キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
キャプテン森崎まとめ掲示板TOP

■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 801- 901- 最新50


レス数が900を超えています。1000を超えると表示できなくなるよ。
【もう昨日には】鈴仙奮闘記32【戻れない】

1 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/10/12(月) 23:24:34 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで師匠を超えるために努力する物語です。
他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆
【楽園の未来】鈴仙奮闘記31【映す試合】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1440515816/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html

☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠、八意永琳に並ぶ選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。

永遠亭ルナティックスがついに迎えた、全幻想郷選抜大会決勝戦・博麗連合との大一番!
友人との距離に悩みつつも依然幻想郷一のプレーヤーたる博麗霊夢、
コンプレックスに自身の力で打ち克ち、夢と共に散る覚悟を決めた霧雨魔理沙、
そしてあらゆる逆境をも笑い飛ばし、自身こそが最強と信じて疑わぬ狂王・森崎有三…
彼らを中心に、技術でも精神面でも優れた博麗連合メンバーに対し、しかしルナティックスも負けておらず、
鈴仙や永琳やカグヤファンなどの力により優位に攻め切り、前半20分で3−0と圧倒的なリードを得た。

一方、そんな中でも新たな計画は着々と進んでいる。
霊夢を倒し、幻想郷の秩序の変革を狙う『プロジェクト・カウンターハクレイ』。
八雲紫が企む『リアル・幻想・セブン』計画に、それを利用した内部改革を意図する紫の式・八雲藍。
そして鈴仙の親友・妖夢をも利用し覇権を握るべく暗躍する、豊聡耳神子を中心とした『アナザーカンピオーネ』計画……。
鈴仙はいずれ、その何れかに与し、あるいは敵対しなくてはならないだろう。

果たして試合の行方は。鈴仙の選ぶ道は。そして幻想郷と外の世界の未来は。
もう昨日には戻れないにも拘わらず、彼女達は何の為に、何を夢見て戦うのだろうか。

676 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/15(日) 18:39:11 ID:???
…と、いったところでいったんここまでです。

677 :森崎名無しさん:2015/11/15(日) 18:44:10 ID:???
その日 世界は引き裂かれた・・・(FF6感)
三闘神(鈴仙、中山、パスカル

678 :森崎名無しさん:2015/11/15(日) 18:59:38 ID:???
ケフカ枠はどこですか

679 :森崎名無しさん:2015/11/15(日) 19:33:56 ID:???
(リグル)狂信者の塔 翼「リ!グ!ル!」

680 :森崎名無しさん:2015/11/15(日) 19:37:01 ID:???
狂信者?ウーマロつれてこう

681 :森崎名無しさん:2015/11/15(日) 21:34:42 ID:???
>護衛のならず者軍団
いつの間にか護衛に格上げw
やっぱり、このスレだとリグルじゃなくてカグヤ狂信者の塔の方が無難かも

682 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/15(日) 23:44:02 ID:???
〜モリヤスタジアム跡・上空〜


藍「な、なんたる事だ。結界が壊れ……それだけじゃない。幻想郷中に渦巻く、この濁流のようなエネルギーは……!」

勝者を称えるスタジアムが一転、地獄の様相と化した時も尚、藍は上空から動けないでいた。

紫「……フフ」

そして藍とは対照的に、紫はこの災害を機に、明らかに生気を取り戻していた。

藍「紫様。これは一体どういう事なのですか……!?」

紫「八意永琳のミスのお蔭よ。彼女がやり過ぎてしまったから、この厄災は起きた。
そしてお蔭で私は――ほら。厄災が齎したエネルギーを吸い取って、この通り元気になっちゃった。
これで心置きなく全力で、彼女達を潰し。そして、元通りの幻想郷を取り戻す事ができるわ?
勿論、私の考えた、最強の幻想郷ベストイレブンでね」

藍「ゆ、紫様……?」

そう高揚した風に話す、眼前の女性の外見は、間違い無く藍が良く知る八雲紫だった。
しかしその一方で、彼女は明らかに変わっていた。
瞳からはおぞましいまでの狂気に溢れ、それを操るのは理性でも無く単なる憎しみ。
これまでも衰弱した紫は狂気や妄執を持ち合わせていたが、今のそれには遠く及ばない。

紫「――藍。行くわよ。どうせ『彼ら』も出張っているんでしょうから、顔見せに行かなくちゃね」

藍「は……はい(――何だ、この違和感は。
これまでは単に「衰弱」と一蹴していただけの紫様の狂気が、今はとてもおぞましく感じる……)」

八雲紫でありながら、八雲紫で無い何かが、ここに居る。
藍はその存在に怯えながらも、忠実な式として紫に従い地上へ、――観客や選手の避難する広場へと降り立った。

683 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/15(日) 23:46:52 ID:???
*****


〜スタジアム前広場〜

岬「公益財団法人全日本サッカー協会……技術部超常技術課研究員、中西太一……!?」

岬が貰った名刺の内容を驚きを持って読み上げると、中西は満足気に頷いた。

中西「――ワイは糖尿病の後遺症と相撲部のかわいがりが原因で一度は死んでしもうた。
ほやけど、どうしても森崎有三に借りを返したい一心で亡霊として蘇った……は良かったんやけど。
亡霊は上手く壁を抜けたりもできへんし、当分は路銀を稼ぐ必要があるし、何より肝心の森崎が行方不明やし。
……そんで、全日本サッカー協会に自分を売ったんや。あらゆる手で、森崎を見つけ出す為にな」

岬「……お金が必要な亡霊ってのも、面白い話だけど。
成程。兎に角それで、君は全日本サッカー協会の密偵として、情報収集をしていたのか。
幻想郷たる謎の地域のサッカーを調べ、行方不明となった森崎を始めとする、全日本Jr.ユース選手を捜索する為に」

中西「理解が早くて助かるわ。ま、こっから先はワイと見上サンに任せとんなはれ」

見上「……俄かには信じがたい事だがな」

中西が太い指を刺した先には、茫然と立ち尽くす眼鏡をかけた壮年の男性が居た。
中西より事前情報を得ていた見上達全日本サッカー協会上層部は、
幻想郷が現れるであろう地点を絞り出し、結界の崩壊に伴って合流していた。

684 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/15(日) 23:48:34 ID:???
見上「――しかし、本当なのか。今日この場で、新たな国際大会の開会が発表されるとは。
我々としてはワールドユース大会前に、さしたる責任を負わせず世界のチームと当たらせる事は、
無論願ってもない機会ではあるが……」

中西「ほやからホンマですって。幻想郷側のトップと親しい若奥さんトコに住み込んで得た情報ですねん。
ほれ、そろそろきっと、空の上からアナウンスが……」

見上「空の上だと? 確かにお前の報告書にもそう書いてあったが、私には未だに信じられんよ。
いくら幻想郷と言えど、同じ日本だ。そんな所に重力を無視して飛べる女性が居て、……!?」

紫「――こんにちは、おじ様。空の上から失礼いたしますわ」

見上「………!?」

中西「(ほやから言いましたんに)」

――もっとも、頭の固い所のある見上はこの期に及んでも中西の報告を半信半疑に受け止めていたのだが。
流石の彼も、実際に恐ろしい程美しい少女が空を飛んで自身の眼前に降りて来た時には、
彼の報告が嘘では無かったこと改めて認めざるを得なかった。

紫「――幻想郷の皆さん。そして外の世界からのお客様方……御機嫌よう。私は八雲紫。
この美しくも懐かしき幻想郷を統べさせて頂いております、しがない境界の大妖ですわ」

やがてその少女は広場の中央へと浮かび上がり、
虹色に光る虚ろな瞳をきらきらと輝かせて、しゃなりとそう挨拶をしてみせた。
そして中西の言う通り、彼女は次なる戦いの幕開けを高らかに宣言した。


紫「――これより半年後。私八雲紫はこの幻想郷の地にて、日本を含めた世界15か国に加え、
ここ幻想郷の選抜チームを入れた、16団体による国際親善大会を開催する事を宣言いたします!
その大会の名は……!」


685 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/15(日) 23:51:00 ID:???
〜永遠亭・居間〜


鈴仙「――『幻想スーパーJr.ユース大会』、か……」

てゐ「参加国はかつてのJr.ユース大会に出場した12か国。
追加枠として中国、ブラジル……それと中東の良く分からない国の3か国。
それに加えて全幻想郷選抜チームを含めた16チームが、
今回の大会と同じようなルールで勝敗を競い合う大会らしいね」

パスカル「それは良いが……その追加3か国が選ばれた理由は何だ?
まさか予選大会が世界各国で開かれた訳でも無かろうに」

慧音「そこについては説明があったが……結論から言って、深い意味は無いようだ。
多分八雲紫側が日程を調整し切れた国3つが、ここだったんだろう」

つかさ「ブラジルは確か、外の世界の有名チームでしたよね。そこを調整するので手一杯だったのかもしれません」

妹紅「というか、幻想郷選抜チームは結局誰になるのかな?
順当に行けば、今日の大会のベストイレブンメンバーは当確っぽいだろうけど」

霞「えっと。それについては確か紫さんが、
『本選抜大会の結果及び各選手の過去の素行等を元に、総合的に判断する』らしいです」

輝夜「いよいよ堂々と胡散臭くして来たわね、あのスキマ。
今日の大会で負けても、その次ので勝つから別にいいや〜、とか思ってんのかしら」

永琳「……博麗の巫女が行方不明だって言うし。案外そうなのかもしれないわね」

686 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/15(日) 23:52:17 ID:???
――紫はあれから多くの観客及び選手。そして一部の外界の住人に対して大会の開催を宣言した。
彼女は生憎とスタジアムを修復してくれなかったが、
大会を開催する半年後までには今以上のスタジアムを建設する事で守矢の理解を得、
そこから大会の概要についての質問数点を聞いた後に、いつも通りマイペースにスキマへと消えて行った。
……相次ぐ大会中の事故に対する、観客達からの苦情を受け流しながら。

鈴仙達ルナティックスメンバーは疲れ切った状態のまま永遠亭へと取りあえず帰還し、
こうして紫が示した大会について意見を交わしているところだった。
そんな折、永琳が言った「行方不明」という単語にとりわけ強い反応を示す者が居た。

中山「…………」

佳歩「あ……。そういえば、森崎さんもあの崩れたスタジアムから行方不明になってるんでしたっけ……」

鈴仙「魔理沙も一緒にね。――まさか、あの程度でアッサリ死ぬ奴じゃないと思うけど」

それは中山だった。
森崎の大の親友である彼は、霊夢と同時に森崎が失踪したという事実に大きく心を痛めていた。

中山「……何、鈴仙さんの言う通りさ。
それに俺だって森崎のいる前で銃に撃たれたりもしてるが、今もピンピンしてるようなモンだ。
あいつだって今頃、どこかで上手い事やってるに決まってるよ」

勿論、中山はそれだけでふさぎ込む程弱い男では無い。
その相手が森崎となれば尚更だ。彼は森崎の事を誰よりも信じている。
ゴキブリ以上にしぶとい森崎の事だ。今頃自分や鈴仙に仕返しする為の奇策でも考えているに違いない。
中山は真剣にそう考えていた。……が、それでも心配という気持ちは完全には消えはしないものである。
しかし鈴仙はここで、中山に対してこれ以上気の利いた言葉を掛けてやる事ができなかった。

687 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/16(月) 00:01:10 ID:???
鈴仙「(……中山さんの事は心配だけど。今は私にだって、心配事がある)」

何故なら――鈴仙の本音としては、今は中山の事を気遣う程の心の余裕が無かった。鈴仙はチラリと永琳の顔を見る。

永琳「……」

永琳は氷のような無表情を崩さずに、小さくコクリと頷く。それが合図だった。

鈴仙「――ごめんなさい。私、先に部屋で休んでいるわね」

スッ……。

鈴仙は一同に会したチームメンバーを尻目に部屋を出た。そこから暫くすると永琳も同時に部屋を出て、鈴仙と目が合った。

永琳「――昼間の約束の件。覚えていてくれたのね」

鈴仙「……はい。忘れたくても、忘れられませんよ。気がかり過ぎて」

鈴仙は永琳と少しの会話を交えながら、彼女の研究室兼私室へと向かった。
……それが、今日の夕刻。紫が去った後の広場にて、鈴仙が永琳と交わした約束だったからだ。
永琳はあの時、こう鈴仙に話していた。

――こうなってしまった以上、私は貴女に全てを話す必要がある。今夜、私の部屋に一人で来て頂戴。
……そしてできれば、その場で教えて欲しいわ。貴女が今後、どうした道を歩みたいのかを。

ギィ……。

永琳は表面的には普段通りにドアを開けた。鈴仙は緊張を隠せないままにそれに続いた。
そして二人が研究室の椅子に座って、暫くしてから――永琳が、重々しくこう口を開いた。

688 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/16(月) 00:03:13 ID:???


