キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【滅びの】俺inキャプ森8【バーストマグナム】

1 :森末(仮):2015/02/09(月) 22:31:05 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品です。
参加者の皆さんの選択、及びカード引きによって物語が展開していきます。

他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆

【イタリアJrは】俺inキャプ森6【弱いはず】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1397051465/l50

☆あらすじ☆

キャプテン森崎を心から愛する男板野住明はある日キャプテン森崎の精、
通称『森末』からキャプテン森崎の外伝スレへと参加してみないかと提案をされ外伝世界へと飛ばされる。
ふらの中学で松山達と共に鍛錬を繰り返し、1年と少しの期間を費やして臨んだ3年目の全国大会は惜しくも準決勝で敗退。

その後、同じ中学出身である松山と共に全日本Jrユースに選出された板野は、
全国大会で共に競い合った立花兄弟や合宿で集中的に練習に付き合った新田らの後押しもあってか、板野は見事キャプテンに選ばれる。
舞台は世界へ。全日本はハンブルグとの試合に3−3の引き分けに終わった後、
練習試合をする筈だった各チームに断られ追加合宿に明け暮れる。
そしてフランス国際Jrユース大会が開かれ、全日本はアルゼンチンJrユースと初戦でぶつかり合う。
天才・ファン=ディアスのスーパープレイの連続に圧倒される全日本であったが、
他の選手が然程の実力者ではないという弱点を突いて前半で2−1でリード。
尚も試合は続く……。

573 :森崎名無しさん:2015/02/20(金) 23:02:25 ID:???
新田に空手を習わせるのって出来るのかな
その若堂流隼蹴りって原作だと強いのか知らないけどさ

574 :森崎名無しさん:2015/02/20(金) 23:03:38 ID:???
新田に空手なんか合うのかね?普通にスピードいかせよと思ったけど

575 :森崎名無しさん:2015/02/20(金) 23:12:45 ID:???
サッカー上手くなりたいなら
空手なんかやってないでサッカーの練習をするべきだと僕ァ思うな!

576 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 00:03:34 ID:???
新田が育つ場合
山森とのコンビプレイもあれば強そうだね。

577 :森末(仮):2015/02/21(土) 00:12:30 ID:???
>★ビクトリーノが正解でした→ クラブA ★
>ビクトリーノ「なら多少強引に撃ってやる!」 新田「おお、凄い!」
>ビクトリーノが強引にミドルシュートだ! 新田は感じるものがあったようだ。
===========================================================================================
ズダダダーッ!!

ビクトリーノ「俺に持って来い! いつまでもモタモタしてられるか!!」

新田「!!(あの動きは……南葛と戦った時の俺にそっくりだ!)」

やがてこの展開に焦れたか、ビクトリーノは強引にダッシュでマークを引き剥がしボールを要求した。
マークを受けてボールを貰えず、全力で走る事で一瞬フリーとなるその姿は、
正に対南葛戦で山森に苦戦をしていた新田の姿そのものであり、新田は思わず目を見開く。

新田「(ここからどうするんだ? 俺はダイレクトでボレーをしたけど、あのボールじゃ無理だ。
    浮き球じゃない以上はダッシュ力をそのままボールに乗せるのは難しいけど……)」

スペインメンバー「くそっ、奪え!」「突破させるな!」「今なら体勢を崩してる! 止められるぞ!」
ビクトリーノ「遅いぜ! うおりゃああああああっ!!」

バシュッ! シュバアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! バシィンッ! ピピィーッ!!

新田「な、なにィ!?」

そして、ビクトリーノがそのまま直接ミドルシュートを放ち、
そのミドルシュートが凄まじい勢いでスペインゴールに突き刺さった瞬間、思わず新田は驚きの声を上げていた。

中山「へぇ、いいシュートじゃないか」
中里「うむ。 スピードに乗ったよきシュート……でござるが、
   流石にシュナイダーのファイヤーショットと比較をすると些か見劣りするか?」
早田「あんなバケモンみたいな奴がゴロゴロいられてたまるかってんだ」

578 :森末(仮):2015/02/21(土) 00:14:04 ID:???
新田「(違う! 確かに単純な威力こそファイヤーショットにもマグナムシュートにも劣るかもしれないけど……。
    今のビクトリーノの凄い所はそこじゃないんだ!)」

得点が決まった事で全日本のメンバーからもまばらに感嘆の声が聞こえ始めるが、
新田は単純にゴールが決まった事ではなくビクトリーノのシュートの質に驚いていた。
威力こそは板野やシュナイダーのそれに比べ劣るものの、それは純粋に彼のキック力が板野達に比べ劣るからだろう。

新田「(根本的に今のシュートはマグナムシュートとかとは違うんだ。
    マグナムシュートやファイヤーショットは、勿論フォームなどの研究もあるんだろうけど純粋な力で蹴るシュート。
    言ってみればキック力に依存したシュートに過ぎない。

    でも、今のビクトリーノのシュートは全身のバネを使ってキック力の不足を補う……。
    フォーム、打ち方で威力を増す俺の隼シュートと同じ原理のシュートだ。
    そして、それをビクトリーノはミドルシュートで――スピードを乗せて撃ったんだ!
    完成されたフォームを、そのまま打つしかないと思っていたフォームで――スピードを殺さずに!)」

それは新田にとって大きな発見だったと言っていいだろう。
彼は自らの最大の武器である隼シュートを、既に完成されたシュートだと考えていた。
これを改良するといってもどうやってすればいいのかわからない……現状でも全身のバネを最大限に駆使して打っているのだから、
これ以上鍛えようがないとも考えていた。

しかし、違うのである。

板野がマグナムシュートにHOP−UPをする要素を組み込みバーストマグナムを編み出したように、
これ以上鍛えようがないというのならば付加要素をつければいい。

579 :森末(仮):2015/02/21(土) 00:15:19 ID:???
新田「(ダッシュ力をそのままシュートに乗せるのはジャンピング隼ボレーで出来ている。
    ただミドルシュートとなれば一旦静止しないとボールを蹴るのは難しい……でも、ビクトリーノには出来ているんだ。
    俺にだって……俺にだって出来る筈だ! 出来ない筈がない!!)」

この時、新田はそのスピードを維持したままシュートを蹴るという難度の高さを理解しながらも、
それが自分には出来ないとは断じて思わなかった。
自分と同じくバネを生かしたシュートを打ち、自分と同じくスピードを持ち味とする選手が、
自分の何倍も高等な技術を会得していた事で反抗心を抱いたのである。

新田は板野に懐いているとはいえ、元々は野心家にして先輩に対しても実に生意気な口を利く男である。
一度認めた人物に対しては素直な敬意を払うものの、その上を行きたいという向上心も持ち合わせている。

新田「(身に着けてやる……! スピードを殺さないまま放つ、ミドルシュート!)」

フィールドでゴールを上げ、仲間たちに祝福されている今は遠く及ばない"目標"に視線を送りながら、
新田は静かに午後の練習でのイメージトレーニングに勤しむのだった。

※新田のビクトリーノへの感情が 新田→(目指す形)→ビクトリーノ になりました。

580 :森末(仮):2015/02/21(土) 00:17:19 ID:???
その後、ウルグアイは再びビクトリーノが集中マークを受け、
今度はスペインも容易に彼からマークを外す事なく……結局ビクトリーノはそれ以後点を取る事のないまま試合は終わった。
試合終了間際にビクトリーノではない別の選手が1点を加えた事で2−0。
南米の黒豹は封じられた形ながらも、なんとか予選リーグの突破に成功をする。

ウルグアイメンバー「やったァ勝ったぞ!」「これで決勝トーナメント進出だ!」

ビクトリーノ「(チェッ、シュナイダーとは決勝トーナメントで決着だ!)」

第3戦はイングランドとマレーシア。
こちらは両チームのDFが決死の守備を見せ、一歩も譲らず0−0のスコアレスドローとなった。
昨日イングランドから勝利しているフランスとしては、明日引き分け以上ならば勝ち上がれる計算となる。
逆にイングランドはこれで予選敗退が決定。キャプテンであるロブソンの表情は、当然ながらすぐれなかった。

ロブソン「(昨日に引き続き今日もか……せめて、こちらにも頼りになる攻撃の駒がいれば助かるのだがな……)」

ナポレオン「明日のマレーシア戦は引き分け以上でよし、ですか……。
      しかし、観客の皆さんには是非とも勝って僕たちが決勝トーナメントに駒を進める所を見せたいですね。
      皆さん、頑張りましょう!」
ピエール「う、うん……」

581 :森末(仮):2015/02/21(土) 00:18:21 ID:???
そして第4試合、グループD――欧州の強豪国イタリアJrユース登場。
迎え撃つは昨日日本に敗北をしたアルゼンチンJrユースである。

ヘルナンデス「さァ、行こうみんな。 いよいよ俺達の出番だ」
ディアス「よーし、みんな! 今日は俺がじゃんじゃんゴールを上げてやる!
     どうせ奴らは守る事しかできねー臆病者どもだ! 皆は安心して守ってくれよな!」

