キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【不屈の心は】鈴仙奮闘記40【この胸に】

1 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/07/16(日) 23:34:44 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで世界を救う為に努力する話です。
他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆
【追う蜃気楼は】鈴仙奮闘記39【誰が背か】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1488553934/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html

☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠に並ぶ名選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。
彼女は永琳の庇護下で実力を大きく伸ばし、幻想郷中の勢力が集まった大会でMVPを勝ち取った!

しかしその夜鈴仙は、自身の成長は永琳の計画であった事、その計画の副作用で
月に眠る大いなる厄災――「純狐」が八雲紫の身体を乗っ取り目覚めつつある事を明かされる。
そして、鈴仙は永琳に懇願される。「純狐」の純粋なる狂気を止めるべく、
次に紫が計画した大会――『幻想スーパーJr.ユース大会』に優勝し、世界を救って欲しい……と。

鈴仙は戸惑いつつも、永琳の願いを受け入れ、
幻想郷の秩序の変革を狙う新チーム・リトルウイングズの一員として、大会に優勝することを誓った。
その後、修行のため鈴仙は単身ブラジルに渡り、様々な困難や出会いを経験しつつも、
アルゼンチンで成長した佳歩達の助力により、リオカップの準々決勝・フラメンゴに見事勝利した。

しかしここで、鈴仙と行動を共にしていた謎の記者アヤソフィアこと射命丸文がチームを離脱。
同時に彼女は語る。自分はかつて「コインブラ」と名乗り、ブラジルに滞在していた事。
自分の愛した義弟アルツールが、暴徒化したファンにより植物人間にさせられた事を。
――いくつもの謎を残しながら、鈴仙達の戦いは続く。次なる相手は準決勝・パルメイラス戦!
森崎の意思を色濃く残し、また、サンパウロへの逆襲に燃える彼らの実力は高く、鈴仙達は苦戦を強いられるも、
イギリスで光を掴むべく覚醒したさとり達の力もあり、前半終了間際で2−0と優位を保っていたが……?

445 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/09(月) 23:59:17 ID:???
更新再開します。
>>444
乙ありがとうございます。イタリア編の構想に大分時間がかかってしまいました…
これ以降は暫く、構想に時間がかかるものは無い……と、信じてます(汗)

参加者さんから判定や投票、感想等を頂けるのが本当にうれしいですし、
それがこれまでのスレの原動力にもなっていたと思うので、度々休止した上で我儘なお願いですが、
これからもまた参加して頂ければ助かります。

446 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/10(火) 00:00:59 ID:???

★パチュリーの特殊スキル習得判定@→ ハート3
 パチュリーの特殊スキル習得判定A→ クラブJ ★

パチュリー「私は、兎に角要所要所でのキック力と精度の向上に特化した練習を行ったわ。
       お蔭で、フリーキックやアシストに繋がる場面と言った、重要部分でのプレーの正確性が高まって――」

慧音「……何故だ」

ここで、しびれを切らした様子で慧音が立ち上がった。話を遮られた格好のパチュリーだが、
彼女はこの展開すらも想像していたかのように、静かに……慧音が何を続けるかを見守ると。
生真面目すぎる女教師は、堰を切ったように話し始めた。

慧音「確かに、要所要所でのプレーの向上は重要だ。しかし……何故だ。
    パチュリー殿。貴女はここに来た時とは矛盾した事を話している!
    貴女は、基礎力の向上は必要だと言っていたし、単に世界で『戦える』レベルでは満足しないと。
    そう言っていた筈なのに……貴女の能力には、それに見合った向上が見られない!」

パチュリー「……ええ、そうね」

そしてその指摘は、パチュリー自身も慧音から。あるいは彼女を良く知る別の誰かから、
受けて当然のものであると感じていた。
パチュリーと慧音は、イタリアに来た当初では選手の格として三周り程の差があったが、
今ここに至っては、殆ど互角の状況と化している。
その背景には勿論、先の全幻想郷選抜大会では活躍できなかった慧音が、
イタリアの地で奮起し、またその環境が彼女に適していた事が最も大きかったが。
パチュリーについては、ここイタリアで伸び悩んでいる風にすら見受けられた。
だが、その原因については慧音にとって明白だ。

447 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/10(火) 00:02:25 ID:???
慧音「……パチュリー殿。貴女は恐らく、我々の新チームにおいてもコーチ役を期待されるだろう。
    それに、新チームの選手力は残念ながら世界の強豪と比べても低く、
    嫌が応でも戦術に頼らなければ、勝ち星を挙げる事は難しい局面も多々出て来るだろう。
    ……しかし! だからといって!」

パチュリー「『だからと言って、私が自分の練習のほぼ全てをコーチングと戦術強化に充てているのは、
        おかしいのではないか。特に、これから共に大会を戦い抜く新チームではなく、
        一時の修行先であるチームの戦術面を必要以上に鍛えても、意味が無いのではないか。』
       ――貴女は、こう言いたいのよね」

慧音「……そうだ」

パチュリー程直球に言うつもりは無かったが、慧音はそこを問題と捉えていたのは事実だった。
実際、ここイタリアに来てからのパチュリーは、自らの実力向上を差し置いてでも、
他の選手へのコーチングや、戦術理解に関する、チーム全体での講義や演習を優先し過ぎており、
流石に問題ではないかと考えていたのだ。

慧音「――これから新チームに合流するにあたって、誰もが皆、
    パチュリー殿の高い能力に期待する。世界の強豪に翻弄されて窮地に陥る中、
    唯一総合力で彼らと対抗でき得る選手として、誰もが皆貴女に期待する!
    圧倒的な個人技同士のぶつかり合いは、如何に戦術を重視していても、避けられない!」

――慧音の見積もりによると、今のパチュリーの総合力は世界では中の中か中の上。
確証はないが恐らくは、海外で鍛えた静葉やてゐ等、新チームの中堅選手と大差ないだろう。
多彩な必殺技を兼ね備えている事を踏まえても、今の彼女は、決して切り札足り得ない。

慧音「パチュリー殿。貴女は……新チームでの自分の役割を、どう考えている!
    単なるコーチ兼戦術指南役でも……それでも良いと考えているのかッ!」

448 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/10(火) 00:03:42 ID:???
慧音はもどかしかった。
かつての自分がなれなかった『守備の要』という役割をこなせる自信がついて来た一方で、
その自信の原動力となった、尊敬すべき選手が道を見失っている。そんな風に見えていた。
だからこそ、彼女は強い口調でパチュリーの想いを問いただそうとした。しかし。

パチュリー「……いくつか、私と見解の相違があるようね」

基本的に口数の多く無く、また他者と好んで交流する事の少ないパチュリーは、
それに対して素直に応えない。これに関してはパチュリー自身の失態とも言えたが、
とにかくそれは、慧音にとって納得のいく答えではなかった。

慧音「……本当に、それでいいのか……! いくら『プロジェクト・カウンターハクレイ』を掲げ。
    博麗の巫女という強力な個を、集団の力で倒すのだと言っても。
    それでもやはり、強力な能力を持った司令塔は。ファンタジスタは。守護神は。
    認められ得る必要があるのではないか……?」

慧音は、悔し紛れにそう言い返すも、次の句が思いつかない。
しかしここに、今回の二人の対立の深い根があったとも言える。

パチュリー「(私は賢者を名乗ってはいるけど、サッカーについては圧倒的な個が貴ばれるべきでない、と思っている。
        慧音は戦術を嗜みはするけれど、その奥では幻想郷的な、圧倒的な個への幻想が抜けきっていない。
        ……この差、かしら)」

パチュリーは頭が良い。だからこそ、今回の対立の原因は充分に分かっていた。
しかしながら、彼女は、こうした場を丸く収める方法について詳しく無かった。
集団戦術を重視している一方。賢者として孤高を貫いた故に、対等な友を築く機会を殆ど失っていた。


449 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/10(火) 00:05:14 ID:???
***

青娥(観客席)「如何ですか、太子様? パルマの出来は。
          私が引き抜いたシニョーリくんも、太子様がスカウトした慧音さんも。素晴らしい成長でしょう?」

神子(観客席)「うむ。特に素晴らしいのはシニョーリだな。サンパウロの魂魄妖夢が伸び悩んでいる事を考慮すれば、
          彼女の代わりに彼を、我々のチームのCFに据える選択肢が出て来たよ。
          上白沢慧音については……やはり、まだ少々迷いが見えるな。
          急な引き抜き故、致し方ない部分もあるだろうが……。
          上手く行けば我々の戦力増強。失敗しても、『プロジェクト・カウンターハクレイ』側に、
          一定の禍根の種は植え付けられる筈だ。急造の作戦にしては、リスクは少ないだろうさ」

パチュリーと慧音との戦いを、観客席で見守る勢力がいた。
彼女達の対立を利用し、今回の対戦を実現した黒幕である豊聡耳神子と、その従者とされる霍青娥の二人である。
神子は、『ハイパーカンピオーネ』計画を立ち上げ、
八雲紫や博麗霊夢により、既存の秩序体勢の強固さを示さんとする全幻想郷代表と、
その秩序体勢に一石を投じる目的の『プロジェクト・カウンターハクレイ』のどちらにも属さず、
自らの政治思想の実現を目的として、陰ながら人間達を扇動し、その地盤を固めていた。

神子「(我々の発言力が馬鹿にならないと判断した八雲紫は、
    全幻想郷選抜大会後、暫定的だが私達に幻想郷の統治を認めた。
    無論彼女は、自分達が大会で勝利し、旧勢力の優位性を証明した暁には、手のひら返しで、
    私達を喜んで追放しにかかる心算なのだろうが――それを防ぐ為の軍団が、『ハイパーカンピオーネ』だ。
    私達の理念を具現化したチームが、八雲紫達の理念を具現化したチームを倒した時、革命が生まれる)」


450 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/10(火) 00:06:55 ID:???
そして、『ハイパーカンピオーネ』の正体とは、その地盤を確固とし、
自らの表向きの主張――人間の人間による人間の為の政治――を体現した、理想のサッカーチームである。
彼女はそれを創る為に、これまで幻想郷中はおろか世界中を闊歩し、適正を持つ人物を集めていたのである。
全ては、人間達からの支持の為――ひいては、自らを中心とした、日本の統治の為に。

青娥「……ところで、太子様。イタリアの首相が是非、試合後お会いしたいと言っておりますわ。
    鼻の良い政治家たちは、次の日本国首相が誰になるか、もう目星をつけておりますようで……うふふ」

神子「最近、企業からの献金も増えて来たからな。……全く、私はまだ長野県の一市長に過ぎないのに。
    まあ、そろそろ中央にも打って出る時期が来ることは想定しているが。
    ……中央に打って出る際の政党名は、この私が作った希望の面にちなんで、『希望の党』なんてどうだろうか?
    あるいは……幻想郷の民を優先するという意味で、『幻想郷民ファースト』とか」

青娥「それはちょっとアブないと思いますわ。時事的に考えて」

サッカーを通じた人気取りを通じて、再び、自らによる日本統治を目指す。
聖徳太子が描く青写真は途方もない一方で、妙な現実味を帯びて今、影で蠢いていた。


451 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/10(火) 00:08:08 ID:???
〜練習フェイズB〜

神子「ところで青娥。パルマと――パルメイラスの選手のデータは取れているな?」

青娥「ええ、勿論ですわ」

青娥はそう言うと、仙界から板切れのような鉄の本――ノートパソコンと言うらしい
――を取り出して、少しの動作の後、神子に対して開いた画面を見せる。

神子「これは……件の上白沢慧音の能力値か」

青娥「ええ、そうです……っと、いけませんわ。チーム加入前の能力値になっていますもの」

わざとらしく慌てる邪仙が話す中、能力値はこう記載されていた。

〜現在の能力値〜
選手名   ド  パ  シ  タ  カ  ブ  せ  総 高/低 ガッツ フラグ
慧音    54 54 ...47  56 55 56  55 377 2 / 2  850 競り合い

造化三神の結(1/2でドリブル+4)
武烈クライシス(パス+2)60消費
草薙の剣(1/2でタックル+3、吹飛4)
三種の神器 玉(1/4でパスカット+2)
八咫の鏡(1/4でブロック+6)150消費
三種の神器 鏡(1/4でブロック+4)100消費
幻想天皇(高クリア+2)100消費


452 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/10(火) 00:09:34 ID:???