永琳「鈴仙――ごめんなさい。私は今まで貴女を騙し、道具として利用してきました」



689 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/16(月) 00:15:55 ID:???
――と、いったところで今日の更新はここまでにします。
明日から暫くして、これまでの物語で謎だった永琳の思惑について明らかにしつつ、
これまでの論点を整理しながら、第二部のルート選択に入ろうと思っています。
ルート選択の際は、よりメタな情報を入れつつ、極力不公平が無いようにしたいと思います。

>>677
実際は引き裂かれた程じゃないですねw
このメンツだと、鈴仙は永琳を差し置いて女神になるのでしょうか。
>>678
紫と見せかけ藍ですかね…
>狂信者の塔について
リグルを連れてくと翼が仲間になります。(FF6感)しかしそれだとリグルパパはアサシンやってそうですね…
カグヤ狂信者の塔はポストで出来てそうですね。多分妹紅がバーサク状態で活躍してくれると思います。

それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

690 :森崎名無しさん:2015/11/16(月) 06:15:52 ID:???
れーせんはその代償として師匠の○○を奪うことにしたのだ...
浮き玉補正をあげるんDA!

691 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/17(火) 00:29:35 ID:???
すみません、続きが書き上がらないので今日は更新をお休みします(汗)

692 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/18(水) 01:02:43 ID:???
こんばんは、途中まで書き上がったので更新します。
>>690
今なら狂気度25ポイントで低い浮き球補正を4にできます(宣伝)

693 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/18(水) 01:05:07 ID:???
鈴仙「――あの。師匠、今まで私を騙したって。謝りたいって。その――ど、どうして……ですか?」

普段は冷静沈着。鈴仙に対しては上の目線から話す事の多い永琳が、
今この場で頭を下げた事に戸惑い、鈴仙はしどろもどろになりながら訊き返すが。

永琳「――私が謝りたい理由。それは私が自分の計画の為に、貴女の力を利用したから。
これまで色々と調子の良い事を言って、貴女に私の真意を見せないようにして、それで済むと思っていたけれど。
今日のような出来事が起きたとなれば、話が別だったのよ」

鈴仙「……師匠が謝る必要がある事は分かりました。
だけどやっぱり、状況が分からないと、私は何にも言えませんよ。
私の力ってどんな力ですか? 私の力を利用って言いますけど、師匠の計画ってどんな計画だったんですか?
今日の出来事は結局何なんですか? そして何より――師匠の真意は、一体何なんですか?」

自分の力が、永琳の壮大な計画を実行する為の道具として使われていた。
謝罪とともにそう告白された鈴仙だったが、怒りや同情や哀しみとかの感情は全く覚えない。
それ以前に、今の鈴仙には疑問符しか湧いてこなかった。

永琳「――一つずつ、答えていくわ。まずは貴女が持つ力について」

永琳の口調は相変わらず淀みない。
しかし、その言葉の端々には彼女らしからぬ人間的な後悔が見え隠れていた。

永琳「……もう誰かに聞いているか、それとも自分で調べているか分からないけれど。
この世に存在するあらゆるエネルギーは皆、なんらかの『波長』を持っている。
光も、音も、熱も、時間さえも。
私達の目には見えない波長の動きが折り重なって、複雑な宇宙を構成しているの」

研究机の上に規則正しく乗っている書類を並び替えながら、永琳はそう話す。
まるで普段の医学の講義のようだが、今の鈴仙は教科書を持っていない。

694 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/18(水) 01:06:32 ID:???
永琳「優秀な玉兎は、我ら月の民を模倣した、神にも近しい能力を備えている事が多い。
たとえば、人が触れざる異次元を操り、弾丸を撃ち放つ能力を持つ玉兎。
たとえば、「団子を食べる程に強くなる」等自己暗示を具現化させ、世界の秩序をも変革させる能力を持つ玉兎。
そんな中で貴女は、波長を管理・操作するという。玉兎の中でとりわけ優れた能力を持っている」

永琳の視線が机上の書類から鈴仙の瞳へと移る。先程までは後悔が見え隠れた視線を向けていたが、
今この時に限って、彼女の視線はまさしく神が全てを見通すかの如くだった。

永琳「私と初めて会った当時の貴女はまだ、その力を誇りながらも満足に使いこなせていなかった。
精々が他人の気質の波長を狂わせたり、五感の一部を狂わせるのみに過ぎなかった。
貴女はそれで満足していたでしょうけど……私はその時から、貴女の能力は「使える」と思っていた。
いずれ貴女が瞳を成長させ、より多くの波長――エネルギーをため込みコントロール出来るようになれば、
世界の大改変とて不可能ではない。……それが貴女の持つ力の、本当の意味よ」

日頃の口調よりは柔らかいとはいえ、永琳の口調は断定的だった。
鈴仙が何かを話すよりも先に、永琳は話題を鈴仙の力についてから、自身の計画の全貌へと移す。

永琳「そして、その事実に真っ先に気付いたからこそ――私は計画を始めた。
鈴仙・優曇華院・イナバを利用し、莫大なエネルギーを自らの管理下とするための遠大な計画を。

――もっとも、計画がどんなものであったかは、今の貴女もおぼろげに理解できる筈だけど……改めて説明しましょうか。
まず、この計画は三つの工程に分けられるわ。
一つ。膨大なエネルギーをため込んだ存在を貴女に引き合わせて、貴女の力を成長させる。
二つ。成長した貴女を利用しつつ、より大きなエネルギーを発生させる。
……たとえば、既存の秩序を打ち壊すような、歴史的勝利を果たすなどでね。
そして三つ。私が貴女の瞳に溜まった、莫大なエネルギーを回収する」

695 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/18(水) 01:07:34 ID:???
永琳「――この計画の結果については、貴女も良く知っているわね?
中山政男は、一つ目の工程を達成するためには充分すぎる存在だった。
二つ目の工程も、貴女は当初の心配を乗り越え無事に達成してくれた。
三つ目の工程については……語る必要が無いわね。
本当に技術的。失敗や成功も無く、私がいつでも手を下せるだけだから」

鈴仙「……私は」

そしてここまでの説明を聞き、鈴仙はこの時点で漸く、永琳が最初に謝った意味を理解した。
永琳は鈴仙の「波長を操る程度の能力」のポテンシャルを知っていた。
だからこそ永琳は、鈴仙のこれまでの物語を作り、演出した。
その行為がどれだけ許されざる事か。
――これまで人一倍の涙を流し、人一倍の喜びを味わった鈴仙は、
今日の災害の意味等に関する疑問符を消すよりも先に、永琳に噛みついた。

鈴仙「……私は結局。師匠の計画を達成するために、貴女の掌の上で踊り続けて来ただけなんですね。
私だけじゃない。中山さんも、パスカル君も、佳歩達も……もしかしたら、八雲紫や日向小次郎。豊聡耳神子でさえ。
師匠が作ってくれた、『私が主人公になれるストーリー』の筋書きに従わされて来ただけなんですね……!?
――プロジェクト・カウンターハクレイも何もかも。私の活躍や幻想郷の今後には興味がなく。
ただ単純に、私がその、波長エネルギーの優秀な器として成長する為の実験にしか過ぎなかった!」

永琳「……半分はノーで。半分はイエスと言えるわ」

鈴仙「……!」

永琳は鈴仙の反応を予想していたらしく、机上にあった無関係な診療録に視線を戻した。
神々に相応しい万能の目は、鈴仙が真実を見抜いた事により失われ。
そこには後悔に暮れる、年相応の女性が一人座っているだけだった。

696 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/18(水) 01:13:16 ID:???

永琳「ウドンゲ。確かに私は貴女を自分の目的を果たす為の道具として利用したわ。
そして、私は貴女がより優秀な道具となる為に様々な演出を施した。
結界の一部を緩めて、他者への強烈な影響力を持つ中山政男を貴女に引き合わせ、
外界に月の技術を漏らし、日向小次郎の野心を煽り立て、
八雲の式に幻術を掛け、結果としてアラン・パスカルをこちら側に引き入れた。
そして……本来は微々たる掠り傷にすらならない、ヒューガーの技術革新による境界否定力を僅かに増幅し、八雲紫へのダメージを強めた。
全ては、今大会を――ひいてはその次の大会を盛り上げて。
それにより生まれるであろう莫大なエネルギーを、貴女の瞳に溜め込んでおくための手段だった」

鈴仙「――だったら、本当に全ての始まりは、師匠だったんですね……」

永琳は静かに頷き――。

永琳「私には自信があったから。未来を見通し、全てを意のままに操り。
そして、誰一人傷つかぬままに鈴仙のみが円満に成長し、最終的には私の目的は穏便に達せられる筈だった。
だけど、現実は違った。今日の大会後に起こった出来事が、私の計画が想定の範疇を越えた事を証明していた……。
――もう一度言わせて貰うわ。ごめんなさい、鈴仙。
私は、貴女を道具として利用する為に貴女を騙し続け、お仕着せの物語を提供して来た。
これからの事について語るにせよ、そうでないにせよ。
私はこの点について、まず誰よりも貴女に謝罪する必要があるわ」

そして、土下座とは行かずとも、深々と頭を下げて鈴仙に許しを乞うた。
それは恐らく永琳の永い永い人生においても初めての事だろうと思った。

697 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/18(水) 01:22:46 ID:Hxgm0fA2
鈴仙「(……師匠が私に。いや、誰かにそこまで頭を下げられる姿なんて見た事が無いわ。
私への謝罪だけじゃない。それだけに師匠が引き起こした事が大きかったという事なの……?
――そして私は。師匠の話を聞いて、何て答えれば良いのかな……。私は師匠を許して良いの、それとも……駄目なの?)」

鈴仙はそんな永琳に対して、何と声を掛けるべきか悩んだ。
自分が今、永琳に対して何を想い、何を望み、何を聞きたいのか。
それらが一斉にスクランブルして、中々言葉に出来ないでいた。

鈴仙「……」

――しかし、そんな中でも鈴仙は辛うじて永琳に対し、こう一言を告げる事ができた。
その言葉は……

A:「――仮にこれまでの話が師匠の筋書き通りだったとしても。私は、楽しかったですよ?」
B:「師匠。私は……貴女を許します。だから、真実を話して下さい」
C:「師匠を許すかどうかは、全てを聞いてからです。続きを話して下さい」
D:「謝るのは私じゃないです。私以外の皆も――必死だったんですから」
E:「ふざけないで下さい! もしそうだとしたら、貴女のせいで多くの人が苦しんだんですよ……!?」
F:その他 永琳への質問については後で纏めて受け付けます。

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

―――――
…と、いったところで今日の更新はここまでです。
色々書きましたが要するに、「これまでの展開は大体永琳のせい」……って感じです。
皆さま、本日もお疲れ様でした。

698 :森崎名無しさん:2015/11/18(水) 01:25:36 ID:Wkf+/WeU
Aこれも鈴仙って奴の仕業、黒幕はパスカル、大体永琳のせい
容疑者が更に増えた

699 :森崎名無しさん:2015/11/18(水) 01:25:45 ID:4ku5VUNM

乙でした

700 :森崎名無しさん:2015/11/18(水) 01:27:16 ID:rxSzhtTY
A
利用されていただけにせよこれまでに生まれた絆は作り物ではないはずだ。

701 :森崎名無しさん:2015/11/18(水) 01:27:54 ID:I5YLDKhU
D
乙なのです

702 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/19(木) 01:15:40 ID:???
こんばんは、更新再開します。
>>698
永琳→中山→鈴仙の流れがあって、パスカル君がこれに全体強化呪文を唱えてるような感じですね。
>>699
乙ありがとうございます。
>>700
そうですね。第二部では鈴仙がこれまで築いた、幻想郷の住人との関係性が大事になると思います。
>>701
乙ありがとうございます。

703 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/19(木) 01:16:59 ID:???
A:「――仮にこれまでの話が師匠の筋書き通りだったとしても。私は、楽しかったですよ?」

これまでの物語の全ては、永琳によって仕組まれた物である。
そう聞かされた鈴仙は最初、途方もない徒労感を覚えた。
しかし一方、徒労感を覚えたにしては、永琳に対して殆ど怒りを感じていない自分に、鈴仙は気付いた。
それは一体何故だろうか。――少し考えてみれば、その理由は簡単だった。
如何に鈴仙の物語が誰かによって造られたものであったとしても、
その物語を生き抜いた鈴仙自身の感情は、努力は、友情は、紛れもない真実だったからだ。

