キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【松山の魂】俺inキャプ森4【はためく鉢巻】

1 :森末(仮):2014/03/04(火) 20:50:10 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品です。
参加者の皆さんの選択、及びカード引きによって物語が展開していきます。

他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆

【かつて見た】俺inキャプ森3【栄光の道】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1383060597/l50

☆あらすじ☆

キャプテン森崎を心から愛する男板野住明はある日キャプテン森崎の精、
通称『森末』からキャプテン森崎の外伝スレへと参加してみないかと提案をされ外伝世界へと飛ばされる。
ふらの中学で松山達と共に鍛錬を繰り返し、1年と少しの期間を費やして臨んだ3年目の全国大会。
板野は「マグナムシュート」を武器に大暴れをし、1回戦・早田率いる『東一中』、2回戦『錦が丘』、
3回戦・立花兄弟のいる『花輪中学』、4回戦・次藤率いる『比良戸中学』を次々に撃破していく。
迎えた準決勝、これまで辛酸をなめさせられ続けた若島津が待ち受ける東邦とぶつかるふらの。
三杉の助言もあり松山DF案を使ったふらのは板野の不調もあり攻めあぐね、対する東邦も決定打を欠く。
後半15分、キャプテン小池の先取点でようやく東邦がリードをするも奮起をしたふらのの猛攻、
そして板野のマグナムシュートの応用技『マグナムボレー』で同点に。
決着はつかず、勝負はPK戦にもつれ込み、一度は負けた筈だったが時間は巻き戻され互角に勝負を進め……。

65 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 00:53:56 ID:???
ちょっと惜しかったけど、松山のこと考えればグットな引きさ。
逆に考えるんだ、クラブAや2だったら大惨事だったのを回避できたと考えるんだ。

66 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 01:03:01 ID:???
新スレ立て・更新乙&スレタイ採用どもです。
JOKERのロベルトは妖精さんかしら。
翼のいない世界で何見つけるんだろう、ツボの心配(特に残尿)はもう無いし。

67 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 01:57:15 ID:???
ジュニアユース編はどうしようかね
一番悩むのは板野の相方だけど新田鍛えるしかないんかな

68 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 12:13:29 ID:???
とりあえず、松山に対して
「早くしろー! 間に合わなくなっても知らんぞー!」
とでも言っておくか

69 :森末(仮):2014/03/05(水) 22:46:20 ID:???
>★観客席のドラマ→ ハート6 ★
>ああっ!藤沢がお母さんに連れられて観客席を後にしようとしてるぞ!
========================================================================
板野「あっ……!(そ、そうか……俺達が負けたから……!)」

観客席に目を向けた板野が目にしたもの、それは今まさに母親に手を引かれて観客席を離れ、
遠くアメリカの地で待つ父親の元へ一刻も早く向かおうとする藤沢の姿であった。
一体何をそこまで急ぐ必要があるのか、と原作を目に通した時に思ってしまった板野であるが、
とにかくふらの中学が敗退をした事で藤沢とはこれでお別れ。
本編での悲惨な結末を思い出した板野はその衝撃で一瞬にして涙が引き、
どうしたものかと目を白黒させながら思案をする。

板野「(松山は……ああっ! 若島津達と話し込んでる!
    このままじゃ藤沢がアメリカに行っちゃう事に気づかないままかもしれないぞ!?
    どどど、どうしよう!?)」

A.「松山、松山!! 藤沢がー!!」 大声で松山を呼ぶ
B.「松山、観客席を見て! 藤沢がお母さんと一緒にいるよ!」 近づいて松山に観客席を見るよう告げる
C.「ふっ、藤沢ー!!」 いっそ自分が藤沢を追いかける
D.「(いや、ここは大人しく見守ろう)」 大人しく見守る
E.その他 板野くんに言わせたい事を書いてください

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

>>63 海外編は悩んでいる所です。特に松山の場合は、
    確かにサッカー不毛ではありますがようやく思い人と一緒になれる場面ですので。
>>65 クラブAや2が出ていた場合を想定すると恐ろしいですね。
>>66 乙&スレタイありがとうございます。浮浪者っぽい男は、実はロベルトではありません。彼もその内出てくるかもしれませんが。
>>67 新田、反町、来生、滝、佐野、立花とタレントは豊富ですね。今の所は立花兄弟が1番板野に好感を持ってくれていますが、
   これから先どう転ぶかは選択と判定次第ですね。
>>68 板野の髪の毛がM字にハゲそうですねw

70 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 22:47:29 ID:6Je8gy+s
B

71 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 22:49:27 ID:???

A+>>68

72 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 22:49:58 ID:vL+B+pMg


73 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 22:50:31 ID:Aqh45dIg
E>>71

74 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 22:50:32 ID:O9ds9dQI

A+>>68

75 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 22:50:45 ID:6S94OFR2

この世界の松山もせっかくだし地獄の力を身につけさせよう

76 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 22:55:17 ID:JJg8m9ic
C

77 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 22:55:30 ID:CDVioqDg
E 森崎直伝、空港に爆破予告する

78 :森末(仮):2014/03/05(水) 22:57:23 ID:???
一応>>73さんのものでも意味が通用しますので、
E.A+「早くしろー!間に合わなくなっても知らんぞー!!」で進めさせていただきます。

79 :森末(仮):2014/03/05(水) 23:03:30 ID:???
>E.A+>>68
=============================================================================
板野「松山、松山!! 藤沢がー!!」
松山「えっ!?」
若島津「む? ……なんだ?」
小池「藤沢? 誰だそれ?」
沢田「(板野さん、さっきまで泣いてたのに……)」
反町「(何をそんなに慌ててるんだ?)」

あまりの事態にパニックに陥った板野は、思わず松山の注意を引く為に叫んでいた。
その大声はフィールド中にこだまし、すぐさまフィールドに立つ全員が板野に目を向ける。
ふらのメンバーの多くは、「そういえば藤沢は負けたらアメリカに転校するんだっけ」程度の気持ちを持って観客席に目を向け……。
しかし、呼ばれた当の本人である松山は焦った様子で観客席に目を向ける。

板野「早くしろー!! 間に合わなくなっても知らんぞー!!」
松山「!!」

そして、続いて出た板野の言葉を受けて、松山は気づく。
そう、松山は決意をしていた……3年間の付き合いの中で、自分が藤沢美子に対して確固たる恋心を抱いている事を自覚した時から、
藤沢がアメリカへと転校をするという事を聞いて、必ず彼女が自分の元から離れる前に告白をしようと。
若島津らが怪訝な顔をし、疑問を持つ中、松山は……。

先着1名様で、

★荒鷲の恋・完結編?→! card★

と書き込んでください。マークで分岐します。

JOKER→松山「藤沢ー!俺だー!結婚してくれー!!」 あー!?色々すっ飛ばしたー!!
ハート→松山「藤沢ー! 好きだーー!!!」 なにィ!?公開告白だと!?
それ以外→松山「藤沢ー!」 荒鷲ダッシュだ! 藤沢を追いかけるぞ!

80 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 23:03:57 ID:???
★荒鷲の恋・完結編?→ スペード5

81 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 23:03:59 ID:???
★荒鷲の恋・完結編?→ ハートQ

82 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 23:05:26 ID:???
おしい!

83 :森末(仮):2014/03/05(水) 23:19:41 ID:???
>★荒鷲の恋・完結編?→ スペード5 ★
>松山「藤沢ー!」 荒鷲ダッシュだ! 藤沢を追いかけるぞ!
======================================================================
迷う事なく、松山は藤沢の名を叫びながら走り出していた。
その思い人から送られたハチマキをなびかせ、一心不乱に会場から姿を消そうとする藤沢の後を追う。
しかし、呼ばれても藤沢達の耳には松山の声が聞こえないのか、彼女は母と共に観客席を後にし、
原作同様、空港へと向かう為にタクシーを拾ってしまうのだった。

小池「ポカーン」
若島津「……なんなんだ、アイツは」
沢田「ど、どうしたんでしょうね? 藤沢さんって誰なんでしょう?」
反町「(常識的な奴かと思ってたんだけど……変な奴だったりするのか? うーん?)」

そして、途方に暮れるのは松山と話をしていた東邦の面子である。
先ほどまでは互いの健闘をたたえ合う言葉を述べあい、そして決勝に進む東邦にエールを送っていた松山だったが、
いきなり板野が大声を出すと、即座にその場で反転をしてこのフィールドから出て行ってしまったのだから混乱をしても仕方がない。
小池は口を大きく開いて茫然とし、若島津は眉をひそめて訝しむ。
沢田はアワワと言わんばかりに若島津と松山が出て行った方角を見比べ、反町は松山に対する評価を改めるべきかと考えていた。

板野「(……うん、いやまぁ、そりゃ驚くよね。 どうしよう、若島津達に説明しておこうか?
    でも下手に言いふらし過ぎるのもよくないかなぁ?)」

A.「実は藤沢ってマネージャーがいて……」 事のいきさつを若島津達に説明する
B.「まあちょっと事情があるんだ。 さっきまで話してたのにごめんね」 ぼかしつつ松山の非礼を謝る
C.「(いや、別に何も言わなくていいかな)」 特に説明しない
D.「(いや、それよりも俺も松山の後を追おう!)」 松山の後を追う
E.その他 板野くんに言わせたい事を書いてください

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

84 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 23:22:03 ID:dJrOkeSI
B

85 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 23:22:18 ID:CDVioqDg
E B+若島津はFWやったことあるか聞いてみる

86 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 23:22:52 ID:O9ds9dQI


87 :森崎名無しさん:2014/03/05(水) 23:24:12 ID:lkQerrKs
E
「すまん、後で説明する」と一言だけ言った上で+D


88 :森末(仮):2014/03/06(木) 00:37:48 ID:???
>B.「まあちょっと事情があるんだ。 さっきまで話してたのにごめんね」 ぼかしつつ松山の非礼を謝る
===================================================================================================
反町「え、なんだ? 板野は事情を知ってるのか?」
小池「そういやさっき叫んでたのってお前だったよな……一体なんだってんだよ」

板野が若島津らに説明をする為に声をかけると、彼らは驚いたような表情を浮かべつつも納得をする。
先ほど松山が急に叫び、走り出したのは板野が大声をかけて呼んでから。
普通に考えれば板野が松山が走り出した理由を知っているのだろうという事はわかり、一体何があったのかと説明を求めるのだが……。
板野はあくまでもボカしつつ、少し用事があった為に松山はこの場から離れたと説明。
いきなり挨拶も無しにいなくなった非礼を詫びつつも、根本の原因にまでは言及をしない。

小池「なんだよそれー! 人に言えないような事なのか?」
板野「うーん、それは、その……ちょっとデリケートな問題だから。
  (あんまり色恋の事を外野が言いすぎるのってよくないよなぁ……)」

そういった気遣いから、板野は小池がしつこく言い縋っても口を閉ざす。
最初はその板野の態度に焦れていた小池であるが、若島津ら他の者の注意もあってか矛を収め、
それでも憮然とした態度で頬を膨らませる。

小池「ちぇっ、言ってくれたっていいだろ。 こう見えても俺は東邦一口が堅い男としても有名なんだぞ」
板野「(……絶対嘘だ)」
若島津「そこまでにしておけ、小池。 デリケートな問題、というのなら俺達にも心当たりはあるだろう」
反町「ああ……そうだったな」
沢田「ちょっ……あれですからね!? 僕のお婆ちゃんは別に死んでいませんからね!?」

沢田が吉良監督に特訓をつけてもらう為に離脱をした時の言い訳が彼らの心に未だに残っていたのだろうか、
デリケートな問題とあっては仕方ないと納得をした彼らは、松山の非礼にも特に気にはしないと言い、
しばらくその場で板野と雑談を交わした後、このフィールドを去って行った。

若島津「(それにしても、なんというか……締まらん最後だったな)」
小池「(言えない事情かぁ……やっぱり身内に不幸があったとかなのかなぁ? でも、板野がなんでそんな事知ってるんだ?)」

89 :森末(仮):2014/03/06(木) 00:38:49 ID:???
こうして板野が若島津らと別れていた頃、会場を後にした藤沢は母親と共に空港へと無事に到着をしていた。
途中でホテルに寄り、着替えをしていた為に時間は取ってしまったが、出発予定時刻までの余裕は十分。
というよりも、もしも今日ふらのが勝利をしていたら、母はこの予約していたチケットをどうしたのだろう。
そんな事をおぼろげに考えながらも、藤沢美子は母の後をついて出発ゲートをくぐろうとしていた。

