるか?」

ディウセウには分かっていた。ドイツの高火力の嵐に晒され続けた自分もゲルティスも限界が近く、
間もなく動きが鈍り出す事を。その瞬間をドイツに突かれたら失点してしまうであろう事を。

ゲルティス「(体力残量確認…完了)」

39 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/06(木) 01:06:24 ID:MIGFJ3z+
スッ。

ゲルティスは口では答えず指を2本上げただけだった。それで十分だった。

ディウセウ「(後2回だけか…)分かった!後1回、オラが何とかする!」

ピィイイッ!

放送「ロスタイム突入と同時にコーナーキック!カペロマンくんが走り…サイドワインダーだァ!」

グワァアアアアアアアアアアアアッ!!

カペロマン「唸れェ!サイドワインダー!!」

ブワッギュォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
ギュインギュインギュインギュイン!!

マウリシオ「くそーっ!」

ジェトーリオ「だああっ!なんでこんなに曲がるのさ!」

ディウセウ「でえじょうぶだ!オラに…任せろーっ!」

バッ!
ブゴワァアアアアアアアアアッ!!

カペロマン「くっ!悪あがきしやがって!」

ディウセウ「ふぐ…(ダメだ、トラップできねえ…!)」

バーン!

40 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/06(木) 01:07:46 ID:MIGFJ3z+
放送「ふ、防いだ!ディウセウくんがまたしてもファインプレイ!…あああっ!?」

ディウセウは残り少ない体力と気力を注ぎ込み、顔面ブロックでサイドワインダーを弾いてみせた。
だが彼の献身的なディフェンスを嘲笑うかの様にボールはブラジルにとって一番嫌な場所に転がって行った。

ダダダッ!                             ダダダッ!

ブラジルメンバー「こ、今度はどこ…げえっ!?」「なんでそっちなんだよーーっ!?」

シュナイダー「決めるぞフライハイト!」

フライハイト「任せろシュナイダー!」

シュナイダーとフライハイトの二人の前である。

カルロス「(くっ…だが、もうネオファイヤーを撃てるとは…いや違う!あの二人には!)」

グワアアアアアッ!                      グワアアアアアッ!

放送「し、しかしこぼれ球はシュナイダーくんとフライハイトくんの前へーーーっ!天はブラジルを見離したのか!?」

アマラウ「ええい、今度はこれかよ!ディウセウ…はダウンか。俺がやるしかない!」

ゲルティス「(ファイヤードライブの確率95%。シュートコース算出…)」

シュナイダー「 F I R E ! ! 」         フライハイト「 D R I V E ! 」

バギュゥゥルゥウウウウウウウウウウウッ!!!!

ドイツに残された最後の大技が、ディウセウと言う盾を失ったゲルティスに襲い掛かった。

ゲルティス「(失点の確率…52.1%)」

41 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/08(土) 00:06:37 ID:MmNRyPYQ
ブワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

放送「出た〜〜〜っ!!ファイヤードライブだーーーーっ!!!」

ファイヤーショットとドライブシュートの力が同時に加わったファイヤードライブ。
それはファイヤーショットの強さと速さ、ドライブシュートの上昇からの急降下、
そしてツインシュートらしく幾重もの分裂を兼ね揃えた驚異のシュートである。

ドガアアアッ!

アマラウ「ぐわああああっ!!」

ドトール「アマラウーッ!」

ディウセウの代わりを果たすべく勇敢に飛び込んだアマラウだったが
彼には残酷な程に荷が重すぎ、何の役にも立たずにあっさり宙を舞う羽目になった。

この運命の瞬間を最も長く感じたのは誰だったか。
それはこのドイツの切り札をたった一人で止めなくてはいけないゲルティスだった。

ゲルティス「………」

機械の様に冷徹な表情に、集中力と緊迫感による感情が籠もっていく。
超高速で急降下してくるボールの雲を見据える瞳の中で、一つの決意が芽生える。

ゲルティス「(キャッチと反応の両立は至難の業。ドイツユースの体力、気力の
残量を考慮すれば警戒すべきシュートはこれが最後…)

0.01秒単位の判断が問われる世界で彼は決断した。キャッチはしなくていい、ゴールに入れさせなければそれでいいと。

42 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/08(土) 00:07:57 ID:MmNRyPYQ
ゲルティス「ハァアアアアッ!!」

バッ!

それは、彼らしくない不恰好なセービングだった。
黒髪、黒肌、そしてユニフォームも黒が基調の彼がまるで幻影の様に素早く動き、
何時の間にかキャッチに成功している為ダークイリュージョンと名付けられたセービングの素早さは発揮していたが
横っ飛びで飛びつくのではなくサイドステップした位置から前に向かってのジャンプ。
割り出したシュートコースに伸びている筈の両腕も左右に広く開かれていた。

森崎「(あれは…!)」

森崎にはすぐその狙いが分かった。ボールの分裂の見切りが必要になるキャッチを完全に諦め、それよりも
予測したシュートコースにいち早く陣取り可能な限り己の体で覆い尽くし、全身の何処かに当たればいいと言う行動。

ボグォオオオオオッ!!

ゲルティス「グァッ…!」

そしてボールはゲルティスの胸にぶち当たった。
腹ならばまだ体をくの字に曲げて衝撃を逃がす事が出来るが、胸は曲げられない。
衝撃を逃がしたかったら後ろに倒れ、ゴールを許すしかない。

ゲルティス「………!」

ズズッ…

だがゲルティスは倒れなかった。胸に走る激痛と息を吐き出させられる苦しみに耐え、
震える足をスパイクで地面に突き刺し、筋肉を総動員してなぎ倒される事を拒否した。

43 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/08(土) 00:09:22 ID:MmNRyPYQ
バァアアアアアアアアアアアアーーン!
ズサッ…

彼の努力は報われた。勢いよくボールを跳ね上げる事に成功するその瞬間に初めて彼は自分が膝をつく事を許した。
彼の顔は負担と疲労で汗の洪水となっていたが、その瞳は勝利を確信して光っていた。

シュナイダー「な…なにィ!?」

フライハイト「そ…そんなァ…」

ズサッ…ドサッ…

そして彼の判断通り、ドイツはもう限界だった。体力をほぼ使い果たしたシュナイダーは膝をつき、
彼以上に疲労していたフライハイトは尻もちをついてしまった。

ドイツメンバー「ば、馬鹿な!?」「ウソだろ…」「なんで、なんで…」

ミューラー「くそっ!」

ダダダダッ!

ここまでやったのに、最後の大技まで出したのに決まらないのか?もうこれ以上は…
そんな気持ちがシュナイダーとフライハイトのみならず、ドイツユースのほぼ全般に広がる。
元々は心が折れそうな所を雨と言うハプニングで持ち直した士気であり、
既に限界を超えて戦っていた所に二人の主力選手の切り札が防がれたショックは大きすぎた。

だがそんなドイツにも例外は居た。

ポブルセン「ウォラァアアアアアアアアアアアア!!」

バッ!

44 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/08(土) 00:10:25 ID:MmNRyPYQ
ドイツメンバー『ぽ、ポブルセン!?』

ブラジルメンバー「くそっ、まだかよ!?」「いい加減にしろーっ!」

ポブルセンはこぼれ球に反応した。怪我を押した上での激戦で彼の疲労はシュナイダー達と比べても
遜色がない程だったが、みなぎる負の感情が足の痙攣も破裂しそうな心肺も無視させていた。
また彼だけはエースのシュートが防がれたショックを感じず、むしろざまを見ろとすら思い、己の手柄のチャンスと見なした。
味方を信じると言う概念がなく極めて自己中心的な彼の性格が皮肉にもドイツに息を吹き返させようとしていたのだ。

シュナイダー「………!」

それは未だ立つ事が出来ないシュナイダーも同様であり、なんとか立ち上がらねばと言う
焦りに支配されていた彼の頭を冷やし、周りを観察する余裕を与えた。

そして彼は見た。
サイドワインダーを顔面で防いだ為にグロッギーになって立ち上がれないディウセウの姿を。
大量の汗をしたたらせ、ガクガク震える膝を必死に叱咤しているゲルティスの姿を。
最早この二人に頼れなくなった為とにかくボールの確保しか考えられない他のブラジル選手達の姿を。

シュナイダー「押し込め!ブラジルはボロボロだ!」

ドイツメンバー『!!!』

シュナイダー「俺たち以上にだ!誰でもいい、押し込めーーーっ!!」

ブラジルメンバー『!!!』

シュナイダーはストライカーとして自分が決めるのではなく、キャプテンとして誰でもいいから決めろと檄を飛ばした。

カルロス「くっ…シュナイダーめ…!」

それはこぼれ球に追いつこうと走り回りながらも運悪くプレイに絡めないでいるカルロスが最もやって欲しくない事だった。

45 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/14(金) 21:19:23 ID:RsHIX4qs
放送「ふ、防いだーーーっ!!ファイヤードライブをゲルティスくんがなんとかセーブ!
これで今度こそ命拾い…ではないっ!?ポブルセンくんがねじこみに…」

ポブルセン「ァアアアアアアアアアアアアア!!」

バッ!

そんなシュナイダーの激がポブルセンには聞こえたか、聞こえなかったか?
どちらにしても彼の意思には影響がなかった事は間違いない。
彼は足の痛みも焼け付く様に重く苦しい息も全て無視しボールに向かって
足を伸ばし、強引で不恰好なボレーシュートを撃とうとした。

ドトール「くぉっ!」

バッ!
ボコォン!

ポブルセン「キサマァアア!」

しかしこの時はドトールの必死のクリアがかろうじて割って入る事に成功し、ボールをこぼす事に成功した。
ただしそれにホッとしている暇はブラジルには与えられない。両チーム共最後の執念でボールに詰め寄ろうとしていたからである。

カペロマン「うおおおっ!」

グワアアアアッ!
バッゴォオオオオオオ!!

放送「ポブルセンくんのボレーシュート…はドトールくんが阻止!しかしカペロマンくんが走る!」

46 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/14(金) 21:20:38 ID:RsHIX4qs
そしてこの一刻千金の場面でいち早くこぼれ球にかけこみ足を振り上げたのはカペロマンだった。
最早サイドに居る意味などないと割り切り、最後の力でPA内から強引にサイドワインダーを放ったのだった。

ギュイギュイ…!

ゲルティス「………!!」

そんな近距離から放たれたそのシュートは普段の派手な横揺れもカーブも鳴りを潜め、
純粋な威力もカペロマンの体力切れで落ちていたが、同じく体力が尽きそうになっていた上に
ファイヤードライブのセーブ直後で体勢を整えきれていなかった今のゲルティスには十分な脅威だった。

ゲルティス「ハァアアアア…!」

バッ!
バシィイイイッ!
ガコォオオオン…

カペロマン「嘘だろ!?」

それでもゲルティスは咄嗟に飛びつき、ボールを下から掬い上げて
ゴールバーに跳ね返させる事に成功した。だがその代償は彼に残された全てだった。

バゴォオンッ!!

ゲルティス「ッ!!」

ドサッ…

なりふり構わぬセービングの結果額からゴールポストに衝突してしまった彼は
体力の限界の上に頭部への衝撃で意識を朦朧とさせ、力なく崩れ落ちてしまった。
ゲルティスは最早まともなセーブは出来ないのは誰の目にも明らかだった。

47 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/14(金) 21:22:01 ID:RsHIX4qs
放送「サイドワインダー!ゲルティスくんこれも弾き…あああっ!?」

マーガス「もらったぁああああ!!」

バッ!

そして高い浮き球には当然それを得意とするマーガスが飛びつく。
普段は威力のなさ故に彼自身が得点を狙う事はほとんど無いが、
ディウセウとゲルティス両方がダウンしている現状では難なく決められる。

アマラウ「やらねえよぉおおおお!!」

バッ!
ガコッガココッ!!

マーガス・アマラウ『ぐあっ!』

ポーーーーーン!

ここでブラジルの命綱となったのはアマラウだった。
マーガスと同じく高い浮き球に一目散に飛びついた彼は互角の衝突を演じ、
幸運にもルーズボールをペナルティエリアの外に向ける事に成功した。

放送「マーガスくん、とアマラウくんが激突!こぼれ球は…ペナルティエリアの外へーーーっ!!」

ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

あまりのハイペースに置いて行かれそうになっていた実況と具体的に喋る前に
騒ぐ事しか出来なかった観客が喜びに沸き立つ。とうとうピンチを脱出できそうだと。

48 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/14(金) 21:23:10 ID:RsHIX4qs
シュナイダー「!!!」

それは未だ立ち上がれていないシュナイダーにとっては悪夢の光景だった。

シュナイダー「(そんな…あれだけ撃ったのに決まらないのか…!?
ブラジルの守備陣を完全に粉砕したのに、後たった一発でいいのに、
その最後の一発を撃てる前に試合が終わってしまう………!!)

彼の体感時間が極めて遅くなり、周囲の現状を一瞬で理解させてくれる。
彼の高い集中力と観察力がなせる業だが、この時ばかりは拷問にしかならなかった。
何処に希望を探そうとしても、絶望ばかり見えてくるからだ。

シュナイダー「(フライハイトは…立ってはいるが、もう走れていない…歩いているだけだ…
ポブルセンは…本人は疲労を自覚していなくても、体の動きそのものはまるでスローモーションだ…
カペロマンは…ここも変わらない、痙攣した足で走ろうとしても到底間に合わない…
そもそもこの3人はもうマトモなシュートは撃てない…マーガスは!?あいつならまだ余力が…
ダメだ…!アマラウともつれて倒れ込んでいる!間に合わない、間に合わない、間に合わない!!)」

ブラジルの守備陣は完全に粉砕された。だがドイツにも最早攻撃陣が残っていなかった。
その現実が時間切れの敗北と言う悪夢を刻一刻とシュナイダーの眼前に近づける。
それでも尚諦めず、諦められず、シュナイダーはボールの行方に視線を戻したがそこにも絶望しかなかった。

ズシャシャシャーッ!
ガガッゴッガッ!
バシィーーーーーーーーーン!!

カルツ「(ああっ…!すまんシュナイダー、すまん皆…!)」

シュナイダー「(ダメ…なのか…?)」

こぼれ球をフォローしたカルツは、ネイ、トニーニョ、サンタマリアの3人に囲まれ、突破を阻まれ、
ボールを更に後方に向けて高く跳ね上げられていた。最早カルツの突進すらなくなったのだ。

49 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/14(金) 21:24:44 ID:RsHIX4qs
シュナイダー「!!!?」

だが更にボールの行方を目で追った時、シュナイダーはまるで予想していなかった物を見た。

ジェトーリオ「ふーっ!やーっとこれで終わりっと」

今度のこぼれ球に一番近かったブラジルユースの選手はジェトーリオ。上空から落ちてくるボールを
見上げるその表情は安堵と歓喜に満ちていた。やっとこれで終わる、やっとこれで勝てるのだと。

カルロス「ジェトーリオ!まだだ、前を見ろーーーっ!!」

ジェトーリオ「へ?」

ミューラー「ウォオオオオオオオオオオオ!!!」

バッ!バッ!

だがまだ終わりではなかった。ジェトーリオがそれに気付いた時には遅すぎた。

ジェトーリオ「えっうそっちょっと待ってちょっと待ってぇえええええ!!?」

バコォオオン!ドゴオッ!

ジェトーリオ「ぐべああっ!」

カルロス「くっ!くそォ!」

グルッ!ダダダッ!

ミューラー「シュナイダー!立ちやがれ、この愚図野郎!立ってゴールを決めろォオオ!!」

シュナイダーが見た物。それはオーバーラップしていたミューラーが自分の頭上に向けてボールをヘディングで跳ね返した所だった。

50 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:05:10 ID:U2tcOuNY
放送「あああああっ!!?ぼ、ボールが…ハイボールが、再びブラジルゴール前へぇええええ!!!」

観客「なんだとォーーーーッ!!?」「笛、笛はどうした!」「もうタイムアップだろ!」
「シュナイダーは倒れてい「そのまま座ってろ立つ「ゲルティス立てよ!」ウセウはもうダメか!?」
「クリア出来る奴が誰も「いやーーーーー!!」たれる撃たれるーっ!!」「神様助けて!」

絶対絶命。あれほど苦労して奪ったリードが最後の最後で不意にされてしまう悲劇。
実況も観客も遠慮なく悲鳴を上げに上げたが、それらはシュナイダーには殆ど聞こえなかった。

シュナイダー「(この高さ…ヘディングでは届かない、オーバーヘッドキックではなくては…なのに!)」

今の彼の意識を占めていたのは彼の上空に向かってくるボール、そして。

シュナイダー「(…くそっ…足が、足がっ!)」

いくら気力を振り絞っても悲鳴ばかり上げる己の体だった。

シュナイダー「(動け、俺の足!もっと速くだ!)」

このまま彼が蹴らずに見送ったらこのボールはわずかにゴールポストの横を逸れていくだろう。

シュナイダー「(19年間共に走り続けて来たじゃないか!こういう時の為に!世界を獲る為に!)」

故にどうしても立ち上がらなければならない。彼が立って、跳んで、蹴らなければ全てが終わりなのだ。

シュナイダー「(後1回だけ!後1回だけでいいんだ!それで休ませてやるから!)」

なのに彼の足は彼の叱咤に応えてくれない。立ち上がりつつは居る。だがそれが遅い。
これでも間に合うのか?もう絶対に間に合わないのではないか…

諦めたい。もう休みたい。
この試合何度も脳裏を掠めた思いが彼の闘志をいよいよ消そうとする。

51 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:09:23 ID:U2tcOuNY
シュナイダー「(…よし…ジャンプ、出来る!)」

彼の闘志は消えなかった。蝋燭の様に儚くはなっていたが、それでも苦難の荒波にかき消される事はなかった。

シュナイダー「(膝を曲げて…跳ぶんだ)」

バッ!