和やかな笑顔で一同に声をかけながらフィールドに表れるヘルナンデスに、
昨日の敗戦から一転、陽気な態度でこちらもチームメイトに声をかけながら現れるディアス。
一見するとどちらも同じ立場に見えたかもしれないが、実際には違う。

ストラット「守る事しか出来ない……か。 どうやら、俺達の実力を見せるしかないみたいだな」
ランピオン「ああ」
ヘルナンデス「(頼むぞ、ストラット、ランピオン。 あいつが相手では俺達も無失点という訳にはいかないかもしれないんだ)」

一つにイタリアには――イタリア主将のヘルナンデスには、頼れる仲間がいた。
実質1人で戦っているディアスとは違う。攻めに、守りにと頼もしい仲間がいた。
その為に彼は気負う事なく、いい意味で彼らに依存する事でディアスという天才を相手にしても悲壮な覚悟をする必要が無かった。

ディアス「(ちくしょう、やっぱ全員昨日の試合を引きずってやがるな……いつもに比べて盛り上がりがたりねぇ)」

一方でディアスは、陽気にふるまいながらも内心頭を抱えていた。
昨日の敗戦――特にディアスが1ゴールしか上げられなかったという点がショックだったのか、
この日のアルゼンチンメンバーは今までディアスが見てきた中で1番落ち込んでいた。どれだけディアスが発破をかけても空返事なのである。
本来プレイで士気を上げ、その上で陽気な発言でムードを盛り上げるのがディアスのスタイル。
しかし、そのプレイのキレが昨日は悪かったのだから……彼らが盛り上がらないというのも、無理からぬ事かもしれない。

582 :森末(仮):2015/02/21(土) 00:19:35 ID:???
バティン「……ディアス」
ガルバン「パスカル、どう思う? この試合……勝てるだろうか?」
パスカル「ゴールを奪う事は、ディアスが本調子なら問題ない。 絶対に奪えるんだ!
     後は……結局、みんなが守り切れるかどうかに全てがかかってる……」

これから始まる試合を、バティン達は固唾を飲んで見守っていた。
全日本に負け、既に決勝トーナメント進出は不可能に近い。
故に、彼らが望む事はただ一つ――この試合を、出来るだけディアスの名誉を守る終わり方にして欲しいというものだけ。

ジョアン「十中八九、イタリアが勝つ。 火を見るより明らかじゃ」
アルシオン「ストラットならばアルゼンチンを相手にゴールを割るのは難しくなく、
      ジェンティーレとヘルナンデスが守るゴールは全日本のそれより更に鉄壁……ですか」
ジョアン「うむ……しかし、サビチェビッチめ。 今朝になって姿を消すとは、いったいどういうつもりか……。
     よもや、昨日言っていた言葉は本気だったというのか」
アルシオン「(見なくていいのか、それとも見たくなかったのか? サビチェビッチ。
       貴様の惚れ込んだ英雄は、昨日以上の苦戦をしそうだぞ?)」

ジョアンとアルシオンは、余裕を持って見守っていた。
心情的にイタリア寄りである彼らはイタリアの勝利を確信しつつ、
今朝になって姿を消した男――アルゼンチン国籍を取得すると息巻いていたジャン=サビチェビッチに思いを馳せていた。

そして、いよいよ試合時間が近づく。

ヘルナンデス「君との対決を愉しみにしていたよ、アルゼンチンの天才。 今日は互いに、ベストを尽くそう」

本来の歴史と、立場を入れ替えた虐殺劇。

ディアス「そうか……なら、俺も全力で行かせてもらうぜ」

その一戦が、始まる。

583 :森末(仮):2015/02/21(土) 00:20:35 ID:???
一旦ここで区切ります。続きは今日中に出来るかちょとわからないです。

584 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 00:21:38 ID:???
一旦乙です。とうとう始まる…

585 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 00:25:47 ID:???
一旦乙です。
ひっそりと伏線らしきものが二つ…

586 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 00:25:49 ID:???
それでもディアスなら…ディアスならきっと何とかしてくれる

587 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 01:35:17 ID:???
イタリアのモブはボールカットと繋ぐ能力が高めだから中盤に中里使ってカットにガンガン行くのも手
どうせ乱費怨に放るかバンビーノに渡す展開が多いだろうし

588 :森末(仮):2015/02/21(土) 01:36:15 ID:???
アルゼンチン対イタリア。
2日目の試合の中で、1番注目を集めていた試合と言って過言ではない。
南米の雄アルゼンチンに、カティナチオと称される守備力が自慢のイタリア。
昨日の試合で……敗北をしたとはいえディアスの実力の高さをわかっている観客たちは、
如何にしてイタリアが守るのか――果たしてディアスの攻撃力はイタリアに通用するのかと予想を始める。

無論、それはこの大会に出場をしている多くのライバル達も同様である。

ピピィイイイイイイイイイイイッ!!

ディアス「よっしゃあ! それじゃいっちょ行くとするか!」

ダダダダダーッ!!

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

観客「お、ディアスが突っ込んだ!」「またかよ!」「今日も出だしだけじゃねーだろうな!」

そして、笛が鳴り――アルゼンチンボールでの試合開始と同時に、ディアスは昨日の日本戦同様中央突破を開始した。
この姿に観客からはもう一度華麗で天才的なゴールが見られるかという期待の歓声が半分。
その後は少し期待外れだった事からの野次が半分飛び交う。

ディアス「(黙って見てろってんだ! 俺は負けない! 俺は天才、ファン=ディアスだからな! ん?)」
ヘルナンデス「みんな、予想通り来たぞ! 作戦通りに動け!」
イタリアメンバー「「「おう!!」」」

そんな声の中でディアスはドリブルで猛進していたのだが、やがて誰もチェックに来ないのに気づき前方を見やる。
するとそこにはMFまでもが下がり、完全にPA内を固めるイタリア守備陣の姿があった。

589 :森末(仮):2015/02/21(土) 01:37:17 ID:???
松山「イタリアはPA内を固める作戦で来たみたいだな」
早田「昨日ウチが考えたのと同じだな。 もっとも、こっちは中盤で松山が止めまくってたが」
岬「2段構えで守るか、最終ラインで止めるか……だけどイタリアは後者を選んだわけだね。
  引いて守ってカウンター、というのがイタリアの伝統的な戦術の1つな訳だし、納得だよ」
板野「(そうか、イタリアのアドバンテージの1つとして、先にディアスの実力を知れてるってのがあるんだ。
    だからこうやって無闇に突撃してディアスの調子を上げさせないようにしてる……)」

この戦術の意図を、全日本メンバーは即座に理解をした。
恐らくは昨日の試合でディアスの特徴――ドリブルをする毎に調子を上げる事をイタリアも把握しており、
ならば不用意にチェックをかけるのではなく最終ラインで止めようという作戦である。
ディアスもイタリアがこの陣形を敷いた理由を察知しながら、だからといって他に攻撃の手立ては無い。
何よりも自分のドリブルならばどれだけ人数をかけられようと奪われる気は一切していなかった。

ディアス「そうやって人数をかけて止められるもんなら……止めてみなぁぁあっ!!」

スタタタタタターッ!!

実況「イタリア、ここはPA内に引いて堅く守る! これはあまりにも堅牢な壁と言っていいでしょう!
   しかし、この密集地にも関わらずディアスくんが飛び込む! ミドルシュートは打たない、飛び込みます!
   果たしてこれは突破なるか!?」

ディアスの考えは決して外れではなかった。奪われる気がしないというのも、間違いではない。
事実、イタリアの殆どのDF達はディアスの動きについていけすらしないのだ。
本来ならば、ディアスが早々に得点を上げていた場面だろう。

ズドガガガガガッ! バチィィイイッ!!

ディアス「なにィ!?」
ジェンティーレ「ちぃっ!! (この俺が零れ球にするのが精いっぱいだと!?)」

590 :森末(仮):2015/02/21(土) 01:38:27 ID:???
だが、違う。本来とは違うのである。
このイタリアには、ヘルナンデスと共にゴールを守る世界最高峰のDF――サルバトーレ=ジェンティーレがいたのだから。

中山「!!」
松山「なっ、なにィ!?」
早田「……なんだあのDFは!? 今、何しやがった!?」
板野「(ジェンティーレ……やっぱり、能力的には強敵だ。 能力的には)」

ワアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

実況「駄目だ! これは流石に無理があった! ディアスくん、ボールを零した〜っ!!
   止めたのはジェンティーレくん、凄まじい勢いのタックルでディアスくんの突破を阻んだ!
   ディアスくん、ゴールならず〜っ!!」

観客「うおっ、すげえタックル!」「ディアス、また駄目かよ〜」「今のはイタリアが凄いんだって」

ディアス「ぐ、ぐ……(畜生、なんだってんだコイツは?)」
ヘルナンデス「よし、ナイスだジェンティーレ! その調子で頼むぞ」
ジェンティーレ「ふん、言われるまでもないさ。 そして次は確実にしとめる」

ディアスのドリブルは、間違いなく世界でもトップレベル――否、トップだった。
しかし、同じくジェンティーレは世界トップのDFだった。疑いようもない程の。
もしも一対一の勝負ならばわからなかった。或いはディアスが突破をする方が、確率的には高かったかもしれない。
ただし、今のジェンティーレには数的有利があった。密集地という地の利もあった。
その状況で彼を抜き去るというのは、如何にディアスといえども難しい。

591 :森末(仮):2015/02/21(土) 01:39:47 ID:???
バサレロ「さぁ、今度はこっちの番だ! 頼むぞ!」

バコーンッ!!