鈴仙「――仮にこれまでの話が師匠の筋書き通りだったとしても。私は、楽しかったですよ?」

永琳「……え?」

……だから、鈴仙は永琳に向かってにっこりと笑って、そう答える事ができた。
そして永琳にとって、そんな鈴仙の笑顔はあまりに予想外だったのだろう。

永琳「――貴女。これまで私が言った事を碌に聞いていなかったの?」

鈴仙「聞いてましたよ。それでも、私はこれまで楽しかったって言ってるんです」

永琳「……その暢気さは、巫女にでも似たのかしら?
暢気だけならまだしも、あんたはその上単純なんだし。そんなんじゃ、何時悪い人に騙されるか……」

鈴仙「す、すみません(――あ、あれっ? さっきまで師匠が謝ってた筈なのに。
なんで今、私が謝ってるんだろ……?)」

永琳は思わず素に戻り、まるで普段のお説教の時のように鈴仙を叱りつけてしまう。
鈴仙も条件反射でペコリと頭を下げてしまうのだが、何かがおかしい気がする。

永琳「――おっと。話が逸れてしまったわね。……ごめんなさい」

鈴仙「いえ、大丈夫です……。ご指導ありがとうございます……」

704 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/19(木) 01:18:13 ID:???
説教は数分の後に終わった。
永琳も鈴仙も、何だか釈然としない表情で会話を再開しようとするが、何だかしまらない。
今までの永琳の謝罪が嘘だったかのように、場の雰囲気は和らいでいた。
それは、今までの何気ない、普段通りの日常は、永琳にとって何よりも換え難い救いであった事を示していた。

永琳「……ありがとう、ウドンゲ」

鈴仙「――えっ? し、師匠? 今何か仰いましたか……?」

永琳「何でもないわ。……それより、話を進めましょう」

鈴仙「あっ、はい(師匠の顔、少しだけど明るくなった気がする。
……いつも通り、氷みたいに冷たい表情だから分かりづらいけど)」

――そしてだからこそ、永琳はこれまでの罪を清算する為に、これからの事を鈴仙に話そうと思えた。

永琳「……これからは、今この幻想郷に何が起きているのか。そして――これから何が起こり得るのかを話すわ」

鈴仙「……はい」

永琳は再び淡々と話を再開する。その表情にはもはや陰りは無く、代わりに決然とした強い意思が感じられた。

永琳「まず第一に話しておきたいのは、この決勝戦が終わるまで、
私の計画はほぼ完璧に。いや――予想以上に上手く運んでいたわ」

研究室のランプが二人を冷たく照らす中、永琳はまずそう断言した。

永琳「貴女の瞳は私の想像を越えて、様々な波長を溜め込み成長し。
果ては中山政男以上に強力かつ危険な、森崎有三を抑えるに至った。
だから、大会で私達ルナティックスが優勝し、幻想郷全体の価値観が狂う事になったとしても。
貴女の瞳はその価値エネルギーの暴走を、完璧に抑えるに違いないと思っていた。……実際は、違ったけれど」

705 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/19(木) 01:20:53 ID:???
永琳の説明を聞いて、鈴仙はスタジアム入口での早苗との話を思い出していた。
――彼女が言うには、今回の正体不明の爆発は、世界の新生の際には必ず起こり得る災害である。
古くはノアの大洪水。最近では外界でも起きた大地震と同じような出来事が、この幻想郷でも起こっているのだと。
永琳が言う価値エネルギーの暴走とは、早苗が言う新生<リーインカーネイション>の事を指すのだろうか。
永琳は早苗の説明を補足するかのように続ける。

永琳「――永遠亭ルナティックスが、優勝候補筆頭の博麗連合に勝利した。
努力の天才である中山政男が、才能の天才である博麗霊夢に勝利した。
この事実は確かに幻想郷にとっては大きい事だけど、しかし本来はエネルギーの暴走が生じる程ではない。
仮に生じたとしても、その程度は貴女がこれまで体験して来た狂気と比較しても、制御不能になる程には成り得ない。
ましてや幻想郷の結界が完璧に破られる事は、ある筈も無いの。

なのに今、そのあり得ない事が起きている理由。それは簡単。
――私達の勝利というエネルギーに反応して、より強大なエネルギーが目覚め、あの場所に萃まったからよ。
そのエネルギーがあまりに強大過ぎたから、貴女の瞳から波長が溢れた。
結界は破れ、結果として新たな新生が起きた。
そして一連の結果、行き場を失ったエネルギーは物理的な破壊の形を取った。
たったそれだけの事であり。そしてその事こそが、私の最大の誤算だった」

鈴仙「よ、より強大なエネルギーって……。
また師匠のお友達の、ドコドコ喧しい白痴の魔王さんとか、長い踊りが趣味の統合思念体さんとかですか?」

永琳「それに似た類……いや。もしかしたらそいつらよりももっと厄介な存在かもね」

鈴仙の冗談に対し、永琳は自嘲的な笑いを浮かべて言った。

永琳「そのエネルギーは、――『彼女』は、名前があり名前が無い存在。
唯一無二の存在でありながら、どこにでも存在しうる。姿を保てない程微弱な癖に、鮮烈な美貌を誇っている。
あまりに醜悪で唾棄したい存在でありながら、誰もが皆彼女を愛し、その存在に魅了されている」

鈴仙「あの、えっと……なぞなぞですか?」

706 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/19(木) 01:27:21 ID:???
永琳「生憎と、冗談じゃないわ。私は的確に『それ』を表現しているだけ。
――前に現れたのがもう数千年前だったし。
綿月姉妹を始めとする、信頼のおける月の民にも監視させていたから、安心しきっていたのだけれど
……ウドンゲ達が生んでくれた大きなエネルギーと。
そのエネルギーを激しく憎んだ、とある女性の想いに反応して――『彼女』は、この地に降臨してしまった」

永琳はここで一旦話を切って、周囲を見渡した。

永琳「――さて。ここから先の話は、この子だけじゃなくて、貴女にもしておきたいのだけれど」

永琳は誰も居ない研究室の暗闇に向かってそう言った。鈴仙は一瞬何事かと思ったが、すぐに永琳がそうした理由を理解した。
――何故なら、その暗闇には既に誰が潜んでいたからだ。

スッ……。

暗闇が切り取られ、グロテスクな瞳が散りばめられた空間の隙間が現れる。
端と端とをリボンで結びつけられたその隙間の装飾に、鈴仙は見覚えがあった。

鈴仙「えっ……。ま、まさか八雲紫……!?」

??「――まさか、そんな事が。しかし、貴女の言う通りだとすれば、全て説明が付く……」

――しかし、その隙間を縫って現れた女性は、鈴仙の想像とは違った。
確かに彼女もまた、八雲紫に似た金色の髪をしていたが、背丈からして違う。
藍色の導師服を僅かに揺らし、焦りを含んだ表情でその空間が出て来たのは九尾の狐。そう、彼女は――。

永琳「……こんな時間に悪いわね、……八雲藍」

藍「とんでもございません。むしろ、私にも聞かせて下さい。紫様に。そして幻想郷に今、何が起こっているのかを……」

――藍は恭しく永琳に礼をして、鈴仙の隣に立つ。
妖怪の賢者に仕えし式神は、主がかつて愛した境界の術式を用いて、主に代わって幻想郷を守るべく動いていた。

707 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/19(木) 01:32:14 ID:???
…と、いったところで今日の更新はここまでです。
皆さま、本日もお疲れ様でした。

708 :森崎名無しさん:2015/11/19(木) 10:34:55 ID:???
乙でした
なるほど……つまり答えは「ロベルト本郷」ですね?

709 :森崎名無しさん:2015/11/19(木) 23:18:44 ID:???
そうか・・・「ロベルト本郷」とは・・・!

710 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/20(金) 01:34:06 ID:???
こんばんは、ほんの少しだけ更新したかったのですが、
仕事が忙しかったので、明日にブラッシュアップして更新したいです。
ただ、明日の夜は飲み会で、土日は旅行なので、場合によっては暫く更新できないかもです(泣)
>>708
乙ありがとうございます。BADENDまっしぐらですねw
>>709
残尿の妖精か何かじゃないですかね…

711 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/23(月) 00:25:03 ID:???
こんばんは、旅行から帰って来たので少しですが更新再開します。
最近更新が空いていたので、これまでの状況を三行でまとめました。
・鈴仙率いるルナティックスが霊夢率いる博麗連合を破り、全幻想郷大会に優勝
・しかし、大会後紫の様子が激変。それと同時に結界が破れ災害が発生
・その夜、これまでの展開は永琳が原因で、永琳すら看破できぬ存在が居る事が発覚。その正体は…と、いう時に藍が乱入

712 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/23(月) 00:28:03 ID:???
鈴仙「ど――どうして、貴女がここに。それに、そのスキマ……」

藍「……話せば長くなる。私はただ、月の賢者の知恵を借りに来た。それだけさ」

あくまで平静を装って、藍は小さくかぶりを振って答えた。
鈴仙にとって、藍は単なる顔見知りではない。
全幻想郷選抜大会の予選リーグ最終戦の終了後。
鈴仙は藍に呼び出され、そこで彼女の想いを聞いていたからだ。
藍はその場で、鈴仙にこう請願していた。

――鈴仙。私は君に……紫様考案の『リアル・幻想・セブン』計画の一員となって欲しい。
そして、その上で――紫様の計画を、打ち砕いてはくれまいか。

鈴仙「(リアル・幻想・セブン計画。それは乱心した八雲紫が考えた、
霊夢の為に弱者を嘲笑って下敷きにする、悪趣味で狂った計画。
だけど藍さんは、その計画に自身が選んだ伏兵を忍ばせようと目論んでいる。
――その伏兵によって、計画を変え、八雲紫を変え、そして……幻想郷を取り戻そうとしている)」

藍もまた、自らの信念に基づき奮闘している。そのために彼女は永琳の元を訪れたのだろうか。
そんな鈴仙の内側の問いかけに答えるように、藍はこう言った。

藍「率直に言いましょう。八意永琳、私は貴殿の智恵を借りたい。
我々共通の敵であろう、八雲紫を演じる『何者か』の正体と、その対策について」

永琳「……そういう風に聞くという事は。貴女は八雲紫がもはや、八雲紫では無いという事を認識しているのね?」

藍「ええ。――始めは、信じたくありませんでしたが。
今晩。紫様の象徴でもある、この隙間を操る術式すらも不要と切り捨てた時点で、私の不信は確信に変わりました」

永琳「――そう。もう既に、そこまで進行していたとはね。
だとすると、貴女がこの会話を嗅ぎ付けたのは、中々聡明だったと言えるわ」

713 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/23(月) 00:29:20 ID:???
永琳の冷たい視線に臆することなく、藍は力強く頷く。
その永琳もまた、何を考えているのか読み取れない表情を僅かに暗くして頷き返した。

鈴仙「――え。八雲紫が、八雲紫じゃないって。どういう事ですか……?
大会後に広場に降り立っていましたけど、あの胡散臭い少女は間違い無く、八雲紫でしたよ」

そしてこうなると、八雲紫を詳しく知らない鈴仙は途端に話題に入り辛くなった。
紫が鈴仙の成長や、プロジェクト・カウンターハクレイ――幻想郷の秩序を変える事を目的とする計画
――を疎んじていた事は知っているが、鈴仙本人と紫との関係は薄い。

鈴仙「師匠がさっき言いかけた、正体不明・実体不明の『彼女』。
それが今、八雲紫の人格を乗っ取っているとか。そんな話なんですか?
その、さっき言ったように。紫が私とか中山さんが生んだ波長のエネルギーを憎んだ事が原因で……」

鈴仙はこれまでの話を纏めるように、恐る恐る切り出した。
自分では荷が重い話だと思って知らんぷりを決め込まない程には、鈴仙は成長していた。
永琳は鈴仙にこう答える。

永琳「ウドンゲ。それは概ね正しいし、貴女にしては名推理だけど。
だけど、それだけじゃ少しだけ足りないわ。
何故なら、私の計画に生じた巨大なイレギュラーには。――『それ』には、人格が無いのだから。
だから『それ』は八雲紫の人格を乗っ取ったというには、正確ではない。
強いていうなら、八雲紫の方が変わってしまったの。『彼女』を受け入れられるようにね」

藍「……紫様は変わってしまった。それにより、貴女が言う『それ』『彼女』なる、
強大なエネルギー体を受容できるよう、自ら在り方を変えてしまった。――貴女は、そう仰ると」