藤沢母「美子、急いで」
藤沢「はい……」

これから自分は、遠くアメリカの地へと引っ越しをしなければならない。
父親の仕事の関係上、今まで何度も別れを繰り返してきた藤沢であったが、
やはりこの友達と別れるという寂しさは何度繰り返しても慣れるものではなかった。
それになによりも、藤沢の心残りは――。

藤沢「(松山くん……)」

このふらの中学での3年間、サッカー部という活動を通して一緒に過ごした彼を、藤沢は想っていた。
それは周囲からしてみればはっきり言ってバレバレであり、藤沢と松山との関係にやきもきしていたのは町田と板野だけではない。
しかし、藤沢の引っ込み思案で自分を押しとどめがちな性格故か、それとも松山が鈍感過ぎる為か。
両者は結局くっつく事はなく、こうして別れの時がやってきてしまった。

藤沢母「美子、パスポートは持ってるわね?」
藤沢「…………」
藤沢母「美子?」

ドン

物思いに耽りながらパスポートを手に持ち、前を向いた瞬間――藤沢は手に提げていたカバンを手落とした。

松山「藤沢」
藤沢「松山くん……」

つい先ほどまで――否、これまでずっと思い続けていたその相手が、ユニフォーム姿のまま目の前に立っていたからだ。

90 :森末(仮):2014/03/06(木) 00:40:40 ID:???
松山「ど、どうやら間に合ったみたいだな」
藤沢「ど……どうして?」
松山「お前が車で行った後、俺もすぐタクシーを拾って追いかけたんだよ。 出来るだけスピードを出して貰ってさ。
   でもそんなに急ぐ事無かったな、どこかに寄って着替えてきたのか」
藤沢「ええ、きものを置いてあったホテルによってそれから……。
   あっ! 松山くん、足から血が!」

何故、この場に松山がいるのか。
思わず問いただしてしまう藤沢であったが、松山はいともあっけらかんと答える。
確かに慌ててはいるものの、しかし言葉自体はそういった様子が欠片も見当たらず、
こういった所にも松山の何とも言えない朴念仁ぶりが見え隠れするのだが、
藤沢にとってはただ松山がこの場に駆け付けてくれただけでも涙が出そうになる話である。

その後、空気を読んだのか藤沢母はしばらくその場から席を外し、
藤沢は松山をベンチに座らせると持っていたハンカチで簡単な手当を始めた。

松山「い、いいよ。 ハンカチが汚れちまう」
藤沢「ダメよ、だってこんなに血が……」
松山「………………」
藤沢「………………」

しばらくそうして手当をし、される2人。
それは確かにいいムードであり、何故か他に客が見当たらない辺り絶好の告白の機会であったが、
お互いに奥手な藤沢と松山は中々本題を切りだせない。
沈黙があたりを支配し始めるのだが……。

91 :森末(仮):2014/03/06(木) 00:42:04 ID:???
先着1名様で、

★さらば愛しき人よ→! card★

と書き込んでください。マークで分岐します。

JOKER→松山「(やばい、この体勢ってなんかエロい……)」 何考えてるのこんな時に!
ハート→松山「このハチマキ、ありがとうな」 あ、ちゃんとハチマキの刺繍に気づいてた!
クラブA〜2→藤沢「(松山くんの血……ちゃんと保管しておかないと)」 怖いよ!
それ以外→松山「こうして手当してもらうのもこれが最後だ」 無難に繋げた!

92 :森崎名無しさん:2014/03/06(木) 00:42:52 ID:???
★さらば愛しき人よ→ スペード9

93 :森崎名無しさん:2014/03/06(木) 00:44:44 ID:???
JOKERなら松山の浮き球が上がりそうだなwww

94 :森崎名無しさん:2014/03/06(木) 00:45:50 ID:???
バイバイベイビー

95 :森崎名無しさん:2014/03/06(木) 00:59:53 ID:???
何でだろう、松山の幸せの祈ると言うより、
地雷を回避するのに必死な気分になってくるのは。

96 :森末(仮):2014/03/06(木) 01:22:02 ID:???
>★さらば愛しき人よ→ スペード9 ★
>松山「こうして手当してもらうのもこれが最後だ」 無難に繋げた!
===================================================================
サッカーでは思い切ったプレイをしても、恋に関しては中々思いきれないのが松山光という男だった。
もっと何か言いたい事、言える事がある筈なのに、結局は無難な言葉に逃げてしまう。
そんな自分の度胸の無さに思わず歯噛みをしてしまう松山だが、藤沢は気にしていないのか傷の手当を続けるだけである。

藤沢「松山くんは無茶なプレイするから一番ケガが多かった……(板野くんにも何度か吹き飛ばされてたし……)」
松山「ハハハ、思い切ったプレイをすると言ってほしいな」
藤沢「はい、こうやってしばらく抑えておいて」
松山「サンキュー、マネージャー」
藤沢「……!」

いつもの癖で、藤沢に対して感謝の言葉を述べる松山。
だが、この松山の声を聞いて、藤沢は思い出した。
もうこれが、自分が松山に『マネージャー』と呼ばれる最後の時なのだと。
今日の試合に負け、松山が引退をして――そして自分がアメリカにわたってしまう事で、2人の仲は切り裂かれてしまうのだと。
それを思い出した瞬間、藤沢の瞳には一杯の涙があふれ、ポロポロと流れてしまう。

松山「う、うあ!? ど、どうしたんだよ……!? な、何か酷い事言ったか俺!?」
藤沢「だ、だって……こんな所に急に現れるから……」
松山「うっ……や、やっぱり……見送られるの、嫌だったのか?」
藤沢「そうじゃ、なくて……! どうしてここに来たの……?」
松山「ど、どうしてって……それは……その……」

97 :森末(仮):2014/03/06(木) 01:23:08 ID:???
そして、この藤沢の涙を見て大いにうろたえたのは松山である。
いまいち女心の機敏に疎い松山は、自分が何か傷つける事を言ってしまったのかと見当はずれな事を考え、
しかし藤沢にそれを否定され、何故ここに現れたのかと問われて言葉に詰まる。
もはや先ほどまでの綺麗な流れというものはなく、今はどうしてこの緊急事態を乗り切ったものかと考えるだけである。

松山「(って、乗り切るも何もないだろ! 俺は、そうだ、俺は……!)ふ、藤沢……!」
藤沢「えっ……?」
松山「その……す、好きなんだ!」
藤沢「……? 酢、好き?」
松山「違う! 藤沢の事が、好きなんだよ!」
藤沢「……………………。 えぇぇえええっ!?」

だが、逆境に立っても諦めず、果敢に立ち向かうのが松山光という男である。
情けない面も多々見受けられるが、ここ一番の勝負度胸だけは誰にも負けない。
そんな彼はこの大舞台で、直球ドストレートの告白の言葉を藤沢に向けて投げつけた――些か、どもってはいたが。
これを受けて、驚いたのは藤沢である。
元々自分に対して自信がなく、常に松山の事を後ろから見守っていたような彼女にとって、
まさか松山が自分を好いていてくれていたとは露程にも思ってはいなかった。
この松山の告白は正に彼女にとって青天の霹靂であり、信じがたい事。

98 :森末(仮):2014/03/06(木) 01:25:05 ID:???
藤沢「ど、どうして……?」
松山「どうしてって言われても……その……マフラー貰ったり、日頃から、その、世話とかして貰ったり……。
   なんでって言われても困るんだけど、好きなものは好きで……」

思わず聞き返しても、松山は要領を得ない答えしか出してくれないが、
ともかく松山が真摯に藤沢を好いてくれており、この言葉が冗談でもなんでもないという事は伝わったようである。
それがわかると藤沢は再び涙を流して喜び始めてしまうのだが、なんとか泣き止んだのがまたとなり、松山は再度うろたえてしまう。

松山「わわわっ、な、泣くなよ! ごめん、やっぱり迷惑だったよな!?」
藤沢「違う、違うの……」
松山「えっ?」
藤沢「私は……私の気持ちは、もうその鉢巻に縫ってあるから……」
松山「……は、ハチマキに? ……あっ!」

言われ、今まで頭に巻いていた鉢巻をほどくと松山は熱心にそれを見つめ……見つける。
白い布地に、白い糸で刺繍をされたその文字。
藤沢から松山に、目立たないようにしながらも精一杯の勇気をもって送ってくれた、愛の言葉を。

松山「……そっか、お互い、同じ気持ちだったんだな」
藤沢「松山くん!」
松山「うわっ!?」

見つけた瞬間、松山はほっと安堵の溜息を吐き、緊張を解きかえるが……そこに感極まった藤沢が飛び込んでくる。
いきなり少女に、しかも思い人に抱きつかれるという事態に、純朴な松山はどぎまぎしてしまうのだが、
震える手を懸命に抑えつつ、藤沢の背中にそっと回し、抱きしめる。

99 :森末(仮):2014/03/06(木) 01:26:33 ID:???
松山「……元気に行ってこいよな」
藤沢「うん」

もはや2人の間に、長い言葉はいらなかった。

松山「向こう行ったら手紙くれよ。 俺も返事書くからさ」
藤沢「うん」

思いを通わせた今はただ、残り少ない時間をゆっくりと過ごしたい。

松山「それからこの鉢巻、お前との思い出に大事に取っておくよ。 あのマフラーと一緒に。 ありがとう」
藤沢「うん」

出発の時刻まで、2人はそうして抱き合っていた。
まるで長年の付き合いである、恋人同士であるかのように。

………
……


松山「あ、ところで藤沢、頼みがあるんだが……」
藤沢「な、何?(どうしよう、このまま結婚まで申し込まれちゃうのかしら……? 丁度お母さんもいるし)」
松山「俺、金持ってなくて……タクシー代、貸してくれないか?」

しかし、最後まで締まらないのも松山光という男であった。

※松山→(大切な人)←藤沢 になりました。
※松山くんが鉢巻を捨てませんでした(とても重要)

100 :森末(仮):2014/03/06(木) 01:27:33 ID:???
>>93 お察しの通り、上がる予定でした。松山は浮き球の弱さが弱点でもありますからね。
>>94 原作通りですと意外と早く戻ってきますが……さて。
>>95 一応どの結果になってもむすばれはする予定でした。

無事に松山と藤沢が結ばれてくれた所で、一旦区切らせていただきます。
原作でもタクシー代の件で藤沢母から借りていたようですし、オチがしっかりつくのが松山なのかもしれません。
ともかくこれで、ひとまず藤沢と松山の関係は一安心です。

明日はこの後、夜の日常パートから次の日の決勝戦へと続けたいと思います。
それでは。

101 :森崎名無しさん:2014/03/06(木) 01:51:10 ID:???
イヤッフゥゥーー!! やったぜ松山。
最初包丁を持ち出してきたことを思い出して、二つの意味でホロリ。
これで大手振って全日本に合流できる。全日本ではどう動こうかな。

102 :森崎名無しさん:2014/03/06(木) 06:32:40 ID:???
キャプテン候補は松山、三杉、井沢、一応小池、合流後の若林
実績で井沢、ハンブルグ快勝で若林ってとこかな、板野は一選手として練習。
松山が不幸にならなかっただけでも板野がふらのに来た意味はあった。

103 :森末(仮):2014/03/06(木) 22:52:32 ID:???
その後、松山は愛する人との残された数少ない時間を大事に過ごし、
藤沢の母からタクシー代を借りた後、藤沢の乗るアメリカ行きの飛行機を見送り宿舎に帰り着いた。
帰り着いた途端、仲間たち――とりわけ町田から事の顛末を詳しく聞きだされようとしたが、
初心な松山はしどろもどろになりながら口を閉ざすしかなく、そうこうしている内に町田達は北海道へと帰って行った。
なお、告白が成功したらしい松山の様子を見て板野が心の底から安堵をしたのは言うまでもない。

板野「(よかった……本当によかった……痛ましいあの事件はなかったんだね)」

こうして松山と藤沢の一件は、無事に決着がつく形となった。
今は既に日が沈み、板野と松山はすっかり住み慣れた感のある宿舎の中にいる。
今後の為にも松山と板野は明日の決勝戦を見ておいた方がいいと言われ、残った2人。
2人は夕食を終えた後、互いに何も言わないまままったりと部屋の中でくつろいでいた。

松山「…………」
板野「(松山……ずっと外を見てるな。
    藤沢の事を想ってるのか、それとも今日の試合を振り返ってるのか……どっちなんだろう。
    今日の試合……そうだ、俺達は負けちゃったんだな。
    しかも準決勝、本編・原作通り……ふらのが本来ならば負けてしまう位置で。
    これが運命って奴なんだろうか……。 ……黙ってたら嫌な事考えちゃうな。 何かしようか)」

A.松山と話をする
B.森末と話をする
C.外をぶらついてみる
D.練習をしよう!

