キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【契約書に名前】鈴仙奮闘記34【書いてみて】

1 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/01/10(日) 15:50:42 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで世界を救う為に努力する話です。
他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆
【レイセン】鈴仙奮闘記33【アレアレオー】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1449152880/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html

☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠に並ぶ名選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。
彼女は永琳の庇護下で実力を大きく伸ばし、幻想郷中の勢力が集まった大会でMVPを勝ち取った!

しかしその夜鈴仙は、自身の成長は永琳の計画であった事、その計画の副作用で
月に眠る大いなる厄災――「純狐」が八雲紫の身体を乗っ取り目覚めつつある事を明かされる。
そして、鈴仙は永琳に懇願される。このままでは蘇った「純狐」が世界を滅ぼしてしまう。
「純狐」の純粋なる狂気を止める者は、混沌たる狂気を溜め込んだ鈴仙以外に居ない。
だからこそ、鈴仙は次に紫が計画した大会――『幻想スーパーJr.ユース大会』に優勝し、
サッカーで、純狐に取り憑かれた八雲紫を倒して欲しい……と。

鈴仙は最初は戸惑いつつも、中山により自身の成長と覚悟を悟り、最後には永琳の願いを受け入れる。
そして鈴仙は、幻想郷の秩序の変革を狙う『プロジェクト・カウンターハクレイ』の一員として、大会に優勝することを誓った。

一方その頃、『プロジェクト・カウンターハクレイ』のGMを務める魅魔は、
幻想郷の各地を飛び回り、鈴仙と共に純狐と戦う残り14人の戦士達を集めるべく奔走していた。
出身も種族も全然違う、個性的な面々の中から、果たして誰が鈴仙の新たな仲間となるのか。
幻想郷から永らく姿を見せなかった悪霊の、人知れぬ奮闘記が始まった。

901 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 02:00:32 ID:eWdRcQZ2
――ちなみに、ストラット君はここから更にもう1ゴールを挙げた。
後半12分に、ネイとトニーニョが自慢のパスワークで中盤を突破するも、
最終ラインをどうしても越えられず、ドトール君のタックルでボールを奪われてからだった。

ドトール「……バビントン。頼む!」

バシッ……!

バビントン「分かった。僕なりにやってみるよ!」

ゲレーロ「――させん! ここで止めてもう一度ネイ達に繋いでやる!」

タタタタッ……!

バビントン「……それっ!」

グワァッ、バゴオオオオッ!

――ドトール君はバビントン君にボールを繋ぎ、
バビントン君は後続のゲレーロを抜いてロングパスを放った。
咄嗟に放ったパスだったけれど、その精度は高くてゲレーロは追いつけない。
果たして、そのパスの受け手となったのは――ストラット君だった。

ストラット「よし! ここで決めてやるぜ!」

グワァァァァァァッ………!

902 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 02:01:33 ID:eWdRcQZ2
ストラット「くらえ、『メガロゾーンシュート』!!」

バッ……ドゴオオオオオンッ!
ギュゥゥゥウウウウウウウウウウウウン……ゴオオオオオッ……!

実況「お〜〜〜っと! 後半13分! ここでストラット選手が漸くその主砲を放つ!
    妖夢選手の『未来永劫斬・改』にも負けない威力を誇る、超ロングレンジ対応型高速弾丸シュート!
    ファンからはその巨大なゴール圏内を指して『メガロゾーンシュート』とも呼ばれているそれが、
    ゴール前30メートルから、パルメイラスのゴールへと放たれました〜〜!!」

……ドゴオオオオンッ! ズバシュンッ!
――ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

――そのゴールが決まったのは、もはや確認するまでも無かった。
多少の距離があろうとなかろうと、彼が本気のシュートを放った時点で
パルメイラスに幾らDFが居たとしても意味が無い。
僅か1点しか挙げられなかった前半戦が嘘であるかのように、私達はあっさりと4点目を決めた。


サンパウロ 4− 0 パルメイラス



903 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 02:03:34 ID:eWdRcQZ2

トニーニョ「喰らえ、『ドライブシュート』!」

バシュウウウウウッ……!

石崎「ぶべらっ!」

ポーンッ!

翼「アハハハハッ! 駄目だなぁ、トニーニョ。石崎君程度のブロックに防がれてるようじゃ。
  これだとお客さんが、ドライブシュートって案外大した事ないシュートなんだって、勘違いしちゃうよ?
  ――ほら、見てごらん。俺位になると、ドライブシュートと言ってもこんな事が出来るんだよ」

タタタタタタッ……グワァァッ! バシュウウウウウウウウウッ!
ギュルルルルルルッ……ズバァァァッ!
――ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

トニーニョ「――ボールの回転軸が斜め方向のドライブシュート……か」

翼「正確には、360度どの方向でも撃てるんだけどね。俺はこれを『フライングドライブ』と名付けたよ。
  トニーニョ君もドライブシュート使いだったら、せめてこの位は出来てから自慢するようにしようね?」ニコッ

トニーニョ「悔しいし、得意技をけなされては腸が煮えくり返る思いだが……負けている以上、反論できんな」


サンパウロ 5 − 0 パルメイラス



904 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 02:05:40 ID:???
ストラット君の2ゴール目は例外的に目立たなかった翼君だったが、
ここから先はまさしく獅子奮迅、一騎当千の働きぶりを見せていた。
彼はまず、捨て蜂に放たれたトニーニョ君のロングシュートをフォローすると圧倒的なドリブル力で前線へと上がり、
自分がブラジルで新たに習得した大技――『フライングドライブ』を発表して1ゴールを挙げると。

サトルステギ「えーい! これ以上舐められて堪るか! 『ダイナマイトヘーッド』!」

グワァァッ! バギイイイイイイイイッ! ドゴオオオオオン!

翼「はぁ〜あ。俺は舐めてるんじゃなくて、憐れんでいるんだよ」

サトルステギ「だったら尚更だ。俺はお前なんかに憐れまれる筋合いはねぇ!」

翼「そうかな? それじゃあ、試しに筋合いでも作ってみようか」

グワァァッ! ――ガギイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

サトルステギ「!? え……? お、俺の、シュートが、弾かれ……!?」

翼「……『カウンターシュート』。世界でもトップクラスの才能を持った一握りの選手しか出来ない大技だよ。
  ――でもさ。ほら、憐れだろう? 如何にも俺の大技の実験台にしかなれない君ってさ」

――ズバァァァァァァァッ! ピピィイイイイイイイイイイイッ!!

サトルステギ「……マジかよ」

翼の発言と、弾かれたシュートが自陣のゴールネットに収まった時のホイッスルを聞いて。
能天気なサトルステギですらも狼狽せざるを得なかった。

サンパウロ 6 − 0 パルメイラス


905 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 02:11:02 ID:???
――と、いう事もあり。
私が次に活躍出来たのは、後半戦も残り10分程度。
試合は6−0で既に片が付き始めたような時間帯となってしまった。

新田「うおおおおっ!」

ダダダダダッ! バゴオオオッ!

実況「新田選手強引なドリブルで、サンパウロのSBを突破!
    既にバイタルエリアに居る妖夢選手にチャンスを繋ぎます!」

新田「――どうしますか、姉御」

妖夢「そうだな……」

前半戦に引き続き、パルメイラスもしっかりとボールを繋いで粘っていた。
ただし、前半戦とは違い積極的にパスカットやタックルに出るサンパウロに対し、
彼らは遅れをとる事が多かった。それは主に翼君のハッスルした活躍にもよるけれど、
総合力的な意味においても、我々サンパウロは他チームよりも優れているという自負があった。

妖夢「(あと1点を入れればハットトリック。しかし……守りが強いな)」

トニーニョ「(――これ以上、失点はさせない……!)」

守備的な布陣を敷いていたパルメイラスは、MFのトニーニョまでもがクリアに行ける体制を整えている。
彼の空中センスはブラジル代表でも有数であるため、彼の存在は私にとって厄介だった。

妖夢「(……取り合えず、ここは全力で行くしかない!)」

サルサノ「……ゴクリ」

906 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 02:12:31 ID:eWdRcQZ2
――その為、私は全力で彼を迎え撃つ事にした。
私は新田君から低いボールを貰うと、PA内で大きくジャンピングボレーの恰好に出た。

バッ! グワアアアアアアアアアアアアアア……ッ!!

妖夢「(大丈夫だ。さっきは間違えたけれど、もう私は失敗しない。完璧に、絶対に決めてみせる……!)」

そのシュートを、私は前半戦の時に失敗している。
しかし、このシュートよりも強力なシュートを今の私は知らない。
故に必然、私はこのシュートに出るしかない。
頭が強制的に先程の失敗をフラッシュバックさせるのを押し留めながら、
私は気丈にボールを撃ち抜き、妖刀に念を籠めた。


妖夢「――食らいなさい。『待宵反射衛星斬』……!」


ドッ……ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
バギュルルルルルルルルルルルルルルル……ゴオオオオオオオオオオオオオオオッ!

907 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 02:14:07 ID:eWdRcQZ2

先着3名様で、

★妖夢→待宵反射衛星斬 64 (! card)(! dice + ! dice)=★
★トニーニョ→低いクリア 55 (! card)(! dice + ! dice)+(人数補正+1)=
 キーガン→ブロック 52 (! card)(! dice + ! dice)+(人数補正+1)=★
★サルサノ→パンチング 55 (! card)(! dice + ! dice)=★

【シューター】−【ブロッカー】
≧5→シュートは邪魔される事無く放たれた!GKとの勝負へ。
=4〜2→シュートは放たれた。しかしこの数値差の人数分威力が落ちてGKとの勝負へ。
=1、0、−1→ボールはこぼれ球に。そして左から順に
(ストラットがねじ込み)(翼がねじ込み)(ネイがフォロー)
≦−2→パルメイラスボールに。
【シューター】−【キーパー】
≧2→妖夢の待宵反射衛星斬がパルメイラスゴールを切り裂く!
=1、0、−1→ボールはこぼれ球に。そして左から順に
(ストラットがねじ込み)(翼がねじ込み)(ネイがフォロー)
≦−2→パルメイラスボールに。
【補足・補正・備考】
今回については、反則・負傷判定は発生しないこととします。
この判定でねじ込みになった場合、無判定でねじ込んだ選手のゴールとなります。

908 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 02:14:40 ID:???
★妖夢→待宵反射衛星斬 64 ( スペードA )( 4 + 3 )=★

909 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 02:15:53 ID:???
★トニーニョ→低いクリア 55 ( ハート2 )( 2 + 5 )+(人数補正+1)=
 キーガン→ブロック 52 ( ダイヤ9 )( 3 + 3 )+(人数補正+1)=★

910 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 02:19:47 ID:???
★サルサノ→パンチング 55 ( クラブK )( 6 + 1 )=★
集いし力が拳に宿り、鋼を砕く意志と化す!光差す道となれ!