神子「総合力377か……現時点でも、世界トップクラスのCBとして通用しそうだが。
    これよりも更に強くなっているのか。ならば、注目すべき実力者であるな」

青娥「ええ。……それで、パルマに加入した時点の能力値なんですが。
    ――前に聞き取った所では、次の三つのどれかだったと思うんですよね〜」

そう言いながら、青娥は神子に別の画面を見せた。
それは複雑な計算式から成り立つトレーニングデータ――スウェーデン産の科学技術を、
『ハイパーカンピオーネ』は積極的に取り入れていた――であり、三つの選択肢が為されている。
この選択肢は、以下の通りとなっていた。

453 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/10(火) 00:11:09 ID:QvNIIsKY
☆慧音の練習コース(3回目・最終)を選んでください。
 先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。
A:剣コース
  コース概要:攻撃的DFとして、キープ力とボールカット力を高めていくコースだ。
        無論他の分野についても万遍無く鍛えていくが、どちらかと言えば、
        撃たせる前に止めるタイプのDFとなるだろう。ブロッカーが飽和するよりは、良いのかもしれないが…
  主な上昇能力:ドリブル、パス、△タックル、△最大ガッツ

B:玉コース
  コース概要:体力と運動量のあるブロッカーを目指すコースだ。
        具体的には基礎的なフィジカルとスタミナを中心に、パスカット力も派生して磨いていく。
        また、ある程度のキープ力も身に着く事が期待できるな。ややニッチな分野かもしれないが…
  主な上昇能力:最大ガッツ、パスカット、△競り合い

C:鏡コース
  コース概要:DFとして最も求められる要素――ブロックに特化するコースだ。
        他のコースと比べて鍛えられる分野はやや絞られるが、その分高い効果を得られるだろう。
        色々と言っても、いざという時に頼れる壁は1枚でも多い方が良い筈だ…
  主な上昇能力:ブロック

D:月コース
  コース概要:敢えてDF能力の成長を捨て、オフェンス能力に特化してみたい。
        1度でもこのコースを選び、私に眠る妖の血を滾らせれば、
        並のFWでは敵わない程度の実力者に化けられる自信ならある。
        ……この場合、DFとして特化できない事が痛いが。
  主な上昇能力:☆特殊スキル(ハクタク化)、☆シュート、ドリブル、パス
<参考:コース練習について>
・☆印は伸びやすい項目、△印は伸びにくい項目、?印は運で伸びが大きく変わる項目です。
 (能力値が高くなるにつれ、☆印が消える、△印が出来るなどが起き、伸び辛くなります。)
・コース練習では、能力値に加え、能力に応じた技の『フラグ習得・回収』も行われます。
・能力値の基準は大体、53くらいが世界でそこそこ、55くらいが世界でもかなり強い、
 57になると世界トップクラス(あるいはトップ)です。(能力値限界は57です)

454 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/10(火) 00:13:57 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでにします。

455 :森崎名無しさん:2017/10/10(火) 00:33:34 ID:jSDrY/WM
B

456 :森崎名無しさん:2017/10/10(火) 00:33:59 ID:8kTkIm/6
B
乙でしたー

457 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/11(水) 01:11:53 ID:0bxQmifk
今日は仕事が忙しかったので、1判定だけ更新します。
>>456
乙ありがとうございます!

B:玉コース

先着1名様で、

★慧音のパスカット特訓→ ! dice + ! dice =
 慧音の競り合い特訓→ ! dice + ! dice =
 慧音の最大ガッツ特訓→! dice + ! dice=★


と書き込んで下さい。カードやダイスの結果で分岐します。

〜結果表〜
パスカット特訓→10以上でパスカット+2、「三種の神器 玉」の発動率アップ
         5以上でパスカット+1、フラグ習得
         2以上でパスカット+1

競り合い特訓→10以上で競り合い+1、『幻想郷伝説』習得
         5以上で競り合い+1

最大ガッツ特訓→10以上でガッツ+75
           5以上でガッツ+50
           2以上でガッツ+25

458 :森崎名無しさん:2017/10/11(水) 01:14:59 ID:???
★慧音のパスカット特訓→ 2 + 2 =
 慧音の競り合い特訓→ 1 + 5 =
 慧音の最大ガッツ特訓→ 1 + 3 =★

459 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/12(木) 00:04:27 ID:wSlISCvs

★慧音のパスカット特訓→ 2 + 2 =4
 慧音の競り合い特訓→ 1 + 5 =6
 慧音の最大ガッツ特訓→ 1 + 3 =4★

*慧音のパスカットが+1されました。55→56
*慧音の競り合いが+1されました。55→56
*慧音の最大ガッツが+50されました。850→875

―――――――――――――――――――――――――――――――――
すみません、今日は描写の更新をお休みしますが、
先にパチュリーの成長選択だけやっておきたいと思います。

〜現在の能力値〜
選手名   ド  パ  シ  タ  カ  ブ  せ   総 高/低 ガッツ フラグ
パチュリ-  .55  54 .52  53  55  50  50  369 4 / 4  700 パス、パスカット、

   パチュリー
芸術的なドリブル(1/2でドリブル+5)
華麗なドリブル(1/4でドリブル+3)
エメラルドメガリス(高パス+3)150消費
ロイヤルフレア(シュート+6、吹飛4)200消費
サイレントセレナ(低シュート+5)250消費
賢者の石(高シュート+8、吹飛3)400消費
クワッドスパーク(近シュート+6)200消費
アグニシャイン(1/2でタックル+2)
プリンセスウンディネ(1/2でパスカット+3)
スキル・オフサイドトラップ(スルーパスを1/2でオフサイドにできる)
スキル・ファストブレイク(発動時全選手のパス+1、全行動消費ガッツ1.1倍)
スキル・フォトシンセシス(スキル・喘息を完全無効化。ただし、−2の差で敗北した場合必ず吹き飛ぶ)
スキル・プレースキッカー(フリーキック時、シュート力・パス力+1)
スキル・アシスト○(アシストに繋がるパス成功時、シューターのシュート力+1)

460 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/12(木) 00:05:27 ID:wSlISCvs
☆パチュリーの練習コース(3回目)を選んでください。
 先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。
A:トータルフットボーラーコース
  コース概要:私が尊敬するヨハン・クライフのように、頭脳と技術を活かしたプレーヤーを目指すわ。
          巧みなパスで相手を疲れさせ、必要時に最大の成果を挙げるプレーをする。
          何処に居ても何でも出来る事が目標だけど……やはり、OMFの能力向上が主眼かしら。
  主な上昇能力:パス、△シュート、△パスカット、△タックル

B:ハイパーリベロコース
  コース概要:私が尊敬するフランコ・バレージのように、高い戦術眼とポジショニング能力を活かした、
          機転の利くリベロを目指すわ。DFとしても耐えうる守備能力に、高い突破力、そしてシュート。
          あらゆる分野をこなす必要があるには変わらないけれど、守備寄りの選手になるかしらね。
  主な上昇能力:ブロック、タックル、△ドリブル、△シュート

C:フェイタルプレースキッカーコース
  コース概要:私が尊敬するデイビッド・ベッカムのように、正確なキックコントロールと
        運動量を兼ね備えた、テクニックとスタミナの両面を磨いていくわ。
        鍛えられる能力は絞られるけれど、その分効果的な成長が期待できそう。
  主な上昇能力:特殊スキル(アーリークロス、プレースキッカー、アシスト○)、△最大ガッツ

D:エンハンスドワイズマンコース
  コース概要:私が尊敬するのは賢者である私自身。まだ不完全な『フォトシンセシス』の改良を主に、
        お粗末だったフィジカルを鍛え直すわ。……それに副産物として、ポストプレイも出来るCFWとしての
        起用可能性も増すかもしれないし、伸びしろも大きいから、決して不合理な方針でも無い筈よ。
  主な上昇能力:☆最大ガッツ、☆競り合い、特殊スキル(フォトシンセシスの改良)

<参考:コース練習について>
・☆印は伸びやすい項目、△印は伸びにくい項目、?印は運で伸びが大きく変わる項目です。
 (能力値が高くなるにつれ、☆印が消える、△印が出来るなどが起き、伸び辛くなります。)
・コース練習では、能力値に加え、能力に応じた技の『フラグ習得・回収』も行われます。
・能力値の基準は大体、53くらいが世界でそこそこ、55くらいが世界でもかなり強い、
 57になると世界トップクラス(あるいはトップ)です。(能力値限界は57です)

461 :森崎名無しさん:2017/10/12(木) 00:11:55 ID:kQa8u8FA
B

462 :森崎名無しさん:2017/10/12(木) 00:50:29 ID:K3KtvAJI
D

463 :森崎名無しさん:2017/10/12(木) 07:08:28 ID:shUH1WL6
D

464 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/13(金) 01:20:44 ID:Ty2LPIXY
今日も仕事が忙しかったので、1判定だけ更新します(汗)

D:エンハンスドワイズマンコース

先着1名様で、

★パチュリーの特殊スキル特訓→ ! dice + ! dice =
 パチュリーの競り合い特訓→ ! dice + ! dice =
 パチュリーの最大ガッツ特訓→! dice + ! dice=★


と書き込んで下さい。カードやダイスの結果で分岐します。

〜結果表〜
特殊スキル特訓→10以上でスキル・フォトシンセシスのデメリットが消滅
             5以上でスキル・フォトシンセシスのデメリットが減少+消滅フラグ習得
             2以上でスキル・フォトシンセシスのデメリットが減少

競り合い特訓→10以上で競り合い+3、スキル・競り合い+2習得
         5以上で競り合い+3、フラグ習得
         2以上で競り合い+2

最大ガッツ特訓→10以上でガッツ+150
           5以上でガッツ+100
           2以上でガッツ+50

465 :森崎名無しさん:2017/10/13(金) 02:42:27 ID:???
★パチュリーの特殊スキル特訓→ 6 + 3 =
 パチュリーの競り合い特訓→ 6 + 3 =
 パチュリーの最大ガッツ特訓→ 5 + 5 =★
お仕事お疲れ様です

466 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 04:01:05 ID:???
すみません、昨日から展開を書いてる途中でお休みしてます(汗)
ちなみに予定としては今日には展開を書き上げ更新し、パチュリーの章を終わらせて、
次次回更新で鈴仙の章(リオカップ決勝)に入りたいと思っています。

467 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:35:45 ID:???
★パチュリーの特殊スキル特訓→ 6 + 3 =9
 パチュリーの競り合い特訓→ 6 + 3 =9
 パチュリーの最大ガッツ特訓→ 5 + 5 =10★

*パチュリーのスキル・フォトシンセシスの吹飛び条件が、『−2で敗北時』から、『−3で敗北時』になりました。
*パチュリーの競り合いが+3されました。70→73
*パチュリーが競り合いフラグを習得しました。

468 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:36:55 ID:???
―――――――――――――――――――――――――――――――

―― ガ シ イ イ ッ  !!