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

>>101 微妙に藤沢にヤンデレ属性が付加された事もありましたが、結果良ければ全てよしですね。
>>102 キャプテン候補については、板野、松山、若島津、そして若林の4人になる予定です。
    板野に関してはキャプテン経験がない為に少しマイナススタートにはなりますが、
    順調に信頼を稼いでいけばキャプテンになれるでしょう。

104 :森崎名無しさん:2014/03/06(木) 22:56:22 ID:yPqLtDIE


105 :森崎名無しさん:2014/03/06(木) 22:58:20 ID:cw2B2JxA


106 :森崎名無しさん:2014/03/06(木) 23:00:22 ID:MVeAoAvs
B

107 :森末(仮):2014/03/07(金) 01:40:58 ID:???
>B.森末と話をする
=====================================================================
板野「(そうだ、森末はどうしてるかな? おーい、森末ー?)」

東邦との試合で喫した初めての敗北、そして松山と藤沢の件。
それらに気を取られてすっかり忘れていた、この世界に連れてきてくれた人物(?)の事を板野はようやく思い出した。
勝利――そして決勝進出という栄光を手にして報告する事は出来ないが、
それでも今日の試合の報告をしようと考えた板野はいつも使っている念話を用いて森末を呼びだそうとするのだが……。

板野「(あれ? ど、どうしたんだ森末? 念話が繋がらないなんて今までなかったのに……) ま、松山。 ちょっと俺、散歩してくるよ」
松山「ん……ああ、わかった。 あまり遅くならないようにな」

しかし、今日に限って何故か通じない。
今日のPK戦が終わった直後、同じように森末が板野に念話を送ろうとした際にも同じ事が起こったのだが、
当然ながらそんな事を知る由もない板野は焦りながらも、松山に一声かけてから外へと飛び出す。
念話は起こせないが、森末は自分たちの宿泊している場所の近くで寝泊まりをしていると聞いた。
ならば外を探せば、森末の姿も確認できるのではないかと板野は考えたのだ。

板野「森末……森末、どこにいるの?」
森末「……板野?」
板野「! 森末!」

傍から見れば花壇や茂みを除き込み、人の名を呼んでいる板野の姿は不審者に見られただろう。
あまり長く続けると補導をされてしまったかもしれないが、運よく板野は近くに隠れていた森末を見つける事に成功する。
森末の声が聞こえると、板野は心の底から安心をしたようにホッとため息を吐くのだが、
何やら森末は元気がなく、板野が目を向けても目を伏せている。
その様子に板野は当然気づき、一体何があったのかと問いかけるが……。
森末はやはり力なく、ぽつりぽつりとだがそれでも説明をしなければならないかと口を開いた。

森末「……この顛末は、僕の予定していたものと違うんだ……」
板野「え? ……ちょっと待って、何の事かサッパリわからないんだけど」
森末「実は、今日の試合――僕も会場にいたんだけどね……」

108 :森末(仮):2014/03/07(金) 01:41:58 ID:???
板野の活躍を見る為、そしてもしもの時の"リセット"の為にと、森末は今日の試合会場に足を運んでいた。
試合は森末の予想をしていた以上に白熱をし、その盛り上がりはこの世界の管理者としては至上の悦楽。
敵にも見せ場があり、主人公にも見せ場があり。
最後は少々ダレてしまった所はあったかもしれないが、それでも名勝負を残せたと森末は出来自体には満足をしていた。

森末「でも、負けた……君は負けてしまった。 ――それが、僕の予定外の事態だという事なんだ」
板野「………………」
森末「最初に僕が言った事、覚えてるよね? 君にこの世界でして欲しい事があるって」
板野「う、うん……。 ……その中の一つは、確かに『中学サッカー大会で優勝をする』事だったけど」
森末「それは定められていた筈、なんだ。 君ならこの言葉の意味、わかるよね?」
板野「……"リセット"の事?」

板野の言葉にうなずき、森末はごそごそと体を探るとどこから取り出したか一つのボタンを板野に見せつけた。
そう、これこそが――森末が持つ、リセットボタン。
管理者として、規定されていた物語に沿わない方向に話が転がりそうになった時、
時を戻してやり直す事が出来るというボタンである。

森末「そして僕は使った。 1度目のPKで負けた後、すぐに」
板野「……それは、覚えてる。 俺は1回目のPKで……若島津に止められてたんだ」
森末「うん。 そしてもう一度負けた……そして、更に僕はボタンを押した」
板野「……だけど、リセットはされなかった」
森末「そうだ。 ……本来なら、こんな事はありえない筈なんだ。
   何故なら、この世界は僕が管理をしていて、そして君がこのゲームのプレイヤーなんだから。
   なのに、どうしてこんな事になったのか……」
板野「ど、どうしてなの?」

使える筈のリセットが、使えない。
この事態に陥って森末はパニックになったが、時間が経ち、幾分か頭が冷静になるとその原因にある程度の見当がついた。
あくまでも今は仮説の段階である。 しかし、ある程度は納得が出来る仮説に――。
それを確信に至らせる為に、森末は板野に質問をした。

109 :森末(仮):2014/03/07(金) 01:42:58 ID:???
森末「板野、君の通ってる学校は?」
板野「え、何その質問……」
森末「いいから答えて、大事な事なんだ」
板野「……ふらの中学だよ。 森末も知ってる事でしょ」

森末「1番の仲のいい友達は?」
板野「松山、になるのかな……。 後は矢車くんや多田野くんも友達だよね」

森末「趣味は?」
板野「えっ、と……サッカー……は違うよね? そういえば、趣味ってないなぁ」

森末「お父さんとお母さんの名前は?」
板野「そんなの俺にはいないじゃないか。 森末が親代わりみたいなものだって、森末自身が言ってたでしょ」

矢次早に飛んでくる森末の質問に、板野は訝しがりながらも答えていく。
それらの質問は全て森末が知っているような事ばかりであり、
何故今更になってこんな事を聞いてくるのだろうかと板野は疑問に思うが……森末の顔は(表情はよくわからないが)真面目そのもの。

質問が全て終わると、森末は小さくため息を吐きながら……板野の目を真っ直ぐ見つめ、もう一度質問をした。

森末「板野、もう一度聞くよ」
板野「う、うん……」

森末「 君 が 、 君 の 世 界 で 本 当 に 通 っ て い る 学 校 は ? 」

板野「……俺の、世界?」

110 :森末(仮):2014/03/07(金) 01:43:58 ID:???
その言葉を聞いた瞬間、板野は思い出した。
自分はあくまでも、ただの『キャプテン森崎の読者』であったという事を。
いつものようにスレに張り付き、キャプテン森崎を愉しんでいた所を森末に連れられて『この世界』へとやってきた事を。
自分はいつか、この世界から帰らなければならないと言う事を。

そして、板野は思い出せなかった。
自分の通っていた学校も、仲の良かった友達も、両親の名前すらも。
何もかも――唯一趣味がキャプテン森崎を読む事、そして本編・原作で起こった出来事だけを除いて、
板野の記憶から元の世界の情報というものは全て霧散をしてしまっていた。

板野「あ……ああ……!」
森末「やっぱりだ……やっぱりそうなんだ……」

その事実を理解してしまった瞬間、板野は恐怖に苛まれ声にならない声を上げ。
森末は小さな手で頭を抱えながら、自分の仮説が合ってしまっていた事に絶望をした。
板野が現実世界の事を、元の世界の事を忘れ去ってしまったという事――。
それこそが、森末の持っている力が弱まっている事に影響をしている。

森末「僕は君をプレイヤーとしてこの世界に招いた……だけど……そうじゃない」
板野「ど、どういう事なのさ……!?」
森末「君は……この世界の、1人のキャラクターとして、自立してしまおうとしている。
   この世界の住人として、認められ『過ぎた』んだ」

それは板野の溢れるキャプテン森崎愛が森末の予想をしていた以上のものだった為か、
それとも……それとも、他に何か原因がある為か。
板野はこの世界に『馴染み過ぎた』。
故に板野はこの世界の住人として世界に認知され、プレイヤーではなく独立をしたキャラクターとなってしまった。

111 :森末(仮):2014/03/07(金) 01:45:01 ID:???
板野「そんな! そんなの……そんなのおかしいじゃないか!!
   森末がこの世界を……管理してるんだろう!? だったら、認める、認めない……そんなものは森末の決める事じゃないの!?」
森末「違うんだ、板野。 僕たち管理者はあくまでも管理をするだけ……。
   キャラクターがいなければ、物語を紡ぐ事は出来ないんだよ。 あくまでも、先にキャラクターがあるんだ」
板野「そんな……」
森末「世界のルールを決めるのは僕だ。 物語の道筋も、立てるのは僕だよ。
   ただ、そこに『ドラマ』を生み出すのは……キャラクターなんだ。 だから、これがドラマなのだとしたら……。
   僕はその物語を書ききるしかない。 そこは捻じ曲げれないんだ」

悲痛な声を上げる板野にも、森末はあくまでも淡々と……それでも多分に哀しみの色を込めた声を出し、
更に追い打ちをかけるように口を開いた。

森末「リセットの力が使えなくなっていた理由も、だからこそわかる」
板野「どうしてなの……?」
森末「君がプレイヤーでなくなったから……この世界、構成、全てが変わってしまった。
   管理者としての権限を、君に対して行使出来なくなってしまったんだろう」
板野「……じゃあ、どうして1度は使えたの?」
森末「まだ、微かにだけど力が残っていたのかもしれない。 君に、プレイヤーとしての。 主人公としての」

リセットを受け付けるのは、プレイヤーキャラ――主人公のみ。
森末が1度リセットをした時までは、板野の主人公としての力が僅かではあるが残っていたのだろう。
だが、その1度だけのリセットで……板野の力はなくなってしまったのだろう。
故に板野は2回目のリセットを行えなかった――世界から、主人公として認められなくなったから。

板野「それじゃあ……どうしたらいいの? 俺は……俺は、このままこの世界に残り続けるの?」
森末「…………」

もはや顔も思い出せないが、板野にも元の世界に家族がいる。
まさかずっと、永遠に、この世界に存在し続ける訳にはいかない。
だが、戻っても――板野は元の世界の記憶がない。
記憶喪失で、本当の家族の元に帰り、本当の通っていた学校へ行き、本当の友達と遊ぶ。
想像をするだけでぞっとするような光景だった。

112 :森末(仮):2014/03/07(金) 01:46:04 ID:???
森末「それに関しては……少なくとも、記憶の件に関しては、一応僕としても考えがある」
板野「!! な、何それ!? どうすればいいの!?」
森末「ゲームクリアだ。 このゲームを終わらせる」
板野「えっ……」

この板野の疑問に出した森末の答え。
それはこの世界にやってくる際、板野に提示した条件――。
『ゲームクリアするまで、家には帰れない』としたものと全く同じものだった。
一体今更、何故念押しをするような事を言うのか――問題は家に帰った時に、記憶があるか否かだというのに。
思わずそう問い返す板野であったが、森末は首を振って板野の疑問に答えていく。

森末「ゲームクリアをすれば、その時点で、この世界もまた終わるんだ。 物語は続かない、めでたしめでたしで幕を閉じる。
   ……その時点で、キャラクターは解放をされる筈だ」
板野「つまり……キャラクターじゃ、なくなる。 記憶が戻ってくる、って事?」
森末「その通りだ……けど、話はそう単純には終わらない。
   ただのキャラクターのままなら、『ログ』として永遠に君は残ってしまう。 続かない物語の中で。
   だから、君は『プレイヤー』に戻らないといけない」
板野「…………」
森末「主人公に戻るんだ、板野。 もう一度……この世界の中心になるんだ」