911 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 02:21:15 ID:???
えー

912 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 02:24:28 ID:???
サルサノ「希望を与えられ、それを奪われる。
      その瞬間こそ人間は一番美しい顔をする。
      それを与えてやるのが、俺のファンサービスさ」

サルサノ「お前のシュートは素晴らしかった! コンビネーションも、戦略も!
      だが! しかし!! まるで全然!!! この俺を倒すには程遠いんだよねぇ!!! 」

913 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 02:26:34 ID:???
これまで決定率100%を誇る最強のシュートを2本連続で防いだ
サルサノ君はすごい(確信)

914 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 02:35:43 ID:???
……と、言った所で今日の更新はここまでにします。
明日は試合後のイベントを挟みつつ、妖夢の章完までやれればと思っています。
皆さま、本日もお疲れ様でした。

915 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 03:34:40 ID:???
シュート自体は他に決まってるからまだなんとかなるさ。
ただ、運が...

916 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 05:50:27 ID:???
奇跡は二度も三度も起きない。
サルサノ……。大真面目に、ゲシュマイデッヒ・パンツァーをシンクロ召喚出来るんじゃ……。

917 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 07:47:17 ID:???
グロロー
これはもう切腹しかあるまい〜〜!

918 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 20:58:45 ID:???
今からでも遅くない、聖徳王と娘々は半人前を斬り捨てて
サルサノをスカウトすべきだ。それでいろいろと(オカルトやファンタジック的な意味で)
鍛え上げれば、サビチェビッチとまではいかなくてもシューマッハぐらいは
いけるはず。

余談だけどシューマッハ程度の腕で、コインブラやカルロスたちを零封(キャプつば4)
できるとはどうしても思えない。この試合を見ていてシューマッハも
ゲシュマイデッヒ・パンツァーをシンクロ召喚出来るんじゃないかと思ってしまう。

919 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 21:25:16 ID:???
マジでゲシュマイディッヒ・パンツァーをシンクロ召喚したんじゃね?

920 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 21:48:35 ID:???
こんばんは、ゆっくり&文章中心となりますが更新再開します。
>>910
集いし力が拳に宿り鋼を砕く(拳で防ぐとは言ってない)
>>912
キーガンさんに続いてサルサノさんが誕生し、ブラジル代表GK入りする可能性が微レ存ですねw
>>913
この試合に限っては決定率0%ですね…
>>915
結果だけ見れば2ゴールで上々ですが、妖夢自身が納得できるかは別な話ですね。
>>916
ポスト2回として考えても1/166ですから、奇跡に近いレベルだと思います。
>>917
こうなるとあまりのショックでマジでやりかねないですね…

921 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 21:54:26 ID:???
>>918-919
まさかサルサノさんがここまで評価される流れになるとはw
コインブラやカルロス零封って森崎で漸く出来るかできないかのレベルですよね。
まあ4のコインブラ君カルロス君は2や本スレ程の強選手じゃ無いですが…
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
★妖夢→待宵反射衛星斬 64 ( スペードA )( 4 + 3 )=71★
★トニーニョ→低いクリア 55 ( ハート2 )( 2 + 5 )+(人数補正+1)=63
 キーガン→ブロック 52 ( ダイヤ9 )( 3 + 3 )+(人数補正+1)=59★
★サルサノ→パンチング 55 ( クラブK )( 6 + 1 )=62★
≧2→妖夢の待宵反射衛星斬がパルメイラスゴールを切り裂く!
※シューターのカードとキーパーの数値の和が14となったため、ポストとなります。

ゴオオオオオオオッ!

トニーニョ「――相変わらず、凄いスピードだ……!」

キーガン「すまん、取れん……!」

サルサノ「も、もう万事休すだ……!」

パルメイラスで守備に出たメンバーは、総じて私が繰り出したシュートに絶望していた。
空中に飛び出して右脚を真剣の如く振り抜いて、速度のみに特化した私の奥の手、
『待宵反射衛星斬』は先程の失敗を黒く塗りつぶすように、絶対の速度と精度をもってゴールを抉ろうとしていた。
……しかし。

922 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 21:55:59 ID:???
ガイイイ………ン!

妖夢「……!?」

あり得ない音が起きた。完璧な私が決して上げる事の無い金属的で無機質な音。
そしてそれは私にとって、恐怖と絶望の象徴とも言える音だった。

実況「えっと……こ。これは、ゴールポストだ! 妖夢選手、必殺のシュートを放ったは良いが、
   なんと……なんと! ボールを思い切りポストに当ててしまった〜〜!」

ストラット「!? ……全く、しっかりしてくれよ!」

グワァァァッ、バシュウウウウウウウウウッ!

サルサノ「……ぐっ!(駄目だ。ヨウムのシュートでバランスを崩してしまった以上、俺では……!)」

ズバァァァァァァァァァッ、ピピィイイイイイイイイイッ!


実況「……幸いにも零れ球自体は味方のストラット選手がボレーシュートでねじ込みを図り、
   サンパウロFCは駄目押しの7点目を挙げる事は出来ましたが……。
   ――しかし。しかし! 妖夢選手、どうしても今日はパッとしません!」

923 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 21:57:16 ID:???
妖夢「……う、う。ああ……?!(ど――どうして。どうして! どうして、こうも決まらないの!?
    私は何も間違っていない。辛い特訓もこなして強くなったのに。
    なのにどうして、私はまだ過去のような失敗を繰り返すの……!?)」

着地した私は、素に帰って泣き叫ぶのを辛うじて堪えるので精いっぱいだった。
バビントン君の優しい言葉を省みず、完璧を誓った結果がこうだとしたら、
私はなんて滑稽な道化なのだろうか。考えると泣くのを通り越して笑いすらこみ上げて来る。

ストラット「――結果的には俺達のゴールは変わり無い。
      それに、一流のFWがポストに悩まされるのは決して恥ずかしい事じゃない。
      シュート機会が多くなる以上、畢竟、ポストやミスキックの回数は増える」

ゴールを挙げたストラット君は、ハットトリックを喜ぶよりも先に私の隣で小さくそう呟いた。
……明らかに動揺していた私を叱咤しても逆効果だと捉えたのだろうか。
彼が叱咤では無く、冷静に語り掛けるのは珍しかった。

妖夢「私は、また迷惑を掛けてしまった……」

無意識に私はこう呟いていた。
ここで罪悪感を述べようが、チームメイトに謝罪しようが、今後の奮起を誓おうが意味など無く、
プロサッカーの世界においては、失態の穴埋めは次の結果で行う物だと知っていながら、
私は自分自身を慰める為の言葉を並べずにはいられなかった。

翼「……………」

そんな様子を、翼君が笑顔のまま黙って見つめていた。
彼は再び私に失望しただろうか。それとも、単に次の作戦を考えているだけだろうか。
どちらにしても、彼の不安定な笑顔は私をこの上無く不安にさせていた。

新田「……あ、姉御! ポストなら俺も良く経験ありますって! こないだの紅白戦の時だって……」

妖夢「(――新田君。私を励まそうとしている……)」

924 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 22:00:49 ID:???
それに追い打ちを掛けたのは、皮肉にも新田君の気遣いだった。
彼はおどけたような笑顔で私の肩をポンと叩き、心の底から心配したような声を掛けてくれる。

……私の所属するサンパウロFCは、概ね理想的なチームだった。
プロサッカー選手としての厳格さを持ちつつも、
不毛な馴れ合いに堕さない程度のフレンドリーシップを持つ選手が多く、
――そのお蔭で、現に私は今、皆に助けられている。

妖夢「(――同じだ。あの時と……あの、皆に迷惑を掛けて、惨めで暗くてどうしようも無い、
    幻想郷での、あの大会の時と、同じだ……!!)」

そして、そんなチーム環境は……私の心の奥底に封じ込めたトラウマを想起させるに充分だった。
ストラット君の穏やかさが、翼君の掴みどころの無い笑顔が、新田君の優しさが、申し訳なかった。

妖夢「(どこに行っても、何をやっても同じ。私は、弱いせいで、他人に迷惑を掛けてしまう……!」



         藍「――妖夢。確率学的にもポストの確率は7%もあるんだ。そう決して珍しい数値じゃない」


       幽々子「あらあら。妖夢ったら、相変わらずダメダメね〜。でも、ま。そんな所も可愛いんだけど」


                  橙「えっと……。よ、妖夢さんだったら何とかなりますよ! 頑張って下さい!」


妖夢「(違う。……違う、違う、違う! 私はあの時の私とは違う! 違うはず、なのに……!)」

925 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 22:02:23 ID:???
――不甲斐ない過去の自分に対するエールが、今の自分に対する励ましとリンクする。
やれ決定率100%だ、全試合ハットトリックだ、銀色の死神などと言われ、
すっかりその気になっていた私の姿はさぞかしお笑いだった。
もしも状況が許すなら、自ら残り半分の命を絶ってでも、私はこの場から逃げ出したかった。

妖夢「(でも、それは単なる逃避に過ぎない。逃げようが、自ら命を絶とうが。
    それは私の弱さを証明する事にしかならない……)」

しかし、この場で逃避を選ばない程には、私の心は弱く無かった。
中途半端な強さが、より多くの痛みと苦しみを生む事を、私は身を持って感じていた。

妖夢「(私がもっと強ければ、この程度の失態なぞ気にせず次に行けるのに。
    私がもっと弱ければ、この場から逃げ出して、全てを忘却の彼方に押し込めるのに……!)」


翼「……さん。魂魄さん?」

……私が我に返れたのは、翼君の声がきっかけだった。
私は結局、暫くの間茫然とPA前に立ち尽くしていたみたいで、
キャプテンの彼が声を掛けて来てくれたようだった。

翼「随分とショックを受けていたようだね。大丈夫?」

妖夢「……もう、大丈夫だ。問題無い」

翼君は言葉でこそ私を心配してくれていたが、明らかに訝る様子を隠さなかった。
……無理はない。幾ら実力が高くとも、たった二回シュートをミスしただけで、
取り乱して狼狽するような選手を置きたくないと考えるのはごく当然だ。
この私の返答に応じて、彼は交代を申し出るつもりだったのだろう。

翼「……ま。試合はもう後10分位だから、別に良いけどね。
  頼むから、リオカップの時までは、今のを引きずらないでくれよ?」ニコッ

926 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 22:03:58 ID:???

