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【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】
[498]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/14(金) 19:09:30 ID:??? 「自分が悪いと言われて、仕方ないと思う。それはお前、悪人の考え方じゃねえよ」 「……」 レズリーは、顔を上げない。 ほとんど空になったグラスの縁を指で何度もなぞりながら、黙っている。 「どうしようもねえクズ、救いようのねえ悪党……その手の連中は、そんな風には考えねえ。 手前ぇのやりたいようにやることが当たり前、やらねえヤツが馬鹿なんだと、こうだ」 「……」 「連中はな、だから自分が悪いなんてこれっぽっちも思ってねえ。気付きすら、しねえんだよ。 悪いと言われりゃ怒るか嗤うか、だ。仕方ない、なんて思えるのは―――」 思わせぶりに切った森崎の言葉を、 「……悪人なんかじゃない、って言いたいのかい」 僅かな沈黙を挟んで、レズリーが引き取った。 顔を、上げる。 「モリサキ」 背筋を伸ばして森崎の横顔を見据えるレズリーの目には、怒りに近い炎の色と 消沈と諦念を湛えた泉の色と、幾つもの感情がぐるぐると渦を巻いている。 「アタシを……慰めてる、つもりかい」 「いンや」 切り込むような声音に、森崎の即答は短く、軽い。 顔を向けぬまま小さく口角を上げたその表情は、少女の感情を容易くいなす。
[499]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/14(金) 19:10:31 ID:??? 「商売上の経験、ってやつさ。そうご大層なもんじゃねえよ」 「……」 いなされた感情の渦が、潮が引くように少女の瞳から消えていく。 それでも、視線だけは森崎の横顔から離れない。 じっと、見つめる。 森崎は、見返さない。 「……」 「……」 先に口を開いたのは、レズリーだった。 「―――ロリィの話だったね」 何かを振りきるように、視線を切って言う。 「あの子にはさ……ないんだ。そういう、アタシを通して、アタシじゃない誰かを見てるって感じが。 だから、アタシにまとわりついて、アタシのことをよく知ったって、裏切られたとは思わないでくれる。 今ここにいるアタシ自身を見て、だけどそれでも、懐いてくれてる。 そういう子だから、一緒にいられる……のかな」 そこまでを言って、レズリーがふと息をつく。 僅かに空いた間に、店主が麦酒を満たしたグラスを、無言で森崎の方へ寄越した。 受け取ったその手でくい、と酒を流し込む森崎。
[500]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/14(金) 19:11:32 ID:??? 「だから……」 と、そんな森崎に何を言うでもなく続けたレズリーの声音が、ふと変わる。 低く篭った、しかしどこか熱に浮かされたような、独白じみた声。 「だからこそアタシは、あの子を裏切っちゃいけない。期待に応えなくちゃいけない。 あの子が本当のアタシを見てるなら、アタシは、もっと、もっと―――」 そこまでを呟いたレズリーが、はっとしたように顔を上げた。 目線だけで回りを見回すと、森崎と視線が絡まる。 「と、とにかく」 「……?」 どこかバツが悪そうに顔を背けながら、レズリーがグラスを手に取った。 「あの子と一緒にいるのが、今のアタシたちには当たり前の形だってだけ。 アンタにどう見えてるかは知らないけどね」 一方的に話を打ち切ると、僅かに残ったグラスの中身を飲み干した。 口の端から紫色の滴がつう、と垂れたのには、気づいていないようだった。 ***
[501]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/14(金) 19:12:35 ID:??? 「それより、なんか面白いことないのかい」 「あんまりキョロキョロするなっての。ったく……仕方ねえな」 とん、とグラスを置いたレズリーが言う。 話題を変えてほしいと書いてあるその顔に、森崎が顎をしゃくってみせた。 「あっちの卓、見てみろ」 森崎の示した店の一角には、他とは違う雰囲気を漂わせる調度が並んでいる。 何か模様を書いた布が敷かれた大きめのテーブルや豪華な装飾を施された飾り椅子。 燐光石による間接照明の色までが、他とは変えられているようだった。 品の良い薄暗さに調節された店内に比べ、その一角だけは僅かに黄色と紅色が強い。 「……あれ、何だい?」 「カード卓だよ。この店じゃそっち系もやってるみたいだ」 「そっち系って……賭け事!?」 思わず、といった風に声を上げたレズリーに、森崎が反射的に顰めた眉間を揉みほぐす。 「だから大声出さないでくれ、恥ずかしいから」 「……悪かったよ」 「こういう店じゃ、手汗だらけの汚い札を目ぇ血走らせて賭けるヤツはいねえ。 あくまで余興、嗜み程度って感じだな」 拗ねたように言う少女にひとつ息をつくと、森崎が立ち上がる。 「子供の前でギャンブルってのもアレだが……ま、小銭程度ならいいだろ」 「誰が子供だ! ……って、ちょっと待てってば」
[502]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/14(金) 19:13:37 ID:??? 歩き出したのは、カード卓の置かれた一角の方だった。 つい今しがた自分が口にしたことを忘れたように言い返すレズリーだったが、 しかし慌てて席を立つと森崎を追いかけてくる。 「遊ばせてもらえるかい」 「―――いらっしゃいませ。承ります」 卓のある一角には専任のディーラーが立っている。 とはいえ、あくまでバーの余興であり専業のカジノというわけではない。 卓ごとにディーラーがつくわけではなく、少なくともこの時間は一人で全体を回すようだった。 執事を思わせるモノトーンの略装に身を包んだディーラーを一目見て、 「え……?」 森崎の動きが止まった。 そんな森崎を目にしたディーラーもまた、 「あ……」 凍りついたように、固まる。 そこに立っていたのは、女性である。 品の良い所作と、端正だが常に伏せられがちな表情。 暗緑色の瞳が帯びる憂いを隠すように、長い睫毛が瞬く。 森崎が、光に透かすと緑を帯びるハンガリア系特有の黒髪を長く伸ばしたその女性を見知ったのは、 つい先日のことだった。 言葉を交わしたわけではない。 森崎が目にしたのは、ただその背中である。 血と泥とに汚れたマントを抱き締め震える、黒い背中。 「……マジョラム、さん」 「……」
[503]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/14(金) 19:16:49 ID:??? 思い出すのはヤングの葬儀。 涙にくれていた寡婦が、そこにいた。 「……知り合い?」 重い空気にただならぬものを感じ取ったのか、レズリーがそんな風に訊ねてくる。 森崎の返答は――― *選択 A 「……ちょっと、な」 言葉を濁す。 B 「前の隊長の……奥さんだ」 説明する。 森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。 その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。 期限は『9/15 18:00』です。 ****** 悪い男よりズルい男の方がタチが悪い気もしなくもありません、 といったところで本日の更新はこれまでとさせていただきます。 夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。 それではまた、次回更新にて。
[504]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/14(金) 19:27:40 ID:qxkqhA8w おっと、一応ageておきましょうか。
[505]◆W1prVEUMOs :2012/09/14(金) 21:51:59 ID:??? B 世話になった人の奥さんだし、きちんとした方が失礼がないかなと
[506]見てる人 ◆S/MUyCtQBg :2012/09/15(土) 00:42:52 ID:??? B 隠す理由がないからね。ヒロインはどっちだ、って話なのでw ヒロインに隠し事は悪い印象与えそうだし。
[507]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/09/15(土) 08:00:26 ID:??? B ヤングは良い隊長でしたし、その奥さんをヒロインに紹介しつつ、奥さんと話してみたいです。
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0ch BBS 2007-01-24