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【サッカー少年】キャプテンEDIT【奮闘記】
[946]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:45:09 ID:??? 実況「さあ、選手の入場です。まずは県内の試合では無敗記録を更新し続けております、ご存じ鳴紋中学! 不動の10番・小豆沢くんは、今年はキャプテンを務めます。稀代のゲームメイカーとして、いかなる采配を見せるのか? 更には秋季大会から急浮上したストライカー・早瀬くん、華麗なるドリブラー瀬川くんといった個性的な面々も揃っております。 また1年生を多く含んだ挑戦的な選手構成となっていますが、これが吉と出るか凶と出るか? これもまた見どころとなりそうです。 鳴紋中学はシード権を獲得しているため本日の試合はありません。が、彼らの表情をご覧ください! いずれの顔も既に闘志を漲らせているのが伺えるでしょう! 県内王者・鳴紋中、覇者の道行きに油断の二文字はありません!」 観客「小豆沢ーっ! 今年も優勝を決めてくれーっ!」「早瀬ーっ! 頑張れよーっ!」「瀬川ーっ! 彼女返せーっ!」 小豆沢(……これが中学最後の夏。何としても全国へ行く。そして今年こそ勝つ。勝ってみせる!) 早瀬(鳴紋のエースストライカーとして認められ、こうして歓声を浴びていはいるが……足りねえ。もっと上の舞台へ行きてえ。 もっと高みに立って、そこで歓声を浴びてみてえんだ。そのためにも、県内なんかで足踏みしていられねえな) 瀬川(へへっ♪ 歓声を浴びるのは、やっぱり気持ちが良いぜ! 女の歓声と男の罵声は、色男にゃ付き物ってもんさ!) 柿原(ここで戦うのも今年が最後か。……感慨深いものがあるな) 長池(……観客席にいたヤツ。今俺を笑わなかったか? ……笑えよ。……今の俺は晒し者だ……。 選手の列には加わっているが、試合前からベンチ確定の晒し者なんだよ……) 豊原(……長池のヤツ、大丈夫なのか? まあ、ベンチにいれば無害だろうが) 篠田(早瀬は不動のストライカーで、1年には成長株の比良山もいる。……敵は他校だけではないな)
[947]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:46:12 ID:??? 本条(今年もサブGKか……まあ、1年の渡会が弾かれただけでも良しとするか) 比良山(明日には中学初めての公式試合か。必殺シュートのアイディアをものに出来なかったのは悔やまれるな。 まあいい。今は全力を尽くすだけだ) 雪村(……変な気分だ。あの鳴紋中のレギュラーになって、思いっきりサッカーができるのに、何だか気持ちが弾まないや。 アイツ……あの男と、また戦わなければいけないからかな) 大前(来年……いや、秋には絶対にあそこへ並んでみせる。それまでは我慢だ) やす子(この三ヶ月面倒を見てきたチームだけど、正直、自信を持って全国へ出せるレベルかというと疑問よね……。 大会を通じて、もう一伸びしてほしいところだわ) 実況「続きましてはもう一方のシード校、清栄学園中等部! 昨年度はライバルの鳴紋を前に苦杯を舐める日々が続きましたが、 果たして、今年はどうでしょうか? 近代的科学トレーニングと音に聞こえた指導層のコーチングは、王者の牙城を崩せるのか? 善戦を期待しましょう!」 観客「鳴紋に比べるとあっさりした紹介だな?」「どうも、学校は派手だけど選手は地味目なんだよな……」 清栄応援団「清・栄! 清・栄!」「勝ーてっ! 勝ーてっ! 清・栄っ!」「打倒鳴紋! 清・栄っ!」 大前「シードで今日は試合が無いのに、応援団まで連れてきてるのか……」 国岡「けっ、物を知らねえ野郎だ」 渡会「……(無視)」 末松「……(無視)」 落田「(流石に全スルーは気が引けるよな)あそこは金持ち私立で、理事会やPTAに派手好きなのが多いからな」 菱野「凄い声ですわ。鼓膜が痛いです……」