そう、あくまでもただのキャラクターとして物語を終えてしまったら、板野はこの世界の住人として認められてしまう。
故に板野は、もう一度森末が設定をした最初の予定通り――プレイヤーに戻らなくてはならなかった。
この物語の中心に、主人公として。

森末「はっきり言おう、今の時点で君はかなり出遅れている。
   全国中学サッカー大会はベスト4止まり……主人公としては、かなり微妙な成績だ」
板野「うぅ……」
森末「ここから、盛り返すしかない。 ジュニアユース、海外留学、ワールドユース。
   全てで活躍をして、全てでメインとなって、君は主人公になるんだ。
   そうすれば物語を終えた時、きっと記憶は戻ってくる。 ……元の世界に戻れるんだよ。 最高の形で」

113 :森末(仮):2014/03/07(金) 01:47:07 ID:???
板野「本当に……活躍をすれば、主人公に戻れるの?」
森末「その筈だ。 今の君は、世界に認められすぎて一旦キャラクターへと変化をし、
   ベスト4という半端な結果を出したせいで主人公とあまり認められていないんだと思う。
   だから念話だって使えなくなった。 リセットも使えなくなった」
板野「うぐぅっ……半端とか言わないでよ。 俺も頑張ったんだ! 皆、ふらのの皆、頑張ったんだよ!」
森末「……ごめんよ。 ただ、もっと成果を上げなきゃいけないんだ」

板野としては少し心に突き刺さる言葉も多分にあったが、
それでも森末は心を鬼にして板野を発奮させる為にあえて厳しい言葉を選んだ。
とにもかくにも、板野はこれから今まで以上に活躍し、目立ち、主人公とならなければならない。
そうでなければ、元いた世界にも帰れないのだから。

板野「……とにかく、わかった。
   要するに……もっともっと、活躍をして。 もっともっと、サッカー上手くなって……そうすればいいんだね?」
森末「飲み込みが早いね」
板野「少し……ううん、凄くショックだった。 お母さんとお父さんの名前も、顔も思い出せない。
   住んでいた場所も、通っていた学校も、友達の名前だって思い出せない。
   怖かった……でも……やる事は、今までと同じだよ。
   このゲームを、ううん、今は俺は『操作者』―プレイヤー―じゃないんだっけ。

   ……この日本で、誰よりも優れた『選手』―プレイヤー―になる。
   それを目指す、そういう事だろう?」
森末「そうだ。 その通りだ」
板野「大丈夫……確かにお母さんもお父さんもいないけど、この世界には松山達がいてくれるんだ。
   心細くない……森末だって、いてくれるしね」

それは少しだけ強がりも含まれていたが、板野の本心でもあった。
記憶を失くした事は確かなショックである。
だが、それが取り戻せる可能性があり――そして、仲間がいてくれるのなら。
記憶を失った恐怖も、幾分かは和らぐ。

114 :森末(仮):2014/03/07(金) 01:48:11 ID:???
板野「……ところで、俺が主人公じゃないんだったら、誰が主人公なの? それにプレイヤーは?」
森末「主人公は正直な所、松山とか怖すぎるんだけど……。
   松山が主人公ならリセットが発動してもおかしくなかったし、若島津?
   でもこの後すぐ若林が出てくるからなぁ……」
板野「……要するに、わからないって事?」
森末「もしくは、浮き上がってしまってるか……誰が主人公かわからず、宙ぶらりんな形だね。
   プレイヤーについても……わからない。 誰が判定して、誰が選択してるのやら……」

絶望の後に希望アリ。
なんとか希望を見いだせた板野は、ふと思いついた疑問を森末に投げかけるが、この答えはあまり芳しくなかった。
森末としても、やはりこの事態は想定の範囲外。
誰が主人公となったのか、誰がプレイヤーとなったのか……それはまるで見当がついていない。

森末「ともかく、気を付けるんだよ。 ぶっちゃけ外伝なんて誰が主人公になってもおかしくないんだ。
   下手したら高杉あたりがなっちゃう可能性だって……」
板野「いや、それは流石に無いと思うけど……ん?」

こうしていつものように、少しばかり和やかなムードになってきた所で、
不意に板野は前方の茂みで誰かが動くのを察知した。
森末もすぐにそれに気づいたのか慌てて誰にも見つからないようにと板野の後ろに隠れ、
板野は息を呑んでその人物の正体を見極めようとし――そして、ついに茂みから大きな物音を立てて人影が姿を現した。

板野「お、お前は――!!」

日向「…………………」

板野「ひゅ、日向ぁ!?」
森末「(……訳がわからないよ)」

115 :森末(仮):2014/03/07(金) 01:49:25 ID:???
そう、姿を現したその人物――それは板野達が、よく知る人物であった。
猛虎――日向小次郎。
原作では大空翼の最大のライバルとして立ちふさがり、全日本を代表するFWとして活躍。
翼に次ぐNo.2という地位を収め、ファンからの人気も高い男。
そして本編ではやはり翼や森崎のライバルとしてキャプテン候補として対立。
原作のワイルドさを更にゆがめたかのような性格の悪さと粗野さ、付け加えて悪知恵の働く頭脳を持ち。
全日本のキャプテン候補の中では選手たちの中で森崎と共に好き嫌いが激しく別れる男となっている。

そんな彼は、本来、この世界には存在をしない。
この世界にやってくる際、板野が難易度『むずかしい』を選択した為に森崎、翼、日向の存在は抹消され、
板野は彼らがいない全日本でこの先を戦っていくと提示されたのだ。
当然ながら板野はそのことを覚えていたし、森末に至ってはその設定を自らが行っているのである。
故に、日向はここにはいてはいけない筈――なのだが、実際にいる。

驚いた板野と森末はしばらく声を発する事も出来ないまま、そのまま日向と対峙をしていたのだが――。
いち早く我に返った板野は、改めて日向の姿を見回すと何かがおかしい事に気づく。

板野「(な、なんだこの格好? まるっきり浮浪者みたいじゃないか……)」

そう、日向の今の姿は正しく浮浪者のようなものであった。
元から浅黒かった肌は垢に塗れ、髪は油で嫌なツヤが出ている。
着ている衣服もところどころ破け、或いはほつれており……。
本編のような成金どころか、原作の貧乏状態でもここまで酷くはないだろうという有様であり。

そして、次に板野が気づいたのは日向が先ほどから何も喋らず、虚ろに宙に視線を彷徨わせている事である。
まるで無気力――いや、魂そのものが抜けてしまっているかのようなその姿に、板野は当然ながら戸惑う。
彼のよく知る日向は、誰よりも血気に逸り闘志に溢れる男なのだから。

板野「(一体なんなんだこの状況? ど、どうするんだ!?
    さっきから色んな事があって正直混乱し通しだけど……こ、ここは……)」

116 :森末(仮):2014/03/07(金) 01:50:37 ID:???
A.「くらえ! マグナムパンチ!!」 主人公らしく敵役っぽい日向を殴る
B.「くらえ! マグナムキック!!」 主人公らしく敵役っぽい日向を蹴る
C.「よくわからないけど、近くにいたらよくなさそうだ!」 森末を連れて逃げる
D.「森末、様子が変だよ。 まるで日向の抜け殻みたいだ」 このまま森末と共に観察を続ける
E.「森末、後は任せた!」 気になるけど怖いので後は森末に任せる

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

※「覚醒pt」の名称が「主人公pt」に変更されました。




本日はここで区切らせていただきます。それでは。

117 :森崎名無しさん:2014/03/07(金) 01:52:59 ID:uS2E5+IY


118 :森崎名無しさん:2014/03/07(金) 01:55:58 ID:ezM71Nok


119 :森崎名無しさん:2014/03/07(金) 18:37:52 ID:???
何者かの介入、謎の日向、世界がいつの間にかホラーに変わった板野君の心境やいかに

120 :森崎名無しさん:2014/03/07(金) 19:38:24 ID:???
キャプテン小池に主人公取られてしまったか

121 :森崎名無しさん:2014/03/07(金) 20:41:15 ID:???
おのれディケ
森末、この世界も破壊されてしまった!

122 :森末(仮):2014/03/07(金) 23:59:25 ID:???
>D.「森末、様子が変だよ。 まるで日向の抜け殻みたいだ」 このまま森末と共に観察を続ける
========================================================================================
主人公らしく敵役(っぽいの)を倒そうかと一瞬悩んだ板野であったが、
やはり様子がおかしい日向に対し危害を即座に加えるのは良心の呵責に耐えられない。
何よりもあからさまに無防備な板野に対し、今も日向は何もしてこないばかりか、
相変わらず心ここに非ずといった様子で茫然とその場に立ち尽くしているのみだ。

森末「た、確かに……なんかこう、気が抜けちゃってる感じはするね」
板野「……おーい、日向ー。 聞こえるー?」

おっかなびっくりといった様子で近づき、日向の目の前で手を振ってみるがやはり反応はない。
一体これはどういう事なのだろうかと板野と森末は首を捻って考えるも、
そもそも森末としてはこの場に日向がいる事自体が異常事態。
その日向が存在し、茫然としている理由などわかる筈がないのだ。
ただ、どうして日向がこの場にいるのか――それだけは、ある程度推察が出来る。

森末「やっぱり……誰か他の者が、この世界に関与をしているのかもしれない」
板野「他の者? え、だって管理者は森末なんでしょ? 関与なんて出来ないじゃないか」
森末「その筈なんだけどね……僕以上の権限を持つ者なんて、この世界には存在しない筈だから。
   でも、実際に他の者の影響と見受けられる事象は他に存在してるんだ」
板野「……うーん」
森末「(何より、日向がこんな風になってる理由がわからない。
    存在するとしても、いつものような……というと変かもしれないけど、少なくともこんな魂の抜け殻みたいな形になる筈はない。
    一体どういう事なんだろう?)」
板野「それで、どうするのこの日向? ……本当に、何もしないんだけど」
森末「……ここで、この場面で彼が出るという事は……誰かが僕たちと日向を会合させようとしたという事だ。
   それにはきっと、意味がある。 ……罠だとしても」
板野「でも、何も言わないんならどうしようもないよ?」
森末「ああ、だから……日向は、僕たちが一旦保護する事としよう」

123 :森末(仮):2014/03/08(土) 00:00:50 ID:???
様子を見続けても、一向に変化がない日向。
しかしこの出会いに何か意味があると結論付けた森末は、日向がもの言えるようになるまで……。
再び意識を取り戻すまで、自分たちで保護をしようとする。

板野「そ、それって日向と同じ家に住むって事だよね……?」
森末「まあ、そうなるね。 君はすぐにJrユース編に移って家から出ていくだろうけど」
板野「だとしても……大丈夫なのかなぁ?」
森末「多分大丈夫……だと思いたい」

今はこちらに危害を加える様子はないものの、日向の性格や乱暴さなどは誰よりもよく知っている板野達。
もしも下手な事態になってしまっては取り返しのつかない事になってしまうのでは……。
と、思わず嫌な想像をしてしまい身震いをするものの、
それでも背に腹は変えられぬとして自宅にて保護をする事となった。

板野「まあ、わかったよ……。 でも、どうやって連れて帰るの?
   ここ埼玉で、俺達が住んでるの北海道だよ? そんなので日向飛行機乗れるの?」
森末「移動に関しての権限は君に行使するものとは違うから、普通に使えるよ。
   だから、何も心配はいらない」
板野「そっか、よかった……」
森末「君は残って、明日の決勝戦を観戦するんだろう? もう戻って寝るといい。
   明日の決勝戦の結果を見届ける事……それもこの先には必要な事柄の一つだからね」
板野「う、うん、わかった」

その後、森末は日向の肩によじ登ると板野が宿舎に戻ったのを確認してから北海道へと帰り着いた。
どのような方法を使ったかについては、描写は省かせていただく。

そして森末と別れ、宿舎に帰りついた板野は松山と二、三、言葉を交わすと明日に備えて早めに寝るのであった。

※日向小次郎と出会いました。

124 :森末(仮):2014/03/08(土) 00:02:04 ID:???
〜 中学サッカー大会決勝戦当日 会場 〜

そして日は開け、決勝戦がやってきた。
王者・南葛中学対強豪・東邦学園。
この3年間、一度として変わることのなかった決勝戦のカードはもはやこの大会の風物詩となっており、
観客たちは南葛中学、前人未到のV3を見に――或いは今年こそは東邦学園が南葛を打ち破る姿を見に、と来客。
会場は中学サッカーの試合とは思えない程に試合前から熱狂し、大混雑をしてしまう。

