キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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レス数が1000を超えています。残念ながら全部は表示しません。
【滅びの】俺inキャプ森8【バーストマグナム】

1 :森末(仮):2015/02/09(月) 22:31:05 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品です。
参加者の皆さんの選択、及びカード引きによって物語が展開していきます。

他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆

【イタリアJrは】俺inキャプ森6【弱いはず】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1397051465/l50

☆あらすじ☆

キャプテン森崎を心から愛する男板野住明はある日キャプテン森崎の精、
通称『森末』からキャプテン森崎の外伝スレへと参加してみないかと提案をされ外伝世界へと飛ばされる。
ふらの中学で松山達と共に鍛錬を繰り返し、1年と少しの期間を費やして臨んだ3年目の全国大会は惜しくも準決勝で敗退。

その後、同じ中学出身である松山と共に全日本Jrユースに選出された板野は、
全国大会で共に競い合った立花兄弟や合宿で集中的に練習に付き合った新田らの後押しもあってか、板野は見事キャプテンに選ばれる。
舞台は世界へ。全日本はハンブルグとの試合に3−3の引き分けに終わった後、
練習試合をする筈だった各チームに断られ追加合宿に明け暮れる。
そしてフランス国際Jrユース大会が開かれ、全日本はアルゼンチンJrユースと初戦でぶつかり合う。
天才・ファン=ディアスのスーパープレイの連続に圧倒される全日本であったが、
他の選手が然程の実力者ではないという弱点を突いて前半で2−1でリード。
尚も試合は続く……。

601 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 14:26:35 ID:???
アモロパンチよええwしかもGKの燃費にも難があるというブグェ

602 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 16:33:22 ID:???
うーん、森崎達さえ恐れおののくイレギュラー選手でてこないかねえ
中立でどちらにも不干渉だけど敵対行動を取ると・・・?ていうの
なお森崎側はチームに入れることは絶対に不可能

603 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 16:52:38 ID:???
KAZUとか

604 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:12:06 ID:???
スレ主さんの入れたい要素を入れて貰うのが1番だよね。
現段階で本編未登場の新敵キャラ候補が五人
ロブソンもちょっと目立ってきたし、ユース編の予想が難しい。



605 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:20:57 ID:???
大方の予想通り、岬犬と中山さんが離脱するなら
ユースで外される2名の選手は当然なしなのか

606 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:31:03 ID:???
森崎達との対戦だけ抜けるのかなとか思ってたけど
完全離脱の可能性も0ではないか。

607 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:33:37 ID:???
岬と中山さん抜けると割と真面目に選手が足りなくなりそう
高杉と石崎は見たくないぞ・・・

608 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:40:28 ID:???
中山さんの穴はでかいね。
石崎をテクモ仕様に鍛えるしかない。
後は三杉のリベロ化か。

609 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:46:19 ID:???
じとーとすもうでセンターバック?

610 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 17:55:22 ID:???
赤井の出番も増えそうだね。井沢もDFやってくれないと困る。
まあ中山岬は本編でも十分活躍したから、離脱したらしたで面白い。

611 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 18:01:59 ID:???
井沢は岬消えたらMFやってくれないとしんどいんじゃないかな?

612 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 18:07:09 ID:???
井川探そう(提案)
ユース編なら劣化してないから火野レベルの実力はあるはずだし、高さというアドバンテージがある。
まぁ二人が永久離脱なら本当につらいのはMFなんだが……

613 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 18:08:18 ID:???
FWだって板野が世界レベルなだけで
中山さん、岬が消えたら松山以外頼れないからなぁ

614 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 19:14:02 ID:???
板野新田
葵井沢山森松山
早田三杉次籐中里
例えばこんな感じか。

615 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 19:36:08 ID:???
岬が消えたら三杉はMFじゃないと辛くないか
というか本当に人材不足が加速する
ユース編でレギュラー確定なのって板野松山三杉だけになるんじゃないか

616 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 19:42:39 ID:???
葵、早田、中里がそれに続く感じかなぁ

617 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 19:43:41 ID:???
2人が離脱したら井沢を鍛える価値はあるかな?
この世界だとDF能力上がってるから結構使えるようになりそう

618 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:20:48 ID:???
離脱しなくても鍛える価値はあるかと。
タックルカットクリアドリブルくらいできれば
守備的なとこならどこでも使えるだろうし。

619 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:26:31 ID:???
>>603
KAZUかぁ、イレギュラーとしてならうってつけの存在だなぁ
中立だから板野側は引き込むのは困難だが仲間にできれば・・・的な存在もおもしろそうだが
たまには森崎側が恐れおののく奴がいるってのも見たい気が
確かKAZUってかなり強かったよね?
最も、スレ主がやりたいようにやるのが一番なんだけどね

620 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:34:42 ID:???
最近伸びに伸びてる中西君の名前が出なくて解せぬ

621 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:43:20 ID:???
自分は本編で控えだったメンバーを鍛えてチームを強くする今の流れがかなり楽しい。
ファンキーガッツマンってどんなスキルなんだろう。

622 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:44:54 ID:???
中西君か、中山さん外れるならディフェンスリーダーは彼になるのかな?
若島津がキーパーのままなら、競り合いを伸ばす方向で行くべき?

新田君はファルコンダイブを習得すればミューラーあたりとも対等に戦えるくらいになるのかな?

623 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:47:19 ID:???
ファルコンダイブならミューラーとも互角以上に戦え なければ、俺はこの星を破壊しつくすだけだぁ

624 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:49:38 ID:???
星は壊せてもたった一人のゴールキーパーは壊せねえようだな

625 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 20:55:43 ID:???
浴びせ蹴りクラスは無理だろうけど
クリア技はDFに覚えさせたいね。
早田は当然として、中西も有力かな。

626 :森崎名無しさん:2015/02/21(土) 21:20:01 ID:???
井沢も高いクリアなら素質はあるはず

627 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:44:55 ID:???
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?

実況「き……決まったァーッ!! なんとなんと! イタリア、先取点ーっ!!
   決めたのはイタリアのストライカー、チェザーレ=ストラットくん!
   ゴールまで30メートルはあろうかという位置から、問答無用のシュートでアルゼンチン守備陣を吹き飛ばし!
   あっさりとゴールを決めてみせましたーっ!!
   今大会、シュナイダーくんを筆頭に幾多のストライカーが得点王を争っていますが、
   どうやらこのストラットくんもその一員になりそうな気配があります! それほどまでに凄いシュートでした!」

観客「すげぇ! あんな距離から入るのかよ!!」「何人吹っ飛んだんだ!?」「こりゃまた凄いFWが出てきやがったぜ……」

超長距離、遠く離れた位置からのとても入るとは思えないシュートを――しかし決めてみせたストラットに対し、
観客たちはその大歓声をもってして応える。
如何にフリーの状態だったとはいえ、通常ならばそれだけ距離が離れていれば入る筈がないのである。
どれだけアルゼンチンの守備陣が、脆弱であろうと。
にも関わらずあっさりと得点を決めてしまったストラットの決定力というものがどれだけ優れているかという事を、
観客たちはすぐさま理解をしていた。

ランピオン「ナイスシュート、ストラット!」
ストラット「ああ、ランピオンもアシストサンキュー」
バンビーノ「(この距離からでも十分入るな。 やはりアルゼンチンは守備が穴だ)」
ヘルナンデス「よくやった、ストラット! その調子で頼むぞ!」

そして、この歓声を受けながらイタリアメンバーは歓喜に沸きあがった。
ディアスの突破を止めただけではなく、そこからのカウンターで即座に得点。
しかもストラットのシュートならば遠かろうとも決まるという事が確認出来た上での得点とあれば、喜ばない筈がない。

628 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:46:00 ID:???
カルツ「こりゃ大したもんだぜ。 どうだいシュナイダーちゃん、これでライバルが4人に増えたな」
シュナイダー「……純粋なキック力は相当なものだな、あのストラットという男は。
       だが、それでも俺のファイヤーショットの敵ではないさ」

ビクトリーノ「チェッ、面白くねぇ」

ナポレオン「凄いFWですね。 僕も負けないようにしなければ」
アモロ「あ、あばばばばば」
ピエール「(アモロがナポレオンとストラット、両者に別の意味で恐怖を覚えてる……)」

反町「お、恐ろしい……(やっぱり板野だけじゃない。 世界にはこんな化け物がゴロゴロいるんだ……)」
滝「若林さん……止められますか?」
若林「俺を誰だと思っていやがる。 PA外からのシュートならば、俺は必ず防いでみせるぞ」
若島津「(ふん、PA外からでなければ危ういという事だろうが。 俺は違う、どこからだろうと止めてみせる)」
板野「(メガロゾーン程じゃないけど、とんでもない威力だ……俺のマグナムボレーより少し落ちるくらいかな?)」

そして、当然ながらこの試合を観戦していた実力者たちもストラットのキック力に戦慄する。
チェザーレ=ストラット。
本編で主人公を大いに苦しめた世界最高のストライカーが、
未だ発展途上ながらもその実力の片鱗を見せつけた形である。

翼「うわぁ、凄いなぁ。 ゲームの俺はあの選手とチームメイトだったのか。 10アシストがすぐつきそうだね」
森崎「(ええい、忌々しい!)」

因みにその本編で主人公をしていた男は、歓声を受けるストラットを憎しみを込めた目で睨みつけていたという。

629 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:47:12 ID:???
ディアス「くそっ……!」

一方で、アルゼンチンはというと当然メンバー達の顔色は思わしくなかった。
エースであるディアスがファーストプレイで止められ、しかもそこからのカウンターであっさりと失点。
距離があるのにもかかわらず止められなかったとあれば、笑顔でいられる筈もない。

