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【そんなタイトルで】アナザー カンピオーネ1【大丈夫か?】
[1]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:35:21 ID:PrCX1H7o この物語はフィクションです。 史実や実在の人物を連想する場面があるとしても、物語とは関係がありません。 風土、名称については文献を参考としていますが、想像のウェイトも大きく、事実と異なります。 そして……この物語はキャプテン森崎のフィクションで… とある貴公子と仲間達のサッカーに賭けた青春を描いたストーリーです。
[2]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:37:04 ID:??? Episode 0 〜“Star” twinkles in Pleiades 〜 1‐1)母 198X年8月 ユーゴスラビア ニシュ市 デサンカ「はぁ…相変わらず夏の買い物は辛いわね。」 家に着いたデサンカは買い物袋をテーブルに置き、ようやく一息ついた。 8月になり、相変わらず日差しの強い日が続いている。 とは言え標高の高いニシュの気候は、夏でも20℃そこそこと穏やかだ。 こんな荷物を持っていなければ、汗をかかずに済んだであろう。 デサンカ「ま、主婦なんだから仕方ないか。 愛する旦那と息子の為に夕飯をつくらなきゃ。」 休憩もそこそこに、デサンカはテキパキと行動を開始した。 まずは今日の夕飯の材料とそれ以外を分類し、冷蔵庫へと片付けた。 時計を見ると18時少し前…あと30分ほどで夫が、そして19時10分には息子が帰ってくるのだ。 あまりグズグズはしていられない。
[3]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:38:08 ID:??? 夕飯の支度をしながらデサンカは息子の事を考えた。 買い物の途中で見かけた息子は今日もストリートサッカーに明け暮れていた。 相変わらず他の子供よりも頭3つは抜き出たテクニックで大暴れの際中であった。 そして日の高さから察しているのだろう、まだ腕時計の針は気にしていなかった。 (クスッ) デサンカは笑顔をこぼした。 初めてサッカーをした息子を見た時は、まさかこれほどの腕前になるとは思わなかった。 娯楽の少ないこの国では、大抵の子供は物心がついた頃からサッカーに馴れ親しむ。 それゆえ子供のストリートサッカーと言えどレベルは非常に高い。 中心選手ともなれば、その突出した才能の輝きは素人の自分にも理解できるくらいだ。 そんな環境においては、幼い息子のレベルはなんとか上位レベルに食い込めるかどうかだと思っていた。 …ところがである。 息子がサッカーを始めて一年を経った頃、ある日を境に彼女は考えを改める事となった。 デサンカは数ヶ月に一度、買い物などのついでに息子の様子を確認しに行っていた。 前回確認した時、彼女の息子は間違いなく“そこそこ”の活躍しかしていなかった。 年齢の割には上手く、いずれは中心選手の一員になれるかも…という。
[4]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:39:21 ID:??? だがその日は違った。いや、その日から違った。 緩急を活かしたドリブル、柔らかく正確なロングパス、強力なシュート… 息子はそれまで中心となっていた年上の子供達を、たった一人で手玉に取っていたのだ。 当然ながらミリャナは驚嘆したと言っていい。 デサンカ(あの日以来、この街のサッカー小僧の中心はずっとあの子… 突然の変化は不思議だったけれど、子供は急に成長するものよね。) そう言えば…と、デサンカは思い出した。 なぜ急にサッカーが巧くなったのか、彼女は息子に聞いてみた事があった。 コツみたいな物を掴んだのか、それとも好きな子でも出来て張り切った結果なのかなどと、 チョッとした想像と共に偉大なブレイクスルーの理由を尋ねてみたのだ。 その回答は非常にユーモアに溢れた微笑ましい物だった。 デサンカ(モンスターや妖精、神様、魔法使い達と一緒にサッカーをしていたですって? 差し詰めあの子はネバーランドのピーターパンかしらね。) そう…彼女の息子曰く“不思議な場所で何日もサッカーをしていた”との事だったのだ。 きっと楽しい夢を見たのだと、その時のデサンカはこれを受け取った。
[5]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:40:24 ID:??? けれど、息子の上達は真実として急激だった。 たったの数ヶ月でこうも変わるのかと、常識的なデサンカは多少不思議に感じていた。 本当に息子はネバーランドに行っていたのでは…と思う時もある。 デサンカ「…なんて、まさかね。」 そんな事あるわけがない、と笑いながら夢物語を打ち消すのはいつもの事。 もしかしたらセミプロが通りがかり、気まぐれに技術を教えてくれたのではと思う事にしている。 現実的に考えればそういう事なのだろう、と。 夕飯の下ごしらえが済んだところで、デサンカは時計を確認した。 針は18時45分を指していた。夫の帰りが少し遅い……デサンカは多少の不安を覚えていた。 何しろ今はデリケートな時期。 ユーゴスラビアの大黒柱、圧倒的なカリスマを持ったティート大統領の死から3カ月だった。 しかし… この日のデサンカの悪い予感は空すかしとなった。数分後には夫も息子も笑顔で帰宅したのである。 帰宅するなり息子は大好きなアニメを観る為TVに突撃し、デサンカの雷を受けたのだった。
