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【早苗】鈴仙奮闘記28【サッカー好きか?】
[401]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/05(火) 15:21:38 ID:??? 白狼天狗「……所属と名前を」 射命丸「従八位、治部省広報局付少属の射命丸文です。中務省から召集命令があり馳せ参じました」 白狼天狗「かしこまりました。臨査の会場は四階の第二会議室です」 射命丸「ありがとう」 庁舎入口の警備を務める壮年の白狼天狗に先程の通知文を見せる。 彼は機械のように淀みない口調で射命丸に案内図を手渡してくれた。 広報局――鴉天狗として新聞作成を業務としている射命丸は、政務の中心たる庁舎に行くことは珍しい。 現に警備担当の白狼天狗や、専ら事務を務める庁舎内の鼻高天狗達は、鴉天狗の少女を好奇の目で見つめていた。 射命丸は彼ら彼女らの下卑た目線に耐えながら、自動昇降機――外界で言うエレベーターのスイッチを押した。 *** コン、コン……ガチャッ。 射命丸「――射命丸文。只今馳せ参じました」 鼻高天狗「遅いぞ。幻想郷最速とやらが聞いて呆れるな」 四階の第二会議室のドアをノックし入室した射命丸は、早速の高圧的な口調に気圧される事となった。 絨毯敷きの小部屋の中には、射命丸に早速の挨拶をした鼻高天狗の中年を中心に、 5、6名程度の同じく鼻高天狗の青年達が、射命丸と向き合うように座っている。 鴉天狗や山伏天狗は年老いたのが1名ずつ、白狼天狗は1名も居なかった。 射命丸「あやや……これはこれは、誠に申し訳ございません。 きっと私が光よりも早かったが故に、暫くは存在を視認できなかったのではないですかな」
[402]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/05(火) 15:23:04 ID:??? 鼻高天狗「減らず口を。貴様は身の程を弁えるのは、相変わらず苦手なようだな。 まあ……だから何時まで経っても、貴様は小属止まりなのだろうが」 射命丸「………」 臨査――正式には『臨時査問委員会』を実務的に取り仕切るのは、大天狗のような上役ではない。 天狗社会の内政を司る中務省の少輔クラスを中心に、脇を固めるのは大丞から少丞クラスの中堅天狗が、 こうして列席して、気に食わない輩を呼び出しては難癖を付けるのである。 鼻高天狗「……まあ良い。それより、射命丸文。本日の臨時査問委員会で貴様を呼び出した理由。それは分かるな?」 射命丸「――通知文に書いてありましたよ。サッカーチーム運営事業の事ですよね?」 中央の鼻高天狗は欧米人のように長い鼻の頭を擦りながら、鬱陶しげに射命丸に訊く。 射命丸もそれに合わせて鬱陶しげに答えると、周囲の取り巻きが俄かにざわついた。 中央の彼は少輔――外界の企業で言えば次長クラス――であるにも関わらず、 少属――これは主任程度だ――に過ぎない射命丸が反抗的な態度である事は、 上下関係に厳しい天狗社会にとってあり得ない事だった。 鼻高天狗「……式部省の今の大天狗様の意向は知っているな。 あの方は赤字かつ政策的効果の薄いサッカー政策を嫌っておられる。 そして前の妖精大連合との試合だ。あれで貴様等が引き分けた時は……! ――もう、大天狗様や天魔様周囲の秘書局は大混乱だった。 あの場は何とか大天狗様の命を受けた私が報告書を作成し、天魔様に無事お伝えする事が出来たが。 考えてみろ。次にこうした大混乱を引き起こし、様々な方面に迷惑を掛ける事があれば、今の大天狗様の地位がどうなるか……!」 射命丸「……そうですか。それはお気の毒ですね」
[403]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/05(火) 15:25:03 ID:??? ――勝手に混乱してよそに迷惑を掛けているのはアンタ達でしょうが。何を恩着せがましく。 そう口を突いて正論が飛び出しそうになったが、流石の射命丸もこれは不味いと思ったのか言葉を濁した。 ここは天狗社会という組織の中だ。組織の中では、正論は時として通用しない事を射命丸は学習していた。 鼻高天狗「……人間に人気の鴉天狗を広告塔としつつ、サッカーによる多種族との交流を促進していく。 そんな絵にかいた餅、青写真を天魔様がご納得されると思うか? 前の大天狗様にしろ、無理やりこうした政策をねじ込めたのは奇跡だったと言うのに。 ―――今の大天狗様となっては、もうそんな奇跡は通用せんぞ。 