ルジェリ「ディ、ディアス……どうするんだ?」
ディアス「……とにかく、あの9番(ストラット)にはもう絶対に打たせるな。 2人がかりでマークにつけ」
パルス「わ、わかった(打たれる前に止める、しかないか……)」
ガレヤ「だが攻撃はどうするんだ? またああやってPA内を固められたらいくらディアスでも……」
ディアス「わかってるよ。 少し待て……」

だが、それでも一同はディアスの周囲に集まりディアスに今後の方針を問いかけた。
彼らにとって頼れるのはディアスだけであり、ディアスがお手上げと判断をすればその時点で諦めもつく。
しかし、ディアスが対抗策を講じた所で一同も少しだけ安堵をし……。
それを横目で見ながら、ディアスは顎を一撫でしつつ思案をする。

ディアス「(ノーチェックで行かせてもらえるってんなら楽っちゃ楽だ、体力を浪費する心配は無い。
      だがだからといってミドルシュートはキツい。
      ドリブルをしないで確保できる体力量とドライブシュートを打つ事での疲弊が割に合わない。
      ならやっぱり一対一を狙いに行く方がいいんだが……あのDFが邪魔なんだよな)」

ディアスは冷静だった。自分がシュートを打つ事と、そのままドリブルで切り込む事のリスクとリターン。
メリットとデメリットを天秤にかけながら、どうすれば勝てるか、逆転出来るかを絞り出そうとする。
結局、ドリブルゴールを狙いに行くのが最良だろうとは思えたものの、それにはゴール前で陣取るジェンティーレが邪魔。
彼さえいなくなれば幾らでもゴールを上げられる筈なのだがと考え……。

630 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:48:16 ID:???
ディアス「(お?)」
ジェンティーレ「(次は確実に奪い取る! 天才だか何だか知らんが、俺達イタリアの堅き錠前が貴様1人に壊滅されると思うな!!)」

不意にジェンティーレに視線を送った際、ディアスは彼と目が合う。
遠く離れていても尚わかる程にジェンティーレは敵意をディアスへと向けており……。
これを受けて、ディアスは1つの策を思いついた。

ディアス「よし、決まった」
ジェイテス「ど、どうするんだ?」
ディアス「とりあえず俺にボールを渡せ。 そして作戦はだな……」

思いついた作戦を、簡単に一同に説明するディアス。
その時の彼の表情は、悪戯を思いついた悪ガキのように無邪気で――
しかし、敵の僅かな弱点をも見逃さない冷徹な指揮官のそれにもよく似ていたという。

631 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:50:13 ID:???
ピィイイイッ!!

実況「イタリアの衝撃的なゴールの余韻を残したまま、再びアルゼンチンのキックオフで試合再開です!
   アルゼンチン、再びディアスくんがボールを持った! これはまたも中央突破か!?」

ヘルナンデス「(それしか出来る事は無いだろうからな。 試してみるといい、ディアス。
        今回は抜けるかもしれない。 いつかは抜けるかもしれない。
        だが、その突破に失敗をした分――先ほどのゴールと同じ結果が待っているぞ)」
ストラット「(俺にマークをつけてきたか……だが、それならランピオンが決めればいいだけさ)」

ディアス「(ふん、余裕綽々って顔しやがって。 そういう表情をしていいのは、フィールドではこの俺だけなんだよ!)」

タタタタタタッ!

再びのディアスの突撃に、イタリアはやはりPA内に引きこもる作戦で対応をする。
既に一度ディアスのドリブルを止め、リードをしている彼らには余裕すらあったが、慢心は無かった。
彼らにあったのは過度にディアスを恐れない、平常心である。
だが、その平常心はディアスの取った行動によってあっさりと崩れ去った。

ディアス「(そろそろいいかな? っと)そーれ、ほいほいほいっと」

ポンポンポン

ヘルナンデス「ん?」
バンビーノ「な、なんだ……?」

632 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:51:44 ID:???
実況「お、っと? これはどうしたことでしょうか?
   ディアスくん、バイタルエリアに侵入すると同時にドリブルをピタリとやめ、なんとリフティングを開始した!?
   い、いったいどういうことでしょうか!? 何が狙いなのか、ディアスくん!?」

ざわ…… ざわ……

観客「なんだなんだ?」「遊んでる場合かよ、負けてるんだぞ!」「何やってんだ!」

三杉「……一体どういうつもりだ?」
沢田「じ、時間稼ぎ……とかでしょうか?」
佐野「アルゼンチンは負けてるのにか? 必要ないだろ」
松山「いや、ディアスの体力を調整するという意味では……ある程度時間を浪費するのはいいのかもしれない。
   ただ、それにしたって早すぎる。 ディアスは殆ど体力を使ってない筈なんだからな」

そのディアスの行動に、誰もが目を丸くし、驚いた。
サッカーの試合中に、リフティング。
しかも敵ゴール前で、無防備に――鼻歌を歌いかねない雰囲気でそれをし始めたのだから。

当然ながら誰もがその行動の意味を図りかね、一体なんのつもりかと口々に話し始める。
時間稼ぎにしろ、体力の回復を図るにしろ、今このタイミングでする必要は無い。
だからこそディアスの考えがわからなかった。

ジェンティーレ「や、野郎! ふざけた真似を……!」
ヘルナンデス「落ち着け、ジェンティーレ。 時間を無駄に使ってくれるなら好都合さ。
       ただしいつ動くかわからない……油断はするんじゃないぞ、みんな!」
トリノ「わ、わかった!」
ヘルナンデス「(中盤メンバーも奪いに行かなくていい。 勝手にやらせるんだ!)」
バンビーノ「(動かなくていい、か……ならしばらくは様子を見るとするか)」

633 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:52:54 ID:???
そして、ディアスの考えがわからないのはイタリアの面々も同じである。
普通ならば絶対的なエースの突破が通じず、焦ってもう一度――という場面。
にも関わらず実際にはその真逆、すぐさま突撃をするどころか時間稼ぎをしているというのだから、
観客たちよりも彼らの方が驚きは大きかったと言えるだろう。
だが、それでもヘルナンデスは冷静にメンバー達に指示を飛ばした。

何が狙いかはわからないが、好きにやらせればいい。
こちらがリードをしている状況で時間を勝手に浪費してくれるのならば、それに越した事はない。

そう考えた上で、ヘルナンデスは全員に"奪いに行くな"と命令をしたのである。
これには全員が揃って聞いた。
ヘルナンデス以外のメンバーもディアスの狙いは皆目見当がつかず、ヘルナンデスの指示を聞くしかなかったとも言える。

ディアス「(そう、それでいいんだ。 奪いに来られたらどうしようかと思ったぜ)」
ヘルナンデス「(まさかこちらが緊張の糸を切らせるのを狙っている? 馬鹿な……そんな無様は俺達はしないぞ、ディアス)」

やがて5分、10分と時間が流れる中でも――ディアスは相変わらずリフティングを続けた。
イタリアは、それをただ見守っていた。
ディアスのリフティングショーは、それだけ長い時間続いたのである。

しかし、これはリフティングショーではない。サッカーの試合。
"観客たち"は、サッカーを見る為にこの会場まで足を運んだのだ。
そうなれば、どうなるか――。

634 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:53:56 ID:???
ざわ……ざわ…… ざわわ…… ざわわ……!

実況「えー、ただいま……時計の針が20分を過ぎました!
   それにしても困りました、実況ですが実況をする事がありません!
   このような事態は、私もこの仕事をして20年になりますが初めての事です!」

観客「いつまでやってるんだー!」「俺達はお前のリフティングを見に来たんじゃないんだぞ!」「馬鹿にしてんのか!!」
  「イタリアもイタリアだー!!」「いい加減に奪いに行けよ!」「1点取って満足したのか!?」「臆病者ーっ!!」

当然のように、観客たちからは不満が噴出した。
いつまでも続くディアスのリフティング、それをただ引きこもってみるだけのイタリア。
最初は驚きでざわめいていた観客席は次第に怒号に飲まれていき、一斉に罵声を浴びせ始める。

ヘルナンデス「(やれやれ、簡単に言ってくれる。 ディアスからボールを奪うのは容易じゃないんだ。
        個別に行って抜かれたらどうなるか……考えてから言って欲しいな)」

この罵声を、ヘルナンデスはうんざりした気持ちで聞き流していた。
彼は人並みの羞恥心やプライドは持ち合わせていたが、それと同時に冷静な判断力も備えていた。
感情に任せ、勝手な行動を起こしてはどうなるか――よく理解していたと言っていい。

635 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:54:59 ID:???
だが、そのヘルナンデスとは真逆とも言える選手が――イタリアには存在した。

ダダダダダダッ!!

ジェンティーレ「これ以上コケにされて……たまるかああああああああああああああああっ!!」
ヘルナンデス「ジェ、ジェンティーレッ!?」

プライドの塊のような男にして、傲慢の塊。
純粋無垢と言える葵新伍からすら、明確に『嫌な奴』と呼ばれる男――サルバトーレ=ジェンティーレである。

彼は沸点が低い男だった。
それでも、まだディアスがただリフティングをするだけでいれば我慢は出来ただろう。
猿が猿回しをしている、リードをしている自分たちがそれを見世物にして笑っているだけだと自分を納得させて。
だが、観客から罵声を浴びせられた瞬間、彼の頭には血が昇った。
彼はプライドの高い男である、自分は称賛を浴びるべき人間だという無自覚な傲慢さのある男である。
罵声や非難を浴びるのは、耐え難い屈辱であると考える男である。

636 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:56:17 ID:???
ジェンティーレ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 子ザルがぁぁぁあああっ!!」

そんな彼が、弾かれたようにディアスの"狙い通り"にボールを奪いに向かうのは必然であり。

ディアス「(かかった! やっぱり熱くなりやすいタイプだなコイツは。 よし、後はこのまま……!)」

ダダダダッ!!