そして、今の私の対応はギリギリ及第点だったらしく、
翼君はベンチに居るジウ君との交代は提案せず、皮肉交じりの笑顔で返すにとどめた。

妖夢「(……リオカップ。そうだ。私は、そこで優勝しなくてはならないんだった)」

また、彼が何気なく発した単語は、私に残り10分を走り切る程度の動機を与えてくれた。
……リオカップ。これから約2か月後に開催される、若手サッカー選手の登竜門とも呼べる大会にして、
私が優勝を目指すべき大会。

妖夢「……私はまだやれる。シュートも撃てるし、守備参加もする」

私は翼君にそう告げて、次のパルメイラスのキックオフに備えた。
翼君はそんな私を笑顔で見送った。……何を考えているのか分からない、狂気を湛えた笑顔で。


*****


――ピピィイイイイイイイッ!
ピッ、ピッ、ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

実況「……試合終了! 8−0! 8−0でサンパウロFCの勝利です!」

――そして、その後試合は恙なく終わった。
せめて1点は挙げて帰りたいパルメイラスは後半32分、
幾度も成功を重ねて来たネイとトニーニョのコンビプレイで中盤を一気に突破しようと企むも、
翼君がここで漸く『ファンタジスタ』としての技量を見せてパスカットに成功。
そのまま周囲の声も聞かず「ヒャッホー!」と叫びながら単身突破して、『フライングドライブ』で3ゴール目。
翼君は1試合で3ゴール2アシストと、まさしくサンパウロの元祖スーパースターに恥じぬ活躍を見せる事となった。

927 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 22:06:07 ID:???
翼「あーあ。流石に1試合10ゴール10アシストは出来なさそうかなァ」

そして、翼君の口からこんな狂った独り言が飛び出す中――パルメイラスは明らかに戦意喪失。
サトルステギとトニーニョとの間にいざこざがあったらしく、中盤から前線への攻めが上手く行かない。
そうこうしている間に、私がもう一度ハットトリックの機会を伺おうとするも、
キーガンを中心とした最終ラインが粘り、得点の機会は結局無く。

トニーニョ「(……やはり。俺にはキャプテンの器が無いのか。……モリサキが居ないと、駄目なのか……?)」

キャプテンのトニーニョが、ファンからのブーイングを受けながらあからさまに落胆して見せる中。
……こうして今、試合を終える運びとなったのだ。

妖夢「(終わった……)」

そして試合を終えた私は、ほっと胸を撫で下ろす。
最近は試合が終わった後は喜びや悲しみよりも安堵の気持ちを抱く事が多かったが、
色々と波乱のあった試合である今日においても、その感情は同じだった。

妖夢「(だけど、まだ完全な終わりでは無い。もっと、もっと強くならないと……)」

――今日の試合は私にとって散々だった。一応2ゴールの活躍は挙げていたため、
名指しで糾弾される程では無かったにせよ、シュートミスの後の態度については、
試合後ロベルト監督(を通した翼君)からきつく注意された。

928 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 22:08:45 ID:???
新田「あの。姉御……」

新田君がおずおずと私に声を掛ける。試合中、私は彼の気配りに礼を言う事が出来なかった。

妖夢「……ありがとう。ごめんね、新田君」

そのため、私はこの場で新田君に対して感謝の意を告げる。
彼は少し照れたように顔を赤らめて、私にこう言ってくれた。

新田「あの……ホントに、姉御は気に病む必要無いと思いますから。
    日ごろの活躍度合いで言えば俺なんてカスですし。あ、勿論現状に甘んじる気はさらさらないですけど。
    でも、その……。例え何があろうと、俺は姉御の事、凄く尊敬してますから」

妖夢「………すまない」

再び私は謝罪した。謝罪以外に、私は今の自分の感情を表出させる方法を知らなかった。



サンパウロ 8 − 0 パルメイラス  試合終了!

929 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/14(日) 22:10:17 ID:???
…と、言った所で一旦ここまでにします。
出来れば今日中に、パチュリーと妖夢等の絡みを書きつつ、
妖夢の章完まで書いていければと思っています。

930 :森崎名無しさん:2016/02/14(日) 22:17:34 ID:???
判定に一回負ける度にイチイチ落ち込むからむしろ昔より弱くなってる
試合中に判定に勝つごとに耳元で「みんな迷惑に思ってる」とか「何も成長してない」とか絶望的な言葉を吹き込み続ければ簡単に勝てる
……まぁうどんげさん操作なんでそんなこと出来ないんだけどさ!

931 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 00:12:38 ID:???
*****


〜試合後・スタジアム入口〜

パチュリー「一体どういう事? こんな短い間に……」

試合を一通り観戦していたパチュリーは、スタジアムの選手用出入り口に待ち伏せして妖夢を呼び出した。
サポーター達が試合の余韻に浸って喧噪を作る中から少し離れた、
休憩用のテーブルに座りながら、パチュリーは改めてこう妖夢に問いかけた。

妖夢「パチュリーさん。全幻想郷選抜のコーチ兼選手であろう貴女が、どうしてここに?」

パチュリー「私は今は全幻想郷選抜じゃないのだけれど、それは置いといて。
       ――そうね、まぁ。……あんたの活躍を聞いてね。応援に来たのよ」

妖夢「そうだったんですね。……どうでした、私のプレイ?」

妖夢は生意気そうな表情を必死に作って強さをアピールしているようだが、
ハッキリ言って彼女にそういうキャラクターは似合わない。
明らかに無理しているようにしか見えないし、恐らく周囲もそれに勘付いていると思ったが、
パチュリーは敢えてそれを指摘せずに正直な感想を述べた。

パチュリー「あれだけのプレイが出来る選手は幻想郷にもそう居ないわ」

……一つのミスであれだけ取り乱す選手もそう居ないわ、とまで言わなかったのは、
パチュリーが見せた最低限の優しさだった。
妖夢はパチュリーの評価に対して無機質に軽く頭を下げ、半分冗談っぽくこう言った。

妖夢「ある方からコーチを受けたんですよ。これで私さえ居れば、幻想郷はパーフェクトですよね」

932 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 00:14:14 ID:???
――その表情は、間違いなくパーフェクトで無かった。
実際、妖夢の試合を見ていたパチュリーは勘付いていた。
彼女の実力は確かに二流クラスから一流へと上がったが、精神面では未熟さが残ると。
……いや、むしろ。精神面で未熟であるにも関わらず、大きすぎる力を身に着けたが故に、
彼女は今、そのギャップに苦しんでいると推測出来た。

パチュリー「……ある方、ね。聖徳太子がサッカーコーチを兼任するとは、世も末だわ」

妖夢「――聞いているんですね。私が、【ハイパーカンピオーネ】の一員として、
   次の『幻想スーパーJr.ユース大会』に出場すると」

パチュリー「当然よ。……正直に言えば、今日はあんたの成長ぶりを視察するのが目的で、
       遥々ブラジルまで来てやったのよ、私は」

妖夢「そうですか。……それなら、言っておきますけれど。私はこの程度では終わりません。
    もっともっと強くなります。もっともっと完璧になります。……見ていて下さいね」

妖夢はこの台詞を最後に席を立った。「この後、用事があるので」と言っていたが、
パチュリーは深く詮索するのを止めて、深く椅子に座り込んで思索していた。

パチュリー「(豊聡耳神子が主催する【ハイパーカンピオーネ計画】。
        私達はこの計画について、詳しくは理解していないけれど、
        もしも今の魂魄妖夢のような才能ある選手を、幻想郷のみならず世界中から集めているとしたら。
        それは……ある意味では、八雲紫率いる全幻想郷選抜代表よりも厄介な手合いとなりそうね)」

賢者とは常に考え叡智を活かす者と信じるパチュリーの思考は止まらない。
いつしか彼女は一旦妖夢から離れ、現状を俯瞰的に再整理しようとしていた。

933 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 00:15:15 ID:???
パチュリー「(私はなし崩し的とは言え、【プロジェクト・カウンターハクレイ】の一員となった。
        これは、八雲紫が率いる全幻想郷代表を倒す事で、妖怪中心だった幻想郷の秩序に一石を投じるもの。
        そして同時に、このキャプテン候補である鈴仙は、大会優勝時に発生するエネルギーを使い、
        八雲紫の中に潜む恐るべき月の神霊――『純狐』を祓う事を目的としている。

        そんな中で、【ハイパーカンピオーネ】は、【プロジェクト・カウンターハクレイ】と『純狐』との戦いにおいて、
        いわば第三極として、これまで殆ど目立たず水面下で。しかし、着実に人里の人間の支持を集めていた。
        彼らの主張としては、『妖怪の排斥と人間の独立』と、我々と似て非なる発想がベースとなっているようだけど。
        ……それが本心からの主張であるかすら、分からないのよね)」

パチュリーが改めて、妖夢が……正確には妖夢の背後で蠢く計画について警戒を強めていると。

??「やあ。貴女は紅魔館の賢者、パチュリー・ノーレッジさんだったね」

パチュリー「……あんたは」

妖夢に代わり、パチュリーの向かいの席に着く女性が一人居た。
彼女は美しい金髪を梟の耳のように纏め上げ、漆黒のスーツを男性さながらに着こなし、
如才無き笑顔を湛えながら親しげに話しかけて来た。

パチュリー「豊聡耳神子。あんたが直接弟子の試合を観戦しに来ていたとは意外だわ」

パチュリーは憎々しげにそう呟いた。
明らかな敵意を向けられても尚、神子は柔和な笑みを変えないままに話し始める。

神子「……成程。妖夢と会って話したのか」

934 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 00:16:28 ID:???
周囲の声はおろか、その者の内心の欲や思考すら聞き取れる豊く聡い耳を使い、
神子はいきなり本題を切り出し始めた。……とは言え、その内容は非常に抽象的だったが。

神子「私は思う事があるのだよ。サッカーのコーチはピアニストに似ているとね」

パチュリー「はぁ……。意外に詩人なのね」

神子「――家にあらば 妹が手まかむ 草枕 旅に臥やせる この旅人あはれ。
    ……私とて、万葉集に編纂される程度には歌を嗜むさ。……と、話は逸れたが。
    どんなに良いピアノでも、弾き手が平凡なら平凡な音しか出ないという事を、私は言いたかったのだよ」

パチュリー「となると、今の妖夢は弾き手に恵まれていないみたいね」

パチュリーは皮肉と率直な感想を籠めて神子にこう返した。
ただでさえ先の全幻想郷選抜大会から神子の一派には借りがあるパチュリーは、
神子の事を決して快く思っていなかった。