[948]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:47:37 ID:??? 清栄キャプテン(惨めな気分だ……今年も小豆沢の相手をしなけりゃいけないってのに、加えて下から金成が突き上げてくる……。 俺、なんでキャプテンになんかなっちまったんだろう。普通の部員なら、こんな苦労せずに済んだのに……) 金成(鳴紋の練習試合の様子からすると、小豆沢以外ならどうとでも料理できるな……だが、ヤツだけはどうにもならん。 ちっ、こうなったら、最後の手段も検討しておくか) 実況「次はベスト4の常連・氷潤中学! 先立っての練習試合では鳴紋に完全粉砕されました。 ですが、あれから猛特訓に励んでいたとの噂。今年は鳴紋・清栄の二強を相手に、どこまで食い下がってくれるでしょう!」 国岡「『あれから猛特訓』だとさ。けけけっ。次にやりあう時は、お前は出場辞退した方が良いんじゃねえの? ま〜た恥掻くかもよ? ま、秋には出られるって保証も無いけどよ」 大前「(構うだけ無駄だ。無視無視)……」 菱野「国岡さん? 公衆の面前でチームメイトを馬鹿にするような発言は慎んだ方がよろしいのでは?」 国岡「……へいへい。マネージャーは偉い偉い」 落田「菱野さんになんて口の利き方するんだ、この野郎!」 末松「なんで落田が怒るのかな〜?」 渡会「……ほっとけ。あほらしい(国岡も、自分が氷潤の連中に追い越されるかもって思わないあたり、おめでたいよな)」 氷潤の6番(『どこまで食い下がってくれるでしょう』? 馬鹿にしやがって……いつまでも鳴紋と清栄の噛ませ犬でいられるか!) 氷潤の2番(短期間の特訓だったが、タックルには充分磨きをかけてきた。もう好きにはさせないぜ、瀬川!)
[949]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:48:38 ID:??? その後も続々と参加校の選手たちが入場する。 氷潤と同じくベスト4〜8には毎年食い下がる浪野中学。 レベルは低いがチームワークに優れた寂庄中学。 その他、大迫中学、赤口中学などが続く。 出場校が全て出揃った後は、優勝旗返還や選手宣誓など、お決まりの流れが続く。 そして、式次第を恙無くこなした後に、本格的に試合が始まった。
[950]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:49:39 ID:??? 〜数日後、県大会・準決勝〜 実況「試合終了っ!! 県大会決勝へコマを進めるのは、やはり鳴紋! 氷潤中、やはり二強との差は大きかったか! 8−0で鳴紋中の勝利です!」 準決勝第一試合は、前評判の通りに鳴紋が圧倒的勝利を収めた。 しかし、鳴紋イレブンの中にも、それを素直に喜べずにいる者たちがいた。 早瀬(何言ってやがる。今回は正規のスタメンを揃えてやっているっていうのに、前半主力を温存した練習試合と同じスコアだ。 前の試合からたった一ヶ月で、確実に差を縮められてやがるじゃねーか。6番を始めとした手強い連中は、俺と同じ2年くらいか? 小豆沢さんたちが抜けた後の秋は、確実に強敵になるぞ……) 小豆沢(惜しいな……彼らの世代が僕と同世代なら、もっと互いを高めあうことが出来たろうに。そうすれば鳴紋も全国で――、 いや、これは詮無い話か。僕は今の鳴紋のキャプテンだ。このチームで、全国で勝つことを考えなくては) 雪村(次は清栄との決勝戦だ。けれど、今までの金成が出たっていう話は聞かない。……選手入場の時にはいたはずなのに。 1年とはいえ、アイツがベンチに大人しく引っ込んでいるなんて、とてもじゃないけど考えられない。何を企んでいる?) 比良山(勝ち進むに連れ、雪村の顔が曇っていくな。……試合にプレッシャーを感じるタマでもないのに。 大前のことを多少は引き摺っているのかと思ったが、それも違うようだ。一体どうしたというのだ?) 決勝への切符を手にしながら、それぞれ懸念を抱えた面々。だが、やはりそういった考え方は少数派のものだろう。 大多数の部員は勝利と決勝進出に沸き返っていた。 瀬川「へへへっ♪ 今日も俺のドリブルは冴えわたっていたぜ! 勝利の女神は、この色男にメロメロだな!」 氷潤の2番(くそっ、またアイツを止められなかったとは……) 篠田「今日は2ゴールか。ストライカーの面目躍如だな」 長池「いいよなぁ、瀬川や篠田は試合に出れて……どぉせ(ry」