青娥(観客席)「……あら。凄い音がしましたわね」

慧音の、そして恐らくパチュリーまでの能力値が載っているであろうノートパソコンを閉じる。

実況「ああ〜〜っと! ここでパチュリー選手と慧音選手がバイタルエリア前で正面衝突!!
    試合もクライマックスに差し掛かり、同点状態を打破せんと自ら突破を目指したパチュリー選手でしたが、
    それを阻まんと慧音選手がフィジカルを武器に突っ込んだ〜〜!!」

フィールドでの激しい衝突音を聞いて、霍青娥はその音の出元をこの眼で確認する。

神子(観客席)「(青娥の情報提供が無くとも、普通に考えれば体格面で優れ、成長著しい上白沢慧音が勝つのは明白だ。
          しかも、パチュリー・ノーレッジの方は戦術指導と弱小チームの底上げに必死で、
          自らの成長は伸び悩んだ。本来ならば同格であるべき筈のシニョーリに、
          この試合通して押されているという事実が、その証拠だ)」

しかし、それはあくまで「確認」だった。パチュリーは、慧音に負ける。
これまでの試合運び――パチュリー率いるフィオレンティーナは、少なくとも個人技において、
パルマに圧倒されていた――を見て、そう考える者がもはや多数を占めていたからだ。

神子(観客席)「(……だが。彼女は、この私に対し最後まで抗った、あのレミリア・スカーレットの親友。
          彼女が、戦術の論理に溺れて足を掬われるとは到底思えないな)」

――ただし、ごく一部の者だけは予感していた。
この争いが、そんな単純な図式で片づけられる話ではないという事を。

469 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:39:06 ID:???

パチュリー「………(慧音。貴女の思う事は確かに正しい。この先、世界の強豪チームを前にして、
       単なる戦略や戦術だけでは、圧倒的な個に太刀打ちする事は不可能よ)」

慧音「……(パチュリー殿も、内心では分かっている筈だ。博麗の巫女や一部の大妖怪に勝つにも、
    豊聡耳神子の陰謀に勝つにも、そして世界の強者達に勝つにも。結局は力が無くてはならない。
    理論無き力が未熟であるならば。同様に、力無き理論もまた、未熟に過ぎない筈だ……!)」

この戦いの当事者達は、ボールを挟んで同じ高空で対峙した。
パチュリーの方が位置取りは上手いが、慧音の方が力強くボールへと突き進んでおり。
――そして、今回は明らかに、慧音の方が優勢な状況だった。

慧音「(……プロジェクト・カウンターハクレイが、既存の秩序に一石を投じるのであれば。
    私は敢えて、そのプロジェクト・カウンターハクレイの姿勢に対して一石を投じたい。
    そして、出来るならば――その結果を確かめた上で、私は、改めてその仲間になりたい!)」

そもそも慧音がプロジェクト・カウンターハクレイに身を投じた一番の思いは、
幻想郷の支配体制や世界の秩序ではなく、人里の子ども達に希望を与えたい為だった。
だからこそ、自分の行いが、本当に子ども達の希望となり得るのか。
もしかしたら、神子の『ハイパーカンピオーネ』にもまた、希望はあるのではないか。
そう言った思いが、イタリアについてからも常に首をもたげていたのだ。

慧音「(――裏切り者と罵られても構わない。それが子ども達の希望となるのなら、
     私は悪魔に魂を売っても構わない。そう考えていた。……だからこそ、問いたい!)
    ――貴殿の希望とは何だ、パチュリー・ノーレッジッ!」

470 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:40:18 ID:???
バァァァァッ……!

彼女は、渾身の個人技でボールクリアへと向かう。
それは間違いなく、世界を舞台としても輝けるスター級の威力。
もしも慧音がこの技を来たる大会で使えれば、間違いなく希望となれるだろう。

パチュリー「……私にはお生憎と、そこまでの志の高さは持っていないわ。
       そもそも魔法使いとは孤独な求道者。そこに希望なんて、あってもなくても良い」

一方のパチュリーのプレイは、美しく鮮やかではあるものの、教科書的な丁寧さから脱し切れていない。
ドリブルやパス、パスカットに反して、彼女のフィジカル面は凡庸と言っても良かった。

パチュリー「……………」

スッ……

慧音「(――後ろに下がって……止まった。フィジカル面の弱点を回避するべく、勝負を諦めたのか?)」

慧音の力強く突き出した右脚が、今まさにボールを捉えようとしているにも関わらず、
パチュリーは諦めたかのように動かない。『動かない大図書館』の二つ名を持つ彼女らしいが、
しかし空中戦においてそれを実践する事に対し、慧音は疑念を覚えるが――しかし、今は勝利が先決だ。
慧音はそのまま全体重を駆使してボール越しにパチュリーごと、相手のゴール前へと吹っ飛ばそうとするが。

パチュリー「……魔法使いとしての私にとっては、希望なんてどうでも良い。だけど、『賢者』となると、少し話が違って来るかしら」


471 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:42:12 ID:???
クッ……グルンッ! ――ガシイイイイイッ!

慧音「!?」

パチュリーはここで、ベクトルを静から動へと一気に傾ける。
空中で急回転し、左脚を大きく伸ばして流星のように一薙ぎすると、慧音に僅かながらに先んじて。
見事に……ボールを、捉えてみせた。

パチュリー「賢者とは賢き者。智恵の光によって暗闇を照らし、自ら希望を定義し、弱者に示すべき者。
       ……私の希望は何か、ですって。上白沢慧音? その質問は前提が間違っているわね。何故なら――」

慧音「(な、なんて空中での制動力……いや、それだけではない。知識や理論だけでは、
    こうしたプレー、思いつきこそすれでも実行できない!)」

慧音は動揺する。パチュリーは、これまで自分が思い込んで来た対立軸――集団対個人――の存在自体を、
そもそも揺るがそうとしている。そう気付いた、いや気付けたからこそ、彼女は改めて震える。

慧音「……貴女は。単なる集団戦術のコーチではない。集団戦術を究めつつ、司令塔としての視野を広げ、
    それに足りるだけの個人技も磨いて来た。自分が活躍する為ではなく、チームを勝利に導く為の……!」

――その反応を以て、今回の勝負は決まっていた。慧音は少しずつ押し負けている。
パチュリーは最後に淡々と、慧音に対して傲慢に言い放った。

パチュリー「何にも無い場所から希望を見出すこと。それこそが賢者が凡人に対して行うべき使命。
        つまりは、私こそが希望そのもの――それが、あんたの質問への答えよ」

スパーーーーンッ!

実況「……ぱ、パチュリー選手。この土壇場で信じられない競り合い強さを見せました。
   そして――後半戦40分にして、フィオレンティーナ、絶好の攻撃チャンスに入ります……!!」

472 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:43:58 ID:???
――そこから先の展開は、簡単に語るのみで足りた。
個人技でボールを奪取したパチュリーは次に、司令塔としての技術を遺憾なく発揮。
相手の守備陣の穴を看破し切った上での的確な指示により、チームはギリギリで勝ち越し点を得る事に成功する。
無論、そこからパルマもシニョーリを軸に徹底抗戦の構えを見せるが――。
パチュリーが鍛えた集団戦術を前に、圧倒的な個は足止めを食らわせられる。

シニョーリ「ちっくしょー。このままじゃヨームに負けちまう! 最後にこれでも食らえッ!」

タッ、ギュンッ、グルンッ……!

とはいえ、後半ロスタイムにはシニョーリもこれを単身突破し、
圧倒的な威力のシュート――『アクセルスピンシュート』と呼ばれ、これまで数十得点をもぎ取って来た――を放つも。

――ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ……!!
   ……バギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンッ……!

それは、ごくわずかに遅かった。彼がボールを蹴れたのは、しびれを切らした審判がホイッスルを鳴らした、
ほんの極コンマ数秒後の事だったからだ。ボールは当然の如くにゴールネットへと吸い込まれるが、
……試合後のゴールは、当然ながら得点にカウントされない。

実況「試合、終了〜〜〜!! フィオレンティーナ、パルマを下しました……!
   そして、何という事でしょう! 下馬評を大きく覆し、大会前まで弱小チームだったフィオレンティーナが、
   今大会で優勝の栄冠を獲得しました〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

ワァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアァァァァァアァァァッ!

――賢者はこの時、初めて無表情を崩し、薄く笑みを漏らす。
その唇は小さく、「私の勝ちね」と動いているように見えた。


473 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:48:50 ID:???
*****

青娥(観客席)「そ、そんなー。パチュリーさんの能力値が、私の測定よりも一回りも高くなってるなんて……」

神子(観客席)「彼女は我々の諜報を警戒していた。出来る事なら、この試合で本気を出したくなかっただろう。
         だからこそ、上白沢慧音の活躍は充分だったと言えるさ」

青娥(観客席)「ですけど……太子様は良いんですの? このままじゃ慧音さん、『プロジェクト・カウンターハクレイ』に
          戻ってしまいます。太子様は彼女を第二の魂魄妖夢にしたかったのでは?」

神子(観客席)「良いさ。我々にとって、幻想郷にいる既存選手の獲得は、あくまで保険にしか過ぎない。
          魂魄妖夢の代わりにシニョーリが居たように。彼女の代わりにもまた、充分なアテはある」

この試合の結果を見ていた『ハイパーカンピオーネ』計画の中枢――豊聡耳神子と霍青娥は、
今回の試合にある程度の落胆は見せつつも、想定の範囲内然とした様子で冷静に会話を続ける。
人間中心主義を掲げ、自分を中心とした人間による幻想郷、ひいては日本の支配を目標とする彼女らにとって、
幻想郷の半妖を喪失したロスは大きくない。

青娥(観客席)「……確かにそうですわね。半人半妖の彼女でなければ取れないような、
         貴重なデータが取れたと、カスティリオーネ博士も仰ってましたし。
         お蔭で、想定よりも早く進められそうですわ。私の主導するヒドラ・プロジェクトも。
         そして――」

神子(観客席)「私が、『アルシオン』の座に就く事にも、少しは近くなったという事か」

青娥(観客席)「ご名答。……さあさ、そろそろ行きましょ。イタリアの首脳陣が待っていますわ」

――現に、彼女は今回の敗戦を糧に、新たな計画を進めようとしていた。
第三極であり、今や人里の統治に興味を示さぬ八雲紫からも、
彼女への警戒と対策で手一杯な神綺や魅魔達からも大きく敵視されなかった彼女達は、
まるで進行を悟らせぬ悪性の腫瘍の如く、少しずつ、その存在感を増していく。

474 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:50:02 ID:???

