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【貴族の傲慢】異邦人モリサキ2【傭兵の意地】
[716]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 12:17:25 ID:??? *** スペード・ハート・ダイヤ→ 「一回だけよ」ゴーサイン。 「やった!」 「ありがとうございます、クレアさん。ご面倒かけちまって……」 「いいえ。こういうのは、変に抑えると隠れてでもやりたくなってしまうものですから。ね?」 「はは……」 にっこりと笑顔を向けられ、気まずそうに頬を掻くレズリー。 そんなレズリーに、背後に立った森崎が言う。 「じゃ、勝っても負けても恨みっこなし。ズルズル続けるのもなし。いいな?」 「わーかってるって、もう! うるさいなあ」 小言のように念を押す森崎に煩わしげに手を振ると、レズリーが卓に身を乗り出す。 尻尾があればぶんぶんと勢い良く振り回されていそうなその様子に苦笑したクレアが、 しかし一瞬で営業用の微笑以外を表情から消すと、カードデッキを手に取って構える。 「では、始めます」 こうして、レズリーのギャンブル初体験が開始されたのだったが―――
[717]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 12:18:48 ID:6SH/EfKY *ドロー ビギナーズ……? → !card ※ !と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。 結果によって展開が分岐します。 スペード・ハート→ 「楽しいな、これ!」 ビギナーズラック炸裂! 勝ったレズリーは喜んでいる。 ダイヤ・クラブ→ 「も、もう一回だ!」 負けて思いっきり熱くなっている……。 JOKER→ 「……もうチップ置く場所ないんだけど」 女賭博師の誕生である。
[718]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/09/21(金) 12:21:24 ID:??? ビギナーズ……? → ダイヤ9
[719]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/09/21(金) 12:27:36 ID:??? 【リドロー】 ビギナーズ……? → クラブ10
[720]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/09/21(金) 12:29:17 ID:??? たいして重要では、ない気もするんですが。
[721]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:16:53 ID:??? >>720 はい、レズリーの性格付けに若干の影響はしますが、展開に大きく関わるわけではありませんね。 *** ハート・ダイヤ・クラブ→ 「も、もう一回だ!」 負けて熱くなっている……。 「―――クラブの10。……バーストですね」 最終ゲーム、ラストコールである。 残った全額を賭けての勝負が失敗に終わったことを告げる、破滅の鐘であった。 「そんな……」 「まあ、負けるときはこんなもんだ。気が済んだろ」 羅紗の引かれた緑色の卓の上、呆然とカードを見つめるレズリーに肩をすくめる森崎。 しかし、レズリーは立ち上がろうとしない。 ふるふると震えたかと思うと、決然と顔を上げ、叫ぶように言う。 「……も、もう一回! もう一回、勝負だ!」 「おい、レズリー!」 念を押したはずの約束をあっさりと破られ、思わず声を荒げる森崎を抑えたのは、 卓を挟んだクレアがちらりと向けた視線である。 口を噤んだ森崎に代わるようにレズリーを見つめるクレア。 真正面からの目に怯みながら、しかしレズリーが縋るように口を開いた。 「な、なあ……頼むよ、負けっぱなしじゃ悔しいんだ。もう一度だけ、」 「ふふ、いけません」 優しい口調の、しかしレズリーの懇願を断ち切るような、きっぱりとした即答。