永琳は静かに頷く。鈴仙は当然、パッと聴いてその両者の仔細な違いについて分からなかった。
そのため、

鈴仙「――なら、一体さっきから出て来る『それ』とか『彼女』って一体何なんですか?」

714 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/23(月) 00:49:10 ID:???
鈴仙は永琳に対して半分詰め寄るよう、こう切り込んだ。
そこで永琳は漸く、先ほど話しかけたイレギュラーについて語り始めた。

永琳「――『それ』は、地上の民の言葉では『憎しみ』を意味するわ。……いや、あるいは『絶望』かしら」

鈴仙「『憎しみ』や『絶望』……? 八雲紫は、そんな曖昧な物に影響されたとか。そういう話なんですか?」

藍「いや、それは在り得ない。私の知る紫様は、そんな陳腐な概念に惑わされなどしない!」

永琳「――そう。貴女の知る八雲紫は、そんな陳腐な概念に惑わされはしないわ。
だけど、今回の件はそんな陳腐な物では無い。古くは月の歴史から生まれ、
数億年の時を経て純化された、完全かつ純粋なる狂気によるもの。
……通常ならば瞬間で自我を崩壊させる筈が、中身は兎も角、ああも原型を保っていられるのは、
八雲紫の精神力が、かくも強靭だからに他ならないわ」

藍「成程、しかし申し訳ない。話の腰を折ってしまったようだ。……しかし、月の歴史、とは?」

途中に藍が横槍を入れる事がありつつも、進み始めた会議は穏やかに進む。
しかしそこから永琳が話した内容の全ては鈴仙は勿論、藍ですら知らない事であった。

永琳「――月には一切の穢れが存在しない。しかし、そこには矛盾がある。
それは即ち、穢れある生を享受しておきながら、月の民はその穢れを嫌い、忌避すること。
一応は生ある者が、自らの生の象徴たる穢れを否定すること。
我らのその傲慢さは過去、月を発展させると共に――その影で、永劫続く、多くの憎しみを生み出して来た」

715 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/23(月) 01:02:22 ID:???
藍「――月の成り立ちについては、かつて紫様から話を聞いた事がある。
……しかしそれがどう、今の話と関係が?」

永琳「月の民はかつて、どうしようも無く地上に溜まった消せない穢れを一点に集めていた。
しかし、その穢れはやがて溢れて暴れ出し、やがて統合した存在として、一柱の神霊を生んだわ。
世界に絶望し、激しい憎悪のみを糧として生きる。月の神々を以てして、莫大過ぎる力を持つ神霊を」

鈴仙「し、神霊……? 神霊って、神として崇められている亡霊とか幽霊とかですよね。
排除され迫害され、集められた穢れが一つの人格を取るという話自体は、無くも無い事ではありそうですが……?」

藍「――その存在意義を否定され、裏切られた事による怒りや憎しみから生まれた、純粋な感情の発露。
しかし、その感情には確固たる意思が無く。ただ消失するまで永遠に、他者を憎しみ続けるだけの存在。
成程。それなら確かに境界を操作する必要すら無くなるか」

永琳は深く頷き。


永琳「怒りや憎しみの暴走による、大いなる穢れと破壊の発生。
それは我々月の民を戦慄させ、場合によっては仲間同士の血で服を汚した事すらある。
……そう。何故そうだったかは忘れたけれど。私達はその厄災を、『純狐』と呼んでいたわ」


――そして彼女は溜息を吐いて、此度の異変について名称を与えた。


716 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/23(月) 01:04:20 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
皆さま、本日もお疲れ様でした。

717 :森崎名無しさん:2015/11/23(月) 07:58:53 ID:???
む、難しい話だ・・・!チルノ!ついていけてるか!?(H並感)

718 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/24(火) 00:15:56 ID:???
こんばんは、今日も仕事がありましたので今から少しだけ更新します。
>>717
後で読み返して、ちょっと勿体ぶり過ぎて論旨が行方不明になってる感が自分でもしましたね(汗)
適宜これまでの話を簡潔に纏めながら、最終的には分かり易い方向に話を持って行きたいです。

719 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/24(火) 00:17:55 ID:???
鈴仙を利用して莫大なエネルギーを得ようと画策した永琳。
計画は途中まで思い通りに進んだが、正体不明のイレギュラー的な存在が紫に介入し、事態は深刻化した。
そのイレギュラー的な存在とは即ち月に封じられし強大な怨念であり、『純狐』と呼ばれているらしい。
……ここまでの話を要約すると、こうなるだろうか。
しかし永琳はここまで長く語ってなお、肝心な点を未だ明かしていない。

藍「紫様を狂わせ、変貌させたのは『純狐』たる月の狂気。それは良く分かりました。
しかし、失礼ながら私が知りたいのはそれだけではない。
――私は、どうすれば紫様を元に戻せるのか。その具体的な方法を知りたいのです」

紫の狂気の、幻想郷の危機の原因については良く分かった。
では、その原因に対し我々はどう対処すれば良いのか。
藍が今一度切実に永琳に問いかけた事は、今回の話の核心だった。

永琳「狂気とは即ち、常軌を逸した波長の集合体を意味する。だから、その波長を中和し、分解してしまえば問題無いわ」

そしてこれまでの長い説明とは裏腹に、核心について永琳は単純に応えた。
また、永琳が意図的に答えなかった『どうやって』に対する答えについても自ずと示されていた。
――少なくとも鈴仙にとっては、示されているように思えた。

鈴仙「――師匠。その波長を中和して分解するって言うのは、ひょっとして……」

永琳「……ええ。貴女がこれまでに瞳に蓄えて来て、これからも蓄えるであろう狂気の波長。
その全てを、純狐を受け入れた八雲紫にぶつけてしまえば良いのよ。
――具体的には、八雲紫が示した次の大会。
『幻想スーパーJr.ユース大会』に優勝し、その時の観客の熱気を貴女が独り占めすれば良い」

強敵を倒し、八雲紫の企みを押しのけ、鈴仙が次の大会でも優勝すること。
それこそが純化された憎しみに駆られる紫を救い、幻想郷を――世界を守る事になると永琳は言う。

720 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/24(火) 00:19:28 ID:???
永琳「逆に、もしも次の大会で八雲紫の本来の目的――幻想郷における妖怪の人間に対する優位の証明
――が正しく達せられたとしたら、その際に発生したパワーは鈴仙では無く、八雲紫に――引いては純狐に渡るでしょう。
そして恐らく、純狐はいよいよそのパワーを利用して完全なる純化を遂げ……。
――その暁には、地球上の全生命は、彼女の憎しみを前に皆死に絶えるでしょうね」

鈴仙「それって、つまり。その……」

永琳「ウドンゲ、貴女はサッカーで世界を救うのよ。比喩では無く、字義通りに」

鈴仙「え、えぇーっ……」

つい情けない声を漏らしてしまう鈴仙。……しかし、普通に考えて、身も蓋も無い話だと思う。
世界の、全人類の生命が、自分のサッカー大会の成績に左右されると永琳は言ったが、
流石の鈴仙も今の話以上の無理難題を吹っ掛けられた事はない。
無論、この話が冗談では無い事は、これまでの出来事や永琳の説明から理解できるし、ある程度の覚悟もある。
……しかし、いざその核心を提示されると、どうしても情けない声の一つくらい上げたくなるのが、
如何に成長しても、どうにも変わりようが無い鈴仙らしさの一端でもあった。

――あの、師匠。お話は分かりましたが、ちょっと頭を整理させてくれませんか……?
鈴仙は取りあえずそう言おうとした。しかしそれは途中で遮られる。

藍「――待って下さい」

永琳「……何かしら?」

今回に限っては永琳の他にもう一人、第三の人物が居たからだ。
藍は困惑する鈴仙を庇いながら、永琳に確認を取っていく。

藍「今の貴殿の話を聞くと、@鈴仙は兎に角大会で優勝し、A紫様の目的を打ち砕けば良い。
では、その@とAの条件を達せられるならば――その過程については不問という事で良かったですね」

永琳「ええ」

721 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/24(火) 00:21:21 ID:???
藍「つまり、@とAの条件達成は同時でなくとも良い。例えば、先にAの条件だけを達成し、
後で@の目的を達成しても良い……と、いう考え方で良いと」

永琳「……ええ。だから例えば、貴女が何等かの方法で八雲紫を黙らせておいて。
その上で、鈴仙にのみ波長エネルギーが集中するよう便宜を図ってくれれば、全く問題が無いわ」

鈴仙「あ、あの。藍さん。一体何を……」

鈴仙の問いかけにも答えず、藍は数点永琳に確認を取り、
永琳は何かを見透かしたかのように正直かつ具体的に応えていく。
そこから藍は暫く考える素振りのみを見せ。
――最後に彼女は鈴仙の肩を取りながら永琳に対して、最後にこう確認した。

藍「……ならば。鈴仙は必ずしも、貴女が今なお推し進める計画。
【プロジェクト・カウンターハクレイ】計画に肩入れする必要は無く。
私が考える、【リアル・幻想・セブン】計画の一員として活躍して貰っても、
純狐の制圧という、我々共通の目的達成には……全く問題が無いという事ですね?」

永琳「…………ええ。そうね」

鈴仙「……!」

藍は豹変した紫に関する、永琳の知識を聞きに来たのは間違いない。
しかし、藍が永琳を訪問し、永琳がそれを受け入れた事にはもう一つ大きな理由があったのだ。

鈴仙「(師匠と藍さんは、私を確かめているんだ。
両方の立場を選んでも大勢に問題が無いと確認した上で。私が幻想郷に対して、自分自身に対して何を想い。
そして、これから先はどんな道を進みたいと考えているかについてを――)」

これから待ち受けるであろう運命の選択を前に、鈴仙は人知れずゴクリと唾を飲んだ。

722 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/24(火) 00:25:08 ID:???
永琳「ウドンゲ、貴女はサッカーで世界を救うのよ!」
鈴仙「えぇ…(困惑)」
藍「たしかに世界を救うのは勝手だがそれなりのやり方があるでしょう?」
…と、言ったところで今日の更新はここまでにします。
早くて明後日くらいには、やっとこさ第二部のルート選択に行けると思います。
(選択前には、質問タイムを設けようと思います)

それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

723 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/25(水) 01:05:07 ID:???
永琳「……八雲藍。貴女も中々、主に負けず劣らず抜け目が無いわね。
単に私から情報を得るだけでは終わらせないのは、純粋に見直したわ」

藍「貴女は賢い。そして賢い者の発言は人を大きく動かす。
私は単純に、彼女が中立的な観点から選択をしてくれる事を祈ったまでです」

藍の質問の意図を最初から完璧に把握していた永琳は、謙虚そうに首を小さく横に振る藍を見て薄く笑った。
しかしその藍にしてもさしたる動揺はない。彼女もまた、最終的にはこうした展開になる事を予測しているようだった。

鈴仙「……そういえば、師匠も試合開始直前に言ってました。確か、この試合が終わったら……」

そして、鈴仙も思い出す。今日の昼間、博麗連合との試合開始直前に永琳が言い残した事を。

『――この試合が終わったら。私は貴女に問うわ。果たして貴女が、どちらの道を往きたいと考えているかを』

永琳「……ウドンゲ。私が話せる事はもう終わってしまったわ。後は貴女の話を聞く番」

永琳は薄い笑いを崩さぬまま鈴仙の方を向いてそう言った。
藍もそれに同調して、やや緊張した顔をこちらに向けた。

藍「――今この世界はとある月の狂人の意志により、滅ぼうとしている。
それを止める手段は、鈴仙。君が次のサッカーの大会で優勝するしかない事は、八意永琳が説明してくれた。
――ここで私が君に聞きたい事は一つだ。『君は、どのような方法で世界を救ってくれる』?」

鈴仙は、どのような方法で世界を救うべきか。
藍のこの宣言を待って、永琳は穏やかながらも厳格に話を続けた。

724 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/25(水) 01:06:31 ID:???
永琳「……今、貴女の前には丁度二つの道が示されているわ。
一つは、私とともに【プロジェクト・カウンターハクレイ】のキャプテン候補として参加し、
幻想郷の秩序に一石を投じる者として、大会の優勝を目指すこと」

藍「そしてもう一つは、【リアル・幻想・セブン】の一員となって貰い、
内側から紫様の計画を崩しつつ大会で優勝することで、
今までの幻想郷の秩序を守りつつも、より良き世界を創る為の礎となること」

永琳は左手を、藍は右手を鈴仙の前に差し出しながら、改めて各々の立ち位置を表した。
革新か保守か。創造か再生か。二人の立場は共通の敵を前にしてもなお、正反対だった。