それを見た瞬間、ディアスがリフティングを止めて"予定通り"ドリブルで進撃をするのも必然であり。

ジェンティーレ「見ていやがれ! この俺は……臆病者などでは決してない! 誇り高い、アズーリの一員だァァァアッ!!」

ドガシャーンッ!!

ディアス「ぎゃあああああああああっ!!(と、ここまで叫んでも不自然じゃないタックルってのは褒めておいてやるぜ)」

交錯した瞬間、ジェンティーレの鋭いタックルがディアスのボールを完全に捉えてディアスを吹き飛ばしたのも必然だった。

ジェンティーレ「ハーッハッハッハ! 何が天才だ! ただのリフティングが上手いだけの大道芸人の間違いじゃないのか?」
ディアス「(だが、頭は良くないな)」

ピピィーッ!!

ジェンティーレ「な……なに?」
ヘルナンデス「しまっ、た……そういう、事か……!(昨日の試合で憶測は出来た筈だったのに……!)」

そして――熱くなりすぎていたジェンティーレのタックルが、角度のせいでディアスの足を削ったかのように見られ、
審判が笛を吹き鳴らしながら高笑いをしていた彼の元に向かってきたのも必然だった。

唯一の偶然は、ディアスの予想以上にジェンティーレが熱くなっていた為、
"故意"であると判断をした審判が胸ポケットに手を持って行っていた事。
当然、これを見てジェンティーレが高笑いを止め顔面を蒼白とさせたのは言うまでもない。

637 :森末(仮):2015/02/22(日) 00:57:51 ID:???
>>595 >>596
乙ありです。

一旦ここで区切らせていただきます。続きは今日中に出来るかはわからないです。

638 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 00:59:28 ID:???
乙です。ここでレッドだったら今回も矢車の弟行きですねw

639 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 01:04:15 ID:???
乙です。
本編で遂行できなかった作戦をやってくれるとは

640 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 01:14:51 ID:???
ここでレッド出てくれると次のイタリアでは慈円手入抜きになるが果たして

641 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 01:17:33 ID:???
退場させてくれたら菓子折りもってお詫びとお礼に行こう

642 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 01:19:03 ID:???
本当に退場したら矢車さんに連絡して引取りに来てもらおう

643 :森末(仮):2015/02/22(日) 02:01:28 ID:???
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?

実況「あーっと! これはジェンティーレくん、鋭いタックルでディアスくんを吹き飛ばしましたが……。
   いけない、これはいけません! 反則! 反則を取られました!
   どうやら審判は苛立っていたジェンティーレくんが故意に足をかけたと判断したようです!
   これにはカードが出るようですが……おぉっと!?」

スッ……

ジェンティーレ「うっ……!」
ディアス「(ちっ)」

実況「イエロー、イエローカードです! ジェンティーレくん、イエローカードを貰いました!」

観客「レッドカードじゃなかったか」「レッドならイタリアは一気に危なくなってたな」

不幸中の幸いとも言うべきか、ジェンティーレの反則はイエローカードで済んだ。
無論、済んだ――というにはあまりにも大きな代償である。
ジェンティーレという強固な要塞と、ヘルナンデスというヨーロッパNo.1キーパー。
彼らイタリア守備陣の柱が一本でも崩れれば、ディアスに簡単に翻弄されるのは誰の目にも明らかだったからである。
一発で退場ではなくとも、これでジェンティーレが動きにくくなったとなれば、イタリアにとって痛いのは当然だった。

井沢「ディアスの野郎! またやりやがったな!!」
岬「うん……恐らく、そうだろうね。 激しく痛がっていたけれど、動きに支障はないようだし……」
松山「………………」
板野「(ジェンティーレ……お前って奴は……)」

644 :森末(仮):2015/02/22(日) 02:02:39 ID:???
ジェンティーレ「………………」
ヘルナンデス「ジェンティーレ!」
ジェンティーレ「ヘルナンデス……」
ヘルナンデス「……俺から言う事は、何も無い。 お前は傲慢だが、馬鹿ではない。 そうだろう?
       ならば……俺から言う事は、何も無いんだ」

フィールドではジェンティーレがなんとも形容しがたい表情をしながら、ヘルナンデスの元に歩み寄っていた。
頭に血が上り作戦に背いたという罪悪感、ボールを奪った筈なのにディアスに引っかかり反則を受けた事に対する恥じらい、
何よりもPKを与えてしまったという事に責任を感じながらも――それを素直に謝れない、己のプライド。
それらを混ぜた表情は、形容しがたい――としか表現を出来なかった。

そして、それを受けながら……ヘルナンデスはあくまでもクールに言い放った。
優しい口調でもなければ、厳しい口調でもない。
少々短気なジェンティーレとはいえ、一度覚えた失敗を二度と繰り返すような者ではない事をヘルナンデスは理解していた。
よって、厳しく叱責をする必要は無い。
また、この程度で落ち込みプレイに精彩を欠く程――ジェンティーレは弱気ではない。
よって、優しく慰める必要もない。

ヘルナンデス「この後も頼むぞ、ジェンティーレ」
ジェンティーレ「……ああ! わかっている……わかっているさ!!」

だからヘルナンデスはジェンティーレに対し、今後も頼りにしていると言うだけでよかった。
プライドの高いジェンティーレならば、これだけでいい方向に発奮をする。
頭に血を上らせるのではなく、冷静に、かつ闘志を燃やしてプレイに勤しむ筈だと――。
形容しがたい表情から一変、ディアスに対し敵意をむき出しに――しかし必要以上に熱くならずに睨みつけるジェンティーレを見て、
ヘルナンデスはそう確信をしていた。

645 :森末(仮):2015/02/22(日) 02:03:59 ID:???
その後、ディアスはあっさりと貰ったPKを決めて同点に追いついた。
如何にパーフェクトキーパーといえど、キーパーに絶対的不利なPKを止めるのは難しい。
同点に追いつかれたイタリアはすぐさま引き離そうと攻勢に出るも、ストラットはマークにあい封じ込められ、
ならばもう片方のFWであるランピオンを使ってはとなれば――。

ディアス「おりゃあっ!!」
ランピオン「ぐおっ!?(くそっ、チビの癖に高い!)」

昨日の試合同様、ディアスが守備に走りランピオンの思うようにはさせなかった。
とはいえ、ディアスが守備に回るという事は攻撃では使えないという事である。
アルゼンチンも何度か攻撃を繰り返すもののそこは守備に定評のあるイタリア、やはり堅牢。
こうして前半は1−1のまま推移し、ハーフタイムへと突入するのだった。

実況「イタリア対アルゼンチン、正に白熱した様相!
   ディアスくんがリフティングを始めた時はどうしようかと思いましたが、1−1と同点で前半を折り返します!」

観客「本当にあれはなんだったんだ?」「挑発してたんじゃないのか?」「だったら引っかかった方が馬鹿だぜ」
  「お前奪いに行けとか煽ってなかったっけ?」「煽ってねーよ!」「挑発されても足にひっかけたら駄目だろ……」

ディアス「(同点か、昨日よりはマシ……なんだがこのままじゃいけねぇな。 点をとらねぇと勝てないんだ……ん?)」
ジェンティーレ「………………」
ディアス「よーう、後半もフェアプレイでどうかよろしく頼むぜ。 この将来大金を生む足に傷つけられちゃたまんねぇからな〜」
ジェンティーレ「………………」
ディアス「ケッ、無視かよ。 このムッツリが(まあこんだけ言っておけば内心カッカしてるだろ)」

そして、それぞれがベンチに引き揚げていく中で……ディアスは再び目が合ったジェンティーレに対し、挑発紛いの言葉を投げかけた。
しかし、これにジェンティーレは一切答えず、踵を返してイタリアベンチへと戻っていく。
無視をするジェンティーレに対し、ディアスはそれでも多少は効果があるだろうと踏んでいた。

646 :森末(仮):2015/02/22(日) 02:05:06 ID:???
ジェンティーレのようなタイプは、ディアスも良く知っている。
彼は天才であるが故に敵が多い。自分こそが才能を持つ者、自分はディアスに勝っていると思っている者。
そういった者達は往々にしてプライドが高く、そしてディアス自身の才能と実力を見せれば見せる程に、
苛立ちと焦りと怒りを燃やし自滅をするという事を、彼は知っていたのだ。

故に、ディアスは考えていた。ジェンティーレはここからはまともなプレイが出来ないだろうと。
既に自分に対して怒りを心頭させている彼は、プレイに集中出来ないだろうと。

ジェンティーレ「………………」

しかし、ディアスは知らなかった。
ジェンティーレは傲慢であり、プライドの高すぎる男である。
だが、馬鹿ではなかった。自身のプライドも大事だが、それ以上に大切な事を理解してもいる男であった。

ジェンティーレ「(恐らく、奴は俺が既に正気を失いかけていると思っているだろう。 ならば……)おい、お前たち」
ゴルバテ「えっ、なんだジェンティーレ?」
ジェンティーレ「後半、ディアスが突っ込んできた時だが……」
トリノ「(ジェンティーレが提案なんて珍しいな……)」

彼はベンチに引きあげながら、自分以外の――普段は役立たずと呼んでいるDF達に声をかける。
腸が煮えくり返りそうな程のディアスへの怒りを抑え、自分より地位の低い者達ともコミュニケーションを取るのは――。
全て、勝つ為。