青娥はスタジアムを去る前に――神子にも知られる事なく、邪悪な表情でこう独り言ちた。

青娥「……それと、そろそろ『プロジェクト・カウンターハクレイ』にも楔を打っておく必要がありますわね。
    例えば……鈴仙・優曇華院・イナバ。一番厄介なあの子を消す、とか? うふふふ……っ!」



*****

また、第三極とは言えないが、この試合を見守るライバル達も多い。

小悪魔(観客席)「ふぅぅ……。パチュリー様、カッコ良かったです」

三杉(観客席)「そうかな。確かに終盤の彼女のプレーは素晴らしいの一言だった。
          しかし、戦術面も、技術面にも、どこか頭でっかちな所が残っていると思う。
          ブルノが 980 点も失点さえしなければ、僕達も彼女と戦えたのに……」

主人であるレミリア・スカーレット嬢の命令でイタリア・レッチェへと派遣された小悪魔と、
有力選手を海外研修させ実力アップを目指す『ツバサ・ヴァイキング』計画で同チームの
コーチ兼選手となった全日本Jr.ユースの三杉淳。
彼らはGKのザルさが不幸し途中敗退となったが、パチュリー・ノーレッジを始め、
多くの強敵達と対峙してそれぞれパワーアップを遂げている。

475 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:51:19 ID:???
*****


ジェンティーレ(観客席)「パチュリー、ケーネ、シニョーリ……ああ、畜生!
               俺を含め、イタリアのアズーリ共はどうして決勝の舞台に上がって来れない!」

ヘルナンデス(観客席)「落ち着け、ジェンティーレ。俺達の実力を見せる場なら、幸いにも早々に示された。
               戦いの主戦場はここじゃない。――半年後の『幻想スーパーJr.ユース大会』だろう」

ランピオン(観客席)「如何にも怪し気な大会だが、一応各国のサッカー協会もお墨付き、だったっけか。
             まあ、ワールドユースの前哨戦としては丁度良いよな」

バンビーノ(観客席)「(ストラット、お前はブラジルだったな。……ミアータがGPSでお前の居場所を突き止めたらしいから、
              今度近い内に会いに行くぞ。待ってろよ)」

――同じく今回の大会では途中敗退となった、若きイタリアのアズーリ達も、決して腐る事なく次を見据えている。
前回のJr.ユース大会では顔を見せなかった実力者達も勢ぞろいに顔を合わせ、
堅守と猛攻の二面性を持つ、イタリアサッカーの真髄が近々見られる事は間違い無い。

476 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:52:43 ID:???
*****

慧音「(集団か個か。私はどちらを取るべきかで悩んで来たが。
    ――そうか。彼女にとっては両方取るのが当たり前で、悩むべき事でも何でも無かったんだな。
    ……流石は、あの傲慢で欲張りな吸血鬼の親友にして――魔法使いではなく、『賢者』を名乗るだけある)」

慧音は茫然としながらも、勝利に湧くチームを前に思う。

慧音「(パチュリー・ノーレッジ。彼女は……確かに、希望だ。
    『ハイパーカンピオーネ』にも、全幻想郷代表にも、彼女のような選手は居ない。
    もしも私が子ども達の希望となるならば――彼女のようにならなくてはならない。
    彼女のように、全てを得て、そしてそれが当然だと冷笑に付す程の『賢者』に……)」

――慧音のこれからは、既に決まっていた。
これから彼女はパチュリーに自らの不理解と誤解を謝罪し、そして……出来れば、再び。
再び、新チームの中核を担うべき選手同士として、鈴仙を――仲間達を導く者同士として、
その関係を続けていきたい。その為にすべきことは沢山あるかもしれないが。
……彼女は、もう迷わなかった。


477 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:53:55 ID:???


        賢者は希望の星であり、賢人は太陽を目指す。

       両者は同じく空に輝くも、その性質は互いに異なる。

       両者は同じく志を示すも、その性質から互いに争う。

     しかし、両者の使命は互いに同じく、両者の力は互いに等しい。

        故に、両者が同時に一人の愚者の掌に収まる時。

       それは、巨大な希望の光となって、彼女を導くだろう。


                                           〜パチュリー・慧音の章 完〜

478 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:55:03 ID:???

*賢者としての真の実力を発揮し、パチュリーの全能力値が+1されます。
*パチュリーがスキル・レジスタ(自分を起点とするプレーが途切れるまで、ボールを受けた味方選手のパス・ドリブル+1)
 を習得しました。(プレーが途切れる=敵チームのボールとなる又はラインアウトする と定義します)
*慧音がスキル・カティナチオマステリー(自分がCBかつPA付近に居る時、自分除く味方DFの全守備能力+1)
 のフラグを習得しました。

479 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 20:56:20 ID:???

〜現在の能力値〜
選手名   ド  パ  シ  タ  カ  ブ  せ   総 高/低 ガッツ フラグ
パチュリ-  .56  55 .53  54  56  51  54  379 4 / 4  850 パス、パスカット、競り合い、特殊スキル
慧音    54 54 ..47  56 ..56 ..56  56 379 2 / 2  875 競り合い、特殊スキル

   パチュリー
芸術的なドリブル(1/2でドリブル+5)
華麗なドリブル(1/4でドリブル+3)
エメラルドメガリス(高パス+3)150消費
ロイヤルフレア(シュート+6、吹飛4)200消費
サイレントセレナ(低シュート+5)250消費
賢者の石(高シュート+8、吹飛3)400消費
クワッドスパーク(近シュート+6)200消費
アグニシャイン(1/2でタックル+2)
プリンセスウンディネ(1/2でパスカット+3)
スキル・オフサイドトラップ(スルーパスを1/2でオフサイドにできる)
スキル・ファストブレイク(発動時全選手のパス+1、全行動消費ガッツ1.1倍)
スキル・フォトシンセシス(スキル・喘息を完全無効化。ただし、−3の差で敗北した場合必ず吹き飛ぶ)
スキル・プレースキッカー(フリーキック時、シュート力・パス力+1)
スキル・アシスト○(アシストに繋がるパス成功時、シューターのシュート力+1)
スキル・レジスタ(自分を起点とするプレーが途切れるまで、ボールを受けた味方選手のパス・ドリブル+1)
 ※プレーが途切れる=敵チームのボールとなる又はラインアウトする と定義

   慧音
造化三神の結(1/2でドリブル+4)
武烈クライシス(パス+2)60消費
草薙の剣(1/2でタックル+3、吹飛4)
三種の神器 玉(1/4でパスカット+2)
八咫の鏡(1/4でブロック+6)150消費
三種の神器 鏡(1/4でブロック+4)100消費
幻想天皇(高クリア+2)100消費

480 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/15(日) 21:03:27 ID:???
……と、言ったところで一旦ここまでです。
次回更新(たぶん明日以降になります)は鈴仙の章に戻って、
これまでのあらすじ整理&サンパウロの情報描写になると思います。

サンパウロ戦は翼、ストラット、バビントン、マウリシオ、アマラウ、ドトール(あとレナートとかリマとか)という本スレの布陣に加え、
超強化された妖夢、強化された新田&石崎を追加しておりますので、
久しぶりのボス戦として盛り上がれば良いなあ…と思っています。

481 :森崎名無しさん:2017/10/16(月) 01:23:11 ID:???
乙でしたー
相変わらずブルノさんのザルっぷりは五臓六腑に染み渡りますね

482 :森崎名無しさん:2017/10/16(月) 19:51:50 ID:???
まさか3桁どころか4桁目前とは思わなかった
いや、ホントに恐れ入ったよ

483 :森崎名無しさん:2017/10/16(月) 20:25:44 ID:???
笊どころか枠だろ

484 :森崎名無しさん:2017/10/16(月) 21:04:54 ID:???
レッチェのDFも相当ヤバい
確かにブルノは枠だけどさ、DFで阻止できたシュートがいくらかあると思うんだ

485 :森崎名無しさん:2017/10/16(月) 21:28:15 ID:???
レッチェのDFって確かそこまで悪い性能じゃなかった気もするけど

486 :森崎名無しさん:2017/10/16(月) 21:32:41 ID:???
おそらくブルノさん飛距離、悲鳴、ブッ飛び方の美しさで加点が入る特別試合だったんだよ

487 :森崎名無しさん:2017/10/16(月) 21:43:21 ID:???
レッチェはぶっちぎりで森崎外伝史上最多失点記録賞を獲得ですな
ブルノと愉快なDF達のザルっぷりが神がかり過ぎ!

488 :森崎名無しさん:2017/10/16(月) 22:20:31 ID:???
SOレミルヌのオウンゴール量産は2002年だったからこの世界では記録に残らないな

489 :森崎名無しさん:2017/10/16(月) 23:57:02 ID:???
試しについでに
ジュスト  881

490 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 00:56:39 ID:jjq+ybng
>>481
乙ありがとうございます!
ちょっとした遊び心でしたが、ブルノさんの失点量は予想以上でした…
>>482
! powerの最大値って3ケタでしたっけ?だとしたら最大値近辺ですね…
少ない出番を狙って来ています。
>>483
私的にブルノさんはバキュームですね。
>>484-485
レッチェのDFについては何も考えてませんでした(爆)
多分主力が悉く負傷とか悪条件が重なったのでしょう(適当)
>>486
ブルノさんという概念がもはや失点なので致し方ないですね。
チート失点スキルの賜物だと思います。
>>487
最多失点第二位はこれだと思っています。
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1384873883/885-887
>>488
ネットで調べましたが、凄い点差でしたね…w 現実は創作以上に凄いです。
>>489
やはりジュスト君の失点力はブルノさん程じゃないにしろ高いですね…
ゲルティス  848
若林  655
とかだったらやっぱり低い数値になるのでしょうかw

491 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 00:57:43 ID:jjq+ybng
−鈴仙の章D− 〜VS サンパウロ〜

鈴仙は夢を見ていた。夢の中では、自分はめそめそと泣いていた。

鈴仙「私はどーせ、いつまで経っても師匠の――永琳様の添え物なんだ。勝てっこないんだ……」

それを笑い飛ばす少年が居た。
一人は素朴な顔立ちの長身の少年。もう一人は片目がやや隠れた長髪の少年。
彼らはともに瞳の奥に熱い想いを宿しながら、鈴仙に寄り添い慰めてくれた。

鈴仙「――でも。私は変わった。変わる事が出来た。中山さんと、パスカル君のお蔭で……」

少年達は消え失せ、その代わりにまだ幼い女の子達が鈴仙を取り囲んだ。
彼女達は個性豊かに泣いたり、笑ったり、激しく頭の悪そうな声を出したり、不思議な機械を取り出したり。
……全員が全員違っていたが、鈴仙の事を心から慕っているのは同じだった。

鈴仙「佳歩……つかさ。霞……Dちゃんに……あとはCちゃん。Kちゃんも居たわね。
    永遠亭の名無しのウサギ達。皆可愛いなぁ……」

鈴仙を取り囲んで慕っているのは、子ども達だけでは無かった。
いつの間にか、年長ぶってひねくれた感じの兎少女や、気丈な薄い青髪の女性。
儚げだが力強い不死鳥のような少女に、世界中のならず者どもをファンに従えてるなんか姫っぽい人。
その全員が、常に前向きな笑顔を絶やさない鈴仙を愛し、信頼していた。

鈴仙「てゐ……慧音さん……妹紅……姫様。私……強くなれたかなぁ……?」

なんか姫っぽい人「いやいや、私の描写おかしいでしょ!? この描写をもって『姫様』って言って欲しくなかった!
            ブルノさんとか適当にハズして無難にボケて欲しかったッ!?」

492 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 00:59:07 ID:jjq+ybng
……無軌道なノイズから意識を外して、鈴仙の夢は先に進む。
鈴仙は何時の間にか走っていた。周囲のライバルや、新しい仲間達には目もくれず、
彼女は一目散にある女性の背中を追いかけていた。
そして、表の月面のようなモノクロの地平線の果てに――その女性は居た。
長い銀髪を束ねて、赤と青の対照的な服を纏い、鈴仙の遥か前を進む彼女を、鈴仙は呼び続けた。