彼は諦めなかった。間に合わないかも知れない、と言う思いを焼き尽くした。
そんな事を考えている暇があったら動け、と言う彼らしい実にシンプルなロジックで。

シュナイダー「(体を回せ。足を振れ)」

グワッ…

それはオーバーヘッドキックと言うにはあまりに弱く穏やか過ぎた。
ただ形だけそうなっているだけで、これをシュートと言い張るのはストライカーの名折れになるだろう。
それでもいい。ただコースを少し変え、ボールをゴールの枠に誘導すればそれでいい。
それで十分だと分かっていたシュナイダーは正確に動きタイミングと打点を合わせる事に集中した。

ジワッ…

シュナイダー「(ぐっ…目が…!気にするな、もう関係ない!)」

間の悪い事に汗が目に流れ込みシュナイダーは目を瞑る事を余儀なくされたが、
それでも彼は構う事なく足を振り続けた。どうせもう見えようが見えまいが関係ない。

シュナイダー「(まだかっ…ボールを、蹴った感触は…まだか…!?)」

永遠に感じられる暗闇の刹那、シュナイダーは最後まで不安と戦い続けた。
結局間に合わなかったかも知れない。ひょっとしたら早過ぎたかも知れない。
飛び上がる地点を間違えたかも知れない。無数の不安が彼を苦しめ続ける。

52 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:12:39 ID:U2tcOuNY
そしてそれが終わった時、シュナイダーは確かに感じた。

ガスゥウウウウッ!

シュナイダー「!!!」

それは確かにボールを蹴った感触だった。思ったよりも重く強く感じたそれは
間違いなくボールの芯を捕らえているのが彼には分かった。これなら狙い通りに飛ぶと。

シュナイダー「(やった!…あ、あれ…)」

だが彼にはそれ以外の事は分からなかった。暗闇の中で何も見えず、極度の集中の弊害で何も聞こえず、
そして限界を超えた疲労の代償か今や触感すらなくしていた。

シュナイダー「(こ、これは…俺は、気絶しようとしている…?)」

体感時間ではそろそろ地面に落ちていて良い筈。なのに何時までも何処までも
落ち続けていく感覚が終わらない。彼の意識は自分が気を失おうとしている事を認識した。

シュナイダー「(………ダメだっ!!)」

シュナイダーはこれにも抗った。

シュナイダー「(まだ延長戦があるんだ!俺のゴールで獲得した延長戦!
俺はその延長戦を制し、決勝戦に進み、日本を倒し…世界を獲るんだ!!)」

彼は最後の最後まで諦めなかった。戦い続けた。

シュナイダー「(俺は…俺はまだ戦える!戦うぞっ!)」

不安と絶望の闇を払い続けた彼の炎は同点ゴールで勢いを取り戻し、無意識の海すら蒸発させた。
誰にも知られる事のない、彼自身良く覚えていないであろう孤独な戦いに勝った。

53 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:17:07 ID:U2tcOuNY
ガバッ!

シュナイダー「俺は…俺は、まだ…!」

カルツ「シュナイダーちゃん…」

彼が意識を失いかけていたのはほんの数秒間だった。
最初に彼が見たのは涙を流すカルツの顔だった。

シュナイダー「(どうしたカルツ…嬉し泣きだなんて、案外涙もろい奴だな)げほっ、げほっ」

シュナイダーはカルツに声をかけようとしたが出てくるのは咳だけだった。
同点ゴールくらいで喜ぶな、まだ試合はこれからだと言おうとしたが肺と喉と口が言う事を聞かなかった。

フライハイト「シュナイダー…大丈夫か…」

シュナイダー「(くそ、喋れん…ん?フライハイト、お前もか…?)」

ドサッ…

シュナイダー「(ポブルセン?なんだ、何故倒れる…)」

彼が何かおかしいと気づいたのはフライハイトも涙を浮かべ、更にポブルセンが白目を剥いて倒れるのを見てからだった。

ドイツメンバー「シュナイダー…」「すまん…」「俺たちが、何か出来ていれば…」

シュナイダー「(なんだ…何故謝るんだ。なんで皆泣いているんだ?)」

ブラジルメンバー「ヒャッハー!やったぜ!」「キツかったー!」「終わった終わった。ふぅ」

ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

54 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:24:36 ID:U2tcOuNY
シュナイダー「(なんだ!?何故だ…何故ブラジルが喜んでいるんだ!?)」

間も無く彼は気付いた。過酷な現実に。だがそれを受け入れられなかった。
それでも首は本能的に動いてしまう。受け入れ難い現実を確認する為に。






ブラジル 3−2 ドイツ






電光掲示板には確かにこう書かれていた。

シュナイダー「………」

いくら見ていてもそれが変わる事はなかった。時計も試合終了を示していた。

55 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:26:00 ID:U2tcOuNY
徐々に記憶が蘇ってくる。力のない自分が蹴ったにしてはあまりに蹴り応えの
あり過ぎたボール。あれは軽くボールを蹴った感触ではなかった。

そう、あれは。

ザッ。

カルロス「大丈夫か?」

シュナイダー「…ああ、大丈夫だ。そして…お前だな?」

カルロス「ん?…ああ。かろうじて間に合った」

シュナイダー「そうか………」

あれは誰かのクリアに押し負けた感触だった。
シュナイダーとカルロスはオーバーヘッドキックでぶつかり合い、カルロスに押し負けたのだ。

今更の様に思い出す。ミューラーがボールを跳ね返した瞬間、カルロスも走り出していたのを。

シュナイダー「……………俺達は、負けたのか」

この瞬間シュナイダーは戦うのを止め、諦めた。涙は出てこなかった。

56 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/18(火) 06:29:58 ID:U2tcOuNY
と言う訳で、やっとブラジル対ドイツが終わりました。
WY編連載時から17年…ついに「こうあるべきだろう」と言う展開全てをつぎ込む事が出来ました。

次はとうとうブラジル戦です。コインブラ抜きでも十分にラスボスを張れる実力に加え、
まさかの2点差をつけられても逆転出来る主人公チームの様な強さも併せ持つ、
間違いなくキャプ森シリーズ最強の敵との対戦となります。乞うご期待!

57 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/19(水) 23:41:55 ID:PdWPAWc6
ピッ、ピッ、ピィイイイイイイイイイイイイイイイ!!

放送「しっ…試合終了〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!ここでこの死闘にホイッスル!
最後は両チームのキャプテン同士のオーバーヘッドのぶつかりあいをカルロスくんが制し、
最後まで逆転ゴールを守りきる事に成功しました!3−2、3−2です!
絶望の2点差を見事大逆転し、最後の猛攻撃を耐えきった我らがブラジルユースの大勝利です!!!」

ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

観客「やった!」「勝った!」「俺達が勝ったんだ!」「ブラジルユース最高!」「ヒヤヒヤさせやがって!」
「心臓飛び出るかと思った…」「ちょっと苦戦し過ぎたぞ!次はもうちょっと丁寧にやれ!」
「カルロスよくやったー!」「お前こそセレソンのキャプテンに相応しい!」「ザガロ!もう1点くらい取っとけ!」
「よく守り切ったディウセウ!」「ゲルティスは大丈夫なのか!?」「怪我人出ていないだろーな…」

ドイツサポーター「そ、そんなァ…」「ど、どうしてだよ!」「あれだけ頑張ったのに…」「後ほんのちょっと…だった…」

ドイツの最後の猛攻撃を耐えきり、最後はキャプテン同士のぶつかり合いを制して守り切った。
この劇的な勝ち方に観客のテンションは天を突き喉も枯れよとばかりに大歓声を爆発させる。
圧倒的少数派のドイツサポーターがさめざめと泣いて嘆いても最早当人達にしか聞こえない程に。

そして全日本ユースの面々は戦慄の余り誰も口を開けないでいた。

石崎「………ぷはあっ!こ、腰が抜けるかと思った…」

皮きりになったのは詰まった息を吐き出した石崎の発言だった。

若林「ドイツが…負けた。あれ程の力を見せつけ、隠していた切り札まで使ったのに…負けた」

赤井「マジッすか…最後の攻めは決まると思ったのに、絶対延長だと思ったのに」

中里「あれを凌ぎきるとは…ブラジルユース、恐るべし!」

58 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/19(水) 23:45:34 ID:PdWPAWc6
早田「畜生、なんだってんだ。俺達が散々苦労して引き分けたドイツに勝っちまいやがって」

次藤「しかもその勝ち方が曲者ばい。2点リードば引っくり返すとは…」

葵「あの時もう殆どドイツの勝ちじゃないかって思ったのに、信じられないですよ!」

岬「特筆すべきはあの時、殆ど焦りも怯えも見せなかった事だよ」

松山「精神力が半端ないじゃないか…あの観客の悲鳴でもペースを崩す事がなかったんだから」

三杉「確固たるゲームプランがあったお蔭でもあるが、それを信じ続けたのも凄いな」

中山「実力だけじゃない。知力も精神力もズバ抜けている…穴が殆ど見当たらない」

日向「しかもあのシュートラッシュ戦法は、森崎に対しても効果的だぞ」

翼「強いのは分かり切っていた。でも、ここまでだなんて…流石ブラジルとしか言い様がない」

森崎「(ちっ、どいつもこいつもビビリやがって。こういう時はなんと言うべきだ?)」

A 「怯えてんじゃねえ。俺達だってここまで勝ち上がってきたんだ!」激を飛ばす。
B 「だが、ブラジルにも弱点はある!そこを突けば勝てる!」ブラジルの弱点を言う(更に分岐)。
C 「攻撃、守備、スタミナ、戦術、メンタル。全てにおいて超一流だな」素直に褒める。
D 「上等じゃねえか。最強の敵を倒さないと最強とは認めてもらえないだろ」武者震いする。
E 「………ぐがっ。ん?終わったのか?で、どっちが勝った?」寝ていたフリをする。

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59 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/20(木) 20:45:30 ID:B9I/xQZ2
>B 「だが、ブラジルにも弱点はある!そこを突けば勝てる!」ブラジルの弱点を言う(更に分岐)。

全日本メンバー「な、なんだって!」「それは一体?」「(また何か変な事言うんじゃないだろうな…)」

チームメイト達が口々にブラジルの強さを認めていた矢先、森崎はブラジルにも弱点があると主張した。
彼を知る彼らが皆彼らしいと納得する言動であり、同時に今度は何を言い出すのか期待と不安を込めて注目した。
名案、奇策、迷走全てが入り混じった森崎の実績を鑑みた彼らの嘘偽りなき感情である。

翼「森崎。その弱点はなんだ?」

森崎「それは…」

A 「シューターは質より量な事だ。警戒すべきストライカーがカルロスしか居ない!」
B 「ポストプレイもダイレクトシュートも殆どしない事だ。地上戦に専念出来る!」
C 「絶対的なゲームメイカーが居ない事だ。船頭多くして船山に上る、の状態だ!」
D 「チーム全体がパスカットを苦手とする事だ。パスメインで戦うのが攻略の肝だ!」
E 「ブロッカーがディウセウしか居ない事だ。奴を削り倒せば得点しやすくなる!」
F 「ゲルティスの体力が尽きやすい事だ。奴を削り切ってしまえば俺達の勝ちだ!」

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60 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/21(金) 22:07:08 ID:B4hKHQ7Y
>D 「チーム全体がパスカットを苦手とする事だ。パスメインで戦うのが攻略の肝だ!」

ざわっ…

森崎の指摘にチームメイト達はどよめきながらも反論はしなかった。
こういうタイミングこそチャンスだと弁えている森崎は更に口火を切る。

森崎「俺はブラジルユースのスタメンクラスは全員良く知っている。奴らはどいつもこいつも
組織的にパスカットを狙うよりも俺が俺がでボールを奪いに行く方を得意としているんだ。
だからパスでペースを握られるとそれを遮断するのを苦手としている。ここが突くべき穴だ!」

翼「…彼らは別に組織プレイを軽視している訳でも出来ない訳でもないけど、
ただ単に個人技でゴリ押しした方が効率が良いからね。そのゴリ押しにこちらも個人技で
ぶつかり合うよりは、パスワークで対抗した方が戦い易くなるのは確かだろう」

ややあって頷き同意したのは、森崎同様ブラジルを良く知る翼だった。
犬猿の仲の二人があえて同意した事でチーム内にも肯定的な空気が広がっていく。

三杉「弱点と言える程大きな穴ではないけど、パスメインで戦うべきなのは間違いないね」

中山「攻め易くなるだけじゃない。ドイツがやった様にペース配分も出来る」

岬「シュートラッシュを食らわない為にも、遅攻を心がけていくのが良さそうだね」

松山「個人技で負けているならチームワークで補う。うん、当然だな!」

葵「流石です、森崎さん!」

61 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/21(金) 22:08:26 ID:B4hKHQ7Y
森崎「(ケチをつけてくる奴も居るが、一応は説き伏せられたな。これでいいだろう。
全く、ビビリ共が多いチームだとキャプテンも大変だぜ)」



*森崎チーム内支持率:74→75



キャプテンシーを発揮できたと満足した森崎だったが、ふと眼下のフィールドの様子が目に入る。
そこでは泣き濡れたドイツユースの選手達がブラジルユースの選手達とユニフォームを交換している所だった。

森崎「(結局ドイツとの再戦は無くなったか…おーおー派手に泣いてやがる。ん?)」

ポブルセンやミューラーなど非社交的な者達はその輪に混じろうとしていなかったが、
シュナイダーもまた自分のユニフォームを脱いでいなかった。
カルロスが自分のユニフォームを差し出していたが、何か話した後結局それを着直していた。

森崎「(シュナイダー………)」

シュナイダー「(モリサキ…すまない。約束は果たせなかった…マリー、お兄ちゃん、また負けちゃったよ…)」

自分に“世界の強さ”を始めて実感させた男が、自分以外の者に敗れて戦場を去る。
その光景は筆舌に尽くし難い複雑な感情を森崎の胸に呼び起した。

62 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/21(金) 22:09:45 ID:B4hKHQ7Y
カルロス「(そういう事か。ならば俺を恨んでくれ、シュナイダー。モリサキの首も俺が貰い受ける)」

シュナイダーとは対極的に今日の勝者であるカルロスはこの時勝利の喜びに打ち震えていた。
ドイツに勝ち決勝戦への切符を手にしたのも当然嬉しいが、人知れず彼はもう一つの勝利も味わっていた。

カルロス「(…そして…)」

コインブラ「……………」

それはベンチで静かに驚愕に固まっていたコインブラに対する勝利だった。

カルロス「(見たかコインブラ。勝ってみせたぞ!)」

コインブラ「………バカな」

カルロス「(これがセレソンの強さだ。これが俺達の強さだ。お前にも分かっただろう。
俺達が何の為に戦い、何を勝ち得たかを!俺は今日、ドイツだけでなくお前にも勝ってみせたぞ!)」

カルロス・サンターナ。ズバ抜けた強さを持つ通称“サッカーサイボーグ”。
実力だけでなく人格面でも定評がある彼は今、自分を圧倒した者に一泡吹かせ自信と誇りまで手にしていた。
全日本ユースが居るスタンドを見上げる彼はブラジルサッカー代表のキャプテンらしい力強い存在感に満ちていた。

カルロス「(さあ次は日本だ。モリサキ、ツバサ。今度は負けんぞ!)」

翼「(凄い気迫を感じる…そうだ、カルロスに取って俺は怨敵でもあるんだ)」

森崎「(リオカップの借りを返すって訳か?ケッ、返り討ちにしてやるぜ!)」

63 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/24(月) 23:24:26 ID:AkhnLW8Y
〜大会23日目〜

ブラジルとドイツの激闘の翌日、ブラジル国内は嵐の前の静けさと言うには既に些か騒がしかった。

大苦戦したものの無事決勝戦へコマを進め国民の期待に応えたブラジルユースへの応援の熱は高まるばかりで
早くも優勝の祝勝会を開く者、自分が戦う訳でもないのに全日本ユースの戦力分析を行う者、
決勝戦の展望を予想する者、勝った場合と負けた場合両方で世界のサッカーのあり方への影響を考察する者…
明後日に控えた決勝戦の待ち方は多岐に及んだが、ブラジル国民のほぼ全てがブラジルの勝利を願っていたのは間違いない。

では日本はブラジル国民にどう見られていたかと言うと、これまた十人十色だった。
所詮はアジアのチームが度重なる幸運で勝ち上がってきただけと豪語する者が居れば、
ドイツと引き分けた事を根拠にブラジルの方が戦力的に上だと主張する者も居り、
両チーム共奇しくも得点22失点3で勝ち上がっている為互角だと評価する者も居て、
果てには少数派ながら周りの顰蹙を浴びながら日本の方が有利だと分析する者まで居た。

いずれにせよかつてない程ブラジル、そして世界から注目される事となった日本サッカー。
日本国内では「流石にブラジルは無理だろう」派と「ここまで来たら優勝だ」派に二分され、
サッカーファンは勿論そうでない国民もマスコミも盛大に騒いでいたが
地球の反対側のブラジルまで応援に行ける者は流石に殆どいない。

〜同日の日本、成田空港〜

骨皮「はーい、点呼終了!それでは皆さん、一時解散としますが飛行機出発予定時間の1時間前には戻ってきてくださいね!」

その数少ない応援団は陽子と事前にやり取りをしており、日本が決勝戦に勝ち進んだ場合のみ
割安で買えるチケットを手配していた骨皮率いる数十人の集団だった。
その大部分は全日本ユースの選手達の元チームメイトや家族である。

