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【そんなタイトルで】アナザー カンピオーネ1【大丈夫か?】
[11]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:48:45 ID:??? ジョアン「ああ…素晴らしかったよ、キミの指導を受けているだけあってね。 各自が己の役割を把握し、頭を働かせながらプレイに臨んでいた。 テクニック…才能についても非の打ちどころがない、流石は東欧のブラジルだ。」 アンザーニ「キミにそこまで褒めて貰えるとは光栄だよ、だがうちだけじゃないぞ。 他のチームも輝きを放つ原石が数多なんだ。この世代の才能はまさに黄金期さ。 例えばディナモにはプロシネチキがいる。あの子の足裏を使ったフェイントは 一見の価値があるぞ?いずれは世代を代表するMFに成長するだろう。 それからチトーグラードのデヤン・サビチェビッチも恐ろしい。あの傑出した 左足はいずれ世界を揺るがすさ。それから外せないのがミヤトビッチだ、彼の…。」 ジョアン「解っている、解っているさアンザーニ。キミの心遣いには感謝の言葉もない。」 アンザーニ「それならば…改めて頼みたい。うちのチームにコーチとして来てほしい。 二人でこの国の若い才能を世界に羽ばたかそう。 もしコーチという地位が不満ならば、協会に推薦状を書こう。」 ジョアン「ありがとうアンザーニ………だがな…。」 言葉と共にジョアンは激しく頭(かぶり)を振り…そして左手を額に当て、目を覆った。 癒える筈もないジョアンの傷が目に見えるようだった。
[12]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:49:47 ID:??? 愛弟子…即ちロベルト・本郷・ジ・アンドラーデを失ったあの日から、 目の前の親友は一歩も進めていないのだ。 アンザーニはザッハトルテを掬うフォークを置き、コーヒーに手を伸ばした。 強烈な苦みが口の中を駆け巡り…それは胸の中まで拡がっていくように感じた。 ―――暫し間 沈黙の時が流れ…… ……そしてジョアンはポツリ、ポツリと言葉を発し始めた。 ジョアン「私は監督として大きな過ちを犯していた事に気付いたんだよ… その過ちこそがロベルトの選手生命を刈り取った事にもね。」 アンザーニ「過ち……」 ジョアン「私はロベルトの才能にのめり込み…そして溺れていた。 チームの核として、エースとしてロベルトを置く、それはいい。 だがロベルトと他の選手の差があまりに大きすぎた。 …にも関わらず、私は他の選手の実力を引き上げる事よりも、 ロベルトの才能を磨く事を選択してしまったんだ。」 アンザーニ「なるほど…サンパウロにはロベルトをフォロー出来るだけの選手が居なかったんだね。」 ジョアン「そう…あの年にサンパウロがリーグ優勝出来たのはまさしくロベルト一人の力だった。 私はチームをロベルト一人に背負わせてしまったんだ。 その結果、ロベルトは二度と選手としてフィールドに立てない…」
[13]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:51:56 ID:??? 悲劇だな…、と思うしかなかった。 アンザーニの目からも、ジョアンとロベルトの絆は単なる監督と選手のそれではなかった。 師弟…いや、ほとんど親子と言っても過言ではない信頼関係が二人にはあった。 ジョアンはロベルトの才能を開花させるために尽力し、ロベルトはそれによく応えていた。 ロベルトが最期の試合で決勝点を挙げる為に無理にクロスプレイへ飛び込んだのも、 きっとジョアンをリーグ優勝監督にしてやりたいという、恩返しの意思が働いたに違いないのだ。 アンザーニ「ロベルトは…今どうしているんだ?」 ジョアン「自分の足でブラジル中の病院を巡っている…どうにか治す方法はないかとね。 だが無理なんだ…ブラジル、アメリカ、フランス、既に何カ国も私は当たっている。 今の医療技術では網膜剥離を完治させてアスリートに復帰するのは不可能なんだ。」 つまり…ロベルトは現実を受け止めきれず、絶望を再確認するための旅路にいるという事か。 アンザーニは大きく首を振った。 これではジョアンが新しい一歩を踏み出す事など出来る筈ない、そう理解せざるを得なかった。 アンザーニはこの日の説得を切り上げる事に決めた。 だが諦めた訳ではなかった。 ロベルトもいつかは現実を受け入れ、新たな夢を見つけ…そして歩み始めるだろう。 目の前のジョアンだってそうあっても良い筈だ。 …この自分でさえ踏み出すことが出来たのだから。
[14]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:53:08 ID:??? アンザーニ「ジョアン、これからどうするつもりだ?」 ジョアン「ハハ…正直なところ、何も考えられんよ。」 アンザーニの問いに対するジョアンの回答は力の無い笑いによって示された。 だがそれだけでは親友に対し申し訳ないと思ったのか、今度はアンザーニの目を見て言葉を付け加えた。 ジョアン「だが、そうだな…折角キミが招いてくれたんだ、暫くはユーゴに滞在するつもりだ。」 アンザーニ「そうか、もしも気が変わったらいつでも連絡してくれ。必ず力になる。」 ジョアン「恩に着る。」 すまなそうな顔でジョアンは頭を下げ、そして席を立った。 入口の扉が閉じられその背中が見えなくなるまで、アンザーニはジョアンを見送った。