特に、何一つ結果を出していない、『案外大したことない』幻想郷最速とやらのチームにはな」 『案外大したことない』のフレーズを口にした時、周囲の天狗達から笑い声が漏れた。 『射命丸って案外大したことなくね?』というフレーズは、 元々反権力指向で、その上人間や妖精ごときと慣れあう射命丸を嫌う者達の間で、 一時流行語として良く天狗達の内輪の新聞に用いられていたのだ。 射命丸は自分の顔が熱くなるのを自覚しつつ、黙って鼻高天狗の得意げな笑みを睨みつける。 鼻高天狗「――臨時査問委員会の意義は、お前のやってる蹴鞠ごっこのようなふざけた事業を、 柔軟かつ即座に廃止・見直しする事が出来る点にある。 今回はな、射命丸。貴様に選択権を与える為にこの場を開いてやったのだよ。 つまり。貴様のチーム――妖怪の山FCを不採算事業として大会終了後、即廃止するか。 それとも、事業自体は存続とするが、貴様がこれまでの不採算の全責任を負うかのどちらかをな」 射命丸「……それが選択? どこが選択って言うんですか。 チームを潰して、その後チームを潰した責任を私におっかぶせるか、 チームは潰さないけれど、これまでの責任を即座に私におっかぶせるかの違いでしか無いのでは? どっちにしたって、貴方はなんやかんや策を弄して、私に責任を負わせる気しかないのでしょう!」 鼻高天狗「……流石に馬鹿ではないか。 貴様なら、この場の保身を考え、前者を選んでくれるのではないかと思ったのだがね」
[404]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/05(火) 15:26:07 ID:??? 射命丸「チームを潰すとなると、なぜ潰すのかの説明責任に問われます。 その時、貴方がたは高い地位を利用して、私に全てを説明させるのでしょう。 『チームがつぶれたのは、わたくし射命丸が無能だったからです。ごめんなさい』……ってね」 自身達のストーリーを容易く看破されたのか、天狗達は暫く押し黙ってしまった。 そして数分の後、鼻高天狗はつまらなさげに鼻を鳴らしてこう提案した。 鼻高天狗「……ならば、条件を変えようか。 私とて、サッカーチームが不採算で無いのなら無暗に責任を追及したり、廃止に動く道理もないのだ。 そして、サッカーチームを再三の取れた事業とするのなら、やはり実績――勝利が必要だ」 射命丸「…………」 射命丸は不敵な笑みを作りつつ、押し黙って、中年の鼻高天狗の話を聞く事にした。 彼はこう告げた。 鼻高天狗「……もしも、次の紅魔スカーレットムーンズとの試合に勝てば、今回の話を全く無かった事にしてやる。 幻想郷の一大勢力である紅魔館に勝利した結果を鑑みて、事業は効果があると、とりあえず当委員会で認定してやろう。 しかし、もしも敗北した場合は――先程の選択で言う後者を選ばせてやる」 射命丸「チームは存続する。しかし、私射命丸が敗北の全責任を負う……そういう事ですね」 鼻高天狗「不満か? 先程よりも随分と良い条件と思うが」 射命丸「不満かと言えば不満ですよ。だって、最初っからこの程度の条件を私に課すつもりだったのでしょう? 最初の無茶な選択は、交渉で良くあるドア・イン・ザ・フェイス。 私が選択の穴を論破する事を見据えた上で、『万一試合に勝利したら、今回の件を不問とする』 という本来の条件を取っておいたのでしょう。 上司に気を遣えない、出世も出来ない愚かな射命丸だったら、こうして条件を提示したら頷いてくれるに違いない……ってね」
[405]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/05(火) 15:28:00 ID:??? 再び室内がざわついた。とはいえそれは先程の無礼な口調に対する憤りでは無い。 部屋の連中はこぞって、自分達の目論見を一瞬で看破した、射命丸の明晰な頭脳と冷静な判断力に驚いていたのである。 射命丸は天狗社会での出世には興味は無かったが、決して無能な訳では無い。 むしろ、彼女さえその気になれば、今真正面で苛立たしげに鼻をこする小人の天狗をも出し抜き、 出世街道を突っ走る事すらあながち不可能では無いのだ。 射命丸「……まあ。とはいえ私は依然弱い立場です。これ以上の譲歩を引き出すのは難しいのでしょう。 ――ですから、私はどの道この条件を呑むしかないんです。 だから今のは万年主任な私の、負け犬の遠吠えだと思っててください。 次長様課長様がたにこれ以上、無礼な発言をしてはいけませんからね」 鼻高天狗は何か言いたそうにしていたが、冷や汗を垂らしながらも気丈な射命丸の抗弁を前に、 最初のような高圧的な口調をする事が出来なくなっていた。 彼は射命丸が自身の条件――次の紅魔スカーレットムーンズとの試合に勝利すれば、チーム及び射命丸には手を出さない―― を呑んでくれた事で一応満足し、彼女を部屋から退室させた。 