[951]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:50:39 ID:??? 氷潤の6番(長池が出てくれば集中的にそこを狙えたのだが……そう上手くはいかんか) 本多「小豆沢さんのインターセプトが冴えていたお陰で、ほとんど仕事が無かったな。流石に次の清栄戦はこうはいかんだろうが」 柿原「やれやれ。なんとか今年も、全国に行って締めくくれそうだ。」 多くのチームメイトは、未だに楽観していた。 不安を抱えた者にも気付くものはいなかった。 県大会決勝戦、そこで待ち受けているものの正体を。 〜準決勝・第二試合〜 氷潤を下した後の鳴紋レギュラーは、客席の補欠メンバーと合流して決勝の相手を品定めに掛かっていた。 小豆沢「清栄の相手は浪野か。なんというか、嫌になるくらい例年通りだね……」 早瀬(その例年通りってのが意外に曲者なんだよな……そこに慣れて安住しちまうと上積みが小さくなる。 小豆沢さんも、その点は危惧しているんだろうけど) 眼下のピッチでは、清栄学園が浪野中学を蹂躙している様が繰り広げられていた。 組織力も個人技も清栄が圧倒し、対する浪野は為す術なく攻撃の頓挫と失点を繰り返す。 先程の試合との差異は、有利な側に小豆沢のような圧倒的なプレイヤーがいるか否か。 不利な側に何としても抗おうという執念があるか否か。それくらいのものである。 雪村「…………」 大前「…………」 大前と雪村は、図らずも並んで試合を観戦することになったが、二人の間に会話は無い。 目線すら合わせようとしなかった。
[952]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:52:20 ID:??? 雪村が大前に感じた失望はそれほどまでに深く、大前が雪村に抱く屈託はそれほどまでに大きい。 比良山(く、空気が重い……) 菱野(大前さん、顔が凄く怖いですわ……やっぱり、チームメイトと上手くいかないことより、 雪村さんと不仲になったことの方が深刻なんですのね……) 国岡(いいねえ。目障りな大前とポジション争いに邪魔な雪村が潰し合ってくれれば、利益は俺の総取りになるってもんだぜ) 早瀬(他の部員の真ん前であれだけ派手に決裂したんだ。そりゃあ後を引くわな……どっちかが折れてくれればいいんだが……) 緊迫感を孕んだ観客席をよそに、試合は淡々と進む。 準決勝第二試合は、すでに清栄の勝ちが確定したようなものだった。優勢の清栄、劣勢の浪野、共に試合を流す体勢に入っている。 そして、審判の笛が鳴った。 実況「試合終了です! 準決勝第二試合、先ほどの第一試合をなぞるかのように二強の一翼が大差圧勝! 清栄学園、浪野中学を下しました!」 柿原「……まるで予定調和だな」 瀬川「そんでもって、予定通りに俺たちが勝つ! これで決まりだね♪」 長池「そうだといいが。しかし相手を甘く見て高をくくっていると、手痛いしっぺ返しを食うぞ……」 瀬川「縁起の悪いこと言うなよ。ずっとベンチだったからって、ふてくれさてんのかー?」 長池「……いいよなあ、お前は前向きで……はぁ……」 早瀬「長池が最近ネガティブなのは確かだが……油断は禁物って気はするな。ここのところ俺らの勝ち越しだっていうのに、 清栄の試合運びは気味悪いくらいにいつも通りだった。何かを隠している気がする。 決勝に向けて隠し玉の一つくらいは、温存してるんじゃねーか?」
[953]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:53:53 ID:??? 瀬川「早瀬も心配性だなー。とりもち苦労ってやつだよ、きっと」 大前「それを言うなら取り越し苦労では?」 瀬川「細かいなー、大滝くんは」 大前「……だから俺は大前ですって」 雪村(隠し玉……やはり金成のことだろうか? けど、いくらアイツが上手いからって、小豆沢さんに対抗できるほどじゃない。 一体、何を企んでいる……) 一方その頃、清栄学園陣営では、 金成「よう、先輩方。予定通り決勝進出、ご苦労さん」 今までベンチを温めていたのにも関わらず、不遜な言葉を投げかける金成。 だが、清栄のスタメンも他の部員も、あまつさえ監督さえもそれを制しようとはしない。 清栄の9番(くそっ、1年がデカイ面しやがって……) 清栄の7番(抑えろ。現状、俺たちが小豆沢に対抗するための駒は、コイツしかいないんだ) 清栄の監督(部員たちの間にも不満が燻っているな……だが、これも決勝で勝つためだ。 私の任期も今年で三年目。その間、一度も小豆沢のいる鳴紋に勝てなかったとなったら、この首が危ない……。 金満私立校の監督業は、実業団を引退した私にとって、年金のようなもの……決して手放せない……) 金成(けっ。どいつもこいつも、小豆沢にビビってるのが透けて見えるぜ。だが、裏を返せば――) ニヤリと、金成が嫌な笑みを浮かべる。 金成(――小豆沢さえいなければ、勝てる自信があるってことなんだよなあ……。くひひっ!)