カン カン カン カン

松山「うひェ〜っ、凄い混みようだな。 これじゃ座る所が無いぜ」
板野「(うひェ〜、ってどこから声出してるんだよ松山……)うん、もうちょっと早く来ればよかったね」

昨日は観戦に備えて早めに就寝をしたものの、引率する者がおらず道に少々迷ってしまった為か板野達は大遅刻。
会場に来た時には既に殆どの席が埋まっており、どうしたものかと右往左往するのだが……。

三杉「松山、板野! よければここに座らないかい?」
松山「あっ、三杉!」
板野「2つ分席が空いてるみたいだね……お邪魔させてもらおうよ」
松山「そうだな」

その時松山達にかけられたのは、会場の上段にある席に座していた三杉である。
彼の隣には以前板野があった時にはいなかったガールフレンド――青葉弥生がおり、
一瞬2人の邪魔をしてしまうのではないかと板野は躊躇しそうになるが、
三杉自身での誘いである事、何よりこれから1時間を立ちっぱなしで観戦するのは疲れすぎると考え、
三杉の好意に甘えさせてもらう。

125 :森末(仮):2014/03/08(土) 00:03:44 ID:???
松山「オス」
板野「おはよう」
三杉「おはよう。 昨日は惜しかったね……」
松山「ああ……でも、悔いの残らない試合だったからな。 ある程度は満足してるよ」

三杉達の隣の席に座り、まず三杉が振った話題は昨日の試合についてだった。
一昨日の夜に三杉と共に作戦を決め、目立った選手は板野と松山以外特に存在しないふらのは、
エリートスポーツ校である東邦学園に対し、ほぼ五分に試合を進めた。
最終的にはPK戦までもつれ込み、三杉の言うように惜しかったと言える試合だっただろう。
その三杉の言葉に対し、松山は生真面目な顔を作りながら悔いの残らない試合だったと返答をするのだが……。

板野「(どうしよう、何か俺も口を挟もうかな……)」

A.「俺はやっぱり悔しかったよ。 今でも思い出したら泣いちゃいそうだし」 悔しさを露にする
B.「本当に悔しくなかった? 松山……昨日は殆どDFだったじゃないか」 松山の本心を聞こうとする
C.「昨日の試合、三杉から見てどうだった?」 三杉の評価を聞いてみよう
D.「それより三杉、そっちの女の子は誰なの?」 弥生を紹介させよう
E.その他 板野くんに言わせたい事を書いてください

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

>>119 ちょろっと裏の話を進めさせてもらいました。
>>120 先取点を上げたりなど、小池もかなり活躍してしまいましたので代表入りは逃れられないでしょうねぇ。どうしてこうなった。
>>121 あっ、矢車さんが登場したのってそういう(察し)

126 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 00:05:27 ID:X/0Xr54Q


127 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 00:05:47 ID:noHj1XuU
A

128 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 00:07:04 ID:yj5C5J1g
A

129 :森末(仮):2014/03/08(土) 01:11:58 ID:???
>A.「俺はやっぱり悔しかったよ。 今でも思い出したら泣いちゃいそうだし」 悔しさを露にする
===========================================================================================
松山「板野……」
弥生「(泣いちゃいそうって……まあ確かに、幼い顔立ちしてるもんねぇ)」

松山とは対極的に、板野は自らが感じた悔しさを隠そうとはしなかった。
確かに惜しかった、後一歩で勝てていた試合。
だが、結局の所は敗北――自分たちふらの中学は、東邦学園に負けてしまったのである。
その事実は試合結果がどうであれ覆せるものではなく、例え若島津から1点を奪えたといえどその悔しさは拭えない。
悔いはないとは言ったものの、板野の気持ちもまたわかる松山は優しく声をかけ。
一方で弥生は軽く引くような心境で板野の様子を見る。

三杉「(ふむ……ストライカーの気質としては、悔しがる……つまり勝ちたいという執念が強いのはプラスだろうか。
    あまりにそれが強すぎると、我が強くなりすぎてチームの事を考えぬ選手になってしまうけれど……。
    特にチームワークに優れるふらのに所属をし、松山からも信頼が厚いように思える彼ならその心配はないか?)」
板野「うぅぅ……」
松山「い、板野……泣くなよ」
板野「ふぐぅっ……」
三杉「(……まあ、実際に泣いてしまうというのは、色々問題があるが)」

こうして相変わらず、三杉が板野の事を評価に難しい選手だと考えている頃。
ロッカールームでは両チームの選手たちがこの決勝戦に向けて最後のミーティングを行っていた。

130 :森末(仮):2014/03/08(土) 01:13:06 ID:???
〜 南葛中学 ロッカールーム 〜

古尾谷「ここまで来たらもう細かい事は言わん。
    相手は東邦学園……昨日は粘りに定評のあるふらのを相手に接戦の末に勝利した、間違いない強敵だ。
    でもいつも通り、お前たちは自分たちのサッカーを。 南葛のサッカーを見せてくれればいい。
    さァ、今日も全力でいこう!」
南葛メンバー「「「はい!!!」」」
井沢「(監督……特に戦術なんかに関しては口出してこないんだよなぁ)」
滝「(その分思うようにやれるってのはありがたいけど、やっぱ不安はあるぜ)」

南葛中学のロッカールームでは、監督である古尾谷が最後の話をしていた。
特にこの試合での戦い方などを解くでもなく、あくまでも根性論――精神論を繰り広げる監督に、
井沢達は内心ため息を吐くのだが……これもいつもの南葛のミーティングでの光景である。
詳しい戦術などは全てスタメンたちの間で決められており、監督の話が終わると同時にキャプテンである井沢は前に出ると、
ホワイトボードを使って今日の試合の作戦について話し始める。

井沢「いいか皆、昨日も話したように今年の東邦は一味もふた味も違う」
長野「沢田の存在……そして、小池の成長か。 去年までの東邦の弱点が一気に強化されたからなぁ」
岩見「だが俺達だってそう簡単にはやられん。 今年に入って出てきた戦力なら、ウチにもいるんだからな」
山森「が、頑張ります!」
井沢「そうだ、俺達だって負けてない。
   王者・南葛の強さって奴を見せつけてやるんだ! その為にもだな……」

古尾谷「(頑張ってくれよ、みんな!)」

今大会、最初で最後の強敵を前に作戦を詰めていく選手たち。
その後ろ姿を、監督である古尾谷は突っ立って眺めているのだった。

131 :森末(仮):2014/03/08(土) 01:14:06 ID:???
〜 東邦学園 ロッカールーム 〜

北詰「よし、みんなきけ。
   今日の相手は南葛……昨日戦ったふらのもそうだが、間違いのない強敵だ。 それはお前たちが誰よりも知っているだろう。
   しかし相手の選手、一人一人のデータは既にお前たちの頭の中に入っている筈だ。
   とにかく自信を持って行け、今のお前たちの実力なら間違いなく勝てる!
   今年こそ打倒・南葛を果たし、東邦学園に優勝旗を持ちかえるのだ!」
東邦メンバー「「「はい!!!」」」

そして対する東邦学園のロッカールームでは、監督である北詰がいつものように指揮を執り作戦を指示していた。
サッカーエリート校として名を馳せる東邦学園は公立校である南葛のように監督が適当なものが座る筈がなく、
厳格かつサッカー指導者としての経験が豊富な北詰がその任にあたっていた。
やや型におしはめ過ぎる所はあるが彼の指揮には東邦学園の選手たちも納得をしており、
彼らは息を呑みながら今日の試合の作戦を頭に叩き込んでゆく。

北詰「では改めて、最後の確認として今日の作戦を説明する。
   いいか、まずはだな……」
反町「(昨日の試合はいいところがなかった……今日の試合は絶対に点を決める!
    若島津がいれば、点さえ決める事が出来れば勝てるんだ!)」
沢田「(今までの東邦の弱点と言われていた中盤を支配できるかがこの試合の鍵だ。 僕と小池さんで……)」
小池「(ふっふっふ、負傷から回復をしたこのスーパー小池にもはや敵はない。 あの真紅の優勝旗を手に入れるのはこの俺だ)」
若島津「(来生も滝も……それとあのノッポも板野に比べれば微塵も恐怖は感じん。 この試合、俺達が勝つ!)」

選手たちは密かに闘志を燃やしつつ、
こうして東邦学園のミーティングは過ぎて行った。

132 :森末(仮):2014/03/08(土) 01:15:26 ID:???
ワーワー! ワーワー!!

実況「さぁ、いよいよ試合開始時間となりました。
   両チームの選手たちが、今、入場をしています!
   今大会、シード権を得ていた南葛は悠々と試合を勝ち進みここまで危なげなく駒を進めてきました。
   来生くん、滝くん、長野くんといったFW陣。
   キャプテンである井沢くん、岩見くん、山森くんといったMF陣。
   石崎くん、高杉くん、中里くん、小田くんといったDF陣。 そして2年生キーパーの剛田くん。
   正に一丸となって戦う姿は全員サッカー、それぞれが特徴を持ち、役割を果たす事に長けた絶対王者です」

南葛応援団「ファイトー!南葛ー!」「今年も優勝して、V3だ!!」

実況「対するは東邦学園中等部。
   昨日のふらの中学との試合ではPK戦にまでもつれこむ激戦を繰り広げ、辛くも決勝に駒を進めました。
   その驚異的な粘りと執念は、正に宿敵南葛を打倒する為のものと言えるでしょう。
   守護神若島津くん、ストライカー反町くん、小さなテクニシャン沢田くん、キャプテンの小池くん。
   その他の選手たちもいずれも個性的、そして実力は確か。
   今年こそは悲願の優勝旗を手にし、東邦学園へと持ち帰りたい所でしょう」

東邦応援団「かっせ!かっせ!東邦!!」「今年こそ優勝だ! 南葛なんかに負けるなー!!」

試合開始時間が近づき、実況の声が響き渡ると同時、スタンドからは両チームの応援団からの声援が沸く。
板野はこの光景をぼんやりと眺めつつ、もしかしたら自分が今頃はあそこに立てていたのかもと考え……。
そうすると再び涙が出そうになった為、慌てて松山達に話題を振る事で気を紛らわせようとする。

板野「ねぇ、どっちが優勝をすると思う?」
松山「そうだな……俺達が戦った上で、勝てなかった以上は東邦の方が強いと思いたい。
   だが、南葛だって間違いなく強いんだ……特にチームとしての総合力の高さは群を抜いている」
三杉「そうだね……板野、君はどう思うんだい?」
板野「そうだなぁ……」

133 :森末(仮):2014/03/08(土) 01:16:30 ID:???
A.「東邦が勝つよ。絶対に勝つ」 東邦勝利を予言する
B.「東邦が勝つと思うなぁ……多分だけど」 東邦が勝利すると思う
C.「わからないなぁ……松山の言うように、どっちも強い」 わからないと答える
D.「南葛が勝つんじゃないかなぁ……恐らくだけど」 南葛が勝利すると思う
E.「南葛が勝つよ。絶対に勝つ」 南葛勝利を予言する
F.「勝敗はわからないけど……南葛には何か隠し玉がある気がする」 中里の存在を匂わせる

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

134 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 01:17:12 ID:noHj1XuU
F

135 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 01:18:02 ID:Eqh8lQOk


136 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 01:20:30 ID:???
森崎が居ないと中里は忍者って言わないんじゃない?

