キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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屁理屈推理合戦withキャプ森

243 :吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/23(月) 00:08:57 ID:???
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【地獄の悪魔の復讐】

航海を生業とする北欧の一民族の言葉に、「フラーノ」という言葉がある。
これは彼らの言葉で「地獄」を意味し、東の果てにある大きな島の、その中央に位置すると言われていた。

彼らの中には、本当に「地獄」が存在するのかと疑い、実際にこの眼で確かめたがる者も多く居た。
その者達は好奇心から、伝承の地への航海を試み――そして、実際に辿り着いた者すらも居た。

だが、その地から戻って来た者の全ては人格が変わり果て。そして、口を揃えてこう言ったのだ。

「良いよなァ……お前は。どぉせ俺なんか……」

――部族における協議の結果、彼らは地獄(フラーノ)にて悪魔に憑依されたとし、全員が処刑された。
そして、誰もがフラーノへと近づく事を固く禁じられた。


かの部族が滅んでから数百年の時が流れ、かつて地獄とされたフラーノの地にも開拓民の手が入り、
今では「ふらの」と呼ばれる美しき土地として、多くの人間が住み着くようになった。

しかし、地獄の悪魔はまだこの地に潜んでおり、闇より現れ人間を蹴り殺していると、一部の民俗学者は主張する。
その悪魔は、かつて滅んだ民族が使った言葉に準じて、今でも住民の間でこう呼ばれている。


「ヤグ=ルマ」


――と。

244 :吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/23(月) 00:10:19 ID:???

***


――暗い暗い空間の中で、松山はひたすらに泣き叫んでいた。

「あにきぃ……あにきぃ……助けてよぉ……」

とある事件をきっかけに、ふらの中のサッカー部員はこぞって自分を虐めるようになった。
陰湿な嫌がらせが始まった時は、彼らを全く疑っていなかった。
しかし、それは少しずつエスカレートしていって、やがては決定的な事件が起き。
それでも、まだ仲間を信じたいという想いが残っていて……。
――そう考えている内に、自分はここに閉じ込められたのだった。

「あにきぃ……痛いよぉ……」

……結局は自分が悪いのかもしれない。だけどそれ以上に、仲間に裏切られたという想いが、
仲間を信じていただけに強く、重く、自分の心を蝕んでいた。
暗闇に支配された体育用具室の中で、松山は無力に泣き続ける事しかできなかった。

「光を掴もうと思っても、……結局はこうなんだ。痛いしっぺ返しを食らうだけなんだ……」

内心は絶望に覆われていた。光を目指して前に進んでいた筈の自分の人生は、もう無い。
あるのはただただ辛い現実と、真っ暗闇の無間地獄だけだった。


245 :吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/23(月) 00:11:47 ID:???
それでも、松山は一度だけ泣くのを止めて、口元を歪めてみせた。
……笑うって、どうやるんだっけ。彼はそれすらも判らない様子だった。
だが――結果として、この行為は彼にとって致命的だった。
何故なら、伝承において悪魔は、人間の笑い声を聞いて現れるとされていたからだ。

「……今、……笑ったか? ……俺の事を……笑ったか?」

松山は無意識的な笑顔を止めて、顔を強張らせる。
……他には誰もいない筈の体育用具室。その暗闇が人間の形を取っていた。
背の高い、やさぐれた様子の『悪魔』は、落ちくぼんだ瞳で松山の事を見つめている。

「……笑うな。……笑うな。……笑うな笑うな笑うなワラウナワラウナァアァァァ!!」

――松山の笑いがきっかけとなり、悪魔はその怒りを剥きだしにした。
人間の形をとったシルエットが更に膨れ上がり、飛蝗と人間を掛け合わせた怪物となって、
松山の背丈の倍近くの跳躍を見せて襲い掛かる。

ドガン。ドガン。ドガンドガンドガンドガン。

飛蝗を象った悪魔は、跳ね回って何度も松山の頭を叩き付けた。
まるで特撮映画のワンシーンのように悪魔は飛び回り、その頭蓋を叩き割る。
その跳躍が何回か続いたところで――彼はもう、動かなくなっていた。

「あにきぃ。あにきぃ……ごめんなさいぃぃ……」


246 :吹飛の魔女モロサキーチェ ◆85KeWZMVkQ :2017/01/23(月) 00:13:30 ID:???

「良いよなァ……お前は。どぉせ俺なんか……」

血塗れとなった松山の死体を見下ろす形で、
悪魔は伝承通りの言葉を呟きながら、暗闇の中、佇んでいる。
この暗闇を破ったのは松山の絶命から数分後の事だった。

「おい、さっきの音は一体どうした――って」

「えっ……!? あ、あれは……」

体育用具室に松山を閉じこめていたふらの中サッカー部員の数名――小田と加藤が、
先程の騒ぎを聞いてその扉を開け放った。
そして、彼らはその目で見てしまったのだ。――かつての伝承にあった、地獄の悪魔を。

「マブシインダヨ……オマエハ……!!」

悪魔は怨嗟の声と共に、次の標的に向かって襲い掛かる。
小田はその時漸く自分達の行為の愚かさを知ったが、時は既に遅かった。
彼は死の間際、薄れいく意識の中で自分を殺した伝承上の悪魔の名前を呼んだ。


「ヤグ=ルマ……!」



――ふらの中サッカー部は全員死亡。
新聞各社はこれを、「地獄の悪魔ヤグ=ルマによる所業」として大体的に報じた。

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