[6]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:41:41 ID:??? 1‐2)多民族国家 ユーゴスラビア連邦について話そう… セルビア王国を主体としたセルブ=クロアート=スロヴェーヌ王国として成立。 後にユーゴスラビア王国へと改名。 その歴史にはには2つの大帝国の存在が大きく関わっていた。 北のオーストリア帝国ハプスブルグ家、そして南のオスマン・トルコ帝国である。 ユーゴスラビア連邦を構成する地域はこの2つの異なる勢力の支配を受けてきたのだ。 ハプスブルグ家の支配を受けたスロヴェニアと北部クロアチア。 これはカトリック文化圏にあり、西欧化が進んでいた。 対してオスマン・トルコの支配を受けた南部クロアチアとセルビア、モンテネグロ、マケドニア。 こちらは東方聖教文化圏であり、またオスマン・トルコの影響でイスラムの要素も大きかった。 この結果、ユーゴスラビアを形成する地域には、他では見られないほど多様な歴史、文化的背景、 宗教を有した多種の民族が集まる事となったのである。 そして…
[7]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:43:09 ID:??? セルビア人はオスマン・トルコ帝国に支配される以前はギリシア中部まで支配していた歴史がある。 それゆえ居住地域はバルカン半島全域に散在しており、当然ながらセルビア民族はこれらの統合と 国家としての独立を目指した。 クロアチア人はオーストリア・ハンガリー帝国の干渉排除の点から独立を望んだ。 また他の民族も同様に独立国家の設立を望んでいた。 だが彼らは単独ではあまりに非力であった為、相互協力がどうしても必要だった。 それゆえ第一次世界大戦でオーストリア・ハンガリーが力を失った後であっても、 国家として独立できたのは連合国家という形になってからである。 連合国家であっても、最も有力であったのはセルビアである。 それゆえ政府は主にセルビア人によって運営され、非セルビア人勢力との対立が歴史的に続いた。 さらに第二次大戦においてはドイツ・イタリアに侵攻され分譲統治という形の中、 クロアチアだけは大クロアチア帝国として独立、ナチス傀儡政権として国内のセルビア人狩りが行われた。 対するセルビア人も武装集団チュトニクを組織し、クロアチア人に報復した。 結果として、30万人のセルビア人と20万人のクロアチア人の血が流れたのである。 セルビア民族とクロアチア民族の間にはこうした血塗られた歴史が存在している。
[8]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:44:27 ID:??? 話を大局に戻し、ユーゴ内においてイタリア・ドイツと戦ったのは共産主義者のパルチザン達である。 ユーゴスラビア人民解放反ファシスト会議(AVNOJ)の会合を1943年11月29日から12月4日まで行った。 ユーゴスラビア民主連邦は、このときのAVNOJの会合にて制定されたものである。 一方で、枢軸国から逃れていた王党派のユーゴスラビア王国亡命政権との交渉も続けられた。 パルチザンたちは、ゲリラ戦を主体として、第二次世界大戦における枢軸国との苛烈な戦争を戦い抜いた。 ナチス・ドイツが1945年に降伏すると、彼等はユーゴスラビア全域の支配権を確立。 社会主義連邦国家として制定される事となったのである。 このパルチザンの指導者だったのが、先に名前の出たティート大統領というわけである。 民族間に血の歴史がありながら、長きに渡り民族融和を実現してこれたのは、 偏(ひとえ)にティート大統領の手腕とカリスマ性によるものだった。 (裏話:ソ連との関係悪化から受けた経済封鎖により、ユーゴは纏まらざるを得なかった) そのティート大統領が後継者を定めぬままに急死した… これまで大人しくしていた民族主義者らの動きが活発になるのはこれまでの反動だろう。 各民族は独立へ向けて力を蓄え、その気運を巻き上がらせる事となる。 デサンカがボンヤリとした不安を感じていたのは、この時代背景によるものだ。
[9]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:45:35 ID:??? 1‐3)シュワーボ・アンザーニ アンザーニ「やはりここのザッハトルテは絶品ですね。」 デザートとして運ばれてきたザッハトルテに舌鼓を打つアンザーニ。 ここベオグラードも、かつてオーストリア帝国の支配を受けた都市であった。 その支配がもたらしたのは悪影響だけばかりではない。 西欧文化の流入による発展というメリットは間違いなく存在したのだ。 少なくともこうしてオーストリアのザッハトルテを食べられるのは素晴らしい事とアンザーニは思っていた。 この街でもそれなりに名の知れたレストランの一席。 アンザーニの対面に座り、彼の様子を半ば呆れながら見ている初老の男が一人。 彼の名はジョアン・ウェンガー。 半年前までブラジルの名門 FCサンパウロのトップチームで監督を務めていた男である。 ジョアン「相変わらず甘い物には目が無いようだな。」 アンザーニ「ほっほ、お陰でこんなに丸くなってしまいました。」 ジョアン「体型に関しては昔から兆しがあったがなぁ…。 中身までこうも丸くなっているとは思わなかったぞ。 白髪鬼と呼ばれ、選手に怖れられていたキミがなぁ…。」
[10]アナカン ◆w2ifIqEU72 :2010/10/22(金) 19:46:46 ID:??? アンザーニ「歳をとったからね、お互いに。」 ジョアン「…」 アンザーニは受け流したつもりだったが、ジョアンの様子から見透かされているのは明白だった。 長い付き合いの二人である、お互いの事情はよく知っているのだ。 アンザーニ(すぐに“それ”を連想してしまう…思考の袋小路にあるんだな、ジョアン。 …無理もない、私だってそうだったんだ。) すでにこの世にない教え子の事を思い返し、その時の苦しみまでもアンザーニは反芻した。 アンザーニにはジョアンが今抱えている苦しみも理解が出来る。 だからこそ、彼をこのユーゴスラビアに招待したのだ。 東欧のブラジルと呼ばれるこの国に。 もう思い切って話を本題に切り換えよう、そうアンザーニは決めた。 アンザーニ「ところでジェリェズニチャルJrユース(私のチーム)の子らはどうだったかい?」
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0ch BBS 2007-01-24