南葛関係者達「いやー、本当に決勝戦まで行っちゃうなんてなあ」「ここまで来たんだ、ブラジルにだってきっと勝ち目がある」
「うう〜、なんか俺まで緊張してきちゃうよ…」「気持ちは分かるけど、私達は応援に専念するのが一番よ」

64 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/24(月) 23:25:27 ID:AkhnLW8Y
〜同日のブラジル、リオ州、全日本ユース宿舎〜

周囲が如何に騒いでいようとも、当事者達にはあまり関係ない。アウェーの立場なら尚の事である。
この日、全日本ユース宿舎では森崎が見上に会議室に呼び出されていた。そこに居るのは見上、井出、そして森崎だけだった。

森崎「お呼びですか、監督」

見上「うむ。既に用件は分かっているだろう?」

森崎「ええ、思えば長い付き合いですからね」

見上「結構だ。では井出、まずはブラジルユースの分析結果を見せろ」

井出「はい!」

言うまでもなく彼らの議題は決勝戦とその相手、ブラジルユースについて。
まずは敵戦力を正確に把握する為に井出が分析結果をホワイトボードに書き連ねていく。



ザガロ
突破力:B 得点力:A ボールカット:B ゴール前:B スタミナ:A
自分で持ち込むか、パスを受けるタイプのストライカー。撃たせる前に止めるのが一番。

サンタマリア
突破力:A 得点力:B ボールカット:B ゴール前:B スタミナ:B
個性派集団を鮮やかに使いこなす司令塔。CKは自分で撃って来る事もあるので注意。

カルロス
突破力:A 得点力:S ボールカット:A ゴール前:A スタミナ:A
自軍が一旦ボールを持てばどんな攻め方も出来るFW。これと言った対策を練る事が出来ない。

65 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/24(月) 23:26:58 ID:AkhnLW8Y
トニーニョ
突破力:A 得点力:A ボールカット:B ゴール前:B スタミナ:B
ネイとの連携が攻防両面で厄介極まりなく、またサンタマリアの代わりに司令塔になる事もある。

ネイ
突破力:S 得点力:B ボールカット:A ゴール前:C スタミナ:B
トニーニョと連携してくるファンタジスタ。一旦ボールを持たせたら取り返すのが非常に辛い。

マウリシオ
突破力:B 得点力:A ボールカット:B ゴール前:C スタミナ:B
伏兵的にシュートを撃って来る存在。守備力は大した事が無いのが救い。

ディウセウ
突破力:B 得点力:A ボールカット:A ゴール前:S スタミナ:A
ゴール前で穴の無い巨大な壁と化すばかりか、奪ったボールを自力で前線まで運ぶ事まで出来る。

アマラウ
突破力:C 得点力:D ボールカット:A ゴール前:A スタミナ:B
高い球に凄まじく強い跳ね返し屋。地上ではディウセウには劣るものの、それでも油断はならない。

ドトール
突破力:C 得点力:D ボールカット:A ゴール前:B スタミナ:B
低い球に強いだけでなく、凄く鋭いタックルまで武器とする。対抗するには凄腕のドリブラーが必要。

ジェトーリオ
突破力:A 得点力:B ボールカット:A ゴール前:B スタミナ:B
MF顔負けの攻撃力もさる事ながら、巧妙な反則ディフェンスが恐ろしい。接触は全力で避けるべき。

ゲルティス
セーブ力:S 一対一:A 飛び出し:A
超強力なシュートでさえキャッチしてしまう。出来れば一対一を挑みたい所。

66 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/24(月) 23:29:27 ID:AkhnLW8Y
見上「………さて。この分析を見てどう思う?」

森崎「そうですね…」

A 「総合的な戦力で見れば、俺達を上回っていると思いますね」
B 「いくらブラジルっつっても、誰もが何でも出来るって訳じゃないですね」
C 「殆どの連中が見慣れた顔ですね。今更特に思う事はありません」
D 「俺達全日本ユースの方が強い!そう断言できますよ俺は」

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67 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/27(木) 22:35:11 ID:iCDniYl6
>B 「いくらブラジルっつっても、誰もが何でも出来るって訳じゃないですね」

見上「…お前らしい感想だな。どんな強敵が相手でも、すぐに攻略法を考え始めるか」

森崎「だって、強いのは元から分かり切ってますから。
じゃあどこが弱い?って考えた方が時間を無駄にしないで済むでしょう?」

見上「その考え方は監督向きかも知れんな」

森崎「(これは褒められている…んだろうか?相変わらず分かり難いぜ)」

今までにない程高評価ばかりの分析結果を見せられた森崎だったが、最初に彼が注目したのは
如何にブラジルと言えども誰もがオールマイティーではなく、穴が存在する事だった。
それは勝ちに行くのが当然であり、その為の方法をさっさと考えるべきと言う彼らしさの表れである。

彼の返答に対し見上は特に表情を変えず、次の話題に移った。

見上「お前の言う通り、ブラジルユースの選手達でも出来る事と出来ない事がある。
明後日の試合ではそれにどう対抗するかが勝敗の分かれ目となるだろう。
だが一つ、ブラジルの選手達の殆どが出来る事でお前を大いに悩ませる事がある」

森崎「ん?殆どが出来て、俺を悩ませる………ああ。シュートですか」

見上「そうだ。ミューラーを疲弊させられたあの圧倒的な数の暴力。あれはお前に対しても有効だ。
以前より改善されたとは言え、スタミナがお前の弱点である事は変わりないのだからな。
私の見積もりでは、お前の体力は65分前後で底を尽くと予想している」

森崎「…じゃあ、前半か後半は若林に任せてフルタイム出場は諦めろとか言うんですか?」

井出「(あっちゃ〜、やっぱり森崎さん嫌がってるんだな。なんとかフィールダーとしておだてれば…?)」

68 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/27(木) 22:36:49 ID:iCDniYl6
次の話題は対ブラジル戦で間違いなく懸念事項となるであろうブラジルのシュートラッシュの事だった。
森崎の弱点がスタミナである事は最早有名であり、ブラジルユースの面々も去年のリオカップの時点で
それを突こうとしてきている。森崎もミューラーと同じ目に会わされたら似た末路を下るのは間違いない。

故に第二GKの若林の起用が現実的な選択肢として浮き上がってくるのだが、当然森崎としては面白くない。
井出もそれは予期しておりどう説得したものかと頭を悩ませていたが、彼の心配は杞憂に終わった。

見上「いや、お前はケガでもしない限りはフルタイム出場させる」

森崎「えっ?」

見上「途中でスタミナ切れした際は若林を投入するが、それはお前にフィールダーとして体力回復の
時間を与える為だ。今のお前なら息切れしていてもボールを預け捌かせる事なら出来るだろう。
後半の局面ならそれだけでも有り難い場面が十分起こり得る。そして延長戦以降に持ち込めれば
ブラジルの消耗次第ではあるがお前のGK復帰も視野に入れておく」

森崎「そりゃまた…俺にとっちゃ有り難いですが、なんでですかね?」

見上は最初から森崎をフルタイム出場させるつもりであり、スタメンGKも森崎のつもりだった。
若林の起用法もまるで森崎の当て馬と言われかねない使い方であり、何故ここまでするのかと森崎も訝しむ。

見上「理由は二つ…私のお前に対する二つの評価だ。一つ目はお前のセービングはペース配分を度外視すれば
この世代で世界一と評価している。例えば…そうだな、恐らく今大会最強のシュートであろう
ストラットのオムニゾーンシュートをどれ位の確率で防げるか統計を取ってみればお前が一番高い
セーブ率を出すだろう。ゲルティスよりも、ミューラーよりも、ヘルナンデスよりも、そして若林よりもな。
無論そんな統計を実際に取るのは不可能だから、あくまでも私のシミュレーションによる評価だがな。
よって出来るだけ長い時間お前をGKとして活用するのが勝利に繋がると見ているのだ」

森崎「はあ…(珍しく随分高評価してくるじゃないか)それでは二つ目の評価は?」

69 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/27(木) 22:37:58 ID:iCDniYl6
見上「二つ目は…お前の指揮能力、そして勝負運だ。お前はここまでキャプテンとして、正GKとして
日本に数々の勝利をもたらしてきた実績がある。この問題児集団をまとめる一番の問題児としてな」

森崎「…最後の一言のせいで全然褒められている気がしないんですが!?」

見上「とんでもない、嘘偽り無き賞賛だぞ。現にお前は私が現役時代どうやっても想像すら出来なかった
高みに辿り着いているのだ。世界一を争う舞台と言う高みにな。それを為し得たのはお前のガムシャラさ、
そしてお前が周囲に広めた実力主義と競争精神の賜物だ。そんなギスギスした世界の中でも
このチームはある種の絆と信頼で一つとなっている。不愉快でも醜くとも歪でも、それは強固な物となった。
森崎、お前はこの先も多くの敵を作り恨みを買い続けるだろう。だがそれでいい。それがお前の覇道だ。
今更打算無しの礼儀を身に着けたり野心が萎んだ大人になったお前など見たくはない」

森崎「………本っ当にコメントに困る褒め方を………」

井出「(こ、これって説得?なんだな?で、でも森崎さんは案外満更でもない…?)」

見上の思惑の原因は森崎に対する高評価だった。それも善し悪しをざっくばらんに言い放つ評価の仕方である。
歯に衣を着せない言い方に森崎のこめかみはひきつったが、今までの自分を的確に言い表されている自覚もあり
怒るメリットを見いだせず、やがてため息をついて受け流したが次の話題で更に大きく驚かされる。

森崎「はあ〜、分かりましたよ。で、俺がスタメンGKとして、残りはどうするんですか?」

見上「それだが、一つ提案がある。既に井出や片桐くんとも話し合って決めた案だ」

森崎「ん?なんです?」

見上「この試合のフォーメーションとスタメン決定は、お前に託そうと思う。やってみるか?」

森崎「えっ!?」

70 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/27(木) 22:39:00 ID:iCDniYl6
見上は何と森崎に自由にフィールダー達を選ばせる事を提案してきた。
今まで基本は見上が決め、森崎の希望や意見もある程度は取り入れると言う形でチームを運営してきた彼の
突然の提案に流石の森崎も目を白黒させたが、見上は構わずに続けた。

見上「先程も言った通り、お前の指揮能力と勝負運は高く評価している。ならばこの大一番、
お前の好きにやらせて納得の行く形で戦わせてやる事がお前の、そしてチームの力を
引き出すだろうと判断した。無論対外的には私が決めた事になるがな」

森崎「…いいんですか?本当に」

見上「構わん。無論強制するつもりもない。ただでさえ正GKでありキャプテンという重圧があるのだ、
この上監督業まで代行したくないと言うのなら全く構わん。それなら何時も通り私が決めていこう。
別に私は未知の大舞台のプレッシャーに負けた訳でも監督としての責任を放棄したい訳でもない。
ただこの案がよりチームを強くするかも知れんと思ったから、試してみたいだけだからな」

井出「(森崎さんは自分が成り上がる為にだけど、本当にチームとチームメイトを見ているんだな。
既に名監督の片鱗は見せているし…プレッシャーがかかるとむしろ強くなるタイプだと思うんだな)」

森崎「(こりゃあ予想外の話が来たな…どうするか…)」

今までに一度もなかった編成権の譲渡。この提案を森崎は数秒間の考慮の後…

A 「いいですよ。俺の好き勝手にやらせてもらいましょう」承った。
B 「流石にいくらなんでもそりゃダメですよ」断った。

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
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71 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/28(金) 16:25:34 ID:3OrwGDSE
>A 「いいですよ。俺の好き勝手にやらせてもらいましょう」承った。

森崎は提案を受け入れた。そこにあったのは野心か、愉悦か、それとも別の何かか。
ひょっとしたら森崎本人にも分からなかったかも知れない。

見上「…そうか。なら最後に一応付け加えておくぞ。万が一滝をCBに起用するだの
高杉をCFWにするなどと馬鹿な事を言い出したら即刻でこの提案を無かった事にするし、
どう考えても有り得んだろうと言う箇所が部分的に存在したら私が修正を加える」

森崎「分かっていますよ」

井出「それじゃ、この名前つき磁石とマグネットボードで納得がいく様に弄って欲しいんだな!」

森崎「おう…なんかオモチャみたいだなこれ」

井出「実際にオモチャみたいな物だけど、コンピュータでも使わない限りこれが一番便利なんだな」

こうして森崎は監督の立場に立たされ、選手達の名前テープが貼りつけられた磁石を
サッカーフィールドを模したマグネットボードの上で動かし始めた。

森崎「(う〜ん…戦力的には中山、日向、翼はまず外せないか…?他にもどんなフォーメーションでも
こいつはスタメン確定って言うのは…いや待てよ、選手よりも先にフォーメーションを決めるべきか?)」

A まずはフォーメーションを決めて、それから選手とそのポジションを選ぼう。
B 選手とそのポジションを選んでいけば、フォーメーションなんか自然に決まるな。

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/28 20:00:00☆ から投票期間を設けます。
    そこから  15  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

72 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/29(土) 20:04:59 ID:ulmtW8jw
>B 選手とそのポジションを選んでいけば、フォーメーションなんか自然に決まるな。

森崎「(よし、選手とポジションから選んでいくか。まずは誰にするかな…)」

決定済選手:
森崎GK

残った選手:
日向 政夫 和夫 新田 来生 滝
翼 岬 三杉 松山 山森 井沢 葵
次藤 早田 中里 石崎 高杉 赤井 中山
若島津 若林

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/29 21:00:00☆ から投票期間を設けます。
      起用する選手とそのポジション(FWかMFかDF)を書き込んでください。
        最初に三票入った同じ選手とポジションの組み合わせが選ばれます。
     サイドで使うかなどの決定は時間がかかり過ぎるのでGM側で適当に判断します。
         尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

73 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/29(土) 21:12:55 ID:ulmtW8jw
>MF 翼

森崎「(まあまずは確実に翼をMFにするか。シャクだがあいつは絶対に外せない奴の一人だしな…次は…)」

決定済選手:
MF 翼 
GK 森崎

残った選手:
日向 政夫 和夫 新田 来生 滝
岬 三杉 松山 山森 井沢 葵
次藤 早田 中里 石崎 高杉 赤井 中山
若島津 若林

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/29 21:30:00☆ から投票期間を設けます。
      起用する選手とそのポジション(FWかMFかDF)を書き込んでください。
        最初に三票入った同じ選手とポジションの組み合わせが選ばれます。
     サイドで使うかなどの決定は時間がかかり過ぎるのでGM側で適当に判断します。
         尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

74 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/29(土) 21:47:01 ID:ulmtW8jw
>MF 三杉

森崎「(三杉もMFで使うのが王道だな。わざわざFWやDFで使う理由もないだろう。次は…)」

決定済選手:
MF 翼 三杉
GK 森崎

残った選手:
日向 政夫 和夫 新田 来生 滝
岬 三杉 松山 山森 井沢 葵
次藤 早田 中里 石崎 高杉 赤井 中山
若島津 若林

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/29 22:00:00☆ から投票期間を設けます。
      起用する選手とそのポジション(FWかMFかDF)を書き込んでください。
        最初に三票入った同じ選手とポジションの組み合わせが選ばれます。
     サイドで使うかなどの決定は時間がかかり過ぎるのでGM側で適当に判断します。
         尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

75 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/29(土) 22:27:00 ID:ulmtW8jw
>MF 岬

森崎「(MFをどんどん決めちまうか。パス要員として必須な岬もMFだ。次は…)」

決定済選手:
MF 翼 三杉 岬
GK 森崎

残った選手:
日向 政夫 和夫 新田 来生 滝
松山 山森 井沢 葵
次藤 早田 中里 石崎 高杉 赤井 中山
若島津 若林

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/29 22:40:00☆ から投票期間を設けます。
      起用する選手とそのポジション(FWかMFかDF)を書き込んでください。
        最初に三票入った同じ選手とポジションの組み合わせが選ばれます。
     サイドで使うかなどの決定は時間がかかり過ぎるのでGM側で適当に判断します。
         尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

76 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/29(土) 22:48:10 ID:ulmtW8jw
>MF 松山

森崎「(松山もMFっと。これでMF4人だな。次は…)」

決定済選手:
MF 翼 三杉 岬 松山
GK 森崎

残った選手:
日向 政夫 和夫 新田 来生 滝
山森 井沢 葵
次藤 早田 中里 石崎 高杉 赤井 中山
若島津 若林

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/29 23:00:00☆ から投票期間を設けます。
      起用する選手とそのポジション(FWかMFかDF)を書き込んでください。
        最初に三票入った同じ選手とポジションの組み合わせが選ばれます。
     サイドで使うかなどの決定は時間がかかり過ぎるのでGM側で適当に判断します。
         尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

77 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/29(土) 23:22:57 ID:ulmtW8jw
>DF 早田

森崎「(早田をDFに入れておかなきゃな。次は…)」

決定済選手:
MF 翼 三杉 岬 松山
DF 早田
GK 森崎

残った選手:
日向 政夫 和夫 新田 来生 滝
山森 井沢 葵
次藤 中里 石崎 高杉 赤井 中山
若島津 若林

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/29 23:40:00☆ から投票期間を設けます。
      起用する選手とそのポジション(FWかMFかDF)を書き込んでください。
        最初に三票入った同じ選手とポジションの組み合わせが選ばれます。
     サイドで使うかなどの決定は時間がかかり過ぎるのでGM側で適当に判断します。
         尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

78 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/29(土) 23:59:11 ID:ulmtW8jw
>MF 中山