永琳「私は最初、貴女を利用して得たエネルギーを、もっと悲しい事に使おうと思っていた。
だけど、貴女が中山政男と触れて成長し、色んな人や妖怪と関わっていく中で――私の心境に変化が生じた。
貴女と、貴女を取り巻く世界の変化を楽しみたい……と。本気でそう思えるようになった。
これは嘘や策略じゃない。純粋な気持ちよ。
だから。――もしも貴女が、私の推し進める【プロジェクト・カウンターハクレイ】を選ぶにせよ、選ばないにせよ。
その気持ちの証拠を、後で貴女に渡したいと思っているわ」

鈴仙「……師匠」

永琳がそう静かに想いを告白してもなお、怯えた鈴仙の心は未だ動かない。

藍「――鈴仙。君が今まで暮らして来た幻想郷はどうだった。確かに課題はあるかもしれない。
しかし、多くの妖怪や人間が君に向けて来た笑顔は、決して嘘では無かった筈だ。
八意永琳の計画の趣旨は分かる。ただ私はそれでも、今ここにある幻想郷を大事にしたいんだ。
……君が仮に、【リアル・幻想・セブン】計画に賛同しなかったとしても、
私は別の立場から君の事を陰ながら応援したいと思っているし、決して邪魔はしない、させないと約束する。
――無論、正々堂々な試合の場なら、どうなるか分からないけどね」

鈴仙「……藍さん」

藍が穏やかながらも情熱的に幻想郷への愛を語っても、鈴仙の様子は同様だった。

725 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/25(水) 01:09:54 ID:???
藍「……決めかねて。いや。それ以前に酷く怯えているようだね」

永琳「――今この場で答えろとは言わないわ。だけど、明日の朝にでも答えを頂戴。
幻想郷の結界が壊れてしまった以上、私達の身にいつ、何が起こるか分からないのだから」

鈴仙「……すみません」

本当ならば、勝手に選択を強制する二人に対し、鈴仙は怒っても良かったのかもしれない。
しかし鈴仙は謝った。意見こそ違えど、強い想いを持つ永琳と藍が眩しく見えたからだと、後で鈴仙は思った。

永琳「……私が選んだ道を進んだとしたら。あるいは、八雲藍が選んだ道を進んだとしたら。
大まかにどういう事になるかは、こっちの方で表に纏めさせて貰ったわ」

藍「もしも質問があったら受け付けるから、しっかり目を通しておいて欲しい」

鈴仙「(い、いつの間に……)」

鈴仙は去り際、藍と永琳に見送られて一枚の紙を貰った。
これはどうやら、【プロジェクト・カウンターハクレイ】と【リアル・幻想・セブン】。
それぞれのルートに関する簡単な説明書きだった。紙には、こう書かれていた。

726 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/25(水) 01:11:39 ID:IH0FTKhg
===鈴仙奮闘記 第二部ルート選択===
@:プロジェクト・カウンターハクレイ(PCH)ルート
(概要)
 ・鈴仙は永琳達の元を離れ、ヒューガー傘下の新チームに加入します。
 ・目的は全幻想郷チームを破り次の大会で優勝し、幻想郷の秩序を新しくすること。
 ・仲間は鈴仙+プレイヤーが選んだチームメイト14名+固定仲間2名
  (14人はプレイヤ―側である程度自由選択可)
(長所)
 ・仲間の数が少ないため、個々の仲間を掘り下げたストーリー展開となります。
 ・プレイヤーで選べる選手の枠が多いため、気に入ったキャラを入れられる可能性が高いです。
(短所)
 ・個々の仲間の育成自由度については、RG7ルートよりも低くなります。
 ・全体的に選手が弱め+チームメンバーが少ない分、難易度は高めかもしれません。
 ・永琳とは別勢力になるため、鈴仙は自分で新たな大目標を立てる必要があります。

A:リアル・幻想・セブン(RG7)ルート
(概要)
 ・鈴仙は乱心した紫が率い、味方である藍が補佐する、全幻想郷選抜チームに加入します。
 ・目的は紫や霊夢と和解しつつ次の大会で優勝し、結界の安寧を図ること。
 ・仲間は鈴仙+紫と藍が選んだ6名(…という体で、実際はプレイヤー側である程度自由選択可)
   +幻想郷代表メンバー22名(基本固定ですが、選ばれたRG7メンバーに応じて一部変動)※第三章途中で7名選抜落ち
(長所)
 ・仲間の数が多く、育成自由度が高めのため、気に入った選手を幅広く育成することができます。
 ・全体的にメンバーが充実している分、難易度は低めかもしれません。
 ・永琳は代表メンバー内定予定のため、当初の大目標通り、鈴仙は永琳に並び立つ事ができます。
(短所)
 ・鈴仙が自由に選べる仲間の枠はPCHルートより狭まり、また弱い選手は選抜落ちの危険性があります。
 ・ストーリー展開については、キャラが多い分広く薄く感じてしまう可能性があります。

※共通事項※
・PCHとRG7で鈴仙が選べる選手については固定(14人選べるか6人選べるかの違いです)
・キャプテンについては両ルートとも、第四章には鈴仙固定。第三章は一部を除き判定等あり。

727 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/25(水) 01:24:15 ID:IH0FTKhg
鈴仙「(相変わらず師匠特有のメタ言語が散りばめられてて、読みづらいわねぇ……)」

質問があれば、この場で答えて欲しいと永琳達から要望があったため、
鈴仙はこの紙に書いてある『ルート選択』なる今回の決断に関し、色々と質問をしてみようとすると、
永琳が頼まれもしないのに突然雄弁に喋りだした。

永琳「聞かれそうな事として、先に答えておくと。……

Q:14名もしくは6名の選手はどうやって選抜予定?
A:前のヒューガー戦前のような方式(仲間候補をこちらで提示。選択・判定の結果で仲間に加入)を考えています。

Q:霊夢やパチュリーのように、全幻想郷選抜入り確定(予定)の選手はPCHに誘えない?
A:その選手の格や鈴仙との友好度によって異なります。強い選手でも鈴仙との親睦やその人のキャラ次第では勧誘可です。
  逆に一部選手はイベントの都合で、選抜入り予定が無くても誘えなかったりします。

Q:紫が嫌がらせで、PCHルートで仲間になってくれそうな中堅キャラを全幻想郷選抜入りさせない?
A:そこはありません。プレイヤー側でキャラを選んで貰い、その余りで紫が全幻想郷選抜チームを作るイメージです。

……とりあえずは、これくらいかしらね。他にも質問があれば、気軽にコメントをしてくれると嬉しいわ」

鈴仙「(師匠は一体誰に向かって何を喋られているんだろう……。――ま、まあ兎に角。
折角の機会なんだから、色々と質問事項を考えておかなきゃね。えーと、えーと……)」

そんな様子な永琳を尻目に、鈴仙は真面目に質問について考える。
その内容は――。


※※※以下、コメントにてフリー質問タイムを設けます。可能な限りお答えしますので、お気軽にコメントを頂ければ幸いです。※※※



728 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/25(水) 01:26:13 ID:???
――と、言った所で今日の更新はここまでです。
フリー質問タイムは次の更新まで(多分明日深夜?)を考えておりまして、
次の更新時に、多数決でルートを決定したいと思っています。
それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

729 :森崎名無しさん:2015/11/25(水) 11:51:53 ID:???
乙なのです
いよいよ選択の時……!

質問
◯勧誘失敗した場合、失敗したキャラをチームに加入することができなくなる以外にデメリットはありますか?

730 :森崎名無しさん:2015/11/25(水) 16:46:43 ID:???
前の質問の際に答えられなかったPCHに肩入れする理由はまだ答えらえない?
と言うより、いまだ肩入れする理由というべきか、鈴仙に加担させる理由も含めて

本来の計画通りなら、PCHで挑む大会が永琳にとって、エネルギーを得る大会だったはず
時系列的にエネルギー得たい→外界と接触→PCHの裏で自分はエネルギー回収、という流れになって
今大会は、全体的に見て作戦第一段階だし、鈴仙に一定の成績を収めるだけで良かったはず。

しかし今回の説明通り、大体永琳のせいで始まり、今大会で波状したで終わる今
肩入れじゃなくて、成り立ち自体に関与していた永琳には必要ないものだろうし、
エネルギーを得るために利用していた鈴仙を加担させる意味があるとは思えない。

まだエネルギーを求めてこの計画を進めているのか。それともまた別の目的があるのか

731 :森崎名無しさん:2015/11/25(水) 16:59:05 ID:???
仲の良い人たちで、どこに参加するか決まっている人はいますかね
現時点で答えられる範囲で良いので教えて頂けるとありがたいです

732 :森崎名無しさん:2015/11/25(水) 17:59:42 ID:???
鈴仙自身が決めてもいいくらい、師匠的にはどっちでもよかったんじゃ?
なんにせよ師匠が事の発端で、大会予選時点にはもうエネルギーとか関係なく半分目的達成してたんでしょ
理由なんて師匠はメタ的な視点で見れるし、「鈴星…いいわね、佳歩に頼れてる鈴仙も可愛いわ」とか
長所の点通り絡み増やしたかったとかでいいじゃん

733 :森崎名無しさん:2015/11/25(水) 22:46:18 ID:???
ルートによって選べる選手選べない選手は見れないのかな?

734 :森崎名無しさん:2015/11/25(水) 22:50:58 ID:???
プロジェクトカウンターカグヤはないのかな?

カグヤファンの言い分「どうせ俺たちがシュート止めるんだから
俺たちの誰かが代わりにゴールマウスにたっててもいいじゃん」
カグヤ「ふざけんなゴルァ!」ブローリン「カグロットー!」

正GK争いは熾烈なのです

735 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:23:23 ID:???
こんばんは、更新再開します。>>729さん、乙ありがとうございます。

今日は質問への回答をやった後、>>724の内容を加筆修正して、
少しイベントを挟んで件の選択に入りたいと思います。


<質問への回答コーナー>
Q:勧誘失敗した場合、失敗したキャラをチームに加入することができなくなる以外にデメリットはありますか?
A:ありません。失敗しても鈴仙と険悪になったりはしないですし、紫から制裁を受けたりとかもありません。

Q:永琳がPCHに未だに肩入れする理由について
A:>>724で話しているのが真実に近いです。詳細についてはルート決定後に語られますが、
 最初は単なる手段だったのが、変わりゆく鈴仙の姿に感化され、
 幻想郷や世界の『変化』に対して強い興味を抱くようになったためです。
 「裏で更に計画があったら流石に食傷気味だし、純粋な気持ちでルートを選べなくなると困る」
 …という作者のメタ的な気持ちもあります(汗)

Q:仲の良い人で、どこに参加するか決まっている人は居るか?
A:後のイベントでちょっと案内しますが、
  永琳=全幻想郷、中山=全日本、パスカル=アルゼンチン は確定です。
  あと、前々からの展開的に、妖夢=ハイパーカンピオーネ も確定です。
  その他は割と流動的に、これまでの選手としての格+今大会の活躍+鈴仙との関係などで分かれます。

Q:ルートによって選べる選手、選べない選手は?
A:リアル・幻想・セブンルートでは、魔理沙は選べません。
  プロジェクト・カウンターハクレイルートでは、前述の永琳に加え、霊夢と紫、藍は選べません。
  他は一応どの選手も選べますが、PCHルートだと強い選手は加入しづらいです。

Q:プロジェクト・カウンターカグヤはありますか?
A:簡単にカウンターできそうなので、ありません。

736 :鈴仙奮闘記@>>724修正版です ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:25:13 ID:???
藍「……決めかねて。いや。それ以前に酷く怯えているようだね」

永琳「――今この場で答えろとは言わないわ。だけど、明日の朝にでも答えを頂戴。
幻想郷の結界が壊れてしまった以上、私達の身にいつ、何が起こるか分からないのだから」

鈴仙「……すみません」

本当ならば、勝手に選択を強制する二人に対し、鈴仙は怒っても良かったのかもしれない。
しかし鈴仙は謝った。意見こそ違えど、強い想いを持つ永琳と藍が眩しく見えたからだと、後で鈴仙は思った。

鈴仙「――あの。やっぱり私、今すぐには選べません。……少し、時間を下さい」

鈴仙は二人に対し猶予を申し出た。
永琳はすぐに鈴仙の内心を察して頷き、暫くの間表で頭を冷やすように命じてくれた。

永琳「……私が選んだ道を進んだとしたら。あるいは、八雲藍が選んだ道を進んだとしたら。
大まかにどういう事になるかは、こっちの方で表に纏めさせて貰ったわ」

藍「もしも質問があったら受け付けるから、しっかり目を通しておいて欲しい」

鈴仙「(い、いつの間に……)」

その際、鈴仙は藍と永琳に見送られて一枚の紙を貰った。
これはどうやら、【プロジェクト・カウンターハクレイ】と【リアル・幻想・セブン】。
それぞれのルートに関する簡単な説明書きだった。

737 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:26:21 ID:???