ディアス「し、しまった!」

そして、ボールをフォローしたイタリアはすぐさまロングキック。
お得意のカウンター戦術で、逆にこちらが先制点を奪おうと攻勢に出る。
慌ててディアスは戻るものの、当然ながら蹴りだされたボールの速度には追いつく事が出来ず、飛び上がったボールは中盤まで戻され……。

バッ! ババッ!!

ランピオン「そーらよっ!」
ガレヤ「た、高い!?」

マーガス「(……あれが噂のイタリアのポストプレイヤーか)」

政夫「(げげっ、ポストが無くてあれだけ飛べるのか)」
和夫「(俺達もジャンプ力なら負けてないけど、そもそもの上背が足りないもんなぁ……)」
若島津「(あの程度の高さなら弾き返すのに苦労はせんな)」

このハイボールにはローマの鷹――イタリア国内で有数のポストプレイヤーとして名を馳せるランピオンが合わせ、
共に飛び上がったアルゼンチンDFの数段上を行きあっさりと落とす事に成功する。

マリー「キャッ、ランピオンさんが映ったわ!」

因みにこの時、西ドイツのマリーは小さく喜んでいた。

592 :森末(仮):2015/02/21(土) 01:41:05 ID:???
ストラット「ナイス、ランピオン!(ゴールまでは……30m程か? でもこれなら……)」

グワアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

実況「ボールはランピオンくんが競り勝ち……これをストラットくんが受け取った!
   そしてなんと!? ストラットくん、ここでシュート体勢に入ったアアアアアアッ!!
   まさかまさか、この距離からシュートを狙うつもりか!?」

来生「はァ!? なんだあいつ、あの距離からゴール狙うつもりなのか!?」
反町「馬鹿な! どれだけゴールが離れてると思ってるんだ!?」
板野「いや……これは……(ストラットの必殺シュートがどれくらいかわからないけど、あいつの馬鹿げたキック力なら……)」

ランピオンが落としたボールをストラットが拾い、即座にシュート体勢に入った瞬間――観客たちからはざわめきが発生する。
シュナイダー、ビクトリーノ、ナポレオン、そして板野。
今日の試合までで幾多のストライカーが出ていながらも、そのいずれもがこれ程に距離の離れた位置からゴールを狙ったという事は無かった。
或いはシュナイダーや板野ならば、狙えば決まっていたかもしれないが――。
より確実を期すため、ゴール前まで運んでからシュートを打ちに行っていた。

その為、当然ながらこの無謀に見えるシュートが入る筈はないと、誰もが思った。
折角のチャンスを棒に振る、愚かな行いであると。

593 :森末(仮):2015/02/21(土) 01:42:18 ID:???
しかし、その認識は一瞬にして覆される事になった。

ストラット「くらえ! これが俺の……マグノスゾーンシュートだァァァアアアアアアアッ!!!」

ドゴッ……バゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!

アルゼンチンDF「ぐぎゃっ!?」「馬鹿なっ!?」「くそおおおおおっ!?」

ストラットの放ったシュート――『マグノスゾーンシュート』は放たれるや否や、
目にも留まらぬ速度でアルゼンチン守備陣を吹き飛ばし。

ガルトーニ「ぐ……はあああああっ!?」

GKのガルトーニはまともにセーブに向かう暇も与えられぬまま弾かれ。

バギャガガンッ!! ドゴォッ!!

ピ、ピピィーッ!!

ストラット「よーし! やったぞ、みんな!!」
ディアス「ば……馬鹿な……」

距離がどうした、DFがどうした、GKがどうしたと言わんばかりの破壊力を見せて、アルゼンチンゴールへと突き刺さった。
前半開始、僅か5分。
奇しくも丁度昨日の日本戦、ディアスが1点目を入れた時と同様の時間帯だったという。

イタリア 1−0 アルゼンチン

594 :森末(仮):2015/02/21(土) 01:43:33 ID:???
本日は一旦ここで区切らせていただきます。それでは。

595 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 01:43:45 ID:???
イタリアに先制されたらもうアウト、乙でした

596 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 02:06:40 ID:???
乙です

イタリアは4点差以上つけようとしてくるだろう、踏みとどまれるか?

597 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 02:11:08 ID:???
アルゼンチンはとにかく攻めなくてはいけない、イタリアは引いて守って放り込むだけでいい
真地獄の方程式。何点差がつくんや…

598 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 02:16:18 ID:???
ポストプレイを防ぐのを諦めてストラットに集中マークがつくと今度は乱費怨の意外に上手い足元のプレイが炸裂する
現実のドイツブラジルと同じ7−1位?

新人記者「大っきくてウマいんです」

599 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 10:45:28 ID:???
本編基準の予想だけど

69 バイシクルファイヤー
68 三角飛び改 ミューラーパンチ バーストマグナム スライダーキャノン ダイレクトファイヤー
67 若林パンチ 黄金の右腕 マグナムボレー ファイヤー
66 マグノス
65 ロケットヘッド ノヴァスマッシュ ストラットオーバー
64 マグナム ノートラップキャノン
63 スライダー キャノン ブラストヘッド
62 たすけてピエール

56 アモロパンチ

ジノとミューラーは相当堅そう

600 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 13:44:32 ID:???
バティンがいれば引きこもった相手を外から一撃で仕留められるのに
例え若林がGKだったとしても右45度からフリーで外から一撃即死

601 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 14:26:35 ID:???
アモロパンチよええwしかもGKの燃費にも難があるというブグェ

602 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 16:33:22 ID:???
うーん、森崎達さえ恐れおののくイレギュラー選手でてこないかねえ
中立でどちらにも不干渉だけど敵対行動を取ると・・・?ていうの
なお森崎側はチームに入れることは絶対に不可能

603 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 16:52:38 ID:???
KAZUとか

604 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:12:06 ID:???
スレ主さんの入れたい要素を入れて貰うのが1番だよね。
現段階で本編未登場の新敵キャラ候補が五人
ロブソンもちょっと目立ってきたし、ユース編の予想が難しい。



605 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:20:57 ID:???
大方の予想通り、岬犬と中山さんが離脱するなら
ユースで外される2名の選手は当然なしなのか

606 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:31:03 ID:???
森崎達との対戦だけ抜けるのかなとか思ってたけど
完全離脱の可能性も0ではないか。

607 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:33:37 ID:???
岬と中山さん抜けると割と真面目に選手が足りなくなりそう
高杉と石崎は見たくないぞ・・・

608 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:40:28 ID:???
中山さんの穴はでかいね。
石崎をテクモ仕様に鍛えるしかない。
後は三杉のリベロ化か。

609 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:46:19 ID:???
じとーとすもうでセンターバック?

610 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:55:22 ID:???
赤井の出番も増えそうだね。井沢もDFやってくれないと困る。
まあ中山岬は本編でも十分活躍したから、離脱したらしたで面白い。

611 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 18:01:59 ID:???
井沢は岬消えたらMFやってくれないとしんどいんじゃないかな?

612 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 18:07:09 ID:???
井川探そう(提案)
ユース編なら劣化してないから火野レベルの実力はあるはずだし、高さというアドバンテージがある。
まぁ二人が永久離脱なら本当につらいのはMFなんだが……

613 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 18:08:18 ID:???
FWだって板野が世界レベルなだけで
中山さん、岬が消えたら松山以外頼れないからなぁ

614 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 19:14:02 ID:???
板野新田
葵井沢山森松山
早田三杉次籐中里
例えばこんな感じか。

615 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 19:36:08 ID:???
岬が消えたら三杉はMFじゃないと辛くないか
というか本当に人材不足が加速する
ユース編でレギュラー確定なのって板野松山三杉だけになるんじゃないか

616 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 19:42:39 ID:???
葵、早田、中里がそれに続く感じかなぁ

617 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 19:43:41 ID:???
2人が離脱したら井沢を鍛える価値はあるかな?
この世界だとDF能力上がってるから結構使えるようになりそう

618 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:20:48 ID:???
離脱しなくても鍛える価値はあるかと。
タックルカットクリアドリブルくらいできれば
守備的なとこならどこでも使えるだろうし。

619 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:26:31 ID:???
>>603
KAZUかぁ、イレギュラーとしてならうってつけの存在だなぁ
中立だから板野側は引き込むのは困難だが仲間にできれば・・・的な存在もおもしろそうだが
たまには森崎側が恐れおののく奴がいるってのも見たい気が
確かKAZUってかなり強かったよね?
最も、スレ主がやりたいようにやるのが一番なんだけどね

620 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:34:42 ID:???
最近伸びに伸びてる中西君の名前が出なくて解せぬ

621 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:43:20 ID:???
自分は本編で控えだったメンバーを鍛えてチームを強くする今の流れがかなり楽しい。
ファンキーガッツマンってどんなスキルなんだろう。

622 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:44:54 ID:???
中西君か、中山さん外れるならディフェンスリーダーは彼になるのかな?
若島津がキーパーのままなら、競り合いを伸ばす方向で行くべき?