森崎「(中山は今回はMFで使うか。中盤を厚くしよう。次は…)」

決定済選手:
MF 翼 三杉 岬 松山 中山
DF 早田
GK 森崎

残った選手:
日向 政夫 和夫 新田 来生 滝
山森 井沢 葵
次藤 中里 石崎 高杉 赤井
若島津 若林

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/30 00:10:00☆ から投票期間を設けます。
      起用する選手とそのポジション(FWかMFかDF)を書き込んでください。
        最初に三票入った同じ選手とポジションの組み合わせが選ばれます。
     サイドで使うかなどの決定は時間がかかり過ぎるのでGM側で適当に判断します。
         尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

79 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/30(日) 00:16:34 ID:asVXZgq2
>DF 次藤

森崎「(次藤もDFに入れとく。シュートブロックしてもらわないとな。次は…)」

決定済選手:
MF 翼 三杉 岬 松山 中山
DF 早田 次藤
GK 森崎

残った選手:
日向 政夫 和夫 新田 来生 滝
山森 井沢 葵
中里 石崎 高杉 赤井
若島津 若林

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/30 00:20:00☆ から投票期間を設けます。
      起用する選手とそのポジション(FWかMFかDF)を書き込んでください。
        最初に三票入った同じ選手とポジションの組み合わせが選ばれます。
     サイドで使うかなどの決定は時間がかかり過ぎるのでGM側で適当に判断します。
         尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

80 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/30(日) 00:28:20 ID:asVXZgq2
>DF 日向

森崎「(よし、ここだ!ここで奇策を使うんだ!日向をDFにする!次は…)」

決定済選手:
MF 翼 三杉 岬 松山 中山
DF 早田 次藤 日向
GK 森崎

残った選手:
政夫 和夫 新田 来生 滝
山森 井沢 葵
中里 石崎 高杉 赤井
若島津 若林

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/30 00:35:00☆ から投票期間を設けます。
      起用する選手とそのポジション(FWかMFかDF)を書き込んでください。
        最初に三票入った同じ選手とポジションの組み合わせが選ばれます。
     サイドで使うかなどの決定は時間がかかり過ぎるのでGM側で適当に判断します。
         尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

81 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/30(日) 00:38:07 ID:asVXZgq2
>FW 葵

森崎「(そしてFWに葵だ。あいつの一対一が武器になるだろう。最後の一人は…)」

決定済選手:
FW 葵
MF 翼 三杉 岬 松山 中山
DF 早田 次藤 日向
GK 森崎

残った選手:
政夫 和夫 新田 来生 滝
山森 井沢
中里 石崎 高杉 赤井
若島津 若林

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/30 00:50:00☆ から投票期間を設けます。
      起用する選手とそのポジション(FWかMFかDF)を書き込んでください。
        最初に三票入った同じ選手とポジションの組み合わせが選ばれます。
     サイドで使うかなどの決定は時間がかかり過ぎるのでGM側で適当に判断します。
         尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

82 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/30(日) 06:52:22 ID:asVXZgq2
>DF 中里

森崎「(最後の一人は…無難にDFで中里だな。こいつのスピードが生きる場面がありそうだ)」



決定済選手:
FW 葵
MF 翼 三杉 岬 松山 中山
DF 早田 次藤 日向 中里
GK 森崎



森崎は選んだ順に名前つき磁石をフィールドを模したマグネットボードに貼っていった。
MFを最初に4人選んでいた時点では見上と井出は特に何の反応も見せず見守っていたが、
中山をMF起用した時点で訝しげな表情が浮かぶ。一体何時FWを、特に日向を選ぶのかと。

そしていざ日向がFWではなくDFの位置に選ばれた時見上は目を大きく見開き、
井出は叫び声を口から漏らしそうになっていった。そのままの表情で最後に中里をDFに
選んだ森崎がマグネットボード上の配置を最終調整するのを見て、見上がやっと声を出す。

見上「4−5−1…それも葵のワントップで、日向がDFだと?」

井出「え、えーと、これだと日向さんはリベロ扱いになるんだな?」

森崎「まーな。攻撃参加もしてくれなきゃいけないからな」

見上「…奴が納得するかどうかは別問題として、このフォーメーションの狙いを知りたいな」

83 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/03/30(日) 06:55:45 ID:asVXZgq2
森崎「はい。このフォーメーションの狙いはずばり…」

A 「1点勝負です」
B 「遅攻連発です」
C 「敵の混乱です」
D 「膠着誘発です」
E 「大量得点です」

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/3/30 12:00:00☆ から投票期間を設けます。
    そこから  15  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

84 :2 ◆vD5srW.8hU (全裸):2014/04/01(火) 23:30:17 ID:NuyEjVMA
>B 「遅攻連発です」

井出「遅攻ですか?確かにシンゴ一人でカウンターは難しいから、ウチは遅攻するしかないですが…」

森崎「いや、違う。ウチだけじゃない。ブラジルにも遅攻を強いる」

井出「えっ!?」

見上「つまり、日向をDFとして使う事でこちらのボール奪取率を上げつつ、こっちも人数をかけて
ゆっくり攻め、例えこちらの攻撃が防がれても向こう陣内の奥深くで仕切り直しになるのが狙いか」

森崎「そうです。葵と日向はその為の相互利用の囮です。葵はジェトーリオとドトール以外なら
逃げ続けるのは難しくないし、葵にマークを集めてくるのならMF達、そして日向が動きやすくなります。
向こうも日向を野放しにはしないで警戒してくるでしょう。そうなると思い切って葵から
ボールを奪いに行く事も難しくなる。結果、奴らは戦線を戻されるまどろっこしいディフェンスを強いられる」

井出「た、確かに…でもその分向こうの守りも厚くなって、点を奪い難くなるんじゃ…あっ!」

森崎「お前が分析したんだからお前が気付けよ。さっき言っただろ、ブラジルだからと言って
全員が何でも出来る訳じゃないって。ブラジルのゴール前で厄介なフィールダーは断トツで
ディウセウで、次点でアマラウとカルロスだ。ディウセウとアマラウはどうせ何時も守りに
居るんだから考える必要がない。カルロスが守りに気を取られるならそれはそれで有り難いんだ」

見上「だが、それなら向こうはこっちのMFが上がった隙に速攻を仕掛けてくるかも知れんぞ」

森崎「問題ありません。向こうの速攻要員はネイとトニーニョ。あいつらがゴールデンコンビで
上がってきたら簡単に裏を取られるでしょうけど、あいつらが俺からゴールを奪えるとしたら
ブースターシュートしかないですがあれは技の性質上トニーニョがネイよりも先の位置に
つかないといけない。つまり速攻の直後には使えない。あいつらの速攻はそんなに怖くないんですよ」

85 :2 ◆vD5srW.8hU (全裸):2014/04/01(火) 23:31:18 ID:NuyEjVMA
見上「速攻を仕掛けてくるのはその二人とは限るまい。カルロスやザガロが突っ込んできたらどうする気だ?
ザガロは元々守備参加に戻らん見込みが高いし、カルロスも開き直って攻撃に専念するかも知れん。
人数をかけて攻めると言う事は、相手に凌ぎきられたら反撃のチャンスを与える事なのだぞ」

森崎「そこは攻撃陣がシュートで攻撃を終える事と、それが失敗した時はDF達の奮闘に期待ですね」

見上「なんだそれは。リスクの甘受ではないか」

森崎「相手はブラジルですよ?ワールドユースの決勝戦ですよ?リスク無しに勝てる訳無いじゃないですか。
リスクを分散し過ぎてチャンスまで霧散させるよりは、予測できるリスクと引き換えに攻めるべきです」

見上「……………」

森崎は持ち前の弁論術と気の強さで自分の意図をこんこんと説き見上を納得させようとした。
そして見上はしばし沈黙した後…
-----------------------------------------------------------------------------
【分岐】http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
 !card と書き込むとランダムでトランプの絵柄が出るので、(!は半角)書き込んでみて下さい。
(ageでもsageでも構いませんが、★も含めて一回の判定の全文をコピペされてない場合は無効です)

先着(順番通りじゃない書き込みは無効)で
★見上、ご乱心の最後のチャンス→(!card)★
と書き込んで下さい。カードの結果で分岐します。

JOKER→見上「ええい、もうお前ら若造には任せておけん!ワシがワントップFWとして出る!」とうとうご乱心!
クラブ以外→見上「日向が納得しなかった場合はお前が説得するのだぞ」ため息と共に了承してくれた。
クラブ→見上「いくらなんでも博打要素が大きすぎる。日向はFW、ツートップだ」却下され修正された…

86 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/03(木) 23:57:11 ID:PZWGWLU2
★見上、ご乱心の最後のチャンス→( ダイヤ7 )★

クラブ以外→見上「日向が納得しなかった場合はお前が説得するのだぞ」ため息と共に了承してくれた。
-----------------------------------------------------------------------------
森崎「はいはい。大丈夫ですよ、アイツは挑発で乗せやすいですから」

見上「そうである事を願おう。さて、次は具体的な配置の仕方を見せてもらおうか」

森崎「そうですね…」



全日本ユース 4−5−1
−−J−− J葵
−−−−−
−−I−− I翼
G−−−F G三杉 F岬
−E−D− E中山 D松山
B−H−A B早田 H日向 A中里
−−C−− C次藤
−−@−− @森崎



森崎「こうです。ドリブルもワンツーも出来て攻撃の起点になりやすいネイとトニーニョの居るサイドに
タックルもパスカットも出来る三杉と中山を割り当てます。逆サイドはマウリシオは正直怖くない。
サンタマリアのブーメランパスはありますが、そこは中里と岬に担当させます。
FW達のドリブル突破は松山と早田に加え、日向を暴れまわらせて牽制していきます。
次藤はシュートブロック専念ですね。日向のカウンターシュートは一回あればラッキー、程度です」

87 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/03(木) 23:58:22 ID:PZWGWLU2
見上「守備は分かった。では攻撃は?」

森崎「攻撃のメインとなるのは葵と翼です。葵が前線で敵をひきつけつつ、やばくなったら翼に戻す感じで。
この二人が時間と距離を稼ぎ、残りの攻撃陣を上がらせて人数を揃えてからゴールを狙う。
ポイントは葵と翼は両方とも一対一からのゴールを狙いやすい事です。この為ブラジルはどちらか
一方をマークし過ぎる事は出来ないし、DFラインも上げにくくなるでしょう。
しかも日向が上がってくる事を警戒する為に向こうのMF達は奴の相手をしなくてはいけない。
このフォーメーションならブラジルは相当守り難さを感じてくれます。以上です」

森崎は具体的な配置を示し、それぞれの役割と攻守に置ける目標を説明した。
見上はそれを聞いてしばらく吟味した後、メモをいくつか取ってから頷いた。

見上「いいだろう。ではブラジル戦はこれでスタートする。くれぐれも私がお前に
決定を託した事は他言無用だぞ。もしあったらこのスタメンとフォーメーションは完全に無かった事にする」

森崎「はい、わざわざ漏らしたりしませんよ(勘のいい奴は気付くかも知れないが、そりゃ知ったこっちゃないな)」

見上「では戻れ。ここからは私の仕事だ」

森崎「はい。失礼します」

こうして結局森崎の案は全て無修正で通った。部屋を出る際の彼の機嫌が良かったのは言うまでもない。
彼が去った後の見上と井出はそうではなく、見上はまたため息をつき、井出は不安気に立ち竦んでいた。

見上「全く。奴が常識的なフォーメーションを組む筈はないと思ったが、まさか日向をDFとはな…」

井出「連携なんか他の選手にやらせればいい、って考えなんでしょうね。ツボに填まれば確かに強くなるでしょうけど、
普通のチームだと日向さんをFW以外で使うにしても精々MFなんだな。ドイツのポブルセンみたいな使い方なら…」

88 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/03(木) 23:59:22 ID:PZWGWLU2
見上「それだけでは足りんと考えたのだろう。だがもう決定は下された。後はここまで日本を勝たせ続けてきた
あいつの強さを、あいつの作り上げたチームを信じるしかあるまい…全く、このチームの監督をしていると胃が痛くて敵わん」

井出「…でも、なんだか勝てそうな気もしてくるんだな。森崎さんならきっとやってくれるって」

見上「…ああ。そう思う。戦力的にはブラジルが一段上だと思うが、不思議と勝てそうな気がする。監督が言って良いセリフではないがな」

森崎の破天荒さを改めて知り、二人は心労が絶えなかったがそれでも
何とかなるのではないかと言う一種の楽観を味わう余裕はあった。

見上「………フゥ」

井出「………あの。やっぱりあれは言っておいた方が…」

もう一つ、森崎には言わなかった懸念事項がある為その楽観は長くは続かなかったが。

見上「コインブラの事だろう?駄目だ」

井出「で、でも!もし分析通りの実力だったら…!」

見上「だからこそだ。お前の分析は信頼している。あの限られた資料で行った分析でも当たっているかも知れん…
だが、当たっていたら結論は“全てが凄すぎるので対策など練れない”になってしまう。
勿論逆に当たっていなかったら不正確な情報を与えるのは害にしかならない。だから教える訳にはいかんのだ」

井出「………結局、出てこないんでしょうかね。あの選手は」

見上「ドイツ戦であれだけ追い詰められても出てこなかった。つまり何らかの事情で使いたくても使えない、
もしくは使いたくないのだ。ならばそれが決勝までのたった3日間で解決出来るとは思えん。
試合前のウォーミングアップには参加しているのだから、怪我と言う線も無さそうだしな」

89 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/04(金) 00:01:21 ID:5sp/dUa+
ブラジルユースの10番、アルツール・アンチネス・コインブラ。
謎に包まれた彼の実力を見上達は南米のストリートサッカーのビデオで知っていた。
限定的で信憑性に疑問符がつく資料に基づいた井出の分析結果はこうなっていた。



コインブラ
突破力:A 得点力:S ボールカット:S ゴール前:A スタミナ:S
ほぼ全ての分野に置いて世界で一、二を争える。対抗出来るのは一流の上に超がつく選手だけ。



井出「もっと資料があれば…ああっもう、なんでこの人は公式戦に出ていないんだな!」

見上「それを悔やんでも仕方があるまい。探偵の真似事が出来る賀茂ですら大した資料は
みつけられなかったのだ。奴は試合に出てこない…それを前提で戦うしかないのだ」

井出「でも、もし…もし、出てきたら?」

見上「………先程も言った。データが正しくなければ対策は練れない。
正しかった場合は…出来る限り避けて戦うしかない。それ位しか出来る事がないのだ」

見上はコインブラの事を選手達に伝えなかった。
そうした方が良いと判断した。

それが吉と出るか凶と出るかは二日後に判明する。

90 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/05(土) 08:21:28 ID:ZpkRs0do
〜大会24日目、エスタジオ・ド・マラカナン〜

翌日、遂に決勝戦まで後1日となった。

こういう大会に置いて3位決定戦と言う物は盛り上がり難い物である。
準決勝で敗退しモチベーションが低下したチーム同士の戦いであり、しかも大本命の決勝戦が翌日に迫っているのでは致し方ない。
サッカー王国ブラジルと言えど、この日は収容数の多いマラカナンスタジアム満員とは行かなかった。

それでもドイツユースとイタリアユースは戦わなくてはいけない。
例え勝っても決勝戦には行けないのが分かり切っていても、連日の激戦で疲れ切っていても、
ちゃんとプロらしく真面目に戦えると言う事を証明しなくてはならないからだ。

だがこの2チームの対決は見逃した事を惜しまれる様な内容にはならなかった。



ピッ、ピッ、ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!