137 :森末(仮):2014/03/08(土) 01:25:08 ID:???
>>136
中里忍者は南葛面子にはバレておりますです。

138 :森末(仮):2014/03/08(土) 01:35:27 ID:???
本日は一旦ここで区切らせていただきます。それでは。

139 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 01:40:59 ID:YBLbtg6M


140 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 02:03:19 ID:???
乙でした。主人公……まさか矢車の兄貴?
日向のことは誤魔化しようはいくらでもあるからいいとして、
今の状態抜けたら主人公に近い存在だな。本格的に動けるのは高校辺り?
日向と兄貴会わせたい衝動はあるけど、医者に頼るのが無難かな。

141 :森末(仮):2014/03/08(土) 20:54:34 ID:???
>F.「勝敗はわからないけど……南葛には何か隠し玉がある気がする」 中里の存在を匂わせる
======================================================================================
三杉「ふむ……隠し玉?」
松山「ここまで隠し持っていた切り札があるって事か? ……確かに南葛は、ここまで苦戦は無かったが」

板野はあえてここで勝敗予想はしなかったが、
南葛にはまだ周囲にお披露目をしていない実力者――中里正人の存在を匂わせた。
未来の事は見えない為にどちらが勝つかは確信を持って答える事は出来ない。
だが、十中八九この決勝戦――南葛は中里が今まで隠し持っていた『本気』を出してくるだろうと予想をしたのだ。

板野「(何せ決勝戦で、相手は東邦学園。 本編でもこの試合、中里は錘を外して本気を出してきていたんだ。
    相手に日向がいないとはいえ、南葛にだって森崎と翼が存在しない。
    それなら……やっぱり苦戦は必至だと判断して中里が本気を出してくる可能性は高い筈だ)」

この板野の言葉を聞き、考え込んだのは松山と三杉である。
両者からしてみれば、板野の発言には何ら根拠が無さそうなものに見えるのだが、
松山は以前の花輪中学との試合で板野が立花兄弟のトライアングルシュートを未然に防いだ事実。
更に、比良戸戦では次藤と佐野のコンビプレイを予期していた事を知っている。
それらは板野が『起こりうる事態』を知っていたからこそ予期出来ていた事なのだが、
そんな事を知らない松山は板野が優れた観察眼を持つ者なのかもしれないと判断しており、ある程度の理解を示していた。

142 :森末(仮):2014/03/08(土) 20:55:34 ID:???
松山「(問題は誰が隠し玉かっていう事だけどな……ここまで見た感じ、やはり南葛の主力は修哲トリオだ。
    あいつらに隠し持ってる実力が他にあるっていうんなら、東邦は苦戦は必至……。
    だけど今までの様子を見るに、それはなさそうなんだよなぁ……)」

こうして素直に板野の意見を受け入れた松山に対し、三杉は板野に懐疑的な目を向ける。
今まで板野が観察眼が優れている(ように見える)という実績を認知していないという事もあったが、
常に沈着で他者の言う事も即座に鵜?みをしない三杉としては、そうそう簡単に信じられたものではなかった。

三杉「(……まあ、彼の言う事が当たるかどうかは試合を見ればわかる事だ。
    僕が今までの試合を見た限りでは、そういった素振りは南葛には見られなかったんだけどね……)」

そして、三杉のその考えは数分後――打ち砕かれる事となる。

こうして観客席で板野達が雑談に花を咲かせている一方、
最上段の立ち見席では今日もまた全日本サッカー協会の悪い大人たちが2人揃って観戦へとやってきていた。
この真夏にスーツを着込み、サングラスをかけた片桐はフィールドに散らばってゆく選手たちを目を細めて見つめ、
対する見上は腕組みをしながら、この後に控えてある全日本Jrユースの代表選手発表について思いを馳せる。

見上「長かった大会もこれで最後だ。 いよいよ今日、中学サッカー界の勝者が決定をする」
片桐「ええ、そして世界に羽ばたく未来の日本サッカー界を背負って立つ者達も決定する……という訳ですね。
   見上さん、もうある程度は選抜選手たちも決まったんですか?」
見上「ああ。 今大会、見るべき所があった選手たちのリストアップは終わっている。
   この試合である程度の活躍を決めてくれるのならばそのリストも書き換わるかもしれないが……。
   現時点では遠征で加入をする源三……参加を打診している岬くんを含め、代表の『24名』は決定をしているよ」

143 :森末(仮):2014/03/08(土) 20:57:13 ID:???
長かった大会、その中で小学生時代から活躍をしていた南葛の面々に若島津、沢田、立花兄弟、松山といった実力者たち。
更に早田、次藤と佐野、おまけに何故か出てきてしまった小池といったダークホース。
彼らに加えて、地方大会で敗退をしてしまった実力者である中山や中西、成長に期待の余地がある新田を含め、
見上の中で選抜をする面子というのは既に決定をしている。
この決勝戦でその選抜をした選手たち以上の活躍を見せる者がいなければ、この決定は覆せないだろうと彼は考えていたが、
そのような事態にはまず陥らないだろうともまた彼は考えていた。

片桐「なるほど……では、誰をキャプテンにするかなどについては既に考えているのですか?」
見上「その点はハッキリ言って未知数……今の段階では決定できんよ。
   キャプテン経験者が多く参加をする事になりそうだが、この試合に勝利したとて井沢や小池は統率力に優れているとは言い難い。
   ……井沢は源三の信望者、小池は……なんというかまぁ、判断に困るようだからな。
   松山、若島津、源三……若林のいずれかになるだろう。
   実力的に見ても、そのあたりが妥当だ。 もっとも、キャプテンは私が指名するのではなく選挙制にする予定だがね」

個性的な面子をまとめ上げるキャプテンを誰にするべきか、
実力者たちで固められたチームであるが、やはり焦点となるのはそこである。
キャプテン経験の多い者達で構成される事になりそうであるが、やはり実力的に筆頭となるのはふらの中学の松山。
そしてその松山を破り、昨日の試合では板野を前に1失点に抑え小学生時代は明和のキャプテンを務めた事もある若島津。
同じく小学生時代にキャプテンを務め、2度の優勝を遂げた事のある若林が見上の中で候補に挙がる。

片桐「……そこに板野の名は入りませんかね?」
見上「何?」

144 :森末(仮):2014/03/08(土) 20:59:14 ID:???
しかし、片桐がここで名を出したのはその3人のいずれでもなく、
キャプテン経験はない筈であるふらの中学のエースストライカー……板野住明であった。
良く言えば保守的かつ堅実な見上からしてみれば、キャプテン経験のない者をいきなりキャプテンに押し上げるのは躊躇いを覚える。

見上「何故板野を推す? いや、私も板野の実力――得点力については大いに評価をしている。
   現時点では、全日本Jrユースのストライカーを任せるのは彼しかいないだろう。
   しかし、それはあくまでもいち選手としてだ。 キャプテンを任せる程の器があるかどうか……」
片桐「まず根拠として、以前の花輪戦で見せた板野の頭脳的な守備があります。
   試合を通してみる限り、奴は決して頭が悪いという訳ではないようです」

ここで片桐が例に出したのは、やはり花輪戦で板野が見せた立花兄弟のトライアングルシュート封じである。
原作を読んでいた為に出来た事柄ではあるが、それは結果的に同じチームの選手たちだけではなく、
観戦していた者達にも板野がプレイだけでなく戦術的な目を持っているという事をアピールしていた。
キャプテンに必須とも言える戦術を理解しそれを実行できる実力、という意味では板野は疑うべくもないだろう。

見上「しかしそれだけではキャプテンと推すには弱いな。
   頭脳的なプレー、という意味ならば比良戸の次藤……それに、兼任コーチとして招集する予定の三杉にも言える事だ。
   だが、彼らに他人を引っ張る力があるとは思えんね」
片桐「ええ、ですからあくまでも仮説の段階ですよ。
   ……キャプテンには実力、知能、指揮力。 いずれも必要ではありますが、求心力こそがやはり不可欠。
   見上さんが選挙制にするというのも、『この者ならキャプテンを任せてもいい』と思われた者に指名をしようという事からでしょう?」
見上「その通りだ」
片桐「ならばその機会を彼にも与えていいのでは……と思ったまでです。
   ……試合を見ていると、板野は松山にも指示を飛ばしていた模様ですからね。
   そういった意味でも、キャプテンに向いていないとは私は思えないんですよ」
見上「(やれやれ……片桐くんの露骨な贔屓にも困ったものだな)考えておくよ」

145 :森末(仮):2014/03/08(土) 21:00:32 ID:???
ワーワー! ワーワー!

実況「さァ、試合開始前の軽いウォーミングアップが終わり、両チームの選手たちが入場を終えました。
   今はセンターサークルに両チームのキャプテンが集まり、審判の立会の元、コイントスを行っている模様。
   ……っと、どうやらボールは東邦学園が取ったもようです。
   南葛キャプテンの井沢くん、陣地を選択し……両チームメンバー、それぞれ散らばって行きます」

小池「ふふふ、この小池秀人様が率いる東邦学園が負ける筈がないのだ。
   井沢、いい加減お前たちも今日が年貢の納め時という奴だ」
井沢「(……小池ってこんな奴だっけ。 まあいいや)俺達の夢、V3は達成させてもらう。悪いが今年も負けてもらうぜ」

来生「(へへへ、今日も快勝してこの来生哲平の名を伝説として残してやる。
    えーと……3点取れば単独首位で得点王になれるんだっけか。 らくしょーだな!)」
滝「(若島津が相手じゃ今まで通りにゃいかねぇよなぁ……井沢も今日は守備に注力したいだろうし、ゲームは俺が作るしかねぇ)」
長野「(俺の高さなら若島津にも通用する筈だ! 目に物見せてやる!)」
岩見「(全国大会優勝という栄光を手に入れる……その為になら、なんだってしてやる)」
山森「(相手の沢田は1年生だ……俺よりも1学年下。 負けたからって学年の違いを言い訳には使えないぞ。 気合を入れろ!)」
高杉「(ふぅ……ふらのの板野が相手じゃなければまだなんとかなるレベルだな)」
石崎「(根性、根性だ! ここまで来て、負けてられっかよ!)」
中里「(父上、お許しくだされ。 これが拙者にとっての最後のサッカー……悔いなく、全力を出し切り……拙者は勝ちたい!)」
小田「(足を引っ張らないように……足を引っ張らないように……)」
剛田「(うううう、逃げだしてー。 カ、カーチャーン!!)」

反町「(石崎と高杉が相手なら、松山を相手にするよりは楽な筈だ。 今までの借り、今日で根こそぎ返すぞ!)」
沢田「(井沢さん……特に目標としている訳じゃないけれど、優秀なMF。 だけど、僕は負けない!)」
若島津「(タケシ達が点を入れれば勝てる試合だ。 大会を通しての無失点記録は建てられなかったが、
     ……今日の試合、俺が失点をする余地などない)」

146 :森末(仮):2014/03/08(土) 21:01:51 ID:???
いよいよ試合が始まるという中で、因縁の相手とも言うべき両チームの選手たちは火花を散らし合う。
このカンカン照りの天気によるものか、それとも両チームの情熱が伝わってきたのか、
板野は試合が始まる前から熱気を感じて汗ばみながらも、フィールドに目を移す。

板野「(さて、どうしようかな。
    今日の試合……まずは誰かに注目をして、どの程度の実力者なのか判断してみたい気はする。
    これまでの試合だと対策とかを考えて全体の流れを追うのに集中してたけど、もう戦う事はないしな……。
    今後の為にも、誰かの能力を見図ってみようか)」

☆「能力値を見る選手を1人選んでください」

南葛:井沢、来生、滝、長野、岩見、山森、高杉、石崎、中里、小田、剛田
東邦:反町、沢田、小池、若島津

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

※後半にもう1度能力値を見る事が出来、計2人の選手の能力が判明します。

>>140
乙ありがとうございます。裏のお話については、まあそこまで気を付けてもらわなくても大丈夫です。
あくまでも本線はこれからのJrユース編などですので。
日向の存在の謎や主人公が誰なのかについては、後々判明したりするかもだししなかったりかもだしなのです。

147 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 21:05:20 ID:noHj1XuU
井沢
後半は中里かな、滝も捨てがたいけど。

148 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 21:08:37 ID:gK4r9q9o
来生

149 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 21:10:34 ID:ERpJc+ZY
井沢

150 :森末(仮):2014/03/08(土) 22:32:18 ID:???
>井沢
=====================================================================
板野「(そうだな、井沢の動きをよく見ておこう)」

こうして板野が南葛キャプテン、井沢の動きに注視をする事を決めていた頃。
フィールドではセンターサークルに東邦学園のFW2人が入り、試合開始の笛を待ち構えていた。
長く続いたこの大会も、いよいよこの試合が最後。観客たちが見守る中……。

ピィーッ!! ワアアアアアアッ!!

試合開始の笛が鳴り響き、観客たちの大歓声が会場を包み込んだのだった。

実況「さァ、始まりました中学サッカー大会決勝!
   まずは東邦学園のキックオフで試合開始! ボールは……一旦後ろの沢田くんへと戻されています!
   ゆっくりと溜めを作ってから攻撃を開始するのでしょうか……っとォ!?」

沢田「(まずは相手の出鼻を挫く……!)反町さん!」
反町「おう!」

パシュッ! ダダダッ! バコッ!!