新田君はファルコンダイブを習得すればミューラーあたりとも対等に戦えるくらいになるのかな?

623 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:47:19 ID:???
ファルコンダイブならミューラーとも互角以上に戦え なければ、俺はこの星を破壊しつくすだけだぁ

624 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:49:38 ID:???
星は壊せてもたった一人のゴールキーパーは壊せねえようだな

625 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:55:43 ID:???
浴びせ蹴りクラスは無理だろうけど
クリア技はDFに覚えさせたいね。
早田は当然として、中西も有力かな。

626 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 21:20:01 ID:???
井沢も高いクリアなら素質はあるはず

627 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:44:55 ID:???
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?

実況「き……決まったァーッ!! なんとなんと! イタリア、先取点ーっ!!
   決めたのはイタリアのストライカー、チェザーレ=ストラットくん!
   ゴールまで30メートルはあろうかという位置から、問答無用のシュートでアルゼンチン守備陣を吹き飛ばし!
   あっさりとゴールを決めてみせましたーっ!!
   今大会、シュナイダーくんを筆頭に幾多のストライカーが得点王を争っていますが、
   どうやらこのストラットくんもその一員になりそうな気配があります! それほどまでに凄いシュートでした!」

観客「すげぇ! あんな距離から入るのかよ!!」「何人吹っ飛んだんだ!?」「こりゃまた凄いFWが出てきやがったぜ……」

超長距離、遠く離れた位置からのとても入るとは思えないシュートを――しかし決めてみせたストラットに対し、
観客たちはその大歓声をもってして応える。
如何にフリーの状態だったとはいえ、通常ならばそれだけ距離が離れていれば入る筈がないのである。
どれだけアルゼンチンの守備陣が、脆弱であろうと。
にも関わらずあっさりと得点を決めてしまったストラットの決定力というものがどれだけ優れているかという事を、
観客たちはすぐさま理解をしていた。

ランピオン「ナイスシュート、ストラット!」
ストラット「ああ、ランピオンもアシストサンキュー」
バンビーノ「(この距離からでも十分入るな。 やはりアルゼンチンは守備が穴だ)」
ヘルナンデス「よくやった、ストラット! その調子で頼むぞ!」

そして、この歓声を受けながらイタリアメンバーは歓喜に沸きあがった。
ディアスの突破を止めただけではなく、そこからのカウンターで即座に得点。
しかもストラットのシュートならば遠かろうとも決まるという事が確認出来た上での得点とあれば、喜ばない筈がない。

628 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:46:00 ID:???
カルツ「こりゃ大したもんだぜ。 どうだいシュナイダーちゃん、これでライバルが4人に増えたな」
シュナイダー「……純粋なキック力は相当なものだな、あのストラットという男は。
       だが、それでも俺のファイヤーショットの敵ではないさ」

ビクトリーノ「チェッ、面白くねぇ」

ナポレオン「凄いFWですね。 僕も負けないようにしなければ」
アモロ「あ、あばばばばば」
ピエール「(アモロがナポレオンとストラット、両者に別の意味で恐怖を覚えてる……)」

反町「お、恐ろしい……(やっぱり板野だけじゃない。 世界にはこんな化け物がゴロゴロいるんだ……)」
滝「若林さん……止められますか?」
若林「俺を誰だと思っていやがる。 PA外からのシュートならば、俺は必ず防いでみせるぞ」
若島津「(ふん、PA外からでなければ危ういという事だろうが。 俺は違う、どこからだろうと止めてみせる)」
板野「(メガロゾーン程じゃないけど、とんでもない威力だ……俺のマグナムボレーより少し落ちるくらいかな?)」

そして、当然ながらこの試合を観戦していた実力者たちもストラットのキック力に戦慄する。
チェザーレ=ストラット。
本編で主人公を大いに苦しめた世界最高のストライカーが、
未だ発展途上ながらもその実力の片鱗を見せつけた形である。

翼「うわぁ、凄いなぁ。 ゲームの俺はあの選手とチームメイトだったのか。 10アシストがすぐつきそうだね」
森崎「(ええい、忌々しい!)」

因みにその本編で主人公をしていた男は、歓声を受けるストラットを憎しみを込めた目で睨みつけていたという。

629 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:47:12 ID:???
ディアス「くそっ……!」

一方で、アルゼンチンはというと当然メンバー達の顔色は思わしくなかった。
エースであるディアスがファーストプレイで止められ、しかもそこからのカウンターであっさりと失点。
距離があるのにもかかわらず止められなかったとあれば、笑顔でいられる筈もない。

ルジェリ「ディ、ディアス……どうするんだ?」
ディアス「……とにかく、あの9番(ストラット)にはもう絶対に打たせるな。 2人がかりでマークにつけ」
パルス「わ、わかった(打たれる前に止める、しかないか……)」
ガレヤ「だが攻撃はどうするんだ? またああやってPA内を固められたらいくらディアスでも……」
ディアス「わかってるよ。 少し待て……」

だが、それでも一同はディアスの周囲に集まりディアスに今後の方針を問いかけた。
彼らにとって頼れるのはディアスだけであり、ディアスがお手上げと判断をすればその時点で諦めもつく。
しかし、ディアスが対抗策を講じた所で一同も少しだけ安堵をし……。
それを横目で見ながら、ディアスは顎を一撫でしつつ思案をする。

ディアス「(ノーチェックで行かせてもらえるってんなら楽っちゃ楽だ、体力を浪費する心配は無い。
      だがだからといってミドルシュートはキツい。
      ドリブルをしないで確保できる体力量とドライブシュートを打つ事での疲弊が割に合わない。
      ならやっぱり一対一を狙いに行く方がいいんだが……あのDFが邪魔なんだよな)」

ディアスは冷静だった。自分がシュートを打つ事と、そのままドリブルで切り込む事のリスクとリターン。
メリットとデメリットを天秤にかけながら、どうすれば勝てるか、逆転出来るかを絞り出そうとする。
結局、ドリブルゴールを狙いに行くのが最良だろうとは思えたものの、それにはゴール前で陣取るジェンティーレが邪魔。
彼さえいなくなれば幾らでもゴールを上げられる筈なのだがと考え……。

630 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:48:16 ID:???
ディアス「(お?)」
ジェンティーレ「(次は確実に奪い取る! 天才だか何だか知らんが、俺達イタリアの堅き錠前が貴様1人に壊滅されると思うな!!)」

不意にジェンティーレに視線を送った際、ディアスは彼と目が合う。
遠く離れていても尚わかる程にジェンティーレは敵意をディアスへと向けており……。
これを受けて、ディアスは1つの策を思いついた。

ディアス「よし、決まった」
ジェイテス「ど、どうするんだ?」
ディアス「とりあえず俺にボールを渡せ。 そして作戦はだな……」

思いついた作戦を、簡単に一同に説明するディアス。
その時の彼の表情は、悪戯を思いついた悪ガキのように無邪気で――
しかし、敵の僅かな弱点をも見逃さない冷徹な指揮官のそれにもよく似ていたという。

631 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:50:13 ID:???
ピィイイイッ!!

実況「イタリアの衝撃的なゴールの余韻を残したまま、再びアルゼンチンのキックオフで試合再開です!
   アルゼンチン、再びディアスくんがボールを持った! これはまたも中央突破か!?」

ヘルナンデス「(それしか出来る事は無いだろうからな。 試してみるといい、ディアス。
        今回は抜けるかもしれない。 いつかは抜けるかもしれない。
        だが、その突破に失敗をした分――先ほどのゴールと同じ結果が待っているぞ)」
ストラット「(俺にマークをつけてきたか……だが、それならランピオンが決めればいいだけさ)」

ディアス「(ふん、余裕綽々って顔しやがって。 そういう表情をしていいのは、フィールドではこの俺だけなんだよ!)」

タタタタタタッ!