放送「試合終了!結果は4−1。ドイツ、大差でイタリアを下し3位の称号を手に入れました!」

観客「あー、やっぱりこうなったか」「そりゃあドイツが勝つよなあ」「正直見に来なくても良かったな」

ストラット「…く、くそっ…!」

アルシオン「…割り切るぞ。悔しがるのは後でいい、まずはクールダウンだ」

ジェンティーレとランピオンを欠いた上に120分間の死闘で消耗がより激しかったイタリアがドイツに勝つのはかなり難しい。
事前にそう予想されており、そして何の面白味もなくその予想通りにドイツが大差で勝ったからである。

91 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/05(土) 08:23:02 ID:ZpkRs0do
放送「ジェンティーレくんとランピオンくんと言う主力二人をレッドカードで欠いたイタリアユース!
アルシオンくんのキープ力で粘り、ストラットくんの一発で少ないチャンスをモノにしようとしましたが
それだけで負けてくれる程ドイツユースは甘い相手ではなかった!シュナイダーくんが2点、
ポブルセンくんが1点、カペロマンくんも1点奪い自慢の攻撃力を見せつけてくれました。
イタリアはアルシオンくんのスルーパスからストラットくんがかろうじて1点決めただけに終わりました。
日本戦で感動的な立ちはだかりを見せてくれたヘルナンデスくんも今回は上手く行かず大炎上。
だからと言って彼を責めるのは酷と言う物でしょうし、これで彼の価値が落ちる事もないでしょう」

シュナイダー「無様…と言いたい所だが、今の燃え尽きたお前では仕方ないな」

ヘルナンデス「厳しい事で有名なお前に慰められるとはな…あんまり嬉しくないな」

シュナイダー「お前への慰めではない。俺自身への戒めだ。
不利な状態の相手に勝った事で実力者を見下していては、自惚れと油断に繋がる」

ヘルナンデス「そういう事か。納得が行ったよ」

当然両チームともその事情は把握しており、勝ったドイツは驕る事なく、負けたイタリアも腐る事はなかった。
お互いにある程度面識がある為試合後の交流もあり、特にジュニアユース時代からの付き合いである
シュナイダーとヘルナンデスはキャプテン同士らしく厳かに話し合っていた。

シュナイダー「お互い先は長いんだ。次はもっと面白い舞台で本調子で出会おう」

ヘルナンデス「ああ、個人的にも頻繁に会う事になりそうだしね」

シュナイダー「ん?流石にブンデスリーガとセリエAではそう頻繁に会う機会はないと思うが…
代表試合とヨーロピアンカップとUEFAカップを除けば後はフレンドリーマッチしかチャンスはないだろう?
それともお前はブンデスリーガに移籍してくるつもりなのか?俺は当分バイエルンでやるつもりだぞ」

92 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/05(土) 08:24:57 ID:ZpkRs0do
ヘルナンデス「いや、俺もしばらくはインテルに居るつもりだよ。だがマリーにミラノに来てもらうんだから、
これからは家族ぐるみの付き合いになるだろう?よろしく頼むよ、お義兄さん♪」

シュナイダー「……………あ゛?」

ただし、ヘルナンデスの爆弾発言でその場は台無しになった。

ヘルナンデス「あれっ、君はまだ聞かされていなかったのかい?
もう了承の手紙をもらっているし、親も承諾してくれたって書いてあったんだけど…」

シュナイダー「………そうか。時折マリーがイタリア旅行に行っていたり、
イタリアの友人がドイツに来ているから遊ぶと言っていたのは…貴様か…キサマかぁ…」

ヘルナンデス「(あれ、これ、俺ヤバい?)」



シュナイダー「キサマかぁああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

ヘルナンデス「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」



その後シュナイダーは数分後味方に取り押さえられるまで逃げるヘルナンデスを追い掛け回したが、
観客も実況も特に興味を示さなかった為スキャンダルにならなかったのは幸運だった言えるだろう。



マリー「…お兄ちゃん…何やっているの…!」

ただしドイツに中継していたテレビカメラはシュナイダーにスポットライトを当てようとその映像を拾っていた為、
ドイツでテレビ観戦していたマリーが青筋を立てていたのは不運だったと言えるだろう。

93 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/05(土) 08:27:00 ID:ZpkRs0do
*シュナイダーのヘルナンデスに対する感情が「殺す」になりました。
*ヘルナンデスのシュナイダーに対する感情が「鬼い様」になりました。



大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
12ゴール シュナイダー
11ゴール ストラット
10ゴール カルロス
9ゴール 日向
8ゴール ディアス
7ゴール ザガロ
5ゴール カペロマン、火野、ビクトリーノ
4ゴール ポブルセン、翼、森崎、ランピオン、カマーチョ
3ゴール ナポレオン、ピエール、チャンドラー、ロリマー、ミハエル、サトルステギ
2ゴール トニーニョ、マーガス、李邦内、李邦坤、アルシオン、イスラス、レンセンブリンク、三杉
1ゴール ルーク、肖、岬、山森、フライハイト、ネイ、ロペス、ガルシア、クライフォート、
     カイザー、マッハー、クリスマン、政夫、ディウセウ、マウリシオ



大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
7アシスト アルシオン
5アシスト サンタマリア
4アシスト 岬
3アシスト カルツ、カルロス、マーガス、翼、ダ・シルバ、ネイ、チャンドラー、火野、パスカル、ランピオン、
2アシスト フライハイト、カペロマン、バンビーノ、ピエール、王、森崎、トニーニョ
1アシスト カルツ、メッツァ、テイラー、飛、山森、早田、ビクトリーノ、エスパダス、クリスマン、イスラス、
      シェスター、バビントン、クライフォート、カイザー、和夫、ジェトーリオ

94 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/10(木) 23:02:54 ID:5zJ3uX06
〜大会24日目、全日本ユース宿舎〜

日本はドイツとイタリアの三位決定戦を観戦せず、後にスコアを知るだけであった。
目の前の決勝戦に集中しろと言う見上監督の方針であり、それに異論を挟む者も居なかった。
全日本ユースはもっぱら自分達の作戦会議で忙しかった。

井出「…以上がブラジルユースの予想スタメンと分析結果なんだな」

どよっ…

会議はまずブラジルユースの分析結果から始まり、選手達のどよめきに応えられた。
強いのは分かり切っていたが、今まで見た事がない程の高評価にうんざりせずには居られなかったのだ。

見上「言うまでもなく、とてつもなく強い。ドイツを破った実績からして、今までで最強と言って良いだろう。
パスが比較的有効、ゲルティスは一対一とスタミナに少しだけ不安あり、特大の切り札を持つのはカルロスのみ…
などとつけいる隙が無い訳ではないが、その程度の不安要素では到底楽観出来る訳がない。

特に優れた突破力と火力を兼ね揃えた選手が何人も居るのは非常に危険だし、
ゴール前の守備も一通り出来る人材が揃っている為様々な攻め方を駆使しなければ崩せないだろう。
更に贅沢なタレントを使いまわせる癖に全選手が豊富なスタミナを持っている上、
ドイツ戦で見せた通り戦術面もメンタルも強い。持久戦になったらこっちが不利になるだろう」

翼「(流石ブラジル…これが、俺が憧れつづけたサッカー王国の堂々たる強さだ)」
日向「(ビビッている奴らが何人か居るな…足を引っ張らなきゃいいが)」
若林「(客観的に言って、ブラジルの方が強いと認めざるを得ないな…)」

95 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/10(木) 23:04:30 ID:5zJ3uX06
見上「だが、強敵とは勝てる可能性がある相手の事だ。絶対に倒せない相手は強敵とは言わない。
お前たちもここまで勝ち上がってきたのだ、世界一を争う資格は十二分にある…
だが今更こんな事は言うまでもないだろう。具体的な作戦の話に移ろう」

見上はブラジルの強さを再確認させた上でフォーメーションとスタメンの発表に移った。
それ自体は当然の事で何の驚きも起きなかったが、いざフォーメーションが発表されるとどよめきが走った。

日向「!」



−−−−− 
−−J−− J葵
−−−−−
G−I−F G三杉 I翼 F岬
−E−D− E中山 D松山
B−H−A B早田 H日向 A中里
−−C−− C次藤
−−@−− @森崎



赤井「え、えええっ!?日向さんがDFですかぁ!?」

若島津「な、な…監督、本気ですか!」

山森「この大舞台でこんな奇策を…!?」

混乱した者達が早速声を上げる中、肝心の日向は…

96 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/10(木) 23:09:23 ID:5zJ3uX06
【分岐】http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
 !card と書き込むとランダムでトランプの絵柄が出るので、(!は半角)書き込んでみて下さい。
(ageでもsageでも構いませんが、★も含めて一回の判定の全文をコピペされてない場合は無効です)

先着(順番通りじゃない書き込みは無効)で
★日向の反応→(!card)★
と書き込んで下さい。カードやダイスの結果で分岐します。

JOKER→日向「ああ、監督も同じ事を考えていたんですね」なんと自分から提案する気だった!!
ダイヤ→日向「良いですよ。合理的だ、やりましょう」意外にも合意した。
ハート→日向「…勝つ為なら仕方がないですね」渋々納得した。
スペード→日向「監督、俺がDFとして動けると思ってるのか?」やはり納得しなかった!
クラブ→日向「森崎…てめえ、何考えてやがんだ…!」バレました☆

97 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/11(金) 23:29:27 ID:F6yPRKlw
★日向の反応→( ダイヤK )★

ダイヤ→日向「良いですよ。合理的だ、やりましょう」意外にも合意した。
-----------------------------------------------------------------------------
見上「!?」
森崎「なぬ!」
翼「!」
若島津「日向さん!?」

渋々と受け入れるのならともかく、まさか日向があっさり合意するとは誰も思っていなかった。
出来れば森崎に頼らず自分で説得したかった見上も口を挟むタイミングを見計らっていた森崎も
予想外の反応に面喰ってしまった。それを見越して日向は更に続ける。

日向「俺をあえてこんなに後ろに配置するのはドリブラーが豊富なブラジル相手の嫌がらせ。
そしてタックルに優れたディフェンダーが俺をマークしにくくする為でしょう?」

見上「…その通りだ。今まで通りお前をFWに配置しているとジェトーリオやドトールに
止められる危険性が高い。それなら後ろの方でボール狩りをやりつつ撃ち易くすると言う作戦だ」

日向「ですよね。では、それで行きましょう。便宜上はリベロ扱い。連携は他の奴任せですよね?」

見上「うむ…急造DFのお前に連携は求めていない。己の判断で相手を困らせればいい。
そういう訳だ。中山、松山、早田、次藤、中里。フォーメーションのバランスはお前たちで取れ」

中山「は、はい(最初から合わせるのを放棄するのか…仕方ないな)」
松山「はい…(日向にチームワークを期待するだけ無駄だっていうのは分かるけど…)」
早田「はい(日向の奴はタックルは上手いからな。俺もやりやすくなるって割り切るか)」
次藤「はい(作戦上は妥当じゃけん、精々馬車馬ばし走ってもらうばい)」
中里「はい(拙者側にドリブラーが来ても対処しやすくなる。有り難き事也)」

98 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/11(金) 23:31:38 ID:F6yPRKlw
日向は自分をDFで起用すると言う奇策の狙いを端的に解説してみせ、その場の主導権を握った。
無論日向が遊撃する分計算し辛くなり守備陣の負担は増えるのだが、
それぞれの思惑はどうあれ文句を言う者は居なかったのは日向の立ち振る舞いの影響もあっただろう。

三杉「(やはり彼はその凶暴性が暴発しない限りは極めて合理的で知的な人間だな)」
岬「(自分が納得さえすれば、勝つ為には何でもすると言う言葉に嘘はないんだよね)」
山森「(俺は驚いて意味が分からなかったのに…人格は酷いが、頭は流石だな)」
赤井「(この人…こええ。この若さで大企業の社長なんかやってられるのが良く分かった)」
若島津「(これがこの人の強さか…俺はまだまだ甘いのかも知れない)」

事実、日向の今回の言動に感心した者は少なくなかった。

翼「(…日向くんはプロ向きの性格と言えるかもな。協調性の無さが大きなリスクだけど)」

若林「(こいつがプロとして大成できるかどうかは合うチームをみつけられるかにかかっているだろうな)」

過去のキャプテン候補達ですら評価を改める程だった。

森崎「(な、なんか日向の株が上がっている雰囲気だ…!いや、今更こいつにキャプテンの座を
脅かされる事なんてないだろうからどうでもいいが…クソッ、なんかムカつく!)」

森崎は内心歯ぎしりしていた。



*日向チーム内支持率:46→48

99 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/18(金) 22:52:55 ID:MZfSDumc
見上「ゴホン…では各人の役割の確認に移るぞ。何時も通りそれぞれ自分だけでなく、他者の役割も認識しておけ」

見上は咳払いをして空気を換え、各選手の役割の説明に移った。

見上「葵、お前の役割は最前線の囮だ。日本の攻撃は基本的に遅攻となる。これはブラジルにドイツにやった様に
シュートラッシュを仕掛けさせない為だ。その為にはお前がどれだけ前線で時間を稼げるかが鍵となる。
無論ただ時間を稼ぐだけではない。マークが甘いと思ったら自分で一対一を挑みに行け。
逆にマークがきついと思ったら後ろにボールを戻せ。ブラジルの最終ラインを押し下げるだけでも前に居る意味はある」

葵「は〜い!(今回もFW起用かぁ。日本代表の中盤は激戦区だもんな、仕方ないな。気を切り換えて頑張ろっと!)」

見上「翼、お前は何時も通り攻撃の要となる。求められる役割は多いぞ。自分で得点を狙いに行くのは勿論だが、
今回は葵との連携も重要だ。葵一人ではブラジル相手にボールキープし続ける事は至難の業なのだから、
当然お前がもう一人の囮役としてサポートするんだ。それから速攻は状況が求めない限りは使うな。
基本は味方が追いつくのを待ち、ブラジル陣内で戦う時間と人数を増やしていくんだ」

翼「はい(守備はあんまり出来無さそうだな。その分攻撃で結果を出さなければ、ブラジルには絶対に勝てない)」

見上「日向、お前は既に己の仕事を理解しているな。もう一度言うが、それは攻守ともにブラジルを困らせる事だ。
お前が中盤やディフェンスラインで暴れている事でドリブル自慢が多いブラジルも大いにやり辛くなるだろう。
そして最前線でボールが回ってくるのを待つのではなく、後ろから上がってきて前からボールを受け取るやり方なら
ブラジルもジェトーリオやドトールを前に上げ過ぎる訳にはいかないシュートチャンスも増える。お前の悪知恵を活かせ」

日向「はい(どうもこの監督が考えた作戦にしては違和感があるな。森崎の入れ知恵か?別にどうでもいいか)」

100 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/18(金) 22:54:03 ID:MZfSDumc
見上「三杉、お前がこちらのサイドに配置された理由はタックルとパスカット両方に優れるからだ。
勿論相手をするのはネイとトニーニョだ。ドリブルとパス、もしくは連続ワンツー。何をされても中山と
連携して防げ。そして攻撃参加もしてもらう。もし葵や翼がボールを保ちきれない時はお前の出番だ。
後は…今更言うまでもない事だろうが、ペース配分には気をつけろ。この試合、延長戦も大いに有り得るぞ」

三杉「はい(このサイドを通されたらすぐに撃たれかねない。責任重大だが、やり甲斐のあるポジションだ)」

見上「岬、お前は守備ではサンタマリアのパスを阻害し攻撃ではブーメランパスとブーメランシュートを
使い分ける事が求められる。お前のサイドにはジェトーリオが居るのだから愚直にドリブルで突っ込む事は出来ない。
だがパスでかわし続ければしびれを切らして他者のマークに行くだろう。そこでシュートチャンスがある。
だが無理には狙うな、フリーになれる絶好機を待つんだ。ただ闇雲に撃つだけではブラジルには通じんぞ」

岬「はい(ジェトーリオが離れてもマウリシオやアマラウが来るだろうなあ。だけどそこがあれのチャンスかも)」

見上「中山、お前は今回ボランチとして使う。今回のお前は中盤の守りがメインとなる。三杉同様相手をするのは
ネイとトニーニョだ。この二人は速攻も時間稼ぎも自力での得点も出来るし、ツインタックルでボールも奪える。
更にカルロスもマッチアップの機会が増えるだろう。奴らを自由にさせるな。ハイレベルなシューターが豊富なブラジルは
通常のチーム以上に撃たせる前に止める事が重要となるのだ。ドイツの二の舞を踏むな」

中山「はい(大丈夫だ、やれる!ブラジルは確かに猛者揃いだが、俺は既に世界最高の攻撃的MFを知っている!)」

101 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/18(金) 22:55:21 ID:MZfSDumc
見上「松山、お前がやる事は何時もと変わらん。攻守のつなぎ役だ。お前は向こうのツートップ、
カルロスとザガロを相手する事が多くなるだろう。奴らに好き放題に撃たせていたら勝てる物も勝てん。
責任を持って奴らを止めろ。そしてボールを奪ったら奪い返される前に適切な場所に逃がすんだ。
お前の周囲には翼、岬、中山、中里とボール運びに長けた4人が居る。その時々で適切な者に逃がせ」

松山「はい!(とうとうここまで来た!道産子魂を世界中にみせつけ、故郷に錦を飾るんだ!見ていてくれ、皆!)」

見上「次藤、お前はいつも以上に忙しくなるだろう。元々ミドルシュート要員が多いチームが
これだけ中盤の守りを厚くされたら焦れてシュートを強引に撃ってくる事が予想される。
そういうシュートを食い止めるのがお前の仕事だ。正に体を張ってもらう事になるが、やってみせろ。
展開によってはお前は試合終盤まで体力が続かんかも知れん。早すぎる段階で燃え尽きない様注意しろ」

次藤「はい(流石ワールドユース決勝戦、ごつかシューターがごーぎ居るのう。うんにゃー、楽しみばい)」

見上「早田、中盤が抜かれてしまった場合はお前が撃たれる前の最後の頼みの綱となる。
特にカルロスを相手にする機会がかなり多くなるだろう。あいつは世界のトップ10に入れるドリブラーだ。
だがお前もボールを奪う事にかけては世界のトップ10に入る筈だ。自信と誇りを持って立ち向かえ。
いざボールを奪い返した後は逆サイドの中里をメインに手薄な場所にパスだ。タックル直後のマークにも気をつけろ」

早田「はい(ドリブラー共が選り取り見取り…へへっ、この早田誠がどれ程優れたDFなのか証明させてもらうぜ)」

102 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/18(金) 22:57:13 ID:MZfSDumc
見上「中里、お前はサンタマリアのスルーパスを警戒しつつ基本はバックアップ役だ。
こぼれ球のフォローだけでなく奪われそうなボールの緊急避難先として出番が多くなるだろう。
ただしお前のサイドにはジェトーリオが居る為自力でオーバーラップを仕掛けるのは危険だ。
基本はチーム全体が遅攻で行く事を忘れずに、こちらのボールキープ率の向上に貢献するのがお前の役割だ」

中里「はい(いよいよスポーツ忍者として大成の道が見えてきたナリ。この天下分け目の合戦、大金星を獲ってみせる!)」

見上「…改めて言うまでもないが、スタメンに選ばれなかった者も常に臨戦態勢で居ろ。この試合、延長戦も大いに有り得る。
スタメンだけで最後まで戦おうとするのはまず無理だろう。各自ウォーミングアップを怠るな」

全日本メンバー『はい!!』

見上「最後に森崎。分かっているだろうが、お前が体力切れを起こす事も有り得る。
だからと言ってペース配分に拘り過ぎて失点を重ねては元も子も無い。その塩梅はお前が何時も苦しんできた事だし、
これから先もサッカーをしている限りつきまとうだろう。私から言える事はただ一つ…」

森崎「………」

見上「勝て。お前は勝つ為なら何でもやってここまで来た。勝って、己を証明してみせろ」

森崎「はい(この監督の基準だと、これでも素直に褒めてるんだろなあ。この狸親父め)」

103 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/18(金) 22:58:22 ID:MZfSDumc
見上「さて、森崎。話すべき事は全て話した。明日のミーティングではもう話す事はない。
だから明日まで待つ必要はない。キャプテンとして言っておきたい事を今の内に言っておけ」

森崎「(おっと、このタイミングでか。明日言おうと思っていたんだが…)」

全日本メンバー『……………』

森崎「(まあいいか、今言っちまおう)」

A 「よし、いこう、いこうぜ、みんな!」無難に号令をかけるだけにする。
B 「皆、ここまで良く戦ってきた。後もう一度だけ力を貸してくれ」謙虚にチームメイトを褒める。
C 「俺達が世界一になるのは当たり前だ。何故なら俺達が世界で一番強いからだ!」強気でブチ上げる。
D 「ま、そんなに固くなるなよ。どいつもこいつもリオカップで倒した連中ばかりだ」あえて相手を侮る。
E 「全日本ユース出撃!花見の準備をせよ!」笑いを取りに行く。
F 「世界サッカーの伝統を凌辱するぞ!」凌辱発言! 