彼はプライドがただ高すぎる男なのではない。
勝利する事を義務付けられた――誇り高き、アズーリなのだ。

ヘルナンデス「(やれやれ、普段からそれくらいDFとも仲良くしてくれたら俺も楽が出来るんだがな)」

なお、この様子を見ていたヘルナンデスは彼らに聞こえないようにため息を吐いていた。

647 :森末(仮):2015/02/22(日) 02:06:57 ID:???
>>638 >>639
乙ありです。

本日は一旦ここで区切らせていただきます。NPCシーンが長くなりすみません。それでは。

648 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 08:56:55 ID:???
乙です!
原作の葵とのエピソードを思い出すなあ。

649 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 15:15:20 ID:???
ここの新田は板野に対して尊敬も野心も持っているから、そのうちテクモ版Vのように
「試してみたいんですよ。俺と板野さんとどちらが上なのか」
みたいな展開になりそうだ。

650 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 16:18:39 ID:???
今更だけど日向の立場ってどうなるんだろうか
WY編から復帰しても本編より弱体化はしてそうだし、
下手すりゃ大会終わって家に戻ると姿を消していた……なんてこともありそう

651 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 16:28:54 ID:???
日向の意識が戻ったら板野の事どう思うんだろ
似たスタイルで保護もしたし悪い印象はないだろうけど

652 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 16:40:23 ID:???
板野「日向ぁ、お前俺の弟になれ」

653 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 16:54:52 ID:???
しかしディアス小さいくせに競り合い高すぎよね、原作どおりなんだけど

654 :森崎名無しさん:2015/02/22(日) 17:06:48 ID:???
天才ですから

655 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 01:24:19 ID:???
天才がゆえに。
競り合いは体格は二の次。ポジションが取れればいいからね。


656 :森末(仮):2015/02/23(月) 01:56:16 ID:???
そしてしばしの休息を挟み、後半戦が始まる。
イタリアボールで開始された後半は、まずゲームメイカーのバンビーノが指揮するパスワークで遅攻を仕掛けた。
同点ではあるものの、まだ焦るような時間帯ではない。
ゆっくりとゲームを作り確実にしとめればいいという狙いがイタリアにはあった。

バンビーノ「(それにアルゼンチンは昨日の試合を見る限りパスワークをカットするのが少し苦手なようだからな。
       ここはこれで正解だ)」
ディアス「(そう来るか、まあ予想内だ)」

イタリアの狙い通り、アルゼンチンの守備陣はこのイタリアのパスワークに見事に翻弄された。
元々組織だったパスワークは世界的に見ても高水準なイタリアに対し、
アルゼンチンは個人技こそ巧みなものの組織的プレイは不得手。
上手くボールを奪い返せないというのも、当然だと言えた。

だが、パスを幾ら続けてもどこかでFWにラストパスを出さなければならない。
こうして中盤でパスをただ回しているだけでは、ここから勝ちこす事は出来ないのである。

バンビーノ「(俺にシュートが打てれば違うんだろうがな。 しかしどうしたものか。
       ストラットには相変わらずマークが張り付いているしランピオンもディアスが相手では厳しそうだが……)」

結果、イタリアは迷う事となる。
イタリアの得点源はランピオンとストラットの2人だが、片方には空中戦でもその強さを発揮するアルゼンチンのエースが張り付き、
もう片方には多重でマークをかけられている。
この状況では安易に放り込んだ所でいい結果に繋がるとは思えず、ボールをキープするバンビーノは判断に迷った。

657 :森末(仮):2015/02/23(月) 01:57:47 ID:???
ディアス「(よし、ここだみんな!)」
アルゼンチンメンバー「「「(わかった!)」」」

マイボールにし、アルゼンチンが為す術もない様を見せつけられた安心感から棒立ちをし思案するバンビーノ。
それが隙に繋がり――ディアスは見逃さず、一つの指示を飛ばすと……。
彼に向けて、パスワークが止まった所で一斉にアルゼンチン守備陣が襲いかかる。

ルジェリ「捕まえたぞ!」
パルス「パスで逃げさせなどしない!」
ブラウン「ここだぁっ!!」

バチィッ!

バンビーノ「なっ!?(しまった、油断した!?)」

バンビーノもイタリアの主力選手の1人に数えられる程の実力者には違いない。
しかし、油断をした上で多人数に襲撃されてボールをキープするだけの実力は、彼は持ち合わせていなかった。

実況「アルゼンチン、ようやくボールを確保! バンビーノくん、油断をしていたのか少しパスを出すのが遅れた!
   アルゼンチンが一斉にプレスをかけるとあっさりとボールを奪われてしまいましたァ!」

三杉「イタリアの中盤がウィークポイントだというのは本当のようだね」
中里「うむ。 あのバンビーノという男も相応の実力者のようでござるが、ストラットやランピオンに比較をすると見劣りをするな」
板野「(確か本編でもそこまで強くなかったもんな。 勿論、油断できない相手だけど……ストラット達に比べればやりやすそうだ)」

アルシオン「あれが今のイタリアの中盤の要ですか……」
ジョアン「うむ。 はっきり言って、イタリアの唯一の穴と言っていいな。
     お前が入る事で、その穴は埋まるどころか強力なストロングポイントになるがの」

658 :森末(仮):2015/02/23(月) 01:58:59 ID:???
こうしてボールを奪い返したアルゼンチンは、当然このボールをエースに渡した。
イタリアからボールを奪える機会はそう多くない。
確実なチャンスを確実に決めるには――どうしても絶対的なエースに頼るしか彼らに選択肢は無かったのだ。

ブラウン「頼む、ディアス!」
ディアス「頼まれたぁ!」

ダダダダダダダーッ!!

そして、頼られたエースは、ようやく到来したチャンスに歓喜しながら迷う事なくゴール前からドリブルを開始した。
彼にもわかっていた。どうやってもアルゼンチンが勝つには自分に頼るしか選択肢が無いという事に。

実況「ボールはディアスくんに渡ったーっ! ディアスくん、これを……そのまま持って上がる! 上がります!!
   パスは出さない! 出す素振りすら見せない! まさかまさか、自陣ゴール前から一気に攻め上がるつもりなのか!?」

ストラット「く、くそっ! ここで奪い返しさえすれば……」
ランピオン「アルゼンチンは穴だらけになる筈なんだ!」
ディアス「そいつぁ無理な相談だ! そらっ!」

ピョーンッ!

ストラット「ば、化け物め……!」
ディアス「(お前が言うなっての)」

当然、このゴール前からのドリブルという一見すれば無謀にしか思えない行動にイタリアは憤慨しディアスにプレスをかけた。
感情に任せた行動である。これは、結果的に失敗だった。
ストラットもランピオンもタックルは下手ではない――だが、一流レベルでも無い。
そんな彼らのタックルが、天才・ファン=ディアスに通用をする筈が無く、ディアスはあっさりとストラット達を飛び越えた。

659 :森末(仮):2015/02/23(月) 01:59:59 ID:???
ディアス「どんどんかかってきな! この俺を止められるもんならなぁ!!」
ヘルナンデス「挑発に乗るなよ、みんな! 下がれ、下がるんだ! PA内を固めろ!」

そして更に速度を上げ、中盤を越え、一気にイタリア陣内に入るディアス。
普通ならばプレスをかけて前目で止めようとするこの状況で、加えて言えばディアスも挑発めいた言葉を吐いている中。
それでもキャプテンのヘルナンデスは、作戦通りディアスから安易にボールを奪いに行く事を禁じ、
引いて守るよう指示を飛ばした。
中盤で、今すぐにディアスの元へと向かう事が出来るだろう選手に対してもである。

実況「イタリア、ここでプレスをかけない! 下がります、目一杯下がる!
   これは再びPA内を堅め、最終ラインで止めようという作戦でしょうか!?
   フィールドではディアスくんと並走するようにしてイタリア選手がPAへと戻るというなんとも珍しい光景が繰り広げられています!」

ディアス「どうしたどうした、そうやって引きこもるのがご自慢のカティナチオって奴なのか?
     そりゃそんだけ固めたら並の選手じゃゴールは割れないだろうな〜? いやー、たいしたもんだぜ」

観客「何やってんだイタリア、奪いに行けよ!」「また引きこもりか!」「ディアスにビビリ過ぎだろ!」

これに対してディアスは更に挑発を上乗せし、それに呼応するかのように観客席からは無責任な罵声が飛んだ。
彼らの目にはイタリアが必要以上にディアスを恐れ、臆病な戦いしか出来ていないように見えたからである。
しかしディアスからの挑発に、観客たちからの罵声。
これらを受けてもイタリアメンバーはそれでもPA内を固めた――かのように見えた。

ディアス「(さてさて、これだけ罵声が飛んでるんだ。 1点目の時と同じ……いや、それ以上かな? そうなればどうなるか)」
ヘルナンデス「気にするな、みんな! 絶対に飛び出すんじゃ……」

ジェンティーレ「ファン=ディアスゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!」

ディアス「(釣れた〜っ!!)」

660 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:01:08 ID:???
ヘルナンデスが更に言い含め、絶対に飛び出さないようにと指示を出そうとした瞬間、フィールドに咆哮が響き渡った。
ある者はその声量に驚き、ある者はその形相に驚き――そしてある者は、その姿を見て笑みを浮かべる。
サルバトーレ=ジェンティーレ。
ディアスが挑発を繰り返すたびに再びその顔面を真っ赤に染め上げ、
やがて怒りの沸点が最高潮に達すると同時に彼はヘルナンデスの指示を無視して一気にディアスの元へと駆けて行った――。
そう見えた。

ズダダダダダダダダダダーッ!!