再びのディアスの突撃に、イタリアはやはりPA内に引きこもる作戦で対応をする。
既に一度ディアスのドリブルを止め、リードをしている彼らには余裕すらあったが、慢心は無かった。
彼らにあったのは過度にディアスを恐れない、平常心である。
だが、その平常心はディアスの取った行動によってあっさりと崩れ去った。

ディアス「(そろそろいいかな? っと)そーれ、ほいほいほいっと」

ポンポンポン

ヘルナンデス「ん?」
バンビーノ「な、なんだ……?」

632 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:51:44 ID:???
実況「お、っと? これはどうしたことでしょうか?
   ディアスくん、バイタルエリアに侵入すると同時にドリブルをピタリとやめ、なんとリフティングを開始した!?
   い、いったいどういうことでしょうか!? 何が狙いなのか、ディアスくん!?」

ざわ…… ざわ……

観客「なんだなんだ?」「遊んでる場合かよ、負けてるんだぞ!」「何やってんだ!」

三杉「……一体どういうつもりだ?」
沢田「じ、時間稼ぎ……とかでしょうか?」
佐野「アルゼンチンは負けてるのにか? 必要ないだろ」
松山「いや、ディアスの体力を調整するという意味では……ある程度時間を浪費するのはいいのかもしれない。
   ただ、それにしたって早すぎる。 ディアスは殆ど体力を使ってない筈なんだからな」

そのディアスの行動に、誰もが目を丸くし、驚いた。
サッカーの試合中に、リフティング。
しかも敵ゴール前で、無防備に――鼻歌を歌いかねない雰囲気でそれをし始めたのだから。

当然ながら誰もがその行動の意味を図りかね、一体なんのつもりかと口々に話し始める。
時間稼ぎにしろ、体力の回復を図るにしろ、今このタイミングでする必要は無い。
だからこそディアスの考えがわからなかった。

ジェンティーレ「や、野郎! ふざけた真似を……!」
ヘルナンデス「落ち着け、ジェンティーレ。 時間を無駄に使ってくれるなら好都合さ。
       ただしいつ動くかわからない……油断はするんじゃないぞ、みんな!」
トリノ「わ、わかった!」
ヘルナンデス「(中盤メンバーも奪いに行かなくていい。 勝手にやらせるんだ!)」
バンビーノ「(動かなくていい、か……ならしばらくは様子を見るとするか)」

633 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:52:54 ID:???
そして、ディアスの考えがわからないのはイタリアの面々も同じである。
普通ならば絶対的なエースの突破が通じず、焦ってもう一度――という場面。
にも関わらず実際にはその真逆、すぐさま突撃をするどころか時間稼ぎをしているというのだから、
観客たちよりも彼らの方が驚きは大きかったと言えるだろう。
だが、それでもヘルナンデスは冷静にメンバー達に指示を飛ばした。

何が狙いかはわからないが、好きにやらせればいい。
こちらがリードをしている状況で時間を勝手に浪費してくれるのならば、それに越した事はない。

そう考えた上で、ヘルナンデスは全員に"奪いに行くな"と命令をしたのである。
これには全員が揃って聞いた。
ヘルナンデス以外のメンバーもディアスの狙いは皆目見当がつかず、ヘルナンデスの指示を聞くしかなかったとも言える。

ディアス「(そう、それでいいんだ。 奪いに来られたらどうしようかと思ったぜ)」
ヘルナンデス「(まさかこちらが緊張の糸を切らせるのを狙っている? 馬鹿な……そんな無様は俺達はしないぞ、ディアス)」

やがて5分、10分と時間が流れる中でも――ディアスは相変わらずリフティングを続けた。
イタリアは、それをただ見守っていた。
ディアスのリフティングショーは、それだけ長い時間続いたのである。

しかし、これはリフティングショーではない。サッカーの試合。
"観客たち"は、サッカーを見る為にこの会場まで足を運んだのだ。
そうなれば、どうなるか――。

634 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:53:56 ID:???
ざわ……ざわ…… ざわわ…… ざわわ……!

実況「えー、ただいま……時計の針が20分を過ぎました!
   それにしても困りました、実況ですが実況をする事がありません!
   このような事態は、私もこの仕事をして20年になりますが初めての事です!」

観客「いつまでやってるんだー!」「俺達はお前のリフティングを見に来たんじゃないんだぞ!」「馬鹿にしてんのか!!」
  「イタリアもイタリアだー!!」「いい加減に奪いに行けよ!」「1点取って満足したのか!?」「臆病者ーっ!!」

当然のように、観客たちからは不満が噴出した。
いつまでも続くディアスのリフティング、それをただ引きこもってみるだけのイタリア。
最初は驚きでざわめいていた観客席は次第に怒号に飲まれていき、一斉に罵声を浴びせ始める。

ヘルナンデス「(やれやれ、簡単に言ってくれる。 ディアスからボールを奪うのは容易じゃないんだ。
        個別に行って抜かれたらどうなるか……考えてから言って欲しいな)」

この罵声を、ヘルナンデスはうんざりした気持ちで聞き流していた。
彼は人並みの羞恥心やプライドは持ち合わせていたが、それと同時に冷静な判断力も備えていた。
感情に任せ、勝手な行動を起こしてはどうなるか――よく理解していたと言っていい。

635 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:54:59 ID:???
だが、そのヘルナンデスとは真逆とも言える選手が――イタリアには存在した。

ダダダダダダッ!!

ジェンティーレ「これ以上コケにされて……たまるかああああああああああああああああっ!!」
ヘルナンデス「ジェ、ジェンティーレッ!?」

プライドの塊のような男にして、傲慢の塊。
純粋無垢と言える葵新伍からすら、明確に『嫌な奴』と呼ばれる男――サルバトーレ=ジェンティーレである。

彼は沸点が低い男だった。
それでも、まだディアスがただリフティングをするだけでいれば我慢は出来ただろう。
猿が猿回しをしている、リードをしている自分たちがそれを見世物にして笑っているだけだと自分を納得させて。
だが、観客から罵声を浴びせられた瞬間、彼の頭には血が昇った。
彼はプライドの高い男である、自分は称賛を浴びるべき人間だという無自覚な傲慢さのある男である。
罵声や非難を浴びるのは、耐え難い屈辱であると考える男である。

636 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:56:17 ID:???
ジェンティーレ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 子ザルがぁぁぁあああっ!!」

そんな彼が、弾かれたようにディアスの"狙い通り"にボールを奪いに向かうのは必然であり。

ディアス「(かかった! やっぱり熱くなりやすいタイプだなコイツは。 よし、後はこのまま……!)」

ダダダダッ!!

それを見た瞬間、ディアスがリフティングを止めて"予定通り"ドリブルで進撃をするのも必然であり。

ジェンティーレ「見ていやがれ! この俺は……臆病者などでは決してない! 誇り高い、アズーリの一員だァァァアッ!!」

ドガシャーンッ!!

ディアス「ぎゃあああああああああっ!!(と、ここまで叫んでも不自然じゃないタックルってのは褒めておいてやるぜ)」

交錯した瞬間、ジェンティーレの鋭いタックルがディアスのボールを完全に捉えてディアスを吹き飛ばしたのも必然だった。

ジェンティーレ「ハーッハッハッハ! 何が天才だ! ただのリフティングが上手いだけの大道芸人の間違いじゃないのか?」
ディアス「(だが、頭は良くないな)」

ピピィーッ!!

ジェンティーレ「な……なに?」
ヘルナンデス「しまっ、た……そういう、事か……!(昨日の試合で憶測は出来た筈だったのに……!)」

そして――熱くなりすぎていたジェンティーレのタックルが、角度のせいでディアスの足を削ったかのように見られ、
審判が笛を吹き鳴らしながら高笑いをしていた彼の元に向かってきたのも必然だった。

唯一の偶然は、ディアスの予想以上にジェンティーレが熱くなっていた為、
"故意"であると判断をした審判が胸ポケットに手を持って行っていた事。
当然、これを見てジェンティーレが高笑いを止め顔面を蒼白とさせたのは言うまでもない。

637 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:57:51 ID:???
>>595 >>596
乙ありです。

一旦ここで区切らせていただきます。続きは今日中に出来るかはわからないです。

638 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 00:59:28 ID:???
乙です。ここでレッドだったら今回も矢車の弟行きですねw

639 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 01:04:15 ID:???
乙です。
本編で遂行できなかった作戦をやってくれるとは

640 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 01:14:51 ID:???
ここでレッド出てくれると次のイタリアでは慈円手入抜きになるが果たして

641 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 01:17:33 ID:???
退場させてくれたら菓子折りもってお詫びとお礼に行こう

642 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 01:19:03 ID:???
本当に退場したら矢車さんに連絡して引取りに来てもらおう

643 :森末(仮):2015/02/22(日) 02:01:28 ID:???
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?

実況「あーっと! これはジェンティーレくん、鋭いタックルでディアスくんを吹き飛ばしましたが……。
   いけない、これはいけません! 反則! 反則を取られました!
   どうやら審判は苛立っていたジェンティーレくんが故意に足をかけたと判断したようです!
   これにはカードが出るようですが……おぉっと!?」

スッ……

ジェンティーレ「うっ……!」
ディアス「(ちっ)」

実況「イエロー、イエローカードです! ジェンティーレくん、イエローカードを貰いました!」

観客「レッドカードじゃなかったか」「レッドならイタリアは一気に危なくなってたな」

不幸中の幸いとも言うべきか、ジェンティーレの反則はイエローカードで済んだ。
無論、済んだ――というにはあまりにも大きな代償である。
ジェンティーレという強固な要塞と、ヘルナンデスというヨーロッパNo.1キーパー。
彼らイタリア守備陣の柱が一本でも崩れれば、ディアスに簡単に翻弄されるのは誰の目にも明らかだったからである。
一発で退場ではなくとも、これでジェンティーレが動きにくくなったとなれば、イタリアにとって痛いのは当然だった。

井沢「ディアスの野郎! またやりやがったな!!」
岬「うん……恐らく、そうだろうね。 激しく痛がっていたけれど、動きに支障はないようだし……」
松山「………………」
板野「(ジェンティーレ……お前って奴は……)」

644 :森末(仮):2015/02/22(日) 02:02:39 ID:???
ジェンティーレ「………………」
ヘルナンデス「ジェンティーレ!」
ジェンティーレ「ヘルナンデス……」
ヘルナンデス「……俺から言う事は、何も無い。 お前は傲慢だが、馬鹿ではない。 そうだろう?
       ならば……俺から言う事は、何も無いんだ」