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
            ☆2014/4/19 00:30:00☆ から投票期間を設けます。
    そこから  15  票カウントし、一番多く票が入った選択肢で続行します。引き分けの場合は
   その次の票をタイブレーカーに使います。尚、投票はageた書き込みのみを採用しています。

104 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/22(火) 00:54:53 ID:ICdUPQt2
>C 「俺達が世界一になるのは当たり前だ。何故なら俺達が世界で一番強いからだ!」強気でブチ上げる。

森崎「いいか皆。俺達は明日、勝つ。そして世界一になる」

全日本メンバー『………』

森崎「俺達以外の奴らはどんなに強くても二番目にしかなれない。同じ時代に俺達が居た不運を呪ってもらう。
それが世界一になると言う事だ。日本サッカーは弱い?もうそんなのは過去の話だ。
これからは日本はサッカーが強いのが常識になるんだ。俺達がそういう世界に作り変えたんだ。
もう一度言う。俺達が世界一になるのは当たり前だ。何故なら俺達が世界で一番強いからだ!それを証明しに行くぞ!」

全日本メンバー『ぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!』

見上「(うむ、これでいい。この不遜さこそが森崎の強さだ)」

森崎は自他共に彼らしいと認める強気で傲慢な態度を貫き通した。
彼はこの態度で力を得、勝ち上がり、頂点を掴み取ってきた。
それが最強のサッカー王国、ブラジルにまで通用する物だと誰もが信じていた。



来生「(え?え?え?決勝戦なのに出番なし…?こ、これじゃこのスーパースターが埋もれちゃうじゃないか…
ち、違うんだこれは厚生の罠なんだ俺は填められたんだ…僕が、一番上手くストライカーを…)」

一人だけ、別の事を考えて呆然としていた者も居たが。



*来生がとうとう「スキル・何があっても自信を喪失しない」を喪失しました。

105 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/22(火) 00:56:03 ID:ICdUPQt2
〜同日同時刻、ブラジルユース宿舎〜

ロベルト「…では、以上でミーティングは終了だ。解散!(やっぱりコインブラは出せそうにないか〜…
本人が出たいって言ってこないし、他の皆も認めそうにないし…だ、大丈夫だよな…?)」

同じ頃、ブラジルユースもミーティングを終えていた。何時も通りロベルトはスタメンを発表した後は
具体的な作戦は選手任せで、何時も通りコインブラは最後尾に座ったまま一言も会話に参加する事はなかった。

だが今回は何時もと違う事があった。ロベルトがポーカーフェイスを崩さない内に立ち去り、
コインブラも誰とも関わらずに立ち去るのは何時もの事だったが、他の選手達22人はまだ解散せず
部屋に残りカルロスに視線を集めていた。カルロスもそれを予期していたのか、咳払いをしてからゆっくりと口を開いた。

カルロス「皆、言いたい事は分かっている。コインブラの事だろう?」

サンタマリア「…ああ、そうだ。結局あいつをどうするかを解決しないままここまで来てしまった」

ザガロ「フン、今日はなんとなく居心地が悪そうなツラしてやがったな」

マウリシオ「結局の所何がしたいんスかね?」

カルロス「…あいつの心理は今となってはどうでもいい。ハッキリしている事はただ一つ、
あいつが明日のスタメンに名を連ねていない事だけだ。そしてハッキリさせないといけない事もただ一つ…」

ネイ「監督があいつを途中出場させてきたらどうするか、だろ?」

ディウセウ「オラはどうすっかもう決めてるけど、おめえの考えも聞いておきたいな」

ブラジルユースの決勝戦前の最大の懸念事項。アルツール・アンチネス・コインブラの存在。
もし彼が使われる事になったら、どうするのか?カルロスはその時こう答えたと言う。

カルロス「…俺はプロサッカー選手だ。プロらしくするさ」

106 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/22(火) 22:21:58 ID:ICdUPQt2
かくして世界一を争う両チームはそれぞれの作戦会議を終え、決戦前夜を迎えた。



〜全日本ユース宿舎〜

決戦を前に誰もが武者震いをしていた訳ではない。
光あれば影あり。勝者の横には必ず敗者が居る。
余程の事が無い限り出番は有り得ず、それ故に士気を保てと言う方が酷な者達も居る。

石崎「はあ…分かっちゃ居たけど、やっぱり決勝でも出番なしか…」

高杉「当たり前だろ、今まで使われていないのに大一番で出られる訳があるか」

井沢「しょうがない、実力が全ての世界だ…ところで来生はどうしたんだ?」

滝「いや…昨日までは決勝戦でスーパーヒーローだ、とか言っていたんだが…」

来生「ぶつぶつ…僕が、一番上手くストライカーを、こなせるんだ…」

井沢「…遂にこいつも現実を思い知ったか。俺達の仲間入りって所か」

修哲出身の4人組と石崎はこの大会結局殆ど出番が無いまま終わりそうだった。
彼らはサブメンバーの中でも一番期待されていないグループなのが明らかであり、
ずば抜けて楽観的だった来生ですら最早自分を誤魔化せない程である。

滝「結局何がいけなかったんだろうな?俺達だって日本一になって、日本代表になって…
そこが限界だったんだろうか?後ちょっとの差がどうしても埋められないんだよな…」

高杉「知るかそんな事。あの若林さんですらサブに追いやられてあの森崎なんかが
正GKでキャプテンでプロになってやがるんだぞ。何がいけなかったなんて俺が知りたい」

107 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/22(火) 22:23:31 ID:ICdUPQt2
石崎「そういえば南葛小の頃はお前らに0−30でやられてたりしたんだっけ。
今までよく考えなかったけど、あの頃から考えりゃ夢にも思わない程出世したもんだ…」

高杉「下を見てたらキリが無いぞ。代表選考から漏れた佐野やら反町やら沢田やら、
長野やら岩見やら…あいつらは俺らを羨ましがっているだろうさ。ま、上を見てもキリがないけど」

井沢「…だからと言って、そんな理屈で諦めて堪るかよ!」

滝「井沢?」

それでももういいと自棄にはならないのは、彼らもまた日本代表たる証だろう。

井沢「確かに俺は今のチーム内のMFとしてはビリッケツだろうさ。それは認める。
だけど何時までもそのままだなんて誰が決めた!日本代表になれたら試合に出られなくてもいい…
そんなカッコ悪い事を思う位なら死んだ方がマシだ!まだサッカー人生は長いんだ、俺は絶対に返り咲くぞ!」

滝「…いやまあ、その覚悟は立派だし俺も同意見なんだが…お前の場合はちょっと無謀過ぎないか?」

石崎「よりによって翼に対抗心燃やしてるんだから、ある意味来生より身の程知らずだぜお前」

井沢「な、なにィイイ!!」

高杉「(総合力では勝ってるのに、チーム単位で見るとこいつより来生や滝の方が役に立つって言うのがなんとも哀れだ…)」

だからと言ってその諦めの悪さが吉と出る保証など何処にもないのも日本代表と言う勝負の世界の掟である。

来生「速いボールが見えたり消えたりしている。あはは、速い…シュートかな。イヤ、違う、違うな…」

108 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/23(水) 22:01:12 ID:Ppkwvt+c
将来に望み得る栄光が物足りないと嘆く者も居れば、輝く未来への展望を喜ぶ者も居る。
とは言っても展望はあくまでも展望であり、未来が過去になるまでは安心など出来ないのだが。

葵「イヤッホー!やったぜ!」

赤井「…良いニュースだったっぽいな、その様子は」

葵「うん!インテルがトップに加えてくれるって!一軍!遂に一軍になれるんだ!」

山森「それは素直に凄いな…おめでとう」

新田「でも、試合に出場するまでが大変なんだろ?」

赤井「下手するとレンタル移籍要員だからなあ。浮かれてたら痛い目見るぞ」

葵「大丈夫大丈夫!なんとかしてやるって気持ちが大事なんだよ!」

ホテルの別所ではたった今インテルの首脳陣から電話で一軍昇格のニュースを伝えられた葵が
小躍りしながら戻ってきた。年下組の4人は自然と固まって行動する事が多く、今夜もそうしていたのだ。

赤井「はあ〜、楽観主義は努力の証とは言うが…お前のその気楽さは羨ましいぜ」

山森「赤井はサンプドリアからの知らせは特に来ていないのか?」

赤井「今大会あんまり活躍していないしな…後もうちょっとで上がれると思うんだけどな〜」

新田「お前は堅実に実績を積み上げるタイプだから大丈夫だろ。少なくとも既にクラブに居るんだから羨ましいぜ」

葵「あれっ、新田や山森も何回かスカウトっぽい人達と会ってたりしなかった?
賀茂のおっさんも毎日色んな名刺を色んな人達から貰ってきて配ってきているじゃん」

109 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/23(水) 22:07:05 ID:Ppkwvt+c
山森「ああ、一応沢山名刺は貰っているよ。でもなあ…」

新田「うん、でもなあがつくクラブが多いんだよな…」

既にある程度の格があるヨーロッパのクラブに所属している葵、赤井、若林の3人以外の全日本ユースの選手達は
連日連夜色んなクラブからスカウトを受けていた。しかし当然勧誘の数や質は選手によってまちまちであり、
今まで集めた名刺をテーブルの上に広げる山森と新田は苦笑を隠せない表情になっていた。
それらを眺めていくと葵と赤井の二人もとても微妙な顔になっていく。

葵「どれどれ?これはトルコ、これはスイス、これはポルトガル、これはロシア…うーん…」

山森「それらはまだマシな方だよ。他にもスコットランドとかベルギーとかギリシャとかあるぞ」

赤井「ん?これは…カタールだと!?これってまさか…」

新田「ああ、片桐さんも多分帰化選手狙いだろうからこれは止めておけ、だってさ…下手するとオイルマネーで
無理やりFIFA規則を捻じ曲げようとするスキャンダルの当事者になってしまうぞって言われたよ」

葵「うわっちゃあ…あ、でもリーグ・アンとかエールディビジのスカウトの名刺もあるじゃん!
よく見たらブンデスリーガもプレミアリーグのもちょっとだけある!…あ、でも…降格圏内の下位クラブだね…」

山森「ああ。当たり前の事だけど、リーグの格が上がるとその分リーグ内の地位が下がるチームになるんだ。
賀茂さんにも有名リーグのチームなら何処でもいいなんて考えるなよ、チームになじめるかどうかや
降格の危険性も考慮すれば日本に居た方がずっとマシだって事も十分有り得るんだ…って力説された」

新田「なんか…世知辛いな、プロの世界って。選択肢がある分まだマシなんだろうけど…」

赤井「ま、まあ大丈夫だろ。ワールドユース決勝戦まで来たんだ、大会後にまたドバッと来るって」

一寸先は闇。光が続く保証はない。年下組はそれぞれ不安な夜を過ごしていた。

110 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/25(金) 21:33:38 ID:GmqirbB2
特に集まり易いグループが存在しない者達が結果的にグループを作る事もある。
政夫、和夫、次藤、早田、中里の5人はそんなグループだった。

次藤「ふー…流石に緊張してきて飯も喉ば通らんとね」

早田「おいちょっと待てお前何時も通り人の三倍は食ってたじゃねーか」

中里「実に美味そうに食うでゴザルな。力士も吃驚するであろう」

政夫「こいつと飯食ってると食欲が失せるんだよなー」

和夫「ダイエットしたい女にはモテるかもな」

次藤「なんやなんや、皆してワシをだごにして」

食欲がないと言いながらも人の数倍食べた次藤を他の4人で呆れて冷やかす。
そんな間の抜けた時間を過ごしていたのは5人とも明日を見据えて緊張していたからかも知れない。

政夫「俺は本当に食欲減ってたぞ。いや、スタメンじゃないけどさ…」

和夫「多分、明日も出番はないんだろうなあ…くそっ」

早田「仕方ねーだろ。お前ら二人一緒じゃないと出す意味がないんだから」

中里「一人で出来る事は他のFWが出来るからのう。それでは日向が居る限りは日の目を見れまい」

次藤「ばってん、明日の試合はとにかく一点が必要な場合もあるかも知れんばい?」

政夫「確かにそういう展開になりゃ俺達の出番もあるかも知れないけどよ」

和夫「チームが追い込まれた状況になるのを望むのは流石にしたくないぜ」

111 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/25(金) 21:34:46 ID:GmqirbB2
早田「まあ望むもんじゃねえな。けど相手はブラジル。いくら覚悟してもし過ぎって事はないぜ」

中里「その言葉の割にはお主は落ち着いておるな?」

早田「そりゃあ、今更一夜漬けの猛特訓でどうにかなる訳じゃないからな。落ち着くしかないだろ」

次藤「そうタイ。負けた時の事ば考えるより、勝った時の想像の方が楽しかとね」

政夫「勝った時…ブラジルに、勝って、優勝して、世界一か…うーん、想像しにくいな」

和夫「多分日本中からヒーロー扱いされるんだろうけど、それからどうするかって話だよな」

中里「勝って兜の緒を締める、でゴザルよ。それからは狙われる立場になるのだからな」

早田「狙われる立場か。良い言葉だぜ…倒すべき奴らが自分から来てくれるんなら楽でいいや」

次藤「Jrユース大会で優勝しても世界的にはマグレばし思われていたとね」

政夫「思えば日本サッカーも随分変わったモンだなあ」

和夫「三年前はワールドカップアジア予選敗退のニュースでガッカリしてたのになあ」

次藤「ワシらが変えたとね。新時代と言う奴タイ」

早田「次の目標は、日本はワールドカップに出て当たり前って言われる様になる事かな」

中里「(スポーツ忍者の夢も現実となりつつある。さすれば世界中の美女達の裸体も…フヒヒ)」

ブラジルを恐れつつもその恐怖を乗り越え糧とする。
そんな作業に勤しむ彼らの雰囲気は意外な程に和やかだった。

112 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/29(火) 23:58:16 ID:/yOKgAsY
チーム内の役割が近いスタメン組がグループを作る事もある。
中盤と中盤からやや後ろでプレイする事が多い岬、三杉、松山、中山の4人は今夜ロビーで集まっていた。
今夜の話題は日本に置けるプロサッカーの欠如と、それが変わりつつある手段だった。

松山「日本に…プロサッカーリーグ!?」

岬「うん、さっき片桐さんに聞いてみたんだ。そういった動きはありませんかって」

中山「そうしたら…どうだったんだ?」

岬「まだ何かハッキリ話せる段階じゃないけど、既に日本サッカー協会は色々準備しているそうだよ。
Jrユース大会優勝だけじゃ足りなかったけど、ワールドユースでここまで来たら効果抜群みたい」

三杉「日本には既にJSLがある。それを発展させる形で本格的なプロリーグ設立も可能だろう」

松山「マジかよ…何時かは出来るだろうと思っていたけど、こんなに早いとは思っていなかった…」

中山「有り難い話だよ。サッカーが強い国はプロサッカーリーグが必ずあるからな」

三杉「だが、あるだけではいけない。ちゃんとレベルの高いリーグとして運営される事が重要だ。そうだな…
ここは君の意見を聞きたいな、岬くん。日本がハイレベルなリーグを作り、維持するのは何が重要だと思う?」

岬「僕かい?うーん、難しいテーマだなあ…(三杉くんは頭が良いから迂闊な事言いたくないし)」

三杉「ゆっくりでいいよ。どうせ就寝時間まで長いし、欧州リーグを見る機会があった君の視点は
かなり参考になりそうなんだ(今、警戒したな。彼は自分の頭の良さをひけらかすリスクを良く知っている様だ)」

113 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/29(火) 23:59:46 ID:/yOKgAsY
松山「そうだな、俺も聞いてみたいよ!岬の話なら参考になりそうだ!」

中山「(岬は頭も人望もあるタイプだからなあ。引退したらサッカー協会でお偉いさんになるかも)」

岬「そうだね…(しょうがないな。三杉くん相手には下手に隠す方が怪しまれそうだ)
人口、経済力、交通網等はもう十分に整っていると思う。そして僕たちの活躍でサッカー人気が
急上昇しているのも間違いない。だから設立そのものは簡単だと思うんだ」

松山「設立は、って事は…運営が難しいのか?」

岬「うん、そうだよ。サッカークラブ運営ってお金がかかるからね。スポンサーは必須だし、
チケットやグッズの売上も重要だ。欧州のクラブはこれらが上手く行かずに経営難に陥る事も珍しくないよ」