ストラット「ジェ、ジェンティーレ!?」
ランピオン「(なんて顔をしてやがんだ……ありゃ鬼だ)」
ヘルナンデス「……。 ジェンティーレ、戻れ!!」

このジェンティーレの暴走に、イタリアメンバーは一瞬呆気にとられた後、
すぐさま平静に返り彼を落ちつけようと声を張り上げた。
だが、ジェンティーレにその声が届く事はなく、彼は般若が如き形相でディアスへと迫る。
傍から見れば、どう考えても度重なる挑発と観客に対する恥辱に耐えきれなくなった彼の暴走でしかない。

ディアス「(こういうプライドの高そうな奴程、泥沼にハマるんだ。 やりやすくって敵わないぜ。
      よし、このままもう一度反則を"させて"やれば間違いなく退場だ)」

そして、ディアスは当然のようにジェンティーレを相手にマリーシアを繰り返す事を決断した。
必要以上に熱くなり、プレイに集中出来ないような相手はどれだけ実力があろうとディアスにとってカモでしかなかった。

ジェンティーレ「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

カモが怒声を張り上げながら突っ込んでくるのを見て、ディアスはほくそ笑む。

661 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:02:28 ID:???
2人が激突する刹那。

トリノ「! ジェンティーレ!!」
ジェンティーレ「!!」

ガキィイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!

イタリアDFの1人、トリノの声がジェンティーレの耳に届き、その数瞬後、ジェンティーレとディアス。
世界最高峰のドリブラーとDFの両者は、一対一でぶつかり合った。

ディアス「(うおっ! やっぱり重い、上に速い! だがそれだけやりやすい!)ぐわあああっ!!」

ガシャアアアアアアアアアアアッ!!

ジェンティーレの鋭いスライディングタックルは、やはり強烈だった。
速度、力、技術、全ての面においてディアスが今まで経験した事が無い程のやり難さである。
ディアスは殆ど故意ではなく、彼の力によって吹き飛ばされた。

ドタンッ!!

ディアス「ぐうっ……ぐ、ぐぅ……」
ジェンティーレ「………………」

そして、故意に――必要以上に痛がりながら、地面に倒れ込んだ。
2人が接触をした場所から大きく離れた場所で、足を抱えて。

662 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:04:22 ID:???
ピピィーッ!!

ディアス「(よし、これで楽出来るな)」

うつ伏せになりながら審判の笛を聞いて、ディアスはほっと安堵の溜息を吐いた。
2度の立て続けのファウル、しかも今度も相手は頭に血が上っておりとても偶然には見えない状況。
この状況でジェンティーレにカードが出されない筈が無いと、ディアスは考えていたのだ。

ざわ……! ざわ……!!

やがてディアスの耳に観客たちのざわめきが聞こえてきた。
動揺したかのようなその声は、恐らく予想外のジェンティーレの退場にうろたえるものなのだろうと考える。

アルゼンチンメンバー「あ……あああ!?」「ば、ばか、な……」「うそ、だろ……?」
ディアス「(ん?)」

そして、次に飛び込んできたアルゼンチンメンバーの声を聞いて――ディアスは疑問を抱いた。
彼らの声には悲壮な――それこそ、この世の終わりが来たかのような絶望感が漂っており、
とても敵の主力が退場した事を喜ぶものには聞こえなかったからである。

審判「……立ちなさい」
ディアス「え……?」

混乱するディアスの耳に最後に入ったのは、怒気を含んだ審判の声だった。
思わず咄嗟にディアスは顔を上げ……審判を見やる。
彼は一枚の札を持ち、ディアスに対して提示していた。

663 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:05:40 ID:???
ディアス「………………」
ジェンティーレ「(フン、子ザルが。 下手糞なマリーシアにこの俺が二度もかかると思ったのか?)」

何が起きたか理解出来なかったディアスは、不意に視線を横に向けジェンティーレを見やった。
そこには――危険なスライディングタックルではなく、立ちあがった姿勢のままボールを確保しているジェンティーレの姿がある。

ジェンティーレは決して頭に血が上り、平静を失ってディアスに突撃をした訳ではなかった。
彼はもう一度ディアスがマリーシアを仕掛けてくると考え、妙案を編み出していたのだ。
それは案というにはあまりにも滑稽で、案とすら言えない程の陳腐なもの。
『圧倒的な実力でどこからどう見ても文句の無いプレイでボールを奪い、ディアスが過剰に痛がっているのを露呈させる』
ただ、それだけだった。

無論、それが出来れば誰も苦労はしない。しないからこそ、ディアスに対して手を拱く者達ばかりだったのだ。
だが、ジェンティーレは違った。彼は世界最高峰のDFだった。
この大会、一対一の対決でディアスに一番勝つ可能性が高い選手はと問われれば、間違いなく彼が上がるだろう程に。
よって、彼はこの案を考えつくと同時に実行に移した。

まずジェンティーレはDF達に、自分は『あえて怒ったように見せかけ突撃するからフォローに来るな』と言い含めた。
これはDF達が影となってプレイが審判に見えなくなるのを恐れた事が1つ。
彼らも同時にディアスに向かえば、ディアスがこの演技を見抜いてしまうかもしれないと考えたのが1つだった。

次にジェンティーレは自分がディアスに接触する直前、審判のいる位置を知らせるようにともDF達に伝えておいた。
より正確に足がボールに行っている事を証明する為に審判の位置に気遣う。
それはディアスの突破をただ止めるだけではなく、マリーシアを発覚させる為には必要な情報だった。

最後にジェンティーレはスライディングに行くと見せかけ、直前で手でブレーキをかけてその反動で立ち上がり、
足の先だけでディアスの持つボールを抑えた。
その一連の動作は、口で説明するだけならば簡単であるが実際に行うのは難しい。
しかし、中学生離れしたパワーを持つジェンティーレの腕力ならば地面を叩いた反動で起き上がる事も、
また、足の先だけでディアスの持つボールを捉え吹き飛ばす事も十分可能だった。

664 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:06:42 ID:???
結果、ジェンティーレは作りだした。

どう見てもジェンティーレの足はボールに行っており、ディアスはその反動で吹き飛ばされた――。
否、わざと大仰に吹き飛ばされ、ジェンティーレに反則を"させよう"とした状況を露呈させる舞台を。

一対一の為に周囲には誰もいなかった。
よって彼らの攻防の一部始終はフィールドに立つ者――それだけではない、観客たちにすら筒抜けだった。
そして、この攻防を見た誰もが疑いようもない事実に気づいた。

『ディアスはわざと吹き飛ばされ、怪我をしたように振る舞った』と。

ディアス「………………」

それを理解した瞬間、ディアスは怒りの余りジェンティーレを睨みつけた。
罠にかけたつもりが、実際には罠にかけられていた。
これ程屈辱的な事を、ディアスは今までの人生の中で経験した事がなかった。

ディアス「(サルバトーレ=ジェンティーレ、か……)」

今日の試合、ファーストプレイで彼に止められた際、もっと早くに気づいておくべきだった。
彼は今まで自分が戦ってきた自称・天才を止められるDFとは全く違う男であるという事に。
本当に、天才を止められる力を持つ世界最高峰のDFであるという事に。
だが、どれだけ後悔をしても後の祭りだった。

ディアスに提示されたのはジェンティーレに提示された黄色の札ではない。
今ディアスが口の中の肉を噛み締め、悔しさを静かに発散させたときに生じた血の色と同様。
その札は真紅に染まっていたからである。

665 :森末(仮):2015/02/23(月) 02:08:04 ID:???
>>648
乙ありです。

一旦ここで区切らせていただきます。
続きは一応書きますが、眠くなったら寝ますので今日中に更新出来るかはちょっとわかりません。

666 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 02:19:37 ID:???
乙です。退場だゼェェェェェェェェェェット!

667 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 07:16:30 ID:???
乙です。ここから何失点してしまうのか…

668 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 08:05:35 ID:???
後半入っているから3-1、頑張って4-1といったところかな
5-1になって得失点差で強化されたイタリア相手に
引き分けは問答無用でゲームオーバーというのはさすがに無常だろう

669 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 08:20:37 ID:???
ストラットさんにはポストに当ててもらうことを期待しよう。
せめてイタリアと引き分けなら予選リーグ突破できるような得失点差になっといて欲しいな。

670 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 10:52:29 ID:???
4-1だと総得点すら並んでややこしいね。
くじ引きで進出チーム決定?
それなら5-1でいいかも。イタリアも大量得点狙うだろうし。

671 :森崎名無しさん:2015/02/23(月) 17:05:17 ID:???
これ構図的にはまんま本編の翼みたいな感じだな
しっくりくる演出だ

672 :森末(仮):2015/02/23(月) 23:36:28 ID:???
実況「あ……ああああああああああああああああああっ!?
   これはレッド、レッドカードだァ!! ディアスくん、シミュレーションを取られました!
   しかしこれは誰の目にも明らか! ジェンティーレくんの足はボールに行っていたのは、この私の目からも見えました!
   もはや言い逃れ不能! 故意のダイビングとされ、反則を取られてしまいました!!
   しかし、しかし! あまりにもここでのレッドカードは大きいィイイイイイッ!!」

ピエール「違う……ここで驚くべきは、ディアスに対してレッドカードが出た事じゃない……!」

シュナイダー「幾ら奴が相手を陥れる事に注意を払い、そちらに視線が行っていたとはいえ……。
       それでも完璧にボールを奪い取る事など、容易な事ではない筈だ」

早田「あの野郎……相当やりやがるぜ」
松山「俺でも、零れ球にするが精一杯だったのに……」
三杉「(恐らくは早田のタックルよりも頭一つ抜けている……あれが……)」
中山「サルバトーレ=ジェンティーレ……(なんて奴だ……!)」