フィールドではジェンティーレがなんとも形容しがたい表情をしながら、ヘルナンデスの元に歩み寄っていた。
頭に血が上り作戦に背いたという罪悪感、ボールを奪った筈なのにディアスに引っかかり反則を受けた事に対する恥じらい、
何よりもPKを与えてしまったという事に責任を感じながらも――それを素直に謝れない、己のプライド。
それらを混ぜた表情は、形容しがたい――としか表現を出来なかった。

そして、それを受けながら……ヘルナンデスはあくまでもクールに言い放った。
優しい口調でもなければ、厳しい口調でもない。
少々短気なジェンティーレとはいえ、一度覚えた失敗を二度と繰り返すような者ではない事をヘルナンデスは理解していた。
よって、厳しく叱責をする必要は無い。
また、この程度で落ち込みプレイに精彩を欠く程――ジェンティーレは弱気ではない。
よって、優しく慰める必要もない。

ヘルナンデス「この後も頼むぞ、ジェンティーレ」
ジェンティーレ「……ああ! わかっている……わかっているさ!!」

だからヘルナンデスはジェンティーレに対し、今後も頼りにしていると言うだけでよかった。
プライドの高いジェンティーレならば、これだけでいい方向に発奮をする。
頭に血を上らせるのではなく、冷静に、かつ闘志を燃やしてプレイに勤しむ筈だと――。
形容しがたい表情から一変、ディアスに対し敵意をむき出しに――しかし必要以上に熱くならずに睨みつけるジェンティーレを見て、
ヘルナンデスはそう確信をしていた。

645 :森末(仮):2015/02/22(日) 02:03:59 ID:???
その後、ディアスはあっさりと貰ったPKを決めて同点に追いついた。
如何にパーフェクトキーパーといえど、キーパーに絶対的不利なPKを止めるのは難しい。
同点に追いつかれたイタリアはすぐさま引き離そうと攻勢に出るも、ストラットはマークにあい封じ込められ、
ならばもう片方のFWであるランピオンを使ってはとなれば――。

ディアス「おりゃあっ!!」
ランピオン「ぐおっ!?(くそっ、チビの癖に高い!)」

昨日の試合同様、ディアスが守備に走りランピオンの思うようにはさせなかった。
とはいえ、ディアスが守備に回るという事は攻撃では使えないという事である。
アルゼンチンも何度か攻撃を繰り返すもののそこは守備に定評のあるイタリア、やはり堅牢。
こうして前半は1−1のまま推移し、ハーフタイムへと突入するのだった。

実況「イタリア対アルゼンチン、正に白熱した様相!
   ディアスくんがリフティングを始めた時はどうしようかと思いましたが、1−1と同点で前半を折り返します!」

観客「本当にあれはなんだったんだ?」「挑発してたんじゃないのか?」「だったら引っかかった方が馬鹿だぜ」
  「お前奪いに行けとか煽ってなかったっけ?」「煽ってねーよ!」「挑発されても足にひっかけたら駄目だろ……」

ディアス「(同点か、昨日よりはマシ……なんだがこのままじゃいけねぇな。 点をとらねぇと勝てないんだ……ん?)」
ジェンティーレ「………………」
ディアス「よーう、後半もフェアプレイでどうかよろしく頼むぜ。 この将来大金を生む足に傷つけられちゃたまんねぇからな〜」
ジェンティーレ「………………」
ディアス「ケッ、無視かよ。 このムッツリが(まあこんだけ言っておけば内心カッカしてるだろ)」

そして、それぞれがベンチに引き揚げていく中で……ディアスは再び目が合ったジェンティーレに対し、挑発紛いの言葉を投げかけた。
しかし、これにジェンティーレは一切答えず、踵を返してイタリアベンチへと戻っていく。
無視をするジェンティーレに対し、ディアスはそれでも多少は効果があるだろうと踏んでいた。

646 :森末(仮):2015/02/22(日) 02:05:06 ID:???
ジェンティーレのようなタイプは、ディアスも良く知っている。
彼は天才であるが故に敵が多い。自分こそが才能を持つ者、自分はディアスに勝っていると思っている者。
そういった者達は往々にしてプライドが高く、そしてディアス自身の才能と実力を見せれば見せる程に、
苛立ちと焦りと怒りを燃やし自滅をするという事を、彼は知っていたのだ。

故に、ディアスは考えていた。ジェンティーレはここからはまともなプレイが出来ないだろうと。
既に自分に対して怒りを心頭させている彼は、プレイに集中出来ないだろうと。

ジェンティーレ「………………」

しかし、ディアスは知らなかった。
ジェンティーレは傲慢であり、プライドの高すぎる男である。
だが、馬鹿ではなかった。自身のプライドも大事だが、それ以上に大切な事を理解してもいる男であった。

ジェンティーレ「(恐らく、奴は俺が既に正気を失いかけていると思っているだろう。 ならば……)おい、お前たち」
ゴルバテ「えっ、なんだジェンティーレ?」
ジェンティーレ「後半、ディアスが突っ込んできた時だが……」
トリノ「(ジェンティーレが提案なんて珍しいな……)」

彼はベンチに引きあげながら、自分以外の――普段は役立たずと呼んでいるDF達に声をかける。
腸が煮えくり返りそうな程のディアスへの怒りを抑え、自分より地位の低い者達ともコミュニケーションを取るのは――。
全て、勝つ為。

彼はプライドがただ高すぎる男なのではない。
勝利する事を義務付けられた――誇り高き、アズーリなのだ。

ヘルナンデス「(やれやれ、普段からそれくらいDFとも仲良くしてくれたら俺も楽が出来るんだがな)」

なお、この様子を見ていたヘルナンデスは彼らに聞こえないようにため息を吐いていた。

647 :森末(仮):2015/02/22(日) 02:06:57 ID:???
>>638 >>639
乙ありです。

本日は一旦ここで区切らせていただきます。NPCシーンが長くなりすみません。それでは。

648 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 08:56:55 ID:???
乙です!
原作の葵とのエピソードを思い出すなあ。

649 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 15:15:20 ID:???
ここの新田は板野に対して尊敬も野心も持っているから、そのうちテクモ版Vのように
「試してみたいんですよ。俺と板野さんとどちらが上なのか」
みたいな展開になりそうだ。

650 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 16:18:39 ID:???
今更だけど日向の立場ってどうなるんだろうか
WY編から復帰しても本編より弱体化はしてそうだし、
下手すりゃ大会終わって家に戻ると姿を消していた……なんてこともありそう

651 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 16:28:54 ID:???
日向の意識が戻ったら板野の事どう思うんだろ
似たスタイルで保護もしたし悪い印象はないだろうけど

652 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 16:40:23 ID:???
板野「日向ぁ、お前俺の弟になれ」

653 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 16:54:52 ID:???
しかしディアス小さいくせに競り合い高すぎよね、原作どおりなんだけど

654 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 17:06:48 ID:???
天才ですから

655 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 01:24:19 ID:???
天才がゆえに。
競り合いは体格は二の次。ポジションが取れればいいからね。


656 :森末(仮):2015/02/23(月) 01:56:16 ID:???
そしてしばしの休息を挟み、後半戦が始まる。
イタリアボールで開始された後半は、まずゲームメイカーのバンビーノが指揮するパスワークで遅攻を仕掛けた。
同点ではあるものの、まだ焦るような時間帯ではない。
ゆっくりとゲームを作り確実にしとめればいいという狙いがイタリアにはあった。

バンビーノ「(それにアルゼンチンは昨日の試合を見る限りパスワークをカットするのが少し苦手なようだからな。
       ここはこれで正解だ)」
ディアス「(そう来るか、まあ予想内だ)」

イタリアの狙い通り、アルゼンチンの守備陣はこのイタリアのパスワークに見事に翻弄された。
元々組織だったパスワークは世界的に見ても高水準なイタリアに対し、
アルゼンチンは個人技こそ巧みなものの組織的プレイは不得手。
上手くボールを奪い返せないというのも、当然だと言えた。

だが、パスを幾ら続けてもどこかでFWにラストパスを出さなければならない。
こうして中盤でパスをただ回しているだけでは、ここから勝ちこす事は出来ないのである。

バンビーノ「(俺にシュートが打てれば違うんだろうがな。 しかしどうしたものか。
       ストラットには相変わらずマークが張り付いているしランピオンもディアスが相手では厳しそうだが……)」

結果、イタリアは迷う事となる。
イタリアの得点源はランピオンとストラットの2人だが、片方には空中戦でもその強さを発揮するアルゼンチンのエースが張り付き、
もう片方には多重でマークをかけられている。
この状況では安易に放り込んだ所でいい結果に繋がるとは思えず、ボールをキープするバンビーノは判断に迷った。

657 :森末(仮):2015/02/23(月) 01:57:47 ID:???
ディアス「(よし、ここだみんな!)」
アルゼンチンメンバー「「「(わかった!)」」」

マイボールにし、アルゼンチンが為す術もない様を見せつけられた安心感から棒立ちをし思案するバンビーノ。
それが隙に繋がり――ディアスは見逃さず、一つの指示を飛ばすと……。
彼に向けて、パスワークが止まった所で一斉にアルゼンチン守備陣が襲いかかる。

ルジェリ「捕まえたぞ!」
パルス「パスで逃げさせなどしない!」
ブラウン「ここだぁっ!!」

バチィッ!