山伏天狗「……あれが射命丸文か。確かに、彼女は現体制にとって脅威だろうよ」 委員会の中で珍しく鼻高天狗で無い老人――新聞の印刷業をかつて管理していた山伏天狗の少丞はそう呟いた。 彼だけは『射命丸って案外大したことなくね?』というフレーズを聞いた時も、下卑た笑いを浮かべて居なかった。 山伏天狗「現状の権力に擦り寄らず、人間や妖精と言った、かつて我々が見下し侮っていた種族とも交流を深めている。 あの委員長や今の大天狗様のような保守派にとっては、射命丸文はさぞ不気味な存在だろうよ」 かつて守矢神社が山に建った事で、博麗の巫女が予告なく妖怪の山に立ち入った時、 かつての大天狗が、並み居る白狼天狗の剣豪や鼻高天狗の高級事務官を寄越さず、 万年主任の無能記者である筈の射命丸文をみずから指名して、監視と足止めに向かわせた事を彼は思い出す。 山伏天狗「(……結局の所、サッカーチームの低迷だとかは取ってつけた言い訳にすぎん。 今の無能な事務連中は、何としてでも自分達の秩序を乱しかねん射命丸文を消したいんじゃろうな)」
[406]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/05(火) 15:34:35 ID:??? 彼の見込みは概ね当たっていた。しかし彼はひとつ勘違いをしていた。 鼻高天狗や今の大天狗が、異様な存在感を放つ射命丸を排除したいと考えていたのは間違いない。 しかし、射命丸は彼が思っているよりも素晴らしい人物では無かった。つまり……。 射命丸「(まずいわね……このままでは。全責任を負うとなると、私はきっと――追放となる。そうなったら、私は……)」 ――先の委員会の場にて、射命丸は気丈に振る舞っていた。それは間違いなく彼女の器量と才能だった。 しかし同時に彼女は超人では無い。組織から完全に見放される事に対して不安を覚えていない訳が無かった。 ただ、吐き気がする程無能な奴らに土下座をしてまで、命乞いをする気にはなれなかったのである。 有能な大物の仮面を外した先にある彼女は、案外大して強くなかった。 射命丸「(はたてや椛に相談――は、やっぱり出来ない。 私がどうにかして、レミリア・スカーレットに勝利し。そして、チームも試合に勝てるようにしないと……)」 そして悪いことに、射命丸はプライドの高い天狗達の中でも取り分けプライドが高い。 だから、今回の件について、友人に相談する事すら出来なかった――いや、相談するという発想が無かった。 そのため、彼女は悶々とした一日を過ごす事となり。 そして――射命丸の運命を左右する試合開始が、今彼女の眼前へと迫っていた。
[407]森崎名無しさん:2015/05/05(火) 15:41:07 ID:??? >『射命丸って案外大したことなくね?』 ひゅいぃぃ…これで笑ってたのって私たちのことじゃん…ごめんねぇ…
[408]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/05(火) 15:44:50 ID:??? ……と、言った所で一旦ここまで。 次は漸くスカーレットムーンズとの試合の中身に移っていきたいと思います。 >>389 射命丸についてはどうなるか、何となくは考えていますね。乙ロットありがとうございます。 >>390 乙ありがとうございます。射命丸は妖夢よりは芯が強いと思いますので、聖徳チーム行きは多分大丈夫です。 >>392 乙ありがとうございます。前々の選択で、一応射命丸の問題に絡めるチャンスはありはしましたね。 (レミリアから)三失点以内なら出来るかもです。 >>394 チームが低迷しているというのは建前で、実際は厄介な射命丸を消したいと考えていたのでしょうね。 >>396 早苗さんで良かったです(ダイヤ、スペード、クラブAを見ながら) 姫様と射命丸の組み合わせは面白そうですが何か大変な事が起きそうですねw それでは、一旦失礼いたします。
[409]森崎名無しさん:2015/05/05(火) 15:45:46 ID:??? 妖夢「追放は最高なんですよ…」 矢車「みんなで歩いて行こう、ゴールのない暗闇の中を」 射命丸「あなたたちだけですよ、私のことを大事にしてくれるのは…」 やっぱり話の流れ的にはミサキーヌよりこっちの方かな?乙です
[410]森崎名無しさん:2015/05/05(火) 21:30:15 ID:??? 射命丸が追放されそうなのも鈴仙って奴の仕業なんだ
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0ch BBS 2007-01-24