神子「はは、そうかもしれないね。……私も、弾き方を変えてみる必要があるかもしれない」

そして、それでも神子はパチュリーの言葉をさらりと流し、

神子「政治と同じく、サッカーは芸術だよ。パチュリー・ノーレッジ。それも高度な芸術だ」

パチュリーに対し、一言警告の言葉を告げて立ち上がった。

神子「……今、イタリアで戦っているシニョーリも芸術品だ。彼は今の時点では妖夢以上の傑作。
    もしも貴女がイタリアの地でサッカーを修めるのであれば――彼には注意した方が良い」

タッ……。

935 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 00:18:50 ID:???
パチュリー「……今さら、何故私がこれからイタリアでサッカーをする事を知っているのかは聞かない。
       あと、頂いた忠告については素直に謝意を述べてあげるわ。ありがとう。
       だけど一つ教えて頂戴。……弟子のケアに行くとしたら、方向が逆よ。どこに行くのかしら」

パチュリーはその言葉を受け止めつつも、
神子は妖夢が去って行った方向とは逆の方向へと向かおうとしたため、彼女をこう問いただした。
すると、神子の口からはパチュリーの予想外の発言が飛び出した。

神子「――おや。私がいつ、彼女の観戦とケアをするためにここに来たと言ったかな。
    私が今日、この地に来たのはそれがメインでは無いのだよ」

パチュリー「……? どういう事よ」

神子は口で説明する代わりに、一枚の紙切れをパチュリーに渡した。それは名刺だった。
名刺にはこう書かれていた。

パチュリー「長野県幻想郷市 市長 豊聡耳 神子……?」

神子「――今日は幻想郷でも特色的な民芸品の輸出に関する取引でブラジルに来ただけさ。
    そして、今からまた別の姉妹都市協定にかかる会議に出席しないと行けない。
    私もそうそう、彼女のコーチングに時間は割けないという事だよ」

神子は今度こそ去って行った。
よく見ると、いつもの豪族とは別の黒服の警備員が彼女の周囲を取り囲んでいた。

936 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 00:22:01 ID:???

パチュリー「正気の八雲紫が、彼女のような政治屋に統治を委任するとは考えられない。
       となると。……幻想郷も、いよいよ私の知る幻想郷では無くなりつつある、という事かしらね」

パチュリーはそんな神子の後ろ姿を見て、心底残念だと言わんばかりにそう呟く。
そして、ここには居ない妖夢の親友であり、自身の弟子でもある人物に対して、心の中でこう呼びかけていた。

パチュリー「(強さを得ても尚、より完璧な選手を目指し自らを苦しめる魂魄妖夢。
        そんな彼女を操り、自身は狂った八雲紫をも利用しつつ、着実に力を蓄える豊聡耳神子。
        ――どうやら、こっちも無視出来なくなって来たみたいよ)」

――パチュリーも立ち上がってスタジアムを後にする。
彼女もまた、今夜早々にイタリアへと発たなくてはならなかった。

パチュリー「(私が思うに、鈴仙。……今の魂魄妖夢を救えるのは。
        彼女というピアノの正しい弾き手となれる人物は、きっと貴女しかいない。
        あんたが今、ブラジルで何をやっているのか良く分からないけれど……頑張るのよ)」

937 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 00:28:25 ID:???
*****

〜サンパウロFCホームスタジアム・観客席〜


――そして、パチュリーが去った後のスタジアムには、彼女のみが残された。


鈴仙「――妖夢。あんたもここで……色々と、頑張って、いたんだね」


今や無人となった観客席の一番前で、兎耳の少女は一人佇んでいた。

かつての友人との知られざる邂逅を経て、彼女は友人の栄光と苦悩を同時に知り……そして決意する。


鈴仙「……これからは、私も、頑張らなくっちゃ」


――魂魄妖夢の物語をその足掛かりとして。

鈴仙・優曇華院・イナバの新たな物語は、今ここに動き出した。



            第三章 プロジェクト・カウンターハクレイ 海外修行編

                 ――オープニング   妖夢の章――

                             完



938 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 00:33:56 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでにします。
明日から漸く鈴仙の章に入れると思います。
人気投票結果の発表もやりたいですが、気分的に本編を進めたいので、
暫く鈴仙の章を進めてからにしようかなと思っています。
>>930
6差で負けたり7%しかないポストを引き当てたりしてるから、ここまで落ち込んでるってのもあるので、
もっと実力の高い相手に普通に負けた場合は、ここまで落ち込まないと思いますw
妖夢への精神攻撃は有効ですが、悪質な攻撃はサンパウロの仲間達が黙ってないですね。

それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

939 :森崎名無しさん:2016/02/15(月) 00:49:23 ID:???
長野県「またウチが舞台になるのか壊れるなぁ」

940 :森崎名無しさん:2016/02/15(月) 23:15:06 ID:???
乙なのです

妖夢さん……本来は素晴らしい成長を見せつけて鈴仙さんにカッコよくライバル宣言するはずだったのに


941 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 23:33:31 ID:???
こんばんは、更新していきます。
>>939
洩矢神社や諏訪湖が幻想郷に引っ越して来た=幻想郷は長野県という説が有力ですが、
三月精やら深秘録の描写を見ると幻想郷と同じ座標?に東京みたいな大都市が広がってるので、
実際どうなのかよくわかりません(汗)
このスレでも早苗さんが赤口中学のエースやってそうな世界なので、また長野県という事でお願いしますw
>>940
乙ありがとうございます。どうも情けない感じになっちゃいましたね…w
ま、まあその分、新田君とかバビントン君とか翼君とか、サンパウロメンバーのキャラをより掘り下げられたから(震え声)

942 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 23:34:49 ID:???

            第三章 プロジェクト・カウンターハクレイ 海外修行編

                    ――鈴仙の章  その1――


――時は、妖夢と鈴仙の邂逅の二週間前にさかのぼる。

鈴仙「……うわぁ! ここがブラジルの首都・サンパウロですか!」

魅魔「何言ってんだい。ブラジルの首都はブラジリアっていう、もっと内陸の都市だよ。
    とはいえ、このサンパウロの方が栄えてるってのは事実だけどね。
    人口はおよそ一千万。ブラジル最大かつ南半球最大のメガシティさ。
    ……さて。さっそく行こうか。何、レンタカーを使えばすぐさ。あたしが運転する」

幻想郷を離れた鈴仙は怪しげなスカウト・魅魔と共にブラジルへと渡った。
正式に【プロジェクト・カウンターハクレイ】の一員となった鈴仙の修行の地。それが、ここサンパウロ。
近代的なビルディングと古典的な教会が立ち並び、
数多の人種が慌ただしく行き交うこの街こそが、幻想郷に代わる新たな物語の舞台だった。

鈴仙「(魅魔さんは、これから私が所属する予定のクラブチームへと案内してくれるって言っていた。
    一体、どんなチームなんだろう。今からワクワクが止まらないよ……!)」

鈴仙は期待に胸を膨らませながら、魅魔が運転するかなり古臭い黄色の車に乗り込んだ。

943 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 23:36:35 ID:???
ブロロロロ………。

子どもA「キャハハ! いくぜみらーじゅしゅーと!」

子どもB「ハッハー! そんなのラクショーだぜ! それっ、ぎがんとぶろっくー!」

バシッ、バシッ……。

鈴仙「危ないなぁ。あの子たち、路上でサッカーなんてしてて。大人は怒らないんですか?」

魅魔「誰が怒るか。未来のスタープレーヤーは皆、こうやって小さい頃からサッカーセンスを磨いて来たのさ。
    ま。……お前さんは今から、あんなサッカー漬けの人生やって来た人種ばっかりと過ごすんだけどね」

鈴仙「は、はい!(……まさにサッカーの街、って訳ね。このブラジル・サンパウロって街は)」

クラブチームへと向かう道中、サンパウロの街はサッカーに溢れていた。
路上でサッカーに興じる子ども達、専門的なサッカー談議を止めようとしない若者から中年達。
浮浪者の老人ですらも、見事なリフティングを見せながら物乞いを行っている。
10月のカラリとした秋晴れの中、彼らの全員がそれぞれ、幻想郷には決してない輝きを放っていた。

944 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 23:39:05 ID:???
魅魔「……おっ、見えて来たか」

そして、その輝きが収束する地点がサンパウロにはあった。
都心であるにも関わらず、その周辺だけは広々とした芝地が広がっており、
良く見るとその芝地の全てがしっかりと整備されたサッカーフィールドであると分かる。
数多くの子どもから少年、そして大人がそこでハイレベルなサッカーを行っており、
しかも驚くべきことに、こうしたフィールドは鈴仙が見た限りでも四面程確認できた。

鈴仙「! 魅魔さん、これって……!」

鈴仙の自信は、その中央に聳える未来的な銀色の建物を見て確信に変わった。
魅魔はそんな鈴仙の輝く目を肯定するかのようにコクリと頷いて、解説を始めた。

魅魔「サントスFC。ブラジルで初めて南米王者と世界王者に輝いたクラブチームであり、
    今現在においてもブラジルでサンパウロに次いで勢いがあるとも評される、最高のチームさ。
    現在は経営者がやり手の若社長に変わって、スウェーデンから輸入した科学トレーニングを導入。
    特に、あのクラブハウスのてっぺんにある球形の建物は凄い。地球上の2倍から100倍までの重力を発生させ、
    選手に超人的なサッカーパワーを与えるという、超最新鋭の技術が使われていると聞くよ」

鈴仙「凄い……! こんな凄い街の、こんな凄いチームで修行できるなんて……!」

魅魔の解説を聞いて、鈴仙はすっかり恍惚する。
もはや鈴仙の思考は、これから自分が送るであろう、バラ色のブラジルエリートサッカー生活への希望に独占されていた。

鈴仙「(高い意識と能力を持ったライバルとの切磋琢磨。幻想郷には無い、最新鋭のノウハウをふんだんに凝らしたトレーニング。
    そして豪華な設備に囲まれた、何不自由ないサッカー生活………!
    ど、どうしよう! こんなトコで修行したら、私……中山さん程度、軽く超えるんじゃない!?)」

945 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 23:42:31 ID:???