鈴仙「――師匠。……ししょおっ!」

何故、自分が呼んでいるのか分からない。振り返って欲しいのか、そのまま無視して欲しいのか。それすらも分からない。
それでも彼女は、ひたすらに師匠の――八意永琳の名を繰り返し呼び続けた。
……そうして呼び続けている間に、何故自分がそうしているのか、思い出した。

鈴仙「私は。鈴仙は……じきに貴女の背中に並び立ちます!
    私は、貴女の後ろには居たくない。貴女に並び立ち――そして、追い越します!」

……そう、だった。それこそが、鈴仙の原初の目的。
鈴仙は、内向きでプライドばかりが高くて、だけど結果を出せない惨めな自分が嫌で。
それで、永琳に並び立てるような、強い自分になりたいと思い――実際に、彼女は強くなった。

鈴仙「だけど……私の目的は今や、それだけじゃない」

強くなったからこそ、鈴仙の世界は大きく開け――そこで、気付く。いや、思い出す。
今の自分の目的は、永琳の背中を追う事だけではなくなっていたのだと。

493 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 01:00:25 ID:jjq+ybng

紫「思い上がりも甚だしいわ。貴女は私の可愛い霊夢の強さを引き立てる為のエキストラ。
  いえ、そのエキストラである永琳を引き立てる為のエキストラでしかない。
  端役は端役らしく、隅っこで縮まっていなさい?」

藍「今の紫様は、正気を失っている。そして――あの方が愛した幻想郷すらも、
  今のあの方は、平気な顔をして壊そうとしている。……それだけは、止めなくてはならない」

神子「私は人間の、人間による。人間の為の世界を創る! そしてその為には、どんな外敵すらも排除する!
    人里に妖怪を隔てる為の壁を作るのだ。勿論費用は妖怪が負担する。
    強い幻想郷を、強い日本を蘇らせるのが、私の使命だ!」

鈴仙の周囲には、様々な思惑が、様々な野望が、様々な信念が渦巻いている。
八雲紫――月の狂気に曝され、今や正気を失っている――による、博麗の巫女を中心とした支配体制の強化。
その計画を止め、あくまで穏健的に既存の秩序を守りたい彼女の式・八雲藍――彼女は今や、紫の虜囚だが。
『ハイパーカンピオーネ』計画を掲げ、陰ながらで着々と実力を付けつつある豊聡耳神子。
彼女の目的はサッカーを通した人気取り。そしてそれを通じた自身による統治の再開だと言う。
そして――。

魅魔「博麗の巫女を中心とする、封建的で伝統的な幻想郷の体勢。
    一部の大妖怪が得をして、内向きに閉ざされた世界で飼い殺しにされる弱者達……。
    『プロジェクト・カウンターハクレイ』は、そんな幻想郷の秩序に、一石を投じる計画でもある。
    ――あんた達が創る新チームで、八雲紫や世界の強者共に勝利する事でね」

永琳「鈴仙。……月の狂気が。――『純狐』が、八雲紫を、……いえ、この世界そのものを蝕んでいるわ。
    彼女の膨大なまでの狂気と悪意に勝てるのは、貴女しかいない。鈴仙――サッカーで、世界を救って頂戴……!」

ずっと追いかけていた永琳は、いつのまにか鈴仙の傍で嘆願していた。
彼女の隣には永琳の仲間と思われる亡霊や女神。高度なテクノロジーを操る人間達がいて、
鈴仙に語り掛ける。『幻想郷の秩序に一石を投じてほしい』『サッカーで、世界を救ってほしい』と――。

494 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 01:01:41 ID:jjq+ybng
鈴仙「……正直、やっぱ、よくわかんないや」

そんな彼女達に、鈴仙は頼りなげに首を振る。だけどそれを恥ずかしいとは思わない。
一番最初に自分を照らしてくれた少年は言っていたではないか。『その弱さこそが、鈴仙さんの強さだよ』と――。
だから胸を張って、彼女達に応じる代わりに、こう言ってやった。

鈴仙「私は、強くなんかない。甘ったるいし弱い。だけど、――だからこそ、世界を変えたい。
    例え弱くても、一人では何もできなくても、役立たずでも。
    それでも、集まって努力すれば、何かを為す事ができるような。
    ――そんな力があっても、別に良いんだって。私はサッカーで、そんな世界を作りたいッ!
    私が戦う理由はそれだけ。『幻想郷の秩序』や『純狐』とかも大事だけど、それが一番よ!」

永琳「鈴仙……よく言ったわね」

コーチ「流石はワシが育てた選手ゾイ! ほっほ、サッカーで世界平和じゃー!」

アヤソフィア「うーん、如何にも中学生っぽいコメントですけど。それがまた、鈴仙さんの味ですかね」

カルロス「君を信用して良かった。いつかきっと、君もアルツールのトモダチになって欲しい……!」

ネイ「ヒュー! さすがレイセン。惚れ直したぜ!」

力強く宣言する鈴仙の傍らには、何時の間にか人が更に増えていた。
そして彼らの全てが、彼女の優しさを、強さを、勇気を褒め称えていた。
そう。今の鈴仙は気弱に泣きじゃくる一人の少女では無いのだ。
これまでの道程が、その決意が、今や彼女を立派な、物語の『主人公』へと育て上げていた。

鈴仙「皆……あり、がとう……!!」

――しかし。


495 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 01:02:53 ID:jjq+ybng

ヒュンッ、ズバッ! ズバズバッ! ――ピチャッ。

鈴仙の頬に生暖かい物が飛んだ。手で触って確かめると、それは赤黒い鮮血だった。

鈴仙「……え?」

彼女の周囲には、何時の間にか誰も居なくなっていた。
――いや、正確には。鈴仙の周囲の人物は、何時の間にか物言わぬ肉塊に化していた。

「あんたは……単なる偽善者だ」

ズバッ、キンッ!

近くに居た永琳の首が飛んだ。噴水のように血しぶきが噴き上がり、彼女はへなりと地面に溶けていく。

「あんたは……誰ひとりも救えない」

コーチの、魅魔の。カルロスの、ネイの。
そして穣子の、てゐの、佳歩の、つかさの反町の静葉のアリスさんのさとりのお燐の……!
鈴仙の知る全ての人の、仲間の、ライバルの首や肩や腕が外れて吹き飛び、
汚らわしい血と臓物のゴミになり果てていく。
真っ暗な空に、二振りの日本刀が銀色に輝いて、鮮血を積み重ねていく。
鈴仙の大切な人達は全て虚しいモノだと決めつけるように、それは踊り続ける。

鈴仙「……やめ、て……!」

「……どうして?」

その影は哀願する鈴仙を嘲笑する。


496 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 01:04:00 ID:jjq+ybng
「やめたいのなら、貴女が守ればよかった。それが出来ない貴女は、結局自分が一番大切なだけなんだ」

ビュンッ! 空を切る音と共に、赤色の果実が飛んだ。その果実はなんだかてゐにそっくりだった。

鈴仙「……違う。私は皆と一緒……。皆と、一緒に……!」

「――皆と一緒? 笑わせないでよ。貴女は結局、自分が主人公であるという幻想に酔いたいだけ。
 大切な皆は、貴女を引き立ててくれてるから、大切なんでしょう?」

ヒュンッ、バシャッ。バケツの水が零れる音がした。パチュリーの身体が半分になったからだった。

鈴仙「私はそんな事、思ってなんか……!」

「嘘。そんなキレイ事なんて誰でも言える。まあ、あんたみたいな卑怯者、こっちから願い下げだけど」

ビュンッ、グシャグシャッ。刀は一度切られた筈の寅丸星の上半身を四等分にした。
血と肉が、攪拌されて広がって。いつの間にか世界はモノクロから赤と黒に変色していた。
グロテスクな光景を前に、鈴仙は泣く事はおろか、吐く事すらも許されない。

鈴仙「……なんで。なんでそんな事言うの。貴女だって……貴女だって、道を違えこそすれど、私の……!」

「違うッ!」

キンッ! 刀は初めて、鈴仙の方を向いた。明確な殺意の籠った一刀は、鈴仙に反撃を許さない。

497 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 01:06:20 ID:jjq+ybng
「――あんたは弱い。弱くて、卑怯で、陰湿だ。私は絶対、あんたなんかとは違う……。違わなくちゃ、いけないんだ……!」

刀の一閃が迫る。銀色の刀身に鈴仙の赤い瞳が反射して鈍く輝く。
真っ赤に彩られた世界では、鈴仙の狂気の瞳など、海に落ちる一滴の涙にしか過ぎない。

鈴仙「妖夢。私は……間違っていないと思ってた。だけどどうして……?
    一度道を違えてしまっただけなのに。それだけで、もう、私達は……分かり合えないの?」

その赤に佇む真っ黒な影に対して――鈴仙は、大きく叫んだ。



鈴仙「お願い。……お願い。答えてよ。妖夢。……妖夢ッ!」


ヒュンッ。


鈴仙の叫びも虚しく、刃は鈴仙の首元目がけて猛スピードで迫り行き――。


鈴仙「ようむううううううううううううううううううううううううっっッ!!」




498 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 01:16:19 ID:jjq+ybng
〜ブラジル・コリンチャンスの宿舎(ビジネスホテル)〜

鈴仙「――ううううううううううううううううううううううっ!!」

てゐ「……鈴仙。うるさぁい。むにゃむにゃ……」

鈴仙「……夢、か……いや、夢だよね。うん……」

――そこで、鈴仙の意識は現実に戻された。
ツインルームの相棒は迷惑そうに一声上げるが、構わずに二度寝を決め込む様子だ。
周囲は既に明るいが、時計を見る分に、まだ早朝という時間帯だった。

鈴仙「……はぁ。やっぱり、意識しちゃってるのかな」

幸せそうなてゐは違い、あんな夢を見た後では到底幸せそうには眠れない。

鈴仙「妖夢……サンパウロFCのエースストライカーで。その実力は……今の私を、何周りかも上回る」

夢の最後に現れ、鈴仙の知る人物を悉く血塗れに切り刻んだ影。
その影は彼女のかつての友人で――今や、道を大きく違えてしまった少女だと、鈴仙は確信せざるを得なかった。

鈴仙「(これまでのリオカップの試合を観戦していて感じた。妖夢は――変わった。変わってしまった。
    あんなに不器用だけど優しくて、力を他人の為に使い違っていたあの子が、今は……
    自分の力に酔いしれ、自分の力以外を信じられず、そして……冷酷に、他人を蹴落としている)」

499 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 01:19:36 ID:jjq+ybng
それは単なる鈴仙の主観であり、妖夢の姿や振る舞いは本当は、ブラジルでサッカーで食っていく少年達ならば
ごく普通の事なのかもしれない。しかし鈴仙にとっては、その世知辛い『普通』が、何だか嫌だった。

鈴仙「(……はぁ。何だかまだ、夢の続きを見ているみたい)」

赤黒い影も、流れる血も、それは妖夢の鈴仙に対する感情では無い。
どちらかというと、あの夢は――こうやって妖夢の事について思い悩む、自分の心の底の淀みが具現化したものだと思う。

鈴仙「(中山さんは言っていた。『一度道を違えても、必ず再び交わる日は来る。だから、友人はその道を後押しして欲しい』って。
     だけど……中山さん。私はあなたの言っている事は、やっぱり間違いだったんじゃないか、って思うよ)」