[722]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:17:54 ID:??? 「……」 「……ですよね」 不満気に口を尖らせたレズリーだったが、しかしそれ以上は食い下がろうとしない。 子供の駄々をどう片付けたものかと思案していた森崎が、ほっと胸を撫で下ろす。 森崎一人の説得であれば強い反発が返ってきたかもしれなかったが、クレアという人物には こういうとき、ある種の強制力とでもいうべきものが備わっているようだった。 「つーか、もうすぐ日が暮れちまうぜ」 「え……そんな時間?」 この機を逃してなるかとばかりに帰り支度を促す森崎に、レズリーが目を丸くする。 窓のない半地下の店内では外の明るさが分からず、定期的に刻限を知らせる鐘の音も聞こえない。 自然、時間間隔も曖昧になってくるのだった。 「そうね。そろそろ、夜の仕込みが終わる頃じゃないかしら」 「だってよ……って、」 クレアが頷くのに振り返る森崎を迎えたのは、少女の上目遣いである。 「……もう、帰んなきゃダメか?」 一瞬、森崎が息を呑む。 僅かに頬を染めて眦を下げ、哀願するように言うその姿態は、おそらくは無意識のうちに 行なっているものであったろうが、驚くほど効果的に女というものを使いこなしている。 「お前なあ……」 媚態、と言い表されるであろう少女の表情に、盛大なため息を漏らす森崎。
[723]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:18:54 ID:??? 「今、俺がどんな風にその台詞を受け取ったか知ったら、きっと激怒するんだろうな」 「……?」 言われたレズリーはといえば、やはり意味を取りかねているらしい。 怪訝そうな顔をするばかりであった。 「―――モリサキさん」 そんな二人の間にすう、と滲むような声は、クレアである。 心臓を爪の先で引っかかれるような悪寒に、森崎が飛び上がって返事をする。 「は、はいっ!?」 「きちんと、お家まで送ってあげて下さいね」 肯定をのみ要求する、それは絶対者の微笑である。 森崎の背筋を、冷や汗が垂れ落ちる。 「は、はは……はい、勿論ですって」 「お願いね」 引きつった顔で何度も頷く森崎に、クレアから無言の威圧感が引いていく。 「……また、改めてご挨拶にでも伺いますんで」 「そんな、気にしないでいいのよ。お仕事、頑張って下さいね」 「はい」 迷いなく、頷く。 それは取りも直さず、ヤング・マジョラムの後継者として隊を率いていくということである。 一縷の躊躇も許されない問いと、答えであった。
[724]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:19:55 ID:??? 「それじゃ……。ほら、帰るぞ」 頭を下げた森崎が、レズリーを促すと少し離れたカウンターの向こうに声をかける。 「勘定、頼むわ」 「かしこまりました。……こちらになります」 間髪を入れず歩み寄ってきた店主が、森崎に伝票を渡す。 その末尾に記された数字を見た森崎が、 「げ」 一瞬、絶句した。 その様子に、森崎の手元を覗き込もうとするレズリー。 「……いくらだったんだい?」 「いや、まあ……気にすんな」 咄嗟に紙片を裏返す森崎に、レズリーが口を尖らせる。 「隠すことないじゃないか」 「痩せ我慢したがってる男には、させておいてやるもんだぜ」 「何だい、それ」 眉根を寄せるレズリーに、森崎が一度首を振ると、改めて退店を促す。 「いいから。ほら、先に出てな」 「あ、こら、押すなって! もう、分かったから!」 「……ふぅ」 どうにかレズリーを扉の外に追いやると、森崎が疲れきったように肩を落として店主へと向き直った。
[725]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/09/21(金) 14:20:56 ID:??? 「これで、足りるかい」 腰に下げた、財布代わりの革袋から十数枚の銀貨を取り出すと、 店主の恭しく掲げる皿へと並べてみせる森崎。 「……はい、承ります。ありがとうございました」 「さっきの勝ち分がすっ飛んで、まだこれかよ。とほほ……」 銀貨の種類と枚数を瞬時に見分け、深々と頭を下げる店主に背を向けると、森崎が力なく 片手を振って扉の方へと歩み出す。 「またご贔屓に」 背にかけられる店主の声は、軽くなった財布を安々と突き抜けて森崎の精神に突き刺さる。 押し出されるように、ため息が漏れた。 (……けど、まあ) しかし、と。 重厚な扉を押し開けて、隙間から流れ込んでくる夏の夜の匂いを感じながら、 森崎は階上できっと不機嫌そうな顔をしているであろう少女を思い浮かべる。 今日という一日。 これまでとは違う、様々な表情を見せたレズリーという少女。 その代価としては、この出費も決して高くはないのかもしれない。 そんな風に、森崎は思うのだった。 『overreach yourself』(了) .
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0ch BBS 2007-01-24