鈴仙「(ウフフ……永琳様。今度からサッカーにおいては、私の事を師匠と呼んでも良いのですよ……ウフフ……)」

魅魔「……さーて。後15分位かな」

ブロロロロ……

――それ故、鈴仙はすぐに気付けなかった。
鈴仙を乗せ運転する魅魔のオンボロレンタカーが、サントスFCの駐車場を何食わぬ顔で通り過ぎ、
そのまま整然とした都市から、裏通りにあるスラム街へと角を曲がっていった事に。


***


――そして、それから魅魔の見立て通りに約15分後。

鈴仙「え……? 何ですか、この場末のバー……。というか、アレ? 私の銀色で立派なクラブハウスは……?」

魅魔「何寝ぼけてるんだ。車酔いかい? ……ま、いいや。ちょっと待ってな」

鈴仙は汚物と犯罪の臭いが漂うこのスラム街でも一際醜悪な地区で、
魅魔から無理やり車を降ろされ、少しずつ現実を認識していった。
廃車寸前の車の部品をたかろうとする乞食達を煽りながら、
魅魔は腐った木かあるいは段ボールで出来ている酒場の玄関ドアを叩いた。

ドンドン!

魅魔「おい、ジジイ! 約束通り選手連れて来たよ! あん? 借金取り? ヤクザ?
    こんな美少女なヤクザが居る訳ないだろう!?
    ボケてないでさっさとドアを開けな! さもないとクラブハウスにガソリン蒔いて燃やすよ!」

946 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 23:44:23 ID:???
ヤクザそのものとしか思えないドスの効いた声で魅魔はドアの向こうの主と問答している。
これまで春だった鈴仙の脳裏に、今年一番どころか観測史上最大規模の寒波が吹き荒れた。
しかしそれも無理はない。
魅魔が発した言葉の中でサッカーらしい単語なんて、「選手」「クラブハウス」位しか無かったのだから。

ギイ……。

そして、軋むドアを開けて場末のバーから出て来た老人と魅魔のやりとりは、
既に不安で凍え切った鈴仙の脳内に追い打ちと言わんばかりに、
更なる絶望という名の液体窒素のシャワーを浴びせる結果となった。

老人「ホゲホゲ。……お前さん、エエケツしとるの」

魅魔「折角会ったと思ったら。なーに言ってるんだい、コーチ。
    あたしが魅力的なのはケツだけじゃなくて、顔や胸とかもだろう?
    ま。……生憎と新しい選手は、顔はともかく、尻も胸もほとほと貧相なのが申し訳ないけれど」

コーチと呼ばれた白髪をボサボサに伸ばした老人は、ヨボヨボと魅魔の尻を撫でまわしながら、
ギョロリと半魚人のような白目を鈴仙に向けて、品定めするかのように兎耳からつま先までを見たかと思うと。

コーチ「……ままま、合格じゃ。貧相なトコロもそれはそれでそそるってモンじゃ。
     それに何よりバニー耳がエエ。あれならそこそこ上玉じゃああよ。エエバニーさんになれるゾイ。
     どれどれ。もっと近くで見てみたいのお……。最近、視力が悪うて悪うて……」

ズッ、ズッ、ズッ……。

947 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 23:47:01 ID:???
鈴仙「ひ、ひいっ……、ち、近寄って来たよっ!?」

老人は左脚を引きずりながら鈴仙ににじり寄る。
鈴仙は恐怖て後ずさるが、廃墟ビルの壁が邪魔をして逃げられない。
老人の顔が近づく。酒と煙草臭い息が鈴仙の意識を更に錯乱させる。
いよいよ最後に老人は、鈴仙の腕をがしりと握りしめた。

鈴仙「(……わ、私。騙されたんだ。【プロジェクト・カウンターハクレイ】とか言うのも全部嘘で。
     私はこのまま、このおじいさんのオモチャにされちゃうんだぁぁぁ……!?)」

玉兎としての高い運動能力も、幻想郷の結界が破られてからは上手く働かない。
それでもこんな老人位、その気になれば返り討ちにする程度は余裕の筈だったが……。
パニックになった鈴仙が幾ら抵抗しても、老人は鈴仙を捉えて離さない。

鈴仙「(……!? い、意外と力が強い。そして近づいて思ったけれど。
    こいつのプレッシャー、並の人妖が持つソレじゃない……!
    熟練の軍人や長命の大妖怪が持つような、隙の無さを感じる……!?)」

コーチ「グヒヒ……お嬢ちゃん、エエ目をしとるな」

臭い息を吹きかけながらコーチは顔を醜くゆがめる。それは彼の笑い方だった。
そして、その表情のままに魔物は、鈴仙に対して――こんな、残酷な現実を突きつけた。


コーチ「遠いトコからようこそ、お嬢ちゃん。ここがあんたがこれから所属するチーム。
     スポーツ・クラブ・コリンチャンス・バウリスタ。SCコリンチャンスのクラブハウスじゃ。
     ワシはコーチの、ヒ……いや、ソ……? アレ。ワシの名前って何じゃったっけ。
     ま、いっか。ワシはこのチームのコーチ兼監督じゃ。これから、イロイロと宜しくな。
     ……グヒヒ。エロエロとじゃないから安心して良いゾイ。……なんつって。……グヒヒ」



948 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/15(月) 23:48:26 ID:8EnEEX02

鈴仙「………は、はい?」

鈴仙は凍った思考のまま、オウムのように頷き返す。
それから反射的に魅魔の方を見るが、彼女は彼女で屈託のない笑顔で。

魅魔「――鈴仙。これがあんたのミッションだ。お前さんはこれから、
    かつてはブラジル1の名声を誇ったコリンチャンスを、このコーチや随時合流する仲間と共に立て直し。
    そして、ブラジル若手サッカー界の登竜門であるリオ・カップに優勝するんだよ!」

……そんな、例えるならば棍棒と布の服で魔王を倒しに行って来いとか言うような、狂気的なミッションを。
まるで隣町までお使いを頼むと言ったような口ぶりで、鈴仙に対して突きつけて来た。

鈴仙「……、み、魅魔……さん。私……!」

これに対し、中山やパスカルと出会い、幻想郷で様々な苦難と挫折を乗り越えて、強く逞しい少女へと成長した鈴仙は――。






鈴仙「そ、そそそ……。そんなの。そんなの、できるわけないでしょうがぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」






――白目を剥いて、口角泡を飛ばしつつ。
サンパウロはおろかブラジル中にも響き渡るような絶叫を持って、そのミッションの遂行を拒絶した。

949 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/16(火) 00:15:50 ID:YCfKTKyw
……と、言ったところで今日の更新はここまでにします。
明日はオープニングイベントを終え、最初の練習フェイズ位には入って行ければと思っています。
鈴仙の章その1の進行は、具体的にこうなります。全8ターンで、8ターン後にリオカップの第一試合があります。

  ターン開始
     ↓
・練習フェイズ:能力値を一つ選んで練習します。
     ↓
・イベントフェイズ:イベントが起こります。選択肢や判定で鈴仙が成長したりしなかったりします。
     ↓
 次のターンへ

なお、鈴仙の練習のシステムについては、基本的にはこれまでの方法・才レベルを踏襲しつつも、
前にあったご意見を踏まえ、練習での上限値や伸びやすさは、リオカップ時の才レベルに合わせる方式を取ろうと思います。
具体的には、現時点の鈴仙の練習での伸びやすさはこうなります。

A ドリブル(53)  上がりにくい
B パス(53)    上がりにくい
C シュート(54)  上がりにくい
D タックル(51)  普通
E パスカット(50) 普通
F ブロック(47)  上がりやすい
G せりあい(52)  上がりにくい

所持中のフラグ:スルー(15/20)、オフサイドトラップ(18/20)、フェアプレイ精神(17/20)

※現時点で既に「上がりにくい」が多いですが、これは鈴仙が既にそれだけ強い選手である為です。
 なお、リオカップ前の能力値の上限値は57としています。(才レベル8相当)
※所持フラグについては、練習一回で! dice分の経験値が取得できるようにします。

もしも何かご意見ご質問等ありましたら、可能な限りで対応します。
それでは、皆さん、本日もお疲れ様でした。

950 :森崎名無しさん:2016/02/16(火) 23:23:18 ID:???
乙なのです

今さらだけどオフサイドトラップどうしよう
マスターとアリスが合流したら意味なし?
この二人が同時にフィールドにいないことは少ないだろうし

951 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/17(水) 00:26:59 ID:KPOJ4iDY
鈴仙「はぁ、はぁ、はぁ……」

魅魔「漸く叫び疲れたみたいだね。気は済んだかい」

鈴仙「全然済みませんよ。もう……! 冗談ですよね?」

少女が一人叫んでいても、サンパウロのスラム街は平和だった。
正確には、少女の一人二人が泣き喚いている位が、ここにとっての平和だった。
鈴仙はぜいぜい肩で息をしながら、救いを求めて魅魔の方をチラリと見るも……。

魅魔「いーや。冗談じゃない。さっきの説明通り、あんたはこれからコリンチャンスの一員となって貰う。
    そしてそのコリンチャンスってのは、この場末のバーがクラブハウスで、
    浮浪者のおっさんに石投げられてそうな不潔なジジイをコーチ兼監督に任命しているチームだ」

彼女は改めて、絶望的な現実を鈴仙に突きつけるのみだった。

鈴仙「なんで……なんで、こんなチームに、私が……。っていうか、そもそも本当にコレ、チームなんですか!?」

魅魔「間違い無くチームだ。間違い無くチーム登録している。これはあたしが保障するよ」

鈴仙「チームっていうなら、メンバーはどこに居るんですか!?」

魅魔「えっと。……ま、そこら辺のサッカー好きの子どもを集めれば、11人位行くだろ」

鈴仙「練習用のフィールドは!?」

魅魔「んー。……そりゃ、この狭くてごちゃごちゃしたスラム街の路上だよ。
    あんたも知ってるだろうけど、アラン・パスカルとファン・ディアスはストリートサッカーから大成したんだよ。
   ルールに囚われない感覚を、今ここで身に着けるチャンスじゃないか!」

952 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/17(水) 00:29:10 ID:KPOJ4iDY
鈴仙「立派なクラブハウスは!? 経営スタッフ陣は!?」

魅魔「……馬鹿だね。クラブハウスなら、あんたの目の前にあるじゃないか」

鈴仙「あれって、ただの場末の立ち飲みバーですよね!? しかもそこら中穴とか空いてるし!?」

コーチ「失敬な。あれは地域密着型のチーム運営を目指して作った、バー一体型クラブハウスじゃゾイ!
     ……グヒヒ。雇ったバニーさんとワシは常に密着しとるがな。……グヒヒ」

鈴仙「あんたは話に入らないで下さい!? そして何気にお尻触らないで下さい!」

やけくそになってツッコミまくる鈴仙。それをのらりくらりと躱しまくる魅魔。
そして偶に乱入しては尻を揉んでくるエロコーチ。
狂気的な三人はこのまま狂気的を暫く繰り返していたが、
やがて埒が明かないと思ったらしく、魅魔はこう鈴仙に対して冷たく言った。