半ば現実逃避気味に、鈴仙の決断を後押しした者を詰ってみせるが分かっている。
結局、妖夢が今の妖夢になったのは、少なからず、自分の選択によるものが大きいからだ。

鈴仙「(妖夢は力を得るために、神子の『ハイパーカンピオーネ』計画に参加したいと言った。
     私はそれを止めなかった。そして、その結果……妖夢は強くなったけど、なんだか変わってしまった)」

……しかし。そう思う事自体がそもそもエゴなのかもしれない。と鈴仙は思う。
変わってしまった、とは言うけれど、もしもそれで友人が幸せそうならば、それを受け入れてあげるのもまた、
友人の務めではないだろうか。しかし。逆説に逆説を重ねながら、鈴仙は思う。

鈴仙「(妖夢。今の貴女は、本当に幸せなの。これで良かったって。本当に思ってるの……?)」

――幾ら考えても、その問いに答えは出ない。そして、その答えは数日後の決勝戦で、
嫌が応にも出されるのだろう。鈴仙と妖夢が対峙し、そして――その決着が付く事で。

鈴仙「はぁ。……さとりさんやアリスさんが作ってくれたメモでも、もう一回見直そうかな」

これ以上は考えない、と決意した鈴仙は鞄からノートを持って来て、
そこに挟めてある一枚紙に目を通す事にした。そこにはサンパウロの有力選手の名前とその特徴が挙げられており、
具体的にはこのように書かれていた。


500 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 01:20:46 ID:jjq+ybng
−評価基準−
☆=S級選手。とてつもなく強い。真正面から当たるより、避ける方法を考えた方が良い。
◎=A級選手。かなり強い。エース級の人材を当てるか、戦略で上手く立ち回る事を意識したい。
〇=B級選手。強い。高い能力でゴリ押しするか、弱点を突く事が出来れば優位に立てる。
・=C級選手。そこそこ。名無しレベルに近いが、特筆すべき能力を持った選手を紹介。

−サンパウロ 要注意選手リスト−
☆翼
 カルロス級の総合力・決定力を誇り、ネイのような神がかり的なプレーを見せ、トニーニョを上回るゲームメイクを見せる
 まさしく今大会最高峰の選手。サッカーに対する執着・プライドは非常に高い一方で、精神的ブレが一切無く、
 奇策や騙し手はほぼ通用しない。正攻法でも変化球でも、彼に勝利する事は至難の技。
 最近、『ファンタジスタ』の技術に剣闘士の如きフィジカルを兼ね備えた、『ファンタグラジスタ』の極意を身に着けたという。

☆妖夢
 今大会ナンバーワンストライカーの座をストラットと争える。ちなみにそのストラットは同チーム。
 ストラットとの違いは、ダイレクトシュートに長ける事と、自らボールを運ぶ事が出来る事だろうか。
 冷徹かつ徹底的に勝利する事を至上としており、鋼の少女とも呼ばれている。
 その意志力は強く、負傷や悪体制すらもろともしないが、一度傷が付けば脆い一面もある?

◎ストラット
 純粋なキック力の強さでは今大会ナンバーワン。強力なミドルシュートが持ち味だが、
 ダイレクトでのプレーも十二分に強烈であり厄介。妖夢との違いは単独ではボールを運べない事と、
 攻撃特化の為守備力はそこまででも無い事だが、中盤が強いサンパウロではこの弱点は目立たない。
 彼一人がストライカーならば彼をマークすれば事足りるが、彼と同格かそれ以上のストライカーがもう一人居る。

○マウリシオ
 新進気鋭の若きMF。総合力はそこそこ高く厄介だが、翼と比べると大分マシ。
 独特の軌道を描く『ジョルトシュート』の威力は恐れる程ではない。
 それよりも、技巧的なドリブルによるサイド突破から、妖夢やストラットに繋げられる事が恐ろしい。

501 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 01:21:47 ID:jjq+ybng
○バビントン
 サンパウロ古株の頼れる脇役。総合力はそこまで高くは無く、決定力も無いが、安定したドリブル・パスが持ち味。
 翼の代役を充分にこなせる程度の実力は兼ね備えている……とは少々言いすぎか。
 明確な弱点は無いが、圧倒的な強者を前には見劣りするのは事実。

○アマラウ
 コンドルの異名を持つクリアに強いDF。彼が居るせいでダイレクトシュートは撃ちにくいし、
 ポストプレイやスルーも効果を削がれてしまう。また、ブロックも下手ではない。
 攻撃力が皆無なのは弱点と言えるが、キーガンクラスの名選手である事は間違いない。

○ドトール
 コブラの異名を持つタックルが上手いDF。下手に彼に近づくと、撃たれる前にボールを奪われてしまう。
 マンマークをされた場合も厄介で、単なる砲台役のFWは役立たずと化す。
 パスカットやブロックもそこそここなすし、最低限のボールキープも持つが、攻撃面はやはり弱点か。

・レナート
 サンパウロの正GK。妖夢やストラットのお蔭か最近は上達が著しく、スウェーデン代表GK・ガレリと互角の実力者と目されている。
 それが果たして本当に強いと言えるか否かはさておき、ポストより充分マシなGKである事は間違いない。
 舐めてかかったら痛い目に遭う。

・新田
 日本サッカー協会の育成計画により留学して来た。本職はFWだがこのチームではドリブル力を活かしたSHとして活躍。
 そのドリブルも世界レベルでは中の上クラスだが、それでもサイド突破は充分な脅威。
 シュートへのこだわりが抜けきらない様子で、シュートを撃ってくれればむしろラッキー。

・石崎
 日本サッカー協会の育成計画により留学して来た……と言う名目で実際は翼のメンタルヘルスケア役だったと思われる。
 選手としての格はフラメンゴの名無し選手レベルだが、アマラウやドトールが得意としないブロックに長けており、
 結果的にこのチームで割と輝いている。弱点はブロック以外。

・リマ
 リマは強いリマよ

502 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/17(火) 01:25:08 ID:???
……と、言ったところで随分長くなりましたが、今日はここまでにします。
大分更新に間が空いたので、鈴仙の夢のシーンの前半は、これまでの簡単な総括にしたいな…と思い挿入しました。
次回は前から微妙にフラグの立っていた、新田君との特訓パートを入れたいと思っています。
それでは、本日もお疲れ様でした。

503 :森崎名無しさん:2017/10/17(火) 01:29:35 ID:???
乙でした
空飛ぶのがデフォの妖怪相手に壁を造るという迷采配

504 :森崎名無しさん:2017/10/17(火) 01:59:19 ID:???
乙なのです

鈴仙「あの描写で姫様以外の誰がいると?」
佳歩「思い当たりませんよね」
霞「私のデータにも姫様以外いないですよ」
ウサギC「さすがの私も世界中までは影響力ないしねー」

505 :森崎名無しさん:2017/10/17(火) 18:00:25 ID:???
敵の主砲が多すぎるのが厄介だなぁ
DFはそこまででもないしさっさと一点取ったら奪ってサイドからサイドを利用してDFを揺さぶってプレッシャーかけつつ逃げたい
妖夢のディフェンス能力次第だけど


まさかとは思うけどアナカンさんのところのレナートみたいなレナートになってないよね・・・?

506 :森崎名無しさん:2017/10/17(火) 19:42:22 ID:???
これだけシューターが多いとライン高く上げて中盤でボール狩りしていくしかないかな。


507 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 01:07:03 ID:???
こんばんは、今日は1判定だけになりそうですが、更新します。
>>503
乙ありがとうございます。確かにそうですね…w
神子のトランプ壁発言は公式ネタだったりします(文の捏造という扱いですが)
>>504
乙ありがとうございます。ならず者を纏め上げる姫とかカリスマに溢れてて一見カッコいいですよね。
Cちゃんは激しく頭の悪そうな笑い声を出すのと67という数字に拘る以外は人畜無害な女の子です。
>>505-506
作戦について考察して下さりありがとうございます。
多少の強化はされてますが、守備は依然としてサンパウロの弱点ですね…。
攻撃面はこれまでに無く強力ですし、シュート以外(ドリブル・パス)も長ける選手は多いので、
点の取り合いになるかもしれません。後レナート君は一応人間なので大丈夫ですw

508 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 01:08:30 ID:???
……コン、コンコン。

鈴仙「――って、ノック? 誰だろう……?」

サンパウロの主力選手の実力を想像して早くも溜息を吐き始める鈴仙の思考は、
不意にドアが鳴らされた事で打ち切られた。同室のてゐを起こしてやらないように気を付けながら、
そろりとドアを開けると、そこには。

新田「やっぱり合ってた。こんな朝早くにすみませんね。変なビールサーバー野郎……じゃなくって、鈴仙・優曇華院・イナバさん」

鈴仙「えっ……?(変なビールサーバー野郎……?)」

観戦時はともかく、それ以外では永らく遭わなかった小柄な少年――妖夢が居るサンパウロのチームメイトである、
新田瞬が、相変わらずの不敵な笑みを湛えながら立っていた。


*****



509 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 01:09:35 ID:???
〜リオデジャネイロ・街中〜

鈴仙「もう。一体どういう意味かと思ったわよ。変なビールサーバー野郎って。幾ら何でも失礼過ぎない?」

新田「すみません。ただ、それだけ初めてスタジアムで会った時の印象が大きくって。
    アルバイト中のバニーさんが、仕事をほっぽらかして控室まで何の用だ? 追っかけか何かか?……ってね。
    ……あの時は確か、サンパウロとパルメイラスとの親善試合の時でしたっけ?」

鈴仙「うん、そう。私も良く覚えているわ。だって……その、初めてブラジルで、妖夢を――友達を見た日、だったから」

新田「……………あ、そうだ。鈴仙……さん。昨日の俺達の準決勝見ましたか?
    バスコ・ダ・ガマが相手で、9−0で大勝した。俺も一応1ゴール挙げたんですよ?」

鈴仙「えーっと。うん。勿論見てたわ。翼君が2ゴール4アシストで、ストラット君と妖夢がそれぞれハットトリックだった。
    サンパウロは強いわよね。……数日後の決勝戦が怖いわ」

新田「そういうコリンチャンスも、優勝候補を悉く破ってるじゃないですか。
    ……ま、そのまま敵のストライカーが怖がってくれた方が、俺達的には有利ですけど」

鈴仙「む。言ったわね……」

新田の案内で街中を練り歩く二人の会話は、自然なようでどこかぎこちなかった。
鈴仙は素直にコミュニケーションを取ろうとしているものの、どちらかと言うと人見知りする気質だったし、
新田も、普段は先輩に対しても割と慇懃無礼に接しそうな性格なのに、今日は遠慮している感じに思える。
その結果、二人は一見楽しく話しているように見えて……裏には互いに示し合わせたような一線が、常に引かれていた。
しかし、そんな気まずさが漂う中でも、二人は途中で別れたりもせず、同じ道を進み続ける。
その理由を、鈴仙は、あるいは新田は――何となく察しながら、敢えて声に出さずにいたが。

510 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 01:10:55 ID:???
〜街中の公園〜

新田「………あの」

――果たして、先に限界に達したのは新田だった。
サッカーの練習が出来る程の広々とした市民公園の芝生のド真ん中で、彼はこう切り出した。

新田「……もし良かったら。今から暫く、俺と特訓しませんか?」

鈴仙「………………!」

鈴仙は、彼がこう切り出すのだろうと、始めから何となく分かっていた。
だからこそ、眠っているてゐを尻目に客室を抜け出し、ホテルからここまでの数十分の道程を、
新田と喋りながら歩いて来たのだ。そして鈴仙が最初から察していた事を、新田も分かっているようだった。