鈴仙「………」

――そして、鈴仙は説明書きを読み終えて。
永琳と幾つかの質疑応答を交わした後、永遠亭の中庭へと歩み出た。

鈴仙「月、きれい……」

故郷の星が映る空を見上げて、秋の夜の冷え込んだ空気を吸い込む。
鈴仙は途方に暮れていた。

鈴仙「師匠も藍さんも酷いよ。私は確かに、ここまでやってこれたけれど。
私には……師匠達が期待するような力なんて無いのに」

これまで永琳に期待されておらず、雑に扱われる事の多かった鈴仙が、
いざ先程のように過大にも思える期待を投げかけられた時、一体どうなるかと言えば。
……今度は、その期待に押しつぶされそうになっていた。

鈴仙「(――師匠は前から、私には特別な『何か』があるとは言っていた。
藍さんも同じ。……もしかしたら、前にレミリアさんが言っていたのも、そうだったのかも。
だけど、まさかそれがこんなにも大きな話になるなんて……)」

自分は強くなったという自負はある。しかし、それは仲間と共に得た強さであり、
決して自分自身の強さであると、鈴仙は断言できない。
……間違い無く自分自身の力で強くなった魔理沙や森崎の姿を決勝戦で見て、
その思いはますます強くなった。

738 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:27:45 ID:???
ヒュウウ……

鈴仙「……さむっ」

――そして、10月も終わりに近づいた日の夜は寒かった。
鈴仙は身体を温めるためにも、その辺りに転がっていたボールを取り出して、
リフティングでも始める事にした。何か作業をやっていれば、嫌な思考から離れられる。
そのうちに、永琳と藍から告げられた問題への答えも見つかるとも思って。

ポーン、ポーン、ポーン……。   ……ジャリッ。

それからどれだけの時間が経っただろうか。
鈴仙が自分のリフティング回数を正確に数えられなくなって来た頃に、
中庭の土を踏みしめる僅かな音が聞こえた。

鈴仙「……誰? ――って、あらっ」

ポーンッ、ポン。コロコロコロ……。――スッ。

中山「――悪いな、鈴仙さん。リフティング、止めてしまって」

その音の主は中山だった。
夜でも相変わらずユニフォームを着ているが、どうやら昼のとは違うらしく清潔だ。
びっくりして零してしまったボールを中山は拾い上げ、鈴仙に近寄った。

739 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:29:10 ID:???
鈴仙「どうしたの、中山さん。ひょっとして、これから特訓とか?」

中山「違うよ。……ちょっと、迷う……でも無いが。少し頭がモヤモヤしていて。
さっきまではパスカルと駄弁っていたんだが、奴が先に寝てしまったものだから。
少し特訓でもして、頭を冷やそうとか思ったんだよ」

鈴仙「結局特訓じゃないの……。――でも珍しいね、中山さんがモヤモヤするなんて」

中山「まあな。……ちょっと、森崎の事を考えてて」

鈴仙「大会後の大災害から、まだ誰もあいつと……魔理沙と霊夢の姿を見ていないみたいね。
不死身の中山さんが憧れる程の親友なんだし。まさか、森崎があの程度で死ぬとは思わないけどさ」

中山「はは。鈴仙さんも随分と森崎の事を分かって来たみたいで。
……それなら、むしろパスカルよりも良いかもしれないな。ちょっと、俺とお喋りしてくれないか?」

鈴仙「あー。……パスカル君だとディアスディアスになっちゃうものね。
――分かったわよ。私で良ければ付き合う」

中山と鈴仙はそれから、森崎を話題に暫く会話を楽しんだ。
森崎の好きなサッカー選手、森崎の嫌いな選手、森崎の数々の奇行、スーパープレイ……。
仮に本人たちが認めないにしても。
二人は一人の狂人の危険な魅力の虜になってしまっていた。

中山「それでさ。その試合で森崎がゴールポストをけっ飛ばして退場に……」

鈴仙「えーっ。審判厳しすぎでしょ。
ゴールポストを蹴っちゃダメなんて、現代サッカーを否定してるようなものじゃない!」

中山「…………」

鈴仙「そういや、中山さんって……。――って、アレ? 私、何か変な事言っちゃった?」

740 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:30:19 ID:???

そして――二人が会話を始めて、半時が経った頃。中山は会話の途中で突然と押し黙った。
鈴仙は何か気に障る事を言ったかと思い、慌てて中山の様子を伺うも、彼の態度は変わらない。
……永遠にも近い気まずい時間が流れた後、中山は鈴仙にこう言った。

中山「……鈴仙さん。強くなったな」

鈴仙「――え?」

中山は感慨深く鈴仙の瞳を見つめてこう言った。
鈴仙も幻想郷の少女の中で背が低い方では無いが、長身の中山と相対すると、
どうしてもそのままでは視線が合いようが無い。
中山は自分の目を見ようと首を上げる鈴仙に向かって微笑みかけながら続けた。

中山「――俺が初めて君と話した時。君は、俺がリフティングをしている最中に割り込んで来た。
それで俺は、君の悩みや苦しみを聞き。そして――烏滸がましくも、一つの道を君に教えた」

鈴仙「そ。そう言えば……そうだったかしら」

中山「――俺が次にここで君と話した時は、大会前だった。
チームを去り、新たな強さを見つけたい俺を君は、全力のプレーで見送ってくれた。
その時君は間違い無く、俺が教えた道を、脇目もふらず全力で走り切ろうとしていた」

鈴仙「………」

中山「――そして、今。俺は逆に、君に新たな道を教えられようとしている。
リフティングをしている最中の君に俺が割り込んだという、奇しくも最初とは真逆の恰好で」

そこまで言って中山は台詞を切る。
鈴仙はそんな中山のどこまでも前向きな口調に少しだけ苛立って。

741 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:31:24 ID:???

鈴仙「……私はまだまだよ。中山さんに新しい道を教えるなんてできやしないし、やってもいないわ」

――と、自分が弱いという事を中山に伝えてやろうとした。
しかし中山は笑うだけで、鈴仙の言葉を肯定しようとしない。

中山「何を言ってるんだ、鈴仙さん。俺はこれまでの君のプレーを見て。
そして、今こうして俺を想って会話に付き合ってくれた君の優しさを見て。
それで新たな道がある事を確信したんだぞ」

鈴仙「――なんでよ。私は森崎みたいに強くなれない。魔理沙みたいに覚悟できない。
……私は、師匠や藍さんの期待に応える事なんて、出来ないのよ……」

中山は何も分かっていないと鈴仙は思った。
結局自分は強くなったが、それは中山や森崎、魔理沙程の強さでは無かった。
つまり、仲間に頼らない強さ。自分の全てを捨ててでも力を追い求められる強さ。
一つの目的の為に、他の物を切り捨てられる強さが、鈴仙には欠けていた。

鈴仙「私はどこまで行っても臆病だから、何かを捨てる事ができない。
……けどそれは、中山さんや森崎が言う強さとは、違うでしょ?」

鈴仙は率直な気持ちで自分の弱さを表明した。

中山「違う――それが君の強さだよ、鈴仙」

中山は即断でその鈴仙の弱さを強さと呼んだ。

742 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:32:38 ID:???
中山「――泥臭くても、弱くても良い。覚悟出来なくても良い、捨てられなくても良い。
それでも、君は仲間と共にここまで進んで来たんだろう? ……だったら、それを強さと言わずに何という。
確かにそれは、俺が常に語る強さとは違うかもしれない。でもそれは、今の俺には真似出来ない。
例えば俺が決して、『インビジブルデューパー』や『真実の友情』みたいなシュートができないように。
……だったら、それは鈴仙さんがこれまでの物語で見つけた、また別の強さと呼んでも良いんじゃないか?」

鈴仙「……私が見つけた、強さ」

中山「――そうだ。俺は何も言ってない。永琳さんの教えでも無い。それは、君が自ら切り開いた道なんだ。
君は君自身の意志で、新しい物語を創ったんだ。自分が真なる意味での主人公として、新たな地平へ羽ばたく為の!」

鈴仙「……………」

中山にそう言われてもまだ、鈴仙は自分が主人公を担うに相応しい強さを持っているとは思えなかった。
しかし恐らく、それすらも中山は『それは鈴仙さんの成長だよ』とか言って笑うのだろう。
決して他者の受け売りに流されず、自分で感じた意志に従い行動する事こそが、真の強さと呼ぶのだとしたら。

鈴仙「――結局何だかんだで、中山さんに助けて貰っちゃってるけどね。私」

中山「いや。そんな事は無いさ。むしろ助けて貰ったのは俺の方だ。
森崎を失い絶望していた俺に、君は新たな道を俺に教えてくれた。君は、俺を導いてくれたんだ」

中山は鈴仙に対して深く礼をする。そして、「良く分からないないが、君の夜はまだ長いんだろう?」
と言って、自分の部屋へと去って行く。中山は去り際に鈴仙にこう告げた。


中山「――次の大会、俺は全日本を率いるつもりだ。君がどんな道を進むにせよ、俺は君の最大の障壁になるだろう。
もっとも、パスカルも同じく、相棒と共にアルゼンチンを導く心算らしいが……そっちには負けるなよ、鈴仙さん?」

743 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:36:45 ID:???
鈴仙「な、中山さん……! って、行っちゃった」

そして、最後には鈴仙とボールだけが取り残された。
永琳や藍と約束していた時間まで、残り五分も無い。
しかし、結論をどうするかはともかくとして、鈴仙の心は澄んでいた。
それは、中山の交流を通して、鈴仙の中にある覚悟が出来ていたからに違いない。

鈴仙「(――師匠や中山さん。それに他の皆に導かれて奮闘した、私の物語はもうすぐ終わる。
そして始まる。――私が、多くの人や妖怪達を導き目的を遂げる。そんな、新しい物語が……!)」

――兎にも角にも、自分はこれまで与えて貰った『強さ』を、他者の為に使わなくてはならない。
鈴仙の心には既に、そんな確固たる覚悟があった。


***


鈴仙「……戻りました」

永琳「――予想よりも早かったわね」

鈴仙が永琳の研究室に戻って来た時、永琳と藍は先程の恰好のまま、静かに鈴仙の左右に佇んでいた。

藍「結論を聞かせてくれる、という事で良いのか?
――先程も、君に過大な期待を与えてしまっていると、君の師匠共々反省をしていたところなんだが」

鈴仙「――いえ。良いんです。私、もう決めましたから」

今度は鈴仙は、力強くそう二人に応える事ができた。
自分には重荷だとか、世界の存亡に責任が持てないとか。そうした事はもはや関係無かった。

鈴仙「この先待ち受けているのが悪夢だとしても。それでも私は行くしかないんですから」

744 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:47:58 ID:???
永琳「――そう。よく言ったわね」

永琳はそんな鈴仙を褒めたりはしなかった。
ただ、短い言葉で彼女を労い、選択を促すのみだった。

藍「……それでは、鈴仙。教えて貰おうか。
君がこれから、【プロジェクト・カウンターハクレイ】の一員として大会に参加するつもりなのか。
あるいは、【リアル・幻想・セブン】の一員として大会に参加するつもりなのか。
その心持ちを、是非私に教えて欲しい」

鈴仙「はい。私は――」

鈴仙は暫くの間考えて――そして、こう結論を出した。

745 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:50:30 ID:mVQ/ixRA

※第二部のルート分岐です。
 多数決で決めますので、メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。



A:「――私は【プロジェクト・カウンターハクレイ】の一員として、大会優勝を目指します」
B:「――私は【リアル・幻想・セブン】の一員として、大会優勝を目指します」



*11/26 1:00〜から投票を受け付けます。(それ以前の投票は無効です)
*23:00時点で最も多く投票された選択肢が今後のルートとなります。
*同数となった場合は、3票決着の決選投票を行います。
*質問があります場合は、短いですが0:55まで質問を受け付けます。
*各ルートの詳細は>>726を参考にしてください。

746 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 00:52:01 ID:ObrhptOI
B

747 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 00:54:16 ID:???
1時からだよ

748 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/26(木) 00:54:29 ID:mVQ/ixRA
――と、言ったところで今日の更新はここまでにします。
すみません、いきなり前言撤回ですが0:55まで質問を受け付ける…だと、
流石に短すぎるので、質問については随時して頂ければと思います。
その場合、返信が遅れる事もあると思いますが、ご了承願います。

>>746
申し訳ありません、1:00から投票受付としましたので、お手数ですが7分後再投票をお願いします(汗)

それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

749 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 01:00:21 ID:YVokTpPA
A 乙カメェェェッー!