魅魔「やれやれ。あの中山政男とサッカーをしていたと聞いたから、
    さぞかしハングリー精神が強いと思っていたんだが。
    所詮は、八意永琳に守られた環境じゃないと、こうも泣きだすモンか」

鈴仙「……それ。挑発してるつもりですか」

魅魔「さあね」

肩を竦めてそう嘯く魅魔だったが、中山政男という単語に鈴仙の心が幾許か揺れたのは間違いない。
しかし、結論から言うと鈴仙がこのチームの所属を決定したのは、中山政男に関する事よりも、
次に魅魔が発言した事に関する事情の方が大きかった。

953 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/17(水) 00:33:38 ID:KPOJ4iDY
魅魔「……さて。ま、あたしはそろそろここでお暇させて貰うよ。次の仕事がある事だしね。
    ――それじゃ、鈴仙。頑張って借金返すんだよ」

鈴仙「え? 借金…………?」

魅魔「――感謝しな。あんたはそうやって泣き事言うに決まってる……。って、
    予測したあんたの姫様からの、最後の贈り物だよ。
    これを読んで、お前さんには強くなって欲しい……という願いが込められてるようだ」

魅魔は立ち去り様にポイと投げた一枚の紙。それは契約書の写しであり、そこにはこう書かれていた。

鈴仙「……我々永遠亭は、ふわたり手形の借金返済のため、鈴仙・優曇華院・イナバを、
   3カ月の契約をもってコリンチャンス様に貸し出します。どうぞ好きなように使ってやってください。
   ――永遠亭総合病院・理事長、蓬莱山輝夜ぁ……!? 姫様、何やってるんですか……!?」

コーチ「グヒヒ……。ま、最初の方は簡単な接客業務と皿洗いをやって貰おうかの。
     ワシ専用の夜の皿洗いさんになって貰っても構わんがの。グヒヒ……」

鈴仙「せめてサッカーをさせてくださいっ!? というか夜の皿洗いって何ですか!?
    とりあえずなんでもかんでも『夜の』って言っとけばエロくなると思ってたら、それは大間違いですからね!?」

コーチ「サッカー……? グヒヒ……やめとけやめとけ、そんな金にならんモン。
     コリンチャンスの方針は自給自足だぁ。バーで稼がん奴にゃあ給料やらんぞ」

鈴仙「それってもはや、プロサッカーチームじゃなくてただの草サッカーチームじゃないですか!?

コーチ「……あーん? 聞こえんのお。最近すっかり耳が遠くなって……グヒヒ。何か言ったかぁ?」

鈴仙「――もういいです……(ううっ……師匠、姫様、皆……私、もう帰りたいです。お金無いけど……)」

――サッカー大会で優勝し、世界を救うと意気込んでいた鈴仙・優曇華院・イナバ。
そんな彼女に待ち受けていた記念すべきファーストミッションは……スラム街でのバニーガール勤務だった。

954 :森崎名無しさん:2016/02/17(水) 00:37:51 ID:???
コリンチャンスってブラジルで屈指の人気チームだよね…

955 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/17(水) 00:38:36 ID:???
――と、言ったところで鈴仙の章その1のオープニングはここまでになります。
明日からはいよいよ本格的に練習に入っていきます。
>>950
乙ありがとうございます。確かにスキル被りになってしまいそうですね…。
別スキルのフラグと連動させるなど、
習得に向かうのが完全なハズレ行動にならないようにはしようかと思います。

それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

956 :森崎名無しさん:2016/02/17(水) 00:39:59 ID:???
もしかして「コソソチャソス」かもしれんぞ

957 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/17(水) 00:56:54 ID:???
すみません、気付けばレス数が結構行ってましたので、
ここで新スレのスレタイも募集しようと思います。

【】鈴仙奮闘記35【】

の形で考えて下さると幸いです。
次スレでは鈴仙の章その1をやりつつ、もしスレが余れば人気投票の結果発表をやりたいと思っています。


>>954,>>956
幾らフィクションとはいえ、実在するチームをここまでメチャクチャに書いて良いのかという所はありますが、
その辺りについては補完する為のストーリーを色々考えています。(なんで今こんなにボロボロなのか、とか)
ただとりあえず、>>948で言ってたように、このスレでもかつてはブラジル1の名声(人気)を誇ったチームではあります。

>お願い
先回りしてお願いしてしまう事になりますが、拙作においては、
リアルなサッカークラブ経営とか、正確なブラジル情勢の描写は求めないで頂ければ嬉しいです(汗)
勿論そうした要素は描写の参考にはしますが、この辺りは作者の書きたい事とか好みの問題という事で、
何とかご理解頂いた上で、寛容な気持ちで読んだり参加して頂ければ大変ありがたいです。

それでは、今度こそお疲れ様でした。

958 :森崎名無しさん:2016/02/17(水) 10:46:37 ID:???
【住めば】鈴仙奮闘記35【都?】

959 :森崎名無しさん:2016/02/17(水) 20:01:46 ID:???
【名門を】鈴仙奮闘記35【再建せよ】

960 :森崎名無しさん:2016/02/17(水) 22:56:29 ID:???
【マイナスからの】鈴仙奮闘記35【スタート】
【雑草魂】鈴仙奮闘記35【がんばれーせん】
【皿洗いとサッカー】鈴仙奮闘記35【サしか共通点ないぞ】

961 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/17(水) 23:02:09 ID:KPOJ4iDY
こんばんは、もうちょっとこのスレで更新していきます。
>>958
スレタイ提案ありがとうございます!
>>959
スレタイ提案ありがとうございます!

962 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/17(水) 23:04:19 ID:KPOJ4iDY
>>960
スレタイ提案ありがとうございます!
〜11月1週・基礎練習フェイズ〜

鈴仙「はぁ……。寄宿舎(ダンボールハウス)は夜寒いし、地域奉仕活動(バーの仕事)はしんどいし……帰りたいよぉ。
    ――でも、練習はするだけしなくちゃ。幸い、ボールだけなら沢山あるし……どれもボロボロだけど」

今週重点的に鍛える能力を選んで下さい。カッコ内は現在の能力値です。

A:ドリブル(53)  上がりにくい
B:パス(53)    上がりにくい
C:シュート(54)  上がりにくい
D:タックル(51)  普通
E:パスカット(50) 普通
F:ブロック(47)  上がりやすい
G:せりあい(52)  上がりにくい
H:フラグの開発をする。(更に選択)

所持中のフラグ:スルー(15/20)、オフサイドトラップ(18/20)、フェアプレイ精神(17/20)

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

963 :森崎名無しさん:2016/02/17(水) 23:08:57 ID:dnUyjGgY


964 :森崎名無しさん:2016/02/17(水) 23:27:52 ID:mZWoBntI
H

965 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/17(水) 23:37:06 ID:KPOJ4iDY
H:フラグの開発をする。(更に選択)

鈴仙「――でも、今日は疲れたから。一度初心に返って、これまでに身に着けて来た理論の復習とかにしようかしら。
    具体的には……」

開発したいフラグを選択してください。括弧内は(現在の経験値/回収に必要な経験値)です。

A:スルーフラグを開発する。(15/20)
B:オフサイドトラップフラグを開発する。(18/20)
C:フェアプレイ精神フラグを開発する。(17/20)
D:その他の分野について、フラグを1から新たに開発したい。
  (選択肢の後に開発したい分野を選んでください。例:D シュート)

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

*Dを選んだ場合、経験値0/20の状態の、フラグのフラグを習得します。
 (判定結果次第で、一発でフラグを習得あるいは習得&回収する事もあります)

966 :森崎名無しさん:2016/02/17(水) 23:38:47 ID:dnUyjGgY


967 :森崎名無しさん:2016/02/17(水) 23:44:33 ID:BC5N9dj+
C

968 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/17(水) 23:53:01 ID:KPOJ4iDY
C:フェアプレイ精神フラグを開発する。(17/20)

鈴仙「今日は座禅でもしようかしら。そうしたら、きっと仕事とかで痛んだ心が癒されるかもしれないし……」

鈴仙はダンボールハウスの中で座禅を組んで心を無にし。
綺麗な気持ちでサッカーや日々の生活を行えるようにするべく、瞑想に励んだ。


先着1名様で、

★鈴仙のフェアプレイ精神練習(?)→! dice★

と書き込んでください。数値の合計が経験点にプラスされます。(現在17ポイント)

969 :森崎名無しさん:2016/02/17(水) 23:58:17 ID:???
★鈴仙のフェアプレイ精神練習(?)→ 2

970 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/18(木) 00:34:27 ID:RKSUVCP+
★鈴仙のフェアプレイ精神練習(?)→ 2 ★
→2ポイント増加!(現在17→19/20ポイント)

鈴仙「(……む。むむ。これは何やら、シバ神の宮殿とかが見えて来たわね。
     あとちょっとでサハスラーラ・ヨーガ位なら開きそうな……)」

夜通し必死に瞑想を続けた鈴仙は、人や妖怪をも超越した神の力に目覚めそうになるが……。

ピューッ……。

鈴仙「へっくしょん! ……うう。今の時期ならブラジルは初夏って聞いてたのに。
    夜はまだまだ寒いじゃないのよぉ……」

――コリンチャンス選手寄宿舎もとい集合ダンボールハウスの隙間から吹き付ける風のせいで、
鈴仙は後一歩でその機会を逃したりしていた。

鈴仙「(――でも。大分心が落ち着いて来た気はする。
     これなら、サッカーの試合みたいに切羽詰まった場でも、心を落ち着けさせる事が出来そう。
     ……後は、その精神を実践に行かせるか、かしら)」

とは言え。その副産物として、静謐かつ無欲な精神を抱く為の基礎を得た事は大きかった。
かつて友人である寅丸星から学んだフェアプレイの精神という物を、鈴仙は理屈ではなく心から理解しつつあった。


*鈴仙のフェアプレイ精神フラグの経験値が2ポイント上昇しました。(現在17→19/20ポイント)

971 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/18(木) 00:36:13 ID:RKSUVCP+
〜11月1週・イベントフェイズ〜
−鈴仙の一日・絶望編−


チュン、チュンチュン……

コーチ「おーい、起きろォ。でないと襲われるぞォ……グヒヒ」

鈴仙「むにゃむにゃ……後5分……。――って、襲わないでくださいっ!?」

コーチ「ワシは紳士じゃから襲わんよ。じゃが、回りのならず者はどうかな。……グヒヒ」

鈴仙「……ご忠告、感謝します」

鈴仙がブラジル・サンパウロのスラム街に来てから、本日で3日目の朝を迎えた。
魅魔に連れられやって来た、夢のようで悪夢のような一日目のショックは和らいでいたが、
だからと言って鈴仙が住まう寄宿舎という名のダンボール小屋の生活は、どこまでも絶望的だった。