新田「俺はずっと、あなたに興味を抱いていたんですよ。鈴仙さん。
    ――何故なら、姉御……妖夢さんはずっと、貴女という存在に執着し続けていたから」

鈴仙「興味があったのは私もよ。なんとなくだけど……妖夢は、あなたみたいな子と気が合うと思ったから」

鈴仙と新田は、妖夢という共通の存在を通した利害関係にあった。
鈴仙は変わってしまってからの妖夢を良く知る新田を知りたいと思っていたし、新田はその逆の意味で同じだ。
だからこうして、互いに知り合い交流する事は、互いの目的を満たす為に必要だと二人とも考えていた。

511 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 01:12:22 ID:???
新田「翼さんみたいな天才でも無い俺如きが、こんな表現をするのも変だけど。
    鈴仙さんのプレーは、今の姉御のプレーとは正反対だ。
    姉御は抜き身の刃みたいに常に鋭く、冷たいサッカーをするけれど、
    鈴仙さんのサッカーは、普段は鈍い感じだけど、ここぞという時の熱量が凄い。
    ――だから、気になった。姉御と鈴仙さん。二人は具体的にどこが違うんだ?
    どっちのサッカーが、果たして強いんだ? ……ってさ」

純粋に新田は知りたかった。今の妖夢と鈴仙との間を隔てる物は一体何で、
一体どうすれば、正反対な二人の力を理解する事ができるのかを。

鈴仙「どこが違うのか、か。私だって分からないよ。いや、感覚では分かるかもだけど。
    言葉じゃ表せない。だからそれよりも、私に見せてほしいな。
    貴方が今の妖夢らしい、と思っているサッカーを。
    ……貴方の目から見える妖夢を見る事で、私は、自分の弱さを知り。そして妖夢の強さを知りたい」

鈴仙は教えてほしかった。何の先入観を持たないままに今の妖夢を、そして鈴仙を見て来た者にとって、
自分はどう映るのか。自分と妖夢とは一体何が違うのか。一体どうすれば、再び同じ道を歩む事が出来るのかを。

新田「……ボールは沢山持っています。今の時間なら人も少ないから、迷惑をかける事も邪魔される事も無い。
    だから、――存分にやりましょう。そして、教えて下さいよ。あんたのサッカーってヤツを……!」

鈴仙「貴方は素直だけど、同時に凄く野心が強いのね。全ての物をありのままに受け止めて、
    全ての物を自分の力にしようとしてる。でも、そんな貴方と特訓できる事はこっちにとっても幸いだわ。
    ――私は貴方を通して、迷いなく、自分自身を見つめ直したい……!」

――ホテルで出会った時から、二人にとってこの展開は予定調和だった。
かつての友との戦いを前に、自分を見失いつつあった鈴仙は新田の純粋さと貪欲さを求めており、
更なる高みを目指す為にも、信頼できる師と、そのかつての友人を深く知りたい新田は鈴仙のひた向きさを求めていた。

二人は狡猾ながら誠実に、明日への希望と野望を求めて特訓を重ねる。そして、その結果――。

512 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 01:13:49 ID:vjl478xw
先着2名様で、

★鈴仙の希望→! card★
★新田の野望→! card★

と書き込んでください。数値の合計で分岐します。
(/の左側が鈴仙、右側が新田の成長判定になります)

35→二人に一体何が…? 能力+3、更に更に…?/全能力+2、更に…?
31〜34→超進化!!     全能力+2、更に…?/全能力+1、攻撃系+1
26〜30→進化!        全能力+1、攻撃系or防御系各+1/全能力+1
16〜25→特訓は成功だ!    全能力+1/攻撃系+1
10〜15→そこそこの成果だった。攻撃系各+1/防御系各+1
2〜9  →残念な感じだった…。 防御系各+1/効果なし

*攻撃系=ドリブル・パス・シュート・せりあい で、防御系=タックル・パスカット・ブロック・せりあい です。
*マークか数値が一致した場合、判定に+5されます。これらの効果は重複しません。
*合計値が21以上の時、鈴仙はフラグ習得!(分野は選択で決定)
*合計値が26以上の時、鈴仙は必殺技習得!(分野は選択で決定)
*JOKERが出た場合は『ダイヤの15』として扱います。オールマイティにはなりません。
*今回については、特訓時の上昇制限は才レベル限界の57とします。

513 :森崎名無しさん:2017/10/18(水) 01:15:07 ID:???
★鈴仙の希望→ ハート6
私の青春!

514 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 01:17:07 ID:vjl478xw
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
新田君も成長してしまいますが、成長量は鈴仙より控えめ+追加フラグ習得は無しと抑えめになっています。
次回は、通常の練習フェイズ2回とパチュリー&慧音加入の小イベントを経て、
いよいよサンパウロ戦のミーティングに入っていきたいと考えています。
戦術面等につきましては、また色々と考えて頂ければ大変嬉しいです。それでは、本日もお疲れ様でした。

515 :森崎名無しさん:2017/10/18(水) 01:25:05 ID:???
★新田の野望→ ハートA

516 :森崎名無しさん:2017/10/18(水) 08:59:39 ID:???
新田さん、なにやっているッスか…

517 :森崎名無しさん:2017/10/18(水) 10:29:35 ID:???
新田が足を引っ張ったなw

518 :森崎名無しさん:2017/10/18(水) 12:23:46 ID:???
新田ェ……

519 :森崎名無しさん:2017/10/18(水) 19:52:08 ID:???
ある意味新田らしいというかなんというか・・・
はっ、まさかこれで相手の時間を無駄にするという新田の知略!?なんてやつだ・・・

520 :森崎名無しさん:2017/10/18(水) 21:18:31 ID:???
ハートで一致ということは…
まさか新田は鈴仙に惚れて集中出来なかったとか!?

521 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 23:21:21 ID:vjl478xw
更新再開します。
>新田君について
マーク一致なので鈴仙的には最低限の効果はありましたが、
それならもうちょっと良い数字出してくれよって感じですねw
ここで新田の攻撃能力が+1されてたらサンパウロ戦は勿論、全日本でも脅威度がかなり上がってたと思いますが、
このままでは日向や来生には勝てないですね……。
>>513
鈴仙の青春はダイスですね(白目)
>>519
新田君は本スレではあと一歩だったので、外伝では輝いて欲しいという想いもありますね。
時間が無駄になってるのは鈴仙よりも新田自身という事実…
>>520
その展開もモテモテ鈴仙で面白いとか思いましたが、今回だけではフラグは立ちませんね。
JOKERで唐突に惚れる分岐が生じるフラグにはなったかもしれませんがw

522 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 23:23:20 ID:vjl478xw
★鈴仙の希望→ ハート6 ★
★新田の野望→ ハートA ★
6+1+(マーク一致+5)=12
10〜15→そこそこの成果だった。攻撃系各+1/防御系各+1

鈴仙と新田のごく短い間での特訓。その中で結果を出せたのは――新田ではなく、鈴仙だった。

新田「でりゃぁぁぁっ、『隼タックル』だッ!」

鈴仙「甘いわね。佳歩のタックルよりも軽いわ。……それっ、私流強引なドリブル・『ラビットスターター』よっ!」

ダダダッ、ガシイイッ!

鈴仙「……一瞬でも閃光のように。幻爆・『マインドスパークルマイン』!」

新田「(凄い! 俺の『隼ボレー』が恥ずかしくなる程の速度……そして威力だ!
    姉御と互角……いや、軌道のブレによる幻惑が決まったら、決定率はそれ以上かもしれない!)」

新田「――足の速さなら負けませんよ! その程度のパス……うわっ!」

鈴仙「正確にコーンにボールを当てる練習を繰り返した、かつての私の努力を舐めて貰っちゃ困るわ!」

下手な友人や仲間では無く、新田という、適度に距離のある人間と接する事が、
悩んでいた鈴仙にとって丁度良かったのかもしれない。
これまでの積み重ねを、飾らず素直に特訓の場で昇華できた鈴仙は自信を得て、
元々高水準だった実力を更に一回り伸ばす事に成功する。

新田「(……駄目だ。理解できない! 彼女は――鈴仙さんは、俺がこれまで抱えて来たものよりも、
     複雑で、重くて、色んな物を抱えている。……分かったのはせいぜい、俺がまだ未熟である、という事くらいだ!)」

523 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 23:24:49 ID:vjl478xw
逆に新田は、そんな伸びやかな鈴仙の横顔を見て――畏敬の念を覚えていた。
最初は鈴仙のサッカーをも自らのサッカーに取り込む意気だったが、無理であると素直に諦めざるを得なかった。
そんな鈴仙のサッカーに触れて、新田は思う。

新田「(もしかしたら、鈴仙さんなら……勝つかもしれない。姉御……妖夢さんのサッカーに。
    複雑で難解で婉曲で。悩みとか迷いで溢れそうな鈴仙さんの人間臭いサッカーは、
    機械のように怜悧な姉御のサッカーよりも一見して弱い。弱いけど……倒れなくて、強い!)」

選手としての劇的な成長は得られなかったし、参考となるプレーも見つからなかった。
しかし新田にとって、今回の特訓はある意味ではこれまでのどの練習よりも、実りある物だったかもしれない。
今日の時点では分からなくとも、彼もまた、その複雑さを理解し強くなる機会を得る事が出来たのだから。

*鈴仙の攻撃系能力値が+1されました。
*新田の守備系能力値が+1されました。

524 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 23:39:53 ID:vjl478xw
<<<鈴仙の章D・基礎練習フェイズその1>>>

鈴仙「新田君との特訓は有意義だったわね。……当の彼は、後らへんは驚きっぱなしな感じだったけど。
    でもお蔭で、今なら基礎能力が効果的に伸ばせそうな気がするわ!
    ……あ、気がするだけで、具体的な上方修正とかは無いけどねっ」

今回重点的に鍛える能力を選んで下さい。カッコ内は現在の能力値です。

A:ドリブル(56)  とても上がりにくい
B:パス(55)    とても上がりにくい
C:シュート(56)  とても上がりにくい
D:タックル(52)  普通
E:パスカット(52) 普通
F:ブロック(47)  とても上がりやすい
G:せりあい(54)  上がりにくい
H:フラグの開発をする。(更に選択)

所持中のフラグ:ドリブル(15/20)、低シュート(18/20)、タックル(10/20)、
           スキル・アリスさん操作(特殊)

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

525 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 23:41:34 ID:vjl478xw
※全体的な能力値のインフレ傾向を考慮し、成長しやすさについて、バランスを変更しました。
(普通〜上がりにくい以下の基準が緩和されました。能力値53以上の伸びやすさについては従来通りです。)
【旧版】
 数 値  練習での上がりやすさ
S:57〜   上がらない
A:55〜56 とても上がりにくい
B:52〜54 上がりにくい
C:49〜51 普通
D:46〜48 上がりやすい
E:43〜45 とても上がりやすい

【新版】
 数 値  練習での上がりやすさ
S:57〜   上がらない
A:55〜56 とても上がりにくい
B:53〜54 上がりにくい
C:51〜52 普通
D:49〜50 上がりやすい
E:  〜48 とても上がりやすい