中山「そうなのか…あ、そういえば貧乏クラブで苦労した選手の自伝とかあったな」

三杉「南米では欧州以上にそれらの特徴が顕著らしいね。日本人の場合元から生活レベルが高いから
設備をおろそかにする訳にはいかない。初期投資に見合う健全な経営が求められていくだろう」

岬「だからちゃんとお金が儲かる体制が必要だろうね。それには大勢のサポーターがお金を出してくれるのが
一番なんだけど、それだと年に数回の代表戦で活躍しているだけじゃ駄目だと思う。
設立段階である程度以上のレベルのサッカーを見せ、そこから代表戦で活躍する選手がどんどん出てくる様に
ならないとお客さんに飽きられちゃうんだけど…元がJSLだから、いきなりレベルを上げるのは難しいかな…」

松山「ああ、JSLはなあ…高校サッカーや大学サッカーと大してレベルが変わらないんじゃ…」

中山「確か、お前と岬はアジア予選前にJSLのチームで練習していたんだっけ」

114 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/04/30(水) 00:01:17 ID:DWEY3JPI
三杉「確かに既存の選手達だけでは、サッカーだけに専念出来る環境を整えても劇的な成長は難しいだろうね。
僕は外国人選手を多く入れるべきだと思う。世界の基準を肌で知り、それらを上手く取り入れたクラブが
リーグ内で優位に立てると言う状況を作れば選手達もクラブも急速なレベルアップを強いられるだろう」

松山「なるほど、そんな手段もあるのか…ああでも、追いつけないクラブも出てくるよな?
そういうのはどうするんだ?二部リーグを作って、昇格と降格を争わせるのか?」

中山「そういえば有名なリーグは必ずいくつかのレベルに分けられているな…これもきっと重要なんだろうな」

三杉「そう、それがいいだろう。敗者の受け皿と屈辱を用意しつつ、新規の競争相手でリーグのマンネリ化を防ぐのに効果的だ」

中山「…気がついたら随分具体的な話になってきたな。俺達が決める側じゃないのに」

松山「あっ…でも俺達だってもう当事者だろ。俺達の活躍に日本サッカーの未来がかかっているんだから」

岬「日本サッカーか…フランスに住んでいた頃は、馬鹿にされるばっかりだったなあ」

三杉「もう時代は変わったのさ。僕たちは世界サッカーの秩序に革命を起こした。次は革命後にどうすべきか、だ」

中山「全国大会に出る為に必死になっていたのが遠い昔みたいだ…不思議な物だな
(そう…俺はとうとうここまで来た。森崎の背中が遠ざかるのを見るだけじゃなくなった…長かった…)」

松山「(よーし、故郷に特大の錦を飾るぞ!それで…きっと藤沢と…)」

彼らは歴史の当事者達である。
彼らの世界への挑戦は、自国を大きく変貌させようとしている。

115 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/01(木) 00:24:44 ID:EFIEpwVQ
それぞれの事情でチーム内から孤立している者達も居る。
日向と若島津は仲が良い者がおらず、彼ら自身も親交など求めていなかった為この時も二人きりだった。

日向「若島津、お前はこの大会の後はどうするつもりだ?」

若島津「はい、いくつかそれなりのクラブから接触されていますがあまり有望な候補はありません。
ある程度の妥協は必要となりますが、選手を育てて売るタイプのクラブに行こうと思っています」

日向「そうか…言うまでもないが、俺は最初からビッグクラブを狙うぞ。既に列が出来ているからな」

若島津「そうですか…そうでしょうね」

日向「若島津、今更俺から慰めだの激励だのつまらん物は期待していないだろう。
俺はお前を利用する。お前は俺を利用する。それが俺達の関係だったし、これからもそうだ。
周囲は仲良くしているんだと捉えるだろうが、価値観と人生観が似通っているだけの話だ」

若島津「はい。貴方も俺も自ら望んで戦いに明け暮れる修羅です。今俺達の力の差、
立場の差は歴然としていますが…いずれは貴方の首を貰い受けに行きますよ」

日向「それでいい。それが勝負の世界の鉄則だ。どんな屈辱にまみれようとも、
どんな強敵が表れようとも、最後に生き残った奴が勝ち…これだからサッカーは止められんぜ」

若島津「他者を屈服させる喜び…チームスポーツなのにそれがある。堪りませんね」

スポーツマンシップと言う言葉を鼻で笑いたがるこの二人は上機嫌だった。
望んで修羅道を歩む彼らの先にも栄光が見いだせない訳ではない。
勝負の世界に身を置く者達は誰しも多かれ少なかれこの様な覚悟を強いられるのだから。

116 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/01(木) 00:26:15 ID:EFIEpwVQ
翼と若林もこの夜二人きりだった。彼らは日向達とは異なりチームメイトとの親交が無かった訳ではなく、
むしろ現キャプテンの森崎よりも人望自体は多く集めていると言えるかも知れない。
しかし早くから海外に出てプロになっていた為か、その影響でアジア予選には参加しなかった為か、
なんとなく特別扱いされる事が多いこの二人は今夜は特に誘うまでもなく二人きりになっていた。

翼「…とうとうここまで来たね。ワールドカップの前哨戦のワールドユースの決勝…
そして相手はドイツを倒したブラジルだ。随分とよく出来たシチュエーションだよ」

若林「俺もお前も子供の頃からこういう日を夢見ていた。そして今、それが現実になろうとしているんだ。
思い返せばお前が南葛小に引っ越してきてからの付き合いか。俺達は夢を…叶えたんだよな」

翼「うん。俺も君も有名なリーグのプロ選手になって、日本代表として戦っている…筈なんだけど」

若林「分かる…分かるぞ。夢を叶えた筈なのに、こんな筈じゃなかった…そう思っているんだろう?」

翼「そう、俺は夢を叶えつつある。子供の頃誰に言っても理解されなかったり笑われたりした夢が
段々現実になりつつあるんだ。武者震いはする。喜びもある。だけど…何か、ね」

若林「お前はまだいいさ。俺はサブGKだ。世界一になる瞬間をベンチから見ているってのは笑いそうだぜ」

翼「何なんだろうね、本当に。俺は森崎さえ倒せば全てが解決すると思っていたけど、
実際に森崎に勝っても何も変わらなかったよ。これが大人になるって言う事なのかな?」

若林「これが人生だ。不満なら自力で何とかしろ…そう言える様になるのが大人になるって事だと思うぜ」

翼「ハハハ…明日も勝とうね、若林くん」

若林「精々頑張って点を取れよ。そうしなきゃ森崎がまた何か馬鹿をやらかすぞ」

二人の表情は19歳とは思えない程大人びていたが、それを目撃したのもこの二人だけだった。

117 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/01(木) 22:27:23 ID:EFIEpwVQ
チームメイト達が思い思いの夜を過ごしている時、森崎はどうしていたのか。

森崎「ん〜、やっぱり世界一になる前夜ってのは独特の雰囲気があるな。
この俺でもほんの僅かばかり緊張せざるを得ないとは…なんちゃって」

森崎は独り言をつぶやきながらホテルの中を探索して暇つぶししていた。
彼がおどけた態度を取っているのはそれだけ余裕なのか、それともそういう心づもりを
作ろうとしているのかは彼自身にも良く分からない所だった。

森崎「…暇だな。まだ眠くないし、かと言って今チームメイトと話すのもダルいし…ん?」

陽子「………ふぅー」

そんなタイミングで彼がホテル備え付のバーの傍を通りがかり、
カクテルを飲みながらくつろいでいる陽子を発見したのは何かの運命だろうか?
陽子の表情からは軽くない疲労が伺え、森崎が通りがかったのにも気付いていない様だった。

森崎「(陽子さん…)」

A 決勝戦前なんだ。声をかけよう。
B 決勝戦前なんだ。黙って去ろう。

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118 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/02(金) 22:32:35 ID:gvF7ETNA
>A 決勝戦前なんだ。声をかけよう。

森崎「陽子さん」

陽子「っ!」

森崎が声をかけた途端陽子はビクッと肩をひくつかせ、それからゆっくりと振り向いた。
その顔には緊張感が隠せない程表れており、まるで隠し場所をみつけられた子供の様だった。

陽子「も、森崎くん…しまったなあ、こんな所で飲むんじゃなかった…」

森崎「なんだよ、俺と会いたくなかったのか?」

陽子「うん…だって、決勝戦前じゃない。こんな日に会うのはちょっと…」

A 「決勝戦前だからこそ、だろ。モヤモヤしたままじゃ嫌だぜ」
B 「俺はそんなの気にしないぜ。こんなプレッシャー、何時もの事だ」
C 「森崎くんに配慮しないと、って思いながら話すのが嫌なのか?」
D 「分かっているが、陽子さんを見たら話しかけられずには居られなかった」
E 「そうか。じゃあ今夜は止めておくよ。邪魔したな」

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119 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/05(月) 21:02:45 ID:IBd1v2mM
>B 「俺はそんなの気にしないぜ。こんなプレッシャー、何時もの事だ」

森崎「俺はそんなの気にしないぜ。こんなプレッシャー、何時もの事だ」

森崎は何時もの彼らしく大胆不敵な笑みを浮かべながら陽子の隣に座った。
だがその返答は陽子の眉をひくつかせる物だった。

陽子「森崎くんが気にしなくても、私が気にするのっ」

森崎「えっ?」

陽子「私は森崎くん程プレッシャーに強い訳じゃないんだから!」

森崎「(なんだなんだ、藪蛇だったのか?)」

A 「落ち着いてくれよ。こんな所で騒ぎを起こしちゃマズいだろ」
B 「悪い、デリカシーがなかった。チームメイトに接するみたいにやっちまった」
C 「酔ってるのか、陽子さん?何時もはここまで感情的じゃないぜ」
D 「だったらそのプレッシャーを俺に肩代わりさせてくれよ」
E 「だったら慣れてくれ。これからこの先、定期的にこういうプレッシャーを味わうぜ」

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120 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/06(火) 21:14:32 ID:T3dZy1Hg
>D 「だったらそのプレッシャーを俺に肩代わりさせてくれよ」

森崎「だったらそのプレッシャーを俺に肩代わりさせてくれよ」

陽子「…それって、どうやって?言う程簡単な事じゃないと思うんだけど」

森崎はあくまで強気で押し、自分の精神力を誇示した。
それが陽子にとって望ましい事なのかは彼女のふくれっ面からは何とも判断し辛かった。
照れている様にも見えるし、不機嫌の様にも見えるのだ。

森崎「どうやってって、そりゃあ…」

A 「俺はどんな奴が相手でも負けない。勝ち続けるのが当たり前になってみせる」
B 「俺を傷つけちゃいけないとか思わないでくれ。俺は陽子さんの本音が見たい」
C 「俺はどんなに苦境に追い込まれても諦めない。だから陽子さんも諦めないでくれ」
D 「俺を陽子さんと一緒に戦わせてくれ。フィールドの内外は関係ないぜ」
E 「俺は負けたらどうしようなんて考えない。勝ったらどれ程嬉しいか考える」

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121 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/07(水) 00:41:57 ID:9B+6AMzU
>B 「俺を傷つけちゃいけないとか思わないでくれ。俺は陽子さんの本音が見たい」

森崎「俺を傷つけちゃいけないとか思わないでくれ。俺は陽子さんの本音が見たい」

陽子「っ…!」

森崎がこう発言すると、陽子は目で見える程ビクッと震えて森崎をにらみつけた。
その目は浮き上がる涙で潤んでいて今にも水滴を零しそうだった。

陽子「…無理よっ、そんなのっ」

そのまま陽子は涙を拭い、グラスに残っていた酒を一気に飲み干してから
手の仕草だけでバーテンに次の酒を要求した。
顔の火照りが一気に激しくなったのは酒のせいだけではないだろう。

陽子「世界大会の決勝戦前なのよ!?そんなタイミングで対等に物が言える訳ないじゃない!
私が言った事が原因で森崎くんのメンタルコンディションが崩れたらどう責任取ればいいのよ!
ああっもう結局こんなに叫んでる!これでもう明日日本が負けたら私ずっと後悔し続けちゃうのよ?
どんな対応したってそれが原因で、なんて思わずには居られないんだから!」

森崎「………」

A 「有難う、本音を言ってくれて。それが聞きたかった」
B 「俺と一緒になってくれるんだったら、その悩みはずっと付き纏うんだぜ」
C 「もういいんだ陽子さん…いや、陽子。もう俺に憧れる必要はない」
D 「こんな風に距離を取られる方がよっぽど傷つくって分かってくれよ」
E 「飲み過ぎだぜ。マスター、さっきのオーダーはキャンセルで水をくれ」

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122 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/13(火) 09:46:31 ID:b7d0zvQo
>C 「もういいんだ陽子さん…いや、陽子。もう俺に憧れる必要はない」

森崎「もういいんだ陽子さん…いや、陽子。もう俺に憧れる必要はない」

陽子「………な、なによそれ。このタイミングで呼び捨てって、卑怯よ」

それでも尚森崎は一歩踏み出し、初めて陽子に敬称をつけず呼びかけた。
それを聞いた陽子はビクッと肩を震わせ、しばし黙ってから森崎を非難した。
しかし非難の言葉とは裏腹に彼女の顔は泣き笑いに変わっていた。

森崎「この前言っていたよな。自力で運命を切り開く俺に憧れて、
箱入りのお嬢様を止めたくなって、日本サッカー協会に駆け込んだって」

陽子「…うん…」

森崎「もうその夢は叶いつつあるじゃないか。俺…と翼をブラジルでサポートしてくれたのは
決して無駄じゃなかった筈だぜ?勿論その他諸々の働きもだ。
面倒な事をぜーんぶやってくれたから、俺達はサッカーに集中出来るんだ」

陽子「でも、それは私じゃなくても誰でも出来た事で…」

森崎「何言ってんだ。陽子は13歳で大学卒業してたんだろ?中学の勉強でヒーコラ言ってた
俺には想像もつかない世界だぜ。そのままいわゆるエリートコースの人生が待っていたんだろ?
でもその人生を投げ出して、未知の世界に飛び込み、こうして成功しているんだ。
こんなの、誰でも出来る事じゃない筈だぜ…俺には分かる。俺は世界を変えている真っ最中なんだからな」

陽子「………そこまで、私の事見て、考えてくれてるんだね」

森崎「そうだぜ。陽子は俺を見上げる側だと思っていたんだろ?でもこうして俺も陽子を見ている。
俺は興味の無い奴はあっさり切り捨てる。欲しいと思ったら素直に欲しがる。知ってるだろう?」

123 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/13(火) 09:49:51 ID:b7d0zvQo
陽子「ふぅ〜………あ、すみません。ミネラルウォーター、レモン付でください」

森崎「(お、酔いを醒ます気になったのか?)」

森崎の熱弁に陽子は段々ホッとした表情になっていき、先程注文した酒に手をつけず
水を注文したっぷりとレモン汁を絞り入れてからそれをゆっくりと飲み干した。
ここは間を置いて彼女の返答を待つべきだと判断した森崎も口を閉ざし彼女の顔の赤みが
薄らいで行くのを見守る。ややあって期待通りに陽子は口を開いた。

陽子「…私と本気で交際する様になったら大変だよ?」

森崎「片桐財閥の事か?」

陽子「うん。お父さん、サッカー大嫌いで仕事一筋の人だから…今の所は何もしてきてないけど、
その内色々嫌がらせしてくるかも知れない。森崎くんを呼び出したりするかも知れない。
あるいはマスコミにスキャンダルを書かせたりするかも…でも…」

陽子は今一度確認する様に自分の家庭事情とそれに森崎を巻き込んでしまう事を説明した。
それに対する森崎の返答は。

森崎「………」

ニヤリ。

陽子がため息をつきたくなる程の悪人めいた笑みだった。

陽子「はぁ〜…そうよね。あなたがそんな事、怖がる訳ないものね。
全く、なんでこんな唯我独尊どころか傲岸不遜な…」

だがその笑みは陽子の次の言葉と行動で消え去った。

124 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/13(火) 09:54:03 ID:b7d0zvQo



陽子「…こんな人、好きになっちゃったんだろ…」

森崎「えっ!?んむっ!」



陽子は突然好意を打ち明け、森崎がその驚きから回復する前に顔を寄せて唇を重ねてきた。
それはほんの一瞬の事で、すぐに彼女は離れたが、その瞳は潤みながらもまっすぐ森崎を見据えていた。



陽子「有難う…ゆ、有三。私、もう貴方には憧れない。何時までもそれだけじゃ嫌だから…頑張る。
後ろから憧れるんじゃなくて、ちゃんと胸を張って、大好きな貴方の隣に居られる様に…ね」

森崎「よ、陽子…」

陽子「…も、もう寝るわね。明日に備えてちゃんと寝なさいよ!これで睡眠不足だったりしたら承知しないんだから!」

スタタタ…

勇気を全部出しつくしたのか、陽子は酔いを物ともしない駆け足でバーから立ち去っていった。
後に残された森崎はポツンとしてから、自分の唇に指で触れてみた。



森崎「ファーストキスはレモンとカシャッサの味、か…」




125 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/13(火) 09:55:32 ID:b7d0zvQo
バーテン「祝福を申し上げます。ですが、あの女性はお勘定を忘れてしまいまして…」