[15]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:54:22 ID:??? 1‐4)ジョアン・ウェンガー 駅長「ニシュに到着です、お降りの方はお荷物をお忘れなきよう…」 車内アナウンスがなかなかの音量で流れた。 誘導に従い、ジョアンは大きなバックを肩に乗せて駅へ降り立った。 (prrrrrrr…) …間もなく発車ベルが鳴り出し、列車は次の駅に向けて走り出していく。 ジョアンも少し痛む腰をトントン叩きながら改札に足を向けた。 アンザーニと会って数日後、ジョアンはサラエヴォから250km離れた、此処ニシュへとやって来た。 ユーゴスラビアの国内とは言え、なかなか長距離の移動であったと言える。 ジョアン(流石にサラエヴォと比べて人は少ないかな。) 街へ降り立ったジョアンは率直にそういう感想を抱いた。 サラエヴォは近年に冬季オリンピック開催を控えており、建設ラッシュのさなかだった。 それに比べると観光地など存在しないニシュはみすぼらしいと言っても良かった。
[16]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:55:46 ID:??? そんな辺鄙(へんぴ)な場所に、これだけの距離を越えてやってきた意味。 それはズバリ、ユーゴスラビア・サッカーリーグの試合… レッドスター・ベオグラードvsラドニツキ・ニシュの試合を観戦するためだ。 と言っても、ジョアンの興味は専らレッドスターへと向けられていた。 レッドスター・ベオグラードはユーゴ国内で最大のクラブチームと言って良く、 UEFAチャンピオンズリーグの前身大会であるチャンピオンズカップにも顔を出す程の実績を持つ。 1960年台前半には低迷期に陥ったが、その後は監督および世代の交代に成功。 かの有名なジャイッチの台頭と共に1970年代、チームは栄華を極めた。 既にジャイッチはチームを辞しているが、レッドスターの実力は今まさに充実期を迎えており、 2年前などはUEFAカップで決勝まで勝ち上がる実績を持っていた。 ジョアンがここで知りたかったのはユーゴスラビアのトップ選手の実力だった。 ユーゴスラビアは東欧のブラジルと呼ばれる存在でありながら、代表チームの実績は皆無。 実力のある選手を多数抱えていると言われながら、代表は勝てないのだ。 これまで気にした事もなかったが、考えてみれば不思議な事である。 戦術か、連携か、フィジカルか…何か主要因となる問題がある筈だ。 国を代表するクラブ、レッドスターの試合を見れば、疑問の答えに見当がつくのではないか? ジョアンはそういう風に考えていた。
[17]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:57:10 ID:??? 試合は明日。 今日はもうホテルにチェックインし、移動による疲労を落としたかった。 ジョアンは思考をホテルの捜索に集中するため、小型の地図帳を開いた。 ジョアン(駅の南側にシティホテルがある…か。) ちょっとした広場を囲むようにして数軒のホテルが立ち並んだ区画があった。 ジョアンは迷わずその場所に向けて歩き出した。 10分ほど黙々と歩き続けると、どうやら視界の先に広場らしき物が開けてきた。 更に進むと、どうやら少年が一人、広場でボールを蹴っているのが見えた。 ジョアン(一人でストリートサッカー?ふむ…? …ああ、生徒鞄があそこにあるな。 成る程、一旦家に帰る時間も惜しんでるのか。ふふ、とんだサッカー小僧だな。) ジョアンは足を止め、思わず微笑み浮かべた。 こんな事をするからには、この少年は登下校の間もずっとボールと一緒なのだ。 既にボールとトモダチになっているのが自ずと窺えた。
[18]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:58:10 ID:??? ジョアン(きっとこの少年は強くなる。) ロベルトと同じように…と、そこまで考えてジョアンは肩を落とした。 万事こんな調子ではいけないと自分では理解しているつもりだが、簡単にはいかないのだ。 ホテルにチェックインしよう…ジョアンが気を取り直して歩を進めだした、その時―――― (ビュウ…!) 突風が吹いた。 少年が蹴り出していたボールは風に煽られ… ジョアンに向かって飛んできたのだった。 運命の歯車が――緩やかに廻り始めた瞬間だった―――――
[19]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 20:01:52 ID:??? 改めまして宜しくお願い致します。 …と共に本日はここまでです、失礼致します。 本来のテンプレと場面まで、まだ2、30レスくらいは要する予定です。
[20]森崎名無しさん:2010/10/22(金) 20:10:29 ID:??? ウホッ、良いプロローグ! こ、この作品はまさか…あの話の続編なんですか?
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0ch BBS 2007-01-24