来生「うおっ!?」
井沢「くっ、いきなりきやがったか!(沢田の奴め……意外に大胆な事を!)」

東邦の先制で開始された試合、ボールをもったゲームメイカーである沢田が選択をした攻撃の手段は、
なんと反町と自らの高速ワンツーで一気に中盤を突破するという思い切ったものであった。
攻撃力に絶対の自信を持つ南葛にもしもボールが渡ってしまえば、沢田の抜けた東邦の中盤を突破する事は容易い。
来生と滝の突破力、長野の高さを使ったパワープレイ、井沢と山森のパスによる組み立てと、
流石の小池でもこの数の攻撃に全て対応をするのは不可能だからである。

151 :森末(仮):2014/03/08(土) 22:33:24 ID:???
北詰「(よし、それでいい。 まずは相手の戦意を削ぐんだ。
    沢田と反町の連携ならば並の中学生ならばまず取れん。 辛うじて井沢が触れられるかどうかという程度だろうが……)」

来生「うげ〜っ、ちょろちょろすんなよ〜!!」
長野「(だ、駄目だ……まるでボールが見えない……)」
山森「(なんてパスの鋭さだ……コースを制限する事も出来やしない!)」
井沢「く、くそぉっ!」

しかし、この沢田と反町の『東邦コンビ』を止められる者は南葛の中盤には誰もいなかった。
確かにボールを奪われては一気に攻め立てられ、東邦は一気にピンチを招いてしまうだろう。
だが、そもそもとしてその止められる――という事自体がありえない。
昨日のふらの戦でも猛威を振るった彼らの連携が南葛の中盤を切り裂けるだけのものである事は予め想像がついており、
だからこそ沢田達は思い切ってこの速攻をする事が出来たのだ。

実況「あ〜っ! 駄目だ、南葛止められない!
   東邦の速攻を前に、中盤は崩壊寸前です!
   そのまま沢田くんと反町くんは一気にゴール前へ! これはいきなり先取点が生まれるか〜!?」

反町「よし、このまま一気に行くぞ!」
沢田「はい! 反町さん、これで決めてください!」

そして、南葛はなすすべもなくこのまま東邦に先取点を決められてしまう――かのように見えた。

シュタタタタタッ バシィッ!!

中里「(中の里が奥義――縮地法!!)」
反町「なっ、なにィ!?」
沢田「えぇっ!?」

彼らは知らなかった。南葛の最終ラインには、今まで実力を隠していた選手が文字通り隠れていた事を。
錘を外し、持ち前のスピードを最大限に生かせるようになった忍者の末裔――中里正人。
彼の持つパスカット能力の前には、沢田達の東邦コンビも決して分のいい勝負であるとは言えないという事を。

152 :森末(仮):2014/03/08(土) 22:34:25 ID:???
ワアアアアアアアアアアアアッ!?

実況「いや、止めた! 止めました!!
   なんとここに来て、伏兵の中里くんが沢田くんたちのワンツーをカット! 正に値千金のファインプレーです!」

松山「! 凄い……今の、どこから来たんだ? さっきまでサイドにいた筈なのに」
三杉「(……まぐれ、には見えなかったな。 だが今まで彼の動きは決して目立たないものの筈だったというのに、どうして?)」
板野「(井沢、動きは悪くなかったけど……やっぱ地味だなぁ)」←井沢に注視してる

片桐「ほう……中里、ですか」
見上「(動きだしが既に中学生離れ……いや、高校生でもあれだけ素早いスタートを切れる選手はいないだろう。
    ヤマ勘で動いた……? にしては綺麗にカットをし過ぎている。 ……まだワンプレイだけでは判断は出来ないな)」

この中里の動きを見て驚いたのは観戦をしていたサッカー通の者達である。
ここまでの試合では殆ど活躍を見せず、精々がボールのフォローとスペースを埋める役割くらいしかしてこなかった中里。
それがまさか、守備には定評のある井沢ですらカット出来なかった沢田達のパスワークを止めてみせたのだから、驚いても仕方ないだろう。
一方で当の中里と言えば、自身に注目が集まっている事に少しの居心地の悪さを感じていたのだが……。

中里「(否……優勝の為にも拙者は全力を尽くすと誓った! この試合だけは負けられぬ!!)岩見!」
岩見「おう!」

すぐに気を取り直すと、前方の岩見に向けてパス。
岩見はそれを滝へと繋げると、ボールをもった滝は一気にサイドを駆け上がり得意のサイドアタックを見せる。

実況「さァ〜、攻守逆転! ボールは岩見くんから滝くんへと渡りました!
   滝くん、ぐんぐんと速度を上げて右サイドを駆け上がる! 東邦、慌ててプレスをかけに行きますが……」

滝「あらよっと」
島野「は、速い……」
小池「ふっ、この東邦学園キャプテン小池秀人様はそう簡単に抜かれはせんぞ! ってあらぁ!?」
滝「(喋ってる暇ありゃさっさと詰めればいいもんを……)」

153 :森末(仮):2014/03/08(土) 22:35:30 ID:???
そしてこの滝の突破は誰にも止められなかった。
サイドアタックだけの一芸で小学生時代からそのスタイルを追求してきた滝。
そのドリブルスピードとクロスの精度は一級品であり、それらは王者・南葛の攻撃の起点なのである。
むざむざと安易にボールを奪われるような事はなく、一気にサイドを突破した滝はそのままセンタリング。
これにはゴール前に陣取っていた長野が合わせ、来生にボールを落とそうとするのだが……。

長野「よし、貰った……えっ!」
若島津「何が貰っただ、ザコが!!」

バッキャアアアアアアアアアアアアアンッ!!

長野「ぐわああああああああああっ!?」
滝「なっ、長野ー!?」
井沢「(……流石に若島津を相手に空中戦は分が悪かったか)」

しかし、長野がボールを落とすよりも早くこのボールは若島津がクリアー。
空手の浴びせ蹴りを使ったそのクリアーの余波で、ボール越しに長野は大きく吹き飛ばされ絶叫。
クロスを上げた滝は長野の安否を気遣い悲鳴を上げ、井沢は改めて若島津が守るゴールの堅さを思い知る。

実況「駄目だー! やはり若島津くんが守るゴールはそうそう簡単に奪えない!
   これまでポストプレイでアシストを遂げてきた長野くんですが、容易く吹き飛ばされてしまいました!
   南葛、攻撃失敗です!」

見上「板野を始めとして、私が想定しているFWは軒並み上背が低い。
   アクセントをつける意味でも、長野はある程度構想にはあったのだが……」
片桐「国内ならともかく……世界レベルでは、やはり厳しいでしょうか」
見上「若島津の競り合い強さが尋常でない、というのはあるがな。 ただあの程度の高さならば……立花兄弟でも出せる」
片桐「(わざわざ他に特徴のない長野を入れる事はないという事か)」

154 :森末(仮):2014/03/08(土) 22:36:52 ID:???
こうして悪い大人たちが選手たちの評価をしている中、
お互いに一度ずつ攻撃に失敗をした両チームは……しばらく互いに拮抗をした勝負をする事となる。
何度かゴール前まで行き、シュートチャンスを作る自体は可能だったのだが……。

反町「いけェッ!」
中里「(ニンニン!)」
石崎「点をやってたまるかってんだ!」
高杉「南葛DFを舐めるなよ!」

南葛の守備陣――GKの剛田、そして小田という弱点は持つものの、そこはこれまでの大会で主力として戦ってきた石崎と高杉でカバー。
更にはこの試合全力を賭してプレイをする中里はあまりにも強大であり、反町はここまで一本もゴールまで届かせる事が出来ず。

滝「(ポストプレイは無理だ! 多少不利でも直接来生に打たせるしかねぇか?)それっ、来生!」
来生「ヒャッホー! 待ってましたァ! これが南葛の点取り屋、来生哲平様のボレーシュー……」
若島津「ザコは引っ込んでいろと言った!」

バキャアアアアアアアンッ!!

来生「ぎええええええっ!?」

東邦の守護神、若島津の守るゴールはやはり固く、
南葛はストライカーである来生ですらゴールを割れずにどうにも攻めあぐねてしまう。

155 :森末(仮):2014/03/08(土) 22:38:19 ID:???
何よりもこの試合、いつも以上に白熱をしたのは中盤での激戦である。
前回大会までならばそれでも何度か若島津に対して攻撃を続けていれば、どこかで必ずゴールを奪えていた。
中盤を制すればそれだけ攻め込まれず、こちらが一方的に攻め続ける事が出来る。
それにより反町を無効化し、若島津を攻略してきたのが去年までの南葛だったのだから。

沢田「それっ!」
井沢「通すか! 山森、フォローしてくれ!」
山森「は、はいっ!」
小池「そう簡単に主導権を奪われてたまるかー! この小池秀人がいる限り!」

しかし今年はそうはいかなかった。
その最たる原因は、やはり沢田の加入と小池の成長である。
これにより南葛は圧倒的優位で中盤を制するという事が出来ず、若島津を思うように攻略が出来ないという事態に陥っていたのだ。

三杉「やはり東邦は去年に比べれば弱点を潰せている分有利だね。
   (小池もよくやっているが……惜しいな、もう少し有効に動けるのなら今頃は先取点を取れているだろうに)」
松山「だけど、あくまでも中盤の争いで五分五分になった……ってだけだぜ。
   東邦の守備は若島津1人で担っててその実力の高さは俺達もよくわかってる。
   けど、南葛も今日は中里って奴がいい動きをしてるぜ……高杉、石崎だけじゃなくあいつも攻略するっていうのは難しいだろう」
三杉「確かにね……前線の反町、来生も実力的にはほぼ五分だ。 どちらに転ぶか……」
板野「(井沢、沢田の強引なドリブル零した! え、マジで!? 井沢なのに!)」←井沢を注視してる

そして前半も20分を過ぎ、お互いに決め手を欠いたままハーフタイムを迎えるのかと思いきや……。

156 :森末(仮):2014/03/08(土) 22:39:20 ID:???
先着1名様で、

★前半の山場→! card★

と書き込んでください。マークで分岐します。

JOKER→若島津「来い、俺に持って来い!」 あー! こいつ超攻撃的GKだ!
ダイヤ→反町「(普通のシュートじゃ抜けないのか……?なら……)」 反町が活躍!
ハート→沢田「(あの中里さんって人を抜ければ決めるのは難しくない筈だ!)」 沢田が活躍!
スペード→小池「(見せるより他にない……この小池秀人の真の実力をな!)」 小池が活躍!
クラブ→来生「見える……そこっ!」 若島津「ふんっ!」 来生「ふがっ!?」 来生が活躍出来ない!

157 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 22:39:43 ID:???
★前半の山場→ ハート10

158 :森崎名無しさん:2014/03/08(土) 23:10:50 ID:???
井沢すげー

159 :森末(仮):2014/03/09(日) 00:18:43 ID:???
>★前半の山場→ ハート10 ★
>沢田「(あの中里さんって人を抜ければ決めるのは難しくない筈だ!)」 沢田が活躍!
===================================================================================
何度目かの攻撃成功時、沢田はボールを持ちながら考えた。
ここまで何度か突破には成功をしても先取点に持ちこめていないのは、やはり中里の存在がある為である。
彼さえかわす事が出来れば、残っている石崎と高杉はボールカットは決して得意とはいえない。
そのまま一気に抜き去る事が出来れば残るはパッとしないGKである剛田のみ。
沢田の実力ならば十分にゴールを割れるだろう。

沢田「(問題はあの人を僕で抜けるかどうかという事だ……だけど……やるしかない!)」
中里「むっ!?」

そして沢田は決断をした。
中里を抜き去り、自分がそのままゴールを決めてしまうという選択を取ったのだ。
かつての気弱な彼ならば或いは逃げの選択を取ってしまっていたかもしれないが、
吉良監督による猛烈な特訓は彼に足りなかった闘争心というものを少しばかり増幅する効果もあったのだろう。
単身で挑みかかってきた沢田に対し、中里は一瞬怪訝な表情を浮かべるもすぐさまチェック。

中里「そう簡単には抜かせん!(でゴザル!)」
沢田「抜きます!」

シュタタタッ ガガガッ!