この時、観客席にいる実力者たちは目立つディアスの退場よりもその退場を誘った原因。
即ち、ジェンティーレに注目を集めていた。
ディアスの突破力の高さについては、既に周知の事実である。
誰もが彼こそが今大会最高のドリブラーであると考えていた。彼を止めるにはどうするべきか、シミュレートする者もいた。
だが、決定的な対抗策というものは中々思いつかない。
仮にストライカーならばマークをつけて無効化する事も出来る、パサーならばキープした所を奪いに行けばいい。
しかし、ドリブラーは純粋にタックルでボールを奪うしか手立ては無いのだ。

結局、多くの者は昨日日本が取った作戦のように二段構えで人数をかけて奪うか。
或いは今日のイタリアの如く最終ラインまで引きこもり多人数で待ち構えるかしかない。

にも関わらず一対一でディアスを止めてみせたジェンティーレ――その実力の高さは、一瞬にして彼らの脳裏に刻まれた。

673 :森末(仮):2015/02/23(月) 23:37:40 ID:???
パスカル「ば、馬鹿な……ディアスが、ディアスが、どうして……!」

一方、動揺にジェンティーレの実力に驚きながらもそれ以上にディアスを心配する者達もいた。
パスカルらアルゼンチンの元主力メンバーである。

彼らは見ていた、審判からレッドカードを提示され、無表情でベンチに歩いて行くディアスの姿を。
それは彼らが願っていた姿からは程遠い――名誉を守る事も、誇りを守る事も敵わなかった英雄の姿。
ディアスの盟友であるパスカルは瞳に涙を浮かべ、ただただその背中を見送る事しか出来なかった。
この時彼が出来た事は、今すぐにでも控室に駆けだしてしまいそうになるその足を手で押さえつける事だけだった。

バティン「…………」

そして、バティンは茫然とした表情でフィールドを眺めていた。
スラム街で暮らしながらも真っ当に生まれ育った彼はダーティーなプレイを好まず、
ディアスが行ったマリーシアにも少なからず苛立ちを覚えた。
だが、それ以上にこの状況を作りだしてしまったのが自分自身であるという責任感も覚えていた。
二つの反する感情が混ざり合った彼の心中は、推して知るべしである。

ガルバン「ディアス……」

この中で唯一客観的に状況を見る事が出来たのは、ガルバンだった。
彼はディアスと不仲という訳ではないが、パスカル程には絆も深くなかった。
よってディアスに同情をしても、深く感傷的にはならなかった。
また、自分の不注意と考えの甘さによる負傷といえど、バティン程には責任感も感じていなかった。

ガルバン「あっ……! ま、まずい!」

その為に即座に気づく事が出来た。観客たちの大きな異変に。

674 :森末(仮):2015/02/23(月) 23:39:45 ID:???
ブゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウーーーー!!!!

板野「う、うわっ!? 物凄い声……こ、これって!?」
岬「(……まあそうなるだろうな。 因果応報だね)」

観客「てめぇ、何が天才だ!」「ただのペテン師じゃねぇか! この大法螺吹きめ!!」

ブゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウーーーー!!!!

ナポレオン「これは酷いですね……勿論、あれだけの汚いプレイをしたディアスに非があるのはわかりきった事ですが」
ピエール「群集心理の恐ろしさだな……前評判通りディアスも天才的なプレイを見せつけていた。
     だが、結果が伴わずその挙句にあのプレイではな」

観客「昨日も日本が反則取られてたけど、それもてめぇのせいだろ!」「ふざけた事してるんじゃねぇ!!」

ブゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウーーーー!!!!

響「こ、怖いぞ……なんでこんな事になってるんだ!?」
真「これもサッカーの本場ならでは、なのかな……熱狂的過ぎるファンは華美なプレイには惜しみない称賛を浴びせるけど、
  逆にそうでないものには罵声を浴びせるんだ……まだフィールドにお客さんが下りてない分、マシだよ」

観客「まったく、日本戦で褒めて損したぜ!!」「ちんたら歩くな! 走ってそのままアルゼンチンに戻って二度と来るなーっ!!」

天才ファン=ディアスという前評判。
見せるプレイは確かにすばらしいが、結果は伴わず昨日の試合は惨敗、今日の試合もここまでアルゼンチンの守勢。
そしてその果てに起こったマリーシアの発覚。
観客たちが怒りを噴出させるにはあまりにも条件が整いすぎていたと言っていいだろう。

一部、この観客たちのブーイングに驚き、或いは難色を示す者達もいたが……。
それでもディアスのやった事が褒められたものではない事もあって、彼を擁護する者は殆どいない。

675 :森末(仮):2015/02/23(月) 23:41:20 ID:???
松山「(ディアス……)」

観客たちが罵声を浴びせる中で、本場のブーイングに日本メンバーが混乱する中、
松山だけはフィールドから姿を消そうとしていたディアスの背中をただ見つめ続けていた。

松山「………………」

ディアスは淡々と歩いていた。ブーイングを受けて驚くでもなく、悲しむでもなく、怒るでもなく。
ただただそれを受け入れて、しっかりとした足取りで歩いていた。
傲慢なのか、観客の声を気にしないタイプなのか、はたまた虚勢か。
ディアスの態度について松山は思案をしたが、やがて答えはそれらではないという事に気づいた。

松山「(勝てば官軍、負ければ賊軍……そういう事なんだな、ディアス。
    本当にお前は、言い訳でもなんでもなく……そう思っているんだ)」

ディアス「………………」

昨日の試合終了後、板野と共にディアスと問答をした松山。
彼はその時ディアスが言っていた言葉を、ある程度は汚いプレイを正当化する為の言い訳なのかもしれないと考えていた。
だが、違う。この時のディアスの姿を見て――松山はあれこそがディアスの本心なのだとようやく理解をした。

『勝てば官軍、負ければ賊軍』――それがディアスの哲学である。
この時の彼も、ただそれを実行していただけに過ぎない。
自分は負けた。ジェンティーレに負けた。ならば何を言っても無駄であるし、退場する運命ならばこの後どうする事も出来ない。
よって彼は素直に受け入れただけだった。己の完全なる敗北を。

676 :森末(仮):2015/02/23(月) 23:42:31 ID:???
ディアス「………………申し訳ありませんでした」
バルバス「……控室に戻っていろ」

やがてベンチに引き揚げた彼は、監督のバルバスに頭を一つ下げた後、
やはり淡々と控室へと戻って行った。
戻る最中もブーイングは止まず、控室に入ってもその声は聞こえてきていたのだが、
ディアスの心中にはそれに対する哀しみや怒りといった感情は一切沸いてこない。

ディアス「サルバトーレ=ジェンティーレ、か……」

彼の心中にあったのはただ一つ――自身を完膚なきまでに叩きのめした男、ジェンティーレに対する復讐心である。
自身に敗北の味を教えた、イタリアに対する反骨心である。

彼は現実主義者であった。究極のリアリストであった。
既に起きてしまった事への後悔はしない、無駄な憎悪もしない。
どこで間違えたのか、何時からこうなったのか、こんな筈ではなかったと女々しく言い訳もしない。
パスカルら仲間がいてさえくれればなどという感情も、抱かない。

何故なら彼は天才だからである。
あるのはただ、勝利への執着。そして、孤高の天才としてのプライド。
負けてしまったら次に勝てばいい、プライドを傷つけられた代償は倍にして返す。
失墜するであろう名誉も、これから地元に戻って襲ってくるだろう罵声も、
いずれ自分ならばすぐに元通り――以上にまで回復させる自信もあった。
彼は自分を信じていた。誰よりも自分の力を信じていたのだ。

677 :森末(仮):2015/02/23(月) 23:44:23 ID:???
世界デビューは失敗に終わった……だが、その先がまだ自分にはある。
すぐさま目標を切り替える事が出来るのは、彼の強靭なメンタリティ――リアリストとしての本質だろう。

ディアス「……はぁ」

イタリアへの復讐心を心に深く刻み込んだ後、ディアスはようやく大きなため息を吐いた。

ディアス「……すまんな、みんな。 ……俺のせいだ」

その気持ちにも一区切りがつけられた後、残った感情。
それは残ったチームメイトに対する、罪悪感。
チームを引っ張り、大会でも優勝を目指していた中で、
自身の失態のせいで2敗させてしまう――天才としては、あるまじき結果。

天才としての自覚が強い彼は誰のせいにするでもなく、自身のせいであると感じていた。
バティンがいなくともパスカルがいなくともガルバンがいなくとも、自分がいれば勝てると彼は本気で思っていた。
だというのに、その結果がこれである。面目が立たない、どころの話ではなかった。
故に、謝罪をする。誰も聞いていない、独り言での謝罪を。

ディアス「だけど俺は天才、ファン=ディアスだ……。
     次こそは勝たせてやる……勝ってみせる。 そして、今度は奴らを地に叩き落としてやる!!
     このまま、終わってたまるもんかよ……!!」

仲間の離脱、自身を止めてみせた実力者の出現、立て続けの敗戦。
それらを受けても、彼の心は折れない。

こうして終ぞ一勝ももぎ取れなかった世界最高峰の天才の世界デビューはフィールドではなく、
誰の目からも見つからない薄暗い控室の中でそっと幕を閉じたのだった。

※ディアスのイタリアへの感情が ディアス→(リベンジ)→イタリア になりました。

678 :森末(仮):2015/02/23(月) 23:46:05 ID:???
>>666-667
乙ありです。

一旦ここで区切らせていただきます。次くらいから判定が出来ると思いますのでもう少しだけお待ちください。

679 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 00:02:37 ID:???
これ若林とヘルナンデス将来的に弱体化しそうだな
ディアスにぼこられないからラストフォートなくなるし

680 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 00:09:04 ID:???
ディアスの方はどうなるかな
このままだとシュートは本編と比べて弱体化しそうだが