バンビーノ「なっ!?(しまった、油断した!?)」

バンビーノもイタリアの主力選手の1人に数えられる程の実力者には違いない。
しかし、油断をした上で多人数に襲撃されてボールをキープするだけの実力は、彼は持ち合わせていなかった。

実況「アルゼンチン、ようやくボールを確保! バンビーノくん、油断をしていたのか少しパスを出すのが遅れた!
   アルゼンチンが一斉にプレスをかけるとあっさりとボールを奪われてしまいましたァ!」

三杉「イタリアの中盤がウィークポイントだというのは本当のようだね」
中里「うむ。 あのバンビーノという男も相応の実力者のようでござるが、ストラットやランピオンに比較をすると見劣りをするな」
板野「(確か本編でもそこまで強くなかったもんな。 勿論、油断できない相手だけど……ストラット達に比べればやりやすそうだ)」

アルシオン「あれが今のイタリアの中盤の要ですか……」
ジョアン「うむ。 はっきり言って、イタリアの唯一の穴と言っていいな。
     お前が入る事で、その穴は埋まるどころか強力なストロングポイントになるがの」

658 :森末(仮):2015/02/23(月) 01:58:59 ID:???
こうしてボールを奪い返したアルゼンチンは、当然このボールをエースに渡した。
イタリアからボールを奪える機会はそう多くない。
確実なチャンスを確実に決めるには――どうしても絶対的なエースに頼るしか彼らに選択肢は無かったのだ。

ブラウン「頼む、ディアス!」
ディアス「頼まれたぁ!」

ダダダダダダダーッ!!

そして、頼られたエースは、ようやく到来したチャンスに歓喜しながら迷う事なくゴール前からドリブルを開始した。
彼にもわかっていた。どうやってもアルゼンチンが勝つには自分に頼るしか選択肢が無いという事に。

実況「ボールはディアスくんに渡ったーっ! ディアスくん、これを……そのまま持って上がる! 上がります!!
   パスは出さない! 出す素振りすら見せない! まさかまさか、自陣ゴール前から一気に攻め上がるつもりなのか!?」

ストラット「く、くそっ! ここで奪い返しさえすれば……」
ランピオン「アルゼンチンは穴だらけになる筈なんだ!」
ディアス「そいつぁ無理な相談だ! そらっ!」

ピョーンッ!

ストラット「ば、化け物め……!」
ディアス「(お前が言うなっての)」

当然、このゴール前からのドリブルという一見すれば無謀にしか思えない行動にイタリアは憤慨しディアスにプレスをかけた。
感情に任せた行動である。これは、結果的に失敗だった。
ストラットもランピオンもタックルは下手ではない――だが、一流レベルでも無い。
そんな彼らのタックルが、天才・ファン=ディアスに通用をする筈が無く、ディアスはあっさりとストラット達を飛び越えた。

659 :森末(仮):2015/02/23(月) 01:59:59 ID:???
ディアス「どんどんかかってきな! この俺を止められるもんならなぁ!!」
ヘルナンデス「挑発に乗るなよ、みんな! 下がれ、下がるんだ! PA内を固めろ!」

そして更に速度を上げ、中盤を越え、一気にイタリア陣内に入るディアス。
普通ならばプレスをかけて前目で止めようとするこの状況で、加えて言えばディアスも挑発めいた言葉を吐いている中。
それでもキャプテンのヘルナンデスは、作戦通りディアスから安易にボールを奪いに行く事を禁じ、
引いて守るよう指示を飛ばした。
中盤で、今すぐにディアスの元へと向かう事が出来るだろう選手に対してもである。

実況「イタリア、ここでプレスをかけない! 下がります、目一杯下がる!
   これは再びPA内を堅め、最終ラインで止めようという作戦でしょうか!?
   フィールドではディアスくんと並走するようにしてイタリア選手がPAへと戻るというなんとも珍しい光景が繰り広げられています!」

ディアス「どうしたどうした、そうやって引きこもるのがご自慢のカティナチオって奴なのか?
     そりゃそんだけ固めたら並の選手じゃゴールは割れないだろうな〜? いやー、たいしたもんだぜ」

観客「何やってんだイタリア、奪いに行けよ!」「また引きこもりか!」「ディアスにビビリ過ぎだろ!」

これに対してディアスは更に挑発を上乗せし、それに呼応するかのように観客席からは無責任な罵声が飛んだ。
彼らの目にはイタリアが必要以上にディアスを恐れ、臆病な戦いしか出来ていないように見えたからである。
しかしディアスからの挑発に、観客たちからの罵声。
これらを受けてもイタリアメンバーはそれでもPA内を固めた――かのように見えた。

ディアス「(さてさて、これだけ罵声が飛んでるんだ。 1点目の時と同じ……いや、それ以上かな? そうなればどうなるか)」
ヘルナンデス「気にするな、みんな! 絶対に飛び出すんじゃ……」

ジェンティーレ「ファン=ディアスゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!」

ディアス「(釣れた〜っ!!)」

660 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:01:08 ID:???
ヘルナンデスが更に言い含め、絶対に飛び出さないようにと指示を出そうとした瞬間、フィールドに咆哮が響き渡った。
ある者はその声量に驚き、ある者はその形相に驚き――そしてある者は、その姿を見て笑みを浮かべる。
サルバトーレ=ジェンティーレ。
ディアスが挑発を繰り返すたびに再びその顔面を真っ赤に染め上げ、
やがて怒りの沸点が最高潮に達すると同時に彼はヘルナンデスの指示を無視して一気にディアスの元へと駆けて行った――。
そう見えた。

ズダダダダダダダダダダーッ!!

ストラット「ジェ、ジェンティーレ!?」
ランピオン「(なんて顔をしてやがんだ……ありゃ鬼だ)」
ヘルナンデス「……。 ジェンティーレ、戻れ!!」

このジェンティーレの暴走に、イタリアメンバーは一瞬呆気にとられた後、
すぐさま平静に返り彼を落ちつけようと声を張り上げた。
だが、ジェンティーレにその声が届く事はなく、彼は般若が如き形相でディアスへと迫る。
傍から見れば、どう考えても度重なる挑発と観客に対する恥辱に耐えきれなくなった彼の暴走でしかない。

ディアス「(こういうプライドの高そうな奴程、泥沼にハマるんだ。 やりやすくって敵わないぜ。
      よし、このままもう一度反則を"させて"やれば間違いなく退場だ)」

そして、ディアスは当然のようにジェンティーレを相手にマリーシアを繰り返す事を決断した。
必要以上に熱くなり、プレイに集中出来ないような相手はどれだけ実力があろうとディアスにとってカモでしかなかった。

ジェンティーレ「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

カモが怒声を張り上げながら突っ込んでくるのを見て、ディアスはほくそ笑む。

661 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:02:28 ID:???
2人が激突する刹那。

トリノ「! ジェンティーレ!!」
ジェンティーレ「!!」

ガキィイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!

イタリアDFの1人、トリノの声がジェンティーレの耳に届き、その数瞬後、ジェンティーレとディアス。
世界最高峰のドリブラーとDFの両者は、一対一でぶつかり合った。

ディアス「(うおっ! やっぱり重い、上に速い! だがそれだけやりやすい!)ぐわあああっ!!」

ガシャアアアアアアアアアアアッ!!

ジェンティーレの鋭いスライディングタックルは、やはり強烈だった。
速度、力、技術、全ての面においてディアスが今まで経験した事が無い程のやり難さである。
ディアスは殆ど故意ではなく、彼の力によって吹き飛ばされた。

ドタンッ!!

ディアス「ぐうっ……ぐ、ぐぅ……」
ジェンティーレ「………………」

そして、故意に――必要以上に痛がりながら、地面に倒れ込んだ。
2人が接触をした場所から大きく離れた場所で、足を抱えて。

662 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:04:22 ID:???
ピピィーッ!!

ディアス「(よし、これで楽出来るな)」

うつ伏せになりながら審判の笛を聞いて、ディアスはほっと安堵の溜息を吐いた。
2度の立て続けのファウル、しかも今度も相手は頭に血が上っておりとても偶然には見えない状況。
この状況でジェンティーレにカードが出されない筈が無いと、ディアスは考えていたのだ。

ざわ……! ざわ……!!