750 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 01:01:08 ID:ObrhptOI
B
フライング失礼しました

751 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 01:02:50 ID:xxSEbXhc
A

乙なのです!

752 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 01:02:54 ID:oHeEPA7I
A

753 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 01:03:00 ID:IHuCY9CA
A

754 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 01:06:35 ID:gz4kdAn6
A

755 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 02:00:48 ID:rak8gEE6
A

756 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 03:58:54 ID:ETKIRQrg
A

757 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 06:33:36 ID:sk5Uth1s


758 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 06:52:41 ID:+Kr1DGDI


759 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 17:59:38 ID:KR4QCuDg
B

760 :森崎名無しさん:2015/11/26(木) 22:55:46 ID:1GMsQ66M
A
紫に憑りついたJOKER絶対殺すウーマンを祓って
新しい楽園の第一歩を!
そして下剋上を!

この第三章であらかた選手が出尽くすとなると、
最終章は月勢との勝負かな?
そんで最後はなんやかんやでチート中のチートと化した
永琳と対決、ってことになるのかな?

761 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/27(金) 00:52:58 ID:QA2yU3gs
こんばんは、更新再開します。
ルート分岐の投票につきましては、
A9票、B3票により、【プロジェクト・カウンターハクレイ】ルートに決定しました。
皆さん、遅い時間開始だったにも関わらず、沢山の投票をして頂き、誠にありがとうございます。
>>749
乙玄爺ありがとうございます。
>>751
乙ありがとうございます!
>>760
大体そんなノリで大丈夫ですw
これまでちょっと複雑な話が多くなってしまったので、
ここから少なくとも大筋はシンプルに話をまとめたいなーと思ってます。

第二部の進行については、また第二章ラストに詳細を説明しますが、
第三章で下準備の修行編として、ちょっとしたストーリー展開を用意しています。
そして第四章(最終章)では、紫が言ってた『幻想スーパーJr.ユース』編となります。
そのため月勢(綿月姉妹+紺珠伝キャラ)については、今回は脇役的な登場になると思います。

ところで最近ではあの永琳すらも高天原では下位だとか、
紺珠伝EXボスは永琳含む月の民ではお話にならない位の強キャラだとか言われてますね。
その辺りを色々考えると面白そうですが、活躍させ過ぎると収拾付かなくなりそうですw

762 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/27(金) 00:54:14 ID:QA2yU3gs
A:「――私は【プロジェクト・カウンターハクレイ】の一員として、大会優勝を目指します」


鈴仙は覚悟を決めていた。いや、覚悟など、とうの昔から決めていた事に気付かされた。

鈴仙「(中山さん。私は……もう逃げない! ……ことは無いかもしれないけれど。
――それでも、私は。これまで皆と過ごした日々を否定する事だけはしたくない。
だって……仮にそれが全部師匠のお仕着せだったとしても。楽しかったんだもの)」

覚悟は鈴仙の中ではなく、その周りにあった。
自分の周りに居る人々との絆。それこそが、鈴仙がこれまでの奮闘で得た力であり強さだったから。

鈴仙「(――私は、この強さを他の人達にも教えたい。森崎や魔理沙の目指した強さとは違う。
中山さんやパスカル君が言う強さとも違う。私なりの、私らしい強さを……!)」

永琳「――ウドンゲ。どうするの」

藍「……無理をしてまで、今すぐ決めなくても良い。良ければ、答えはまたの後日に」

鈴仙「――いえ。待ってください」

心配げに自分を見守る二人を、鈴仙は力強く制止し、そして語り始める。

鈴仙「――私は、正直に言ってどちらの道を歩んでも良いと思っています。
【プロジェクト・カウンターハクレイ】に従い、私が思うように、幻想郷の仕組みを変えてしまう事も。
【リアル・幻想・セブン】に入り、私を支えてくれた、今の幻想郷を守る事も。
そのどちらも、魅力的な道ですし。私の目的はきっと、達成できる事と思います。

けれど。――藍さん、ごめんなさい。
私は……【プロジェクト・カウンターハクレイ】に手を貸す事に決めました」

763 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/27(金) 00:55:53 ID:QA2yU3gs
永琳「……!!」

藍「……そうか」

鈴仙の出した結論に、永琳は意外そうに眼を丸く見開き。
一方で藍は半分予想していたかのようにそっけなく、しかし苦々しげにそう呟いた。

鈴仙「――私はここに来るまでに、幻想郷の皆と。外の世界の皆と。
沢山の事を一緒にして来ました。そこには、楽しい事が一杯ありました」

鈴仙はそんな二人を意識して無視するように目を閉じ、そして理由を語り始めた。
目を閉じると、まぶたの奥から様々な思い出が浮かんで来る。
鈴仙はそれらの記憶を一つ一つを噛み締めていく。鈴仙の選択の理由はそこにあるからだ。

鈴仙「……これまで、本当に楽しかった。サッカーは勿論の事だけど。
温泉旅行をしたり、ストリートファイトをしたり、ブリッツボールの大会にも誘われたり……。
――ヒューガーが乱入したり、謎の向日葵仮面に襲われたり、散々な事もあったけど。
それも最終的には命蓮寺や紅魔館の人達と仲良くなれる、良いきっかけになった」

藍「幻想郷は全てを受け入れる。……それはそれは残酷だけど、同時にそれはそれは凄く甘美だ。
もし君がこの地で良い経験をしたのなら、私は紫様に代わり礼を言いたい。
――しかし。君はそれだけを言いたいのでは無いんだろう?」

鈴仙は藍の問いかけに対して頷く代わりに、俯いて暫く押し黙った。

鈴仙「……哀しい事も、沢山ありました。
――ううん。それは私が体験した話の中では、ほんの些細な事です。
だけど、それもまた、同じ位本当の事だと思います」

鈴仙が甘く楽しい日々を過ごす陰には、多くの哀しみと不毛な争いが付き纏った。
人里の人間達は毎日の生活に困窮し、それは宗教争いを活発化させた。
強さや生まれの高貴さを貴ぶ社会は、そうで無い者達に絶望を与えた。

764 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/27(金) 00:56:54 ID:???
鈴仙「――私には、大事な友人が居ました」

これまでの物語における、鈴仙にとっての一番の哀しみ。
それは、幻想郷という社会に呑まれ自らを見失い。
そして、幻想郷に留まる事が出来なくなった、大切な人の面影だった。

鈴仙「……私は、彼女の道を尊重する事が真の友情だと思っていましたし。
それは今でも同じです。だけど、できる事なら、彼女をそこまで悩ませたく無かった」

永琳「…………」

藍「……妖夢の事か」

鈴仙はコクリと頷いた。妖夢の事も良く知る藍も苦々しげな表情を浮かべていた。

鈴仙「元々妖夢は、力を求めていました。主人である幽々子さんにも並び立ち、
そして、この私ともまた一緒にサッカーが出来るような……。
――だけど、自分一人ではそれが出来ないと知った時、妖夢は神子の口車に乗ってしまった」

藍「……妖夢を失った時の幽々子様の哀しみは、本当に途方も無かったよ」

鈴仙「――でも、これは妖夢だけの問題じゃないと思いました。
そう思ったのは、ついさっき。サッカーを夢と断言して、夢と一緒に散って行った魔理沙の事を思い出してです。
今考えると、魔理沙も。もしかしたら森崎でさえ。あの時の妖夢と同じだったんじゃないかって思うんです。
要するに、皆。……一人で何でもできる、力が欲しかったんです。きっと」

永琳「……それは欲望のある限り、何時の世も消えはしない欲求よ」

鈴仙「……そうでしょうか」

鈴仙は永琳の指摘に反論した。それは始めてでは無いが、珍しい事だった。

765 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/27(金) 01:01:02 ID:???

鈴仙「私は、力っていうのは、それだけじゃないと思います。
ただ強い、一人で何でもできる、役に立つ。それだけじゃなくって。
例え弱くても、一人では何もできなくても、役立たずでも。
それでも、集まって努力すれば、何かを為す事ができるような。――そんな力があっても、別に良いと思ったんです」

永琳「……理想論よ。普通なら、甘すぎて却下されるわ」

鈴仙「分かってます。でも……その甘ったるい力のお蔭で私は、この大会に優勝出来たんです!」

永琳の指摘に対し、鈴仙は尚も食い下がった。それは正真正銘、初めての事だった。

鈴仙「私はこれまでの経験で、妖夢や魔理沙や森崎が言う。
いや……もしかしたら幻想郷でもそうじゃなくても、多くの人間妖怪達が口を揃えて言う『力』とか『強さ』には、
もっともっと別の種類があるんだって気付いたんです。
もしも師匠や皆が、私の言う力を甘いとかバカげてるとか言うんだったら。
――世界を変える事で、決してそんな事は無いんだって、証明してみせます!!」

鈴仙は語気を更に強めた。もはや自分でも何を言っているのか分からなくなって来た。
しかし、この想いの強さは本物であるという自信だけはあった。
瞼の奥で屈託なく笑う妖夢や魔理沙。てゐや佳歩。多くの幻想郷の住人を浮かべながら、
鈴仙は【プロジェクト・カウンターハクレイ】を選んだ最大の理由を、こう言い切った。


鈴仙「私は幻想郷を変えたい。だから、その為には秩序を守る【リアル・幻想・セブン】じゃ足りない。
……師匠が利用しようとした【プロジェクト・カウンターハクレイ】を、今度は私が利用して。
それで、これまで私が感じた哀しみが無くて、楽しさだけが残るような。そんな甘ったるい幻想郷を創ってやるんですから!」

766 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/27(金) 01:05:43 ID:???
*****



〜永遠亭・鈴仙の個室〜

鈴仙「(さっきはノリであんな事言っちゃったけど……だ、大丈夫だったのかなぁ……)」

――あれから小一時間後。
漸く解放された鈴仙は、今更ながら自身の発言を若干後悔し始めていた。

鈴仙「(私が頑張らないと、サッカーのせいで世界が滅びて、純狐が絶望で……。
――ううっ、今から師匠と対決する事を考えただけで、お腹が痛いよぉ……)」

鈴仙は覚悟を決めていた。しかし覚悟を決める事とその覚悟に殉ずる事とは別だった。
弱い鈴仙は案の定、こうして自ら決めた選択肢に色々と敵わぬ注文を付けたくなっている。

鈴仙「――でも。やるしかない。やるしかないのよ。……私の物語が、決してウソじゃなかった事を証明する為にも……!」

永琳の謝罪から始まった今宵の密会は、鈴仙の決意で幕を閉じた。
――しかし、そこには明らかになった真実と共に、また新たな謎も組み込まれていた。

鈴仙「(師匠はあれから、そもそも何故自分がエネルギーを集めようとしたのかについては話してくれた。
膨大なエネルギーを使って物質を融合させ。生き疲れた自分と姫様の為に、蓬莱の薬の解毒薬を創ろうとしていたと。
――つまり、人知れず師匠と姫様は死のうと考えていた。
だけど、今の師匠はそうした事は考えておらず、純粋に私の成長を見届けたい、それまで死ねないと笑って言った。
……そしてその証拠として、師匠は解毒薬を創る為のエネルギーや材料を犠牲として、私にこの薬を贈ってくれた)」

鈴仙は掌に乗った、永琳からの贈り物――一限の薬を眺める。
見る角度によって様々に色を変えつつ、宝石のように妖しく光るその薬については、
永琳から「どうしても必要な時のみ、服用すること」以上の説明を受けていない。

767 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/27(金) 01:08:33 ID:???