コーチ「なーに言うとる。クラブハウスから徒歩0秒の寄宿舎とか。
     ますますサッカーに専念するに相応しい環境じゃろい」

と言うのはやたらと鈴仙に親しげなあのコーチ兼監督を自称する謎の老人だが、
バーの入口脇に鎮座する、犬小屋以下のダンボールハウスを寄宿舎と言い張るのは勿論、
碌にサッカーの出来ない環境でこんな事をのたまうのだから、ますます意味不明だった。
そして、そんな鈴仙の視線を気にせず、彼はコーチらしく鈴仙に今日一日の指示を出した。

コーチ「さて。今日のスケジュールを説明するゾイ。
     今日は……えっと。朝から社会奉仕活動。昼に個別強化練習。
     そして夜は地域住民との触れ合いセレモニーへの参加じゃの。
     くーっ。流石過去の名門チーム! サッカーに地域活動に大忙しじゃのう!……グヒヒヒ」

972 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/18(木) 00:37:32 ID:RKSUVCP+
鈴仙「……要するに。朝は短期のアルバイト、昼は自主練タイム、夜はバーで接客業って事ですよね。
    昨日と全く同じじゃないですか」

はぁ、と溜息をもらす鈴仙だったが、同じ事を昨日やっていただけあって、少しは耐性がついていた。
というか、この位予測はついていた。もう多少の事があっても驚かない心算でいた。
そして、そんな鈴仙の態度なぞお構いなしに、コーチはボサボサの白髪をボリボリ掻きながら、

コーチ「グヒヒ……違う、違うぞォ。今日は奉仕活動の内容が違うゾォ。
     あ、ちなみにワシもこんなその日暮らしじゃが、パンツだけは毎日使い捨てとるゾイ。
     セレブにとって、パンツは消耗品じゃからな。……グヒヒ」

――と、九分九厘は無駄な情報をフケと一緒に撒き散らしてくる。
鈴仙はもはや辟易とした様子だったが、奉仕活動の内容が違うというのは微妙に気になった。

鈴仙「パンツは心底どうでも良いですけれど。今日はどんなバイトなんですか?」

コーチ「おっ。気になるかァ。……ええぞ。教えてる。今日のお前のバイ……じゃなかった。
    地域奉仕活動の内容は……」

鈴仙「(自分でバイトって認めてるじゃないのよ……)」

973 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/18(木) 00:39:26 ID:RKSUVCP+

果たして。コーチが答えたバイト……では無く地域奉仕活動の内容は。

A:新聞配達(最大ガッツが上がる……かもしれない。※現在既に高いので、殆ど上がりません)
B:土木工事(ドリブル、タックルが上がる……かもしれない)
C:訪問販売員(パス、パスカットが上がる……かもしれない)
D:ガードマン(ブロック、競り合いが上がる……かもしれない)
E:新薬の治験(判定で色んな事が起きます)
F:その他 自由選択枠 やりたい仕事があれば出来る範囲で聞き入れてくれる…かもしれません。

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

974 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/18(木) 00:42:05 ID:RKSUVCP+
――と、言ったところで今日の更新はここまでにします。
イベントフェイズは、大体こんな感じで1回につき選択・判定各1回程度で、
1〜2日で終わるよう、ややアッサリ目に進めて行こうと考えています。

もう少し更新出来そうなので、スレタイを引き続き募集します。

【】鈴仙奮闘記35【】

の形で考えて下さると幸いです。
次スレでは鈴仙の章その1をやりつつ、もしスレが余れば人気投票の結果発表をやりたいと思っています。

975 :森崎名無しさん:2016/02/18(木) 01:15:29 ID:Tck0Cn8o
E

976 :森崎名無しさん:2016/02/18(木) 01:20:18 ID:YSrOtBBU
E

977 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/18(木) 23:03:24 ID:RKSUVCP+
E:新薬の治験(判定で色んな事が起きます)

*****

〜サンパウロ市内・生命科学研究所〜

職員「なんだ、遅かったじゃないか。さぁ治験を始めよう」

鈴仙「あ、はい……」

――今日を生きる為のアルバイトの会場として、
鈴仙が連れられた場所は、サンパウロ市内にある清潔な研究施設だった。
『生命科学研究所』と看板のあったその建物の内部は美しい光が差し込み、
屋内にも関わらず青々とした木々が生い茂り、
鈴仙がこれまで月でも幻想郷でも見た事の無いような生物が蠢いている。
……そこではあらゆる生命が、極彩色の絵具の如く、不自然に輝いていた。

鈴仙「(治験なら師匠ので慣れてるし、給料も多そうだからラッキーって考えていたけど。
    よくよく見ると、異様な雰囲気の所ねぇ……ここ)」

冒頭で無機質な声で受付を行った職員を始め、
ここに居る者全てが全体的に人間では無い、妖怪的なオーラを纏っているような気がする。
耳を澄ませると、「何故こんな事に……」「そんな目で見ないでくれ!」「家に帰りたい……」などと、
狂気的な悲鳴やうめき声が聞こえて来そうだったので、鈴仙は意識して気にしないようにした。

職員「科学は決して悪魔の学問ではない」

最初に鈴仙を受付した職員は、鈴仙を施設奥にあるこじんまりとした個室へと案内すると、
そう言いながら鈴仙にフラスコに溜まった液体を差し出した。
人の肉をすり潰して発酵させたような、どす黒く澱んだ赤色の薬品を見て、
鈴仙ははぁ……と、溜息を吐く。正直に言って、積極的に飲みたい代物では無い。

978 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/18(木) 23:04:53 ID:RKSUVCP+

職員「どうした。早く飲め。私はただ、真実が知りたかったのだ」

鈴仙「(どうして過去形なのよ……)」

しかし、鈴仙が躊躇していると職員は身体をわさわさと震わせて明らかに不快感を示すため、
どうしても飲まない訳には行かなかった。

鈴仙「(……しょ、所詮は遅れた地上の人間が作った薬品よ。
    月の叡智たる永琳様の薬をよく治験している私にかかれば、この位余裕だっての!)
    え、えーーい!」

ゴク、ゴクゴク……

鈴仙「ま、まずいっ!?」

――(元)月の民としての誇りに掛けて、鈴仙はこの薬を一気に飲み干した。
すると、鈴仙の身体にはある変化が訪れて……?

979 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/18(木) 23:06:00 ID:RKSUVCP+
先着1名様で、

★新薬の効果→! card★

と書き込んでください。マークで分岐します。

JOKER→鈴仙「私は……超レイセンだ!」とてつも無い効き目でスキル習得!
ダイヤ→凄い効き目だ! 必殺フラグを一つ所得。(どの分野のフラグかは更に判定)
ハート→元気が出てきた! 次の練習時で判定値に更に+3。※フラグ開発時は影響なし
スペード→全体的に固くなった! ブロック+1。
クラブ→何故か爆発した! 最大ガッツ−20。
クラブA→鈴仙「赤い血の流れる身体が欲しいよう」鈴仙、肉体が崩壊する。能力値がランダムで−1。

980 :森崎名無しさん:2016/02/18(木) 23:06:33 ID:???
★新薬の効果→ ダイヤQ

981 :森崎名無しさん:2016/02/18(木) 23:18:03 ID:???
気になって元ネタ調べたが悲惨だな、じきにソイレントシステムかジェノサイドームあたりも出てきそうだ
果たして鈴仙は生き残れるのか!?

982 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/18(木) 23:19:47 ID:RKSUVCP+
★新薬の効果→ ダイヤQ ★
ダイヤ→凄い効き目だ! 必殺フラグを一つ所得。(どの分野のフラグかは更に判定)

鈴仙「(あ……あれ!? 何だかスゴい頭がスッキリして来た!?)」

薬を飲んで数分後、鈴仙の頭は雲が開けた如く明晰になった。
これまでの不安がスッと解け去り、集中力が増し、
今の自分なら色々と思いつく事が出来るような気がする。

職員「自然を理解し、その謎を解き明かすのが我らの役目だ……」

そんな不吉な事を言いながら、職員は鈴仙に起きた変化を観察している。
暫くは簡単な問診や検査が続いたため、この時鈴仙はやや暇だった。

鈴仙「(そうだ。折角頭が冴えてるんだから、今の内に色々と新技の構想とか考えておこっと)」

そして自分自身も、この異様な場に慣れて来た事もあり、
鈴仙の明晰な思考はサッカーの方向へと次第に向き始めた。
そんな中、鈴仙が考えていた内容は――。

983 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/18(木) 23:21:13 ID:RKSUVCP+

先着1名様で、

★新薬の効果2→! dice★

と書き込んでください。数値によって習得できるフラグが分岐します。

6=シュートフラグ
5=ドリブルフラグ
4=パスフラグ
3=タックルフラグ
2=パスカットフラグ
1=競り合い(クリア)フラグ

984 :森崎名無しさん:2016/02/18(木) 23:22:36 ID:???
★新薬の効果2→ 2

985 :森崎名無しさん:2016/02/18(木) 23:22:43 ID:???
★新薬の効果2→ 1

986 :森崎名無しさん:2016/02/18(木) 23:48:03 ID:???
ハリネズミみたいなのが仲間になりそうだ・・・
アルカイザー的な何かがひらめき道場として使ってそう

987 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/19(金) 00:27:19 ID:LsKf1KU2
★新薬の効果2→ 2 ★
2=パスカットフラグ

鈴仙「(そうね。今なら必殺パスカット、『アキュラースペクトル』の精度をもっと上げられるような気がする……!)」

*鈴仙がパスカットフラグを習得しました。(経験値:10/20ポイント)


*****

職員「……治験は終了だ。給料はSCコリンチャンス宛てに振り込んである」

鈴仙「あ、ありがとうございました……」

鈴仙がパスカット技について構想を練り始めてから数十分後。
機械のように職員は短くそう告げて、鈴仙のアルバイトは終了した。
そのまま職員は鈴仙を入口前まで丁寧に案内してくれたので、
道すがらに鈴仙は思い切って、こんな事を尋ねてみた。

鈴仙「あの。……私が飲んだ薬って――何だったんですか?」

職員「…………」

すると、職員はピタリと足を止め、恐ろしい顔で鈴仙をみやる。
もしかして、聞いてはいけない事を聞いてしまった気がして、
鈴仙は不安に駆られてしまうが……職員は、あっさりとこう答えた。