森崎「ん?あー、いーよ、俺が払っておくよ。俺が割り込んだ形だったしな」

バーテン「有難うございます。さて、カップルの誕生にはバーテンとして祝福致しますが、
ブラジル人としては明日の試合のご武運は祈れません。それはご了承ください」

森崎「要らねえよ。どうせ俺は明後日からはブラジル中から恨まれている立場になるんだ。
あの夜下剤でも仕込んでおけばよかった!って思う事になるぜ」

バーテン「ハッハッハ、聞きしに勝る大胆不敵ぶりですね。ですがそういった男性に人間的魅力があるのも事実。
野心に燃え、それを叶えられるかも知れない力を持つ男性に憧れる女性も少なくない。
そんな特別な存在に特別扱いされるのもまた愛情ですからな。ツメを誤りさえしなければ
彼女のハートはいずれ貴方の物となります…とお節介を焼いておきましょうか」

森崎「…バーテンって人種はそういうアドバイスをしたがるもんなのか?」

バーテン「然様です。人間観察が好きでなければこういう仕事は辛いですからね」

森崎「全く…もう帰る。勘定頼むぜ」

バーテン「はい、ただいま」



*陽子→森崎の関係が「????」から「大好き」になりました。

126 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/13(火) 10:03:15 ID:b7d0zvQo
森崎「(そうか…陽子には俺の足手纏いになるんじゃないかって後ろめたさがあったんだな。
だったら安心させなくちゃな。俺は女を欲しがっただけでダメになる様な奴じゃない。
女だろうと世界一だろうと、欲しい物全てを全力で手に入れてみせる男だって言う所を見せる。

そうだ、俺は森崎有三だ。欲しい物は何でも手に入れる。今欲しいのは世界一だ!
世の中には二種類の人種が居る。ナンバー1と、ナンバー2以下だ。
俺はナンバー2以下になるのは嫌だからここまで来た。そして今度もナンバー1になる!
ここも通過点に過ぎない。ワールドカップにヨーロピアンカップ。
バロンドールに…今年から設立されるFIFA最優秀選手賞ってのもあったな。それも頂きだ。

俺は森崎雄三だ!相手がブラジルだろうと何だろうと、必ず勝って、全てを手に入れる!)」



バーテン「こちらがお勘定になります」

森崎「おう…ん!?な、なんだこの値段!?ってそういやブラジルはインフレが激しいんだった…」

カサカサカサ…
チャリンチャリンチャリン…

バーテン「…大変失礼ながら、これでは足りません」

森崎「…チ、チームメイトから借りてくる…(ブラジルの金を持っていそうな奴…ゲッ、あいつしかいねえ!)」



翼「ふーん、いきなり来て何を言うのかと思えば…いいよ、ちゃんとインフレを考慮して返してね」ニヤニヤ

若林「プッククク…」ニヤニヤ

森崎「ぐ、ぐぐぐ…さ、サンキュー…(くっそぉおおおお!決勝戦前夜にこんなムカつく思いを〜〜〜っ!!)」

127 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/14(水) 00:08:37 ID:DMJOwuf+
〜大会25回目〜

何らかの玉を蹴る遊びは紀元前から世界の様々な場所で存在していたと言われるが、
現在サッカーと呼ばれる競技が正式に生まれたのは19世紀中期のイギリスとされている。

この競技はブラジルと日本には1870年代と言うほぼ同じタイミングで伝わったとされるが、
その後の発展の仕方は全く異なる物であった。



最初にブラジルにサッカーを広めようとしたのはイングランド留学帰りの一人のスコットランド人だったと言う。
まず上流階級にサッカーが広まり、1930年代から国技と呼ばれる程人気が高まっていき、
当時から世界屈指の強豪国と見なされていたもののワールドカップで初優勝を達成したのは
1958年のスウェーデン大会だった。その後1962年のチリ大会、1970年のメキシコ大会でも
優勝し通算三回の優勝で1991年の時点では旧西ドイツと並び最多優勝回数を誇る。

しかし1982〜1990年のワールドカップでは3回とも優勝はおろかベスト4にすら入れず、
“歴史と実績があり間違いなく強豪国だが、最近は低迷しつつある”といまいちな評価が
定着しかけているのが今のブラジルである。この現状をブラジルが良しとする訳もなく、
今回自国開催となったワールドユースで華々しく優勝し1994年ワールドカップでの復活に
繋げたいのは言うまでもない。ましてや突如現れた新興国にそれを阻まれるなどあってはならないのである。

128 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/14(水) 00:10:31 ID:DMJOwuf+
一方日本においては最初はイギリス人が日本にサッカーを持ち込み、体育の一環として全国に広がった。
しかしあくまで学生の教育の一環とされた日本サッカーは1917年に行った初の国際試合で
当時の中国とフィリピンに大敗する程脆弱だった。その後も基本的にサッカー弱小国とされたまま
第二次世界大戦の影響でサッカー文化が中断されてしまい、1968年のメキシコオリンピックで
銅メダルを獲得した事以外はまるで良い所がなく、1991年の時点で未だワールドカップには未出場である。

この取るに足らないアジアの弱小国と言う評価は今、驚天動地の勢いで全く別物に塗り変えられつつある。
1986年フランスで行われた第一回国際Jrユース大会でお客さんとして招待された筈の
日本がまさかの優勝を遂げたのだ。この時のチームのメンバーが主となって今回のワールドユースでも
アジア予選初突破、本大会初出場に飽き足らず決勝戦まで勝ち進んだ事によって
日本のサッカー文化も世界のサッカー勢力図も劇的に作り変えられつつある。



かたや復活を目指す誰もが認める伝統的な強豪国。

かたや世界で類を見ない程急速に成長した新興国。

これから数年のワールドサッカーの行方を左右するであろう決戦の日がついに来た。

129 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/14(水) 00:13:30 ID:DMJOwuf+
日本人記者達「ぐわーっ、なんて人ごみだ!?」「ホントにこの道でいいのかよ?」「人の流れに沿ってりゃ辿り着くだろ!」

日本サッカー協会関係者「ここも渋滞か…」「おいおい、三時間は余裕を見た筈なのに…」「これで間に合うのか?」

南葛関係者達「に、肉まんの波に押しつぶされるぅ〜…」「痛い痛い痛い!押されて体が痛い!」
「もう駄目、暑くて暑すぎて倒れる…」「やだ、折角持ってきた応援グッズが汗だらけ!」

この日のリオデジャネイオロは当事者の2国は勿論、世界各国から報道陣とサッカー関係者が押し寄せていた。
地球の反対側まで応援にかけつけた日本人達は筆舌に尽くし難い苦労をしながらマラカナンスタジアムに進んだと言う。

骨皮「よ、陽子しゃん、ただいま到着しました〜…」

陽子「ご、ご苦労様…大丈夫?もうすぐ選手達のバスが来るけど…」

骨皮「えっ、もうですか!?皆、急いで旗とか横断幕とか用意して!」

南葛関係者『お、おう!!』

賀茂「日本から来てくれたのは良いが、ちと危ない目に会わせちまったな」

片桐「サポーターが快適に応援できる環境作りも今後の重要な課題となりますね」

長野「旗よーし!」

岩見「幕よーし!」

小田「メガホンよーし!」

早苗「…うん、これで準備OKね」

130 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/15(木) 21:05:29 ID:Tp/GLA8M
ブロロロロロ…
プシュゥウウン。

森崎「よーし、着いた着いた…うおっ!?」

翼「!!!?!」

ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

一番先にバスのドアから降りた森崎を皮切りに、全日本ユースの選手達全員が応援団の盛大な歓迎を受けた。

長野「来た!森崎だ!うぉーい、久しぶりー!」
岩見「サプライズ計画は成功だな」
小田「うわー、凄いオーラを放ってるなー…」
大川「全日本ユース決勝進出おめでとう!」
小暮「森崎先輩!お久しぶりです!」
山田「もう一度世界一の日本を見せて下さい!」
剛田「アンタならやれる!やっちまえ!」
森崎父「す、すごい立場になっちゃったな有三…」
森崎母「我が息子とは思えない出世ぶりだわ…」

特に数が多く目立つのは南葛の関係者達で、彼らの多くが森崎に群がりながら
“世界を手にする日本の風雲児! 森崎有三”と書かれた横断幕をデカデカと見せつけてきた。

森崎「なんだこりゃ…あ、骨皮!お前の仕業か!」

骨皮「そうですよ!決勝戦になったら皆で駆けつけようって企画していたんです!」

131 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/15(木) 21:07:33 ID:Tp/GLA8M
A 「粋な事するじゃないか。皆、わざわざブラジルまで来てくれて有難うな」
B 「チェッ、照れるだろうが。こんな事されなくても俺は勝つぜ」
C 「皆、帰りは気をつけろよ。日本人はしばらく恨まれる事になるからな!」
D 「よう皆。南葛は今どうなってる?まだ日本一の座を保っているか?」
E 「親父…お袋…そんなにキョロキョロしないでくれよ、恥ずかしい…」

      http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1369149231/l50にて
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132 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/16(金) 23:36:25 ID:9d5PSlbg
>C 「皆、帰りは気をつけろよ。日本人はしばらく恨まれる事になるからな!」

グッ。

予期していなかった応援団の登場に、森崎がサムズアップと共に返した答えは実に彼らしいものだった。

森崎「皆、帰りは気をつけろよ。日本人はしばらく恨まれる事になるからな!」

彼は日本が優勝しブラジル人の恨みを買う事になる、と豪語したのだった。

長野「お〜っ、優勝するから恨みをぶつけられない様にしろって意味か!」

岩見「確かに気性の激しいファンが暴動を起こす可能性もあるな」

小田「ハハハ、森崎らしいや…負けたらどうしようなんて考えないんだな…」

南葛市民「うぉー!」「カッコいいぞ森崎ー!」「きゃー!素敵ー!」

その強気の態度は好意的に受け止められた。
以前森崎とチームメイトだった者達はこの精神力の強さを良く知っており、
それに伴う横暴さももう直接被害を受ける事はない立場になると良い思い出に美化されたのだ。
勿論その横暴さを味わう機会が無いただのファンは単純に頼もしいとしか感じない。

ただ、この気の強さは決して遺伝による物ではないのだろう。

森崎父「お、おいおい、いいのかそんな事言ってしまって…」

森崎母「母さん、暴徒に乱暴されるなんていやよ!?」

133 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/16(金) 23:50:53 ID:9d5PSlbg
ズルッ。

森崎「親父ぃ…お袋ぉ…頼むからもうちょっと堂々としていてくれよ。
俺の親なんだからマスコミが取材に来たりするだろうし…」

森崎父「ひいいっ、言わないでくれっ!こないだなんか会社までどっかの雑誌の
記者が乗り込んできて、お前がいると仕事にならないって叱られたんだ!」

森崎母「近所の奥様達もあなたのサイン寄越せってうるさいのよ!
ブラジルに居るから無理ですって言っただけで恨まれるし!」

森崎「た、頼りねぇ〜…そんなの強気で追っ払えよ!」

小暮「(初めて会ったけど、森崎先輩の親御さんってこんなに気弱だったのか…)」

山田「(息子が日本屈指の有名人だと大変なんだろうなァ)」

剛田「(俺なんかかーちゃんがお前は何時日本代表になるんだい!って煩いのに)」

森崎の父母は一般的なサラリーマンと専業主婦であり、息子が有名になるにつれ周囲から視線が集まる事に大層困っていた。
その小心ぶりは息子とは似ても似つかない有様で、正しく鳶が鷹を産んだケースと言えよう。



城山「お、お〜〜〜い森崎!助けてくれ、助けてくれぇ〜」

森崎「あん?南葛SCの…(名前何だっけ)記者に囲まれてるのか?…ひょっとして俺の親戚に間違えられたのか!?」

ちなみに赤の他人だが森崎と顔が似ているかつての恩師もこの場に居り、はた迷惑な珍事を起こしていたと言う。

134 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/19(月) 22:29:27 ID:bACi0klc
森崎が何処か間が抜けた交流に勤しんでいる頃、すぐ傍ではそれに似ても似つかない程
真剣で、笑いの余地など何処にも入りそうにない光景があった。

バスから降りた直後に翼は見た。

ブンッ、ブンッ!

早苗「翼く〜ん、頑張って〜っ!」

翼「(さな、え、ちゃん…!?)」

小学生時代、南葛小の応援団団長だった頃の様に彼の名前入りの応援旗を振っている中沢早苗の姿を。
お手製の旗はツギハギだらけだった昔に比べると格段に出来が良くなっていたが、
そこに記されたメッセージは昔と同じく“ファイトつばさくん”だった。

西本「翼くん、とうとうここまで来たんだから行けるわよ!」

杉本「世界一になってくださいね〜!」

大空広大「好きこそ物の上手なれ、だ!世界一サッカーが好きだと証明しろ!」

大空奈津美「こらぁ放蕩息子!連絡の一つも寄越さないんだからわざわざ来てやったわよ!」

大空大地「兄タン、がんばれ!」

翼「(父さん…母さん…大地…マネージャー達まで…皆、来てくれたのか?俺の為に?
早苗ちゃんにあんな事をした俺をまだ応援…いや…まさか、知らないのか!?)」

135 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/19(月) 22:31:29 ID:bACi0klc
そして応援にかけつけたのは早苗だけではない。あれ以来気まずさと恐れのあまり連絡を絶っていた彼の家族も
事情を聞いたら激怒していそうな南葛中の関係者達も彼に熱烈な応援を浴びせてきた。
まるで彼が早苗を傷つけ、彼が早苗から逃げだした事など元から無かったかの様に。

早苗「翼くん…夢を叶えて!貴方はサッカーがしたいんでしょう?サッカーが好きなんでしょう?」

翼「!!!」

だがあれは紛れもなくあった出来事で、早苗は間違いなく傷ついていて、それでもここに来てくれたのだ。
それは彼女の足元にあるあの日置き忘れたサッカーボールと、二人しか分からない言葉が証明していた。

翼「(このマラカナン・スタジアムに早苗ちゃんが…)」

翼の脳裏に様々な思いがよぎる。
あんな事をしでかした自分をそれでも応援してくれるのか?
周りに漏らさず自分を守ってくれたのか?

それは果たして何を意味しているのだろう。未だに彼を大事な存在と見なしているのか、
一ファンとして選手を応援しているだけなのか、それとも彼女の人生に区切りをつける為の最後の応援なのか。

無数の感情と思考が駆け巡り…一つの結論にまとまった。

どんな意味でも構わない。応援されているのだから、最高のプレイをし、そして勝つのが今やるべき事。

翼「(………よし!!)」

スッ。

翼は右手を頭の横にかざし敬礼の様なポーズを取った。
それは4年前ブラジルへの旅立ちを早苗に見送られた時取ったポーズだったが、それを知るのも二人だけである。

136 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/20(火) 00:33:50 ID:+qfUtmIU
当然の話だが、日本から応援にかけつけたのは森崎と翼の関係者だけではない。

三杉父「おお淳!なんて立派な姿だ…!」

三杉母「誇らしいわ、淳…!」

三杉「父さん、母さん、来てくれたんだね。有難う。そして…」

弥生「じ、じゅ、淳…(ご主人様の命令とは言え、ご主人様を呼び捨てだなんて…!)」

三杉父「ハハハ、相変わらず初心な子だな。もっとリラックスしていいだろうに」

三杉母「(なんでかしらねえ、この子と淳を見ていると得体の知れない嫌な予感が…)」

三杉「フフッ、今日も有難う弥生。体調と周囲の安全に気を付けて観戦してね
(ちゃんと言いつけを守っているね。ご褒美に僕を呼び捨てしたお仕置きをしてあげよう)」

弥生「(ああああ、ゾクゾクする…!だめ、我慢しないと、後でお仕置きして貰えない…!)」

真田「三杉さん、思う存分やってください!」

本間「俺は何も心配していませんから、お気楽に」

一之瀬「自慢させて下さい、かつてチームメイトだった事を!

三杉「ああ、見ていてくれ。日本がサッカー弱小国だった時代は今日終わる」

三杉は駆けつけてくれた両親、婚約者、そしてかつてのチームメイト達と表面上は暖かく
交流していた。水面下では淫靡で背徳的な意思交換があったのは言わぬが花だろう。

137 :2 ◆vD5srW.8hU :2014/05/20(火) 00:37:11 ID:+qfUtmIU
山森「(家族が来てくれたのは嬉しいけど…)」

一方山森は家族が来たのは当然嬉しく、南葛時代のチームメイト達とも
交流していたのだが一つ悲しく思っている事があった。

山森「(杉本…こっちを見向きもしてくれないなあ…)」

かつて彼が交際を申し込んだ南葛のマネージャー、杉本久美は彼から露骨に顔を背けていたのである。

山森「(俺ってそんなに女にモテないのかなあ…)」

山森正吾は温厚な人柄と輝かしい経歴とは裏腹に、同年代の女子からは人気がなかった。
嫌われていた訳ではないのだが、少しでも仲良くなりそうな雰囲気になると遠ざかられるのである。
それが何故か山森は皆目見当はつかず、自分が男として魅力がないのかと判断せざるを得ず落ち込んでいた。

真相は全く逆で、彼と親しい仲になりたい少女は決して少なくなかった。
だが一人の女がそれら全てを影から日向から阻んでいた。

琴音「山森チャチャチャ♪山森チャチャチャ♪」

杉本「(ごめんなさい、山森先輩…私、あの人が怖いんです…)」

今日も山森のユニフォームを着て応援している塩田琴音である。
かれこれ4年彼をストーキングしている彼女のせいで恋人が出来ないのだとは山森は知る由もない。

山森「(あの人毎日応援してくれるなあ…あんまり試合に出ていないのに、申し訳ないな。
あれ位熱心なファンが年下の女の子で居たらなあ…すぐにこっちからお近づきになるんだけど)」

そして山森は年下好みで年上はノーサンキューだと言う事を琴音も知る由もない。

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