やがてディアスの耳に観客たちのざわめきが聞こえてきた。
動揺したかのようなその声は、恐らく予想外のジェンティーレの退場にうろたえるものなのだろうと考える。

アルゼンチンメンバー「あ……あああ!?」「ば、ばか、な……」「うそ、だろ……?」
ディアス「(ん?)」

そして、次に飛び込んできたアルゼンチンメンバーの声を聞いて――ディアスは疑問を抱いた。
彼らの声には悲壮な――それこそ、この世の終わりが来たかのような絶望感が漂っており、
とても敵の主力が退場した事を喜ぶものには聞こえなかったからである。

審判「……立ちなさい」
ディアス「え……?」

混乱するディアスの耳に最後に入ったのは、怒気を含んだ審判の声だった。
思わず咄嗟にディアスは顔を上げ……審判を見やる。
彼は一枚の札を持ち、ディアスに対して提示していた。

663 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:05:40 ID:???
ディアス「………………」
ジェンティーレ「(フン、子ザルが。 下手糞なマリーシアにこの俺が二度もかかると思ったのか?)」

何が起きたか理解出来なかったディアスは、不意に視線を横に向けジェンティーレを見やった。
そこには――危険なスライディングタックルではなく、立ちあがった姿勢のままボールを確保しているジェンティーレの姿がある。

ジェンティーレは決して頭に血が上り、平静を失ってディアスに突撃をした訳ではなかった。
彼はもう一度ディアスがマリーシアを仕掛けてくると考え、妙案を編み出していたのだ。
それは案というにはあまりにも滑稽で、案とすら言えない程の陳腐なもの。
『圧倒的な実力でどこからどう見ても文句の無いプレイでボールを奪い、ディアスが過剰に痛がっているのを露呈させる』
ただ、それだけだった。

無論、それが出来れば誰も苦労はしない。しないからこそ、ディアスに対して手を拱く者達ばかりだったのだ。
だが、ジェンティーレは違った。彼は世界最高峰のDFだった。
この大会、一対一の対決でディアスに一番勝つ可能性が高い選手はと問われれば、間違いなく彼が上がるだろう程に。
よって、彼はこの案を考えつくと同時に実行に移した。

まずジェンティーレはDF達に、自分は『あえて怒ったように見せかけ突撃するからフォローに来るな』と言い含めた。
これはDF達が影となってプレイが審判に見えなくなるのを恐れた事が1つ。
彼らも同時にディアスに向かえば、ディアスがこの演技を見抜いてしまうかもしれないと考えたのが1つだった。

次にジェンティーレは自分がディアスに接触する直前、審判のいる位置を知らせるようにともDF達に伝えておいた。
より正確に足がボールに行っている事を証明する為に審判の位置に気遣う。
それはディアスの突破をただ止めるだけではなく、マリーシアを発覚させる為には必要な情報だった。

最後にジェンティーレはスライディングに行くと見せかけ、直前で手でブレーキをかけてその反動で立ち上がり、
足の先だけでディアスの持つボールを抑えた。
その一連の動作は、口で説明するだけならば簡単であるが実際に行うのは難しい。
しかし、中学生離れしたパワーを持つジェンティーレの腕力ならば地面を叩いた反動で起き上がる事も、
また、足の先だけでディアスの持つボールを捉え吹き飛ばす事も十分可能だった。

664 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:06:42 ID:???
結果、ジェンティーレは作りだした。

どう見てもジェンティーレの足はボールに行っており、ディアスはその反動で吹き飛ばされた――。
否、わざと大仰に吹き飛ばされ、ジェンティーレに反則を"させよう"とした状況を露呈させる舞台を。

一対一の為に周囲には誰もいなかった。
よって彼らの攻防の一部始終はフィールドに立つ者――それだけではない、観客たちにすら筒抜けだった。
そして、この攻防を見た誰もが疑いようもない事実に気づいた。

『ディアスはわざと吹き飛ばされ、怪我をしたように振る舞った』と。

ディアス「………………」

それを理解した瞬間、ディアスは怒りの余りジェンティーレを睨みつけた。
罠にかけたつもりが、実際には罠にかけられていた。
これ程屈辱的な事を、ディアスは今までの人生の中で経験した事がなかった。

ディアス「(サルバトーレ=ジェンティーレ、か……)」

今日の試合、ファーストプレイで彼に止められた際、もっと早くに気づいておくべきだった。
彼は今まで自分が戦ってきた自称・天才を止められるDFとは全く違う男であるという事に。
本当に、天才を止められる力を持つ世界最高峰のDFであるという事に。
だが、どれだけ後悔をしても後の祭りだった。

ディアスに提示されたのはジェンティーレに提示された黄色の札ではない。
今ディアスが口の中の肉を噛み締め、悔しさを静かに発散させたときに生じた血の色と同様。
その札は真紅に染まっていたからである。

665 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:08:04 ID:???
>>648
乙ありです。

一旦ここで区切らせていただきます。
続きは一応書きますが、眠くなったら寝ますので今日中に更新出来るかはちょっとわかりません。

666 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 02:19:37 ID:???
乙です。退場だゼェェェェェェェェェェット!

667 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 07:16:30 ID:???
乙です。ここから何失点してしまうのか…

668 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 08:05:35 ID:???
後半入っているから3-1、頑張って4-1といったところかな
5-1になって得失点差で強化されたイタリア相手に
引き分けは問答無用でゲームオーバーというのはさすがに無常だろう

669 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 08:20:37 ID:???
ストラットさんにはポストに当ててもらうことを期待しよう。
せめてイタリアと引き分けなら予選リーグ突破できるような得失点差になっといて欲しいな。

670 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 10:52:29 ID:???
4-1だと総得点すら並んでややこしいね。
くじ引きで進出チーム決定?
それなら5-1でいいかも。イタリアも大量得点狙うだろうし。

671 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 17:05:17 ID:???
これ構図的にはまんま本編の翼みたいな感じだな
しっくりくる演出だ

672 :森末(仮):2015/02/23(月) 23:36:28 ID:???
実況「あ……ああああああああああああああああああっ!?
   これはレッド、レッドカードだァ!! ディアスくん、シミュレーションを取られました!
   しかしこれは誰の目にも明らか! ジェンティーレくんの足はボールに行っていたのは、この私の目からも見えました!
   もはや言い逃れ不能! 故意のダイビングとされ、反則を取られてしまいました!!
   しかし、しかし! あまりにもここでのレッドカードは大きいィイイイイイッ!!」

ピエール「違う……ここで驚くべきは、ディアスに対してレッドカードが出た事じゃない……!」

シュナイダー「幾ら奴が相手を陥れる事に注意を払い、そちらに視線が行っていたとはいえ……。
       それでも完璧にボールを奪い取る事など、容易な事ではない筈だ」

早田「あの野郎……相当やりやがるぜ」
松山「俺でも、零れ球にするが精一杯だったのに……」
三杉「(恐らくは早田のタックルよりも頭一つ抜けている……あれが……)」
中山「サルバトーレ=ジェンティーレ……(なんて奴だ……!)」

この時、観客席にいる実力者たちは目立つディアスの退場よりもその退場を誘った原因。
即ち、ジェンティーレに注目を集めていた。
ディアスの突破力の高さについては、既に周知の事実である。
誰もが彼こそが今大会最高のドリブラーであると考えていた。彼を止めるにはどうするべきか、シミュレートする者もいた。
だが、決定的な対抗策というものは中々思いつかない。
仮にストライカーならばマークをつけて無効化する事も出来る、パサーならばキープした所を奪いに行けばいい。
しかし、ドリブラーは純粋にタックルでボールを奪うしか手立ては無いのだ。

結局、多くの者は昨日日本が取った作戦のように二段構えで人数をかけて奪うか。
或いは今日のイタリアの如く最終ラインまで引きこもり多人数で待ち構えるかしかない。

にも関わらず一対一でディアスを止めてみせたジェンティーレ――その実力の高さは、一瞬にして彼らの脳裏に刻まれた。

673 :森末(仮):2015/02/23(月) 23:37:40 ID:???
パスカル「ば、馬鹿な……ディアスが、ディアスが、どうして……!」

一方、動揺にジェンティーレの実力に驚きながらもそれ以上にディアスを心配する者達もいた。
パスカルらアルゼンチンの元主力メンバーである。

彼らは見ていた、審判からレッドカードを提示され、無表情でベンチに歩いて行くディアスの姿を。
それは彼らが願っていた姿からは程遠い――名誉を守る事も、誇りを守る事も敵わなかった英雄の姿。
ディアスの盟友であるパスカルは瞳に涙を浮かべ、ただただその背中を見送る事しか出来なかった。
この時彼が出来た事は、今すぐにでも控室に駆けだしてしまいそうになるその足を手で押さえつける事だけだった。

バティン「…………」

そして、バティンは茫然とした表情でフィールドを眺めていた。
スラム街で暮らしながらも真っ当に生まれ育った彼はダーティーなプレイを好まず、
ディアスが行ったマリーシアにも少なからず苛立ちを覚えた。
だが、それ以上にこの状況を作りだしてしまったのが自分自身であるという責任感も覚えていた。
二つの反する感情が混ざり合った彼の心中は、推して知るべしである。

ガルバン「ディアス……」

この中で唯一客観的に状況を見る事が出来たのは、ガルバンだった。
彼はディアスと不仲という訳ではないが、パスカル程には絆も深くなかった。
よってディアスに同情をしても、深く感傷的にはならなかった。
また、自分の不注意と考えの甘さによる負傷といえど、バティン程には責任感も感じていなかった。

ガルバン「あっ……! ま、まずい!」

その為に即座に気づく事が出来た。観客たちの大きな異変に。

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0ch BBS 2007-01-24