鈴仙「(……私はまだ、師匠の計画の掌中に居るだけなの? それとも――)」

――それとも。これはやがて鈴仙の身に降りかかるであろう、純粋かつ大いなる厄災を暗示しているのだろうか。
鈴仙は一抹の不安に駆られたが……

――フラッ……バタリ。

鈴仙「……ぐぅ。つ、つかれたぁ……」

それよりも、今朝から大会決勝戦を経て、今に至るまで蓄積された疲労が押し寄せる方が早かった。
鈴仙は布団を敷いた直後に、半ば失神する勢いでその場に倒れ込んで眠ってしまうのだった。

――間もなく巣立ち行く雛鳥には、まだ僅かに出立までの猶予が残されていた。


*第二部のルートが、【プロジェクト・カウンターハクレイ】ルートに決定しました。
 ルート詳細は、第二章終了後にもう一度明らかにして説明します。
*試合勝利&大会優勝&得点王ボーナス! 人気が大きく上昇します。94→99
*大きな決断をし、永琳印象値が大きく上がります。55→60
*鈴仙の精神が磨かれ成長し、狂気度が上がります。30→33
*アイテム「永琳の薬(然るべき所で使用します)」を入手しました。

――――――――――――――
……と、言ったところで、本日の更新はここまでです。
ここから秋姉妹との特訓イベント+永琳の特別練習があるので、
次の自由行動フェイズまではまだ時間が掛かります(汗)
それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

768 :森崎名無しさん:2015/11/27(金) 01:26:20 ID:???
乙なのです

決勝終わったと思ったらまた急展開でわくわくします。

769 :森崎名無しさん:2015/11/27(金) 21:26:07 ID:???
いつもお疲れ様です。

それにしても、「博麗戦が終わったらスピーチ原稿は俺に任せろー」
などと思っていた私の姿はお笑いでしたw

毎日毎日どんな展開になるか、今森崎版で一番楽しみにしています。

770 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/28(土) 01:44:37 ID:???
こんばんは、更新しよう…と思ったのですが、今日は帰りが遅かったので、明日にしようと思います。
明日も夜から用事があるので、お昼から夕方まで更新出来たらな、と考えています。
>>768
乙ありがとうございます。
ストーリーがダレないよう色々考えていたつもりだったので、そう言って頂けると嬉しいです。
>>769
労って頂きありがとうございます。
優勝スピーチについては…すみません、すっとばしてしまいました(爆)
大会後の余韻を味わってもらう為にも、スピーチは入れた方が良かったかもですね…。
楽しみにして頂いて本当にありがたいです。お蔭で毎日、適度に楽しく書かせて頂いております。

それでは、皆さま、また明日宜しくお願いします。

771 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/28(土) 15:29:54 ID:lcTHLfNs
〜大会19日目・午前・固定イベント〜
【嵐の前の静けさ】

〜永遠亭・居間〜

鈴仙「……おはよう」

てゐ「おはよ、鈴仙。新聞見た? 何だか色々カオスってるよ、これ」

昨日あれだけの事がありながら、鈴仙は規則正しい時間に目覚めた。
習慣の恐ろしさに鈴仙は戦慄しつつも、てゐが魅せてくれた新聞に目を通す。
そこにはルナティックスの優勝と鈴仙のMVPを称える記事で埋め尽くされて…はおらず。

鈴仙「――【博麗大結界、崩壊】。【流入する外界のテクノロジー】。【妖怪の権威はどうなる】。
【天魔を中心に緊急警戒態勢発令】。【ヒューガー、商機狙う】。【八雲の大妖、乱心か?】
……あ、【大会はルナティックス優勝】」

霞「他の新聞も同じ感じです。サッカーに関する記事は殆どありませんでした。
これまで百数十年間保たれて来た結界が崩壊したとなれば、当然の事だと思うんですけど」

ウサギC「ふ〜ん。でもさ、ほんとにけっかいはほ〜かいしたの〜?」

佳歩「ホントだと思う。さっき空を飛んでみたら、殆どはいつもの竹林だったんですけど。
遠くの地平に、見覚えのない建築物が幾つも建っていて」

中山「――話を聞くにそれは間違い無く、外の……俺達の世界の高層ビルだった」

つかさ「私達の幻想郷は、一体どうなるんでしょう……」

ウサギD「つかさちゃん、怖いよぉ……」

772 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/28(土) 15:31:18 ID:lcTHLfNs
幻想郷はいよいよ本格的に、サッカーどころの騒ぎでは無くなっている様相だった。
今はまだ目に見えた実害は表れていないようだったが、
外界――今やそう呼べるかも疑問だが――の住人達が、この地の存在に気づくのは時間の問題に思えた。

鈴仙「……そう言えば、次の大会の話については?」

パスカル「いや。そこは間違い無く敢行されるようだ。
これより半年後、この幻想郷に世界中のサッカー選手を集めて、世界大会を開催する。
そして、幻想郷も選抜選手を集めてその大会に参戦するという旨が、改めて新聞に書いてあった」

霞「私の調査によると、およそ人里の人間と周囲の妖怪達全てが認知出来る手段で、
その事は周知されているようでした。……八雲紫は、本気のようです」

輝夜「……アレ? でも、結局その『幻想郷選抜』って誰になったのよ?」

朝食の カレーパン を食べながら、外界発祥らしい板状の画面を眺めていた輝夜が不意に口を開く。

永琳「――幻想郷選抜は、先の大会結果を見ながら、今から2日後。
大会開始から数えて21日目の朝に発表されるそうよ」

永琳がそんな輝夜に口を挟んだ。そして即座に鈴仙に対して言外の視線を向けた。
鈴仙はそれで、昨夜永琳と交わされた事務的なやりとりを思い出す。

鈴仙「――(……昨日の夜、私が道を決めた後に師匠から示された、旅立ちの日。
それは、全幻想郷選抜メンバーの決定日だった。師匠の話では、
私がこうしている間にも、スカウトが内々にメンバー候補との調整を行っているらしいけど……)」

鈴仙は自らの判断で道を進む決意をしたが、
その周囲には依然、鈴仙が知らない多くの人物が携わっているようだった。

*第二部で鈴仙の仲間となるプロジェクト・カウンターハクレイのメンバーは、
 第二部開始直後に、プレイヤーにより選定されます。(鈴仙が積極的にスカウトする必要はありません)

773 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/28(土) 15:32:58 ID:lcTHLfNs
〜大会19日目・午前・特別イベント〜
【鈴仙と秋姉妹。永遠の秋夢特訓!?】

??「すみませーん! 鈴仙さんいますか〜!?」

大会優勝後の朝でありながら、社会情勢の大きな変化もあり、どうにも盛り上がれない永遠亭の面々。
その重苦しい空気をぶち壊すかのように、カラっとした秋晴れのような声が鳴り響いた。

鈴仙「……え、私!?」

永琳「……行って来なさい、ウドンゲ」

永琳に促されて、鈴仙は玄関へと向かった。
ガラリと戸を開けると、声の主は鈴仙にハグせんばかりの勢いで飛びついて、

穣子「れいせ〜ん! 私達にサッカー教えて〜!」

――と、突然にも程があるお願いをして来た。

***

鈴仙「……成程ねぇ。こっそり特訓して上手くなって、反町君に追いつけるような選手になりたいと」

静葉「ええ。二人だけで特訓をしていても、どうしても上手くいかなくて。
……恥ずかしいのだけど、私達には他に頼れる人も居ないから」

穣子「それに、今は天狗も河童もみ〜んなてんやわんやだし。
天狗は絶望的な意味で。河童は希望的な意味でだけどね」

鈴仙「成程ねぇ……天狗としては、これまでの封建的な社会の危機だし。
逆に河童としては、偉そうな鬼や天狗の支配を抜け出して、自由に外界の技術を研究できるんだから。
今回の一件にしても、色々な層が出て来て混乱するのも当然か」

774 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/28(土) 15:34:14 ID:lcTHLfNs
静葉「ウフフ……終わりよ。世界の終わりなのよぉ……?」チャキッ

穣子「死なないでぇー、お姉ちゃん!?」

静葉「……あら。このカッターナイフは護身用よ?
結界の崩壊即ち世界の終わりと思って、暴徒化する妖怪が出て来るかもしれないじゃない」

穣子「なーんだ、良かった。それなら安心だね!」

鈴仙「(カッターナイフで護身を図る神様って……)」

鈴仙達はとりあえず場所を変え、永遠亭横の特設サッカーコートに移動した。
普段の茶番を交えながら、秋姉妹は特訓の理由や、妖怪の山の事情を話してくれるのだが、
肝心の二人にはどうにも緊張感が無いようにも思える。
――しかし、それは穣子の次の言葉で打ち消された。

穣子「――このままだったら、天狗に保護されてた一樹君も、どうなるか分からないじゃない」

鈴仙「……え」

元気いっぱいの穣子の表情が突然暗くなる。静葉も儚げな笑顔を崩さぬままに頷き続けた。

静葉「先の大会結果。そして結界の崩壊により、これまで幻想郷中に溜まっていた
人間や弱い妖怪達の鬱憤は、爆発しようとしているわ。
八雲紫を含め、幻想郷を守り続けた賢者達は次の大会で全幻想郷チーム優勝さえすれば、
かつての幻想郷の秩序が再確認され、全てが丸く収まると考えているようだけど……。
――彼女達は、その間に発生する争いや犠牲については、恐らく何も考えていない」

穣子「それでも、人々に大きな影響を与えるサッカーが上手だったら、
弱い神様や人間でも、ある程度は一目置かれるかもしれない。
――少なくとも、ヒドイ扱いを受けたりって事は減る。だから、私達は上手くなりたいの。
自分達は勿論、これまで言いたい事も言わずに私達を支えてくれた、一樹君を守るためにも……!」

775 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/28(土) 15:35:32 ID:lcTHLfNs
鈴仙「二人とも……。そんな気持ちがあったのね。知らなかったわ、ごめんなさい」

鈴仙は思わず頭を下げる。そして、これまで大きな展望を掲げてはいたものの、
秋姉妹達のように、今実際に苦しみ奮闘している幻想郷の住人の存在を失念していた事を恥じた。

鈴仙「――分かった。私も練習に付き合うわ! ……でも、具体的にどんな事をして欲しいの?」

穣子「えっと、そのぅ……」

静葉「大変厚かましいお願いなのは承知だけど。鈴仙には、私達を二人をコーチングしてくれたら嬉しいの」

静葉と穣子は申し訳なさげにそう申し出る。

静葉「私達はオータムスカイラブを起点とした、爆発的なプレーに長けているわ。
でも、基本的な総合力が低すぎるせいで、ハッキリ言って今の幻想郷サッカーには着いて行けてない」

穣子「スカイラブ無しの個人の実力はもっと悲惨だよ。一応私はブロックが得意で、お姉ちゃんはパスが得意だけど。
――永遠亭の名無しだったウサギさんにも負けてるよぉ……」

鈴仙「(つまり、単体だったら静葉さんは霞以下。穣子はつかさ以下なのね……)」

しかし、話を聞くに二人の問題は切実であるように鈴仙は感じた。
確かに、これから先二人が幻想郷サッカー界で活躍するには、もうひと押し、あるいはふた押しが必要となる。

静葉「――でも。鈴仙も折角の時間を自分の特訓に使いたいわよね。
それなら、私達も無理にコーチングを求めたりはしない。邪魔はしないから一緒に練習してくれるだけで良い。
もしくは、私達の内どっちか一人を重点的に見てくれる、という方法にして貰っても良い。
……お願いしている立場だもの。やるかどうかは鈴仙にお任せするわ」

鈴仙「は、はい……」

776 :鈴仙奮闘記@ ◆85KeWZMVkQ :2015/11/28(土) 15:44:47 ID:lcTHLfNs

鈴仙はそう言われて迷った。どういった方法で、この二人と練習を積むべきか。

鈴仙「(――秋姉妹は幻想郷の中では下から数えた方が早い弱小選手。
だけどその分、全幻想郷選抜は勿論。その下位組織のリアル・幻想・セブンに選ばれる可能性すら低そう。
だからもしも、ここで二人を鍛えておけば。後々、私が率いる事になるプロジェクト・カウンターハクレイの一員として、
彼女達は活躍してくれるかもしれない。そう言った意味では、ある意味先行投資にもなるかもだけど……)」

鈴仙は少しだけ考えて、こう申し出る事にした。

A:鈴仙も秋姉妹と一緒に特訓する。(通常通りの特訓メニューです)
B:鈴仙も一緒に特訓しつつ、穣子を重点的にコーチングする。(静葉は通常通り、穣子の成長度増、鈴仙の成長度は減)
C:鈴仙も一緒に特訓しつつ、静葉を重点的にコーチングする。(穣子は通常通り、静葉の成長度増、鈴仙の成長度は減)
D:鈴仙が秋姉妹二人をコーチングしてあげる。(鈴仙は成長しませんが、秋姉妹二人の成長度が増)

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

*成長度増(減)とは、「普段の特訓時の判定を基準に、結果表が一段階上に(下に)なる」事を指します。
*特訓時のルール・判定テーブルは、http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1440515816/106を参照。
 なお、特訓時において、52を越える能力値については成長しません。
 (これまで通りのルールですが、久しぶりの特訓なので再掲しました)
*鈴仙の能力値・必殺技は>>2を参照。秋姉妹の能力値はマスクドですが、傾向としては
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1381414268/839で、全能力を+2した感じです。

514KB
続きを読む

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
名前: E-mail(省略可)

0ch BBS 2007-01-24