526 :森崎名無しさん:2017/10/18(水) 23:44:38 ID:XNJSoLaA
D

527 :森崎名無しさん:2017/10/18(水) 23:46:37 ID:NSxpsvIs
D

528 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 23:46:46 ID:vjl478xw
参考:鈴仙の能力値(特訓後)
選手   ド  パ  シ   タ  カ   ブ  せ  総   高/低 
鈴仙  56  55  56  52  52  47  54  372  3  4 

所持中のフラグ:ドリブル(15/20)、タックル(10/20)、
           スキル・アリスさん操作(特殊)、てゐとのコンビプレイ(ワンツー)(10/20)

最大ガッツ:990

ルナティックブラスト(1/4でドリブル+4)
ラビットスターター(1/4でドリブル+2、吹飛2)
マインドシェイカー(シュート+5、1/4で敵GKにバランス崩しペナ(−2))160消費 
マインドブローイング(シュート+7、1/4で敵GKにバランス崩しペナ(−2)、吹飛5)200消費
マインドエクスプロージョン(シュート+9、1/4で敵GKに転倒ペナ(−4)、吹飛2)250消費
マインドスターマイン(空シュート+4、1/4で敵GKにバランス崩しペナ(−2))200消費
マインドスパークルマイン(低シュート+6、1/4で敵GKに転倒ペナ(−4))300消費
マインドベンディング(近シュート+5)120消費
インビジブルデューパー(シュート+12、要てゐ(※))250×2消費
真実の友情(シュート+14、要佳歩、てゐ(※)、ポスト・枠外無効)250×3消費、1試合1回限り
 ※発動の起点はてゐ。発動には(佳歩と)てゐと鈴仙がゴール前まで上がっている事が必要。
リフレクトバレット(低シュート+6、要パスカル、200×2消費)
月人師弟コンビ(パス+2の連続ワンツー、要永琳)60消費
タイガーバニーシンフォニア(パス+2の連続ワンツー、要星)80消費
マインドストッパー(1/4でタックル+3)
アイドリングウェーブ(1/4でタックル+2)
ディスオーダーアイ(1/4でパスカット+3)
アキュラースペクトル(1/4でパスカット+2)
スキル・狂気の瞳(全判定につき、スート一致時で敵能力−2)
スキル・心象操作(自分が反則時の判定1段階緩和)
スキル・足が速い(細かい判定で有利になるかも?)
スキル・オフサイドトラップ(前線へのスルーパスを1/2でオフサイドにできる)
スキル・フェアプレイ精神(鈴仙は反則を犯さず、代わりに鈴仙が反則の条件を満たした場合−3のペナを負う)

529 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 23:49:57 ID:vjl478xw
D:タックル(52)  普通

鈴仙「やっぱり、前線でのボールカット力を鍛えなくちゃね!」

鈴仙は試合を見据え、実践的な形でのタックル練習に取り組んだ。

先着1名様で、

★鈴仙のタックル練習→! card★

と書き込んでください。数値・マークで分岐します。

JOKER→+2&必殺フラグ習得!(フラグがある場合は回収)
13→+2!
2〜12→+1!
1→効果が無かった。

530 :森崎名無しさん:2017/10/18(水) 23:51:25 ID:???
★鈴仙のタックル練習→ スペード3

531 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/18(水) 23:58:59 ID:vjl478xw
★鈴仙のタックル練習→ スペード3 ★
2〜12→+1!


鈴仙「わっせ、わっせ……。ふう。これで単なる吹っ飛び役にはならないで済むかしら?」

鈴仙はタックルの基礎力を向上させる事に成功した。


*鈴仙のタックルが+1されました。52→53

532 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/19(木) 00:00:33 ID:eBI82f0I
<<<鈴仙の章D・基礎練習フェイズその2>>>

鈴仙「さて。今後の日程や休養日的に考えて、今が決勝前に出来る、最後の練習時間になりそうかしら?
    時間も少ないから良い成果が出るとは限らないにしても、悔いが残らないようにしないと!」

今回重点的に鍛える能力を選んで下さい。カッコ内は現在の能力値です。

A:ドリブル(56)  とても上がりにくい
B:パス(55)    とても上がりにくい
C:シュート(56)  とても上がりにくい
D:タックル(53)  上がりにくい
E:パスカット(52) 普通
F:ブロック(47)  とても上がりやすい
G:せりあい(54)  上がりにくい
H:フラグの開発をする。(更に選択)

所持中のフラグ:ドリブル(15/20)、低シュート(18/20)、タックル(10/20)、
           スキル・アリスさん操作(特殊)

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

533 :森崎名無しさん:2017/10/19(木) 00:02:28 ID:9ed6yrHs
E

534 :森崎名無しさん:2017/10/19(木) 00:06:08 ID:cPKKAKE+
E

535 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/19(木) 00:06:35 ID:eBI82f0I
すみません、所持中のフラグの低シュートはミスですね…既にマインドスパークルマインを習得していますので。
現在のフラグはドリブルとタックルになります。
なおフラグ開発では、鈴仙はフラグ経験値+! diceを得る事ができ、経験値(フラグ横の数字)が20に達するとフラグを回収します。

536 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/19(木) 00:08:45 ID:eBI82f0I
D:パスカット(52)  普通

鈴仙「後1回しかない練習だもの。ここは確実に基礎を磨いていかないとね……」

鈴仙は基礎に立ち返って、パスカットの練習に熱心に取り組んだ。

先着1名様で、

★鈴仙のパスカット練習→! card★

と書き込んでください。数値・マークで分岐します。

JOKER→+2&必殺フラグ習得!(フラグがある場合は回収)
13→+2!
2〜12→+1!
1→効果が無かった。

537 :森崎名無しさん:2017/10/19(木) 00:09:31 ID:???
★鈴仙のパスカット練習→ クラブ6

538 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/19(木) 00:13:04 ID:eBI82f0I
★鈴仙のパスカット練習→ クラブ6 ★
2〜12→+1!

――タッ、パシッ。――タッ、パシッ。――タッ、パシッ。

鈴仙「……ふう。まあ、こんなものかしら?」

鈴仙は基本的なパスカットの動作を確認し、元々の技術を更に洗練させる事に成功した。


*鈴仙のパスカットが+1されました。52→53

539 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/19(木) 00:16:03 ID:???
……と、言ったところで短いですが今日の更新はここまでにします。
次回はパチュリー&慧音の加入描写を挟みつつ、遂にサンパウロ戦ミーティングに入りたいと思います。
大雑把な能力傾向については>>500-501でも描写しましたが、色々戦術等を考えて頂けるよう工夫できたらと考えています。
それでは、本日もお疲れ様でした。


540 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/19(木) 22:36:49 ID:???
今日は仕事がとても忙しいので、更新をお休みします。

541 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/21(土) 00:02:15 ID:???
〜コリンチャンス宿舎(ホテル)・コーチの部屋〜

コーチ「……………」

カリ、カリカリ……。

白髪に髭をぼうぼうに生やした老コーチは、ノートに書く手をふと止めた。
外の光が眩しくなっており、気付けば夜を明かしてこれをしたためていた事に気付く。
最近はめっきり起きれなくなっていただけに、自らにここまでの気力が残っていた事を、彼は静かに驚いていた。

コーチ「(……これも、レイセンのお蔭か)」

立ち上がり、曲がった腰を伸ばしながら、老人は――いや、実際の年齢はもっと若いのだが、
様々な困難を経験した彼は既に、他の同年代のどの男よりも老いていた――、そう思う。

コーチ「(富。名声。夢。希望。理想。コリンチャンス。仲間達。家族。そしてサッカー……。
     私はこれまで、多くの物を失って来た。残されたのは、この空虚な肉体だけだと、ずっと思っていた。
     あの子が、ここに来てくれるまでは……)」

最近の彼は満たされていた。貧しいながらも楽しいクラブハウス(ボロ居酒屋)での日々や、
指揮官としての名声や、旧友との和解は、勿論大きかったが。
何より、文句を言いながらも祖父のように慕ってくれる素直な少女の存在が、今の彼を救っていた。

コーチ「(……思えば、皮肉な物だ。貧しかった私はサッカーで金を得、身を立て医師となり。
     サッカーによる活躍で、理想を実現する為の名声を得たにも関わらず、その理想は阻まれ。
     そして、全てを失ったと思いきや、再びサッカーを通して、また新たな物を得つつある。
     この世に神が居るとすれば聞きたい。何故にサッカーは、私をこうも翻弄するのか)」

ロベルト・本郷やエベルトン・レオンと共にブラジルサッカー黄金時代を築き上げ、
政府の陰謀によりその歴史の表舞台から追放された男は、皮肉気に嗤う。

542 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/21(土) 00:03:32 ID:???
コーチ「……さてと。サンパウロとの決勝戦は、今日だったな?」

そう独り言ちて、彼は再度リオカップの日程を確認する。間違いない。
今日こそが、コリンチャンスがブラジル若手サッカーの登竜門・リオカップの決勝戦にて、
超強豪・サンパウロと対峙するその日である。彼は祈る。

コーチ「神よ。願わくば……私を今日も生かして欲しい」

――『サッカーで世界を平和にする』。若き日の彼の口癖だった。
そして、そのバカげた言葉を真に受けて、更にバカげた言葉を言った娘が傍にいる。

「――だったら。私がコーチの夢を引き継ぎます。
 前に言いましたよね。『私はサッカーで世界を平和にするんだ』……って。
 コーチがもう動かないなら、私が、貴方の代わりに夢を叶えます」

始めは鬱陶しいとも思ったが、今は違う。
彼女の暢気で、狂気で、しかし、真っ直ぐな赤い瞳を、彼はどこまでも信じたかった。
だからこそ、彼は毎日――鈴仙が自分を起こしてくれたあの日から毎日――祈り、願い続けている。

コーチ「レイセンが――私の理想を継ぐと言ってくれた、私の愛する義娘が。
     彼女が成長する姿を、今日もまた、その傍で見せて欲しい。
     いつか、彼女が理想を叶えてくれるその日まで……私を生き永らえさせてほしい」


そして。この世に神が居るとすれば――それは少なくともこの老人にとって、最後までどこまでも残酷だった。



543 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/21(土) 00:06:39 ID:???

コーチ「ゴホッ! ゴホゴホッ! ……ウグッ。ウウウウッ……」

ボタリ。ボトッ、ドバアァァァァッ……。

咳き込むと赤黒い血が手から漏れる。この程度ならば、最近では日常茶飯事だったので驚かない。
しかしその直後、吐き気を覚えて大量の血液を地面にばら撒いた直後では、覚悟せざるを得なかった。
――自分はもう、見る事が出来ないのだと。
彼が晩年愛した義娘が、ブラジルサッカーの大舞台で活躍し、その理想の第一歩を踏み出す、その瞬間を。

コーチ「(もう……時間、切れか……)レイ、セン。……悩む事は無い。そして……先に、進めよ。
     お前一人じゃあない。仲間と。それと……道を違えた友人とも……。お前なら、上手く、やって、いけ……」

……バタリ。

彼女がその声を聴く可能性など万に一つも無い。しかし老人は、そう口にせずには居られなかった。
人知れず去りし老兵など気にせず、天下を取って欲しい。そして、理想を実現して欲しい。
彼は倒れる前に簡単な『工作』を施して――そして、安心しきった表情で彼女を見送った。



*****



544 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/10/21(土) 00:20:58 ID:???
一旦ここまでです。今晩中には選択肢まで書き上げたいです…

545 :森崎名無しさん:2017/10/21(土) 01:03:21 ID:???
一旦乙です
コーチ、無茶しやがって……

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