[954]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:55:20 ID:??? 〜決勝当日〜 実況「さあ、遂にサッカー県内最強の中学校を決める時がやってまいりました! 炎天下のピッチを舞台に雌雄を決するのは、やはりこの二強。鳴紋中学と清栄学園中等部です! 不動の10番に率いられた、前年度王者・鳴紋か? 科学的トレーニングを積んで鍛えられた清栄か? 勝つのはどっちだ!?」 観客「へへっ! 悪いが今年も鳴紋だぜ!」「小豆沢はまた腕を上げてたからな……」「清栄は苦しいだろうな」 清栄応援団「勝ってーっ! 勝ってーっ! 清・栄!」「打倒鳴紋・清・栄っ!」 金成「さて、と。仕込みが上手くいってりゃ、俺らの勝ちなんだが」 清栄の8番「……今年こそ勝たなきゃ。今年こそ、全国へ行くんだ……(ブツブツ)」 雪村(やはり出てきたか、金成……!) 早瀬(去年の小学生の大会じゃ、ダンチのパフォーマンスだったていう金成か……。 だが、そいつ一人で覆るほど勝負は甘くねえぞ。いくらなんでも、1年坊に小豆沢さんと同じ役割を求めるってのはな……) 比良山(顔を合わせた途端に雪村の表情が変わった。不安の種はコイツか) 本多(相変わらず嫌な顔だぜ、金成は……また何か悪だくみでもしているのか?) 金成「おっ? 誰かと思えば、雪村じゃん。去年は世話になったな〜、ホント」 雪村「よくもぬけぬけとそんなことが言えるね……」 金成「それはどっちかというと、俺のセリフだぜ? 去年の大会でお前に削られた時は、ホントに痛かったからよ」 雪村「ふざけるな! あんなのシミュレーションじゃないか! 大体、その後は平気でプレイを――」
[955]キャプテンEDIT ◆wM6KXCkaLk :2010/03/07(日) 01:57:08 ID:??? 金成「おー、熱くなっちゃって! 恐い顔するなよぅ、お前は『サッカーは楽しく』が信条だろう? 笑顔笑顔! ……ひひっ♪」 雪村「コイツ……!」 早瀬「ばっ、止せ、雪村!」 カッとなって、金成に掴みかかる雪村。 が、その直前に金成は身をかがめる。 金成「わあっ!? やめてくれよ、雪村くん! いきなり酷いよ!」 雪村「なっ!?」 突然、しおらしくなり弱々しい声を上げる金成。その様子に面食らい、雪村は掴みかかろうとした姿勢で止まってしまう。 そこへ、変事に気付いた審判が現れた。 審判「何事だ? 騒がしいぞ」 金成「か、彼がいきなり僕に暴力を! 僕は、ただ小学生の時の大会の話をしていただけなのに!」 雪村「か、金成……! 白々しい真似を……!」 金成「知った顔に会ったから嬉しくて昔話をしただけなんです! けど、ついうっかり、彼が負けた時の話をしちゃって――」 早瀬(こすっからい野郎だ……バレてもいいよう、ウソにはならねえ言葉を選んでやがる) 小豆沢「(今日まで温存していた1年……こういうプレイを得手とするタイプか?)すいません、雪村には良く言って聞かせます」
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0ch BBS 2007-01-24