681 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 00:20:13 ID:???
ワールドユースのアルシオン並みに強化されると考えれば
サイクロンとネオサイクロンを怪我なしで打てるようになっていてもおかしくないな

682 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 00:43:08 ID:???
バティンがいれば役割分担できるから、サイクロンがなくてもチーム的には強化
にげるんだぁ…

683 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 00:49:40 ID:???
本編ディアスはアルシオンと同じ位強いと思うけどね
まわりがへぼいだけで

684 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 00:51:46 ID:???
攻撃も守備もサイクロンもカウンターシュートも全部ディアスの仕事
そりゃあ本編ディアスがパンクして破裂するのは当然ですよね

685 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 01:03:17 ID:???
チームメイト的にジノも若林もどのみちラストフォートは覚えそう。
ディアスは既に本編より基礎値が上がってるし
この悔しさをバネにして自力でサイクロン編み出しそう。

686 :森末(仮):2015/02/24(火) 01:26:40 ID:???
ヘルナンデス「まったく……無茶な作戦だ。 作戦とすら呼べない」
ジェンティーレ「フン、上手くいったのだから構わんだろう」

ディアスが退場し、観客たちの騒ぎが徐々に収まりつつある中で、
ジェンティーレとヘルナンデスは2人話し合っていた。
薄々ジェンティーレの意図に気づいていたヘルナンデスは、彼が飛び出した瞬間にそれを演技であると見ぬき、
自身もやや演技がかった口調で彼を引き留めディアスに狙いを察知させない役割を担った。
だが、終わってみれば上手くいったからいいものの、やはりジェンティーレの策は策とも呼べない程無茶なものである。
流石に苦言を呈するのだが、ジェンティーレはどこ吹く風といった調子でニヒルな笑みを浮かべるだけだった。

ジェンティーレ「それにこれでこの試合は貰ったも同然だ。 違うか?」
ヘルナンデス「……まあいいだろう。 よし、ここからは一気に攻勢に出ろ。 ラインを上げて、前で止めるんだ。
       ディアスがいなくなった今、アルゼンチンにもはや驚異的な存在はいない」

ストラット「ん? ジェンティーレが前に上がってきたぞ? それにヘルナンデスのあのサインは……」
ランピオン「ガンガン得点を狙って行け、か……言われるまでもないな」
バンビーノ「ディアスがいないだけでなく、人数的にも相手は10人だ。 効率よくパスが回せそうだな」

和夫「やっと騒ぎも収まったか……はぁ、おっどろいたぜ」
若林「この程度、日常茶飯事……という訳ではないが、欧州では往々にしてある事だ」
岬「学生サッカーだけの日本だとあまりなじみがないかもしれないけどね」
沢田「こここ、こういうのはやっぱり怖いですよ。 そういう意味では日本の環境の方が僕にはあってるのかも」
板野「(いや、学生サッカーでもこれくらいのブーイングが生じる場合ってあるんだよね……。
    日向っていう日本サッカー界最強のヒールがいるチームとかさ)」
中西「まあそら置いといて、こらイタリアの勝ちは揺るがんやろな」
早田「だろうな。 アルゼンチンは10人になってディアスまで抜けたんだ……引き分けにすら持ちこむのは難しいだろうぜ」

687 :森末(仮):2015/02/24(火) 01:27:47 ID:???
その後、試合が再開すると果たして日本の予想通りイタリアがアルゼンチンを圧倒した。
後半12分、ディアスの反則からのフリーキックを起点に、
イタリアがパスワークを中心に攻め立てランピオンが豪快にヘディングで決めて2−1。

後半19分、人数差で劣るアルゼンチンはパスとキープで逃げ回るだけで精いっぱいだったものの、
ラインを上げたイタリアDFに捕まりあっけなくボールを奪われ、
これをストラットがオーバーヘッドキックで決め3−1。

後半25分、一か八かで攻め込んだアルゼンチンFWが破れかぶれのロングシュートを放つも、
ヘルナンデスがあっさりとキャッチしロングカウンター。
ランピオンの落としたボールに1点目の再現の如くストラットがマグノスゾーンシュートを遠目から放ち4−1。
残酷なまでにチーム力の差を見せつけ、こうしてイタリアはアルゼンチンを相手に快勝をしたのだった。

ピッピッピィイイイイイイイイイイ!!

実況「試合終了〜! イタリアが4−1という大差でアルゼンチンを下しました!
   攻めては優秀なポストプレイヤー、ランピオンくんのアシストを受けてストライカーのストラットくんがハットトリック!
   守ってはジェンティーレくん、ヘルナンデスくんという鉄壁の守備陣が封殺!
   許した得点は僅かPKによる1点のみでした!
   攻守、共にタレントを擁するイタリアJrユース! 今大会優勝候補との前評判に違わぬ実力を見せつけた試合でした!!」

カルツ「うーん、穴と言えばしいて言うなら中盤くらいか。 そこは支配出来る自信はあるんだがなぁ」
マーガス「前線もウチが勝っている。 だが、守備が段違いだ。 バランスの良さならば恐らく今大会屈指だろうな」
シェスター「中盤を支配出来てもパワープレイをされたら一たまりも無さそうだもんな。
      もしもイタリアが上がってきたら、戦い方を考える必要がありそうだ」
シュナイダー「しかしタレントの多さならばニホンも負けたものではないぞ?」
カルツ「なるほどねぇ……こりゃ明日の試合は面白くなりそうだぜ」

688 :森末(仮):2015/02/24(火) 01:28:49 ID:???
大会得点王ランキング

6ゴール シュナイダー
4ゴール ビクトリーノ
3ゴール 板野、ナポレオン、ストラット
2ゴール ディアス、マーガス
1ゴール 反町、ランピオン

大会アシスト王ランキング

3アシスト マーガス
2アシスト ピエール、ランピオン
1アシスト 松山、岬、三杉、沢田、バンビーノ

689 :森末(仮):2015/02/24(火) 01:30:23 ID:???
実況「さぁ、試合が終わった今、キャプテンのヘルナンデスくんにインタビューが行われています」

ヘルナンデス「そうですね、結果としては4−1という大勝ですが……これは運良くディアスが退場してくれたおかげでもあると思います。
       むしろ彼がいない中で、3点しか加点出来なかったのは反省が必要な所かもしれませんね」

パスカル「ぐっ……くそっ……!!」
ガルバン「好き勝手言いやがって……!」

ヘルナンデス「今日は勝てましたが、ニホンもアルゼンチンを相手に4−1と同じスコアで勝利を収めています。
       そのニホンとの試合は、今からとても楽しみですね」

あくまでもにこやかに、嫌味なくヘルナンデスはインタビューに答えた。
イタリアの中でも特に優等生的であるとされる彼は、無闇にアルゼンチンのディアスを非難するような事は言わない。
だが、そのディアスがいなくなりさえすればこれくらいの結果は当然と言う態度は、
観客席にいるパスカル達の神経を逆なでする言葉だった。

パスカル「俺達が……俺達がいさえすれば……!!」
ガルバン「あんな馬鹿みたいなロングシュート、止めてやれるというのに!!」

彼らの力はディアスには遠く及ばない。しかし、彼の負担を軽減する事は出来る。
パスカルはディアスへのマークが集中した場合の敵避けに――ガルバンはディアスが守備に勤しまなくて済む程度の守備が出来たのだ。
本来のアルゼンチンは、ここまでディアスがいなくなった瞬間に崩壊するような軟弱なチームではない。
それをヘルナンデスが理解していた訳がないのだが、それでも彼らはヘルナンデスの言葉に恨みを抱かざるを得なかった。

690 :森末(仮):2015/02/24(火) 01:31:43 ID:???
バティン「(俺のせいで、こんな事に……ああ、俺は……俺は、どうすればいいんだ……)」

そして、この2人の姿を見て頭を抱えたのはバティンだった。
自身が原因となり彼ら2人が出場出来なくなった挙句、全ての責任をディアスに押し付ける形となってしまったのだ。
本来は正義に燃える熱血漢である彼が、その事実に耐えきれる筈もない。
怒りを露にするパスカル達を見て、苦悩をするのも当然と言えた。

バティン「(きっとディアスは国に帰ってから批判を浴びるだろう。非難を浴びるだろう。
      その時、俺はなんて言ったらいいんだ……合わせられる顔があるのか……)」

予め言っておくと、ディアスはバティンの事を気にしてはいなかった。
否――少しは面倒な事を起こしやがってとは思ったかもしれないが、それでも既に割り切るだけの度量があった。
実際にバティンがこの後ディアスと顔を合わせても、多少冗談を含んだ恨み言を言われて綺麗さっぱり終われただろう。
だが、バティンにとってはそこまで簡単に思えなかった。
彼は責任感が強すぎたのである。

バティン「(もう……あいつに合わせる顔が無いなら……いっそ、どこか遠くへ……)」

結果、その強すぎる責任感は重荷となり、本来の彼ならば取らない選択を脳裏に描く事になった。
即ち、アルゼンチンから逃げる事。

バティン「(そうしよう……国に帰ったら、すぐにクラブチームと話し合って、そして……)」

その選択に逃げる楽さから、バティンはそれを選んでしまった。
罪を償うでもなく、謝罪するでもなく、逃げる。アルゼンチンから離れるのだと、決めてしまった。
この日から数か月後、バティンはその願いどおりアルゼンチンのクラブチームから欧州のクラブチームへの移籍が決定する。