実況「おーっと!? これは激しい鍔迫り合い!
   東邦のゲームメイカー、沢田くん! そして南葛左サイドバックの中里くん、ボールを奪い合う!
   それにしても凄まじい動きです、中里くん! 沢田くんがいかにかわそうとしても、しつこく追いすがる!
   たまらず沢田くん、体を当てますが……中里くんも負けてはいないぞ! これはどうなる!?」

沢田「くっ……(駄目だ、吹き飛ばされてくれない!)」
中里「(シノビに必要なのはスピードだけにはあらず。 強靭な肉体は修行を繰り返すのに必要なものでゴザル。
    しかししつこいボールキープ……安易に足を出せば反則を食らいかねぬ……)」

160 :森末(仮):2014/03/09(日) 00:20:06 ID:???
沢田と中里、両者の争いは正に互角であった。
沢田のパワーに任せた強引な突破は中里の鍛え上げた鋼の肉体を吹き飛ばすには及ばず、
しかし中里の瞬発力を生かしたボールカットも一分の隙もない沢田のキープを前に手が出せない。
しばらくはそのままボール争いが続き、周囲もフォロー以外には迂闊に近寄れない状況が続いてしまうのだが……。

沢田「(こうなったら……)ふっ!」
中里「隙あり!」

シュパッ

必ずどこかで集中力、緊張感というものが途切れる時はきてしまう。
この時、それが先にやってきた……ように見えたのは沢田の方であった。
それを察知した瞬間、中里は鋭くボールへ向けて足を伸ばし、ボールを奪ってしまおうとする。

沢田「………………」

サッサッ ダーッ!!

中里「なっ、なにィ!?」
石崎「げ、げぇーっ!? 中里ー!?」

だが、それこそが沢田の読み通りであった。
お互いに手を出せなかった、というのは沢田にとっても同じである。
どれだけ力強く当たっても吹き飛ばされてくれない中里、しかし安易に突破を狙ってはその隙を狙われる。
ならばこちらも相手の隙を突くしかない――そう考え、あえて沢田は自身に"隙"に見える動きを作った。
そこを狙いにやってきた中里には、当然ながらボールを奪う動作に入る時にこれまた"隙"が出来る。
後はその隙を突き、一瞬にして振り切るだけ……力だけではなく、技術だけでなく。頭脳を使ってサッカーをする。
これもまた、吉良監督による教えの賜物であった。

※沢田が「頭脳的なドリブル」を習得しました。

161 :森末(仮):2014/03/09(日) 00:21:06 ID:???
実況「あーっ!? 抜いた、抜いたーっ!! 沢田くん、突破ー!!
   中里くん、最後は倒れ込むようにして抜かれてしまいました! 南葛、慌ててDF陣がプレスをかけるが……」

バキャキャンッ!

石崎「ぶべらっ!?」
高杉「まそっぷ!?」
小田「いくらっ!?」

実況「とめられなーい! このままではGKと一対一! 東邦、決定機を迎えたー!」

そして沢田は見事にGKとの一対一の状況を作り出す事に成功をした。
中里のいないDF陣は沢田の突破を止める事は出来ず、そして残るGKは明らかに周囲に見劣りをする選手。
この状況で怖いのは緊張のし過ぎでポストに当ててしまう事くらいだが、今の沢田は自分でも驚くほどに落ち着いていた。

沢田「(決める……僕が決めるんだ!)」

しかし、沢田は自らがゴールを決める――そのことにとらわれ過ぎていた。
……言い方を変えれば、周囲に目を向けきれていなかったとも言える。

岩見「うおおおおおおっ!」
沢田「えっ!? ああっ!?」

バチィッ!!

故に気づけなかった、中里との勝負が長引いた為に中盤のメンバーが戻れる時間を与えてしまっていたという事。
岩見、彼が自身の背後まで即座に詰め、ボールを奪い返そうと躍起になっていた事に。
普段ならば抜けたかもしれない、頭脳的にプレイをする事を覚えた今ならばなおさらである。
だが、彼もまだまだ中学一年生――如何に技術に優れようと、精神的な面で油断をしてしまうというのは致し方ない事だったかもしれない。

そんな彼を支えるのが、頼れる先輩たちの役割である。

162 :森末(仮):2014/03/09(日) 00:22:31 ID:???
バッ!

反町「でかしたタケシ! 後は俺が!」
井沢「させるか!」

南葛にとっての不運は、零れたボールは反町の方へと高く浮き上がって流れて行った事である。
当然ながら反町がこの決定機を見逃す筈はなく、合わせるようにして飛び上がりヘディングに向かう。

東邦にとっての不運は、岩見と共に井沢が戻ってきてしまっていた事である。
空中戦に自信を持つ彼は反町に対抗するようにしながら高く飛び上がり、反転をしながらクリアーに向かう。

井沢「(これが俺の……)オーバーヘッドクリアーだ!」
反町「(高い……! が……)俺の方が……僅かに早い!!」
井沢「くっ、くそっ!」

ダイレクトシュートが得意な者と、空中戦に自信を持つ者。
互いの勝敗を分けたのは、零れたボールが僅かに反町に近かった、という事実。
故に反町は井沢よりも早くボールに触れてヘディングをし、
井沢は反転した世界の中で自分の足をすり抜けてボールがゴールに向かうのを見過ごす事となる。

ズバァッ! ピピィーッ!!

反町「よぉおおおし!」
井沢「ああ……」

当然のように、剛田が守るゴールでは井沢に競り勝った反町の『強烈なヘディング』を止める事が出来ず。
こうして後半27分、東邦が待望の先取点を上げる事に成功をした。
得点こそ反町のものとなったが、この先取点の立役者が突破に成功しチャンスを作った沢田であるという事は言うまでもない事だろう。

南葛 0−1 東邦

163 :森末(仮):2014/03/09(日) 00:23:56 ID:???
実況「決まった〜! 反町くん、ゴール!!
   東邦、待望の先取点を奪い取りました! 昨日の試合では得点を上げれずにいた反町くん!
   その汚名を返上するかのような、値千金の先取点です!
   そしてこの得点を演出したのは、小さなテクニシャン沢田くん! あわや一対一になるかと思われましたが一歩及ばず……。
   ですがそのプレイがこの得点に結びついたのは、誰の目にも明らかでしょう!」

反町「やったぞ、タケシ!」
沢田「反町さん! ナイスシュートです! フォローありがとうございます!」
小池「見たか! これが小池秀人様率いる東邦学園の実力ってもんよ!」
若島津「(よくやったタケシ、これで勝ちだ)」

井沢「く、くっそぉ〜!(若島津相手に先取点を向こうにやっちまった……!)」
剛田「す、すまねぇ先輩……止められなくて……」
岩見「……気にするな。 俺も沢田を完全に止められなかったのが悪いんだからな」
滝「(どうやって攻めたもんかねぇ……やっぱ来生にやらせるしかねぇか?)」

この得点を受けて、当然ながら両チームの感情の浮き沈みは激しくなる。
東邦からしてみれば、この試合はどうにかして点を奪うという試合である。
若島津がいる限りゴールが脅かされる事はないだろうという考えはあり、だからこそこの1点はいつも以上に貴重な1点だった。

対して南葛にとってもこの1点が重い事は間違いない。
これまで何度も攻め立ててはいるものの、まるで点の取れる気配のない若島津の守るゴール。
ストライカーの来生ですら分が悪い状況で、如何にして点を取るかに頭を悩ませていたというのに……。
1点を奪われた事で、勝利をする為には最悪でも2点を上げなければならない状況となってしまった。
あまりにも絶望的な状況と言えるだろう。

井沢「……中里、上がってくれ。 もうDF云々なんて言ってられる状況じゃない」
中里「されど拙者が上がっては……」
石崎「うぐっ……(やっぱ俺達信用ねーなぁ……)」
井沢「俺が下がって中里が上がる穴はフォローはする。 とにかく点を取らなければならないんだ」
中里「……御意」

164 :森末(仮):2014/03/09(日) 00:26:05 ID:???
その後、攻める時間もなかった為に南葛は後半に反撃の力を残す為に流し、前半戦は終了。
ハーフタイムへと突入をし、試合を観戦していた板野達も一息つく事となる。

三杉「前半で東邦リードか、沢田も実力を上げたみたいだね。
   中々の突破だった。 惜しむべくは最後のツメを誤った所くらいだな。
  (それにしても思ったより小池が活躍してないな。 昨日の負傷の影響か?)」
松山「追いかける展開だと南葛は苦しいな。 昨日戦った俺達もそうだったが、やっぱり相手が若島津となると焦りが出てくるんだ」
弥生「(なんか私にわからない話ばかりになりそう……)淳、喉乾かない? 今の内にジュース買ってきましょうか?」
三杉「ああ……すまないね、弥生。 ありがとう。 君たちはコーヒーでいいかい?」
松山「あ、ああ……後で金は払うよ(弥生か……名前で呼ぶような仲なのか。 っていうか三杉、彼女いたのか)」

松山達が前半を終わっての感想を述べ合い、弥生がその空気に耐えきれず席を外していた中。
板野は前半戦を見ての井沢の能力について脳内で纏め、数値化しようとしていた。

板野「(大体こんな感じかな)」

選手名     ド パ シ タ カ ブ せ 総 高/低  ガッツ  
井沢      52 51 49 52 52 49 52 357 3/2  700/700 

板野「(って、強っ!? え、何これ!? 井沢だよね!?
    ブロックとシュート以外全部50超えじゃないか! なんだこれ!?
    松山とかには及ばないけど! けど! 十分過ぎる程強いぞ!?)」

特に守備力に関してはブロック以外殆ど穴が無いと言えるだろう。
キャプテンとして皆を引っ張り、また翼がいない事で対抗意識を燃やさず守備力も伸ばせた影響なのだろうが、
それにしても本編を考えればあまりのレベルアップぶりに板野は驚きを隠せない。

マグナムシュート、マグナムボレーという大技を持ち、
全日本代表Jrユースでもスタメンはほぼ確定だと自身では思っているものの、
やはりまだまだ自分も甘い所があるという事を自覚する板野なのであった。

165 :森末(仮):2014/03/09(日) 00:27:56 ID:???
片桐「やあ、板野。 昨日は惜しかったね」
板野「えっ……あ、片桐さん!」
松山「(ん? げっ、なんだこの人、この真夏に背広なんか着て……)」
三杉「(おまけに趣味の悪いサングラスだ……)」

そんな折、不意に板野に対して何者かの声が届く。
一体なんだろうと振り向けば、そこには相変わらずサングラスをかけ表情が見えないサッカー協会の偉い人。
板野に対してちょっと贔屓をしちゃうお茶目さんな片桐の姿があった。
当然、彼と面識のない三杉と松山は一体何者なのかと不審な目を向けるのだが、
片桐が自己紹介をし板野もまた説明をすると、相変わらず訝しがる目をしながらも警戒は解く。

板野「お久しぶりです、片桐さん。 それで、何かお話が?」
片桐「ああ、だが今日は君にじゃない。 ……武蔵中学の三杉くんだね? 今日は君に話があるんだ」
三杉「? 僕に? なんですか?」

まさか自分に話があるとは思ってもいなかったのか、三杉は最初驚いたような反応を見せるものの、
すぐさま冷静さを取り戻しコホンと咳払いを一つしてから片桐の話を聞く。
片桐の持ってきた話の内容は、当然ながら板野にはわかっていた。
三杉淳を全日本Jrユースのコーチとして勧誘をする――そのイベントは本編でも原作でも、この決勝戦で観客席で行われたのだから。

三杉「コーチ、ですか……。
   ですが、大会には参加していない選手をコーチとはいえ招集していいんですか?」
片桐「君も知っているとは思うが、大友の中山くんがいるだろう。 それに……浪速の中西くん。
   まだ決定はしていないが、彼らも選手として招集する可能性があるんだ。
   それに比べれば、コーチとして招集をするのは何ら問題がない」
三杉「えっ、中山や中西も……?(……中山はともかく、中西が選手として登録されて僕はコーチか?)」
松山「……三杉を選手として集めるのは何か問題があるんですか?
   はっきり言って三杉の実力の高さは誰もが認める所です。
   ……プレイ時間の制限はありますけど、実力的に中山や中西が選ばれるのなら問題は無いと思いますけど」

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