職員「……テアニンだ」

鈴仙「え、……テアニン? それって、お茶とかに含まれてるアミノ酸の……?」

職員「そうだ」

988 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/19(金) 00:28:25 ID:LsKf1KU2
すんなり薬の中身を教えてくれたのも意外だったが、その成分についてはもっと意外だった。
施設の名前とか、周囲の雰囲気とか、職員の台詞回し等から、
すっかりここが悪魔の施設だと考えてた鈴仙は、
人間の臓物やら麻薬成分やらが入っているとか言われても驚く気は無かったが、
その平和的な内容に逆に驚いてしまう。……いや、別に喜ぶべき事なのだが。

職員「この研究所では、自然由来の成分の、人体における効果について研究している。
   そして近年、茶葉にのみ多く含まれるテアニンが、リラックス効果や集中効果を高めるという報告が出ている。
   だから、その濃縮サプリメントを治験する必要があった」

鈴仙「……はぁ。ですけど、テアニンにしては穏やかじゃない色と味してませんでした?
   どっちかって言うと、ヒトのプラセンタ的な何かみたいな」

職員「あれは飲みやすさを考慮して、研究所の方で着色・風味加工をしたのだが。
    ……口に合わなかったならば、謝罪する」

鈴仙「べ、別にそんなお辞儀しなくて良いですけど……。じゃ、じゃあ。研究所で蠢いてた謎な生物は!?
    あんなん、私今まで見た事ないですよ!?」

職員「あれは我々とは別の部署が収集している、絶滅危惧種となった海洋生物のサンプルだ。
    確かに、民間では見かけない種も居るが」

鈴仙「そ、そうっすか……(――考えてみれば、幻想郷に海って無いし。
    月の静かの海にも、基本は穢れたる生命が住まう事は無かったし……私が知らないのも、当たり前かぁ)」

鈴仙は最終的に、ぶっきらぼうながらも意外と律儀な職員に出口まで見送られてバイトを終えた。

鈴仙「(う、ううーん。私は良い発想を得たし、研究所は別にマトモな所で良かったのに。
    どうしてこうも腑に落ちないのかしら。何というか、『生命科学研究所』って言うからには、
    モンスター化した職員とか、ヤバイ思考の所長とかが居て欲しかったような……)」

――円満にバイトを終え、多額の収入を得た筈の鈴仙は……しかし何故か、最後まで首をかしげていた。

989 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/19(金) 00:30:05 ID:LsKf1KU2
*****

〜コリンチャンス・クラブハウス〜

――そして、腑に落ちないままにも、今の能力を維持する為の自主練メニューを淡々とこなした鈴仙は、
同じ日の夜においては、日中の出来事が霞む程の激務にさらされる事となる。

客A「おーいお嬢ちゃーん! ビール持って来て、ビール!」

客B「こっちはワインだ! 今から仲間4人で一気に空けるから4本持って来て!」

客C「お嬢ちゃん可愛いねー。いくつ? どこから来たの?」

コーチ「尻触ってエエ?」モミモミ

鈴仙「だーっ、一辺に喋らないでくださいよーっ! というかコーチもセクハラしてないで手伝って下さい!」

スラム街の中央辺りに位置するらしいコリンチャンスのクラブハウス……と、言う名の立ち飲みバーは、
意外にも周辺の住民にとっては憩いの場だったしく、顔中につぎはぎのある男や
指や腕が無い男、てっぺんから足先まで真っ黒な男がワラワラと群れあって、そこそこの盛況を得ていた。

鈴仙「(しかし、流石現在のSCコリンチャンスの収入の5割をカバーする目玉事業と言っても良いわね……。
    私の想像以上の客入りで、今日も今日とて大変だわ……)」

ちなみにコーチによると、収入源の残り5割は鈴仙のバイト収入であり、
支出の主な要因はサッカーの試合にかかる人件費や遠征費らしい。
もうなんかプロサッカーチームとして色々おかしかったが、鈴仙はもはや突っ込む事に疲れていた。
キツキツかつ露出激高のバニースーツを着るだけでも苦痛なのに、
その上実質一人で接客から調理、皿洗いまでをこなさなければならないのだから、無理も無かった。

990 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/19(金) 00:33:49 ID:LsKf1KU2
客D「おーい、バニーの姉ちゃん。踊ってくれよ! サンバだ!」

鈴仙「はぁ? わ、私そんなんできませんってば!」

また、鈴仙にはこうした無茶ぶりに答える義務があった。
当然、最初はこうやって断ってはいたが、自分は到底最後まで断り切れないと、
鈴仙はこれまでの経験則から察知していた。

客「「「「おーどーれ! おーどーれ!」」」」

鈴仙「こ、コーチぃ……。無理ですよ。私、踊れません」

そして、こうした場において自堕落なコーチに頼る事は無意味という事も、
鈴仙はブラジル来訪3日目にして既に学習していた。
実際、白髪で髭もじゃの中年は何もせず、むしろ鈴仙の尻を触りながら一緒にコールしている。

鈴仙「はぁ、分かったわよ。やりますよ、やりまーす!」

……こうして、半ばヤケクソにサンバをこなそうとする鈴仙だったが、
正直未だにサンバが何かよくわかっていない。
そんな逆境の中、無謀にも行われた無茶ぶりの結果は……?

991 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/19(金) 00:35:18 ID:LsKf1KU2
先着1名様で、

★鈴仙のダンス→! card★

と書き込んでください。マークで分岐します。

JOKER→鈴仙にはダンスの才能があった! スキルステップ(仮)のフラグを入手!
ダイヤ・ハート・スペード→まあまあお茶を濁して終わる。
クラブ2〜6→鈴仙、コケて失笑を買う。(数値的な変動は無し)
クラブA→露鈴兎(全裸)「ヒャッホーー! 全裸でサンバじゃーー!!」※BADENDです

992 :森崎名無しさん:2016/02/19(金) 00:36:06 ID:???
★鈴仙のダンス→ クラブ7

993 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/19(金) 00:37:37 ID:LsKf1KU2
★鈴仙のダンス→ クラブ7 ★
ダイヤ・ハート・スペード→まあまあお茶を濁して終わる。

客B「何か微妙だったなー」

客A「ま、悪くは無いけどな。次までに鍛えとけよ!」

鈴仙「は、はいっ! ありがとうございます!(――ううっ。労働って大変だなぁ……)」

――と、希望に応じて努力しても、決して認めてくれるとは限らないのが客である。
その事自体は薬売りの仕事で何度も実感している筈だったが。
やはり、こうした忙しい状況だと、鈴仙の心も繊細になり過ぎるのも無理は無かった。


******


鈴仙「――ありがとうございましたー!」

客L「……ありがと」

そして、鈴仙の務めが終わったのは、深夜12時を大きく回ってからだった。
最後の客を店前まで送り出し、鈴仙は後ろで何かの雑誌を読みつつ
鼻くそをほじっているコーチに向かって、業務の終了を宣言した。

コーチ「ほーい、お疲れさんじゃゾイ」

鈴仙「コーチも手伝って下さいよ……」

鈴仙の泣き言を無視して老人は鈴仙の耳をいじって遊んでいる。
こうした態度にも、もはや鈴仙には怒る気力すらせず、
がっくりと肩を落としながら悲嘆に暮れるしかなかった。

994 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/19(金) 00:38:43 ID:LsKf1KU2
鈴仙「私。なんでこんな事しなくちゃいけないんだろう……。こんなの、無意味だって。
    早くサッカーの練習をしないと、私、中山さん達に――」

――しかし、その中には単なる悲嘆に終わるべきでない箇所もあった。
鈴仙がそう弱音を吐いた時、コーチの眼が明らかに変わっていた。

コーチ「――全ての物には意味がある。いや、正確には。
    全ての物に意味を見出せん奴は、何時まで経っても凡夫のままだよ」

鈴仙「……何ですって」

凡夫と切り捨てられた事に少しだけ腹を立て、鈴仙が不機嫌そうに応えるも、
コーチは目を座らせたままで、こう言い放った。

コーチ「接客は、一度にフィールド全体を見渡す技術が無いと成立せん。
     接客が出来ん奴は、ゲームメイクも三流じゃ。
     皿洗いは、単純な作業を如何に合理化・理想化できるかについて問われる。
     往時の名FWは皆こぞって、単純なシュート練習を理想的にこなしておる。
     ダンスは言うまでも無い、ドリブルやパスカットのテクニックの基本じゃ。
     ……そんな事を考えながら、お嬢ちゃんは仕事が出来てるかのう?」

995 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/19(金) 00:42:30 ID:???
鈴仙「…………!」

それは、普段のエロスケベジジイとは打って変わった、冷静だが老獪な将軍の表情だった。
そして、彼の急激な変貌に驚くべき事も無く――。

コーチ「………ぐう」

鈴仙「……客と一緒に呑んだ酒に酔いつぶれて寝てるし」

……謎の老人は、そのまま大いびきを掻いて寝てしまった。
そのあまりの自由さに、鈴仙はもう泣き言を言っていた自分が馬鹿らしくなって――。

鈴仙「……はぁ。また明日も頑張る……しかないか」

――そのまま、白い絶望を抱いたまま、バニースーツのままでバーの脇にある
ダンボールハウスで睡眠を取る事にした。
今日は最低でも、明日は何とかなるかもしれない。
そう無根拠に信じる事が、鈴仙の心の慰めになっていた。

996 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/19(金) 00:46:01 ID:???
……と、言ったところでこのスレでの更新はここまでにします。
本当は練習フェイズまで行きたかったのですが、
残りレスが厳しいので、明日に次スレを立ててからにします。
>>981
既に永遠亭で体験してる説があるので多分大丈夫です>ソイレント&ジェノサイドーム
>>986
そういや仲間になってましたね…。私は初見で行ってボコボコにされた思い出が強いです。

次スレのスレタイについても、もし追加であれば書き込んで頂ければ幸いです。
それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

997 :森崎名無しさん:2016/02/19(金) 03:46:51 ID:???
乙です
研究所を練習場所にすればいろんな技がすぐに思いつきそう
デュラハンが叫び声挙げまくってそうだけど

998 :森崎名無しさん:2016/02/19(金) 21:31:12 ID:???
【新天地は】鈴仙奮闘記35【魔境】

999 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/21(日) 21:04:25 ID:???
新スレを立てました。
これからも拙作を宜しくお願いいたします。
【新天地は】鈴仙奮闘記35【魔境】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1455897713/

>>997
遅くなりましたが、乙ありがとうございます。
今の鈴仙だったら返り討ちに合いますね…

1000 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/02/21(日) 21:06:05 ID:???
埋めときます

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