罪を犯し、熱い心を失くし、勇気を忘れた男――マリオ=バティン。
彼が失った心を、忘れた魂を取り戻すのは、まだ当分先の話となる。

※パスカル・ガルバンのイタリアへの感情が パスカル・ガルバン→(恨み)→イタリア になりました。

691 :森末(仮):2015/02/24(火) 01:32:55 ID:???
滝「お、終わったか……」
井沢「やっぱり予想通りイタリアの勝ちか。 しかも4−1の圧勝だぜ」
小池「ところで俺達とイタリアが得失点差で同じになったけど、これ明日引き分けたらどうなるんだ?」
三杉「大会の規定によるとPK戦になるようだね」
次藤「PKとなると運任せじゃからのう。 なるべく試合の中で決めたいとこタイ」

そして、全日本メンバーは試合が終わった余韻に浸りながらもこの試合の感想を互いに述べ合っていた。
予想をしていた通りだが、ディアスが退場をした後はイタリアが圧倒。
僅か20分足らずで3点を追加し、一気に得失点差で日本に並んだその実力は嘘ではない。

反町「特にあのストラットっていうFWはとんでもなかったな……」
政夫「それにランピオンって奴も相当だったぜ」
和夫「ああ、ありゃ俺達のデルタツインより上だったぜ」
若島津「あの程度の高さなら脅威にはならん。 俺が弾き返してやる」

特に今日の試合でハットトリックを達成したストラット、そしてポストプレイヤーのランピオンは両者共に注意が必要。
油断をすればいつ失点をしてもおかしくない程の火力の持ち主たちである。

中里「否、攻撃陣だけではござらん。 あの守備陣もまた脅威なり……」
中山「ああ、あのジェンティーレとかいう奴……あいつはあのディアスの突破を完全に阻んだんだ。
   恐らく、今大会でもNo.1のDFと言えるだろう(悔しい事にな……くっ、もっと力が欲しい!)」
岬「その後ろに控えるキャプテンのヘルナンデスも、相当の実力者らしいからね。
  今日の試合ではあまり出番が来ていなかったけど」

また、それ以上に脅威と言えるのは鉄壁の守備陣であった。
ディアスの突破を止めたジェンティーレの印象は彼らの心に深く刻まれており、
ヨーロッパNo.1キーパーと噂されるヘルナンデスも決して油断ならぬ相手である。

板野「(確かに……やっぱりイタリアは強い。 アルシオンがいなくても、攻守バランスが取れた凄いチームだ。
    改めてそれがよくわかったけど……ここは何か言っておこうか?)」

692 :森末(仮):2015/02/24(火) 01:34:44 ID:???
A.「明日の鍵はどちらが先取点を取るかだ。 先取点が全てを決める」 先を見据えてそうな事を言う
B.「ジェンティーレをどうかわすかだね。 明日は攻撃で工夫しないと」 ジェンティーレに要警戒だ
C.「PKを与えた時の様子から見て、ジェンティーレは熱くなりやすいみたいだね」 ジェンティーレの弱点を指摘する
D.「ストラットに打たせないようにするのが一番だな。 そこさえどうにかすれば失点の危険は半減する」 ストラット封じだ!
E.「なあ若林、お前じゃなくてあのヘルナンデスって奴がヨーロッパNo.1なのはなんで?」 若林に質問する
F.「俺達はディアスのいるアルゼンチンに4−1。イタリアは抜けたアルゼンチンに4−1だ」 内容の違いを指摘する
G.「(いや、別に何も言わなくていいかな)」 豪快にマグナムスルーだ!
H.その他 板野くんに言わせたい事を書いてください

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

693 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 01:35:33 ID:0WsfnvnQ


694 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 01:36:25 ID:UYOVNbkA
B

695 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 01:36:55 ID:8c5N8urQ
F

696 :森崎名無しさん:2015/02/24(火) 01:38:43 ID:???
先取点とられたら怖いよな

697 :森末(仮):2015/02/24(火) 02:32:24 ID:???
>F.「俺達はディアスのいるアルゼンチンに4−1。イタリアは抜けたアルゼンチンに4−1だ」 内容の違いを指摘する
===============================================================================================================
ここで板野は同じスコアではあるものの内容が違うという旨を説明した。
日本はディアスを有するアルゼンチンを相手に4−1。
イタリアは――後半からとはいえ、ディアスのいなくなったアルゼンチンを相手に4−1。
得点数も失点数も同じではあるものの、どちらが価値あるものかは一目瞭然である。

松山「ああ、そうだ。 俺達はあのディアスのいるアルゼンチンを相手に勝ったんだ。
   尻込みをする必要なんて全くない」
山森「そうですね……でも、どうして内容に差異が出たんでしょうか? 単純に俺達が強いってだけではないと思いますが」
三杉「いい着眼点だね、山森。 勿論、これはチームの特色が出た形だよ」
山森「と言いますと……?」
三杉「まずイタリアは中盤の支配力が足りない。 ディアスが抜けるまでは、支配率では僕たちの方が高かった筈だ。
   そのイタリアの頼みの綱はランピオンを使ったパワープレイだが、これもディアスによって封じられた。
   だから最初の1点から加点をする事が出来なかったんだ」
松山「それにイタリアは守備が完全に最終ライン任せのようだからな。 言ってみれば、カウンター戦術に特化をしている。
   ディアスが攻め込んでからのカウンターならばそれも効果的だったんだろうが、
   あいつが守備に走っていた状況だと打つ手が無かったんだな」
次藤「なるほどのう。 なら明日はそこを突けば上手く戦えそうタイ」
板野「(わ、凄い。 みんな勝手に分析をしてくれてる……)」

698 :森末(仮):2015/02/24(火) 02:33:51 ID:???
そしてこの板野の発言には多くの者達が同意を示し、更には戦術的な観点から内容を指摘する者もあらわれはじめた。
何かと議論が好きな者も多い全日本である。
すっかり彼らは理詰めでも自分たちはイタリアに劣っている訳ではないと感じ、下手に怖気づく事は無かった。

板野「(しかし、イタリアか……明日は本当に、俺次第になりそうだ……)」

昨日のアルゼンチン戦が背番号10と10の骨肉の争いならば、明日は自身が堅固な錠前をぶち破れるかの戦い。
議論する者達の声を聞きながら、板野は爽やかな笑顔で引き揚げていくイタリアメンバーをじっと見つめるのだった。

699 :森末(仮):2015/02/24(火) 02:35:37 ID:???
その後、全日本メンバーはスタジアムから引き揚げ予定通り軽い調整の為にグラウンドに集合をした。
無理をせず、昨日の試合の疲れを解し明日の試合に備える文字通りの調整である。
監督たちからの厳命により過度の練習は禁止されていたのだが、人知れず猛特訓を己に課す者がいた。
新田である。

新田「(スピードを乗せたままのミドルシュート! 確かこうか……? いや、違う……)」

昨日板野から助言を受け、ビクトリーノの動きを注視した結果、その類稀な才能に気づいた新田。
自身と同じタイプながらも、その数歩先――数十歩先を歩くビクトリーノを見て、彼は奮起した。
年齢の差を言い訳にせず、自身の実力不足を嘆かず、一歩でも距離を縮める事を夢見て特訓をしたのである。

新田「(俺の日本の中での地位が低い事くらいはわかってる! 昨日も試合で全く結果を出せなかったんだ!
    このままじゃ駄目なのはわかってるんだ! だけど諦めたくない!!
    諦めてたまるか!! あいつに出来て、俺が出来ないなんて事があってたまるもんか!!)」

功名心の塊であり、栄光を手に掴みたいともがく新田は思考錯誤を繰り返す。
彼は打たれ弱い面もあるが、気分が上り調子の時は決してへこたれないメンタルの持ち主でもあった。
目の前で自分が手本とするべき選手を見た事で落ち込むよりも先に這い上がろうと思えたのは、
板野がまずは世界の選手を目指せと暗に今の自分は弱いと言ってくれたせいかもしれない。
彼は己の弱さを自覚していた。自覚した上で、這い上がろうとしていた。

新田「(よし……これで決める! このままボールを持ってダッシュして……)」

ズダダダダーッ!!

新田「ここだァッ!!」

シュパッ……ズバァァアアアアアアアアアアンッ!!

700 :森末(仮):2015/02/24(火) 02:36:45 ID:???
そして彼は成果を上げた。
元々、才能はあるとされ――合宿で板野に付き合ってもらった結果、一歩ずつではあるが着実に成長を遂げてきた新田。
彼は僅か短時間での練習で自身が思い描いた、今日の試合で見た理想のシュート――ビクトリーノの持つ、
スピードをそのまま乗せたミドルシュートの開発に成功をしたのである。

新田「や、やった! 俺にも出来た!! 俺にも出来たぞぉ!!」

彼は誰も見ていないのをいい事に、大声を張り上げながら両手を上げて喜んだ。
無論、まだ足りない。
これでようやく新田はダイレクトだけでなくミドルでも一定の威力のシュートが打てるようになった、というだけである。
ビクトリーノのように華麗な突破も、スピードを生かした突破も出来ない。
守備に関しては、もっと出来ない。
出来る事は多少立花兄弟に劣るレベルのシュートを打てるようになった――ただそれだけである。

だが、それでも成果を出せた。たった1日で技を会得出来た。
ひとまず、それを喜んでも誰も新田を非難する事は無いだろう。

新田「よし、よし! これでまた一つ武器が出来たぞ!
   後は試合で決めるだけだ……そして、このシュートの名前を高らかに宣言するんだ!!」

まだ彼は這い上がっている最中である。
地位も、知名度も、実力も、全日本の中では決して高い方ではない。
しかし、着実に彼は這い上がっていた――少しずつではあるが地の底から大空へ羽ばたこうとしていた。

やがて爪を持つ隼が世界を相手にその力を遺憾なく発揮するのか、それとも空に憧れた地中の隼は這い上がる事が出来ないままなのか。
それはまだ、わからない。

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0ch BBS 2007-01-24